説明

農業用フィルム穿孔装置

【課題】
幅方向両側に水抜き用の孔を多数有し、ハウス栽培において使用される農業用ハウスの内張りとして使用される農業用有孔フィルムを効率的に製造することができる農業用フィルム穿孔装置を提供する。
【解決手段】農業用フィルム穿孔装置(A1)は、フィルム巻体(5)を転動できるように載置して農業用フィルム(50)を繰り出すことができるようにする繰り出しローラ(1,1a)と、外周部に穿孔ピン(20)を有し、繰り出された農業用フィルム(50)の幅方向の端部側に穿孔ピン(20)で通水孔(51)を穿孔する穿孔ローラ(2)と、穿孔した農業用フィルム(50)を送り出す送りローラ(2)とを備えており、穿孔ローラ(2)は一方の繰り出しローラ(1a)と並設されて同じ周速で逆回転し、繰り出しローラ(1a)の外周面には穿孔ローラ(2)の穿孔ピン(20)が入る受入孔(10)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用フィルム穿孔装置に関するものである。更に詳しくは、ハウス栽培において使用される農業用ハウスの内張りに使用され、一部には水抜き用の孔を多数有する農業用有孔フィルムを効率的に製造する農業用フィルム穿孔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
農業用ハウスは、一般には金属製のフレームに合成樹脂製フィルムを張設した構造を有している。このような農業用ハウスにおいては、ハウス内の保温性を向上させるために、天井部の外張フィルムの下側に空間部を形成するようにして内張フィルムが展設されているものも多い(参考:図8)。
ハウス内は、湿度が相当に高いため、内張フィルムを有するハウスにおいては、外張フィルムの内面に結露した水滴が流れ落ちて内張フィルムの縁に溜まって金魚鉢のように膨らんでしまう。そして、これが破裂すると、落ちた水の衝撃で作物を傷めてしまうおそれがあった。
【0003】
この問題を解消するものとして、特許文献1において、内張りとして使用する農業用フィルムの一部に多数の孔を設けて、内張フィルムに滴下した水滴が溜まらないように順次排出することができる農業用有孔フィルムがすでに開示されている。
この農業用有孔フィルムは、合成樹脂フィルムの長さ方向に沿って、幅方向の少なくとも一方の端から20〜100cmの幅に、10〜20cm間隔で穿孔された直径2〜5mmの孔を有する開孔部が設けられ、開孔部の合計面積がフィルムの全面積の5〜20%であり、十分な保温性を保持したまま、フィルム上に水が溜まることを防止できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−211761
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1には、前記のように農業用有孔フィルム及びそれを製造する方法については開示されているが、農業用有孔フィルムを製造する方法を実現するための装置の具体的な構造については、何ら開示されていない。
【0006】
(本発明の目的)
本発明は、一部に水抜き用の孔を多数有し、ハウス栽培において使用される農業用ハウスの内張りとして使用される農業用有孔フィルムを効率的に製造することができる農業用フィルム穿孔装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
【0008】
第1の発明は、
農業用ハウスの内張りに使用される農業用フィルムに通水孔を穿孔する装置であって、
フィルム巻体から農業用フィルムを繰り出すことができるようにしてフィルム巻体を配置する繰り出し機構と、
繰り出された農業用フィルムの幅方向の端部側に穿孔ピンで通水孔を穿孔する穿孔ローラ機構と、
農業用フィルムの送り方向において前記穿孔ローラ機構の下手側に設けられており、穿孔した農業用フィルムを送り出す送りローラ機構と、
を備えている、
農業用フィルム穿孔装置である。
【0009】
第2の発明は、
繰り出し機構は二本のローラを含み、繰り出し機構と穿孔ローラ機構とは隣接しており、前記穿孔ローラ機構は、外周面に穿孔ピンを有する穿孔ローラと、該穿孔ローラの穿孔ピンを受け入れる受入孔を有する有孔ローラを備え、該有孔ローラは、前記繰り出し機構のローラの一つを兼ねている、
第1の発明の農業用フィルム穿孔装置である。
【0010】
第3の発明は、
農業用ハウスの内張りに使用される二折り状態の農業用フィルムに通水孔を穿孔する装置であって、
農業用フィルムを巻き取ったフィルム巻体を転動できるように載置して農業用フィルムを繰り出すことができるようにする並設された繰り出しローラと、
外周部に穿孔ピンを有し、繰り出された農業用フィルムの幅方向の端部側に穿孔ピンで通水孔を穿孔する穿孔ローラと、
農業用フィルムの送り方向において穿孔ローラの下手側に設けられており、穿孔した農業用フィルムを送り出す送りローラと、
を備えており、
前記穿孔ローラは、前記各繰り出しローラの一方の繰り出しローラに並設されており、該繰り出しローラには穿孔ローラの穿孔ピンを受け入れる受入孔が設けられており、前記繰り出しローラは繰り出しローラセットの一つを兼ねている、
農業用フィルム穿孔装置である。
【0011】
第4の発明は、
農業用ハウスの内張に使用されるフィルムに通水孔を穿孔する装置であって、
複数本のフィルム巻体を配置する繰り出し機構と、
前記複数本のフィルム巻体から繰り出された当該フィルムを幅方向に接ぎ合わせる接合機と、
外周面に穿孔ピンを有し、前記複数本のフィルム巻体から繰り出されたフィルムの接ぎ合わされない側に、前記穿孔ピンで通水孔を穿孔する穿孔ローラと、
フィルムの送り方向において穿孔ローラの下手側に設けられており、穿孔し接ぎ合わされたフィルムを送り出す送りローラと、
を備えており、
前記接合機は、フィルムの送り方向において穿孔ローラの上手側または下手側に配置されている、
農業用フィルム穿孔装置である。
【0012】
第5の発明は、
穿孔ピンの取り付け位置を穿孔ローラの長さ方向において変えることができる付替手段を備えている、
第1ないし第4の発明のいずれかの各農業用フィルム穿孔装置である。
【0013】
特許請求の範囲及び本明細書にいう「繰り出し機構」としては、フィルム巻体を転動できるようにして載置する並設されたローラの他、例えばフィルム巻体の芯管(多くは紙管)に軸を通すなどし軸支して回転できるようにするもの等があげられるが、フィルム巻体を回転できるように配して農業用フィルムを能動的または受動的に繰り出すことができるものであれば、その構成は特に限定するものではない。
【0014】
(作用)
本発明の農業用フィルム穿孔装置の作用を説明する。なお、ここでは、説明で使用する各構成要件に、後述する実施の形態において各部に付与した符号を対応させて付与するが、この符号は、特許請求の範囲の各請求項に記載した符号と同様に、あくまで内容の理解を容易にするためであって、各構成要件の意味を上記各部に限定するものではない。
【0015】
第1の発明の農業用フィルム穿孔装置は、繰り出し機構(1,1a)に配置したフィルム巻体から農業用フィルムを繰り出し、穿孔ローラ機構(2,1a)の穿孔ピン(20)によって農業用フィルムの幅方向の端部側に通水孔を穿孔し、送りローラ機構(3,3a)によって後工程へ送り出すことができる。これにより、農業用ハウスの内張りに使用される農業用フィルムに通水孔を穿孔することができる。
【0016】
第2の発明の農業用フィルム穿孔装置は、穿孔ローラの穿孔ピンが有孔ローラの受入孔に入って両ローラが回転することにより、両ローラの間を通る農業用フィルムを確実に貫通し通水孔を穿孔することができる。
また、穿孔ローラ機構の有孔ローラが繰り出し機構のローラの一つを兼ねているので、それぞれを専用のローラで構成する場合と比較して部品を減らすことができるとともにそれらが占有するスペースも小さくすることができる。
【0017】
第3の発明の農業用フィルム穿孔装置は、並設された繰り出しローラ(1,1a)に載置されたフィルム巻体(5)を転動させて二折り状態の農業用フィルム(50)を繰り出し、農業用フィルム(50)を受入孔(10)を設けた側の繰り出しローラ(1a)と穿孔ローラ(2)の間に通して穿孔ピン(20)で通水孔(51)を穿孔し、送りローラ(3,3a)で後工程へ送り出すことができる。
この装置は、穿孔ローラ(2)の穿孔ピン(20)が繰り出しローラ(1a)の受入孔(10)に入るようになっているので、穿孔ローラ(2)と繰り出しローラ(1a)に挟まれた農業用フィルム(50)には、フィルム(50)が二枚重ねであっても確実に貫通して穿孔され、展開したときに両端側となる部分に通水孔(51)を一度に開けることができる。
【0018】
第4の発明の農業用フィルム穿孔装置は、繰り出し機構(1b,1c)(1d,1e)に配した複数のフィルム巻体(5a,5b)からそれぞれ農業用フィルム(50a,50b)を繰り出し、各農業用フィルム(50a,50b)を接合機(6)で熱溶着等により接合するとともに幅が広くなった農業用フィルム(50a,50b)の幅方向の両端部側に穿孔ローラ(2a)の穿孔ピン(20)によって通水孔(51)を穿孔し、送りローラ(3b)で後工程へ送り出すことができる。
この装置は、接合機(6)を備えているので、幅が比較的狭い農業用フィルム(50a,50b)を農業用ハウスの内張りに使用できるように接合して幅を広くするとともに通水孔(51)の穿孔も合わせて行うことができる。
【0019】
第5の発明の農業用フィルム穿孔装置は、穿孔ローラ(2,2a,2b)に取り付けられている穿孔ピン(20,22)の取り付け位置を付替手段(21)によって穿孔ローラ(2,2a,2b)の長さ方向において変えることができるので、穿孔される農業用フィルムの幅が様々に異なるものであっても、穿孔ピン(20,22)を付け替えることで、農業用フィルムの端部側の所定の位置に合わせて通水孔(51)を穿孔することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、一部に水抜き用の孔を多数有し、ハウス栽培において使用される農業用ハウスの内張りとして使用される農業用有孔フィルムを効率的に製造することができる農業用フィルム穿孔装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る農業用フィルム穿孔装置の第1実施例を示す斜視説明図。
【図2】図1に示す農業用フィルム穿孔装置の側面視説明図。
【図3】図1に示す農業用フィルム穿孔装置でつくられた農業用有孔フィルムの斜視説明図。
【図4】本発明に係る農業用フィルム穿孔装置の第2実施例を示す斜視説明図。
【図5】図4に示す農業用フィルム穿孔装置の側面視説明図。
【図6】図4に示す農業用フィルム穿孔装置でつくられた農業用有孔フィルムの斜視説明図。
【図7】農業用有孔フィルムに設けられる通水孔の配列の他例を示す斜視説明図。
【図8】農業用有孔フィルムの使用状態を示す説明図。
【図9】本発明に係る農業用フィルム穿孔装置の第3実施例を示し、穿孔ピンの取付構造を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を図面に示した実施の形態に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
図1及び図2を参照する。
【0024】
農業用フィルム穿孔装置A1は、インフレーション成形法で管状(くだじょう)につくられた農業用フィルム50の周方向の一箇所に長さ方向へ切れ目を入れ、反対側の折り目を中央にして二重になった農業用フィルム50を繰り出し、切れ目側の重ね合わせた部分に多数の通水孔51を同時に穿孔する装置である。インフレーション成形法は、展開したときの幅が6m以上の農業用フィルムをつくるときに採用されるのが一般的である。
【0025】
農業用フィルム穿孔装置A1は、紙管に前記農業用フィルム50を巻き取ったフィルム巻体5を転動できるようにして載置する繰り出しローラ1、1a、一方の繰り出しローラ1aと協働して農業用フィルム50に通水孔51を穿孔する穿孔ローラ2、穿孔した農業用フィルム50を回し掛ける送りローラ3、3a及び送りローラ3aとの間で農業用フィルム50を挟んで送る複数の挟みローラ4を備えている。
【0026】
前記繰り出しローラ1、1aは、繰り出し機構であり、同じ直径で同じ長さの円柱形のローラで構成され、同じ高さで水平かつ平行に所要の間隔を開けて設けられている。繰り出しローラ1はモータ(図示省略)で図2において矢印方向に回転駆動される。繰り出しローラ1と繰り出しローラ1aは、チェーン(図示省略)を介して同じ方向へ同期回転するようにしてある。また、繰り出しローラ1、1aの上方には、載置されたフィルム巻体5が繰り出しローラ1、1a上の所定の位置から長さ方向にずれないようにするストッパー(図示省略)が設けられている。
【0027】
繰り出しローラ1aは、後述するようにギヤを介し穿孔ローラ2と連動して回転するようになっている。繰り出しローラ1aには、長さ方向の一方側(図1で手前側)の外周面に複数の受入孔10が設けられている有孔ローラである。各受入孔10は、本実施例においては、繰り出しローラ1aの長さ方向に等間隔で三箇所、繰り出しローラ1aの軸周方向に等間隔(等角度)で三箇所、合計で九箇所に配置されている。
【0028】
受入孔10を有する繰り出しローラ1aの横側(図2において左側)には、穿孔ローラ2が外周面同士を接触させて設けられている。穿孔ローラ2と繰り出しローラ1aによって穿孔ローラ機構が構成されている。
穿孔ローラ2は、繰り出しローラ1aと同じ高さで平行に設けられており、各ローラ1、2は同じ直径及び長さを有している。また、各ローラ1、2の外周面の接触部は、各ローラ1、2の軸線方向と平行になっている。
【0029】
穿孔ローラ2には、長さ方向の一方側(図1で手前側)の外周面に複数の穿孔ピン20が設けられている。各穿孔ピン20は先部が尖っており、前記繰り出しローラ1aの受入孔10と同様に、穿孔ローラ2の長さ方向に等間隔で三箇所、繰り出しローラ1aの軸周方向に等間隔(等角度)で三箇所、合計で九箇所に配置されている。
【0030】
繰り出しローラ1aと穿孔ローラ2は、前記したようにギヤ(図示省略)を介して連動し、逆方向に同期回転(同速回転)するようにしてある。
このようにして、繰り出しローラ1aの各受入孔10と穿孔ローラ2の各穿孔ピン20は、各ローラ1、2の接触面において合わさる(穿孔ピン20が受入孔10に入る)ようになっている。
【0031】
なお、穿孔ピン20と受入孔10は前記形状に限定されるものではなく、例えば穿孔ピン20が円柱形で、受入孔10は円孔形であり、それらが間に若干の隙間を設けて嵌め合うようになっている等、穿孔ピン20が受入孔10に入ることで農業用フィルム50に通水孔51を穿孔することができれば、その形状及び組合せは特に限定するものではない。
【0032】
繰り出しローラ1aの斜め上方(他方の繰り出しローラ1とは反対側の上方)には、穿孔された農業用フィルム50を回し掛ける送りローラ3、3a(送りローラ機構を構成)が設けられている。送りローラ3、3aは繰り出しローラ1aと平行に設けられており、送りローラ3、3a同士は同じ高さに設けられ、同じ直径及び長さを有している。一方の送りローラ3(図2で右側)は、モータ(図示省略)で図2において矢印方向へ回転駆動される。また、送りローラ3、3aは、チェーン(図示省略)を介して同じ方向へ同期回転するようにしてある。
【0033】
他方の送りローラ3aの上側には、送りローラ3aの長さ方向に等間隔で三箇所に挟みローラ4が設けられている。各挟みローラ4は、アーム40に空回りするローラ41を取り付けた構造である。各挟みローラ4のアーム40は、バネ等の付勢体(図示省略)によって送りローラ3a側へ付勢されており、ローラ41と送りローラ3aの外周面同士が所要の圧力で接することができるようにしてある。
【0034】
この構造により、穿孔した農業用フィルム50を送りローラ3aと各挟みローラ4との間で挟んで回転方向へ送ることができる。なお、本実施例では、送りローラ3aと各挟みローラ4で送られた農業用フィルム50は、下方へ垂らされるようになっているが、別の紙管等の軸体に巻き取る構造とすることもできる。
【0035】
(作用)
図1ないし図2及び図3を参照する。
農業用フィルム穿孔装置A1の繰り出しローラ1、1aの上にフィルム巻体5を載置する。フィルム巻体5から二折り状態の農業用フィルム50を繰り出し、繰り出しローラ1、1a間の隙間から繰り出しローラ1aの下側へ回して繰り出しローラ1aと穿孔ローラ2の間を通し、さらに送りローラ3、3aの上側に回し掛け、送りローラ3aから下方へ垂らすようにする。
【0036】
なお、前記農業用フィルム50を繰り出しローラ1aと穿孔ローラ2の間に通す際には、農業用フィルム50の切れ目側の重ね合わせた部分に所定の配置で通水孔51が穿孔されるように農業用フィルム50の通る位置(フィルム巻体5を載置する位置)を決める。また、前記送りローラ3aに回し掛ける際には、送りローラ3aと各挟みローラ4との間を通すようにする。
【0037】
前記のように農業用フィルム50を通した状態でモータにより繰り出しローラ1及び送りローラ3を回転駆動する。これにより、農業用フィルム50の切れ目側の重ね合わせた部分に穿孔ローラ2の各穿孔ピン20と繰り出しローラ1aの各受入孔10によって図3に示すような配置で通水孔51が順次穿孔され、農業用有孔フィルム500が形成される。農業用有孔フィルム500は、送りローラ3、3aを通って下方へ垂らされ回収される。
【0038】
なお、穿孔ローラ2と送りローラ3の間において、農業用フィルム50の切れ目側にエアが吹き付けられる。これによって、農業用フィルム50の重なっていたフィルムの間にエアを入れてフィルムを一度分離させるようにして、後に農業用有孔フィルム500を展開する際の取り扱いが容易にできるようにしている。
【0039】
この装置では穿孔ローラ2の各穿孔ピン20が繰り出しローラ1aの各受入孔10に入るようになっているので、穿孔ローラ2と繰り出しローラ1aに挟まれた農業用フィルム50には、フィルムが二枚重ねであっても確実に貫通して穿孔され、農業用フィルム50を展開したときに両端側となる部分に通水孔51を一度に開けることができる。
【0040】
図3に示した農業用有孔フィルム500の幅は約8mである(二折状態の農業用フィルム50の幅は4m)。各通水孔51の大きさ及び各通水孔51の間隔は、本実施例では直径5mm、間隔200mmであるが、これに限定されるものではなく、農業用有孔フィルム500の大きさ等に合わせて適宜設定される。
なお、図1及び図3においては各通水孔51を便宜上円形に表しているが、実際上は打ち抜きによる孔ではないため、例えばV時形の切れ目が入った孔が形成される(後述する図9参照)。
【実施例2】
【0041】
図4及び図5を参照する。
農業用フィルム穿孔装置A2は、T−ダイ成形法でつくられた比較的幅が狭い農業用フィルム50a、50bを通水孔51を設けない側の端部側を熱溶着により接合するとともに、接合される農業用フィルム50a、50bの全体幅方向の両側部分に多数の通水孔51を穿孔する装置である。T−ダイ成形法は、幅が3m未満の農業用フィルムをつくるときに採用されるのが一般的である。
【0042】
農業用フィルム穿孔装置A2は、フィルム巻体5a、5bを転動できるようにして載置する繰り出しローラ1b、1c及び繰り出しローラ1d、1e(いずれも繰り出し機構を構成)、フィルム巻体5a、5bから繰り出した農業用フィルム50a、50bを回し掛けて通水孔51を穿孔する穿孔ローラ2a、農業用フィルム50a、50bを内端部側で接合する接合機6、穿孔し接合した農業用フィルム50a、50bを回し掛ける送りローラ3b及び送りローラ3bとの間で農業用フィルム50a、50bを挟んで送る複数の挟みローラ4を備えている。
【0043】
フィルム巻体5aを載置する繰り出しローラ1b、1cは、同じ直径で同じ長さの円柱形のローラで構成されている。繰り出しローラ1b、1cは、同じ高さで水平かつ平行に所要の間隔を開けて外周面同士が接触しないように設けられている。一方の繰り出しローラ1bはモータ(図示省略)で回転駆動され、繰り出しローラ1b、1cは、チェーンを介し同じ方向(図5の矢印方向)へ同期回転するようになっている。
【0044】
また、フィルム巻体5bを載置する繰り出しローラ1d、1eは、同じ直径で同じ長さの円柱形のローラで構成されている。繰り出しローラ1d、1eは、同じ高さで水平かつ平行に所要の間隔を開けて外周面同士が接触しないように、前記繰り出しローラ1b、1cと長さ方向にずらして並んで設けられている。一方の繰り出しローラ1dはモータ(図示省略)で回転駆動され、繰り出しローラ1d、1eは、チェーンを介し同じ方向(図5の矢印方向)へ同期回転するようになっている。
【0045】
また、繰り出しローラ1b、1c及び繰り出しローラ1d、1eのそれぞれの上方には、前記繰り出しローラ1、1aと同様に、載置されたフィルム巻体5a、5bが繰り出しローラ1b、1c及び繰り出しローラ1d、1e上の所定の位置から長さ方向にずれないようにするストッパー(図示省略)が設けられている。
【0046】
繰り出しローラ1b、1cの斜め上方(他方の繰り出しローラ1d、1eとは反対側の上方)には、穿孔ローラ2a及び送りローラ3bが設けられている。穿孔送りローラ2aと送りローラ3bは繰り出しローラ1b、1cと平行に設けられている。また、穿孔ローラ2aと送りローラ3bは同じ高さに設けられている。
【0047】
穿孔ローラ2aには、長さ方向の両側(図4で手前側と奥側)の外周面に所要数の穿孔ピン20aが設けられている。各穿孔ピン20aは、ヒータ等の加熱手段で加熱することができるようにしてある。各穿孔ピン20aは、穿孔ローラ2aの長さ方向の両側において、それぞれ穿孔ローラ2aの長さ方向に等間隔で三箇所、穿孔ローラ2aの軸周方向に等間隔(等角度)で三箇所、合計で九箇所(両側合計で十二箇所)に配置されている。穿孔ローラ2aは、フィルム巻体5a、5bから繰り出した農業用フィルム50a、50bを回し掛けて送りながら、通水孔51を穿孔するものである。
【0048】
また、送りローラ3bの上側には、等間隔で四箇所に前記農業用フィルム穿孔装置A1の送りローラ3aの上に設けられているものと同様の構造及び作用を有する挟みローラ4を備えている。
前記穿孔ローラ2aはモータ(図示省略)で回転駆動され、穿孔ローラ2aと送りローラ3bは、チェーンを介し同じ方向(図5の矢印方向)へ同期回転するようになっている。
【0049】
穿孔ローラ2aと送りローラ3bの間の中間部かつ各ローラ2a、3bの長さ方向中間部には、フィルム巻体5a、5bから繰り出した農業用フィルム50a、50bを通水孔51を設けない端部側で一部を重ねて熱溶着により接合する接合機6が設けられている。接合機6は、農業用フィルム50a、50bの重ね部を上下から挟んで圧力をかける熱ローラ(符号省略)を備えており、各熱ローラは穿孔ローラ2aと連動し、周速が穿孔ローラ2a及び送りローラ3bの周速(農業用フィルム50a、50bの移動速度)と同じになるように設定されている。
【0050】
(作用)
図4、図5及び図6を参照する。
農業用フィルム穿孔装置A2の繰り出しローラ1b、1cの上にフィルム巻体5aを、繰り出しローラ1d、1eの上にフィルム巻体5bを載置する。フィルム巻体5a、5bから農業用フィルム50a、50bを繰り出し、農業用フィルム50aを繰り出しローラ1b、1c間の隙間に通して繰り出しローラ1cの下側に回し掛け、農業用フィルム50bを繰り出しローラ1d、1e間の隙間に通して繰り出しローラ1eの下側に回し掛ける。そして、農業用フィルム50a、50bを、その内端部側が一部重なるようにして穿孔ローラ2aの上側に回し掛け、さらに送りローラ3bの上側に回し掛けて下方へ垂らすようにする。
【0051】
なお、農業用フィルム50a、50bを穿孔ローラ2aに回し掛ける際には、農業用フィルム50a、50bの一部重なった部分が接合機6を通るようにし、さらに農業用フィルム50a、50bの外端部側に穿孔ローラ2aの各穿孔ピン20aによって所定の配置で通水孔51が穿孔されるように農業用フィルム50a、50bの通る位置(つまりフィルム巻体5a、5bを載置する位置)を決める。また、前記送りローラ3bに回し掛ける際には、送りローラ3bと各挟みローラ4との間を通すようにする。
【0052】
前記のように農業用フィルム50a、50bを通した状態でモータにより繰り出しローラ1b、1d及び穿孔ローラ2aを回転駆動する。これにより、農業用フィルム50a、50bには、穿孔ローラ2aの加熱されている各穿孔ピン20aによって溶かされて図6に示すような配置で通水孔51が順次穿孔される。また、農業用フィルム50a、50bの内端部側の一部重なった部分が順次溶着されて接合部52が形成され、農業用フィルム50a、50bは一体となって幅が広い農業用有孔フィルム501が形成される。農業用有孔フィルム501は、送りローラ3bを通って下方へ垂らされ回収される。
【0053】
この装置によれば、接合機6を備えているので、幅が比較的狭い農業用フィルムを農業用ハウスの内張りに使用できるように接合するとともに、通水孔51の穿孔も合わせて行うことができる。また、各通水孔51は、孔縁が熱で溶けた後、冷えて固まっており、大きな破れの起点とならないので、有孔フィルム501は破れにくい。
【0054】
図6に示した農業用有孔フィルム501の幅は約5mである(農業用フィルム50a、50bの幅は、それぞれ2.5m)。また、各通水孔51の大きさ及び各通水孔51の間隔は、本実施例では直径5mm、間隔200mmであるが、これに限定されるものではなく、農業用有孔フィルム501の大きさ等に合わせて適宜設定される。
【0055】
なお、図1及び図3においては各通水孔51を便宜上円形に表しているが、実際上は打ち抜きによる孔ではないため、例えばV時形の孔縁を有する孔が形成される(後述する図9参照)。また、各通水孔51が大きな破れの起点とならないように打ち抜きによる穿孔を行うことは任意である。これらについては、前記穿孔ピン20及び後述の穿孔ピン22についても同様である。
【0056】
図7を参照する。
図に示す農業用有孔フィルム502に設けられている通水孔51の配置は、穿孔ピンの配置を変えることにより、前記農業用有孔フィルム500、501の通水孔51のような等間隔で縦横に並ぶ配置と相違して千鳥掛け様の配置となっている。なお、通水孔51の配置は、これらに限定されるものではなく、適宜設定が可能である。千鳥
【0057】
図8を参照する。
前記農業用有孔フィルム500(または農業用有孔フィルム501、502)は、農業用ハウス7において、ハウス内の保温性を向上させるために、天井部の外張フィルム70との間に空間部71を形成する内張フィルム72として使用される。内張フィルム72は、チャンネル73を使用して、幅方向の中央部と両端側をフレーム74に固定し、通水孔51が設けられている両端側が下がるように傾斜させて展設される。
【0058】
この構造によれば、外張フィルム70の内面に結露した水滴が流れ落ちても内張フィルム72の縁部の通水孔51から順次排出されるので、十分な保温性を保持したまま、内張フィルム72上に水が溜まることを防止できる。
【実施例3】
【0059】
図9を参照する。
本実施例では、穿孔ローラとして穿孔ローラ2bを採用している。穿孔ローラ2bは、前記図1、図2に示す農業用フィルム穿孔装置A1の穿孔ローラ2と、図4、図5に示す農業用フィルム穿孔装置A2の穿孔ローラ2aの代替として使用することができる。
【0060】
穿孔ローラ2bは、外周面に複数のネジ孔21が設けられている。各ネジ孔21は、前記穿孔ローラ2、2aの穿孔ピン20、20aと軸周方向へは同様の配置で設けられ、長さ方向へはさらに両側へ二列ずつ数を増やして合計七列(二十一箇所)設けられている。各ネジ孔21には、取付用のネジ部(図示省略)を有する穿孔ピン22がネジ部をネジ込むことによって取り付けができ、取り外しもできる。なお、ネジ孔21と穿孔ネジ22のネジ部は付替手段を構成する。
【0061】
この構造によれば、穿孔ローラ2bに取り付けられる穿孔ピン22の取り付け位置を穿孔ローラ2bの長さ方向において変えることができるので、穿孔される農業用フィルムの幅が様々に異なるものであっても、穿孔ピン22を付け替えることで、農業用フィルムの端部側の所定の位置に合わせて通水孔51を穿孔することができる。
【0062】
なお、本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0063】
A1 農業用フィルム穿孔装置
1、1a 繰り出しローラ
10 受入孔
2 穿孔ローラ
20 穿孔ピン
3、3a 送りローラ
4 挟みローラ
40 アーム
41 ローラ
5 フィルム巻体
50 農業用フィルム
51 通水孔
6 接合機
500 農業用有孔フィルム
A2 農業用フィルム穿孔装置
1b、1c 繰り出しローラ
1d、1e 繰り出しローラ
2a 穿孔ローラ
20a 穿孔ピン
3b 送りローラ
5a、5b フィルム巻体
50a、50b 農業用フィルム
501 農業用有孔フィルム
502 農業用有孔フィルム
2b 穿孔ローラ
21 ネジ孔
22 穿孔ピン
7 農業用ハウス
70 外張フィルム
71 空間部
72 内張フィルム
73 チャンネル
74 フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農業用ハウスの内張りに使用される農業用フィルムに通水孔を穿孔する装置であって、
フィルム巻体から農業用フィルムを繰り出すことができるようにしてフィルム巻体を配置する繰り出し機構(1,1a)と、
繰り出された農業用フィルムの幅方向の端部側に穿孔ピン(20)で通水孔を穿孔する穿孔ローラ機構(2,1a)と、
農業用フィルムの送り方向において前記穿孔ローラ機構(2,1a)の下手側に設けられており、穿孔した農業用フィルムを送り出す送りローラ機構(3,3a)と、
を備えている、
農業用フィルム穿孔装置。
【請求項2】
繰り出し機構は二本のローラ(1,1a)を含み、繰り出し機構と穿孔ローラ機構(2,1a)とは隣接しており、前記穿孔ローラ機構(2,1a)は、外周面に穿孔ピン(20)を有する穿孔ローラ(2)と、該穿孔ローラ(2)の穿孔ピン(20)を受け入れる受入孔(10)を有する有孔ローラ(1a)を備え、該有孔ローラ(1a)は、前記繰り出し機構(1,1a)のローラの一つを兼ねている、
請求項1記載の農業用フィルム穿孔装置。
【請求項3】
農業用ハウスの内張りに使用される二折り状態の農業用フィルムに通水孔を穿孔する装置であって、
農業用フィルム(50)を巻き取ったフィルム巻体(5)を転動できるように載置して農業用フィルム(50)を繰り出すことができるようにする並設された繰り出しローラ(1,1a)と、
外周部に穿孔ピン(20)を有し、繰り出された農業用フィルム(50)の幅方向の端部側に穿孔ピン(20)で通水孔(51)を穿孔する穿孔ローラ(2)と、
農業用フィルム(50)の送り方向において穿孔ローラ(2)の下手側に設けられており、穿孔した農業用フィルム(50)を送り出す送りローラ(2)と、
を備えており、
前記穿孔ローラ(2)は、前記各繰り出しローラ(1,1a)の一方の繰り出しローラ(1a)に並設されており、該繰り出しローラ(1a)には穿孔ローラ(2)の穿孔ピン(20)を受け入れる受入孔(10)が設けられており、前記繰り出しローラ(1a)は繰り出しローラセット(1,1a)の一つを兼ねている、
農業用フィルム穿孔装置。
【請求項4】
農業用ハウスの内張に使用されるフィルムに通水孔を穿孔する装置であって、
複数本のフィルム巻体(5a,5b)を配置する繰り出し機構(1b,1c)(1d,1e)と、
前記複数本のフィルム巻体(5a,5b)から繰り出された当該フィルムを幅方向に接ぎ合わせる接合機(6)と、
外周面に穿孔ピン(20)を有し、前記複数本のフィルム巻体(5a,5b)から繰り出されたフィルム(50a,50b)の接ぎ合わされない側に、前記穿孔ピン(20)で通水孔(51)を穿孔する穿孔ローラ(2a)と、
フィルム(50a,50b)の送り方向において穿孔ローラ(2a)の下手側に設けられており、穿孔し接ぎ合わされたフィルム(50a,50b)を送り出す送りローラ(3b)と、
を備えており、
前記接合機は、フィルム(50a,50b)の送り方向において穿孔ローラ(2a)の上手側または下手側に配置されている、
農業用フィルム穿孔装置。
【請求項5】
穿孔ピン(20,22)の取り付け位置を穿孔ローラ(2,2a,2b)の長さ方向において変えることができる付替手段(21)を備えている、
請求項1ないし4のいずれかに記載の各農業用フィルム穿孔装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−213591(P2010−213591A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61763(P2009−61763)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(592255095)協伸化成株式会社 (5)
【Fターム(参考)】