説明

農作物栽培用搬送路

【課題】 野菜などの農産物栽培用地は、畝部に苗を植え付け谷部を作業通路としており、資材や農作物の運搬にあたっては前記谷部の作業通路を車輪付運搬機や簡易軌道を使用しているが、農産物の品質管理や運搬作業性の面で問題があった。
【解決手段】 本発明は、畝と畝の谷部に走行レールを置かず、畝部に不透水性の高分子シートを掛け、走行レールを支持する構造を持ちながら荷重を分散する板を畝部の上に置き、この荷重を分散する板に走行レールを固定した圃場内搬送路およびこれを用いた圃場内搬送設備とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、農作物の栽培用地で穀物や野菜を生産する際に、肥料、資材、生産物などの運搬を容易に行うことができるようにするための圃場内搬送路および圃場内搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜など農産物の生産に際しては、栽培用地の地表面に細長く土を盛り上げて畝部を形成し、前記畝部に沿って農作物の苗を植え付け、畝部と畝部の間の谷部を作業通路として栽培が行われている。そして従来では、農作物の生産、管理に関わる肥料、農薬、生産物の運搬にあたっては車輪付運搬機や手押し式の作業台車や、走行レールや枕木で構成される簡易軌道上を走行する専用台車が使用されている。
【0003】
しかしながら、農作物の栽培用地である圃場内は、少なからず凹凸があるのが通例であって、特に畝を形成している場合には、当該畝による起伏が生じることになる。また、畝間に確保される作業用通路は、より多くの栽培面積(畝が形成されている面積)を確保する関係上、自ずと狭いものとなってしまい、車輪付運搬機や手押し式作業台車を走行させるにも困難なものとなっている。
【0004】
一方、圃場内に走行レールや枕木で構成される簡易軌道を形成して専用台車を走行させる方法も実施されており、この場合には、走行レールや簡易軌道を敷設する手間は生じるものの、畝間の作業用通路上(土壌の上)を直接台車が走行する場合よりも安定して走行させることができるとのメリットを有する。
【0005】
この様に圃場内に作業台車を走行させるための軌条を設けることについては、特許文献1(特開平7−8013号公報)が存在する。この特許文献1では、圃場の土壌面の適当間隔毎に谷を設け、これら谷の相互間を植付け面になすと共に各植付け面の巾方向両端縁に一対の軌条からなる案内軌道を敷設し、一方ではこの案内軌道に案内されて走行作動するものとした作業台車を設け、他方ではこの作業台車を任意な案内軌道へ案内するための回送軌道手段を構築し、作業台車に各種作業機を選択的に装着して各種の農作業を実施する農作業方法が提案されている。
【0006】
また、特許文献2(特開2001−103805号公報)では、農園の作業を行なう作業台車が走行する管状レールを敷設するための敷設器具が提案されている。しかしながら、この管状レールが敷設されるのは、茶園等の茶畝間等である。
【特許文献1】特開平7−8013号公報
【特許文献2】特開2001−103805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の通り、圃場内に走行レールや枕木で構成される簡易軌道を形成して専用台車を走行させる場合には、畝間の作業用通路上(土壌の上)を直接台車が走行する場合よりも、作業台車を安定して走行させることが可能になる。しかしながら、如何に作業台車の走行安定性が向上するといっても、当該走行レールや簡易軌道は、十分に整地されていない畝間の作業通路に施設されることから、少なからず施設された走行レールや簡易軌道自体に起伏が生じてしまう。このため従来の方法では、走行台車における上下方向の振動を確実に抑えきることができなかった。そしてこの事は、特に作業台車で収穫物を搬送しようとする場合には、その振動により収穫物の品質が低下するという問題を生じさせていた。
【0008】
そこで本発明は、作業台車の走行レールを、起伏を生じさせずに敷設することのできる圃場内搬送路および圃場内搬送設備を提供することを第一の課題とする。
【0009】
また上記した台車を走行させるための走行レールや簡易軌道は、多くの場合、畝間の作業通路上に敷設されることから、雨が降った場合には、雨水で流出した畝の表面土壌によって走行レールや簡易軌道が汚れてしまったり、敷設した走行レール乃至は簡易軌道の位置がずれてしまったりして作業台車の走行さえも支障を来すとの問題があった。
【0010】
そこで本発明は、雨水で流出した畝の表面土壌によって走行レールや簡易軌道が汚されたり、ずれたりすることのないように敷設することのできる圃場内搬送路および圃場内搬送設備を提供することを第二の課題とする。
【0011】
更に、作業台車を走行させるための走行レールや簡易軌道を畝間の作業通路上に敷設した場合には、この走行レールや簡易軌道が、作業者の歩行の障害になってしまうとの問題もあった。
【0012】
そこで本発明は、作業者が圃場、特に畝間に設けられた作業通路を作業者が歩行する際にも、その障害にならないように敷設することのできる圃場内搬送路および圃場内搬送設備を提供することを第三の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題の少なくとも何れかを解決するために、本発明では畝と畝の谷部(作業通路)ではなく、畝上に存在するよう走行レールを施設した圃場内搬送路、およびこの圃場内搬送路を用いて構成された圃場内搬送設備を提供する。
【0014】
即ち本発明では、前記課題の少なくとも1つを解決するために、畝立てされた圃場内に施設され、作業台車を走行させる為の走行レールを含んで構成された圃場内搬送路であって、当該圃場内搬送路は、畝上で、且つその長さ方向に点在して載置される複数のベース部材と、当該複数のベース部材上に架設される1又は2本以上のレール部材とからなり、前記ベース部材は、畝の法面に当接する側面部を伴って形成されている圃場内搬送路を提供する。
【0015】
かかる本発明の圃場内搬送路において、畝の長さ方向に点在して載置される複数のベース部材は、レール部材を支持する構造を持ちながら、且つ走行レールおよびその上を走行する作業台車の荷重を分散するものとして機能する。これにより、整形した畝が走行レールや作業台車の荷重によって変形することが無くなる。
【0016】
また、圃場に形成される畝は、通常、トラクターその他の農業機械によって形成され、その形状は一定であるから、畝の長さ方向には殆ど起伏は生じないものとなっている。そして、走行レールは、畝立てによって整形されている畝上(より具体的には畝上に設けられたベース部材)に設けられることから、上下方向の起伏は殆ど生じないことになる。これにより、作業台車の走行レールを、起伏を生じさせずに敷設することが可能になり、また雨水で流出した畝の表面土壌によって走行レールや簡易軌道が汚されたり、ずれたりすることもなく、更に、作業者が圃場、特に畝間を歩行する際にも障害にならない圃場内搬送路を設置することができる。
【0017】
なお、本明細書における走行レールとは、作業台車の走行を案内するためのレールであり、当該走行レールを形成するレール部材の形状は、各作業台車が具備する走行手段(車輪など)との関係で適宜選択することができる。例えば作業台車がタイヤで走行するものとして形成されている場合には、当該タイヤを収容して案内することができるような、断面凹状のレールとして形成することができる。また作業台車の車輪等が周方向に穿設された「V」字状の溝を具備する場合には、当該「V」字状の溝と相補的に補合する形状(即ち逆向き「V」字状)のレールとして形成することができる。
【0018】
上記本発明にかかる圃場内搬送路では、畝に予めビニールシート(所謂「マルチシート」など)を張設して、畝からの土砂の流出を阻止することが望ましい。このようなビニールシートは、農作物の栽培に際して、地温を高めたり、雑草の生えるのを妨げる目的で張設されていることも多く、よって、かかるビニールシート(所謂「マルチシート」)を利用して、当該ビニールシートの上にベース部材を設置することが望ましい。ただし、本発明においては畝からの土砂の流出を阻止することを目的とするものであればビニールシートに限ることなく適宜使用でき、よって当該目的を果たし得るもの、例えば網目の細かいメッシュ部材であっても使用することができる。
【0019】
また、畝上にマルチシートを張設する場合には、通常は畝に張設したビニールシートの縁部分は、風にあおられて剥がれてしまう事の無いように土で抑える必要がある。このような作業を人手で行う場合は鋤を振るう距離が長くなってしまい、相当な重労働となる。一方、このような畝の盛り上げとビニールシートの張設を行うマルチャーと呼ばれる管理機械も存在するが、かかる管理機械を使用する場合には、その為の設備投資費用が必要になる。またこのような設備投資費用の問題を解消したとしても、当該マルチャーで精度高くマルチシートを張設するには相当の熟練を要することから、操作上の問題が生じる。そこで、張設したマルチシートを簡易且つ低コストで抑える手法乃至は器具の提供が望まれるが、本発明にかかる圃場内搬送路は、このような要望をも満たすことができるものとなっている。
【0020】
即ち、本発明にかかる圃場内搬送路は、このようなマルチシートを張設する場合、その上に、畝の長さ方向に点在させて複数のベース部材を載置することにより、当該ベース部材がマルチシートの押さえの役割を果たすこともでき、マルチシートの張設を簡易に行うことができるとの効果も発揮できるものとなっている。その際、当該圃場内搬送路を構成するベース部材は、一定の間隔(5m以下、望ましくは3m以下)で配置されることが望ましい。
【0021】
上記本発明にかかる圃場内搬送路の好ましい実施形態では、前記ベース部材を、畝の横断面における両肩部の上面と法面に当接して載置される断面略「く」字状の肩部板と、両肩部板を畝の上面において連結する連結具とで構成することが望ましい。断面略「く」字状の肩部板を使用することにより、走行レールやその上を走行する作業台車などの荷重を畝の上面と法面に分散させることができ、これにより畝部を適度に転圧できるためである。また肩部板は法面に当接し、これにより畝の変形を防止し、レールの位置精度を長期間保つことができる。かかる肩部材は、畝の幅方向に対向するように配置し、対向して向き合った肩部材同士を連結部材で連結しておくことが望ましい。この様な態様において、2つの肩部材と1つの連結部材で構成されたベース部材は、畝の延伸方向に対して交差する向き(望ましくは直交する向き)に配置されることになる。
【0022】
更に前記走行レールを、各畝毎に、当該畝の延伸方向に沿って延伸する2本の平行なレール部材として構成し、当該各レール部材が、畝の上面又は法面の上面寄りに存在するように、前記ベース部材に設ける事も好ましい。各レール部材を畝の上面又は法面の上面寄りに存在させることにより、畝間に確保される作業通路を歩行し易くし、更に各レール部材が雨水と共に流出した土砂によって汚れることが無い様にするためである。特に各レール部材を各畝における法面の上面寄りに存在させることにより、畝の上面の面積とその上方の空間を最大限に確保することができ、その結果、栽培面積や葉や枝の展開空間を広く確保することができるのであるから、望ましい実施態様となる。
【0023】
また本発明にかかる圃場内搬送路において、前記走行レールは、それぞれの畝に設置されたレール部材同士の間隔、あるいは隣り合う畝同士で相互に対向するレール部材同士の間隔を調整自在に形成するのも望ましい。それぞれの畝に設置されたレール部材同士の間隔を調整自在とすることにより、当該畝上を走行する作業台車の車輪間隔に合わせたり、栽培する作物の成長具合に合わせたりして、レール部材同士の間隔(即ち走行レール幅)を調整することができる。一方、隣り合う畝同士で相互に対向するレール部材同士の間隔を調整自在に形成することにより、作業台車が畝同士の間(即ち作業通路)を走行する場合にも、当該作業台車の車輪間隔に合わせて走行レール幅を調整できるようになる。
【0024】
より具体的には、レタス、にんじん等のように畝上の栽培空間(作物の生育に必要な空間)をあまり高く確保する必要がない作物の場合には、収穫時においても作業台車が畝上を走行することが可能であるが、トウモロコシ、ナス、トマトなどのように畝上の栽培空間を高く確保しなければならない作物の場合や、あるいはトマト、ピーマン、ナスなどの様に幹や枝を保持、あるいは誘引するための支柱が必要になる作物の場合には、作物の生育具合に応じて、作業台車が畝間を走行するようにしなければならない場面も生じる。このような場合において、隣り合うレール部材同士の間隔を調整自在とすることにより、作業台車は、畝上あるいは畝間を任意に走行できるようになる。また本発明に係る圃場内搬送路は、畝に直接植物を植える場合だけでなく、「鉢花」などの育成・管理を畝上で行う場合にも使用できる。この場合、当該鉢植えの植物は、畝上であって、圃場内搬送路を構成するレール部材間に存在させることができる。
【0025】
更に本発明では、前記課題の少なくともいずれかを解決するために、上記した圃場内搬送路と、当該圃場内搬送路を走行する、車輪を備えた作業台車とからなる圃場内搬送設備であって、当該作業台車の車輪間隔は調整自在に形成されている圃場内搬送設備を提供する。このように作業台車の車輪間隔は調整自在に形成することにより、作業台車は畝上あるいは畝間のいずれであっても走行することができるようになる。ただし、相互に車輪同士の幅が異なる2種類の作業台車、即ち畝上走行用の作業台車と畝間走行用の作業台車とを準備すれば、ほぼ同様の作用効果を享受することができる。しかしながら、畝の幅は多くの場合一定であるものの、畝間の幅を均等にするのは実際には困難である。そこで作業台車の車輪の幅を走行状況に応じて自在に変化するように形成するのが望ましい。即ち、走行レール幅の変化に追従して車輪幅を変更することのできる作業台車を使用するのが望ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、作業台車が走行する走行レールは、整地された(即ち意図的に整形された)畝上に敷設されることから、起伏が生じることなく、また作業者が作業通路を歩行するのにも障害とならない圃場内搬送路および圃場内搬送設備が提供される。
【0027】
また、この走行レールを畝の上面あるいは法面(側面)の上方に敷設することにより、雨が降った場合でも、雨水で流出した畝の表面土壌によって汚れたり、土中に埋もれてしまったり、位置がずれたりすることのない圃場内搬送路および圃場内搬送設備が提供される。
【0028】
更に畝部に不透水性のシート(マルチシート)を敷設する場合には、前記畝部の土砂が流出することが無く、かつベース部材によって当該マルチシートを抑えることができるので、その敷設作業も容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を説明する。図1は第1の実施の形態にかかる圃場内搬送路の設置状態を示す、畝の長さ方向に直交する向きの断面図であり、図2および図3は、他の実施の形態にかかる圃場内搬送路の設置状態を示す、畝の長さ方向に直交する向きの断面図である。また図4は、図3に示した圃場内搬送路の斜視図である。何れの実施の形態に示す圃場内搬送路も、畝上に設置されたベース部材と、このベース部材に設置されたレール部材とで構成されており、各図に示すそれぞれの実施の形態では、ベース部材の構成部材、より具体的には畝部の肩部分(畝における上面から側面にかけての曲部近傍)に設けられる肩部板の構成等が異なっている。
【0030】
先ず、図1に示す圃場内搬送路では、ベース部材を構成する肩部板は、断面が台形である畝部9の肩部分において、畝物品保持具の上面側に設置される第一荷重分散板1と、法面(即ち側面)に設置される第二荷重分散板2と、両荷重分散板を連結する荷重分散板固定具3とで構成されている。
【0031】
このような肩部板の設置に際しては、畝部9を覆うように配置された不透水性高分子シート8の上から、当該各荷重分散板1,2を不透水性高分子シート8に密着させるように設ける。この実施態様において、荷重分散板1,2のそれぞれは、畝部9の断面における両方の肩部の上面と側面に設けられ、両者は荷重分散板固定具3により固定されている。
【0032】
畝部9の両方の肩部に設置された各肩部板同士は、連結具として機能する荷重分散板連結部材4によって相互に連結され、全体としてベース部材を形成している。具体的には、第一荷重分散板1に孔部を穿孔すると共に、長尺に形成された荷重分散板連結部材4の長さ方向両端部を曲折し、この曲折した端部を前記第一荷重分散板1の孔部に刺し通すことによって2つの肩部板を連結している。このように形成されたベース部材は、例えば荷重分散板連結部材4の長さを調整することにより、両肩部板間の距離を調整することができる。そして、各レール部材5は、それぞれの肩部板、より具体的には図1に示す実施の形態では荷重分散板固定具3に設けられていることから、荷重分散板連結部材4の長さを調整することにより、結果としてレール部材5同士の間隔を調整することができる。
【0033】
この実施の形態において、レール部材5は、走行レール支持部材6によって畝部9の側面側に添設された第二荷重分散板2に固定されている。この走行レール支持部材6は、本実施の形態では、第二荷重分散板2から、レール部材5の幅分だけ外側に突起するように形成されているが、さらに当該走行レール支持部材6の突起幅を大きくした場合には、レール部材5の設置場所を任意に調整することができる。これにより、走行レール支持部材6に対するレール部材5の設置位置によっても、レール部材5同士の間隔を調整することが可能になる。
【0034】
なお、このように形成された圃場内搬送路では、荷重分散板連結部材4は、両端部を曲折した棒状であって、畝の長さ方向に沿う向きの幅が小さいことが望ましい。畝上における作物の栽培領域を広く確保するためである。同じ理由から、第一荷重分散板1も、畝上における側面側に偏在し、かつ極力狭小な面積で形成されることが望ましい。一方、畝の側面に設置される第二荷重分散板2は、可能な限り広い面積で形成されることが望ましい。レール部材5や走行台車などの荷重を分散させ、畝の変形を阻止するためである。
【0035】
次に図2を参照しながら、他の実施の形態にかかる圃場内搬送路の設置状態を説明する。この図に示す圃場内搬送路は、図1と同様に不透水性高分子シート8で被覆された畝部9上に、荷重分散板固定具3で接続された2つの荷重分散板1,2を配置し、畝部9の両方の肩部における上面側のそれぞれの荷重分散板1同士を、図1に示す実施態様同様に、荷重分散板連結部材4によって相互に連結している。
【0036】
特にこの実施の形態に示す圃場内搬送路では、走行レール支持部材6a,6bを荷重分散板2に固定し、この走行レール支持部材6a,6bにより、レール部材5を固定している。
【0037】
更に、図3に示す圃場内搬送路では、図1に示した圃場内搬送路と同様に、畝部9を不透水性高分子シート8で被覆しているが、畝部9の長さ方向に直交する向きの断面における肩部の上面と側面上には、2つの荷重分散板1,2の代わりに、その断面において角度が180度より小さくなるように曲げ加工した、略くの字形状の荷重分散板7(即ち肩部板)が使用されている。この場合、前述の実施形態とは異なり、2つの荷重分散板1,2同士を相互に連結する必要がないため、荷重分散板固定具3を設けなくてよい。そして、この荷重分散板7は、図1、図2の荷重分散板1と同様に、その間を荷重分散板連結部材4で結合されている。この実施態様においては、荷重分散板7の、畝部9の断面における肩部の側面側に走行レール支持部材6bが取り付けられ、この走行レール支持部材6bに走行レール5が装着されている。
【0038】
図4は、図3に示す圃場内搬送路を敷設した状態を示す斜視図である。この図4に示すように、上記の実施の形態に示した何れの圃場内搬送路も、各畝ごとに不透水高分子シート8を張設し、この不透水高分子シート8を上から押さえるようにして、荷重分散板を具備する肩部板と荷重分散板連結部材4から構成されるベース部材を、畝の長さ方向に沿うように一定の間隔で設置する。そしてこのベース部材同士を連架するようにして、畝の延伸方向に沿う2つのレール部材を平行に設ける。尚、走行レールの長さは農地の大きさに応じて設定することが可能である。
【0039】
以上のように構成される各圃場内搬送路において、走行レール支持部材6bの設置場所は、各畝の法面(側面)における上方に限られるものではなく、畝部の上面の肩部寄りに設けることもできる。また、荷重分散板と荷重分散板連結部材4は、必ずしも別部材で構成することを要せず、一体形成などにより単一の部材として形成することも可能である。更に、レール部材を指示している走行レール支持部材は、前述のように別部材として形成して荷重分散板等に設置する他、荷重分散板自体がレール部材を支持できるような構成乃至は構造を備えていても良い。そして、荷重分散板、荷重分散連結部材、荷重分散固定具、ならびに走行レール支持部材は、金属製、木製、プラスチック製のいずれであってもよく、走行レールに搭載される所望の走行台車や、走行台車で運搬する荷物の荷重に応じて適宜選択することができる。
【0040】
次に、上記の実施の形態に示した各圃場内搬送路と、この圃場内搬送路を走行するのに適した作業台車と構成される圃場内搬送設備について具体的に説明する。ただし、かかる圃場内搬送設備で使用する各圃場内搬送路(走行レール5)は、上述の通りであるから、以下では、特に当該圃場内搬送路を走行するのに適した作業台車50について図5を参照しながら具体的に説明する。
【0041】
図5(A)は、本実施の形態にかかる作業台車50の一例を示す正面図であり、図5(B)は、当該作業台車50の走行状態を示す略図である。特にこの実施の形態に示す作業台車50は、その車輪51同士の間隔を調整自在に形成している点に特徴を有する。すなわち、この作業台車50では、搬送する荷物を載せる略矩形の台部52の下側に、当該台部52の四隅に、走行レール5内を走行する車輪51が合計4個設けられており、各車輪51は、比較的長く設けられた車軸53の長さ方向に、長さLだけ移動自在に設けられている。各車軸の端部には、車輪の脱落を阻止するためのストッパー53がそれぞれ設けられている。
【0042】
これにより、例えば図5(B)に示すように走行レール5の間隔が狭い所では各車輪50は、相互に近づいて走行し、走行レール5の間隔が広い所では各車輪50も当該レール幅に追従して広がることができる。このような車輪幅の追従は、各レール部材5が断面略凹字状に形成されていることにより達成されている。
【0043】
以上、本発明の農地用搬送路を実施態様を参照しながら説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨ならびに範囲から逸脱することなく、様々な変更および修正を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の圃場内搬送路の一例を示す断面図
【図2】本発明の圃場内搬送路の他の実施の形態を示す断面図
【図3】本発明の圃場内搬送路の更に他の実施の形態を示す断面図
【図4】図3に示す圃場内搬送路の斜視図
【図5】車輪同士の幅を調整する状態を示す略図
【符号の説明】
【0045】
1 第一荷重分散板
2 第二荷重分散板
3 荷重分散板固定具
4 荷重分散板連結部材
5 レール部材(走行レール)
6 走行レール支持部材
7 荷重分散板
8 不透水高分子シート
9 畝部
50 作業台車
51 車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
畝立てされた圃場内に施設され、作業台車を走行させる為の走行レールを含んで構成された圃場内搬送路であって、
当該圃場内搬送路は、畝上で、且つその長さ方向に点在して載置される複数のベース部材と、当該複数のベース部材上に架設される1又は2本以上のレール部材とからなり、
前記ベース部材は、畝の法面に当接する側面部を伴って形成されている事を特徴とする圃場内搬送路。
【請求項2】
前記ベース部材は、畝の横断面における両肩部の上面と法面とに当接して載置される断面略「く」字状の肩部板と、両肩部板を畝の上面において連結する連結具とからなる請求項1に記載の圃場内搬送路。
【請求項3】
前記走行レールは、各畝毎に、当該畝の延伸方向に沿って延伸する2本の平行なレール部材として構成されており、当該各レール部材は、畝の上面又は法面の上面寄りに存在するように、前記ベース部材に設けられている請求項1又は2に記載の圃場内搬送路。
【請求項4】
前記走行レールは、それぞれの畝に設置されたレール部材同士の間隔、あるいは隣り合う畝同士で相互に対向するレール部材同士の間隔を調整自在に形成されている請求項1乃至3の何れか一項に記載の圃場内搬送路。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の圃場内搬送路と、
当該圃場内搬送路を走行する、車輪を備えた作業台車とからなる圃場内搬送設備であって、
当該作業台車の車輪間隔は調整自在に形成されていることを特徴とする、圃場内搬送設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−22230(P2009−22230A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190220(P2007−190220)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(307017637)
【Fターム(参考)】