説明

農業用フィルム

【課題】機械的強度及び耐熱融着性に優れた農業用フィルムを提供する。
【解決手段】密度が0.900〜0.930g/cm3で且つメルトフローレイト(MFR)が0.3〜5.0g/10分であるポリエチレン系樹脂、又は酢酸ビニル含有量が5.0〜25重量%で且つMFRが0.5〜4.0g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を含む層(A)、酢酸ビニル含有量が5.0〜25重量%で且つMFRが0.5〜4.0g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を含む層(B)、及び密度が0.900〜0.930g/cm3で且つMFRが0.3〜5.0g/10分であるポリエチレン系樹脂を含む層(C)が、この順で積層一体化されてなり、上記層(A)又は上記層(C)のうちの少なくとも一方が、各層に含まれる樹脂成分100重量部に対して、粒子径が5〜10μmのシリカ粒子を0.1〜0.5重量部含む農業用フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作物の栽培施設(農業用ハウス)に使用される農業用フィルムに関する。詳しくは、金属製のパイプなどにより構成された栽培施設に展張される農業フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、農作物を栽培する手段として、農業用ハウスを用いたハウス栽培が盛んに行なわれている。上記ハウス栽培においては、農業用ハウスによって、ハウス内を農作物の生育に適した条件にしたり、風雨から農作物を守ったり、石や埃などの飛来物による農作物の損傷を防いだりすることができる。
【0003】
上記農業用ハウスは、ハウスの骨組みに農業用フィルムを展張して被覆することにより形成され、ここで用いられる農業用フィルムとしては、従来、ポリ塩化ビニルフィルムが多く用いられてきた。しかしながら、近年では、環境への安全性の配慮からエチレン−酢酸ビニル共重合体を主体とする農業用フィルムが盛んに使用されるようになっている。
【0004】
このようなエチレン−酢酸ビニル共重合体を主体とする農業用フィルムとしては、例えば、特許文献1に、フィルム外層はエチレン−α−オレフィン共重合体と高密度ポリエチレンとからなる樹脂組成物を主成分とし、フィルム中間層はエチレン−酢酸ビニル共重合体とMg、Ca、Al、Si、Liの少なくとも1原子を含有する無機微粒子とを含有してなる樹脂組成物を主成分とし、フィルム内層はエチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分とする3層構造の農業用フィルムが開示されている。
【0005】
又、特許文献2には、3層積層フィルムであって、フィルム内外層がエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる層であり、フィルム中間層がメタロセン触媒で共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体とエチレン−酢酸ビニル共重合体と、Mg、Ca、Al、Si、Liの少なくとも1原子を含有する無機微粒子とを含有してなる樹脂組成物を主成分とする層であることを特徴とする農業用フィルムが開示されている。
【0006】
更に、特許文献3には、第一層はエチレン−α−オレフィン共重合体を主成分とする層であり、第二層はエチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対しエチレン−α−オレフィン共重合体を25〜100重量部含有してなる樹脂組成物からなる層であり、第三層はエチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対しエチレン−α−オレフィン共重合体を0〜50重量部含有してなる樹脂組成物からなる層であることを特徴とする農業用フィルムが開示されている。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1〜3のようなエチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分とする農業用フィルムは、引裂強度及びインパクト強度に劣るため、台風などにより強い風が吹いた際に、農業用フィルムの折り目部分から裂けたり、石や埃などの飛来物によりフィルムが突き破られたりして、長期間に亘って使用することができなかった。
【0008】
また、農業用フィルムは、製造後や使用後に、巻き取ってロール状としたり、折り畳んで積層体とした状態で輸送又は保管される。特に夏季などの高温環境下で農業用フィルムを上記のような状態で置いておくと、フィルム同士が熱融着して剥離することができなくなる問題もあった。熱融着した農業用フィルム同士を無理に剥離しようとすると、フィルムが伸びて白くなったり、破れてしまう恐れがある。このため、高温環境下であってもフィルム同士の熱融着が生じない耐熱融着性に優れた農業用フィルムが所望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−324957号公報
【特許文献2】特開2000−238201号公報
【特許文献3】特開2001−334612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明は、機械的強度及び耐熱融着性に優れた農業用フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の農業用フィルムは、密度が0.900〜0.930g/cm3で且つメルトフローレイト(MFR)が0.3〜5.0g/10分であるポリエチレン系樹脂、又は酢酸ビニル含有量が5.0〜25重量%で且つメルトフローレイト(MFR)が0.5〜4.0g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を含む層(A)、
酢酸ビニル含有量が5.0〜25重量%で且つメルトフローレイト(MFR)が0.5〜4.0g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を含む層(B)、及び
密度が0.900〜0.930g/cm3で且つメルトフローレイト(MFR)が0.3〜5.0g/10分であるポリエチレン系樹脂を含む層(C)が、この順で積層一体化されてなり、
上記層(A)又は上記層(C)のうちの少なくとも一方が、各層に含まれる樹脂成分100重量部に対して、平均粒子径が5〜10μmであるシリカ粒子を0.1〜0.5重量部含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の農業用フィルムは、密度が0.900〜0.930g/cm3で且つメルトフローレイト(MFR)が0.3〜5.0g/10分であるポリエチレン系樹脂、または酢酸ビニル含有量が5.0〜25重量%で且つメルトフローレイト(MFR)が0.5〜4.0g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を含む層(A)、酢酸ビニル含有量が5.0〜25重量%で且つメルトフローレイト(MFR)が0.5〜4.0g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を含む層(B)、及び密度が0.900〜0.930g/cm3で且つメルトフローレイト(MFR)が0.3〜5.0g/10分であるポリエチレン系樹脂を含む層(C)が、この順で積層一体化されてなることから、引裂強度やインパクト強度などの機械的強度に優れている。従って、本発明の農業用フィルムは、強風などによりフィルムの折り目部分が裂けたり、石や埃などの飛来物によりフィルムが突き破られたりすることがほとんどないので、長期間に亘って好適に使用することができる。
【0013】
また、本発明の農業用フィルムでは、最外層に配置されている層(A)又は層(C)のうちの少なくとも一方が特定の大きさのシリカ粒子を特定量で含むことにより、層の表面に適度な凹凸が形成され、フィルム表面の温度が40℃以上となるような高温環境下での長期間に亘る保管後であってもフィルム同士が強固に密着したり、熱融着するのを高く抑制することができる。したがって、上記農業用フィルムは、これをロール状に巻き取ったり、折り畳んだりするなどして保管した後であっても熱融着せず容易に剥がすことができ、農業用ハウスやトンネルなどに農業用フィルムを展張する作業を容易に行うことができる。また、層(A)又は層(C)のうちの少なくとも一方が特定の大きさのシリカ粒子を特定量で含むことにより、得られる農業用フィルムの機械的強度を向上させることも可能となる。
【0014】
また、各層に白色顔料が含有されていると共に、層(A)及び層(B)に黒色顔料が含有されているのが好ましい。このような場合、層(C)が白色となり、層(A)及び層(B)が灰色となる農業用フィルムが得られ、当該フィルムでは層(C)により日光の一部が反射されると共に、層(B)を透過した日光は層(A)及び層(B)により吸収されるので、優れた遮光性を有している。また、当該フィルムでは、各層に白色顔料を含有させることにより、熱線である赤外線や遠赤外線を反射することもでき、遮熱性にも優れている。
【0015】
さらに、本発明の農業用フィルムは、アルミニウムを含有せず、柔軟性に優れているため、コンパクトに収納することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[層(A)]
上記層(A)には、主成分として、ポリエチレン系樹脂又はエチレン−酢酸ビニル共重合体が含有されている。
【0017】
上記ポリエチレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体などが挙げられ、単独で用いられても、二種以上が併用されてもよい。これらのポリエチレン系樹脂の中でもエチレン−α−オレフィン共重合体が好ましく、直鎖状低密度ポリエチレンがより好ましい。
【0018】
上記直鎖状低密度ポリエチレンは、Ziegler触媒や、メタロセン触媒などのシングルサイト系触媒を用いて、エチレンとα−オレフィンとを共重合して得られ、α−オレフィンの種類や量を調整することによって密度範囲を制御することができる。
【0019】
なお、上記α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテンなどが挙げられ、単独で用いられても、二種以上が併用されてもよい。
【0020】
また、上記ポリエチレン系樹脂として、エチレン−α−オレフィン共重合体と低密度ポリエチレンとを併用するのが特に好ましい。これらを組み合わせて用いることにより農業用フィルムの耐熱融着性を向上させることができる。
【0021】
そして、上記ポリエチレン系樹脂の密度は、低いと、農業用フィルムを畳んで保管する際にブロッキングや熱融着が発生する一方、高いと、農業用フィルムのインパクト強度が低下し、飛来物に起因するフィルムの破れが生じやすくなるので、0.900〜0.930g/cm3に限定され、0.905〜0.925g/cm3が好ましく、0.910〜0.920g/cm3がより好ましい。
【0022】
なお、本発明におけるポリエチレン系樹脂の密度は、JIS K7112「プラスチック−非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法」に準拠して測定された値をいう。
【0023】
又、上記ポリエチレン系樹脂のメルトフローレイト(MFR)は、小さいと、層(A)ひいては農業用フィルムの製膜性が悪化する一方、大きいと、層(A)ひいては農業用フィルムの引張強度や機械的強度が低下するので、0.3〜5.0g/10分に限定され、0.5〜4.5g/10分が好ましく、0.8〜4.0g/10分がより好ましい。
【0024】
なお、上記層(A)に複数種類のポリエチレン系樹脂が含有されている場合、ポリエチレン系樹脂の密度及びメルトフローレイト(MFR)とはそれぞれ、ポリエチレン系樹脂の混合物の見かけ上の密度及びメルトフローレイト(MFR)をいう。
【0025】
又、上記エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル成分の含有量は、少ないと、層(A)ひいては農業用フィルムのインパクト強度や柔軟性が不十分になって、農業用フィルムをコンパクトに収納することができないという問題が生じる一方、多いと、層(A)ひいては農業用フィルムの製膜性が悪化したり、機械的強度が低下したりするので、5.0〜25重量%に限定され、5.0〜20重量%が好ましい。
【0026】
又、上記エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレイト(MFR)は、小さいと、層(A)ひいては農業用フィルムの製膜性が低下する一方、大きいと、層(A)ひいては農業用フィルムの機械的強度が低下するので、0.5〜4.0g/10分に限定され、0.8〜2.0g/10分が好ましい。
【0027】
なお、上記層(A)に複数種類のエチレン−酢酸ビニル共重合体が含有されている場合、エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル成分の含有量及びメルトフローレイト(MFR)とはそれぞれ、エチレン−酢酸ビニル共重合体の混合物の見かけ上の酢酸ビニル成分の含有量及びメルトフローレイト(MFR)をいう。
【0028】
ここで、本発明におけるポリエチレン系樹脂及びエチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレイト(MFR)は、JIS K7210「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト及びメルトボリュームフローレイトの試験方法」に準拠して、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定された値をいう。
【0029】
上記層(A)には、ポリエチレン系樹脂又はエチレン−酢酸ビニル共重合体の何れか一方或いは双方が主成分として含有されているが、ポリエチレン系樹脂のみが含有されているのが好ましい。ポリエチレン系樹脂は、より優れた耐熱融着性を農業用フィルムに付与できる。
【0030】
上記層(A)におけるポリエチレン系樹脂及びエチレン−酢酸ビニル共重合体の総含有量は、上記層(A)を構成する全成分に対して、60重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましい。
【0031】
[層(B)]
本発明の農業用フィルムの層(B)には、主成分として、エチレン−酢酸ビニル共重合体が含有されている。層(B)にエチレン−酢酸ビニル共重合体を用いることにより、農業用フィルムの柔軟性を確保することができ、このような農業用フィルムは容易に折り畳んで収納することができる。
【0032】
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル成分の含有量は、少ないと、層(B)ひいては農業用フィルムの柔軟性が不十分になる問題が生じる一方、多いと、層(B)ひいては農業用フィルムの製膜性が悪化したり、機械的強度が低下したりするので、5.0〜25重量%に限定され、10〜20重量%が好ましい。
【0033】
又、上記エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレイト(MFR)は、小さいと、層(B)ひいては農業用フィルムの製膜性が低下する一方、大きいと、層(B)ひいては農業用フィルムの機械的強度が低下するので、0.5〜4.0g/10分に限定され、0.8〜2.0g/10分が好ましい。
【0034】
なお、層(B)に複数種類のエチレン−酢酸ビニル共重合体が含有されている場合、エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル成分の含有量及びメルトフローレイト(MFR)とはそれぞれ、エチレン−酢酸ビニル共重合体の混合物の見かけ上の酢酸ビニル成分の含有量及びメルトフローレイト(MFR)をいう。
【0035】
上記層(B)は、エチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分として含むが、上記層(B)におけるエチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量は、上記層(B)を構成する全成分に対して、好ましくは60重量%以上、より好ましくは80重量%以上とするのが好ましい。
【0036】
[層(C)]
本発明の農業用フィルムの層(C)には、主成分として、ポリエチレン系樹脂が含有されている。このポリエチレン系樹脂としては、上記層(A)に用いられるポリエチレン系樹脂と同じものが用いられる。
【0037】
また、上記ポリエチレン系樹脂として、エチレン−α−オレフィン共重合体と低密度ポリエチレンとを併用するのが特に好ましい。これらを組み合わせて用いることにより農業用フィルムの耐熱融着性を向上させることができる。
【0038】
上記ポリエチレン系樹脂の密度は、低いと、農業用フィルムを畳んで保管する際にブロッキングや熱融着が発生する一方、高いと、農業用フィルムは腰が強くなって、コンパクトに収納することができなくなるので、0.900〜0.930g/cm3に限定され、0.905〜0.925g/cm3が好ましく、0.910〜0.920g/cm3がより好ましい。
【0039】
又、上記ポリエチレン系樹脂のメルトフローレイト(MFR)は、小さいと、層(C)ひいては農業用フィルムの製膜性が悪化する一方、大きいと、層(C)ひいては農業用フィルムの機械的強度が低下するので、0.3〜5.0g/10分に限定され、0.5〜4.5g/10分が好ましく、0.8〜4.0g/10分がより好ましい。
【0040】
なお、上記層(C)に複数種類のポリエチレン系樹脂が含有されている場合、ポリエチレン系樹脂の密度及びメルトフローレイト(MFR)とはそれぞれ、ポリエチレン系樹脂の混合物の見かけ上の密度及びメルトフローレイト(MFR)をいう。
【0041】
上記層(C)は、ポリエチレン系樹脂を主成分として含むが、上記層(C)におけるポリエチレン系樹脂の含有量は、上記層(C)を構成する全成分に対して、好ましくは60重量%以上、より好ましくは80重量%以上とするのが好ましい。
【0042】
なお、本発明の農業用フィルムを共押出によって製膜する場合、農業用フィルムの製膜性の面から、層(A)中のポリエチレン系樹脂又はエチレン−酢酸ビニル共重合体、層(B)中のエチレン−酢酸ビニル共重合体、及び、層(C)中のポリエチレン系樹脂は、互いにメルトフローレイト(MFR)の値が近いものを用いるのが好ましく、具体的には、上記層(A)中のポリエチレン系樹脂又はエチレン−酢酸ビニル共重合体、層(B)中のエチレン−酢酸ビニル共重合体及び層(C)中のポリエチレン系樹脂のうち、メルトフローレイト(MFR)が最も大きいものと最も小さいものとのメルトフローレイト(MFR)の差が2.0g/10分以下であるのが好ましい。
【0043】
[シリカ粒子]
本発明の農業用フィルムでは、層(A)又は層(C)のうちの少なくとも一方が、各層に含まれる樹脂成分100重量部に対して、平均粒子径が5〜10μmであるシリカ粒子を0.1〜0.5重量部含んでいる。
【0044】
本発明の農業用フィルムでは、最外層に配置されている層(A)又は層(C)のうちの少なくとも一方が特定の大きさのシリカ粒子を特定量で含むことにより、層の表面に適度な凹凸が形成されている。農業用フィルムをロール状に巻き取ったり、折り畳んで積層体とした場合には、フィルム同士の重なり部分では、一方のフィルムの層(A)と他方のフィルムの層(C)とが重なりあった状態となる。したがって、層(A)又は層(C)のうちの少なくとも一方に表面に適度な凹凸が形成されていることにより、層(A)と層(C)との接触面積を小さくして、フィルム同士が熱融着するのを高く抑制することができる。また、層(A)又は層(C)のうちの少なくとも一方が特定の大きさのシリカ粒子を特定量で含むことにより、得られる農業用フィルムの機械的強度を向上させることも可能となる。
【0045】
シリカ粒子としては、天然シリカ粒子又は合成シリカ粒子が挙げられる。天然シリカ粒子としては、石英を主成分とするケイ砂、シラスパーライトなどが挙げられる。また、合成シリカ粒子としては、ケイ酸ナトリウムと酸との反応により得られたもの、アルコキシシランの加水分解により得られたもの、カルシウムシリケートと酸との反応により得られたものなどが挙げられる。これらのシリカ粒子は、一種のみが用いられてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0046】
シリカ粒子の平均粒子径は、5〜10μmであるが、5〜8μmが好ましい。平均粒子径が5μm未満であるシリカ粒子では、凝集を生じやすく、層(A)及び層(C)において高分散されないために、フィルム同士の密着や熱融着を十分に抑制できない恐れがある。また、平均粒子径が10μmを超えるシリカ粒子では、農業用フィルムの機械的強度、透明性やヘイズ値を低下させる恐れがある。
【0047】
シリカ粒子の平均粒子径の測定は、例えば、本発明の農業用フィルムの断面を、透過型電子顕微鏡(SEM)により、数万倍〜数十万倍の倍率で撮影し得られたSEM写真より、100個以上のシリカ粒子(一次粒子)の投影面積円相当径を測定して、得られた値を相加平均することにより行われる。なお、シリカ粒子の投影面積円相当径とは、シリカ粒子の投影面積と同面積を有する真円の直径を意味する。この投影面積円相当径は、特に制限されないが、例えば上記で得られるSEM写真像を、画像処理ソフトウェア(例えば、ニレコ社製 ルーゼックス(登録商標)AP)を用いて画像解析することにより求められる。
【0048】
シリカ粒子は、層(A)又は層(C)のうちの少なくとも一方の層に含有されているが、少なくとも層(A)に含有されているのが好ましく、層(A)及び層(C)の双方の層に含有されているのがより好ましい。このようにシリカ粒子を用いることにより、農業用フィルムにより優れた熱融着性を付与することができる。この時、層(B)には、シリカ粒子が含有されていないのが好ましい。層(B)がシリカ粒子を含まないことにより、農業用フィルムの柔軟性を向上させることができる。
【0049】
層(A)及び層(C)の各層におけるシリカ粒子の含有量は、各層に含まれる樹脂成分100重量部に対して、0.1〜0.5重量部が好ましく、0.3〜0.5重量部がより好ましい。0.1重量部未満のシリカ粒子を含む層では、フィルム同士の密着や熱融着を十分に抑制できない恐れがある。また、0.5重量部を超えるシリカ粒子を含む層では、農業用フィルムの機械的強度、透明性やヘイズ値を低下させる恐れがある。
【0050】
なお、本発明において、各層における樹脂成分とは、各層に含まれる全ての樹脂を意味する。したがって、上記樹脂成分には、主成分として用いられる樹脂の他、マスターバッチ等を用いることにより主成分とは異なる他の樹脂を含む場合には当該他の樹脂も含む。
【0051】
[顔料]
本発明の農業用フィルムは、層(A)が、樹脂成分100重量部に対して、白色顔料5.0〜30重量部及び黒色顔料0.1〜5.0重量部を含有し、層(B)が、樹脂成分100重量部に対して、白色顔料1.0〜10重量部及び黒色顔料0.1〜5.0重量部を含有し、且つ層(C)が、樹脂成分100重量部に対して、白色顔料5.0〜50重量部含有し、且つ黒色顔料を含有しない構成を有しているのが好ましい。このような構成を採用することにより、農業用フィルムに遮光性を付与することが可能となる。
【0052】
近年、植物の栽培方法として植物の習性を利用した栽培方法が提案されている。このような栽培方法の一つとして、植物の光周性を利用した栽培方法が挙げられ、これは太陽からの採光を適宜調整することにより、陽の当たる時間(明期)と陽の当たらない時間(暗期)とを調整して、花芽の生育や開花を早めたり逆に遅らせたりする方法である。
【0053】
上記植物の光周性を利用した栽培方法は、例えば、暗期を長くすることによって花芽がつきやすくなるキクの栽培などに用いられている。暗期を長くする方法としては、昼間に遮光性の高いフィルムで農業用ハウス内を覆う方法が採られている。このような遮光性の農業用フィルムは、植物に太陽光を当てる際には巻き上げて収納されることが多い。巻き上げられた農業用フィルムには熱がこもりやすく、フィルム同士が熱融着し易くなる。
【0054】
本発明の農業用フィルムは、顔料を含むことにより優れた遮光性を有すると共に、熱融着の発生を高く防止することができることから、遮光性農業用フィルムとして特に好適に用いられる。また、遮光性を付与するために、アルミニウムを用いずに白色顔料及び黒色顔料を用いていることから、柔軟性に優れ、コンパクトに収納することも可能となる。
【0055】
層(A)には、農業用フィルムの遮光性及び遮熱性を高める目的で、白色顔料が含有されている。上記白色顔料としては、白色を呈する顔料であれば特に限定されず、例えば、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタンなどの酸化チタン、酸化亜鉛(亜鉛華)、硫化亜鉛、鉛白、モリブデンホワイト、リトポンなどが挙げられ、これらの中でも遮光性に優れた酸化チタンが好ましく、特に遮光性に優れたルチル型酸化チタンがより好ましい。なお、上記白色顔料は、単独で用いられても、二種以上が併用されてもよい。なお、本発明において、白色とは、いわゆるマンセル表色系でいう明度が8〜10である色を意味する。
【0056】
又、上記白色顔料の平均粒子径は、小さいと、白色顔料が凝集しやすくなって、上記層(A)中に白色顔料を均一に分散させることが困難になったり、農業用フィルムの取扱性が悪化することがある一方、大きいと、層(A)ひいては農業用フィルムの機械的強度が低下することがあるので、100〜300nmが好ましく、150〜250nmがより好ましい。
【0057】
なお、本発明における白色顔料の平均粒子径は、レーザー回折法により測定された値をいう。
【0058】
上記層(A)中における白色顔料の含有量は、樹脂成分100重量部に対して5.0〜30重量部が好ましく、10〜25重量部がより好ましい。これは、上記層(A)における白色顔料の含有量が、少ないと、層(A)における黒色顔料の割合が高くなって層(A)が黒っぽくなり、ひいては層(C)の色目が黒くなって、農業用フィルムの遮熱性が低下する一方、多いと、層(A)ひいては農業用フィルムの製膜性及び機械的強度が低下するからである。
【0059】
又、上記層(A)には、農業用フィルムの遮光性を高める目的で、黒色顔料が含有されている。上記黒色顔料としては、黒色を呈する顔料であれば特に限定されず、例えば、塗料用、ペースト用、プラスチックへの充填用などの用途に使用されているカーボンブラック、アニリンブラックなどが挙げられ、安全性及び経済性からカーボンブラックが好ましい。なお、上記黒色顔料は、単独で用いられても、二種以上が併用されてもよい。なお、本発明において、黒色とは、いわゆるマンセル表色系でいう明度が0〜2である色を意味する。
【0060】
又、上記層(A)中における黒色顔料の含有量は、樹脂成分100重量部に対して0.1〜5.0重量部が好ましく、0.1〜3.0重量部がより好ましい。これは、上記層(A)における黒色顔料の含有量が、少ないと、農業用フィルムの遮光性が低下する一方、多いと、層(A)が黒っぽくなり、ひいては層(C)の色目が黒くなって、農業用フィルムの遮熱性が低下するからである。
【0061】
上記層(B)には、農業用フィルムの遮光性及び遮熱性を向上させることを目的として、白色顔料が含有されているのが好ましい。上記白色顔料としては、上記層(A)に含有されている白色顔料と同様のものが挙げられ、中でも遮光性に優れた酸化チタンが好ましく、特に遮光性に優れたルチル型酸化チタンがより好ましい。なお、上記白色顔料は、単独で用いられても、二種以上が併用されていてもよい。
【0062】
又、上記白色顔料の平均粒子径は、小さいと、白色顔料が凝集しやすくなって、層(B)中に白色顔料を均一に分散させることが困難になったり、農業用フィルムの取扱性が悪化することがある一方、大きいと、層(B)ひいては農業用フィルムの機械的強度が低下することがあるので、100〜300nmが好ましく、150〜250nmがより好ましい。
【0063】
更に、層(B)における白色顔料の含有量は、樹脂成分100重量部に対して1.0〜10重量部が好ましく、3.0〜8.0重量部がより好ましく、4.0〜6.0重量部が特に好ましい。これは、層(B)における白色顔料の含有量が、少ないと、層(B)における黒色顔料の割合が高くなって層(B)が黒っぽくなり、ひいては層(C)の色目が黒くなって、農業用フィルムの遮熱性が低下する一方、多いと、層(B)ひいては農業用フィルムの製膜性及び機械的強度が低下するからである。
【0064】
そして、層(B)には、農業用フィルムの遮光性を高めることを目的として、黒色顔料が含有されているのが好ましい。上記黒色顔料としては、上記層(A)に含有されている黒色顔料と同様のものが挙げられ、安全性及び経済性からカーボンブラックが好ましい。なお、上記黒色顔料は、単独で用いられても、二種以上が併用されていてもよい。
【0065】
そして、層(B)における黒色顔料の含有量は、上樹脂成分100重量部に対して、0.1〜5.0重量部が好ましく、0.5〜3.0重量部がより好ましく、1.0〜2.0重量部が特に好ましい。これは、層(B)における黒色顔料の含有量が、少ないと、農業用フィルムの遮光性が低下する一方、多いと、層(B)が黒っぽくなり、ひいては層(C)の色目が黒くなって、農業用フィルムの遮熱性が低下するからである。
【0066】
層(C)には、農業用フィルムの遮光性及び遮熱性を向上させる目的で、白色顔料が含有されているのが好ましい。上記白色顔料としては、上記層(A)に含有されている白色顔料と同様のものが挙げられ、中でも遮光性に優れた酸化チタンが好ましく、特に遮光性に優れたルチル型酸化チタンがより好ましい。なお、上記白色顔料は、単独で用いられても、二種以上が併用されてもよい。
【0067】
又、上記白色顔料の平均粒子径は、小さいと、白色顔料が凝集しやすくなって、層(C)中に白色顔料を均一に分散させることが困難になったり、農業用フィルムの取扱性が悪化することがある一方、大きいと、層(C)ひいては農業用フィルムの機械的強度が低下することがあるので、100〜300nmが好ましく、150〜250nmがより好ましい。
【0068】
そして、層(C)における白色顔料の含有量は、樹脂成分100重量部に対して、5.0〜30重量部が好ましく、10〜25重量部がより好ましく、15〜20重量部が特に好ましい。これは、層(C)における白色顔料の含有量が、少ないと、層(C)の白色性が不十分になって、農業用フィルムの遮熱性が低下する一方、多いと、層(C)ひいては農業用フィルムの製膜性及び機械的強度が低下するからである。
【0069】
又、層(C)には、黒色顔料が含有されていないのが好ましい。これは、農業用フィルムに黒色顔料が含有されていると、層(C)の白色性が損なわれ、層(C)が赤外線、遠赤外線を十分に反射できなくなり、農業用フィルムの遮熱性が低下するからである。
【0070】
本発明の農業用フィルムが、遮光性農業用フィルムとして農業用ハウス内において植物の光周性を利用した栽培方法に使用される場合、当該フィルムは農業用ハウス内において栽培されている植物に日光が照射されないようにするために用いられる。この時、本発明の遮光性農業用フィルムは、層(A)を内側(植物側)にして農業用ハウス内に配設される。
【0071】
このようにして農業用ハウス内に照射される日光を農業用フィルムによって遮蔽し或いは調整し、植物の光周性を利用すると共に農業用ハウス内の温度を調整することによって、例えば、花芽の形成や開花時期を調整することができる。
【0072】
一方、農業用ハウス内において栽培されている植物に日光を照射させる場合には、農業用フィルムを除去すればよく、植物に対する日光の照射及び遮蔽を農業用フィルムの配設、除去によって容易に調整することができる。
【0073】
[非イオン系界面活性剤]
本発明の農業用フィルムには、その防曇性を向上させる目的で非イオン系界面活性剤が含有されているのが好ましい。上記非イオン系界面活性剤としては、防曇性を付与できるものであれば特に限定されないが、多価アルコール脂肪酸エステルや、多価アルコール脂肪酸エステルにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加してなるアルキレンオキサイド付加多価アルコール脂肪酸エステルが好適に用いられる。
【0074】
そして、上記多価アルコール脂肪酸エステルとしては、特に限定されず、グリセリンステアリン酸エステル、ジグリセリンステアリン酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エステル、ソルビトールステアリン酸エステルなどの多価アルコール飽和脂肪酸エステル;グリセリンオレイン酸エステル、ジグリセリンオレイン酸エステルなどの多価アルコール不飽和脂肪酸エステルなどが挙げられ、多価アルコール飽和脂肪酸エステルが好ましい。
【0075】
又、上記アルキレンオキサイド付加多価アルコール脂肪酸エステルとしては、上述の多価アルコール脂肪酸エステルに、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させたものが挙げられる。
【0076】
そして、上記アルキレンオキサイド付加多価アルコール脂肪酸エステルにおけるアルキレンオキサイドの付加モル数は、0.1〜10モルが好ましい。これは、アルキレンオキサイドの付加モル数が少ないと、農業用フィルムの防曇性が低下することがある一方、多いと、アルキレンオキサイド付加多価アルコール脂肪酸エステルの水に対する溶解性が高くなり、アルキレンオキサイド付加多価アルコール脂肪酸エステルが結露水に溶解して流れ出し、農業用フィルムの防曇性が低下することがあるからである。
【0077】
そして、上記非イオン系界面活性剤は、上記農業用フィルムを構成する層(A)、層(B)又は層(C)のうちの少なくとも一層に、好ましくは全ての層に含まれる。各層における上記非イオン系界面活性剤の含有量は、各層を構成している樹脂成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部含有され、より好ましくは1.0〜5.0重量部含有される。
【0078】
これは、各層において、上記非イオン系界面活性剤の含有量が少なすぎると、農業用フィルムの防曇性が不十分となり、農業用フィルムの表面に付着した結露水が農業用ハウス内で栽培している作物の上に直接落下する、所謂、ボタ落ち現象によって作物に病害が発生しやすくなるからである。
【0079】
一方、各層において、上記非イオン系界面活性剤の含有量が多すぎる場合にあっては、農業用フィルムの表面に非イオン系界面活性剤がブリードアウトし過ぎて農業用フィルムがべたつき、農業用フィルムの取扱性が低下する。
【0080】
又、上記のようにして農業用フィルム中に含有されている非イオン系界面活性剤は、ブリードアウトして農業用フィルムの表面に滲出するため、農業用フィルムは優れた防曇性を発揮する。
【0081】
[添加剤]
なお、上記農業用フィルムは、必要に応じて物性を損なわない範囲においてヒンダードアミン系光安定剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤などを含んでいてもよい。
【0082】
上記ヒンダードアミン系光安定剤としては、従来公知の任意のものが使用され、単独あるいは二種以上を混合して使用することができる。具体的には、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ{[6−[(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]}などが挙げられる。
【0083】
そして、上記熱安定剤としては、従来公知の任意のものが使用され、具体的には、カルボン酸の金属塩、フェノール系抗酸化剤、有機亜燐酸エステルなどのキレーターなどが挙げられ、単独で用いられても、二種以上が併用されてもよい。
【0084】
そして、上記紫外線吸収剤としては、従来公知の任意のものが使用され、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸エステル系、シアノアクリレート系などを単独あるいは二種以上を混合して使用することができる。具体的には、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が挙げられる。
【0085】
又、上記滑剤としては、従来公知の任意のものが使用され、ステアリン酸アマイドなどの飽和脂肪酸アマイド、エルカ酸アマイド、オレイン酸アマイドなどの不飽和脂肪酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイドなどのビスアマイドなどが挙げられ、単独で用いられても、二種以上が併用されてもよい。
【0086】
上記農業用フィルムの厚みは、薄いと、農業用フィルムの機械的強度が低下することがある一方、厚いと、農業用フィルムの裁断、接合、展張作業などが困難になり、取扱性が低下するので、50〜150μmが好ましく、80〜120μmがより好ましい。
【0087】
上記農業用フィルムにおいて、層(A)の厚さは、上記農業用フィルム全体の厚さに対して、5〜30%が好ましく、10〜20%がより好ましい。また、層(B)の厚さは、上記農業用フィルム全体の厚さに対して、40〜90%が好ましく、60〜80%がより好ましい。さらに、層(C)の厚さは、上記農業用フィルム全体の厚さに対して、5〜30%が好ましく、10〜20%がより好ましい。
【0088】
次に、上記農業用フィルムの製膜方法について説明する。上記農業用フィルムの製造方法としては、特に限定されず、例えば、多層インフレーション法、多層Tダイ法、多層ラミネート法、カレンダー法などの従来公知の方法が挙げられる。
【0089】
上記製膜方法の中でも、各層を構成する樹脂成分、シリカ粒子及び必要に応じて顔料などを含む樹脂組成物をそれぞれ別々の押出機内で溶融混練させた後、それぞれの押出機から溶融状態の樹脂組成物を円形の多層ダイスに供給し、円形の多層ダイスから溶融状態の樹脂組成物を共押出して円筒状のフィルムを製膜すると共に、この円形の多層ダイスの中心部から圧縮空気を供給し、共押出製膜された円筒状のフィルムを周方向に延伸することによって農業用フィルムを製膜する多層インフレーション法が好ましい。
【実施例】
【0090】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0091】
(実施例1)
1.樹脂組成物(a)の調製
表1に示した所定量の、直鎖状低密度ポリエチレン(a)(密度:0.920g/cm3、メルトフローレイト:1.2g/10分)、低密度ポリエチレン(a)(密度:0.920g/cm3、メルトフローレイト:1.2g/10分)、合成シリカ粒子マスターバッチ(1)(大日精化社製 商品名「PE1300」、合成シリカ粒子の含有量:20重量%、合成シリカ粒子の平均粒子径:8μm、低密度ポリエチレン含有量:80重量%、低密度ポリエチレン密度:0.919g/cm3、低密度ポリエチレンのメルトフローレイト:5.0g/10分)、非イオン系界面活性剤マスターバッチ(非イオン系界面活性剤の含有量:20重量%、非イオン系界面活性剤の主成分:ジグリセリンステアリン酸エステル、低密度ポリエチレンの含有量:80重量%、低密度ポリエチレンの密度:0.920g/cm3、低密度ポリエチレンのメルトフローレイト:4.0g/10分)、白色顔料マスターバッチ(東京インキ社製 商品名「PEX6800」、ルチル型酸化チタンの含有量:60重量%、ルチル型酸化チタンの平均粒子径:230nm、低密度ポリエチレン含有量:40重量%、低密度ポリエチレンの密度:0.919g/cm3、低密度ポリエチレンのメルトフローレイト:2.0g/10分)及び黒色顔料マスターバッチ(東京インキ社製 商品名「PEX998020」、カーボンブラック含有量:40重量%、低密度ポリエチレン含有量:60重量%、低密度ポリエチレンの密度:0.919g/cm3、低密度ポリエチレンのメルトフローレイト:2.0g/10分)からなる樹脂組成物(a)を調製した。
【0092】
2.樹脂組成物(b)の調製
表1に示した所定量の、エチレン−酢酸ビニル共重合体(b)(酢酸ビニル成分含有量:10重量%、密度:0.930g/cm3、メルトフローレイト:1.0g/10分)、非イオン系界面活性剤マスターバッチ(理研ビタミン社製 商品名「S71−D」、非イオン系界面活性剤の含有量:20重量%、非イオン系界面活性剤の主成分:ジグリセリンステアリン酸エステル、低密度ポリエチレンの含有量:80重量%、低密度ポリエチレンの密度:0.920g/cm3、低密度ポリエチレンのメルトフローレイト:4.0g/10分)、白色顔料マスターバッチ(東京インキ社製 商品名「PEX6800」、ルチル型酸化チタン含有量:60重量%、ルチル型酸化チタンの平均粒子径:230nm、低密度ポリエチレン含有量:40重量%、低密度ポリエチレンの密度:0.919g/cm3、低密度ポリエチレンのメルトフローレイト:2.0g/10分)、及び黒色顔料マスターバッチ(東京インキ社製 商品名「PEX998020」、カーボンブラックの含有量:40重量%、低密度ポリエチレンの含有量:60重量%、低密度ポリエチレンの密度:0.919g/cm3、低密度ポリエチレンのメルトフローレイト:2.0g/10分)からなる樹脂組成物(b)を調製した。
【0093】
3.樹脂組成物(c)の調製
表1に示した所定量の、直鎖状低密度ポリエチレン(c)(密度:0.920g/cm3、メルトフローレイト:1.2g/10分)、低密度ポリエチレン(c)(密度:0.920g/cm3、メルトフローレイト:1.2g/10分)、合成シリカ粒子マスターバッチ(1)(大日精化社製 商品名「PE1300」、合成シリカ粒子の含有量:20重量%、合成シリカ粒子の平均粒子径:8μm、低密度ポリエチレン含有量:80重量%、低密度ポリエチレン密度:0.919g/cm3、低密度ポリエチレンのメルトフローレイト:5.0g/10分)、非イオン系界面活性剤マスターバッチ(非イオン系界面活性剤の含有量:20重量%、非イオン系界面活性剤の主成分:ジグリセリンステアリン酸エステル、低密度ポリエチレンの含有量:80重量%、低密度ポリエチレンの密度:0.920g/cm3、低密度ポリエチレンのメルトフローレイト:4.0g/10分)、及び所定量の白色顔料マスターバッチ(東京インキ社製 商品名「PEX6800」、ルチル型酸化チタンの含有量:60重量%、ルチル型酸化チタンの平均粒子径:230nm、低密度ポリエチレンの含有量:40重量%、低密度ポリエチレンの密度:0.919g/cm3、低密度ポリエチレンのメルトフローレイト:2.0g/10分)からなる樹脂組成物(c)を調製した。
【0094】
4.農業用フィルムの製膜
層(A)用、層(B)用、層(C)用の三機の押出機の先端を同一の円形の多層ダイスに接続させてなる多層製膜装置を用意し、この多層製膜装置の層(A)用の押出機に樹脂組成物(a)を、層(B)用の押出機に樹脂組成物(b)を、層(C)用の押出機に樹脂組成物(c)を供給して、上記三機の押出機内でそれぞれ溶融混練させた後、各押出機から溶融状態の樹脂組成物を円形の多層ダイスに供給し、円形の多層ダイスから溶融状態の樹脂組成物を、層(A)、層(B)、層(C)がこの順に積層一体化された状態となるように共押出製膜すると共に、円形の多層ダイスの中心部から圧縮空気を供給して、共押出製膜された円筒状のフィルムを周方向に延伸した後、冷却空気により円筒状のフィルムを冷却し、円筒状のフィルムを切り開いて巻き取ることにより、全体厚みが100μm、各層の厚み比(層(A)/層(B)/層(C))が1/3/1である農業用フィルムを製膜した。
【0095】
(実施例2〜3、及び比較例1〜2)
表1及び2に示す通り、各樹脂組成物における配合を変更した以外は実施例1と同様にして農業用フィルムを製膜した。なお、表1及び2に記載するエチレン−酢酸ビニル共重合体(a)、合成シリカ粒子マスターバッチ(2)、合成シリカ粒子マスターバッチ(3)及び滑剤は、それぞれ以下のものを用いた。
【0096】
エチレン−酢酸ビニル共重合体(a):酢酸ビニル成分含有量5重量%、密度0.928g/cm3、メルトフローレイト1.0g/10分。
合成シリカ粒子マスターバッチ(2):プライムポリマー製 商品名「BB36」、合成シリカ粒子の含有量15重量%、合成シリカ粒子の平均粒子径6μm、低密度ポリエチレン含有量85重量%、低密度ポリエチレン密度0.923g/cm3、低密度ポリエチレンのメルトフローレイト0.7g/10分。
合成シリカ粒子マスターバッチ(3):プライムポリマー製 商品名「BB37」、合成シリカ粒子の含有量15重量%、合成シリカ粒子の平均粒子径4μm、低密度ポリエチレン含有量85重量%、低密度ポリエチレン密度0.923g/cm3、低密度ポリエチレンのメルトフローレイト0.7g/10分。
滑剤:オレイン酸アミド、宇部丸善ポリエチレン社製 商品名「M105」。
【0097】
次に、上記のようにして得られた農業用フィルムの機械的強度、熱融着性、剥離性及び層(C)の白色性を下記の要領で評価し、その結果を表1及び2に示した。なお、表1及び表2中の樹脂組成物(a)、(b)及び(c)の「合成シリカ粒子含有量」の欄における括弧内の数値は、各樹脂組成物中に含有されている樹脂成分の総量を100重量部に換算したときの合成シリカ粒子の含有量(重量部)を示す。又、表1及び表2中の樹脂組成物(a)、(b)及び(c)の「非イオン系界面活性剤含有量」の欄における括弧内の数値は、各樹脂組成物中に含有されている樹脂成分の総量を100重量部に換算したときの非イオン系界面活性剤の含有量(重量部)を示す。更に、表1及び表2中の樹脂組成物(a)、(b)及び(c)の「白色顔料含有量」及び「黒色顔料含有量」の欄における括弧内の数値は、各樹脂組成物中に含有されている樹脂成分の総量を100重量部に換算したときの白色顔料含有量(重量部)又は黒色顔料含有量(重量部)を示す。
【0098】
(機械的強度)
上記で作製した農業用フィルムの引張破断点荷重を、ストログラフ(東洋精機製作所社製)を用いて、JIS K 6781に準拠して測定し、下記基準に基づき、農業用フィルムの機械的強度を評価した。
○:破断点荷重は3000g以上であった。
△:破断点荷重は1000g以上で且つ3000g未満であった。
×:破断点荷重は1000g未満であった。
【0099】
(耐熱融着性)
直径2cmの鉄心に、上記で作製した農業用フィルム50cmを巻きつけてロールとし、このロールを80℃、相対湿度30%RHのオーブン内に24時間保管した。保管後、ロールからフィルムを巻き出すことによりフィルム同士が融着しているか下記基準に基づき評価した。
◎:融着していない。
○:融着は起こっていないが、密着している。
△:融着は起こっていないが、剥がすと白くなる
×:融着が起こっている。
【0100】
(剥離性)
上記で作製した農業用フィルムを10cm2の大きさに切断し、得られたフィルムを2枚重ね、20kg荷重をかけたまま、40℃、48時間保管し、その後、重なったフィルムの剥がしやすさを下記基準に基づき評価した。
○:簡単に剥がれる。
△:剥がれるが、剥がしにくい。
×:剥がれない。
【0101】
(層(C)の白面光沢性)
得られた農業用フィルムの層(C)に関して変光沢計(スガ試験機株式会社製 UVG−5Dデジタル変光沢計)を用いてJIS−Z8741に準拠して光沢度を測定し、入射角、反射角60度として下記基準に基づき、農業用フィルムの層(C)の白面光沢性を評価した。
○:45以上
△:20以上45未満
×:20未満
【0102】
【表1】


【0103】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度が0.900〜0.930g/cm3で且つメルトフローレイト(MFR)が0.3〜5.0g/10分であるポリエチレン系樹脂、又は酢酸ビニル含有量が5.0〜25重量%で且つメルトフローレイト(MFR)が0.5〜4.0g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を含む層(A)、
酢酸ビニル含有量が5.0〜25重量%で且つメルトフローレイト(MFR)が0.5〜4.0g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を含む層(B)、及び
密度が0.900〜0.930g/cm3で且つメルトフローレイト(MFR)が0.3〜5.0g/10分であるポリエチレン系樹脂を含む層(C)が、この順で積層一体化されてなり、
上記層(A)又は上記層(C)のうちの少なくとも一方が、各層に含まれる樹脂成分100重量部に対して、平均粒子径が5〜10μmであるシリカ粒子を0.1〜0.5重量部含むことを特徴とする農業用フィルム。
【請求項2】
層(A)が、密度が0.900〜0.930g/cm3で且つメルトフローレイト(MFR)が0.3〜5.0g/10分であるポリエチレン系樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の農業用フィルム。
【請求項3】
層(A)が、樹脂成分100重量部に対して、平均粒子径が5〜10μmであるシリカ粒子を0.1〜0.5重量部含み、且つ層(B)がシリカ粒子を含まないことを特徴とする請求項1又は2に記載の農業用フィルム。
【請求項4】
層(A)及び上記層(C)が、各層に含まれる樹脂成分100重量部に対して、平均粒子径が5〜10μmであるシリカ粒子を0.1〜0.5重量部含み、且つ層(B)がシリカ粒子を含まないことを特徴とする請求項1又は2に記載の農業用フィルム。
【請求項5】
層(A)が、樹脂成分100重量部に対して、白色顔料5.0〜30重量部及び黒色顔料0.1〜5.0重量部を含有し、
層(B)が、樹脂成分100重量部に対して、白色顔料1.0〜10重量部及び黒色顔料0.1〜5.0重量部を含有し、且つ
層(C)が、樹脂成分100重量部に対して、白色顔料5.0〜30重量部含有し、且つ黒色顔料を含有しないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の農業用フィルム。

【公開番号】特開2012−25037(P2012−25037A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165971(P2010−165971)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【出願人】(596111276)積水フイルム株式会社 (133)
【Fターム(参考)】