説明

迅速な物理的表面乾燥を示す水性1K−PU塗膜を製造するための水希釈性または水溶性ブロックトポリイソシアネート

本発明は、迅速な物理的表面乾燥を示し、熱黄変が低減された、澄明な塗膜を生じる焼付け可能な一成分ポリウレタン塗料系を製造できる、新規な水希釈性または水溶性ブロックトポリイソシアネート、その製造方法、およびその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、迅速な物理的表面乾燥を示し、低減された熱黄変を特徴とし、澄明な塗膜を生じる焼付け可能な一成分(1K)ポリウレタン塗料を製造できる、新規な水希釈性または水溶性ブロックトポリイソシアネート、その製造方法、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
水性バインダー、特にブロックトイソシアネート基含有ポリウレタン(PU)分散体を用いて基材を被覆することが増えている。水性PU分散体の製造方法、塗布方法および焼付け方法は、従来技術から基本的に知られている。
【0003】
しかしながら、架橋剤成分が本質的にブロックトポリイソシアネート(BNCO架橋剤、架橋剤分散体)からなる水性一成分ポリウレタン焼付けエナメルは、塗料適用後に緩慢な物理的表面乾燥を示す。これにより、被覆物品を化学架橋させる焼付けオーブンに移動する際に問題が生じる。例えば、物品がコンベヤーベルトまたは手袋にくっつくかもしれない。従って、焼付け工程前に必要な乾燥時間が長くなる。
【0004】
更に、ブロックトイソシアネート基含有一成分ポリウレタン焼付けエナメルは、高い焼付け温度および/または長い焼付け工程中または過焼付け時に、黄変する著しい傾向がある。
【0005】
ブロックトイソシアネート基含有一成分ポリウレタン焼付けエナメルの加工に関する更なる問題は、頻繁に生じる塗膜の曇りである。これにより、特に、透明被覆系を得るために透明基材(例えばガラス)を被覆することができなくなる。
【0006】
EP−A 0802210は、ブロックトイソシアネート基含有水希釈性ポリイソシアネート架橋剤を記載している。熱黄変の問題を防ぐため、ヒドラジド基含有化合物の使用を提案している。この種のポリイソシアネート架橋剤を用い、EP−A 0807650に従ってガラスを被覆すると、黄変しない澄明な塗膜が生じるが、この系の物理的表面乾燥挙動は非常に緩慢であり、従って不利である。
【0007】
ラクタムによるポリイソシアネートの混合ブロッキングは、非水性ポリウレタン系の分野からよく知られており、例えば、DE−A 10156897、DE−A 4416750、EP−A 0403044、DE−A 3128743およびUS 5455374に記載されている。しかしながら、ラクタムベース混合ブロッキングの使用により、特に水性PU系において低減される黄変または有利な表面乾燥挙動の条件は、確かではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】EP−A 0802210
【特許文献2】EP−A 0807650
【特許文献3】DE−A 10156897
【特許文献4】DE−A 4416750
【特許文献5】EP−A 0403044
【特許文献6】DE−A 3128743
【特許文献7】US 5455374
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的は、ポリオール成分との混合後に、適用後の迅速な物理的表面乾燥を示し、かつ焼付け時および過焼付け時でさえ低い熱黄変を示す焼付け可能な一成分ポリウレタン塗料を水性分散体として供する、水希釈性または水溶性ブロックトポリイソシアネートを提供することである。更なる目的は、得られた塗料により基材を澄明な塗膜で被覆することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
意外にも、ラクタムおよび更なるブロッキング剤で混合ブロッキングした親水化ポリイソシアネートが、この要求を満たすことが見出された。
【0011】
本発明は、
a)100当量の少なくとも1種のポリイソシアネート成分、
b)10〜75当量のイソシアネート基用ブロッキング剤としての少なくとも1種のラクタム、
c)2〜50当量のb)とは異なる更なるイソシアネート基用ブロッキング剤、
d)0〜15当量の少なくとも1種のイソシアネート反応性基含有非イオン性親水化剤、
e)0.5〜13当量の少なくとも1種のイソシアネート反応性基含有(潜在)アニオン性親水化剤、
f)0〜30当量の、2〜4個のOH基を含有するかまたは少なくとも1個のOH基および1種の更なるイソシアネート反応性基を含有する分子量範囲62〜250g/molの1種以上のアミノ不含有化合物、
g)0〜30当量の、2〜4個のアミノ基を含有するかまたは少なくとも1個のアミノ基および1種の更なるイソシアネート反応性基を含有する分子量範囲32〜300g/molの1種以上の(環式)脂肪族化合物
からポリイソシアネートプレポリマーを調製し、
成分a)〜g)を互いに反応させる間または後に、該プレポリマーを水に溶解または分散し、
分散または溶解工程の前、間または後に、e)として使用された親水化剤の潜在アニオン性基を塩基で少なくとも部分的に脱プロトン化する、
混合ブロックトポリイソシアネートプレポリマーの水性分散体の製造方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
当量での成分b)〜g)の量は、これらの成分中に存在する化合物のイソシアネート反応性基の各量に関係し、a)に使用されるイソシアネート成分が有する反応に利用できる遊離NCO基を100当量とする。
【0013】
混合ブロックトポリイソシアネートプレポリマー水性分散体の製造方法に関する1つの好ましい態様では、反応体a)〜f)を互いに反応させ、次いで生成物を水に溶解または分散し、分散または溶解工程の前、間または後に、e)に使用される親水化剤の潜在アニオン性基の少なくとも部分的な脱プロトン化を塩基を用いて実施する。成分g)を添加する場合は、好ましくは、プレポリマーを水に分散した後に添加する。
【0014】
1つの特に好ましい態様では、まず、成分a)を成分d)、e)およびf)と反応させ、次に成分b)との反応、その後に成分c)との反応を実施する。続いて、脱プロトン化のために塩基を添加し、反応混合物を水に分散させる。最後に成分g)を添加してよい。
【0015】
反応体の比は、好ましくは、イソシアネート成分a)の、成分b)、c)、d)、f)およびg)のイソシアネート反応性基に対する当量比が1:0.7〜1:1.3、好適には1:0.85〜1:1.1となるように選択される。この当量比の計算には、成分e)の酸基、ポリウレタン溶液または分散体を調製するために使用した溶媒または水、更に、酸基を脱プロトン化するために使用した脱プロトン化剤のいずれも含まない。
【0016】
成分a)に使用される適当なポリイソシアネートは、当業者にそれ自体知られている好ましくは2以上の官能価を有するNCO官能性化合物である。これらは典型的には、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族および/または芳香族ジイソシアネートまたはトリイソシアネート、およびそれらの、2個以上の遊離NCO基を含有する、イミノオキサジアジンジオン、イソシアヌレート、ウレトジオン、ウレタン、アロファネート、ビウレット、ウレア、オキサジアジントリオン、オキサゾリジノン、アシルウレアおよび/またはカルボジイミド構造を有する高分子量誘導体である。
【0017】
そのようなジイソシアネートまたはトリイソシアネートの例は、テトラメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン1,3−および1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、メチレンビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリイソシアナトノナン、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタン2,4’および/または4,4’−ジイソシアネート(MDI)、トリフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート、ナフチレン1,5−ジイソシアネート、4−イソシアナトメチルオクタン1,8−ジイソシアネート(ノナントリイソシアネート、トリイソシアナトノナン、TIN)および/またはウンデカン1,6,11−トリイソシアネート、およびそれらの所望の混合物、並びに適切な場合には、他のジ−、トリ−および/またはポリイソシアネートとの混合物である。
【0018】
そのようなポリイソシアネートは、典型的には、0.5重量%〜60重量%、好ましくは3重量%〜30重量%、より好ましくは5重量%〜25重量%のイソシアネート含有量を有する。
【0019】
本発明の方法では、脂肪族および/または脂環式ジイソシアネートに基づく、イソシアヌレート、ウレタン、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジントリオン、オキサジアジントリオンおよび/またはウレトジオン基を含有する高分子量化合物を使用することが好ましい。
【0020】
本発明の方法では、成分a)に、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよび/または4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンに基づく、ビウレット、イミノオキサジアジンジオン、イソシアヌレートおよび/またはウレトジオン基を含有する化合物を使用することが特に好ましい。
【0021】
イソホロンジイソシアネートに基づくイソシアヌレート構造含有ポリイソシアネートを使用することが極めて特に好ましい。
【0022】
使用される成分b)のブロッキング剤は、アミン性H原子を有するラクタム(環状アミド)である。その例は、γ−ブチロラクタム(2−ピロリドン)、δ−バレロラクタムおよび/またはε−カプロラクタムであり、ε−カプロラクタムが好ましい。成分b)は、イソシアネート成分a)のNCO基に基づいて好ましくは30〜65当量の量で使用される。
【0023】
成分c)として、成分b)中に存在していない、イソシアネート基のブロックのための当分野でそれ自体知られている単官能性ブロッキング剤を使用することができる。その例は、フェノール、オキシム(例えば、ブタノンオキシム、アセトンオキシムまたはシクロヘキサノンオキシム)、アミン(例えば、N−tert−ブチルベンジルアミンまたはジイソプロピルアミン、3,5−ジメチルピラゾール、トリアゾール)、脱プロトン性基含有エステル(例えば、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル)、並びにそれらの混合物および/または他のブロッキング剤との混合物である。ブタノンオキシム、アセトンオキシム、3,5−ジメチルピラゾールおよび/またはそれらの混合物が好ましく、ブタノンオキシムが特に好ましい。成分c)は、イソシアネート成分a)のNCO基に基づいて好ましくは10〜30当量の量で使用される。
【0024】
親水化成分d)は、少なくとも1種のイソシアネート反応性基含有非イオン性親水化化合物からなる。そのような化合物の例は、少なくとも1個のヒドロキシル基またはアミノ基と、少なくとも1種がオキシエチレン単位である1種以上のオキシアルキレン単位とを含有するポリオキシアルキレンエーテルである。これらのポリオキシアルキレンエーテルは、適当なスターター分子のアルコキシル化により常套法で得られる。
【0025】
適当なスターター分子は、例えば、飽和モノアルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、ペンタノール(各種異性体)、ヘキサノール(各種異性体)、オクタノール(各種異性体)およびノナノール(各種異性体)、n−デカノール、n−ドデカノール、n−テトラデカノール、n−ヘキサデカノール、n−オクタデカノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール(各種異性体)またはヒドロキシメチルシクロヘキサン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンまたはテトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル(例えばジエチレングリコールモノブチルエーテル))、不飽和アルコール(例えば、アリルアルコール、1,1−ジメチルアリルアルコールまたはオレイルアルコール)、芳香族アルコール(例えば、フェノール、クレゾール(各種異性体)またはメトキシフェノール(各種異性体))、芳香脂肪族アルコール(例えば、ベンジルアルコール、アニシルアルコールまたはシンナミルアルコール)、第二級モノアミン(例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、N−メチル−およびN−エチルシクロヘキシルアミンまたはジシクロヘキシルアミン)、並びに複素環式第二級アミン(例えば、モルホリン、ピロリジン、ピペリジンまたは1H−ピラゾール)である。好ましいスターター分子は飽和モノアルコールである。スターター分子として、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを使用することが特に好ましい。
【0026】
アルコキシル化反応に適したアルキレンオキシドは、特に、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドであり、アルコキシル化反応のために順にまたは混合物として使用してよい。スターターへのエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロック付加が好ましい。
【0027】
ポリアルキレンオキシドポリエーテルは、純粋なポリエチレンオキシドポリエーテル、またはアルキレンオキシド単位が好ましくは少なくとも30mol%、より好ましくは少なくとも40mol%のエチレンオキシド単位からなる混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルのいずれかである。好ましい非イオン性化合物は、少なくとも40mol%のエチレンオキシド単位と60mol%以下のプロピレンオキシド単位とを含有する単官能性混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルである。
【0028】
成分a)〜g)の総固形分に対するエチレンオキシド単位の量は、30重量%未満、好ましくは20重量%未満、より好ましくは15重量%未満である。
【0029】
成分d)は、イソシアネート成分a)のNCO基に基づいて好ましくは3〜8当量の量で使用される。
【0030】
親水化成分e)は、イソシアネート基に対して反応性である少なくとも1種の基を含有する、少なくとも1種の(潜在)アニオン性化合物からなる。
【0031】
これらの化合物は、好適には、少なくとも1個、好ましくは1または2個のヒドロキシル基を含有するカルボン酸、またはそのようなヒドロキシカルボン酸の塩である。適当なそのような酸は、例えば、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)アルカンカルボン酸、例えば、ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸または2,2−ジメチロールペンタン酸、ジヒドロキシコハク酸、ヒドロキシピバリン酸、またはそのような酸の混合物である。
【0032】
成分e)として、ジメチロールプロピオン酸および/またはヒドロキシピバリン酸を使用することが好ましい。
【0033】
遊離酸基、特に遊離カルボキシル基は上記した「潜在アニオン性」基に相当し、塩基での中和により得られる塩様基、特にカルボキシレート基は上記した「アニオン性」基に相当する。
【0034】
成分e)は、イソシアネート成分a)のNCO基に基づいて好ましくは5〜9当量の量で使用される。この場合、イソシアネート反応性基はアルコール基である。カルボン酸基および/またはカルボキシレート基をイソシアネート反応性基とはみなさない。
【0035】
適当な連鎖延長剤成分f)の例は、ジ−、トリ−および/またはポリオールを包含する。その例は、エタンジオール、ジ−、トリ−、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ジ−、トリ−、テトラプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ブタン−1,4−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、ブタン−2,3−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、オクタン−1,8−ジオール、デカン−1,10−ジオール、ドデカン−1,12−ジオール、トリメチロールプロパン、ひまし油、グリセロールおよび/または記載した物質の混合物、適切な場合には更なるジ−、トリ−および/またはポリオールとの混合物である。更に、エトキシル化および/またはプロポキシル化ジ−、トリ−および/またはポリオール、例えば、エトキシル化および/またはプロポキシル化された、トリメチロールプロパン、グリセロールおよび/またはヘキサン−1,6−ジオールを使用することも可能である。
【0036】
少なくとも1個のヒドロキシル基に加えて1個以上のチオール基も含有する化合物、例えば1,2−ヒドロキシエタンチオールを使用することもできる。
【0037】
成分f)として、ブタン−1,4−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、ヘキサン−1,6−ジオールおよび/またはトリメチロールプロパンを使用することが好ましい。
【0038】
f)に、62〜200g/molの分子量を有する上記した種の化合物を使用することが好ましい。
【0039】
成分f)は、イソシアネート成分a)のNCO基に基づいて好ましくは3〜15当量の量で使用される。
【0040】
連鎖延長剤成分g)として、イソシアネート反応性有機ジアミンまたはポリアミン、例えば、1,2−エチレンジアミン、1,2−および1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、イソホロンジアミン、2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの異性体混合物、2−メチルペンタメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン、および/またはジメチルエチレンジアミンを使用することができる。
【0041】
更に、成分g)として、第一級アミノ基の他に第二級アミノ基も含有するか、またはアミノ基(第一級または第二級)の他にOH基またはSH基も含有する、化合物を使用することもできる。
【0042】
その例は、第一級/第二級アミン(例えば、3−アミノ−1−メチルアミノプロパン、3−アミノ−1−エチルアミノプロパン、3−アミノ−1−シクロヘキシルアミノプロパン、3−アミノ−1−メチルアミノブタン)、アルカノールアミン(例えば、N−アミノエチルエタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、3−アミノプロパノール、1−アミノプロパノール、ネオペンタノールアミン、N−メチルエタノールアミンおよび/またはN−メチルイソプロパノールアミン)、およびアルカンチオールアミン(例えば、1−アミノプロパンチオール)である。
【0043】
成分g)として、ジアミンまたはポリアミン、例えば、エチレンジアミン、イソホロンジアミン、1,6−ジアミノヘキサンおよび/または4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタンを使用することが好ましい。
【0044】
成分g)に、60〜300g/molの分子量を有する上記した種の化合物を使用することが好ましい。
【0045】
成分g)は、イソシアネート成分a)のNCO基に基づいて好ましくは0〜10当量の量で使用される。
【0046】
連鎖延長のために、成分f)およびg)の混合物を使用することもできる。
【0047】
成分f)および/またはg)との反応による連鎖延長の他に、例えば分散中に、遊離NCO基を水と反応させてアミンを形成することもできる。この場合、このように形成された第一級アミノ基は、次いで、連鎖延長を伴う遊離NCO基との反応により消費される。
【0048】
本発明の分散体の調製において、溶媒を使用することもでき、および/または原料を溶液として使用することもできる。適当な溶媒の例は、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、キシレン、トルエン、酢酸ブチル、メトキシプロピルアセテート、アセトンまたはメチルエチルケトンである。
【0049】
アセトンまたはメチルエチルケトンのような(部分的に)水と混和できる揮発性溶媒を使用する場合、それらは、典型的には、水への分散後に留去される。この手順は、アセトン法またはスラリー法とも称される。溶媒が完成分散体中になお存在することなく、プレポリマー調製の間、低粘性であるという利点がある。
【0050】
イソシアネート基を反応により消費した後に溶媒を添加することもまた可能である。これに関連して、例えば分散体を安定化するかまたは塗膜の特性を改善する働きをする、アルコールのようなプロトン性溶媒を使用することも可能である。
【0051】
分散媒体として使用される水の量は、一般に、20重量%〜60重量%、好ましくは30重量%〜45重量%の固形分を水中に有する分散体が得られるように計算される。
【0052】
潜在アニオン性基をアニオン状態に転化するための脱プロトン化剤の例は、塩基化合物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、第一級または第二級アミン(例えば、ジイソプロパノールアミンまたは2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール)、第三級アミン(例えば、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジイソプロピルシクロヘキシルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエタノール、またはN−メチルモルホリン)、或いはそれらの所望の混合物である。
【0053】
好ましい脱プロトン化剤は、第三級アミン、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンおよびN,N−ジメチルエタノールアミンであり;N,N−ジメチルエタノールアミンが特に好ましい。
【0054】
使用される脱プロトン化剤の量は、一般に、本発明のポリウレタン中に存在するカルボン酸基の脱プロトン化度(使用されるアミン/水酸化物と存在する酸基とのモル比)が、少なくとも40%、好ましくは70%〜130%、より好ましくは90%〜110%になるように計算される。分散工程または溶解工程の前、間または後に、脱プロトン化を実施してよい。しかしながら、水の添加前に脱プロトン化することが好ましい。
【0055】
プレポリマー調製に伴うウレタン化を促進するため、反応混合物に触媒を添加することもできる。適当な触媒は、例えば、第三級アミン、錫化合物、亜鉛化合物またはビスマス化合物、或いは塩基性塩である。ジラウリン酸ジブチル錫およびジオクタン酸ジブチル錫が好ましい。
【0056】
本発明は更に、記載した方法により得られるような混合ブロックトポリイソシアネートプレポリマー水性分散体、およびその中に存在するプレポリマーも提供する。
【0057】
同様に、本発明は、
A)式(I):
【化1】

[式中、RはC〜Cアルキレン基であり、R〜Rは各々水素原子である。]
で示される少なくとも1種の構造単位、
B)(潜在)アニオン性親水化基、および
C)任意に1種以上のオキシエチレン単位
を含んでなることを特徴とする、混合ブロックトポリイソシアネートプレポリマーを提供する。
【0058】
本発明の分散体、および本発明の混合ブロックトプレポリマーは、好ましくは金属、鉱物、木材、プラスチックの基材を被覆するため、例えばガラスを工業的に被覆するため、布地の被覆、および自動車用下地塗りのための、焼付け可能な水性塗料(焼付けエナメル)の調製に使用できる。
【0059】
従って、本発明は更に、塗料の調製における本発明の混合ブロックトポリイソシアネートプレポリマー分散体の使用、並びに得られた塗料およびその塗膜、並びにそのような塗膜で被覆された基材を提供する。
【0060】
そのような塗料を調製するため、本発明の分散体を、典型的には、水分散性または水溶性であるポリヒドロキシ化合物、並びに任意に助剤および添加剤と混合する。
【0061】
この最終用途に適したポリヒドロキシル化合物、並びにこの種の焼付けエナメルの製造方法および応用に関する更なる詳細は、当業者にそれ自体知られている。そのような化合物は、好ましくは、ポリヒドロキシポリエステル、ポリヒドロキシポリウレタン、ポリヒドロキシポリエーテル、ポリカーボネートジオールまたはヒドロキシル含有付加ポリマー、例えば、常套のポリヒドロキシポリアクリレート、ポリアクリレートポリウレタンおよび/またはポリウレタンポリアクリレートに基づく、それ自体既知の水性または水希釈性バインダーである。
【0062】
これらの化合物は、例えばEP−A−0 157 291、EP−A−0 498 156またはEP−A−0 427 028に記載されているように、典型的には親水化変性されている。
【0063】
この種のポリヒドロキシル化合物は、一般に、20〜200mgKOH/g、好ましくは50〜130mgKOH/gのヒドロキシル価を有する。
【0064】
本発明の塗料では、本発明に必須である分散体に加えて、焼付け中の更なる架橋のために、アミノ架橋剤樹脂(例えばメラミン樹脂および/または尿素樹脂)のような別のアルコール反応性化合物を使用してもよい。同様に、更なる親水性ポリイソシアネートを使用することもできる。
【0065】
助剤および添加剤として、顔料、充填剤、流れ制御剤、消泡剤および触媒のような常套の物質を使用することができる。塗料の接着性を改善するため、塗料は、典型的な市販添加剤を含んでなることができる。その例は、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランのようなメルカプトシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランのようなエポキシアルキルシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランのようなアミノアルキルシラン、それらの加水分解生成物、またはこれらの成分の混合物である。
【0066】
本発明の塗料は、それ自体既知の方法により調製される。
【0067】
被覆のため、本発明の塗料を、例えば、ナイフ塗布、浸漬被覆、圧縮空気吹付または無気吹付のような吹付塗により、および高速回転ベル塗装のような静電塗装により適用できる。乾燥フィルム厚は、例えば10〜120μmであり得る。乾燥フィルムを、90〜200℃、好ましくは130〜190℃、より好ましくは140〜180℃の温度範囲で焼付けることにより硬化する。マイクロ波の影響下での硬化も可能である。焼付け前、例えば20〜90℃の温度で、フィルムを物理的に乾燥してもよい。
【実施例】
【0068】
特に記載のない限り、全てのパーセントは重量による。
特に記載のない限り、全ての分析測定は23℃の温度で行う。
記載した粘度は、Anton Paar Germany GmbH(ドイツ国オストフィルデルン)の回転粘度計を用い、23℃で、DIN 53019に従って、回転粘度測定法により測定した。
特に記載のない限り、NCO含有量は、DIN−EN ISO 11909に従って、容量分析で測定した。
記載した粒度は、レーザー相関分光法により測定した(機器:Malvern Zetasizer 1000、Malvern Instr. Limited)。
固形分は、重量測定した試料を120℃で加熱することにより測定した。恒量に達した時点で、試料を再び重量測定して固形分を算出した。
遊離NCO基の分析は、赤外分光法により実施した(2260cm−1での吸収帯)。
接着性は、DIN EN ISO 2409クロスカットにより測定した。
ケーニッヒ振子硬度は、DIN 53157に従って測定した。
熱黄変は、DIN 6174に対応するCIELAB法により測定した。
【0069】
化学薬品:
Desmodur Z 4470 M/X:
メトキシプロピルアセテートとキシレンとの混合物(1/1)中70%溶液としてのイソホロンジイソシアネートベース脂肪族ポリイソシアネート、イソシアネート含有量約12%、Bayer MaterialScience AG(ドイツ国レーフエルクーゼン)
Carbowax 750:
平均分子量750g/molを有するメトキシポリエチレングリコール、The Dow Chemical Company(ドイツ国シュターデ)
Bayhydrol A 145:
水希釈性OH−官能性ポリアクリレート分散体、水/solvent naphtha 100/2−ブトキシエタノール中約45%、ジメチルエタノールアミンで中和、比約45.6:4:4:1.4;OH含有量約7.3%、Bayer MaterialScience AG(ドイツ国レーフエルクーゼン)
Bayhydrol VP LS 2239:
水希釈性ヒドロキシル含有ポリウレタン分散体、水/NMP(60:5)中約35%、OH含有量約1.6%、Bayer MaterialScience AG(ドイツ国レーフエルクーゼン)
Bayhydur VP LS 2240:
Desmodur Wベース親水化ブロックトポリイソシアネート架橋剤、水/MPA/キシレン(56:4.5:4.5)中約35%、NCO含有量(ブロックト)約2.5%、Bayer MaterialScience AG(ドイツ国レーフエルクーゼン)
他の化学薬品は、ファインケミカル会社Sigma-Aldrich GmbH(ドイツ国タウフキルヒェン)から得た。
【0070】
実施例1:
本発明外のブタノンオキシムブロックト架橋剤分散体の調製
359.0gのDesmodur(登録商標)Z 4470 M/Xを、連続して、ジメチロールプロピオン酸4.7gのN−メチルピロリドン(NMP)9.4g溶液、37.5gのCarbowax(登録商標)750、および3.39gのネオペンチルグリコールと、窒素フラッシングしながら標準的な撹拌装置により70℃で混合した。次いで、混合物を80℃まで加熱し、8.02%(計算値:8.27%)の一定NCO値に達するまで撹拌した。混合物を70℃まで冷却した。続いて、71.0gのブタノンオキシムを、反応容器内の温度が80℃を超えないような速度で添加した。そして、赤外分光法によりNCO基がもはや検出されなくなるまで、80℃で撹拌を継続し、その後、混合物を70℃まで冷却し、2.50gのジメチルエタノールアミンを添加した。更に60℃まで冷却した後、25℃で570.8gの脱イオン水を用いて分散を実施した。分散体を50℃に調節し、1時間撹拌し、撹拌しながら室温まで冷却した。
【0071】
得られた分散体の特性は以下のようであった:
固形分 35.8%
pH 8.02
粘度(Haake回転粘度計、23℃) 60mPas
粒度(レーザー相関分光法、LCS) 99nm
【0072】
実施例2:
本発明外のアセトンオキシムブロックト架橋剤分散体の調製
466.66gのDesmodur(登録商標)Z 4470 M/Xを、ジメチロールプロピオン酸13.1gのN−メチルピロリドン(NMP)26.2g溶液と、窒素フラッシングしながら標準的な撹拌装置により70℃で混合した。次いで、混合物を80℃まで加熱し、9.12%(計算値:9.17%)のNCO値に達するまで撹拌した。続いて、48.75gのCarbowax(登録商標)750を添加し、7.84%(計算値:7.87%)のNCO値に達するまで混合物を75℃で撹拌した。そして、混合物を70℃まで冷却し、その後、76.0gのアセトンオキシムを、反応容器内の温度が80℃を超えないような速度で添加した。次いで、赤外分光法によりNCO基がもはや検出されなくなるまで、80℃で撹拌を継続し、その後、混合物を70℃まで冷却し、8.70gのジメチルエタノールアミンを添加した。更に60℃まで冷却した後、25℃で1548gの脱イオン水を用いて分散を実施した。分散体を50℃に調節し、1時間撹拌し、撹拌しながら室温まで冷却した。
【0073】
得られた分散体の特性は以下のようであった:
固形分 31.4%
pH 8.14
粘度(Haake回転粘度計、23℃) 900mPas
粒度(レーザー相関分光法、LCS) 45nm
【0074】
実施例3:
本発明外のε−カプロラクタムブロックト架橋剤分散体の調製
359.0gのDesmodur(登録商標)Z 4470 M/Xを、連続して、ジメチロールプロピオン酸4.7gのN−メチルピロリドン(NMP)9.4g溶液、37.5gのCarbowax(登録商標)750、および3.39gのネオペンチルグリコールと、窒素フラッシングしながら標準的な撹拌装置により70℃で混合した。次いで、混合物を80℃まで加熱し、8.02%(計算値:8.27%)の一定NCO値に達するまで撹拌した。混合物を70℃まで冷却した。続いて、92.3gのε−カプロラクタムを添加した。そして、赤外分光法によりNCO基がもはや検出されなくなるまで、100℃で撹拌を継続し、その後、混合物を70℃まで冷却し、2.50gのジメチルエタノールアミンを添加した。更に60℃まで冷却した後、25℃で770.53gの脱イオン水を用いて分散を実施した。分散体を50℃に調節し、1時間撹拌し、撹拌しながら室温まで冷却した。
【0075】
得られた分散体の特性は以下のようであった:
固形分 36.5%
pH 7.75
粘度(Haake回転粘度計、23℃) 85mPas
粒度(レーザー相関分光法、LCS) 82nm
【0076】
実施例4:
本発明の混合ブロッキング架橋剤分散体の調製
359.0gのDesmodur(登録商標)Z 4470 M/Xを、連続して、ジメチロールプロピオン酸4.7gのN−メチルピロリドン(NMP)9.4g溶液、37.5gのCarbowax(登録商標)750、および3.39gのネオペンチルグリコールと、窒素フラッシングしながら標準的な撹拌装置により70℃で混合した。次いで、混合物を80℃まで加熱し、8.24%(計算値:8.27%)の一定NCO値に達するまで撹拌した。混合物を70℃まで冷却した。続いて、63.4gのε−カプロラクタムを添加した。次いで、1.75%(計算値:1.76%)の一定NCO値に達するまで100℃で撹拌を継続し、達した時点で75℃まで冷却し、17.4gのブタノンオキシムを添加した。赤外分光法によりNCO基がもはや検出されなくなるまで撹拌を実施し、その後、混合物を70℃まで冷却し、2.50gのジメチルエタノールアミンを添加した。更に60℃まで冷却した後、25℃で582gの脱イオン水を用いて分散を実施した。分散体を50℃に調節し、1時間撹拌し、撹拌しながら室温まで冷却した。
【0077】
得られた分散体の特性は以下のようであった:
固形分 35.9%
pH 8.55
粘度(Haake回転粘度計、23℃) 138mPas
粒度(レーザー相関分光法、LCS) 87nm
【0078】
実施例5:
本発明の混合ブロッキング架橋剤分散体の調製
ブロッキング剤として74.7gのε−カプロラクタムおよび8.7gのブタノンオキシムを使用した以外は、実施例4に記載した手順を繰り返した。
【0079】
得られた分散体の特性は以下のようであった:
固形分 36.9%
pH 8.07
粘度(Haake回転粘度計、23℃) 120mPas
粒度(レーザー相関分光法、LCS) 88nm
【0080】
実施例6:
本発明の混合ブロッキング架橋剤分散体の調製
ブロッキング剤として52.1gのε−カプロラクタムおよび26.1gのブタノンオキシムを使用した以外は、実施例4に記載した手順を繰り返した。
【0081】
得られた分散体の特性は以下のようであった:
固形分 36.3%
pH 8.62
粘度(Haake回転粘度計、23℃) 113mPas
粒度(レーザー相関分光法、LCS) 86nm
【0082】
実施例7:
本発明の混合ブロッキング架橋剤分散体の調製
ブロッキング剤としてブタノンオキシムに代えて19.2gの3,5−ジメチルピラゾールを使用した以外は、実施例4に記載した手順を繰り返した。
【0083】
得られた分散体の特性は以下のようであった:
固形分 36.2%
pH 8.4
粘度(Haake回転粘度計、23℃) 160mPas
粒度(レーザー相関分光法、LCS) 97nm
【0084】
実施例8:
本発明の混合ブロッキング架橋剤分散体の調製
ブロッキング剤として55.4gのδ−バレロラクタム(ε−カプロラクタムに代えて)および17.4gのブタノンオキシムを使用した以外は、実施例4に記載した手順を繰り返した。
【0085】
得られた分散体の特性は以下のようであった:
固形分 36.8%
pH 7.8
粘度(Haake回転粘度計、23℃) 100mPas
粒度(レーザー相関分光法、LCS) 93nm
【0086】
性能データを測定するため、実施例9〜18のエナメル混合物を表1に従って配合し、適用および硬化した。性能データを表2に示す。
【0087】
表1:
当量比(BNCO:OH=1:1)でブロックトポリイソシアネートとポリオール成分とを混合することにより、澄明なエナメル9〜18を調製した。エナメルの接着性を改善するため、塗料は通例の市販添加剤(1.1%、固体バインダーに基づいて計算)を含んでなる。
【0088】
【表1−1】

【0089】
【表1−2】

【0090】
上記した澄明なエナメルを、Deka塗布ナイフ(ナイフ番号120)を用いて、Schlier & Hennesからの3mm厚のガラス板に適用し、強制空気循環炉内で170℃で30分間焼付けた。これにより、約25〜30μmの厚さの乾燥フィルムを得た。
【0091】
表2:
以下の技術的特性が見出された。
【表2−1】

【0092】
【表2−2】

【0093】
試験方法の説明
a)耐溶剤性
耐溶剤性を測定するため、溶媒に浸した脱脂綿パッドを被覆基材上に置き、時計皿で覆った。暴露時間後、脱脂綿パッドおよび残留溶媒を除去し、塗膜表面を目視により評価した。
b)耐水酸化ナトリウム性
耐水酸化ナトリウム性を測定するため、5%濃度の水酸化ナトリウム溶液が入った槽に、調べる基材を途中まで垂直に浸し、覆い、70℃で8時間加熱した。その後、その板を脱イオン水で濯ぎ、目視により評価した。
c)物理的表面乾燥
物理的表面乾燥を調べるため、対応する澄明なエナメルを、Deka塗布ナイフ(ナイフ番号120)を用いて、Schlier & Hennesからの3mm厚のガラス板に適用し、80℃で3分間予備乾燥し、その後、粘着性の不存在を調べた(0=不粘着性〜5=高粘着性)。
d)フィルムの曇り
曇りの兆候について、焼付け後、塗膜を目視評価した(0=何も観察されず〜5=非常に曇り)。
【0094】
個々の技術的塗膜特性に関する要求
a)接着性: 最大1
b)振子硬度: 最小>140、良好>150
c)耐溶剤性: 各々の値が2以下
d)耐NaOH性: 最大1
e)黄変: <2.0、良好<1.0
f)物理的表面乾燥: 最大2
g)フィルムの曇り: 最大1
【0095】
結果の評価:
本発明ではない自己架橋焼付け系と共に、従来技術の架橋剤分散体を用いて、物理的表面乾燥、低い熱黄変、およびフィルムの曇り不存在に関して十分な特性プロフィルを達成することはできない(実施例9〜12)。自己架橋分散体の調製では、実施例13に示した2種の本発明ではない架橋剤分散体の混合物(実施例1:オキシムブロックト、実施例3:ラクタムブロックト)でさえ、許容できる塗膜を生じなかった。
【0096】
本発明の架橋剤分散体を使用し、ラクタムかつ更なるブロッキング剤と反応させた場合(実施例14〜18)だけ、限定的な特性の最適なプロフィルを達成できる。塗膜硬度、耐溶剤性および耐水酸化ナトリウム性のような他のフィルム特性も、高価値塗料系に課せられた要求に合致した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)100当量の少なくとも1種のポリイソシアネート成分、
b)10〜75当量のイソシアネート基用ブロッキング剤としての少なくとも1種のラクタム、
c)2〜50当量のb)とは異なる更なるイソシアネート基用ブロッキング剤、
d)0〜15当量の少なくとも1種のイソシアネート反応性基含有非イオン性親水化剤、
e)0.5〜13当量の少なくとも1種のイソシアネート反応性基含有(潜在)アニオン性親水化剤、
f)0〜30当量の、2〜4個のOH基を含有するかまたは少なくとも1個のOH基および1種の更なるイソシアネート反応性基を含有する分子量範囲62〜250g/molの1種以上のアミノ不含有化合物、
g)0〜30当量の、2〜4個のアミノ基を含有するかまたは少なくとも1個のアミノ基および1種の更なるイソシアネート反応性基を含有する分子量範囲32〜300g/molの1種以上の(環式)脂肪族化合物
からポリイソシアネートプレポリマーを調製し、
成分a)〜g)を互いに反応させる間または後に、該プレポリマーを水に溶解または分散し、
分散または溶解工程の前、間または後に、e)として使用された親水化剤の潜在アニオン性基を塩基で少なくとも部分的に脱プロトン化する、
混合ブロックトポリイソシアネートプレポリマーの水性分散体の製造方法。
【請求項2】
成分a)に、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよび/または4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンに基づくポリイソシアネートを使用することを特徴とする、請求項1に記載の混合ブロックトポリイソシアネートプレポリマー水性分散体の製造方法。
【請求項3】
成分b)に、ブロッキング剤としてε−カプロラクタムを使用することを特徴とする、請求項1または2に記載の混合ブロックトポリイソシアネートプレポリマー水性分散体の製造方法。
【請求項4】
成分c)に、ブロッキング剤として、ブタノンオキシム、アセトンオキシム、3,5−ジメチルピラゾールおよび/またはそれらの混合物を使用することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の混合ブロックトポリイソシアネートプレポリマー水性分散体の製造方法。
【請求項5】
イソシアネート成分a)の、成分b)、c)、d)、f)およびg)のイソシアネート反応性基に対する当量比が1:0.7〜1:1.3であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の混合ブロックトポリイソシアネートプレポリマー水性分散体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の方法により得られる混合ブロックトポリイソシアネートプレポリマー水性分散体。
【請求項7】
A)式(I):
【化1】

[式中、RはC〜Cアルキレン基であり、R〜Rは各々水素原子である。]
で示される少なくとも1種の構造単位、
B)(潜在)アニオン性親水化基、および
C)任意に1種以上のオキシエチレン単位
を含んでなる、混合ブロックトポリイソシアネートプレポリマー。
【請求項8】
水性塗料の製造における請求項7に記載の混合ブロックトポリイソシアネートプレポリマーの使用。
【請求項9】
水性塗料の製造における請求項6に記載の分散体の使用。
【請求項10】
請求項7に記載の混合ブロックトポリイソシアネートプレポリマーを含んでなる水性塗料。
【請求項11】
焼付け系であることを特徴とする請求項10に記載の水性塗料。
【請求項12】
水分散性または水溶性ポリヒドロキシ化合物並びに任意に助剤および添加剤を更に含んでなることを特徴とする、請求項10または11に記載の水性塗料。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれかに記載の水性塗料から得られる塗膜。
【請求項14】
請求項13に記載の塗膜で被覆された基材。

【公表番号】特表2010−501040(P2010−501040A)
【公表日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524929(P2009−524929)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006988
【国際公開番号】WO2008/019781
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】