説明

農作業機における運転室内の前照灯の配置構造

【課題】前面部をガラス等の透明板を配した運転室体で被覆した構成の運転室を走行車体の前部に配した農作業機において、前照灯を運転室体の内包部におけるハンドル台の上部に配置した乗用型農作業機において、操縦者への不要な直射光や反射光を遮り、室外前方の視界を前面透明板を通しても鮮明に把握する。
また、運転室体を備えない型式と運転室体を備える型式の2型式を設けた乗用型農作業機において、前記両型式の走行車体の共通化を前照灯も含め容易にする。
【解決手段】座席と操作装置を備えた操縦部を、少なくとも前面部をガラス等の透明板66aを配した運転室体60で被覆した構成の運転室を走行車体の前部に配した農作業機において、前照灯55を運転室体60の内包部におけるハンドル台29の上部に配置し、照明カバー56のカバー体57上部をひさし形状にして前記透明板66aに近接する位置まで延出し、且つ、カバー体57の下部が開口し両側が下垂する形状に構成して、前照灯55の前方に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業に使用する乗用管理機等、運転室を走行車体の前部に配した農作業機
における前照灯の配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用管理機等の農作業機においては、日射・風雨・粉塵・騒音等の環境より操縦
者を保護するため、座席と操作装置を備えた操縦部をガラス等の透明板を配した運転室体
で被覆する構造を用いているが、夜間作業に使用する前照灯は運転室の枠体に配置してい
るか、走行車体の先端部に配置しているのが一般的である。
【0003】
これ等の公知技術として
1)機体の中央部に位置する操縦部を運転室体で被覆しているが、運転室の照明関係につ
いては明示されておらず、前照灯としては、トラクタ等で一般的な走行車体の先端部に配
置している(例えば、特許文献1、2参照)。
2)固定した作業灯または変向装置を有する作業灯を運転室体上部の枠体部に設けてい
るが、前照灯については明示されておらず、前記と同様、トラクタ等で一般的な走行車体
の先端部に前照灯を配置していると推測される(例えば、特許文献3、4参照)。
等が従来技術としてある。
【0004】
【特許文献1】特開2004−115017号公報
【特許文献2】特開2001−39355号公報
【特許文献3】特開平5−4547号公報
【特許文献4】特開平5−155288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の従来技術1)においては、走行車体前部に運転室を配した乗用管理機等の小型の
農作業機では、走行車体の先端部に前照灯を配置するとその位置が低くなるため照射角度
が小さく圃場の畦や溝等の凹凸に対する照明としては影が多く生じ不適当な位置となり、
更に、運転室内の操作装置等を見分けるための薄光を別の手段で設ける必要がある。
また、2)においては、運転室体を備えない型式においてはこの作業灯を走行車体の何
れかの場所に設置することになり、運転室体を備えた型式との走行車体の前照灯を含めた
共通化を計ることができず、更に、前記と同様、運転室内の薄光を別の手段で設ける必要
がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための技
術的手段を説明する。
即ち、請求項1においては、座席と操作装置を備えた操縦部を、前面と左右側面をガラ
ス等の透明板を配した運転室体で被覆した構成の運転室を走行車体の前部に配した農作業
機において、前照灯55を運転室体60の内包部に配置する事を手段として用いた。
【0007】
また、請求項2においては、前照灯55をハンドル台29の上部に配置し、上部がひさ
し形状で運転室体60の前面透明板下66aに近接する位置まで延出し、下部が適宜開口
し両側が下垂する形状の照明カバー56を前照灯55の前方に設けることを手段として用
いた。
【0008】
また、請求項3においては、前照灯55の前部を運転室体60の前面透明板下66aに
近接した位置に配置する事を手段として用いた。
【発明の効果】
【0009】
本発明は以上のような構成にしたので、次のような効果が得られる。
即ち、請求項1記載のように、前照灯を運転室体の内包部に配置する事により、運転室
を備えない型式と前照灯が適当な高さの同じ位置となり走行車体の共通化が計られると共
に、畦や溝等の凹凸に対する影を少なくし、更に、前照灯の一部の光を利用して足元や室
内に種々ある操作装置を薄光で照らし操縦者は夫々を目で確認し正しく操作できる効果が
得られる。
【0010】
また、請求項2記載のように、前照灯をハンドル台の上部に配置し、上部がひさし形状
で運転室体の前面透明板下に近接する位置まで延出し、下部が適宜開口し両側が下垂する
形状の照明カバーを前照灯の前方に設けた事により、操縦者や室内の部材への不要な直射
光や反射光を遮り、操縦者は室外前方の視界を前面透明板を通しても鮮明に把握する効果
が得られると共に、前述請求項1記載と同じ効果が得られる。
【0011】
また、請求項3記載のように、前照灯の前部を運転室体の前面透明板下に近接した位置
に配置する事により、前面透明板下による運転室内への反射光が微少に押さえられ、操縦
者は室外前方の視界を前面透明板を通しても広く鮮明に把握する効果が得られると共に、
前述請求項1記載と同じ効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態を添付の図面を用いて説明する。
図1は本発明を織り込んだクローラ式乗用管理機の全体側面図、図2は同じくA矢視全体
図、図3は同じくB−B断面を施した全体平面図、図4はハンドル台に照明カバーを配し
た要部側面図、図5は同じく要部A矢視図、図6は同じく要部平面図、図7は別の実施例
の要部側面図である。
【0013】
まず、本発明を織り込んだクローラ式乗用管理機の運転室体を備えた型式の前照灯の配
置構造を図1、図2、図3を用いて説明する。
実施例の走行車体1の全体は、前後に延設する機枠体71L・71Rの左右に平行して
側面視三角状に掛け回されるクローラ部3L・3Rを配置し、このクローラ部3L・3R
より前方に延出する機枠体71L・71Rとその先端に設けた前ヒッチ72に後傾斜に配
置したステップ体77を固着し、該ステップ体77の前側端に沿って固着しクローラ部3
L・3Rの上方を通り後方上方に延出する後端を上部枠取付体76L・76Rを介して機
枠体71L・71Rに固着した平面視U字形状の上部枠8を配して機枠7を構成し、この
機枠7には後部に動力源を、その前方に動力伝達部を配置し、前部には座席50と動力伝
達部を操作する操作装置20を備えた操縦部5に運転室体60で被覆した運転室6を配置
し、更に、後端部には作業機4を装着する昇降装置40を備え構成したものである。
【0014】
本発明を織り込んだ運転室6の構成は、座席50と操作装置20を備えた操縦部5を全
面と左右側面をガラス等の透明板を配した運転室体60で被覆した構成である。
操縦部5の構成は、座席50の前方でステップ体77の上面前部に固着し上延するハン
ドル台29には、上端で操向ハンドル23を支持し、上部前面に前照灯55を装着し、一
側面にL字形のアクセルレバー26を配しハンドル台29の内部を通り所定の機能と連動
連結し、一方、座席50の左右には動力伝達を操作する操作装置20を、又、ステップ体
77には上面に突出する主クラッチペダル21とフートブレーキ22を配した構成で、運
転室体60を備えない型式の走行車体1と共通である。
【0015】
運転室体60の構造は、前部には垂直部と後傾部を有する一対の支柱前61L・61R
を、後部には垂直な支柱後62L・62Rを配置し、夫々の下部を前部連結体63と側部
連結体64L・64Rにより連結し、上端に日除けカバー69を配し、左右を上部枠8と
ほぼ同じ巾に配置し前後を操縦部を被覆する巾で枠を形成し、枠の前面に前面透明板下・
上66a・66bを配し、左側面は操縦者の昇降口で、外周にゴム帯67bを配した左側
透明板67を支柱後左62Lに固着する蝶番65・65に締結し開閉可能に配置し、右側
面には枠に沿って右側透明板68を締結固定し、また、支柱前61L・61Rの下端に取
付体前78L・78Rを固着し、支柱後62L・62Rの下部後面に取付体後79L・7
9Rを固着した構造である。
【0016】
この運転室体60を、運転室体60を備えない型式の走行車体1に前ヒッチ72の左右
側面に配した取付部に運転室体60の取付体前78L・78Rを締結固定する一方、上部
枠8に設けた運転室体60を備えない型式においては安全ガード84を装着するガード取
付体83L・83Rに運転室体60の取付体後79L・79Rを締結固定して装着し、更
に、ハンドル台29の上部に配置した前照灯55の前方に光束を規制する照明カバー56
を締結固定する事により、走行車体1の前部に配した前照灯55を備える操縦部5を前面
と左右側面を透明板で被覆した運転室6を構成している。
【0017】
なお、一例として図1、図3には照明カバー56を装着しない時の前面及び両側面の透
明板による操縦者への反射光を一点鎖線X及びYをもって示し、図1、図2には透明板の
内部に装着または固着する部分を細い実線をもって表わす。
【0018】
本発明を織り込んだ運転室6内の前照灯55の配置と照明カバー56の構造を、図4、
図5、図6を用いて詳細に説明する。
図4は、ハンドル台29の上部に配置する前照灯55に対し光束を規制する照明カバー
56をハンドル台29に締結固定した要部側面図を示し、図5はその要部A矢視図を、図
6は要部平面図を示す。
【0019】
即ち、照明カバー56は、カバー体57の内側に遮蔽板58固着した構造で、カバー体
57は上部がひさし形状で先端にゴム帯57bを配し前面透明板下66aに近接する位置
まで延出し、下部が開口し下垂する両側部の先端を適当に後退した形状をなし後端部にハ
ンドル台29に締結固定する座を有する正面視でアーチ形の形状であり、このカバー体5
7の下垂する両端部を内側で連結し下方への光束を規制する形状に切欠した遮蔽板58を
配した構造であり、これを前照灯55を囲む状態でハンドル台29に締結固定する。
尚、左右の照明範囲を広げるため、カバー体57上部のひさし形状部を扇状に広げた形
状の照明カバー56を図5、図6に併せて二点鎖線をもって表わす。
【0020】
図7は、別の実施例の要部側面図であり、ハンドル台29に配した前照灯55を前延す
る照明取付体59に移動し前照灯55を前面透明板下66aに近接配置した構造を示すも
ので、運転室体60を備えない型式も同様の位置に前照灯55を配置する事により、走行
車体1の共通化が保たれる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
これ等の効果を織り込むことにより、運転室体を備えた型式と運転室体を備えない型式
の走行車体の共通化が具現し、生産性の向上が計られ、又、市場で型式替えが容易に行な
える構造となりユーザの選定が容易となるので、機体前部に運転室を配置する走行車体の
前照灯の配置構造として採用する可能性が大である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を織り込んだクローラ式乗用管理機の全体側面図である。
【図2】同じくA矢視全体図である。
【図3】同じくB−B断面を施した全体平面図である。
【図4】本発明を織り込んだ要部側面図である。
【図5】同じく要部A矢視図である。
【図6】同じく要部平面図である。
【図7】別の実施例の要部側面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 走行車体
3 クローラ部
4 作業機
5 操縦部
6 運転室
7 機枠
8 上部枠
20 操作装置
24 変速レバー
27 PTOレバー
28 昇降レバー
40 昇降装置
56 照明カバー
A 図の投影方向を示す
B−B 図の断面位置と投影方向を示す
X・Y 操縦者への反射光X・Yを示す






【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席と操作装置を備えた操縦部を、前面と左右側面をガラス等の透明板を配した運転室
体で被覆した構成の運転室を走行車体の前部に配した農作業機において、前照灯55を運
転室体60の内包部に配置した事を特徴とする前照灯の配置構造。
【請求項2】
前照灯55をハンドル台29の上部に配置し、上部がひさし形状で運転室体60の前面
透明板下66aに近接する位置まで延出し、下部が適宜開口し両側が下垂する形状の照明
カバー56を、前照灯55の前方に設けた事を特徴とする請求項1記載の前照灯の配置構
造。
【請求項3】
前照灯55の前部を運転室体60の前面透明板下66aに近接した位置に配置した事を
特徴とする請求項1記載の前照灯の配置構造。























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−1527(P2006−1527A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−378395(P2004−378395)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【分割の表示】特願2004−179415(P2004−179415)の分割
【原出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000005164)セイレイ工業株式会社 (125)
【Fターム(参考)】