説明

農畜産循環型環境保全システム及びそれに使用する家畜用飼料、飼料添加物、有用微生物固定化ゲル、肥料。

【課題】 家畜の飼料に添加して家畜の腸内発酵を促して健康を維持し、排泄物の悪臭をなくし家畜生育環境を良好とすると共に、排泄物の早期分解を促して清掃を容易にし、その有用菌発酵畜産排泄物を極めて良好な肥料として利用できるようにした一連の農畜産循環型環境保全システム及びそれに使用する家畜用飼料、飼料添加物、有用微生物固定化ゲル、肥料を提供することを技術的課題とする。
【解決手段】 平均粒径10〜300μmの微細シラスバルーン100重量部に対して有用微生物固定化ゲル10重量部以上を混合してなる飼料添加物を含有する家畜用飼料を家畜に給与することにより家畜を育成し、さらにその有用菌発酵畜産排泄物を肥料に利用してそれにより育成された野菜等の植物をさらに家畜等の飼料や人の食物に還元できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は各種家畜の飼料に添加して家畜の健康維持と排泄物の消臭効果を図ると共に、排泄物にべとつきがなく清掃し易く、さらに肥料への有効利用を図ることのできる一連の農畜産循環型環境保全システム及びそれに使用する家畜用飼料、飼料添加物、有用微生物固定化ゲル、肥料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2000−342190公報にはバチルス・ブレビスの近縁の種である好熱性C−1菌と、バチルス・ブレビスの近縁の種である好熱性C−3菌と、バチルス・ステアロサーモフィルスか又はその近縁の種である好熱性C−4菌との混合菌であると共に、好気条件下で有機素材の分解能を有する好熱性みろく種菌を使用する飼料添加物が記載されている。
【0003】
そして、この発明の飼料添加物を添加した飼料を家畜に給与すると、所定期間経過後(約1ヶ月後)家畜類が健康になり、悪臭のない糞尿が排泄されると共に、良好な環境で飼育されてストレスも軽減され、このような糞尿を使用すれば良質な有機肥料を製造することができる旨が記載されている。
【0004】
しかしながら、この発明においては、家畜糞尿の悪臭がなくなるのに長期間(約1ヶ月)を要し、混合菌の密度が少なくかつ純粋な状態で保護していないので家畜の胃や腸内で酸化が進み混合菌の活性化が図れず家畜の健康維持の効果が薄い。また、家畜の糞尿を肥料としても活発な菌が存在せずその発酵を充分促進できないため良質の有機肥料を得ることが難しい。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、微生物を高密度化して純粋な状態で保護した菌のゲル状添加物をシラスバルーンと混合して、それを家畜の飼料に添加して家畜胃腸内の発酵を促進させて健康を維持させ、排泄物の悪臭を即座に消滅させ畜舎の生育環境を良好にすると共に、排泄物の早期分解を促して、べとつかずぼろぼろの状態として清掃を容易とし、清掃して収集した有用菌発酵畜産排泄物を極めて良質な肥料として利用できる一連の農畜産循環型環境保全システム及びそれに使用する家畜用飼料、飼料添加物、有用微生物固定化ゲル、肥料を提供することにある。
【課題を解決する手段】
【0006】
請求項1の発明は、平均粒径10〜300μmの微細シラスバルーン100重量部に対して有用微生物固定化ゲル10重量部以上を混合してなる飼料添加物を含有する家畜用飼料を家畜に給与することにより家畜を育成し、それにより得られた有用菌発酵畜産排泄物を肥料に利用し、その肥料によりさらに植物を育成するようにした農畜産循環型環境保全システムを提供するものである。
【0007】
請求項2の発明は、平均粒径10〜300μmの微細シラスバルーン100重量部に対して有用微生物固定化ゲルを10重量部以上添加してなる飼料添加物を飼料有機物100重量部に対し0.5〜1.5重量部添加した家畜用飼料を提供するものである。
【0008】
請求項3の発明は、平均粒径10〜300μmの微細シラスバルーン100重量部に対して有用微生物固定化ゲル10重量部以上混合してなる飼料添加物を提供するものである。
【0009】
請求項4の発明は、有用微生物固定化ゲルに固定化する有用微生物が乳酸菌4種、酵母菌2種からなる混合菌であり、有用微生物固定化ゲル内にそれらの菌数が8200万セル〜1億6400万セル/g固定化されている有用微生物固定化ゲルを提供するものである。
【0010】
請求項5の発明は、平均粒径10〜300μmの微細シラスバルーン100重量部に対して有用微生物固定化ゲル10重量部以上含有する飼料添加物を含む家畜用飼料を家畜に給与して得られた有用菌発酵畜産排泄物を含有する肥料を提供するものである。
【0011】
これらの発明においては、後記するシラスバルーンと有用微生物固定化ゲルとの本来の各機能により、家畜の飼料に添加して家畜胃腸内の発酵を促進して健康を維持し、排泄物の悪臭を即座に消滅させ畜舎の生育環境を良好にすると共に、有用菌発酵畜産排泄物の早期の分解を促してべとつかずぼろぼろの状態として清掃を容易にすることができる。
【0012】
また、収集した有用菌発酵畜産排泄物を極めて良質な肥料とすることが出来る。即ち、土壌に有効な微生物が占有する土壌で微生物活動によって植物にとって有効な生理活性物質、ビタミン等を生成せしめて、作物の栄養源である土壌そのものを改善することができ、生物防除(バイオコントロール)、殺菌剤、殺虫剤、除草剤、土壌改良剤等の効果を有する微生物農薬とすることができる。
【0013】
微細シラスバルーンの平均粒径が10μm未満であると後述するシラスバルーンの細孔の効果を生かすことができず、微細シラスバルーンの平均粒径が300μmを超えると本来ガラス結晶質であるため飼料としては好ましくない。
【0014】
微細シラスバルーン100重量部に対し有用微生物固定化ゲルが10重量部未満であると胃腸内での発酵や肥料とした場合の発酵が充分でない。
【0015】
有用微生物固定化ゲル中の菌数が8200万セル/g未満であると上記効果が充分発揮されず、有用微生物固定化ゲル中の菌数が1億6400万セル/gを超えるとかえって家畜の体調に悪影響を及ぼす。
【0016】
前記飼料添加物を飼料有機物に0.5%未満であると、家畜の健康維持と排泄物の消臭効果及び肥料とした場合の肥効が薄く、前記飼料添加物を飼料有機物に1.5%を超えるとかえって上記効果に悪影響を及ぼす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。先ず、図1に基づき有用微生物固定化ゲルの製作方法について説明する。純水約500gを煮沸殺菌後冷却する。次に、アルギン酸ナトリウム1gをビーカにとり、純水99gを加える(1wt%アルギン酸ナトリウム水溶液)。マグネチックスターラーで撹拌、加熱(熱殺菌)して溶解させてその後冷却する。さらに、乳酸菌(ラクトバチルス)をアルギン酸ナトリウム水溶液に加えて均一に懸濁させる。
【0018】
前記乳酸菌は条件的好気性に属する乳酸球菌の1種と、嫌気性に属する乳酸桿菌の3種と、下面発酵する真性酵母菌の2種とからなる複合菌剤であり、特に農業用として強い活性力を与えた上に特殊母材に安定させる。一つ一つの菌体は食品の発酵分野でそれぞれ活躍している純粋培養原菌である。
【0019】
次に、塩化カルシウム20gを1リットルビーカに取り、これに殺菌した純水を加えて400gとし(5wt%塩化カルシウム水溶液)、冷蔵庫に入れて冷却する。そして、冷却した塩化カルシウム水溶液をマグネチックスターラーでゆるやかに撹拌しながら微生物懸濁液をパスツールピペットで1滴ずつ滴下する。その後、冷蔵庫に入れて4〜6℃で30分間冷却してゲル化を促進させる。上記1滴1滴が球状の有用微生物を内部に固定化したゲル状物質(有用微生物固定化ゲル)となる。この様にして有用微生物固定化ゲルを回収する。
【0020】
次にアルギン酸について説明する。昆布のような褐色の海藻には海藻の生命を支える細胞群をつなぐ役割をしている分子がある。この分子がアルギン酸と呼ばれマンニュロン酸とグルロン酸という二種類の酸性糖が直線状にたくさん繋がった酸性多糖である。
【0021】
アルギン酸は中性、酸性領域では水に不溶であるが、分子中のカルボン酸基が水酸化アルカリ金属や炭酸アルカリ金属などと塩を形成する条件下では高粘性の水溶液となる。同様に多価金属塩とカルボン酸がキレート性の塩を形成することによりアルギン酸塩水溶液はゲル化する。イオン交換は一般的に交換イオン原子価の増大と共に増大する。したがって、アルギン酸ナトリウムの水溶液にカルシウムイオンを含む水溶液を添加すると速やかにイオン交換が生じてアルギン酸カルシウムのゲルが生成することとなる。
【0022】
適当な容器内の純粋中にこの様なアルギン酸カルシウム内に有用微生物を固定化した多球状ゲル化物(有用微生物固定化ゲル)を保存する。有用微生物固定化ゲルは、図2に示す如く、内部に約8200万セル〜1億6400万セル/g(菌体の希釈培養により寒天培地上にコロニー形成させ、生菌数をカウント)もの高密度化した有用微生物をアルギン酸カルシウムで純粋な状態で保護するように固定化した有用微生物固定化ゲルである。したがって、分解速度が速いため効果に速効性があり、消臭作用があり、これを家畜に与えた際にできる有用菌発酵畜産排泄物は極めて良質な堆肥となる。
【0023】
次に本実施例で使用するシラスバルーンについて説明する。シラスは図3に示すように核融合に拠ってできた数種の元素を含むマグマが急激に地殻を突き破り放出して冷却堆積した物質である。結晶的にはシリカやアルミナ系を基軸に水素原子やカリウム及びそれらの微量同位元素などからなっている。
【0024】
そのため、特に微孔熱処理したシラスバルーンは宇宙放射線や電磁波(光を含む)などを受けると、微孔中に介在する水分に電子を放出(ベータ線)したり物理核反応にてホトンγ線を放出する。
【0025】
また、空気中には各種の分子が混合浮遊している。シラスバルーンはこれらの核物質を吸入・吸着してβ線やホトンγ線を放出するためイオン化や解離現象を起こす。特に湿気はHとOHイオンに電離され結果的にはHO+H→H、HO+H→Hの空気イオンとなり周囲の条件に左右されながら発生・消滅を繰り返す。一方β線やホトンγ線は植物にとっても育成エネルギー源として有効に機能する。
【0026】
水にも各種の条件がある。最近の水は水源そのものにも何がしかの化学物質混入しているものと考えられる。従って、それら物質によって水分子やミネラル元素が捕捉され、水本来の機能を果たさなくなっている。シラスバルーンの微小空孔中に浸透した水粒子は上記β線やホトンγ線などによって化学物質を解離・分解して水本来の粒子にしたり、含水中のミネラル元素をイオン化することから美味しい水に蘇生する。この水は植物等にとって発芽促進、家畜等にとっては生育促進エネルギーとなる。一方、各種汚水等も上記理由から汚物がシラスバルーンの空孔及びその周辺で吸着・解離・分解現象を伴い浄化改質することになる。
【0027】
上記の理由から、本発明の有用微生物固定化ゲルをシラスバルーンに添加すると、シラスバルーンの微小空孔中に有用微生物固定化ゲルから溶出した有用微生物が侵入し、飼料や肥料とした場合微小空孔中から徐々に有用微生物が溶出するので長期に渡ってそれらの効果を持続することができるものと考えられる。
【0028】
また、シラスバルーン中には微量の酸化チタンを含有している。酸化チタンは熟成する野菜、果物から発散するエチレンガスを強く吸着・分解して熟成を抑制するため、酸化の進行を抑えて鮮度を長期間維持することができる。
【0029】
したがって、シラスバルーンに含有する酸化チタンは、家畜の胃腸内において消化する有用微生物固定化ゲルのアルギン酸カルシウムの溶解を防止して残存有用微生物を保護するものと考えられる。したがって、消化しきれなかった有用微生物を含むアルギン酸カルシウムゲルは家畜の排泄物中に残存し、肥料とした場合それが長期に渡り肥料効果を持続するものと考えられる。
【実験例1】
【0030】
平均粒径50μmの微細シラスバルーン100gに対して有用微生物固定化ゲルを66g添加してなる飼料添加物を1日に10gずつ牛に給与した。その結果、飼料給与後24時間経過後に排泄した糞は1日にして分解してべとつきのないぼろぼろの状態であった。そして、臭いもほとんど消えていた。これにより畜舎の環境は完全に改善された。
【0031】
また、飼料給与後30日経過後、牛の毛並みを観測したところ、以前より毛ヅヤが良くなっており健康維持が図られていることが理解された。
【実験例2】
【0032】
さらに、上記糞を堆積してからなる堆肥のアンモニア濃度を、実験区と無添加区に分け、最大78ppm検知用の検知管により検知したところ、無添加区については、検知範囲を大幅に超えていて検知不能であり、実験区については、0.95ppmと低いレベル結果が得られた。これにより、畜舎の環境が改善されたことが理解される。
【実験例3】
【0033】
上記実験例1で得られた有用菌発酵畜産排泄物を畑地に施肥した場合、有害微生物の影響で土壌に発生して悪影響を及ぼすネコブ線虫及びその他病害虫の衰退が確認され、作物の成育活性にもつながった。
【発明の効果】
【0034】
上記の如く本発明においては、微生物を高密度化して純粋な状態で保護した菌のゲル状添加物をシラスバルーンと混合して、それを家畜の飼料に添加して家畜胃腸内の発酵を促進して健康を維持し、排泄物の悪臭を迅速になくし畜舎の生育環境を良好とすると共に、排泄物の早期の分解を促してべとつかずぱらぱらの状態として清掃を容易にできる。また、肥料等の有機物に乳酸菌、酵母菌等の土壌に対して有効に働く有用菌発酵畜産排泄物を添加することにより、土壌に有効な微生物が占有する土壌で微生物活動によって植物にとって有効な生理活性物質、ビタミン等を生成せしめて、作物の栄養源である土壌そのものを改善することができ、生物防除(バイオコントロール)、殺菌剤、殺虫剤、除草剤、土壌改良剤等の効果を有する微生物農薬とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】有用微生物固定化ゲルの製作工程フローチャート
【図2】有用微生物固定化ゲル構成図
【図3】シラスバルーンの組成図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径10〜300μmの微細シラスバルーン100重量部に対して有用微生物固定化ゲル10重量部以上を混合してなる飼料添加物を含有する家畜用飼料を家畜に給与することにより家畜を育成し、それにより得られた有用菌発酵畜産排泄物を肥料に利用し、その肥料によりさらに植物を育成するようにした農畜産循環型環境保全システム。
【請求項2】
平均粒径10〜300μmの微細シラスバルーン100重量部に対して有用微生物固定化ゲルを10重量部以上添加してなる飼料添加物を飼料有機物100重量部に対し0.5〜1.5重量部添加した家畜用飼料。
【請求項3】
平均粒径10〜300μmの微細シラスバルーン100重量部に対して有用微生物固定化ゲル10重量部以上を混合してなる飼料添加物。
【請求項4】
有用微生物固定化ゲルに固定化する有用微生物が乳酸菌と、酵母菌とからなる混合菌であり、有用微生物固定化ゲル内にそれらの菌数が8200万セル〜1億6400万セル/g固定化されている有用微生物固定化ゲル。
【請求項5】
平均粒径10〜300μmの微細シラスバルーン100重量部に対して有用微生物固定化ゲル10重量部以上を含有する飼料添加物を含む家畜用飼料を家畜に給与して得られた有用菌発酵畜産排泄物を含有する肥料

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−151524(P2007−151524A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−380778(P2005−380778)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(593205875)日本有機株式会社 (3)
【Fターム(参考)】