説明

農作物収穫処理システム

【課題】収穫機にて正確な収穫情報を計測できる農作物収穫処理システムを提供する。
【解決手段】収穫した籾の水分量や収量(収穫情報)を計測する水分センサ24および重量センサ25(計測手段)と、収穫情報を送る通信部(伝送手段)33とをコンバイン30に備えるとともに、伝送された収穫情報を受け取る送受信部(伝受手段)51と、受信した収穫情報に基いて農作物の品質の調整を指示する指示手段とを調整施設50に備え、搬送された農作物の収穫情報を再計測する計測部(再計測手段)54と、計測した確定収穫情報を送る送受信部(確定情報伝送手段)51とを調整施設50に備えるとともに、確定収穫情報を受け取る通信部(確定情報伝受手段)33と、通信部33にて受け取った確定収穫情報に基いて水分センサ24および重量センサ25の測定誤差を調節する調節部(調節手段)34とをコンバイン30備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場にて農作物を収穫するコンバインなどの収穫機と、その収穫機で収穫した農作物の品質を調整する乾燥施設などの調整施設とを備える農作物収穫処理システムであって、収穫機にて収穫した農作物の収穫情報を計測する計測手段と、その計測手段にて計測した収穫情報を送る伝送手段とを収穫機に備えるとともに、伝送手段にて伝送された収穫情報を受け取る伝受手段と、その伝受手段にて受信した収穫情報に基いて農作物の品質の調整を指示する指示手段とを調整施設に備える農作物収穫処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の農作物収穫処理システムは、収穫した農作物の収量および水分量(収穫情報)を計測する簡易的な計測手段(重量センサおよび水分センサ)を設けたコンバイン(収穫機)と、そのコンバインで収穫した農作物の品質を調整する乾燥施設(調整施設)とを備える。
コンバインにはさらに、計測手段にて計測した収穫情報を送る無線送信手段(伝送手段)を備える。
また、乾燥施設にはさらに、無線送信手段にて伝送された収穫情報を受け取る無線受信手段(伝受手段)と、その無線受信手段にて受信した収穫情報に基いて農作物の品質の調整を指示する指示手段とを備える(例えば特許文献1)。
【0003】
したがって、コンバインで収穫した農作物を計測手段にて測定し、その収穫情報を無線送信手段より衛星回線を介して乾燥施設の無線受信手段に送信するとともに、トラックにて収穫した農作物を乾燥施設へ搬送する。乾燥施設では、無線受信手段の受信した収穫情報に基いて指示手段が複数備えられている乾燥機から適当な乾燥機を指定する。到着したトラックはその指示に基いて所望の乾燥機に農作物を搬入する。
【特許文献1】特開平10−313638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような農作物収穫処理システムでは、コンバインに備える計測手段が簡易的であるため測定誤差が十分でないため、乾燥施設に主計測手段を備えなければならず、この主計測手段で測定した収穫情報(確定収穫情報)に基いて乾燥機を指定している。したがって、コンバインに備える計測手段で計測した収穫情報が有効に活用されていないという問題があった。
そこで本発明の目的は、収穫機にて正確な収穫情報を計測できる農作物収穫処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため請求項1に記載の発明は、圃場にて農作物を収穫する収穫機と、
該収穫機で収穫した前記農作物の品質を調整する調整施設とを備える農作物収穫処理システムであって、
前記収穫機にて収穫した前記農作物の収穫情報を計測する計測手段と、
該計測手段にて計測した前記収穫情報を送る伝送手段とを前記収穫機に備えるとともに、
前記伝送手段にて伝送された前記収穫情報を受け取る伝受手段と、
該伝受手段にて受信した前記収穫情報に基いて前記農作物の品質の調整を指示する指示手段とを前記調整施設に備える農作物収穫処理システムにおいて、
前記搬送された前記農作物の収穫情報を再計測する再計測手段と、
該再計測手段にて計測した確定収穫情報を送る確定情報伝送手段とを前記調整施設に備えるとともに、
前記確定情報伝送手段にて送られた前記確定収穫情報を受け取る確定情報伝受手段と、
該確定情報伝受手段にて受け取った前記確定収穫情報に基いて前記計測手段の測定誤差を調節する調節手段とを前記収穫機に備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の農作物収穫処理システムにおいて、前記収穫情報と前記確定収穫情報との差を判定する判定部を備え、前記収穫情報と前記確定収穫情報との差が一定値未満であるときは前記収穫情報に基いて指示手段が指示する一方、前記収穫情報と前記確定収穫情報との差が一定値以上であるときは前記確定収穫情報に基いて指示手段が指示することを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の農作物収穫処理システムにおいて、前記収穫機より搬出された前記農作物を前記調整施設に搬送するための搬送手段を備え、該搬送手段に前記収穫情報および前記確定収穫情報を送受信する送受信部を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の農作物収穫処理システムにおいて、前記伝送手段と前記伝受手段、および前記確定情報伝送手段と前記確定情報伝受手段とはそれぞれ衛星回線による通信を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、圃場にて農作物を収穫する収穫機と、その収穫機で収穫した農作物の品質を調整する調整施設とを備える農作物収穫処理システムであって、収穫機にて収穫した農作物の収穫情報を計測する計測手段と、その計測手段にて計測した収穫情報を送る伝送手段とを収穫機に備えるとともに、伝送手段にて伝送された収穫情報を受け取る伝受手段と、その伝受手段にて受信した収穫情報に基いて農作物の品質の調整を指示する指示手段とを調整施設に備える農作物収穫処理システムにおいて、搬送された農作物の収穫情報を再計測する再計測手段と、その再計測手段にて計測した確定収穫情報を送る確定情報伝送手段とを調整施設に備えるとともに、確定情報伝送手段にて送られた確定収穫情報を受け取る確定情報伝受手段と、その確定情報伝受手段にて受け取った確定収穫情報に基いて計測手段の測定誤差を調節する調節手段とを収穫機に備えるので、収穫情報と確定収穫情報とに基いて計測手段の測定誤差を調節して正確な収穫情報を伝受手段に送り、指示手段が搬入する乾燥機を適切に指示することができる。すなわち、収穫機にて正確な収穫情報を計測できる農作物収穫処理システムを提供することができる。これによって、収穫機に備える計測手段で計測した収穫情報を有効に活用することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、収穫情報と確定収穫情報との差を判定する判定部を備え、収穫情報と確定収穫情報との差が一定値未満であるときは収穫情報に基いて指示手段が指示する一方、収穫情報と確定収穫情報との差が一定値以上であるときは確定収穫情報に基いて指示手段が指示するので、指示手段が搬入する乾燥機を精度よく適切に指示することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、収穫機より搬出された農作物を調整施設に搬送するための搬送手段を備え、その搬送手段に収穫情報および確定収穫情報を送受信する送受信部を備えるので、搬送手段にて農作物とともに収穫情報を乾燥施設に搬入することができ、収穫情報を正確に乾燥施設に伝達することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、伝送手段と伝受手段、および確定情報伝送手段と確定情報伝受手段とはそれぞれ衛星回線による通信を行うので、収穫情報および確定収穫情報を記憶する媒体を別途必要とすることがなく、簡単な構成で収穫情報および確定収穫情報を伝送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1はこの発明の農作物収穫処理システムの一例を示す概略構成図、図2は図1の農作物収穫処理システムを構成する収穫機としてのコンバインの側面図、図3は図2のコンバインの構成図、図4は図2のコンバインの制御ブロック図である。この例では、コンバインで籾を収穫する場合の農業情報管理システムについて説明する。
【0014】
コンバイン(収穫機)30には、刈取部7、脱穀部4、籾と藁を選別する選別部、籾を貯蔵するグレンタンク15、一定量収穫後グレンタンク15から籾を排出する排出オーガ17などの他、籾の水分値を計測する水分センサ(計測手段)24、グレンタンク15に貯蔵された籾の排出質量を計量する重量センサ(計測手段)25、発呼手段と選択手段と確定手段などを備えた入力装置27、後述するトラック40との間で各種の情報を送受信する通信部(伝送手段および確定情報伝受手段)33、調節部(調節手段)34、コンバイン制御部31、表示・印刷装置28などを備える。
【0015】
乾燥施設(調整施設)50は、後述するトラック40との間で各種の情報を送受信する送受信部(伝受手段および確定情報伝送手段)51、コンバイン30にて収穫した籾の収量および水分量(確定収穫情報)を測定する計測部(再計測手段)54、計測部54にて計測した籾の重量および水分量によって異なる乾燥条件にて乾燥させる乾燥機52,53、計測部54にて計測した確定収穫情報に基いていずれの乾燥機52,53に農作物を投入するかを指示する制御部(指示手段)55などを備える。
【0016】
トラック(搬送手段)40は、タンク41、送受信部42、記憶部43を備える。送受信部42は、コンバイン30の通信部33および乾燥施設50の送受信部51との間で各種の情報を送受信するためのものである。また、記憶部43は、送受信部42が送受信する各種の情報を記憶保持するためのものである。
【0017】
次にコンバイン30の詳細な構成について図2〜図4を用いて詳述する。
図2、図3において、符号1は左右一対の走行クローラ2を装設する左右一対のトラックフレーム、符号3は前記左右トラックフレーム1に架設する機台、符号4はフィードチェーン5を左側に張架し扱胴6及び処理胴を内蔵している脱穀機である脱穀部、符号7は引起機構8及び刈刃9及び穀稈搬送機構10などを備える刈取部、符号13は排藁チェン終端を臨ませる排藁処理部、符号15は脱穀部4からの穀粒を揚穀筒を介して搬入するグレンタンク、符号17は前記タンク15の穀粒を機外に搬出する排出オーガ、符号19は運転操作ハンドル、符号20は運転席、符号21は運転席20下方に設けるエンジンであり、これらによりコンバイン30が連続的に穀稈を刈取って脱穀するように構成されている。
【0018】
機台3の後部にはグレンタンク15内の穀粒を外部へ排出するための排出オーガ17の縦オーガ23が立設されており、縦オーガ23を中心としてグレンタンク15が左右回動可能に設けられて、グレンタンク15の前部側を外方に回転させて開放可能に構成されている。グレンタンク15の内側上部には、籾の水分を計測する水分センサ24が配設され、収穫した籾の水分量を計測可能となっている。水分センサ24は機体の任意位置に配置したコンバイン制御部31(図4参照)と接続され、水分センサ24による検出値がコンバイン制御部31に伝達されるように構成されている。
【0019】
また、グレンタンク15と機台3との間には穀物重量を計測する重量センサ25が配設され、収穫した籾の重量を計測可能となっている。本実施例ではロードセルを使用して重量センサ25を構成しており、重量センサ25がコンバイン制御部31に接続されて、重量センサ25による検出値がコンバイン制御部31に伝達されるように構成されている。
【0020】
そして、水分センサ24により計測された検出値を用いて算出される最高水分値・最低水分値・平均水分値や、重量センサ25により計測されたグレンタンク15内の籾の総重量等の生産情報が、コンバイン30の運転席20近傍に配置した表示・印刷装置28により視認できるようになっている。なお、コンバイン制御部31に接続した通信部33より各種情報を、衛星Sを介して乾燥施設50の送受信部51との間で送受信するようになっている。
【0021】
すなわち、図4に示すように、コンバイン制御部31に水分センサ24、重量センサ25、運転席20近傍に設けた作業スイッチ26とキーボードやタッチパネル等の入力装置27、ディスプレイとプリンタを合わせた表示・印刷装置28、調節部34、通信部33、情報保持手段35などが接続される。作業スイッチ26は水分センサ24と重量センサ25を作動させるためのものであり、水分センサ24と重量センサ25は作業スイッチ26がONされた状態で、後述するオーガクラッチがONされると作動するようになっている。なお、ディスプレイとプリンタを合わせた表示・印刷装置28および調節部34は運転席20より操作可能な位置に設けるものとする。
【0022】
表示・印刷装置28には、例えば図5(a)に示すように、重量センサ25により検出した穀物重量に基づいて算出される穀物排出質量や水分センサ24の水分量をディスプレイ表示することができる。また、図5(b)に示すように、穀粒の重量を、水分センサ24により検出した穀粒の水分量に基づいて、規定水分量における穀粒の重量に修正して、修正重量を収穫量(収量)とするようにして、複数の圃場における総質量(総重量)、収量、複数の圃場における水分量の平均値、最高水分値、最低水分値をディスプレイ表示することもできる。さらに、例えば図5(c)に示すように、収穫作業の日時、圃場、刈取面積、品種、重量センサ25により検出した穀物重量、水分センサ24に基づき算出される平均水分等を記録紙に印刷して、確認できるようになっている。
なお、コンバイン制御部31にGPS受信・位置検出手段を接続して、人工衛星からの電波を受信してコンバイン30の地図上での現在位置を正確に検出するように構成してもよい。
【0023】
調節部(調節手段)34は、乾燥施設50より送信されてきた収量や水分量(確定収穫情報)に基いて水分センサ24および重量センサ25の測定誤差を調節するためのものである。詳しくは、表示・印刷装置28のディスプレイ上に水分センサ24,重量センサ25などの測定手段を特定するための特定ボタン、特定した測定手段の設定の変更を開始するための変更開始ボタン、設定終了後に変更を確定する変更確定ボタンなどを有する。
【0024】
次に、上記農作物収穫処理システムで、籾を収穫する操作の手順について図1〜5を参照しつつ、図6〜10を用いて説明する。なお、図6はオーガコントローラの平面図、図7は籾を収穫する際に作業者が行う操作手順のフローチャート、図8はグレンタンク内の籾の重量と時間との関係を示した図、図9および10は、籾を排出する際の排出オーガの動作を説明するためのフローチャートである。
まず、コンバイン30に備える入力装置27にある発呼ボタン(発呼手段)を押下して圃場情報を発呼して、表示・印刷装置28に表示する(S1)。詳しくは、コンバイン30に備える不図示の記憶手段に予め記憶されている複数の圃場情報を表示・印刷装置28に呼び出して表示する。
【0025】
この圃場情報には、各圃場の名称、番地、生産者、面積などが含まれている。そして表示・印刷装置28を参照しながら、所望の圃場(ここでは圃場F1)を入力装置27にある選択ボタン(選択手段)で選択する(S2)。すると、選択した圃場情報が情報保持手段35に記憶保持される。
次に、コンバイン30を選択した圃場に搬入して、収穫作業を開始する前に入力装置27にある確定ボタン(確定手段)を押下する(S3:図8にて時刻t1)。すると、確定情報が情報保持手段35に記憶保持される。ここで確定情報は圃場F1における作業開始年月日、時刻を含む。そしてコンバイン30にて収穫作業を開始する(S4:図8にて時刻t2)。
【0026】
S5にて、同一圃場(ここでは圃場F1)の収穫作業が終了したかを判定する。同一圃場F1の収穫作業が終了したときは、S8に進む。同一圃場F1の収穫作業が終了していないときはS6に進み、グレンタンク15が満タンになったかを判定する。グレンタンク15が満タンになっていないときは収穫作業を継続する。グレンタンク15が満タンになったときは、収穫作業を停止して(時刻t3)、S7にて排出オーガ17が籾を排出する。なお、グレンタンク15内の籾の貯蔵量の表示は表示・印刷装置28にて行う。
【0027】
詳しくは図9,10に示すフローによって、オーガコントローラ150を操作してグレンタンク15内の籾を排出オーガ17で排出する。すなわち、オーガコントローラ150の自動旋回スイッチ153から入力される操作信号に基づいて自動旋回スイッチ153がオンとなったか否かを判断する(S11)。自動旋回スイッチ153がオフの状態であると判断した場合(S11:NO)、自動旋回スイッチ153がオンとなるまで待機する。
【0028】
自動旋回スイッチ153がオンとなったと判断した場合(S11:YES)、コンバイン制御部31は、オーガ昇降シリンダを伸長させ、排出オーガ17を載置していたオーガレストより排出オーガ17の上昇移動を開始させる。次いで、コンバイン制御部31は、オーガレストに備えるオーガレストスイッチがオフとなったか否かを判断する(S12)。オーガレストスイッチがオンの状態であると判断した場合(S12:NO)、すなわち、依然として排出オーガ17が収納位置に存すると判断した場合、コンバイン制御部31は、オーガレストスイッチがオフとなるまで待機する。
オーガレストスイッチがオフとなったと判断した場合(S12:YES)、コンバイン制御部31は、その時点からt秒前(例えば、2秒前)の計測値(移動平均)を作業前重量として保持する(S13)。
【0029】
次いで、コンバイン制御部31は、排出オーガ17が所定の高さに達するようにオーガ昇降シリンダを伸長させた後、オーガ旋回モータを駆動して、オーガコントローラ150により指定された作業位置へ排出オーガ17を旋回移動させる(S14)。排出オーガ17が指定された作業位置へ到達した時点でコンバイン制御部31はオーガ旋回モータを停止させ、オーガ昇降シリンダを短縮させて排出オーガ17を所定位置まで下降させる。
【0030】
次いで、コンバイン制御部31は、オーガクラッチスイッチ155から出力される操作信号に基づいてオーガクラッチスイッチ155がオンになったか否かを判断する(S15)。オーガクラッチスイッチ155がオンになっていないと判断した場合(S15:NO)、コンバイン制御部31は復帰スイッチ152から出力される操作信号に基づいて復帰スイッチ152がオンになったか否かを判断する(S16)。復帰スイッチ152がオンとなっていないと判断した場合(S16:NO)、コンバイン制御部31は処理をS15へ戻す。また、オーガクラッチスイッチ155がオフのままで復帰スイッチ152がオンになったと判断した場合(S16:YES)、すなわち、排出作業の実行指示がなされる前に排出オーガ17を収納位置へ戻すことが指示された場合、コンバイン制御部31は、オーガ旋回モータを制御して排出オーガ17を収納位置へ旋回移動させ(S17)、処理をS11へ戻す。
【0031】
また、S15において、オーガクラッチスイッチ155がオンとなったと判断した場合(S15:YES)、コンバイン制御部31は、オーガクラッチ125を作動させてトラック40のタンク41へ排出作業を実行する(時刻t4:S18)。
なお、2つのタンク41のうち排出するタンク41は、排出作業を開始する際に水分センサ24で測定した水分量に応じて選定するものとする。
排出オーガ17には不図示の赤外線センサ(非接触式センサ)を備え、その赤外線センサによって2つのタンク41を区別することができるものとする。
この間、コンバイン制御部31はオーガクラッチスイッチ155から出力される操作信号に基づいてオーガクラッチスイッチ155がオフとなったか否かを判断しており(S19)、オーガクラッチスイッチ155がオフとなっていないと判断した場合(S19:NO)、処理をS18へ戻し、排出作業を続行する。
【0032】
一方、オーガクラッチスイッチ155がオフとなったと判断した場合(S19:YES)、コンバイン制御部31はオーガクラッチ155を遮断して排出作業を終了する(時刻t5:S20)。そして、コンバイン制御部31は復帰スイッチ152からの操作信号を検出することにより、復帰スイッチ152がオンとなったか否かを判断する(S21)。復帰スイッチ152がオンとなっていないと判断した場合には(S21:NO)、コンバイン制御部31は復帰スイッチ152がオンとなるまで待機する。オーガコントローラ150の復帰スイッチ152が押下操作され、復帰スイッチ152がオンとなったと判断した場合(S21:YES)、コンバイン制御部31は、オーガ昇降シリンダ及びオーガ旋回モータを制御することにより、排出オーガ17を収納位置へ旋回移動させる(S22)。
【0033】
次いで、排出オーガ17がオーガレストに収納されたか否かを判断するために、コンバイン制御部31はオーガレストスイッチがオンとなったか否かを判断する(S23)。オーガレストスイッチがオンとなっていないと判断した場合(S23:NO)、コンバイン制御部31はオーガレストスイッチがオンとなるまで待機する。オーガレストスイッチがオンとなったと判断した場合(S23:YES)、コンバイン制御部31は内蔵タイマにより計時を開始し、所定時間tが経過したか否かの判断を行う(S24)。所定時間tが経過していないと判断した場合(S24:NO)、コンバイン制御部31は所定時間tが経過するまで待機し、オーガレストスイッチがオンとなってから所定時間tが経過したと判断した場合(S24:YES)、コンバイン制御部31は取込んだ計測値(移動平均)を作業後重量としてコンバインに備えるRAMなどの情報保持手段35に記憶保持する(S25)。
【0034】
次いで、コンバイン制御部31は、S13にて保持した作業前重量とS25にて保持した作業後重量との差分をとることにより穀粒の排出重量W1を算出し(S26)、算出した排出重量W1のデータを表示・印刷装置28に表示する(S27)とともに、情報保持手段34に保持する。
【0035】
そして、S4(図7)に戻り、時刻t6にて同一の圃場F1での収穫作業を再開し、時刻t7においてグレンタンク15が満タンになったとき(S6)、上述と同様の方法により籾の排出を開始し(S7:時刻t8)、時刻t9にて排出が終了(排出量W2)したら、S4に戻り、時刻t10にて再び、同一の圃場F1での収穫作業を再開する。
そして、時刻t11にて圃場F1すべての収穫作業が終了したら、S8に進み、排出オーガ17を操作して、時刻t4にて排出したタンク41に排出作業を開始し(時刻t12)、時刻t13にて排出を終了(排出量W3)する。なお、排出オーガ17の操作方法は、S7にて説明した方法と同様であるので説明を省略する。
【0036】
排出終了後、S9にて、入力装置27の確定ボタンを押下する。すると、作業終了年月日、時刻を含む確定情報とともに情報保持手段35に保持された籾の総質量(W1+W2+W3)、収量、水分量などの収穫情報が通信部33を介してトラック40の送受信部42に送信され、記憶部43に記憶される。同時に、これらの情報を表示・印刷装置28に表示し、印刷する(図5)。
引き続き別の圃場F2の収穫を行うときは、図7にて説明した手順によって収穫作業を行う。なお、コンバイン30よりトラック40のタンク41への籾の排出は、前述のように、水分センサ24で計測した籾の水分量に応じてタンク41を選定する。
【0037】
タンク41が満タンになったら、トラック40に備える不図示の確定ボタンを押下して、タンク41に収容した籾の累積収穫情報を記憶部43に記憶する。この際、トラック40の固有情報(例えば、トラックのNo,タンク41の容量など)を伴って記憶される。そして、トラック40は乾燥施設50へ籾を搬送し、乾燥施設50に到着すると、記憶部43に記憶した収穫情報を送受信部42より乾燥施設50の送受信部51に送信する。また、搬送された圃場F1で収穫された籾は、計測部54にて水分量、収量などを改めて計測される。この計測部54は水分センサ24,重量センサ25に比べて測定誤差が高いものであり、計測部54にて計測した水分量、収量などを確定収穫情報として、制御部55に送られる。
【0038】
そして、図11に示すように、この確定収穫情報と送受信部42より送られてきた収穫情報と比較する(S31)。制御部55に備える判定部では、収穫情報と確定収穫情報との差が一定値以上であるかを判定する(S32)。収穫情報と確定収穫情報との差が一定値未満であるときは、S33に進み、コンバイン30で計測した収穫情報に基いて制御部55が乾燥機52,53のいずれに籾を投入するかをトラック40に指示し、その指示に基いて籾を投入し、乾燥作業を開始する(S34)。
一方、収穫情報と確定収穫情報との差が一定値以上であるときは、S35に進み、制御部55は確定収穫情報に基いて乾燥機52,53のいずれに籾を投入するかをトラック40に指示する。トラック40はその指示に基いて籾を乾燥機に投入し、乾燥作業を開始する(S34)。
【0039】
なお、制御部55は確定収穫情報に基いて籾の乾燥作業を行うとき(S35)は、送受信部51を介して送受信部42にその旨を確定収穫情報を伴ってメッセージとして送信する。
このメッセージは記憶部43に記憶された後、トラック40がコンバイン30の作業する圃場に戻り、送受信部42を介してコンバイン30の通信部33に送信される。そして、コンバイン30の表示・印刷装置28のディスプレイ28aにメッセージが表示される(図12、図13:S41)。ここでは、確定収穫情報に含まれる籾の重量と、収穫情報に含まれる籾の重量との差が+50kgであったと仮定する。
なお、入力装置27は、発呼手段27a、選択手段27b、確定手段27cなどを備える。
【0040】
次に、重量センサの精度調整を行う方法について図14を用いて説明する。
選択手段27bを適宜回数だけ押下して精度調整画面を表示する(図14(a))。そして、重量センサボタン51に触れて選択し、重量センサの設定画面にて、マイナスボタン53B(またはプラスボタン53A)に触れてインジケータ56に重量センサ25の測定誤差である「+50kg」を調整するべく「−50kg」と表示する(図14(b))。そして、確定ボタン55に触れて重量センサ25の精度調整を完了する(図13:S42)。
【0041】
ところで、この例では、収穫情報と確定収穫情報との差が一定値以上であるときに送乾燥施設50よりをコンバイン30に確定収穫情報を送信するが、収穫情報と確定収穫情報との差にかかわらず、乾燥機52,53のいずれに収穫した籾を投入したか、乾燥施設50への籾の受け入れ日時などの受入情報を送信するようになっている。したがって、受入情報は精度誤差のいかんにかかわらず、表示・印刷装置28にて表示したり、印刷したりすることができるようになっている。
【0042】
このように、本発明の農作物収穫処理システムは、圃場にて籾(農作物)を収穫するコンバイン(収穫機)30と、そのコンバイン30で収穫した籾の品質を調整する乾燥施設(調整施設)50とを備える農作物収穫処理システムであって、コンバイン30にて収穫した籾の水分量や収量などの収穫情報を計測する水分センサ24および重量センサ25などの計測手段と、その計測手段にて計測した収穫情報を送る通信部(伝送手段)33とをコンバイン30に備えるとともに、通信部33にて伝送された収穫情報を受け取る送受信部(伝受手段)51と、その送受信部51にて受信した収穫情報に基いて農作物の品質の調整を指示する制御部(指示手段)55とを乾燥施設50に備える農作物収穫処理システムにおいて、搬送された農作物の収穫情報を再計測する計測部(再計測手段)54と、その計測部54にて計測した確定収穫情報を送る送受信部(確定情報伝送手段)51とを乾燥施設50に備えるとともに、確定情報伝送手段にて送られた確定収穫情報を受け取る通信部(確定情報伝受手段)33と、その通信部33にて受け取った水分量や収量などの確定収穫情報に基いて水分センサ24および重量センサ25などの計測手段の測定誤差を調節する調節部(調節手段)34とをコンバイン30備える。
【0043】
また、コンバイン30にて計測した水分量や収量などの収穫情報と、乾燥施設50にて計測した水分量や収量などの確定収穫情報との差を判定する制御部(判定部)55を備え、収穫情報と確定収穫情報との差が一定値未満であるときは収穫情報に基いて制御部(指示手段)55が指示する一方、収穫情報と確定収穫情報との差が一定値以上であるときは確定収穫情報に基いて制御部55が指示する。
【0044】
なお、収穫情報と確定収穫情報との差が一定値以上であるときに送乾燥施設50よりをコンバイン30に確定収穫情報を送信するように構成したが、収穫情報と確定収穫情報との差のいかんにかかわらず、送乾燥施設50よりをコンバイン30に確定収穫情報を送信するようにし、コンバイン30の表示・印刷装置28にて表示することができるように構成してもよい。
【0045】
また、図15に示すように、コンバイン30、トラック40、乾燥施設50はそれぞれ衛星Sを介して各種情報を通信するように構成してもよい。
なお、農作物は籾に限定されるものではなく、大麦、小麦などであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明の農作物収穫処理システムの一例を示す概略構成図である。
【図2】図1に用いる収穫機としてのコンバインの側面図である。
【図3】図2のコンバインの構成図である。
【図4】図2のコンバインの制御ブロック図である。
【図5】(a),(b)は図2のコンバインに備える表示・印刷装置に収穫情報が表示された図、(c)は図2のコンバインに備える表示・印刷装置に収穫情報が出力された図である。
【図6】図2のコンバインに備えるオーガコントローラの平面図である。
【図7】圃場での収穫作業手順を説明するためのフローチャートである。
【図8】収穫作業を行っているときのグレンタンク内の重量と時間の関係を表した図である。
【図9】排出オーガにてグレンタンク内の籾を排出する方法を説明するフローチャートである。
【図10】図9のフローチャートの続きを示す図である。
【図11】乾燥施設に搬入された籾を乾燥機に投入する際の制御部の判定手順を説明するためのフローチャートである。
【図12】コンバインに備える印刷・表示装置のディスプレイに表示された警告画面である。
【図13】コンバインで重量センサの精度調整を行うフローチャートである。
【図14】(a)はディスプレイに表示された精度調整画面、(b)は重量センサの設定画面である。
【図15】この発明の農作物収穫処理システムの別の例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0047】
1 トラックフレーム
2 走行クローラ
3 機台
4 脱穀部
5 フィードチェーン
6 扱胴
7 刈取部
8 引起機構
9 刈刃
10 穀稈搬送機構
13 排藁処理部
15 グレンタンク
17 排出オーガ
19 運転操作ハンドル
20 運転席
21 エンジン
23 縦オーガ
24 水分センサ(計測手段)
25 重量センサ(計測手段)
26 作業スイッチ
27 入力装置(発呼手段、選択手段、確定手段)
28 印刷・表示装置
28a ディスプレイ
30 コンバイン(収穫機)
31 コンバイン制御部
33 通信部(伝送手段および確定情報伝受手段)
34 調節部(調節手段)
40 トラック(搬送手段)
41 タンク
42 送受信部
43 記憶部
50 乾燥施設(調整施設)
51 送受信部(伝受手段および確定情報伝送手段)
52,53 乾燥機
54 計測部(再計測手段)
55 制御部(指示手段、判定部)
61 重量センサボタン
62 水分センサボタン
63A プラスボタン
63B マイナスボタン
66 ディスプレイ
67 確定ボタン
S 衛星

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場にて農作物を収穫する収穫機と、
該収穫機で収穫した前記農作物の品質を調整する調整施設とを備える農作物収穫処理システムであって、
前記収穫機にて収穫した前記農作物の収穫情報を計測する計測手段と、
該計測手段にて計測した前記収穫情報を送る伝送手段とを前記収穫機に備えるとともに、
前記伝送手段にて伝送された前記収穫情報を受け取る伝受手段と、
該伝受手段にて受信した前記収穫情報に基いて前記農作物の品質の調整を指示する指示手段とを前記調整施設に備える農作物収穫処理システムにおいて、
前記搬送された前記農作物の収穫情報を再計測する再計測手段と、
該再計測手段にて計測した確定収穫情報を送る確定情報伝送手段とを前記調整施設に備えるとともに、
前記確定情報伝送手段にて送られた前記確定収穫情報を受け取る確定情報伝受手段と、
該確定情報伝受手段にて受け取った前記確定収穫情報に基いて前記計測手段の測定誤差を調節する調節手段とを前記収穫機に備えることを特徴とする、農作物収穫処理システム。
【請求項2】
前記収穫情報と前記確定収穫情報との差を判定する判定部を備え、前記収穫情報と前記確定収穫情報との差が一定値未満であるときは前記収穫情報に基いて指示手段が指示する一方、前記収穫情報と前記確定収穫情報との差が一定値以上であるときは前記確定収穫情報に基いて指示手段が指示することを特徴とする、請求項1に記載の農作物収穫処理システム。
【請求項3】
前記収穫機より搬出された前記農作物を前記調整施設に搬送するための搬送手段を備え、該搬送手段に前記収穫情報および前記確定収穫情報を送受信する送受信部を備えることを特徴とする、請求項1に記載の農作物収穫処理システム。
【請求項4】
前記伝送手段と前記伝受手段、および前記確定情報伝送手段と前記確定情報伝受手段とはそれぞれ衛星回線による通信を行うことを特徴とする、請求項1に記載の農作物収穫処理システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2006−254758(P2006−254758A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−75029(P2005−75029)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】