説明

輸送用冷凍装置

【課題】インバータ基板をその動作温度以下で使用する際、インバータ基板を予備加熱するために、別に予備加熱装置等が必要となってトレーラ用冷凍装置の製造コストが上昇する。
【解決手段】トレーラ用冷凍装置は、エンジン(41)と、エンジン(41)の駆動によって発電する発電機(40)と、インバータ基板と、インバータ基板の温度を検知する温度センサ(74)と、温度センサ(74)の検知温度がインバータ基板の動作温度以下であると、エンジン(41)の廃熱によってインバータ基板を加熱する熱搬送機構(60)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍装置に関し、特に低外気温度下で使用される輸送用冷凍装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍食品等の貨物を低温に保ちながら陸上輸送するための冷凍車両が知られている。冷凍車両には、例えば特許文献1に開示されているような車両用の冷凍装置が設けられている。この冷凍装置は、冷凍車両の走行用エンジンとは別のサブエンジンと、該サブエンジンによって駆動される電動圧縮機とを備えている。この電動圧縮機は、インバータ回路によって回転数を制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−038933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的にインバータ回路は、所定の動作温度(例えば−20℃)以上の環境下で動作するよう設計されており、この動作温度(−20℃)以上をインバータ回路の使用可能環境としている。このため、従来の冷凍装置では、インバータ回路の動作温度(−20℃)以上で冷凍装置が使用されることを想定してインバータ回路を選定する。しかしながら、遠方まで陸上輸送を行うような冷凍車両では、冷凍装置が使用される実際の温度が、インバータ回路の動作温度(−20℃)よりも低くなる場合があり得る。ところが、このような場合も考慮し、冷凍装置の使用環境を想定すると、−20℃よりも低い温度(例えば−30℃)を動作温度とするインバータ回路を選定する必要があり、インバータ回路自体のコストが高くなるという問題があった。このような問題に対しては、インバータ回路を動作温度以下で使用する際、その動作可能な温度(上述したインバータ回路では、−20℃以上)まで予備加熱を行うという方策が考えられる。しかしながら、この場合、インバータ回路を予備加熱するために、別に予備加熱装置等が必要となり、冷凍装置の製造コストが上昇するという問題があった。
【0005】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、冷凍装置の製造コストの上昇を抑えつつ、動作温度より低い温度環境下でインバータ回路を動作させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、エンジン(41)の廃熱によってインバータ回路(71)を加熱するようにしたものである。
【0007】
第1の発明は、エンジン(41)と、エンジン(41)の駆動によって発電する発電機(40)と、インバータ回路(71)とを有し、上記発電機(40)の発電によって駆動する冷媒回路(21)を備えた輸送用冷凍装置であって、上記インバータ回路(71)の温度を検知する温度検知器(74)と、該温度検知器(74)の検知温度が所定温度以下であると、上記エンジン(41)の廃熱によって上記インバータ回路(71)を加熱する加熱機構(60)とを備えている。
【0008】
上記第1の発明では、エンジン(41)の駆動によって発電機(40)が発電する。そして、発電機(40)で発生させる電力によって冷媒回路(21)を駆動する。ここで、温度検知器(74)がインバータ回路(71)の温度を検知する。加熱機構(60)は、温度検知器(74)の検知温度が所定温度以下であると、エンジン(41)の廃熱によってインバータ回路(71)を加熱する。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記エンジン(41)は、該エンジン(41)を冷却する放熱器(45)を備え、上記加熱機構(60)は、放熱器(45)の廃熱によってインバータ回路(71)を加熱するよう構成されている。
【0010】
上記第2の発明では、温度検知器(74)がインバータ回路(71)の温度を検知する。加熱機構(60)は、温度検知器(74)の検知温度が所定温度以下になると、放熱器(45)の廃熱によってインバータ回路(71)を加熱する。
【0011】
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、上記加熱機構(60)は、エンジン(41)の廃熱で加熱された空気をインバータ回路(71)へ供給する空気供給路(61)を備えている。
【0012】
上記第3の発明では、温度検知器(74)がインバータ回路(71)の温度を検知する。加熱機構(60)は、温度検知器(74)の検知温度が所定温度以下になると、エンジン(41)又は放熱器(45)の廃熱によって加熱された空気を空気供給路(61)へ導入してインバータ回路(71)へ供給する。
【0013】
第4の発明は、上記第3の発明において、上記空気供給路(61)は、温度検知器(74)の検知温度に基づいてインバータ回路(71)へ供給する空気量を調節する空気調節機構(62)を備えている。
【0014】
上記第4の発明では、温度検知器(74)がインバータ回路(71)の温度を検知する。加熱機構(60)は、温度検知器(74)の検知温度が所定温度以下になると、エンジン(41)又は放熱器(45)の廃熱によって加熱された空気を空気供給路(61)へ導入してインバータ回路(71)へ供給する。この際、空気調節機構(62)は、温度検知器(74)の検知温度に基づいて空気供給路(61)からインバータ回路(71)へ供給される空気量を調節する。
【0015】
第5の発明は、上記第2の発明において、上記加熱機構(60)は、放熱器(45)の熱交換用流体によってインバータ回路(71)を加熱するよう構成されている。
【0016】
上記第5の発明では、温度検知器(74)がインバータ回路(71)の温度を検知する。加熱機構(60)は、温度検知器(74)の検知温度が所定温度以下になると、放熱器(45)の熱交換用流体によってインバータ回路(71)を加熱する。
【0017】
第6の発明は、上記第5の発明において、上記加熱機構(60)は、放熱器(45)の熱交換用流体をインバータ回路(71)の放熱部材(72)に導き、上記熱交換用流体と放熱部材(72)とを熱交換させる流体供給路(65)を備えている。
【0018】
上記第6の発明では、温度検知器(74)がインバータ回路(71)の温度を検知する。加熱機構(60)は、温度検知器(74)の検知温度が所定温度以下になると、放熱器(45)の熱交換用流体を流体供給路(65)へ導入してインバータ回路(71)の放熱部材(72)へ導く。そして、加熱機構(60)は、熱交換用流体と放熱部材(72)とを熱交換させてインバータ回路(71)を加熱する。
【0019】
第7の発明は、上記第6の発明において、上記流体供給路(65)は、温度検知器(74)の検知温度に基づいて流体供給路(65)を通過する熱交換用流体の流量を調節する流体調節機構(66)を備えている。
【0020】
上記第7の発明では、温度検知器(74)がインバータ回路(71)の温度を検知する。加熱機構(60)は、温度検知器(74)の検知温度が所定温度以下になると、放熱器(45)の熱交換用流体を流体供給路(65)へ導入してインバータ回路(71)の放熱部材(72)へ導く。そして、流体調節機構(66)は、温度検知器(74)が検知したインバータ回路(71)の温度に基づいて流体供給路(65)を通過する熱交換用流体の流量を調節する。加熱機構(60)は、熱交換用流体と放熱部材(72)とを熱交換させてインバータ回路(71)を加熱する。
【発明の効果】
【0021】
上記第1の発明によれば、温度検知器(74)と加熱機構(60)とを設けたため、インバータ回路(71)が所定温度以下となった場合に、エンジン(41)の廃熱を利用して該インバータ回路(71)を加熱することができる。これにより、インバータ回路(71)自体の製造コストを上昇させることなく、インバータ回路(71)を動作させることができる。また、エンジン(41)の廃熱を利用するため、インバータ回路(71)を加熱するために別途加熱装置等を設けることなく、インバータ回路(71)の温度を所定温度以上まで加熱することができる。これらの結果、冷凍装置の製造コストの上昇を抑えつつ、インバータ回路(71)を所定温度以下の環境下で動作させることができる。
【0022】
上記第2の発明によれば、エンジン(41)の放熱器(45)の廃熱によってインバータ回路(71)を加熱するようにしたため、インバータ回路(71)を加熱するために別途加熱装置等を設けることなく、インバータ回路(71)の温度を所定温度以上まで加熱することができる。この結果、冷凍装置の製造コストの上昇を抑えつつ、インバータ回路(71)を所定温度以下の環境下で動作させることができる。
【0023】
上記第3の発明によれば、空気供給路(61)を設けたため、エンジン(41)の廃熱によって暖められた空気をインバータ回路(71)へ供給することができる。これにより、インバータ回路(71)を加熱するために別途加熱装置等を設けることなく、インバータ回路(71)の温度を所定温度以上まで加熱することができる。この結果、冷凍装置の製造コストの上昇を抑えつつ、インバータ回路(71)を所定温度以下の環境下で動作させることができる。
【0024】
上記第4の発明によれば、空気供給路(61)が空気調節機構(62)を設けたため、インバータ回路(71)へ供給する空気量を調節することができる。したがって、インバータ回路(71)の温度等に応じてエンジン(41)の廃熱で加熱された空気をインバータ回路(71)へ供給することができる。これにより、インバータ回路(71)を加熱するために別途加熱装置等を設けることなく、インバータ回路(71)の温度を所定温度以上まで加熱することができる。この結果、冷凍装置の製造コストの上昇を抑えつつ、インバータ回路(71)を所定温度以下の環境下で動作させることができる。
【0025】
上記第5の発明によれば、放熱器(45)の熱交換用流体によってインバータ回路(71)を加熱するようにしたため、エンジン(41)の廃熱を利用してインバータ回路(71)を加熱することができる。これにより、インバータ回路(71)を加熱するために別途加熱装置等を設けることなく、インバータ回路(71)の温度を所定温度以上まで加熱することができる。この結果、冷凍装置の製造コストの上昇を抑えつつ、インバータ回路(71)を所定温度以下の環境下で動作させることができる。
【0026】
上記第6の発明によれば、流体供給路(65)を設けたため、エンジン(41)の廃熱によって暖められた熱交換用流体が放熱器(45)を介してインバータ回路(71)を加熱することができる。これにより、インバータ回路(71)を加熱するために別途加熱装置等を設けることなく、インバータ回路(71)の温度を所定温度以上まで加熱することができる。この結果、冷凍装置の製造コストの上昇を抑えつつ、インバータ回路(71)を所定温度以下の環境下で動作させることができる。
【0027】
上記第7の発明によれば、流体供給路(65)が流体調節機構(66)を設けたため、インバータ回路(71)の温度に応じて放熱器(45)の熱交換流体をインバータ回路(71)へ供給することができる。これにより、インバータ回路(71)を加熱するために別途加熱装置等を設けることなく、インバータ回路(71)の温度を所定温度以上まで加熱することができる。この結果、冷凍装置の製造コストの上昇を抑えつつ、インバータ回路(71)を所定温度以下の環境下で動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施形態1及び2に係る冷凍車両を示す概略側面図である。
【図2】実施形態1及び2に係る冷媒回路を示す概略配管系統図である。
【図3】実施形態1及び2に係るトレーラ用冷凍装置の分解した状態を示す斜視図である。
【図4】実施形態1に係る庫外ケーシングを示す斜視図である。
【図5】実施形態1に係るトレーラに取り付けた状態のトレーラ用冷凍装置を示す斜視図である。
【図6】実施形態1に係るトレーラに取り付けた状態のトレーラ用冷凍装置を前方から視た正面図である。
【図7】図5のA−A断面図である。
【図8】実施形態1に係るトレーラ用冷凍装置の運転中の熱搬送機構の動作状態を示す模式図である。
【図9】実施形態1に係るトレーラに取り付けた状態のトレーラ用冷凍装置の内部の風の流れ方を示す斜視図である。
【図10】実施形態1に係るトレーラ用冷凍装置の起動時の熱搬送機構の動作状態を示す模式図である。
【図11】実施形態2に係る熱搬送機構を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0030】
〈発明の実施形態1〉
図1に示すように、本実施形態1のトレーラ用冷凍装置(20)は、冷凍食品や生鮮食品等を陸上輸送するための冷凍車両(10)に搭載されている。冷凍車両(10)は、冷凍食品等の貨物が貯蔵されるトレーラ(11)と、トレーラ(11)を牽引するトラクタ(12)とを有している。
【0031】
トレーラ(11)は、前後方向に縦長の直方体形状で、且つ前端が開放された箱状に形成されている。トレーラ(11)の内部には、庫内空間(13)が形成されており、この庫内空間(13)に冷凍食品や生鮮食品等が貯蔵される。図3に示すように、トレーラ(11)の前端には、矩形枠状の開放部(14)が形成されている。開放部(14)の前端面には、トレーラ用冷凍装置(20)を取り付けるための複数のネジ止め部(15,15,…)が形成されている。複数のネジ止め部(15,15,…)は、開放部(14)の4つの各辺において、例えば8箇所ずつ等間隔となるように配列されている。
【0032】
−トレーラ用冷凍装置の構成−
トレーラ用冷凍装置(20)は、冷凍車両(10)の庫内空間(13)の空気を冷却するための冷却装置を構成している。図2に示すように、トレーラ用冷凍装置(20)は、冷媒が充填される冷媒回路(21)を備えている。冷媒回路(21)には、圧縮機(22)と凝縮器(23)と膨張弁(24)と蒸発器(25)とが接続されている。冷媒回路(21)では、冷媒が循環することで蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。凝縮器(23)の近傍には、庫外ファン(26)が設けられている。凝縮器(23)では、庫外ファン(26)によって搬送される庫外(室外)空気と冷媒とが熱交換する。蒸発器(25)の近傍には、庫内ファン(27)が設けられている。蒸発器(25)では、庫内ファン(27)によって搬送される庫内空気と冷媒とが熱交換する。蒸発器(25)は、トレーラ(11)の庫内空間(13)の空気を冷却するための冷却部を構成している。
【0033】
図3〜図7に示すように、トレーラ用冷凍装置(20)は、トレーラ(11)の開放部(14)に取り付けられるケーシングユニット(31)を有している。ケーシングユニット(31)は、前面カバー(32)と庫外ケーシング(50)と庫内ケーシング(33)とを有している。
【0034】
〈前面カバー〉
前面カバー(32)は、庫外ケーシング(50)の前面に着脱自在に構成されている。前面カバー(32)は、幅方向(図3における左右方向)の中間部位が前方に膨出する弓形の板状部材で構成されている。前面カバー(32)は、幅方向両端の側辺部(32a,32a)が庫外ケーシング(50)に保持される。これにより、前面カバー(32)の背面と庫外ケーシング(50)の前面との間には、各種の構成機器(詳細は後述する)が収容される機器室(35,36)が形成される。
【0035】
また、前面カバー(32)には、1つの中央導入口(32b)と2つの側方導入口(32c,32c)が設けられている。中央導入口(32b)は、前面カバー(32)のほぼ中央に形成されている。側方導入口(32c,32c)は、前面カバー(32)の下側寄り且つ左右両端寄りにそれぞれ形成されている。
【0036】
〈庫外ケーシング〉
庫外ケーシング(50)は、トレーラ(11)の外側に設けられている。庫外ケーシング(50)は、アルミニウム材料で構成されている。庫外ケーシング(50)は、正方形板状のベース部(51)と、ベース部(51)の上方部位に形成される膨出部(52)とを有している(図3、図4、図7を参照)。
【0037】
ベース部(51)は、3つの分割体(51a,51b,51c)が上下方向に繋ぎ合わされることで構成されている。即ち、ベース部(51)は、下部寄りの下側ベース部(51a)と、上部寄りの上側ベース部(51b)と、下側ベース部(51a)と上側ベース部(51b)との間に位置する中間ベース部(51c)とによって構成されている。
【0038】
ベース部(51)の外縁部(53)には、ボルト(16)が挿通される複数のボルト穴(53a,53a,…)が形成されている。複数のボルト穴(53a,53a,…)は、ベース部(51)の外縁部(53)の4つの各辺において、例えば8箇所ずつ等間隔となるように配列されている。庫外ケーシング(50)は、ベース部(51)の外縁部(53)とトレーラ(11)の開放部(14)とを密着させた状態で、ボルト穴(53a)を貫通したボルト(16)をネジ止め部(15)に締結することで、トレーラ(11)に固定される。
【0039】
庫外ケーシング(50)をトレーラ(11)に固定した状態では、トレーラ(11)の開放部(14)が庫外ケーシング(50)によって閉塞される。つまり、庫外ケーシング(50)は、トレーラ(11)の開放部(14)の閉塞部材として機能する。また、庫外ケーシング(50)をトレーラ(11)に固定した状態では、トレーラ(11)の開放部(14)が庫外ケーシング(50)の外縁部(53)によって補強される。つまり、庫外ケーシング(50)は、トレーラ(11)の開放部(14)の補強部材としても機能する。
【0040】
膨出部(52)は、ベース部(51)と一体的なアルミニウム材料で構成され、ベース部(51)から前方に膨出している。膨出部(52)は、前後に扁平な直方体状で且つ後面側が開口する箱状に形成されている(図7を参照)。なお、膨出部(52)を例えば樹脂材料で構成し、ベース部(51)と一体的に連結するようにしても良い。
【0041】
庫外ケーシング(50)は、下側プレート(54)と上側プレート(55)とを備えている。下側プレート(54)は、ベース部(51)の下端寄りに設けられ、上側プレート(55)は、ベース部(51)の上下方向における中間部(下側プレート(54)と膨出部(52)との間)に設けられている。各プレート(54,55)は、弓形板状の支持板部(54a,55a)を有している。支持板部(54a,55a)は、前側が円弧状に形成され、後側はベース部(51)の前面に沿うように直線状に形成されている。各プレート(54,55)は、支持板部(54a,55a)の後端から上方に屈曲した曲げ部(54b,55b)を有している。曲げ部(54b,55b)は、左右方向に延びる板状に形成されている。各プレート(54,55)は、曲げ部(54b,55b)がベース部(51)にリベットによって締結されることで、ベース部(51)に固定される。また、上側プレート(55)の支持板部(55a)には、左右方向の中間部位に連通口(55c)が設けられている。
【0042】
上述した前面カバー(32)を庫外ケーシング(50)に取り付けた状態では、下側プレート(54)と上側プレート(55)との間に第1機械室(35)が区画される。また、上側プレート(55)の上方に第2機械室(36)が区画される。第1機械室(35)と第2機械室(36)とは、上側プレート(55)の連通口(55c)を介して互いに連通している。また、第1機械室(35)は、上述した2つの側方導入口(32c,32c)と連通し、第2機械室(36)は、上述した中央導入口(32b)と連通している。
【0043】
庫外ケーシング(50)は、2本の柱部(56)と2枚の鉛直プレート(57)とを備えている。
【0044】
上記柱部(56)は、下側プレート(54)と上側プレート(55)との間に介設されている。柱部(56)は、アルミニウム材料で構成され、上下に延びる角柱状に形成されている。
【0045】
上記鉛直プレート(57)は、上側プレート(55)と膨出部(52)との間に介設されている。鉛直プレート(57)は、アルミニウム材料で構成され、上下方向に長辺が形成された略長方形状の平板に形成されている。各鉛直プレート(57,57)には、その中心部に円形のファン開口部(57a)が形成されている。また、前面側から視て左側の鉛直プレート(57)には、後述するインバータ基板(71)へ空気を供給するための空気ダクト(61)が接続されるダクト開口部(57b)が形成されている。そして、各ファン開口部(57a,57a)には、それぞれに庫外ファン(26)が取り付けられている。庫外ファン(26)は、いわゆるプロペラファンで構成され、その回転軸が左右方向に延びている。庫外ファン(26)の回転軸には、圧縮機(22)寄りの端部にプロペラが連結され、逆側の端部にモータが連結している。つまり、2つの庫外ファン(26,26)は、2つの圧縮機(22)を挟むように、上側プレート(55)の左右両端寄りに配置されている。
【0046】
図5及び図6に示すように、上述した第1機械室(35)には、発電機(40)とエンジン(41)とバッテリー(42)と複数の電装品箱(43,44)とが設けられている。具体的に、第1機械室(35)には、下側プレート(54)における左右方向の中間位置に発電機(40)及びエンジン(41)が設置されている。エンジン(41)は発電機(40)を駆動するものであり、発電機(40)は上述した圧縮機(22)等を駆動するための電力を発生するものである。また、第1機械室(35)では、発電機(40)の左側の空間に第1の電装品箱(43)と、温度センサ(74)と、ダンパコントローラ(63)とが設けられ、エンジン(41)の右側の空間に第2の電装品箱(44)が設けられている。上記第1電装品箱(43)は、図8に示すように、その内部にトレーラ用冷凍装置(20)の回路基板(70)が収容されている。
【0047】
上記回路基板(70)は、回路部品が組み込まれたプリント基板であり、合成樹脂材料等で形成された薄板状に形成されている。この回路基板(70)の一面側には、トランスやコンデンサなどの各種電気部品(図示せず)が多数個実装されるとともに、導電路(図示せず)が敷設されている。また、この回路基板(70)の他面側には、発熱体であるインバータ素子からなるインバータ基板(71)が電気的に接続されている。尚、本実施形態1に係るインバータ基板(71)は、例示として、その動作温度を−20℃以上として設計されている。また、実施形態に係るインバータ基板(71)の「動作温度」は、本発明に係る「所定温度」を示す温度である。また、このインバータ基板(71)には、略直方体状の箱体に形成されたヒートシンク(72)が取り付けられている。このヒートシンク(72)は、第1電装品箱(43)の内部から該第1電装品箱(43)の前面部を貫通して前方に向かって突出している。このヒートシンク(72)は、金属材料によって形成されており、インバータ基板(71)で発生した熱を放熱することで、該インバータ基板(71)を冷却している。また、このヒートシンク(72)の近傍には、温度センサ(74)が設けられている。
【0048】
上記温度センサ(74)は、インバータ基板(71)の周辺温度を検知するものであって、本発明に係る温度検知器を構成している。温度センサ(74)は、第1機械室(35)内の第1電装品箱(43)の外部でヒートシンク(72)の近傍に設置されている。また、温度センサ(74)は、後述するダンパコントローラ(63)に接続されている。温度センサ(74)は、ヒートシンク(72)の近傍の温度を測定することでインバータ基板(71)の周辺温度を検知するようにしている。温度センサ(74)の温度データは、逐一、ダンパコントローラ(63)へ送られる。尚、温度センサ(74)は、インバータ基板(71)やインバータ素子(図示なし)と接触させて、それらの温度を直接測定するようにしてもよい。また、温度センサ(74)は、トレーラ用冷凍装置(20)の外気温度を検知するようにしてもよい。その他、本実施形態1には示していないが、冷凍サイクルの制御用として設置される外気温度センサ等の測定温度データ等を上記温度センサ(74)の検知温度データの代用として使用するようにしてもよい。
【0049】
第2機械室(36)には、2つの圧縮機(22)と凝縮器(23)とラジエタ(45)と2つの庫外ファン(26)と第3の電装品箱(46)と熱搬送機構(60)とが設けられている。
【0050】
具体的に、第2機械室(36)には、上側プレート(55)における左右方向の中間位置に2つの圧縮機(22)が設置されている。この圧縮機(22)は、上記インバータ基板(71)により回転数制御が為される容量可変の圧縮機(インバータ圧縮機)に構成されている。また、圧縮機(22)の前方には、ラジエタ(45)及び凝縮器(23)が配置されている。凝縮器(23)は、2枚の鉛直プレート(57)に跨るように配設されている。凝縮器(23)の前方には、前面カバー(32)の中央導入口(32b)が位置している。また、第2機械室(36)では、前方から視て右側上方寄りの空間に第3の電装品箱(46)が設けられている。
【0051】
上記ラジエタ(45)は、冷却水によってエンジンを放熱するためのものであって本発明に係る放熱器を構成している。ラジエタ(45)は、内部を冷却水が流通する伝熱管(図示なし)を有し、冷却管(45a)を介してエンジン(41)と接続されている。ラジエタ(45)は、凝縮器(23)の後方側に配置されている。
【0052】
上記熱搬送機構(60)は、空気ダクト(61)と、ダンパ(62)と、ダンパコントローラ(63)とで構成されている。尚、熱搬送機構(60)は、本発明に係る加熱機構を構成している。
【0053】
上記空気ダクト(61)は、第2機械室(36)内の空気を第1機械室(35)へ供給するためのものであって、本発明に係る空気供給路を構成している。空気ダクト(61)は、内部を空気が流通する管状に形成されている。また、空気ダクト(61)は、その一端が鉛直プレート(57)のダクト開口部(57b)に接続される一方、他端が、上側プレート(55)を貫通して第1機械室(35)の内部の第1電装品箱(43)の近傍まで延びている。この空気ダクト(61)は、その途中の位置にダンパ(62)が設けられている。ダンパ(62)は、開閉可能に構成され、空気ダクト(61)を流通する空気量を調節している。尚、このダンパ(62)は、本発明に係る空気調節機構を構成している。上記ダンパコントローラ(63)は、温度センサ(74)の検知温度データに基づいてダンパ(62)の開閉状態を制御するものである。ダンパコントローラ(63)は、ダンパ(62)及び温度センサ(74)に接続されている。ダンパコントローラ(63)は、温度センサ(74)から送られた検知温度が−20℃以上であるとダンパ(62)を閉状態にする一方、−20℃よりも低くなるとダンパ(62)を開状態にする。
【0054】
〈庫内ケーシング〉
図7に示すように、庫内ケーシング(33)は、トレーラ(11)の庫内空間(13)に臨むように、庫外ケーシング(50)の背面側に設けられている。庫内ケーシング(33)は、例えばFRP(ガラス繊維強化プラスチック)材料で構成されている。なお、庫内ケーシング(33)を、他の樹脂材料や金属材料等で構成することもできる。庫内ケーシング(33)は、庫外ケーシング(50)の背面に沿うような形状をしている。
【0055】
庫内ケーシング(33)の前面は、庫外ケーシング(50)の背面と所定の間隔が置かれており、庫内ケーシング(33)と庫外ケーシング(50)との間に断熱部材(34)が形成されている。断熱部材(34)は、庫外ケーシング(50)と庫内ケーシング(33)との間に密閉空間を形成した後、この密閉空間に発泡樹脂を充填することで、ケーシングユニット(31)に一体的に形成される。
【0056】
また、庫内ケーシング(33)の背面側には、仕切部材(37)が取り付けられている。仕切部材(37)は、庫内ケーシング(33)の背面、トレーラ(11)の上部内壁、及びトレーラ(11)の下部内壁のそれぞれと所定の距離を置くように配設されている。これにより、仕切部材(37)の下方に流入口(37a)が形成され、仕切部材(37)の上方に流出口(37b)が形成されている。また、庫内ケーシング(33)と仕切部材(37)との間には、流入口(37a)及び流出口(37b)に跨るように、内気流路(38)が形成されている。
【0057】
内気流路(38)には、上述した蒸発器(25)及び庫内ファン(27)が設けられている。蒸発器(25)は、膨出部(52)の背面側において、庫内ケーシング(33)と仕切部材(37)との間に跨るように配設されて庫内ケーシング(33)に支持されている。庫内ファン(27)は、蒸発器(25)の上方に設けられている。
【0058】
−運転動作−
次に、トレーラ用冷凍装置(20)の運転動作について、図7及び図9を参照しながら説明する。
【0059】
エンジン(41)によって発電機(40)が駆動されると、発電機(40)で電力が発生する。この電力は、圧縮機(22)、庫外ファン(26)、及び庫内ファン(27)に供給される。冷媒回路(21)では、圧縮機(22)が運転されることで冷凍サイクルが行われる。
【0060】
詳細には、圧縮機(22)で圧縮された冷媒は、凝縮器(23)を流れる。凝縮器(23)では、冷媒が庫外空気へ放熱して凝縮する。凝縮した冷媒は、膨張弁(24)を通過することで減圧され、減圧後の冷媒は蒸発器(25)を流れる。蒸発器(25)では、冷媒が庫内空気から吸熱して蒸発する。蒸発した冷媒は、圧縮機(22)で再び圧縮される。
【0061】
庫内ファン(27)が運転されると、庫内空間(13)の庫内空気が流入口(37a)より内気流路(38)に吸い込まれる。内気流路(38)に吸い込まれた空気は、上方へ流れて蒸発器(25)を通過する。蒸発器(25)では、庫内空気が冷媒と熱交換して冷却される。蒸発器(25)で冷却された庫内空気は、流出口(37b)より庫内空間(13)へ流出し、貨物等の冷蔵/冷凍に利用される。
【0062】
一方、庫外ファン(26)が運転されると、庫外(室外)空気が機械室(35.36)に吸い込まれる。詳細には、庫外空気は、前面カバー(32)の2つの側方導入口(32c,32c)と中央導入口(32b)に吸い込まれる。2つの側方導入口(32c,32c)のうち左側の側方導入口(32c)から第1機械室(35)に導入された空気は、第1電装品箱(43)の周囲を通過し、発電機(40)及びエンジン(41)の近傍へ送られる。また、2つの側方導入口(32c,32c)のうち右側の側方導入口(32c)から第1機械室(35)に導入された空気は、第2電装品箱(44)の周囲を通過し、エンジン(41)及び発電機(40)の近傍へ送られる。エンジン(41)及び発電機(40)の近傍を空気が流れると、エンジン(41)や発電機(40)が空気によって冷却される。エンジン(41)及び発電機(40)の冷却に利用された空気は、連通口(55c)内を上方に流れて第2機械室(36)へ送られる。
【0063】
また、中央導入口(32b)から第2機械室(36)に吸い込まれた空気は、凝縮器(23)を通過する。凝縮器(23)では、冷媒が庫外空気に放熱して凝縮する。凝縮器(23)を通過した空気は、ラジエタ(45)の周囲を流れてラジエタ(45)の冷却に利用され、連通口(55c)を通過した空気と合流する。
【0064】
第2機械室(36)で合流した後の空気は、2つの圧縮機(22,22)の周囲を流れるように、左右方向に分流する。左側に分流した空気は、前面カバー(32)内の上端開口を通過して庫外ケーシング(50)の外部へ放出される。右側に分流した空気は、第3電装品箱(46)を通過した後、前面カバー(32)内の上端開口を通過して庫外ケーシング(50)の外部へ放出される。
【0065】
〈インバータ基板の加熱動作〉
ここで、低外気温度環境下における本実施形態1に係るトレーラ用冷凍装置(20)のインバータ基板(71)の加熱運転について説明する。
【0066】
通常、トレーラ用冷凍装置(20)の運転中は、温度センサ(74)で検知されたインバータ基板(71)の周辺温度のデータが連続してダンパコントローラ(63)へ送られる。そして、温度センサ(74)で検知された温度が−20℃以上である場合、ダンパコントローラ(63)は、ダンパ(62)を閉状態にしている。ところが、冷凍車両(10)が、北欧等の低外気温度(本実施形態1では、−20℃より低い外気温度)の環境下で走行する場合には、インバータ基板(71)の周辺温度が−20℃より低くなることがある。
【0067】
具体的には、図10に示すように、トレーラ用冷凍装置(20)の起動時において、温度センサ(74)の検知温度が−20℃よりも低くなると、トレーラ用冷凍装置(20)は、庫外ファン(26)、エンジン(41)及び発電機(40)を駆動させる一方、ダンパコントローラ(63)は、ダンパ(62)を開状態にする。そして、側方導入口(32c,32c)から第1機械室(35)に導入された空気は、エンジン(41)の近傍を流れてエンジン(41)から吸熱する。第1機械室(35)の空気は、連通口(55c)から第2機械室(36)に導入される。第2機械室(36)に導入された空気の一部は、空気ダクト(61)へ流入する。第2機械室(36)内の空気は、エンジン(41)から吸熱しているため比較的暖かい温度に構成されている。そして、空気ダクト(61)を通過した空気は、第1機械室(35)へ導入される。第1機械室(35)では、空気ダクト(61)から流出した空気によって、第1電装品箱(43)のヒートシンク(72)が暖められる。この暖められたヒートシンク(72)を介してインバータ基板(71)が暖められる。そして、温度センサ(74)の検知温度が−20℃以上になると、トレーラ用冷凍装置(20)は冷凍運転を開始する。次に、トレーラ用冷凍装置(20)の運転中において、温度センサ(74)での検知温度が−20℃よりも低くなると、図8に示すように、ダンパコントローラ(63)は、ダンパ(62)を開状態にする。ダンパ(62)が開状態になると、第2機械室(36)の空気の一部が空気ダクト(61)へ流入する。第2機械室(36)内の空気は、凝縮器(23)で放熱された空気、及びラジエタ(45)で吸熱した空気が含まれているため、比較的暖かい温度に構成されている。そして、空気ダクト(61)を通過した空気は、第1機械室(35)へ導入される。第1機械室(35)では、空気ダクト(61)から流出された空気によって、第1電装品箱(43)のヒートシンク(72)が暖められる。この暖められたヒートシンク(72)を介してインバータ基板(71)が暖められる。そして、温度センサ(74)の検知温度が−20℃以上になると、ダンパコントローラ(63)はダンパ(62)を閉じる。尚、再び温度センサ(74)の検知温度が−20℃よりも低くなると、ダンパコントローラ(63)は再度ダンパ(62)を開ける。
【0068】
−実施形態1の効果−
本実施形態1によれば、温度センサ(74)と空気ダクト(61)とを設けたため、インバータ基板(71)の周辺温度が−20℃より低くなった場合に、エンジン(41)の廃熱を利用して加熱された空気によってインバータ基板(71)を暖めることができる。また、インバータ基板(71)にヒートシンク(72)を取り付けたため、ヒートシンク(72)を介してインバータ基板(71)を暖めることができる。空気ダクト(61)にダンパ(62)を設けたため、インバータ基板(71)の周辺温度に応じてエンジン(41)、又はラジエタ(45)で暖められた空気をインバータ基板(71)へ供給することができる。これらにより、インバータ基板(71)を加熱するために別途加熱装置等を設けることなく、インバータ基板(71)の温度を−20℃以上まで加熱することができる。この結果、トレーラ用冷凍装置(20)の製造コストの上昇を抑えつつ、インバータ基板(71)をその動作温度よりも低い温度環境下で動作させることができる。
【0069】
〈発明の実施形態2〉
本実施形態2に係るトレーラ用冷凍装置(20)では、図11に示すように、上記実施形態1に係る熱搬送機構(60)の構成が異なるものである。
【0070】
具体的には、本実施形態2に係る熱搬送機構(60)は、水配管(65)と、調節弁(66)と、調節弁コントローラ(67)とを備えている。
【0071】
上記水配管(65)は、管状に形成された配管に構成されている。この水配管(65)は、本発明に係る流体供給路を構成している。水配管(65)は、その基端及び終端がラジエタ(45)の冷却水の流入側に接続されている。つまり、水配管(65)へは、エンジン(41)から吸熱した比較的暖かい状態の冷却水が導入されることになる。また、水配管(65)は、その途中の部分が、第1機械室(35)の内部のインバータ基板(71)のヒートシンク(72)と接触している。上記調節弁(66)は、開閉可能な電動二方弁に構成され、水配管(65)を流れる冷却水の流量を調節している。この調節弁(66)は、本発明に係る流量調節機構を構成している。上記調節弁コントローラ(67)は、温度センサ(74)の検知温度に基づいて調節弁(66)の開閉状態を制御するものである。調節弁コントローラ(67)は、調節弁(66)及び温度センサ(74)に接続されている。調節弁コントローラ(67)は、温度センサ(74)から送られた検知温度データが−20℃以上であると、調節弁(66)を閉状態にする一方、−20℃よりも低くなると調節弁(66)を開状態にする。
【0072】
〈インバータ基板の加熱動作〉
ここで、低外気温度環境下における本実施形態2に係るトレーラ用冷凍装置(20)のインバータ基板(71)の加熱運転について説明する。
【0073】
通常、トレーラ用冷凍装置(20)の運転中は、温度センサ(74)で検知されたインバータ基板(71)の周辺温度のデータが連続して調節弁コントローラ(67)へ送られる。そして、温度センサ(74)で検知された温度が−20℃以上である場合、調節弁コントローラ(67)は、調節弁(66)を閉状態にしている。そして、トレーラ用冷凍装置(20)の起動時において、温度センサ(74)の検知温度が−20℃よりも低くなると、トレーラ用冷凍装置(20)は、庫外ファン(26)、エンジン(41)及び発電機(40)を駆動させる一方、調節弁コントローラ(67)は、調節弁(66)を開状態にする。ラジエタ(45)の冷却水は、その流出側から流出してエンジン(41)の近傍を流れ、エンジン(41)から吸熱し、再びラジエタ(45)の流入側へ戻ってくる。この際、調節弁(66)が開状態になっていると、ラジエタ(45)の流入側を流れる冷却水は、その一部が水配管(65)側へ分岐する。水配管(65)内を流れる冷却水は、その流れの途中でインバータ基板(71)のヒートシンク(72)との間で熱交換して該ヒートシンク(72)へ放熱する。その後、冷却水は水配管(65)を流れて再びラジエタ(45)の流入側へ戻ってくる。第1機械室(35)では、水配管(65)を流れる比較的暖まった状態の冷却水により、ヒートシンク(72)を介してインバータ基板(71)が暖められる。そして、トレーラ用冷凍装置(20)は、冷凍運転を開始する。次に、トレーラ用冷凍装置(20)の運転中において、温度センサ(74)の検知温度が−20℃よりも低くなると、調節弁コントローラ(67)は、調節弁(66)を開状態にする。調節弁(66)が開状態になっていると、ラジエタ(45)の流入側を流れる冷却水は、その一部が水配管(65)へ分岐する。水配管(65)内を流れる冷却水は、その流れの途中でインバータ基板(71)のヒートシンク(72)との間で熱交換して該ヒートシンク(72)へ放熱する。その後、冷却水は水配管(65)を流れて再びラジエタ(45)の流入側へ戻ってくる。第1機械室(35)では、水配管(65)を流れる比較的暖まった状態の冷却水により、ヒートシンク(72)を介してインバータ基板(71)が暖められる。
【0074】
−実施形態2の効果−
本実施形態2によれば、ラジエタ(45)の冷却水によってインバータ基板(71)を加熱するようにしたため、エンジン(41)の廃熱を吸収したラジエタ(45)の冷却水の廃熱を利用してインバータ基板(71)を加熱することができる。また、水配管(65)を設けたため、エンジン(41)の廃熱によって暖められた冷却水がヒートシンク(72)を介してインバータ基板(71)を加熱することができる。さらに、水配管(65)に調節弁(66)を設けたため、インバータ基板(71)の周辺温度に応じてラジエタ(45)の冷却水をインバータ基板(71)側へ供給することができる。これにより、インバータ基板(71)を加熱するために別途加熱装置等を設けることなく、インバータ基板(71)の温度を、その動作温度以上まで加熱することができる。この結果、トレーラ用冷凍装置(20)の製造コストの上昇を抑えつつ、インバータ基板(71)をその動作温度よりも低い温度環境下で動作させることができる。その他の構成・作用及び効果は実施形態1と同様である。
【0075】
〈その他の実施形態〉
本発明は、上記実施形態1及び2について、以下のような構成としてもよい。
【0076】
本実施形態1及び2のトレーラ用冷凍装置(20)は、発電機(40)を駆動させるエンジン(41)を有し、このエンジン(41)の廃熱を利用しているが、本発明は、例えば冷凍車両(10)の走行用のエンジンや、その他の用途のエンジンの廃熱を利用するようにしてもよい。また、本実施形態1及び2では、本発明を陸上トレーラ用の冷凍装置に適用したが、本発明は海上等で使用されるコンテナ冷凍装置等にも適用することができる。
【0077】
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上説明したように、本発明は、輸送用冷凍装置に関し、特に低外気温度下で使用されるものについて有用である。
【符号の説明】
【0079】
21 冷媒回路
40 発電機
41 エンジン
45 ラジエタ
60 熱搬送機構
61 空気ダクト
62 ダンパ
65 水配管
66 調節弁
71 インバータ基板
72 ヒートシンク
74 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(41)と、エンジン(41)の駆動によって発電する発電機(40)と、インバータ回路(71)とを有し、上記発電機(40)の発電によって駆動する冷媒回路(21)を備えた輸送用冷凍装置であって、
上記インバータ回路(71)の温度を検知する温度検知器(74)と、
該温度検知器(74)の検知温度が所定温度以下であると、上記エンジン(41)の廃熱によって上記インバータ回路(71)を加熱する加熱機構(60)とを備えている
ことを特徴とする輸送用冷凍装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記エンジン(41)は、該エンジン(41)を冷却する放熱器(45)を備え、
上記加熱機構(60)は、放熱器(45)の廃熱によってインバータ回路(71)を加熱するよう構成されている
ことを特徴とする輸送用冷凍装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記加熱機構(60)は、エンジン(41)の廃熱で加熱された空気をインバータ回路(71)へ供給する空気供給路(61)を備えている
ことを特徴とする輸送用冷凍装置。
【請求項4】
請求項3において、
上記空気供給路(61)は、温度検知器(74)の検知温度に基づいてインバータ回路(71)へ供給する空気量を調節する空気調節機構(62)を備えている
ことを特徴とする輸送用冷凍装置。
【請求項5】
請求項2において、
上記加熱機構(60)は、放熱器(45)の熱交換用流体によってインバータ回路(71)を加熱するよう構成されている
ことを特徴とする輸送用冷凍装置。
【請求項6】
請求項5において、
上記加熱機構(60)は、放熱器(45)の熱交換用流体をインバータ回路(71)の放熱部材(72)に導き、上記熱交換用流体と放熱部材(72)とを熱交換させる流体供給路(65)を備えている
ことを特徴とする輸送用冷凍装置。
【請求項7】
請求項6において、
上記流体供給路(65)は、温度検知器(74)の検知温度に基づいて流体供給路(65)を流れる熱交換用流体の流量を調節する流体調節機構(66)を備えている
ことを特徴とする輸送用冷凍装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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