迅速放出カプセル化組成物
ゼラチンおよび水不溶性の迅速放出薬剤を含む迅速放出カプセル化組成物を提供する。特に、ゼラチンおよび不溶性炭酸塩を含む迅速放出カプセル化組成物を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本願は2010年2月22日提出の米国仮出願第61/306,744号の優先権を主張するものであり当該出願全体を引用として本明細書に含める。
【0002】
発明の分野
本発明は迅速放出カプセル化組成物に関する。さらに詳細には、本発明はゼラチン成分および迅速放出薬剤を含む迅速放出カプセル化組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
原薬(API)の迅速放出のための組成物の開発は医薬品業界において継続中の課題である。APIの多くが持つ苦味等の種々の不快特性のため、いくつかの経口組成物では風味剤を添加して含むことでAPIの不快味をマスキングしている。さらに別の経口組成物ではカプセル材料を含んで経口服用中にAPIを隔離し、APIの他の不快特性であるザラつきやベトつき等を軽減し、且つ、保管および/または輸送中の安定性等の他の特性を増強している。例えばゼラチンコーティングされた錠剤、硬質カプセル、および軟質ゼラチンカプセル等のカプセル医薬組成物は、経口服用される治療用組成物に広く用いられている。
【0004】
APIのカプセルによって上述の風味や安定性の問題の多くが軽減されるが、カプセル材料の特性が、APIの胃腔内への迅速放出についてのさらなる課題を提起する。いくつかの既存の手法では、水溶性のカプセル材料物質が用いられるが、多くの水溶性のカプセル材料が口腔または食道内で部分的に溶出して経口服用中に付着を起こす傾向がある。別の手法では、口腔等の相対的に中性なpH環境では相対的に不溶性であるが、胃腔等の酸性環境では高い可溶性であるような高分子材料を混和したpH依存性コーティングが用いられる。しかしながら、pH依存性の高分子カプセル材料の製造は、典型的には、特殊な製造技術を必要とする。
【0005】
別の既存の迅速放出組成物は、種々の水溶性の孔形成性材料をカプセル材料に混和する。このカプセル材料が胃腔内で溶出し、残りのカプセル材料に孔を形成して、内部のAPIを溶出させ、胃腔内に向けて拡散させる。さらに別の既存の迅速放出組成物は、多層のカプセル材料を含み、そこでは耐水性の多孔質外側層が胃液を膨張可能な内側層材料へ誘導し、膨張するとカプセル材料を破裂させ下のAPIを露出させる。これらのカプセル材料組成物は、製造に膨大な努力を要し、APIの放出を行うためには胃液が外側コーティング層の孔を通って浸透する必要があり、その結果APIの胃腔内での放出が遅くなる。
【0006】
ゼラチンは、医薬品業界では周知のカプセル材料である。架橋、脱イオン化、および部分加水分解等のゼラチン処理法によりゼラチンの材料特性が調整または制御され、剛性および可溶性等の特定の材料特性を有するゼラチンコーティングが生成されうる。ゼラチンコーティング、軟質ゼラチンカプセル、および硬ゼラチンカプセルの製造は、典型的にはゼラチンの水性懸濁液を使用する。その結果、結果のゼラチンカプセル材料の胃腔内での迅速放出特性を高めるために、水溶性の迅速放出添加物を混和することが難しくなる。さらには、ゼラチンの迅速放出添加物が、ゼラチン懸濁液のpH等の化学的特性を変化させることがあり、その結果のゼラチンマトリックス構造の崩壊または不安定性を引き起こしうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
当分野では、胃腔の酸性環境で急速に崩壊するが、APIの経口服用中の口腔および食道のpHが中性の水性環境では崩壊しないゼラチンを主剤とする迅速放出カプセル化組成物が必要とされている。さらに、当分野ではゼラチンまたはその他の高分子カプセル材料の胃腔における迅速放出特性を強化するための迅速放出添加物であって、製造中にカプセル材料のマトリックス構造を分解させることはない迅速放出添加物が必要とされている。このような迅速放出添加物が、既知のカプセル技術を用いる迅速放出カプセルの生産を促進しうる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要約
従って、本発明の種々の態様の1つは水不溶性の迅速放出薬剤およびゼラチンを含む迅速放出カプセル化組成物の提供である。迅速放出薬剤が分解し、胃腔の酸性環境内で気泡を放出することで、放出中に気泡がゼラチンに当たり物理的に分裂することにより、ゼラチンの急速な崩壊が起こることが見出された。その結果、経口治療化合物等の摂取可能な製品のための剤形として迅速放出カプセル化組成物を用いることが胃腔内で化合物の迅速放出をもたらすこととなる。
【0009】
迅速放出カプセル化組成物がゼラチン加水分解物をさらに含んでもよい。別の態様では炭酸カルシウムおよびゼラチンを含有し、炭酸カルシウムに対するゼラチンの質量比が約1:1〜約1:20の範囲である、迅速放出カプセル化組成物が提供される。本明細書中に用いられる場合、組成物中の2種の化合物の質量比とは、組成物中に含まれる第1の化合物の質量を、組成物中に含まれる第2の化合物の質量で除した結果得られる数値的量を意味する。さらに別の態様では、水溶液中に溶出しているゼラチン、および水溶液中に懸濁している水不溶性の迅速放出薬剤を含む迅速放出カプセル化組成物が提供される。さらに別の態様では、炭酸カルシウム、ゼラチンおよびゼラチン加水分解物を含み、前記ゼラチン加水分解物が約100ダルトン〜約2000ダルトンの範囲の分子量をもつ、迅速放出カプセル化組成物が提供される。
【0010】
迅速放出薬剤は、pHが約6〜約8の範囲の水溶液中で相対的に不溶性であるように選択される。迅速放出薬剤のこの特性が、典型的にはゼラチンの水溶液および迅速放出薬剤を使用する迅速放出カプセル化組成物の製造中に迅速放出薬剤が溶出し他の成分と反応することを防ぐ。さらに、迅速放出薬剤は、pHが0〜約3の範囲の水溶液中で、急速に分解するように選択される。経口服用される治療用組成物のカプセル材料として用いる場合は、典型的にはpHが約6〜約7の口腔内で、迅速放出薬剤は相対的に不活性のままである。典型的にはpHが約1〜約3である胃腔内の胃液に接触すると、迅速放出薬剤は急速に分解し、治療組成物の原薬の迅速放出をもたらす。
【0011】
さらに別の態様では、ゼラチンおよび水不溶性の迅速放出薬剤を含み、水不溶性の迅速放出薬剤のゼラチンに対する質量比が約1:1〜約1:20の範囲である、迅速放出硬質カプセル外殻組成物を提供する。さらなる態様では、ゼラチンおよび水不溶性の迅速放出薬剤を含み、水不溶性の迅速放出薬剤のゼラチンに対する質量比が約1:1〜約1:20の範囲である、迅速放出軟質ゼラチンカプセルのカプセル化組成物を提供する。さらなる別の態様では、ゼラチンおよび水不溶性の迅速放出薬剤を含み、水不溶性の迅速放出薬剤のゼラチンに対する質量比が約1:1〜約1:20の範囲である、迅速放出錠剤コーティング組成物が提供される。上述の迅速放出カプセル化組成物のいずれもゼラチン加水分解物をさらに含んでも良い。
【0012】
別の態様では、迅速放出コーティング内にカプセル化された複数種の原薬の粒子を含むチュアブル型の治療組成物が提供される。この態様では、迅速放出コーティングがゼラチンおよび水不溶性の迅速放出薬剤を含み、前記組成物は水不溶性の迅速放出薬剤のゼラチンに対する質量比が約1:1〜約1:20の範囲である。迅速放出コーティングはゼラチン加水分解物をさらに含んでもよい。
【0013】
さらに別の態様では、迅速放出コーティング内にカプセル化された複数種の原薬の粒子を含む治療用チューインガム組成物であって、迅速放出コーティングがゼラチンおよび水不溶性の迅速放出薬剤を含む組成物が提供される。この態様の組成物は、水不溶性の迅速放出薬剤のゼラチンに対する質量比が約1:1〜約1:20の範囲である。迅速放出コーティングはゼラチン加水分解物をさらに含んでもよい。
【0014】
本発明のさらなる別の態様では、迅速放出カプセル化組成物を製造するための方法が提供される。この方法は(a)水媒体中にゼラチン成分を溶出するステップ、および(b)ゼラチン水溶液に水不溶性の迅速放出薬剤を加えるステップを含む。ステップ(a)のゼラチン成分は、約50,000ダルトン〜約300,000ダルトンの範囲の分子量をもつゼラチンと、約100ダルトン〜約2000ダルトンの範囲の分子量をもつゼラチン加水分解物との組合せを含みうる。約50,000ダルトン〜約300,000ダルトンの範囲の分子量をもつゼラチンの、約100ダルトン〜約2000ダルトンの範囲の分子量をもつゼラチン加水分解物に対する質量比は、約3:1〜約99:1、約4:1〜約19:1、および約5:1〜約13:1の範囲でありうる。ステップ(b)の水不溶性の迅速放出薬剤は、オキシ炭酸ビスマス、炭酸カルシウム、炭酸コバルト、炭酸ランタン、炭酸鉛、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、炭酸マンガン、炭酸ニッケル(II)、炭酸銀、炭酸ストロンチウムおよびそれらの組合せを含みうる。ステップ(b)の水媒体は水を含みうる。一般的に、迅速放出薬剤はpHが約6〜約8の範囲で本質的に不溶性であり、迅速放出薬剤はpHが0〜約3の範囲で分解する。典型的には、水不溶性の迅速放出薬剤のゼラチン成分に対する質量比は、約1:1〜約1:20、約1:2〜約1:15、および約1:4〜約1:9の範囲である。
【0015】
迅速放出カプセル化組成物の製造方法が可塑剤を添加する工程をさらに含みうる。典型的な可塑剤には、セバシン酸ジブチル、ジエチルフタレート、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、エリトリトール、トリアセチンおよびクエン酸トリエチルならびにそれらの混合物が含まれる。一般的には、ゼラチン成分はゼラチン、可塑剤、および水の組合せ、またはゼラチン、ゼラチン加水分解物、可塑剤、および水の組合せを含みうる。本方法の1つの実施形態では、ステップ(a)は、組み合わせされたゼラチン水溶液の約0.01重量%〜約30重量%のゼラチン成分を、組み合わされたゼラチン水溶液の約40重量%〜約99.9重量%の水媒体中に溶出する工程を含みうる。本方法の別の実施形態では、ステップ(a)は、組み合わされたゼラチン水溶液の約10重量%〜約20重量%のゼラチン成分を、組み合わされたゼラチン水溶液の約70重量%〜約90重量%の水媒体中に溶出する工程を含みうる。さらに別の実施形態において、ステップ(a)は、約10重量%〜約20重量%の約50,000ダルトン〜約300,000ダルトンの範囲の分子量をもつゼラチンと、約1重量%〜約5重量%の約100ダルトン〜約2000ダルトンの分子量をもつゼラチン加水分解物とを、組み合わされたゼラチン水溶液の約70重量%〜約90重量%の水媒体中に溶出する工程を含みうる。
【0016】
本方法のさらに別の実施形態において、ステップ(a)は、ゼラチン成分の約35重量%〜約60重量%のゼラチン、ゼラチン成分の約15重量%〜約30重量%の可塑剤およびゼラチン成分の約25重量%〜約40重量%の水を溶解する工程を含む。また、ステップ(a)は、ゼラチン成分の約42重量%〜約48重量%のゼラチン、ゼラチン成分の約20重量%〜約25重量%の可塑剤およびゼラチン成分の約30重量%〜約35重量%の水を溶解する工程を含みうる。
【0017】
本方法のさらに別の実施形態では、ステップ(a)は、約32重量%〜約40重量%の約50,000ダルトン〜約300,000ダルトンの範囲の分子量をもつゼラチン、約17重量%〜約22重量%の可塑剤と、約26重量%〜約31重量%の水と、約2重量%〜約6重量%の約100ダルトン〜約2000ダルトンの範囲の分子量をもつゼラチン加水分解物とを溶解する工程を含みうる。またステップ(b)は、約10重量%〜約15重量%の炭酸カルシウムを添加する工程を含む。
【0018】
本発明の別の態様および反復を以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図の説明
以下の図は本発明の種々の態様を示す。
【図1】種々の酸性化合物を含むゼラチン組成物のpH=1の緩衝液における測定溶出性を示すグラフである。
【図2】炭酸塩の添加が、ゼラチン組成物のpH=1の緩衝液における測定された溶解率に与える影響を示すグラフである。
【図3】ゼラチンの保管が、ゼラチン組成物のpH=1の緩衝液における測定された溶解特性に与える影響を示すグラフである。
【図4】炭酸カルシウムを含むゼラチン組成物の保管が、そのゼラチン組成物のpH=1の緩衝液における測定された溶解特性に与える影響を示すグラフである。
【図5】炭酸カルシウムおよびゼラチン加水分解物を含むゼラチン組成物の保管が、そのゼラチン組成物のpH=1の緩衝液における測定された溶解特性に与える影響を示すグラフである。
【図6】3種類のゼラチン組成物の、11週間の保管後の、pH=1の緩衝液における測定された溶解率を比較したグラフである。
【図7】炭酸カルシウムを含むゼラチン組成物の保管が、そのゼラチン組成物の脱イオン水での測定された溶解特性に与える影響を示すグラフである。
【図8】炭酸カルシウムを含むゼラチン組成物の保管が、そのゼラチン組成物の脱イオン水での測定された溶解率特性に与える影響を示すグラフである。
【図9】炭酸カルシウムおよびゼラチン加水分解物を含むゼラチン組成物の保管が、そのゼラチン組成物の脱イオン水での測定された溶解率特性に与える影響を示すグラフである。
【図10】3種類のゼラチン組成物の、11週間の保管後の、脱イオン水での測定された溶解率を比較したグラフである。
【図11】人工胃液(pHが1.3程度であり、いかなる酵素も存在しないもの)での、3種のゼラチン配合物の溶解プロファイルを示す。3種のゼラチン配合物は、さらなる修飾が行われていない骨ゼラチン(標準骨ゼラチン(Std bone gelatine))と、骨ゼラチンおよび15重量%の炭酸カルシウム(CaCO3)(RRのみ)と、骨ゼラチンと15重量%の炭酸カルシウム(CaCO3)および10重量%の分子量が約500ダルトンの加水分解された骨ゼラチン(RR RXL)とを含む。
【図12】配合物が温度40℃、相対湿度75%で、2週間の間保管された後の、水(ほぼ中性のpHレベルのもの)中の、3種のゼラチン配合物の溶解プロファイルを示す。3種のゼラチン配合物は、さらなる修飾が行われていない骨ゼラチン(標準骨ゼラチン)、骨ゼラチンおよび15重量%の炭酸カルシウム(CaCO3)(RRのみ)、骨ゼラチン、15重量%の炭酸カルシウム(CaCO3)、および分子量が約500ダルトンの10重量%の加水分解された骨ゼラチン(RR RXL)を含む。
【図13】配合物が温度40°C、相対湿度75%で、2週間の間保管された後の、人工胃液(pHが1.3程度であり、いかなる酵素も存在しないもの)中の、3種のゼラチン配合物の溶解プロファイルを示す。3種のゼラチン配合物には、さらなる修飾が行われていない骨ゼラチン(標準骨ゼラチン)と、骨ゼラチンおよび15重量%の炭酸カルシウム(CaCO3)(RRのみ)と、骨ゼラチン、15重量%の炭酸カルシウム(CaCO3)、および分子量が約500ダルトンの10重量%の加水分解された骨ゼラチン(RR RXL)とが含まれる。
【図14】配合物が温度40°C、相対湿度75%で、4週間の間保管された後の、人工胃液(pHが1.3程度であり、いかなる酵素も存在しないもの)中の、3種のゼラチン配合物の溶解プロファイルを示す。3種のゼラチン配合物には、さらなる修飾が行われていない骨ゼラチン(標準骨ゼラチン)と、骨ゼラチンおよび15重量%の炭酸カルシウム(CaCO3)(RRのみ)と、骨ゼラチン、15重量%の炭酸カルシウム(CaCO3)、および分子量が約500ダルトンの10重量%の加水分解された骨ゼラチン(RR RXL)とが含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
I.組成物
本発明は、炭酸塩等の水不溶性の迅速放出薬剤と、ゼラチン成分とを含有する迅速放出カプセル化組成物を含む。水不溶性の迅速放出薬剤は、pHが約6〜約8の範囲の水溶液中では、迅速放出薬剤が相対的に不溶性を保つことによって、種々のカプセル化組成物の製造中に、結果のカプセル化組成物の安定性に悪影響を与えることなく、迅速放出薬剤がゼラチン水溶液中に混和されることを許容するように選択される。さらに、迅速放出薬剤は、胃液を含むがそれに限定されないpHが約0〜約3の水溶液に接触すると分解するように選択される。
【0021】
迅速放出薬剤は、胃液に接触する際の分解の副産物として、二酸化炭素を含むがそれに限定されないガスを放出する。いかなる特定の理論にも拘束されることなく、迅速放出薬剤の分解がコーティング組成物内に気泡を放出すると考えられる。カプセル内の迅速放出薬剤の分解によって放出された気泡の静水圧がカプセルの周りの高分子材料に物理的応力を与えることで、カプセルの分裂、そして最終的には破裂を引き起こすと考えられる。迅速放出薬剤の分解によって放出される気泡の破壊的な力が、迅速放出カプセル化組成物によってカプセル化された活性化合物に、迅速放出薬剤を含まない組成物に比べて著しく高い迅速放出をもたらす。
【0022】
高温、高湿度、およびその組合せを含むがそれに限定されない条件下で保管中に、カプセル内で架橋の形成を抑制するために、カプセルがゼラチンの加水分解物をさらに含んでもよい。カプセル内での架橋の形成がカプセルの溶解を妨げることがあるため、ゼラチン加水分解物を添加することで長期の保管期間の後でも、カプセルの初期溶解特性を維持することができる。1つの例示的実施形態では、迅速放出カプセル化組成物内に含まれるゼラチンの加水分解物は、約100〜約2000ダルトンの範囲の分子量をもつ。
【0023】
カプセル化組成物の使用としては、錠剤のコーティング、軟質ゼラチンキャップ、および硬質カプセルが含まれるがそれらに限定されない。カプセル化組成物実施形態の別の使用としては、チュアブル型の組成物、およびカプセル化された活性治療化合物を含むチューインガムが含まれるがそれらに限定されない。
【0024】
本発明の種々の態様のさらに詳細な説明を以下に示す。
【0025】
II.迅速放出薬剤
適切な迅速放出薬剤としては、pHが0〜約3の範囲のpHの水溶液中で分解可能な任意の化合物が含まれる。適切な迅速放出薬剤はpHが0〜約3の水溶液中において分解中に、二酸化炭素を含むがそれに限定されないガスをさらに放出しうる。
【0026】
適切な迅速放出薬剤としては、重炭酸塩および炭酸塩が含まれうるがそれに限定されない。迅速放出薬剤は、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウムおよびそれらの組合せを含みうるがそれに限定されないアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩でありうる。また迅速放出薬剤は、炭酸マンガン、炭酸鉄(II)、炭酸コバルト、炭酸ニッケル(II)、炭酸銅(II)、炭酸亜鉛、炭酸カドミウムおよびそれらの組合せを含むがそれに限定されない遷移元素の炭酸塩でありうる。また、迅速放出薬剤はさらに、炭酸タリウム(I)、炭酸鉛(II)、オキシ炭酸ビスマスおよびそれらの組合せを含むがそれに限定されない他の金属の炭酸塩でありうる。さらに迅速放出薬剤は、炭酸ランタンを含むがそれに限定されないランタニドの炭酸塩でありうる。
【0027】
適切な迅速放出薬剤は、pHが約6〜約8の範囲の水溶液中で本質的に不溶性であり、且つpHが0〜約3の水溶液中で可溶性である任意の化合物であるように選択されうる。これらの溶解特性を有する適切な迅速放出薬剤は、オキシ炭酸ビスマス、炭酸カルシウム、炭酸コバルト、炭酸ランタン、炭酸鉛、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、炭酸マンガン、炭酸ニッケル(II)、炭酸銀、炭酸ストロンチウムおよびそれらの組合せを含むがそれに限定されない炭酸塩でありうる。特に、迅速放出薬剤は炭酸カルシウムでありうる。
【0028】
食品、栄養補助食品、および医薬品を含むがそれに限定されない迅速放出カプセル化組成物を含みうる種々の食用製品に関し、迅速放出薬剤は少なくとも食品用品質でありうる。より好ましくは、迅速放出薬剤はGRASおよびUSP品質でありうる。
【0029】
迅速放出薬剤は、粒径約0.152mm(約100メッシュ)未満の細粒の形態で使用されうる。細粒は粒径が約0.089mm(約170メッシュ)未満、約0.075mm(約200メッシュ)未満、約0.066mm(約230メッシュ)未満、または約0.053mm(約270メッシュ)未満でありうる。特に、迅速放出薬剤は粒径約0.075mm(約200メッシュ)未満の細粒の形態で使用されうる。
【0030】
迅速放出カプセル化組成物内に含まれる迅速放出薬剤の量は、カプセルが胃液等の酸性溶液に曝されたときに、二酸化炭素等の気泡の形成を誘導するように、充分多い量でありうる。迅速放出薬剤は組成物の総重量の約5%〜約50%の範囲の量で、迅速放出カプセル化組成物内に含まれうる。あるいは、迅速放出カプセル化組成物内に含まれる迅速放出薬剤の量は、組成物の総重量の、約5%〜約13%、約9%〜約17%、約10%〜約18%、約14%〜約22%、約18%〜約26%、約22%〜約30%、約26%〜約34%、約30%〜約36%、約34%〜約40%、約38%〜約44%、約42%〜約48%、および約46%〜約50%の範囲でありうる。1つの実施形態では、迅速放出カプセル化組成物内に含まれる迅速放出薬剤の量は、ゼラチンの重量に対して約5%〜約40%の範囲を含む。別の実施形態では、迅速放出カプセル化組成物内に含まれる迅速放出薬剤の量は、ゼラチンの重量に対して約10%〜約30%の範囲を含む。さらに別の実施形態では、迅速放出カプセル化組成物内に含まれる迅速放出薬剤の量は、ゼラチンの重量に対して約15%〜約20%の範囲を含む。
【0031】
好ましくは、迅速放出カプセル化組成物内に含まれる迅速放出薬剤の量は、組成物が胃液等の酸性溶液に接触されたときに泡の形成を誘導するためにちょうど充分な量でありうる。炭酸カルシウム等の迅速放出薬剤の比率が高いと、その結果、望ましくない脆弱な材料特性を有するカプセル化組成物となりうる。さらに、炭酸カルシウム等の迅速放出薬剤の比率が相対的に高いカプセル化組成物はカプセル材料の製造中に、望ましくない膜の形成を起こしやすくなりうる。特に、炭酸カルシウムは約15重量%の量で迅速放出カプセル化組成物内に含まれうる。
【0032】
III.ゼラチンおよびその他のポリマー
迅速放出薬剤に加えて、迅速放出カプセル化組成物はゼラチンを含む。ゼラチンは豚や家畜の皮膚および骨を含むがそれに限定されないコラーゲンまたはコラーゲンリッチ組織から誘導される。ゼラチンの非限定的な例としては、タイプAゼラチン、タイプBゼラチンおよびそれらの組合せが含まれる。タイプAゼラチンは、等イオン点が約7〜約10.0の範囲であることによって特徴付けられ、典型的には当分野では周知の酸前処理を用いてコラーゲンから誘導される。タイプBゼラチンは、等イオン点が約4.8〜約5.8の範囲であることによって特徴付けられる。
【0033】
ゼラチンは、典型的には、約80重量%〜約90重量%のタンパク質、約0.1重量%〜約2重量%の鉱物塩および約10重量%〜15重量%の水を含みうる。本明細書中では「タンパク質」は、カルボキシル基と各隣接するアミノ酸のアミノ基との間のペプチド結合によって結合された複数のアミノ酸から作られた有機化合物を意味するよう定義される。ゼラチンは、約50,000ダルトン〜約300,000ダルトンの範囲の平均分子量をもちうる。別の実施形態では、ゼラチンは約70,000ダルトン〜約150,000ダルトンの範囲の平均分子量をもつ。さらに別の実施形態では、ゼラチンは約80,000ダルトン〜約120,000ダルトンの範囲の平均分子量をもつ。さらに、ゼラチンのブルーム値は典型的には約50〜約300である。1つの実施形態では、ゼラチンのブルーム値が約125〜約200の範囲である。さらに別の実施形態では、ブルーム値が約150〜約175の範囲でありうる。ゼラチンのpHは典型的には約3.8〜約7.5である。別の実施形態では、ゼラチンのpHが約6.2〜約7.3の範囲である。さらに別の実施形態では、ゼラチンのpHが約6.6〜約7.0の範囲である。また、ゼラチンの等電点は約4.7〜約9.0であり、粘度は約15〜約75mPであり、灰分は約0.1重量%〜約2.0重量%の範囲でありうる。
【0034】
ゼラチンが実質的にタイプAゼラチンである場合は、ブルーム強度は約50〜約300の範囲であり、pHは約3.8〜約5.5の範囲であり、等電点は約7.0〜約9.0の範囲であり、粘度は約15〜約75mPの範囲であり、灰分は約0.1重量%〜約2.0重量%の範囲でありうる。
【0035】
ゼラチンが実質的にタイプBゼラチンである場合は、ブルーム強度は約50〜約300の範囲であり、pHは約5.0〜約7.5の範囲であり、等電点は約4.7〜約5.8の範囲であり、粘度は約20〜約75mPの範囲であり、灰分は約0.5重量%〜約2.0重量%の範囲でありうる。
【0036】
ゼラチンは使用前に随意的に、イオン交換樹脂の混床を用いるイオン交換を含むがそれに限定されない既知の方法で脱イオン化されうる。また、ゼラチンは、約100ダルトン〜約2000ダルトンの分子量をもつゼラチン加水分解物を含みうる。ゼラチン加水分解物および該加水分解物を製造する方法については、参照としてその全体を本明細書に組み込まれる米国特許第7、485、323号に説明されている。
【0037】
ゼラチンの物理的特性は、その意図する用途に依存して変化可能であり、変化する。ゼラチンが硬質カプセル医薬製品の製造に用いられる場合は、ゼラチンのブルーム強度は約200〜約300の範囲であり、粘度は約40〜約60mPの範囲であり、pHは約4.5〜約6.5の範囲でありうる。ゼラチンが軟外殻カプセル医薬製品の製造に用いられる場合は、ゼラチンのブルーム強度は約125〜約200の範囲であり、粘度は約25〜約45mPの範囲であり、pHは約4.5〜約6.5の範囲でありうる。
【0038】
迅速放出カプセル化組成物の特定のゼラチンは約7.5未満の等電点を有するように選択されうる。迅速放出薬剤の添加の結果、以前のゼラチンカプセル化組成物よりも組成物のpHが著しく高くなるため、ゼラチン等電点をより低くすることによって、ゼラチンの脱アミドを含むがそれに限定されない有害な化学プロセスが迅速放出カプセル化組成物の製造中に発生する可能性を軽減する。
【0039】
特に、迅速放出カプセル化組成物は、最も典型的なタイプBゼラチンを含みうる。迅速放出カプセル化組成物のために適切な特定のゼラチンの非限定的な例には、酸性骨ゼラチン、石灰化骨ゼラチン、および牛皮ゼラチンが含まれる。
【0040】
迅速放出カプセル化組成物を生成するために用いられるゼラチン懸濁液の粘度は生成中に迅速放出薬剤が懸濁したまま残らないようなレベルでありうる。これらのケースでは迅速放出カプセル化組成物の生成中にゼラチン懸濁液の粘度を充分に高く維持するために、ヒドロキシエチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロース等のヒドロコロイドを含むがそれに限定されないチキソトロープ化合物を迅速放出カプセル化組成物にさらに添加してもよい。
【0041】
また、ゼラチンまたはゼラチン成分という用語は、ゼラチンと、可塑剤、水性溶剤または媒体、および当分野で周知のその他の成分とを含むがそれに限定されない他の配合添加剤との組合せを包含するものとして解釈される。可塑剤(分散剤としても知られる)という用語は一般的にゼラチン配合物にさらに高い柔軟性および可撓性を付与する添加剤を記述するために用いられる。具体的には、可塑剤はクエン酸トリエチルおよびポリエチレングリコール等の親水性、および/またはジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジブチルセバケート、およびアセチルトリブチルシトレート等の疎水性でありうる。当業者であれば、これらのポリマー/可塑剤を、同様の機能を達成可能な他の材料、即ちゼラチン配合物にさらに高いレベルの柔軟性および可撓性を付与することを達成可能な他の材料で置き換えてもよいことが理解されるであろう。この点においてオイルやワックスを含む種々の疎水性材料を用いることができ、且つそれらは通常の実験を通して、あるいは当業者に周知の文献において見出だすことができる。1つの実施形態では、可塑剤は、ジブチルセバケート、ジエチルフタレート、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、トリアセチンおよびクエン酸トリエチルならびにそれらの混合物を含む。別の実施形態では、可塑剤は、グリセリン、ソルビトール、エリトリトールおよびそれらの組合せからなる群から選択される。さらに別の実施形態では、可塑剤はグリセリンとソルビトールの1:1の混合物を含む。
【0042】
水性溶剤または水媒体という用語はゼラチン組成物を形成可能な任意の溶剤を包含するものとして解釈されうる。水媒体は水を含むがそれに限定されない。
【0043】
1つの実施形態では、迅速放出カプセル化組成物のゼラチン成分は、ゼラチンと、可塑剤と、水を含む水媒体との組合せを含む。ゼラチン成分は、ゼラチン成分の約35重量%〜約60重量%のゼラチンと、ゼラチン成分の約15重量%〜約30重量%の可塑剤と、ゼラチン成分の約25重量%〜約40重量%の水を含みうる。別の実施形態では、ゼラチン成分は、ゼラチン成分の約42重量%〜約48重量%のゼラチンと、ゼラチン成分の約20重量%〜約25重量%の可塑剤と、ゼラチン成分の約30重量%〜約35重量%の水とを含みうる。
【0044】
さらに別の実施形態では、迅速放出カプセル化組成物のゼラチン成分は、ゼラチンと、水を含む水媒体との組合せを含む。ゼラチン成分は、ゼラチン成分の約5重量%〜約30重量%のゼラチンと、ゼラチン成分の約70重量%〜約95重量%の水とを含みうる。別の実施形態では、ゼラチン成分は、ゼラチン成分の約10重量%〜約20重量%のゼラチンと、ゼラチン成分の約80重量%〜約90重量%の水とを含む。
【0045】
別の実施形態では、迅速放出カプセル化組成物のゼラチン成分は、上述したように、ゼラチンとゼラチン加水分解物との組合せを含む。ゼラチンのゼラチン加水分解物に対する重量比は、一般に、約3:1〜約99:1の範囲である。別の実施形態では、ゼラチンのゼラチン加水分解物に対する重量比は、約4:1〜約49:1の範囲である。さらに別の実施形態では、ゼラチンのゼラチン加水分解物に対する重量比は、約5:1〜約19:1の範囲である。
【0046】
迅速放出カプセル化組成物は、ポリマーをさらに含みうる。ポリマーとしては、合成ポリビニルポリマー、合成ポリエチレンポリマー、合成アクリルポリマー、バイオポリマー、改質バイオポリマーおよびそれらの組合せを含むがそれに限定されない当分野で既知の任意の適切なカプセルポリマーが含まれうる。適切な合成ポリビニルポリマーとしてはポリ塩化ビニル、ポリビニルアセテートおよびそれらの共重合体、ポリビニルアルコール、およびポリビニルピロリドンが含まれうるがそれに限定されない。合成ポリエチレンポリマーとしては、ポリエチレンおよびポリスチレンが含まれうるがそれに限定されない。合成アクリルポリマーとしては、メチルメタクリレートまたはアクリルモノマーの共重合体が含まれうるがそれに限定されない。バイオポリマーおよび改質バイオポリマーの非限定的な例としては、エチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキリプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロース、Na−カルボキシメチルセルロース、セラック、およびゼラチンが含まれる。
【0047】
カプセル成分の水溶液を用いて種々のカプセル実施形態を製造する目的に関しては、水溶性ポリマーが様々な実施形態に適しうる。その理由は錠剤コーティング、軟質ゼラチンカプセル、および硬質カプセルを含むがそれに限定されない多くのカプセルが液体ポリマー溶液から形成されるためである。水溶性ポリマーはpHが約6〜約8の範囲の水溶液中で可溶性でありうる。水溶性ポリマーの非限定的な例には、カルボキシメチルセルロース、架橋したポリビニルピロリドン、ヒドロキシルプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶性セルロース、シェラック、およびゼラチンが含まれうる。特に、迅速放出カプセル化組成物はゼラチンおよびカルボキシメチルセルロースを含みうる。
【0048】
IV.迅速放出カプセル化組成物の生成方法
迅速放出薬剤およびゼラチンを含む迅速放出カプセル化組成物は、当分野では既知の膨潤プロセスにおいてゼラチンを水に溶解して、ゼラチンが約5重量%〜約60重量%の範囲の水溶液を形成することによって、生成しうる。あるいは、ゼラチン水溶液は、ゼラチンが約5重量%〜約15重量%、約10重量%〜約20重量%、約15重量%〜約25重量%、約20重量%〜約30重量%、約25重量%〜約35重量%、約30重量%〜約40重量%、約35重量%〜約45重量%、約40重量%〜約50重量%、約45重量%〜約55重量%、または約50重量%〜約60重量%の範囲でありうる。特に、水溶液はゼラチンが約15重量%でありうる。
【0049】
ゼラチンの水溶液を形成するために水にゼラチンを添加する前のゼラチンの粒径は様々でありうる。1つの実施形態では、ゼラチンの粒径は、約0.1mm〜約10mmの範囲でありうる。別の実施形態では、ゼラチンの粒径は、約0.1〜約0.3mm、約0.2〜約0.8mm、約0.5〜約1.5mm、約1〜約3mm、約2〜約6mm、または約5〜約10mmの範囲でありうる。いかなる特定の理論にも拘束されることなく、ゼラチンの粒径はゼラチンが水溶液中で崩壊するのに必要な時間量に影響を与えうると考えられる。粒径が約0.1〜約0.3mmの範囲のゼラチンは、数分間以内に溶液中で膨潤し、粒径が約0.3〜約0.8mmの範囲のゼラチンは約8〜約12分の時間内に溶液中で膨潤し、粒径が約0.8mmを超えるゼラチンは約1時間以内に膨潤しうる。
【0050】
ゼラチンが約10重量%〜約20重量%の範囲の濃度のゼラチン溶液は、任意のゼラチン粒径を用いて調整しうる。ゼラチンが約30重量%〜約34重量%の範囲の、より高濃度の別の実施形態では、プロセス中の魏集および気泡の形成を抑制するために、ゼラチンの粒径が約0.8mmを超えるものが用いられる。
【0051】
ゼラチン溶液のpHは、酸または塩基を添加することによって、約6〜約8の範囲に調整されうる。1つの実施形態では迅速放出薬剤の添加の前にゼラチン溶液のpHが約6.6〜約7.0の範囲のレベルに調整される。別の実施形態では、迅速放出薬剤の添加の前にゼラチン溶液のpHが約6.8に調整される。カプセル材料が医療用カプセル材料用途のために用いられるような実施形態では、適切な酸としては食品用品質の酸が含まれる。適切な食品用品質の酸の非限定的な例としては、硫酸、酒石酸、クエン酸、酢酸、およびドライアイスを含むがそれに限定されない二酸化炭素源からの二酸化炭素ガス、リン酸、またはそれらの組合せが含まれる。適切な食品用品質の塩基の非限定的な例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、酸化カルシウム、またはそれらの組合せが含まれる。いかなる特定の理論にも拘束されることなく、pHの調整が、ゼラチン分子の架橋またはイオン相互作用を変化させて、それによって結果のゼラチンカプセル材料物質の硬度、0〜約3の範囲の低pHの水溶液中の溶出度、およびそれらの組合せを含むがそれに限定されない物質特性を変化させうると考えられる。
【0052】
迅速放出薬剤がゼラチンの水溶液に添加されて、迅速放出薬剤のゼラチンに対する質量比が約1:1〜約1:20の範囲のカプセル化組成物が形成される。質量比は、ゼラチン溶液の質量に対する迅速放出薬剤の質量の比として定義され、ここでゼラチン溶液はゼラチン、ゼラチンが溶解される水溶液、および溶液に混和されるゼラチン加水分解物を組み合わせた質量を含む。あるいは、カプセル化組成物中の迅速放出薬剤のゼラチンに対する質量比は、約1:1〜約1:8、約1:4〜約1:10、約1:6〜約1:12、約1:8〜約1:14、約1:10〜約1:16、約1:12〜約1:18、または約1:14〜約1:20の範囲でありうる。1つの実施形態では、カプセル化組成物中の迅速放出薬剤のゼラチンに対する質量比は約1:2〜約1:15の範囲でありうる。さらに別の実施形態では、カプセル化組成物中の迅速放出薬剤のゼラチンに対する質量比は約1:4〜約1:9の範囲でありうる。
【0053】
迅速放出薬剤は、ゼラチンの水溶液中で本質的に不溶性である。いかなる特定の理論にも拘束されることなく、迅速放出薬剤の添加が、カプセル化組成物中のゼラチン分子の架橋またはイオン相互作用における変化を誘発しうるpHを含むがそれに限定されないカプセル化組成物の化学的特性のいかなるものも著しく変化させることはないと考えられる。いくつかの実施形態では、迅速放出薬剤はゼラチン溶液のpHを僅かに変化させうるが、その変化の規模は加水分解に対するゼラチンの過度の不安定性を引き起こす程充分ではないことがありうる。
【0054】
V.例示的カプセル材料組成物
迅速放出カプセル化組成物は上記セクション(II)で説明された迅速放出薬剤、および上記セクション(III)で説明されたゼラチンを含む。迅速放出カプセル化組成物は上記セクション(IV)で説明された方法を用いて生成されうる。
【0055】
1つの例示的迅速放出カプセル化組成物は、約15重量%のゼラチン、および約2重量%〜約10重量%の重炭酸ナトリウムを含有する水溶液中でゼラチンを含む。別の例示的迅速放出カプセル化組成物としては、約15重量%のゼラチン、および約5重量%〜約15重量%の炭酸カルシウムを含有する水溶液中でゼラチンを含む。任意の例示的実施形態における特定のゼラチンの組成物は、上記セクション(III)で説明したように、カプセル化組成物の使用目的に依存して変わりうる。
【0056】
さらに別の例示的迅速放出カプセル化組成物は、約10重量%〜約15重量%のゼラチン、約5重量%〜約15重量%の炭酸カルシウム、および約1重量%〜約5重量%のゼラチン加水分解物を含有する水溶液中でゼラチンを含む。任意の例示的実施形態における特定のゼラチンの組成物は、上記セクション(III)で説明したように、カプセル化組成物の使用目的に依存して変わりうる。
【0057】
さらに別の例示的迅速放出カプセル化組成物は、約36重量%〜42重量%のゼラチン、約17重量%〜約22重量%の可塑剤、約26重量%〜約31重量%の水、および約10重量%〜約15重量%の炭酸カルシウムを含有する水溶液中でゼラチンを含む。任意の例示的実施形態における特定のゼラチンの組成物は、上記セクション(III)で説明したように、カプセル化組成物の使用目的に依存して変わりうる。
【0058】
別の例示的迅速放出カプセル化組成物は、約32重量%〜約40重量%のゼラチン、約17重量%〜約22重量%の可塑剤、約26重量%〜約31重量%の水、約10重量%〜約15重量%の炭酸カルシウム、および約2重量%〜約6重量%のゼラチン加水分解物を含有する水溶液中でゼラチンを含む。任意の例示的実施形態における特定のゼラチンの組成物は、上記セクション(III)で説明したように、カプセル化組成物の使用目的に依存して変わりうる。
【0059】
VI.治療用組成物
上述の迅速放出カプセル化組成物のいずれも、迅速放出カプセル化組成物を含む各種の治療用組成物の製造に用いられうる。治療用組成物の実施形態の非限定的な例としては、迅速放出コーティングされた錠剤、軟質ゼラチンカプセル、硬質カプセル外殻、チュアブル型の酸中和剤組成物を含むがそれに限定されないチュアブル型の治療組成物、およびチュアブル型の酸中和剤組成物を含むがそれに限定されないカプセル化された活性化合物を含むチューインガムが含まれる。
【0060】
種々の治療用組成物は、迅速放出カプセル材料組成物に加えて、原薬(API)を含む。原薬(API)は、堕胎薬、ACE阻害薬、副腎皮質刺激ホルモン、α−アドレナリン作用薬、α−アドレナリン遮断薬、α−グルコシダーゼ阻害薬、同化ステロイドホルモン、麻薬性鎮痛薬、非麻薬性鎮痛薬、食欲減退薬、酸中和剤、駆虫薬、抗アレルギー性物質、抗脱毛剤、抗アメーバ薬、抗狭心症薬、抗不整脈剤、抗関節炎薬、抗喘息薬、抗生物質、抗コリン作用薬、けいれん防止剤、抗鬱剤、抗糖尿病薬、止瀉薬、解毒剤、抗運動障害薬、制吐剤、抗エストロゲン薬、抗真菌剤、抗緑内障薬、抗痛風薬、抗ヒスタミン薬、降圧剤、非ステロイド性抗炎症薬、抗マラリア薬、偏頭痛薬、抗ムスカリン薬、制嘔吐剤、抗悪性腫瘍薬、抗パーキンソン病薬、褐色細胞腫薬、抗ニューモシスティス薬、抗前立腺肥大薬、抗原虫薬、かゆみ止め、乾癬治療薬、抗精神病薬、解熱剤、抗リケッチア薬、鎮痙薬、抗血小板血症薬、抗血栓剤、抗甲状腺薬剤、抗結核性薬剤、鎮咳剤、抗潰瘍薬、抗ウイルス薬、不安緩解剤、アロマターゼ阻害薬、自律神経薬、バルビツール酸塩、ベンゾダイアゼピン拮抗物質、β-アドレナリン拮抗物質、β-アドレナリン遮断薬、徐脈薬、気管支拡張薬、カルシウムチャネル遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬、心臓病薬、強心剤、胆汁分泌促進薬、コリン作動薬、コリンエステラーゼ阻害薬、コリンエステラーゼ再‐活性剤、CNS刺激剤、細胞保護剤、うっ血除去剤、利尿剤、ドーパミン受容体作動薬、ドーパミン受容体拮抗物質、外部寄生虫撲滅薬、催吐剤、去痰剤、ファブリノゲン受容体拮抗薬、胃液分泌阻害物質、胃腸薬、胃運動促進薬、泌尿生殖器の平滑筋弛緩薬、重金属拮抗物質、止血薬、ヒスタミンH2受容体拮抗薬、催眠薬、免疫調節薬、免疫抑制剤、鉄剤、角質溶出薬、MAO阻害物質、粘液溶出剤、筋弛緩薬、散瞳薬、麻薬拮抗薬、向知性薬、アヘン剤作動体、子宮収縮薬、カリウムチャネル活性剤、呼吸促進薬、鎮静剤、セレニック(serenics)、セロトニン受容体作動体、セロトニン受容体拮抗薬、セロトニン取り込み阻害物質、刺激剤、交感神経遮断薬、交感神経興奮剤、血栓溶出剤、子宮収縮抑制薬、トランキライザー、血管拡張神経、血管保護薬、およびビタミンを含むがそれに限定されないAPIの群から選択されうる。
【0061】
迅速放出治療用組成物は、水溶性のAPIを含みうるがそれに限定されない。APIはpHが0〜約9の範囲の水溶液中では水溶性でありうる。あるいは、水溶性APIは、胃液を含むがそれに限定されないpHが0〜約3の範囲の水溶液中で水溶性でありうる。水溶性APIの非限定的な例には、硫酸アバカビル、アセブトロール、アセトアミノフェン、アシクロビル、アルベンダゾール、アレンドロネートナトリウム、アロプリノール、アモキシシリン、アマンタジンHCl、アミノベンゾエートカリウム、アミノカプロン酸、アミノアロンHCl、塩酸アミトリプチリン、アンフェタミン、アスピリン、アテノロール、アトルバスタチンカルシウム、硫酸アトロピン、アジスロマイシン、バルサラジド、塩酸ベンゼプリル、ベプリジルHCl、ベタインHCl、ビソプロロールフマレート、ブホルミン、ブプロピオンHCl、カラシクロビル、カペシタビン、カプトプリル、カリソプロドール、セファドロキシル、セフドニル、セフィキシム、セフポドキシムプロキセチル、セフプロジル、セフロキシムアキセチル、セレコキシブ、塩酸セトリジン、コンドロイチン、クロラチアジド、クロルフェニラミンマレエート、クロルプロマジンHCl、クロルゾキサゾン、コリンマグネシウムトリサリチレート、シメチジン、シプロフロキサシン、クラブラネートカリウム、クリンダマイシン、塩酸クロミプラミン、塩酸クロニジン、重硫酸クロピドグレル、クロキサシリンナトリウム、コデインホスフェート、コルヒチン、コルセベラムHCl、クレアチン、シクロホスファミド、シプロヘプタジン、デラビルジンメシレート、デメクロサイクリンHCl、ジクロフェナク、ジダノシン、ジエチルカルバマジンシトレート、ジルチアゼムHCl、DL−メチオニン、ドキセピンHCl、ドキシサイクリン、エファビレンズ、エプロサルタンメシレート、エンタカポン、塩酸エテンブトール、エプロサルタン、エリスロマイシン、エトスクシミド、エチドロネートジナトリウム、エトドラク、硫酸第一鉄、フレカイニドアセテート、フェルバメート、フェキソフェナジンHCl、フィロコキシブ、フルコナゾール、塩酸フルオキセチン、フルリプロフェン、フルバスタチン、ホソノプリルナトリウム、フマレート、ガバペンチン、ガチフロキサシン、ガンシクロビル、グアイフェネシン、塩酸ヒドララジン、ヒドロコドンビタルトレート、硫酸ヒドロキシクロロキン、ヒドロキシ尿素、塩酸ヒドロキシジン、イブプロフェン、硫酸インジナビル、イルベサルタン、イソフラボン、イソニアジド、イソソルビドモノニトレート、ケトプロフェン、ラクトビオネート、ラミブジン、塩酸レバミソール、レボフロキサシン、リシノプリル、リチウムカルボネート、ロサルタンカリウム、メベンダゾール、メフェナム酸、メペリジンHCl、メサラミン、メタプロロールタルトレート、メタキサロン、メトホルミンHCl、メテナミンマンデレート、メトドパ、メトカルバモール、メチルフェニデート、塩酸メチルフェニデート、メチロシン、塩酸ミノサイクリン、モダフィニル、モンテルカストナトリウム、硫酸モルヒネ、モキシフロキサシンHCl、ミコフェノレートメフェチル、ナブメトン、ナプロキセンナトリウム、ネファゾドンHCl、ネルフィナビルメスリエート、ネオスチグミンブロミド、ナイアシン、ニコチンアミド、ニトロフラントイン、ニフルチモキス、ニザチジン、ノルフロキサシン、塩酸ノルトリプチリン、オフロキサシン、オランゼピン、オルリスタット、オキシビチニンクロリド、パンクレアチン、パントテン酸、ペニシラミン、ペニシリンVカリウム、ペントサンポリスルフェートナトリウム、フェンホルミン、フェニルブタゾン、フェニトインナトリウム、フィトエストロゲン、塩化カリウム、プラミペキソール、プラバスタチンナトリウム、プラジクアンテル、プリマキンホスフェート、プロアントシアニジン、プロカインアミド、プロメタジン、塩酸プロメタジン、プロパフェノンHCl、プロパノロールHCl、塩酸プロポキシフェン、プロポキシフェンナプシレート、プロゾシン、塩酸プソイドフェドリン、硫酸プソイドエフェドリン、プシルリウム、ピクノゲノール、ピラジンアミド、ピリドスチグミンブロミド、塩酸ピリドキシン、ピルバート、ケチアピン カラフェート、硫酸キニジン、塩酸キナプリル、ラミプリル、塩酸ラニチジン、レボキセチン、リファブチン、リファンピン、リセドロネートナトリウム、ロフェコキシブ、ロシグリタゾンマレエート、硫酸サルブタモール、サキナビルメシレート、セルトラリンHCl、セベラマーHCl、シルデナフィル、シメチコン、ナトリウムバルプロエート、ソタロールHCl、スタブジン、サクシマー、スマニロール、スマトリプタンサクシネート、スンテアニン、塩酸テルアゾシン、テルビナフィンHCl、テトラサイクリンHCl、テオフィリン、チオベンダゾール、チクロピジンHCl、チモロールメレエート、トカイニドHCl、トルカプン、トルメチンナトリウム、トラマドールHCl、トロバフロキサシンメシレート、バラシクロビルHCl、バルガンシクロビルHCl、バルサルタン、バンコマイシン、塩酸ベンラファキシン、ベラパミルHCl、ワーファリンナトリウム、キシルアミン、ジドブジンおよびそれらの組合せが含まれる。特定の実施形態に依存して、APIは固体、粉体、微粒子、または液体の形態でありうる。
【0062】
A.コーティングされた錠剤
1つの治療用組成物は、固形錠剤形態のAPIの外側表面上の薄膜として適用される迅速放出カプセル化組成物を含む迅速放出錠剤コーティング組成物でありうる。このカプセル化組成物は、パンコーティング、ドラムコーティング、フィルムコーティング、スプレーコーティング、およびディップコーティングを含むがそれに限定されない当分野で周知の任意の技術を用いて、APIに適用されうる。
【0063】
B.軟質ゼラチンカプセル
別の治療用組成物は、液体または粉体状のAPIを包む連続した膜を形成する迅速放出カプセル化組成物を含む迅速放出軟質ゼラチンカプセル化組成物でありうる。このカプセル化組成物は、当分野で周知の任意の技術を用いてゼラチンカプセルとして形成されうる。これらの技術には、成形型内で個々のゼラチンカプセルを形成および充填する技術、回転ダイを用いてゼラチンカプセルを形成して、ブロー成形を用いて充填する技術、またはアコジェル型カプセル技術が含まれるがそれに限定されない。これらの実施形態では、カプセル化組成物は、グリセリン、ソルビトール派生物の混合物、またはそれらの混合物を含むがそれに限定されない可塑剤をさらに含みうる。
【0064】
C.硬質カプセル
さらに別の治療用組成物は、液体、粒体、または粉体のAPIを包む硬質の外殻を形成する迅速放出カプセル化組成物を含む硬質カプセル化組成物でありうる。硬質カプセル化組成物は、APIの周りに形成される連続した外殻、または入れ子式に連結される2つの半外殻、の形態を含むがそれに限定されない。2つの半外殻はそれぞれ別々に形成され、その中にAPIが挿入されてから、結合される。カプセル化組成物は、金属性ロッドの端部のディップコーティングまたは射出成形を含むがそれに限定されない当分野で周知の任意の技術を用いて、硬質カプセルとして形成されうる。
【0065】
D.チュアブル型の活性化合物
さらに別の治療用組成物は、複数のAPI微粒子の各々をコーティングする迅速放出カプセル化組成物を含むチュアブル型の治療組成物でありうる。胃液を含むがそれに限定されない酸性水溶液に接触すると、カプセルが急速に崩壊して、APIの迅速な放出を起こす。1つの非限定的な例示的治療用組成物は、APIがカプセル材料組成物でコーティングされた酸中和剤であるチュアブル型の酸中和配合物でありうる。チュアブル型の活性組成物であるコーティングされたAPI粒子は、スプレーコーティング、パンコーティング、ドラムコーティング、またはエマルジョンコーティングを含むがそれに限定されない当分野で周知の任意の方法によって形成されうる。チュアブル型の活性組成物は、直接圧縮、湿式造粒、乾式造粒、および流動床造粒を含むがそれに限定されない当分野で周知の技術を用いて硬質の錠剤として形成されうる。
【0066】
E.治療用チューインガム組成物
さらに別の治療用組成物は、APIの小粒子をコーティングする迅速放出カプセル化組成物を含む治療用チューインガム組成物でありうる。カプセル化組成物は、API粒子を包むチュアブル型のゼラチンカプセルを形成する。胃液を含むがそれに限定されない酸性水溶液に接触すると、カプセルは急速に崩壊し、APIの迅速な放出を起こす。1つの非限定的な例示的治療用組成物は、APIがカプセル材料組成物によってコーティングされた酸中和剤である、酸中和剤チューインガム組成物である。チュアブル型の組成物のコーティングされたAPI粒子は、スプレーコーティング、パンコーティング、ドラムコーティング、またはエマルジョンコーティングを含むがそれに限定されない当分野で周知の任意の方法によって形成されうる。チュアブル型の活性組成物は、カプセル化されたAPIをパニングシロップの中に混合し、その混合物をパニング技術を用いてガムコーティングとして塗布する技術が含まれるがそれに限定されない当分野で周知の技術を用いて形成されうる。
【0067】
実施例
以下の実施例は本発明の種々の態様を示す。
【実施例1】
【0068】
実施例1.製造方法がゼラチンカプセル材料組成物の溶解特性に与える影響
ゼラチンカプセル材料組成物の製造に用いられる酸化合物の添加が組成物の溶解特性に与える影響を評価するために、以下の実験を行った。
600グラムの豚皮ゼラチンを、3400gの脱イオン水中に溶解し、混合物をイオン交換樹脂(pH>9)の混床を通してろ過した。このゼラチン混合物を次に5部に分割して、硫酸、酒石酸、クエン酸、酢酸、および二酸化炭素を用いてpH5.5±0.1に調整した。二酸化炭素は、ドライアイスの昇華、または重炭酸ナトリウムの使用のいずれかによって供給した。5部の混合物の各々を一晩冷却し、次いで脱水器で乾燥した。二酸化炭素で処理したケースは、pH5.5を達成しなかったが、pHがpH9から著しく低下した。
乾燥した試料を挽いてコーティングとして調製した。50グラムの乾燥したゼラチンを秤量して250mlのビーカーに入れ、116.7gの脱イオン水を添加し、攪拌して混合することにより、各試料の30%ゼラチン溶液を調製した。混合した後、ビーカーを時計皿で覆い、1時間室温で膨潤させた。混合するために約1時間撹拌した後、撹拌しながら、混合物は60℃で約4時間溶融された。一連のガラス板を約60℃の温度に予熱して、自動コーティング装置に装填した。溶融したゼラチン混合物の表面から皮や泡を全て取り除いてから、混合物を自動コーティング装置に装填し、一連の予熱されたガラス板の上にコーティングした。皮膜を一晩(17時間程度)湿度と温度がそれぞれ45%±5%RHおよび70o±5oFに調整された室内で保管した。
5部の組成物の各々のために、重量0.075g程度のコーティング試料を、pHが3.0の900gのKH2PO4溶液を満たした6個の反応槽のぞれぞれに投入し、37℃に加熱した。反応槽内容物の、波長218nmにおける吸光率を使用して、コーティング試料の溶解率を約15分間に亘り測定した。
溶解率測定の結果を図1に示す。重炭酸ナトリウムまたはドライアイスの形で二酸化炭素を混和したコーティング組成物の溶解率曲線は、任意の他のコーティング組成物に比べて、組成物の溶解特性に著しい影響を与えることはなかった。しかしながら、この実験では、組成物の溶解中にCO2の気泡の形成を誘導するために充分な量の重炭酸ナトリウムがコーティング組成物に添加されなかった。
この実験の結果は、この実験で試験されたコーティング組成物の溶解速度はコーティングの組成物に対して敏感であることを実証した。特に、この実験で明記された量の、ドライアイスまたは重炭酸ナトリウムを用いて生成された二酸化炭素を混和したコーティング組成物の溶解特性は、試験した任意の他のコーティング組成物と比べ、著しく異なることはなかった。
【実施例2】
【0069】
実施例2.ゼラチンカプセル化組成物製造中に添加された重炭酸ナトリウムが溶解特性に与える影響
ゼラチンカプセル化組成物製造中の重炭酸ナトリウムの添加がその結果のゼラチンコーティングの溶解特性に与える影響を評価するために、以下の実験を行った。
600グラムのゼラチンを、3400gの脱イオン水中に溶解し、混合物をイオン交換樹脂(pH>9)の混床を通してろ過した。次に硫酸を使用してゼラチン混合物をpH5.5±0.1に調整した。次にゼラチン混合物2等分に分け、ゼラチン混合物の片方の半分に2重量%の重炭酸ナトリウムを添加した。2つの混合物の各々を一晩冷却し、次いで脱水器で乾燥した。実施例1で説明した方法を用いて2つの混合物からコーティング試料を生成した。
200mlの2M HClおよび29.8gのKClを1800mlの脱イオン水に添加することによって、pH1.0の緩衝液を生成した。900gのpH=1の緩衝液を含む6個の反応槽、2組に、2つのゼラチン混合物からのコーティング試料を添加し、実施例1で既に説明した方法を用いて、コーティング試料の溶解率を測定した。
コーティング試料の測定された溶解率を図2に示す。ゼラチンカプセル材料組成物の製造中に、ゼラチン混合物に重炭酸ナトリウムを添加することが、重炭酸ナトリウムの添加を行わずに製造された同じゼラチンコーティングに比べて、その結果のゼラチンコーティングの溶解速度を著しく上昇させた。特に、重炭酸ナトリウムの添加は、プロセス中の皮膜の分裂速度を著しく上昇させた。
この実験の結果は、ゼラチンコーティング組成物の生成中の重炭酸ナトリウムの添加が、炭酸ナトリウムを含まない同じゼラチンコーティング組成物に比べて、その結果のゼラチンコーティングの溶解速度を著しく上昇させたこと、およびそれがこのプロセス中に炭酸ナトリウムから生成される二酸化炭素の泡によって、被膜の分裂速度が上昇することによることを実証した。
【実施例3】
【0070】
実施例3.炭酸化合物がゼラチン混合物のpHに与える影響
種々の炭酸化合物の添加に対する、脱イオン化ゼラチン懸濁液のpHの感度を評価するために、以下の実験を行った。実施例1で説明した方法を用いて、脱イオン化ゼラチン懸濁液を生成し、ゼラチン懸濁液に硫酸を添加して、懸濁液のpHを約4.7に調整した。ゼラチン懸濁液を3等分に分けた。ゼラチン懸濁液の第1部に対しては、10重量%の炭酸カルシウムを添加した。ゼラチン懸濁液の第2部、および第3部に対しては、それぞれ5重量%および7.5重量%の量の重炭酸ナトリウムを添加した。炭酸塩の添加の前後で、各ゼラチン懸濁液のpHを測定した。それを下の表1に示す。
【表1】
溶液中の炭酸塩の塩基特性から予想されるように、ゼラチン混合物に炭酸塩を添加することが、一般に、ゼラチン懸濁液のpHを上昇させる。しかしながら、炭酸カルシウムの添加は、ゼラチン懸濁液のpHを上昇させたが、重炭酸ナトリウムの添加に比べて、炭酸カルシウムの方が添加量が多かったにもかかわらず、その上昇は著しく少ないものであった。これは、ゼラチン懸濁液の元のpH(pH=4.7)における炭酸カルシウムの溶解度が、重炭酸ナトリウムに比べて低いことによる可能性が最も高い。ゼラチン混合物中で分解される炭酸カルシウムの量が少ないと、ゼラチン懸濁液の中和の発生が少なくなり、その結果、ゼラチン懸濁液において炭酸カルシウムの添加の後も低いpHが維持される。
この実験の結果は、試験したゼラチン懸濁液のpHが懸濁液に添加される炭酸塩の量および組成物に対して高感度であることを実証した。
【実施例4】
【0071】
実施例4.高温および高湿度での長期保管がゼラチンカプセル化組成物溶解特性に与える影響
高温および高湿度での長期間保管に対するいくつかのゼラチンカプセル化組成物の溶解特性の感度を評価するために、以下の実験を行った。実施例1に記載されたものと同様の方法を用いて、脱イオン化骨ゼラチン懸濁液を生成し、カプセル化組成物として使用した。3種類の異なるカプセル化組成物を生成するためにゼラチン懸濁液を3等分に分けて使用した。第1のカプセル化組成物はさらなる修飾を行わない骨ゼラチンを含むもの(対照)であった。第2のカプセル化組成物は、骨ゼラチン、および15重量%のCaCO3を含むもの(FD−高速溶解)であった。第3のカプセル化組成物は、骨ゼラチン、15重量%のCaCO3、および分子量が約500ダルトンの10重量%の加水分解された骨ゼラチンを含むもの(FD+SH)であった。脱イオン水中、およびpH=1の緩衝液中の、3種類のカプセル化組成物の各々の溶解率を、実施例1に記載された方法を用いて測定した。組成物の製造の直後と、温度50℃および相対湿度80%で2週間、5週間、および11週間保管した後のカプセル化組成物の溶解率を測定した。
pH=1の緩衝液中の、対照、FD、およびFD+SHのカプセル化組成物に関する溶解結果を、それぞれ図3、図4、および図5に示す。図3および図4は共に、温度50℃、相対湿度80%での、より長期保管の溶解速度で顕著な低下を示した。図5は、2週間の保管後のFD+SHのカプセル化組成物については溶解速度の低下という同様の傾向を示すが、5週間および11週間の保管後は、溶解速度が初期の溶解速度のレベルまで戻っている。図6は、11週間の保管後のpH=1の緩衝液中の3種類のカプセル化組成物の溶解結果の比較である。FD+SH組成物の溶解率は、対照またはFD組成物よりも、著しく高いレベルで維持されている。
脱イオン水中の対照、FD、およびFD+SHのカプセル化組成物の溶解結果をそれぞれ図7、図8、および図9に示す。図7および図8は共に、図3および図4に示す低下と同様に、長期保管後の対照およびFD組成物についての溶解速度の低下を示している。図9に示すように、脱イオン水中のFD+SH組成物の溶解速度は、温度50℃および相対湿度80%での長期保管の期間による影響を本質的に受けなかった。図10は、11週間の保管後の、脱イオン水中の対照、FD、およびFD+SH組成物についての溶解結果の比較であり、FD+SH組成物が11週間の保管の後でさえ、明らかに著しく高い溶解速度を維持していることを示している。
高温および高湿度条件下で保管後の対照およびFDカプセル化組成物における溶解速度の低下は、カプセル化組成物中のゼラチン内での架橋の形成による可能性が高い。分子量が約100〜約2000ダルトンの低分子量の加水分解物をカプセル化組成物に添加することは、架橋の形成を妨害し、それによってたとえ長期保存の後でもゼラチンカプセル化組成物の溶解特性が初期レベルに維持されうる。
この実験の結果は、高温および高湿度で保管した後に、ゼラチンカプセル化組成物の溶解特性が低下することを実証した。この低下は特定の組成物に対して高感度であり、分子量が約100〜約2000ダルトンの加水分解物をゼラチンカプセル化組成物中に添加することで、この低下は事実上に除去されうる。
【実施例5】
【0072】
実施例5.高温および高湿度での長期保管が溶解特性に与える影響
本明細書中に記載された種々のゼラチン配合物の、温度および湿度条件に曝された後の溶解特性をさらに評価するために、以下の軟カプセル実験を行った。60℃の粘度が約10、000mPasである軟カプセルのカプセル化組成物を調製した。第1のカプセル化組成物は、43.00重量%のさらなる修飾を行わない骨ゼラチン、10.75重量%のソルビトール、10.75重量%のグリセロール、および35.5重量%の水を含むもの(標準の骨ゼラチン)であった。第2のカプセル化組成物は、40.8重量%の骨ゼラチン、7.2%の炭酸カルシウム(CaCO3)、10.2重量%のソルビトール、10.2重量%のグリセロール、および31.6重量%の水を含むもの(RRのみ)であった。第3のカプセル化組成物は、38.35重量%の骨ゼラチン、2.45重量%の、分子量が約500ダルトンの加水分解された骨ゼラチン、7.2重量%の炭酸カルシウム(CaCO3)、10.2重量%のソルビトール、10.2重量%のグリセロール、および31.6重量%の水を含むもの(RR RXL)であった。7.5サイズの楕円形カプセル製造用に2重キャビティダイロールを備え2.5rpmで動作する改良型チャンソン軟カプセル装置タイプM3(Modified Chan Sung soft caplule machine Type M3)上でこれら3種類のカプセル化組成物が用いられて、30分間タンブル乾燥し、その後、温度約25℃および相対湿度約35%RHで、1週間室内乾燥して軟カプセルを製造した。カプセルに96.51重量%のポリエチレングリコール、2.99重量%のグリセロール、および0.50%のブリリアントブルーの色素を含む液体配合物(充填材料)を充填した。3種の個別の溶解媒体に関して経時の溶解プロファイルを判定するために3種類の配合物を試験した。各ケースでは、溶解媒体を分光測光学的に監視し、媒体中のブリリアントブルーの色素の出現を観察した。第1の試験は、人工胃液(pHが1.3程度で、酵素が存在しない状態)中の、3種類の配合物の新鮮なカプセルに関する溶解プロファイルを評価した。第1の試験の結果を図11に示す。第2の試験は、温度40℃、相対湿度75%で2週間配合物を保管した後の、水(pHがほぼ中性レベル)中での、3種類の配合物の溶解プロファイルを評価した。この第2の試験の結果を図12に示す。第3の試験は、温度40℃、相対湿度75%で2週間、および4週間、配合物を保管した後の、人工胃液(pHが1.3程度で、酵素が存在しない状態)中での、3種類の配合物の溶解プロファイルを評価した。この試験の2週間の保管、および4週間の保管に関する結果をそれぞれ図13、および図14に示す。
図11に示す第1の試験の結果を参照すると、標準骨ゼラチン配合物、、RRのみ配合物、およびRR RXL配合物に関して、存在する溶解プロファイルに少ししか違いがないことをチャートが示している。カプセルは、製造された直後の新鮮な時は、継ぎ目に沿って容易に開き、色素を放出するので、この結果は予想された。
図12に示す第2の試験の結果は、2週間の保管後の3種類の配合物に関し、溶解プロファイルにおける差異を示している。詳細には、図12は、RR RXL配合物がRRのみ配合物および標準骨ゼラチン配合物に比べて、実質的により高速で、より完全な溶解プロファイルを示したことを表している。図12の結果は、加水分解されたゼラチン成分を混和することの影響を示すもので、配合物が中性の水中で試験されたにもかかわらず、溶出率を改善することを示している。RRのみ配合物は、標準骨ゼラチン配合物の溶解プロファイルに比べていくつかの改善を示した。しかしながら、結果はRR RXL配合物のように堅牢なものではなかった。これは、溶解媒体が中性の水溶液であるため、炭酸カルシウムが、気泡を発生させ、配合物の溶解をさらに促進するようなpHレベルに曝されなかったためで、予想外ではない。標準骨ゼラチン配合物に関する溶解プロファイルが、第1の試験の結果に比べて、溶解速度が遅く、全体の溶解率が低下を示したということに注目することが重要である。これは、高温(40℃)および高湿度(75%の相対湿度)で保管すると、標準ゼラチン配合物の溶解特性に悪影響を与えるという証拠である。
図13および図14に示す第3の試験の結果は、標準骨ゼラチン配合物に比べて、RR RXL配合物およびRRのみ配合物に関する溶解プロファイルが改善されていることを示している。詳細には、RR RXL配合物およびRRのみ配合物は、より高速な溶解速度と、より完全な溶解プロファイル、すなわち試験期間の最後には100%に近い溶解プロファイルを呈した。これらの結果は、炭酸カルシウム(RR RXL配合物およびRRのみ配合物へ)、および加水分解されたゼラチン(RR RXL配合物へ)の混和による溶解速度への影響を示している。また、標準骨ゼラチン配合物の溶解プロファイルが、第1の試験の結果、特に4週間の保管後の溶解を図示した図14の結果に比べて、溶解速度が遅く、全体の溶解率も低下していることを示したことに注目することも重要である。これは、高温(40℃)および高湿度(75%の相対湿度)で保管すると、標準ゼラチン配合物の溶解特性に悪影響を与えるという証拠である。
【0073】
以上本発明について詳細に説明してきたが、修正および変更が可能であることは明らかであろう。当業者は本開示の観点から開示された特定の実施形態に多くの変更が可能であり、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく同等あるいは同様の結果が得られ、従って、記載された全ては例示として解釈されるべきであり限定するものではないことを理解すべきであろう。
【技術分野】
【0001】
相互参照
本願は2010年2月22日提出の米国仮出願第61/306,744号の優先権を主張するものであり当該出願全体を引用として本明細書に含める。
【0002】
発明の分野
本発明は迅速放出カプセル化組成物に関する。さらに詳細には、本発明はゼラチン成分および迅速放出薬剤を含む迅速放出カプセル化組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
原薬(API)の迅速放出のための組成物の開発は医薬品業界において継続中の課題である。APIの多くが持つ苦味等の種々の不快特性のため、いくつかの経口組成物では風味剤を添加して含むことでAPIの不快味をマスキングしている。さらに別の経口組成物ではカプセル材料を含んで経口服用中にAPIを隔離し、APIの他の不快特性であるザラつきやベトつき等を軽減し、且つ、保管および/または輸送中の安定性等の他の特性を増強している。例えばゼラチンコーティングされた錠剤、硬質カプセル、および軟質ゼラチンカプセル等のカプセル医薬組成物は、経口服用される治療用組成物に広く用いられている。
【0004】
APIのカプセルによって上述の風味や安定性の問題の多くが軽減されるが、カプセル材料の特性が、APIの胃腔内への迅速放出についてのさらなる課題を提起する。いくつかの既存の手法では、水溶性のカプセル材料物質が用いられるが、多くの水溶性のカプセル材料が口腔または食道内で部分的に溶出して経口服用中に付着を起こす傾向がある。別の手法では、口腔等の相対的に中性なpH環境では相対的に不溶性であるが、胃腔等の酸性環境では高い可溶性であるような高分子材料を混和したpH依存性コーティングが用いられる。しかしながら、pH依存性の高分子カプセル材料の製造は、典型的には、特殊な製造技術を必要とする。
【0005】
別の既存の迅速放出組成物は、種々の水溶性の孔形成性材料をカプセル材料に混和する。このカプセル材料が胃腔内で溶出し、残りのカプセル材料に孔を形成して、内部のAPIを溶出させ、胃腔内に向けて拡散させる。さらに別の既存の迅速放出組成物は、多層のカプセル材料を含み、そこでは耐水性の多孔質外側層が胃液を膨張可能な内側層材料へ誘導し、膨張するとカプセル材料を破裂させ下のAPIを露出させる。これらのカプセル材料組成物は、製造に膨大な努力を要し、APIの放出を行うためには胃液が外側コーティング層の孔を通って浸透する必要があり、その結果APIの胃腔内での放出が遅くなる。
【0006】
ゼラチンは、医薬品業界では周知のカプセル材料である。架橋、脱イオン化、および部分加水分解等のゼラチン処理法によりゼラチンの材料特性が調整または制御され、剛性および可溶性等の特定の材料特性を有するゼラチンコーティングが生成されうる。ゼラチンコーティング、軟質ゼラチンカプセル、および硬ゼラチンカプセルの製造は、典型的にはゼラチンの水性懸濁液を使用する。その結果、結果のゼラチンカプセル材料の胃腔内での迅速放出特性を高めるために、水溶性の迅速放出添加物を混和することが難しくなる。さらには、ゼラチンの迅速放出添加物が、ゼラチン懸濁液のpH等の化学的特性を変化させることがあり、その結果のゼラチンマトリックス構造の崩壊または不安定性を引き起こしうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
当分野では、胃腔の酸性環境で急速に崩壊するが、APIの経口服用中の口腔および食道のpHが中性の水性環境では崩壊しないゼラチンを主剤とする迅速放出カプセル化組成物が必要とされている。さらに、当分野ではゼラチンまたはその他の高分子カプセル材料の胃腔における迅速放出特性を強化するための迅速放出添加物であって、製造中にカプセル材料のマトリックス構造を分解させることはない迅速放出添加物が必要とされている。このような迅速放出添加物が、既知のカプセル技術を用いる迅速放出カプセルの生産を促進しうる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要約
従って、本発明の種々の態様の1つは水不溶性の迅速放出薬剤およびゼラチンを含む迅速放出カプセル化組成物の提供である。迅速放出薬剤が分解し、胃腔の酸性環境内で気泡を放出することで、放出中に気泡がゼラチンに当たり物理的に分裂することにより、ゼラチンの急速な崩壊が起こることが見出された。その結果、経口治療化合物等の摂取可能な製品のための剤形として迅速放出カプセル化組成物を用いることが胃腔内で化合物の迅速放出をもたらすこととなる。
【0009】
迅速放出カプセル化組成物がゼラチン加水分解物をさらに含んでもよい。別の態様では炭酸カルシウムおよびゼラチンを含有し、炭酸カルシウムに対するゼラチンの質量比が約1:1〜約1:20の範囲である、迅速放出カプセル化組成物が提供される。本明細書中に用いられる場合、組成物中の2種の化合物の質量比とは、組成物中に含まれる第1の化合物の質量を、組成物中に含まれる第2の化合物の質量で除した結果得られる数値的量を意味する。さらに別の態様では、水溶液中に溶出しているゼラチン、および水溶液中に懸濁している水不溶性の迅速放出薬剤を含む迅速放出カプセル化組成物が提供される。さらに別の態様では、炭酸カルシウム、ゼラチンおよびゼラチン加水分解物を含み、前記ゼラチン加水分解物が約100ダルトン〜約2000ダルトンの範囲の分子量をもつ、迅速放出カプセル化組成物が提供される。
【0010】
迅速放出薬剤は、pHが約6〜約8の範囲の水溶液中で相対的に不溶性であるように選択される。迅速放出薬剤のこの特性が、典型的にはゼラチンの水溶液および迅速放出薬剤を使用する迅速放出カプセル化組成物の製造中に迅速放出薬剤が溶出し他の成分と反応することを防ぐ。さらに、迅速放出薬剤は、pHが0〜約3の範囲の水溶液中で、急速に分解するように選択される。経口服用される治療用組成物のカプセル材料として用いる場合は、典型的にはpHが約6〜約7の口腔内で、迅速放出薬剤は相対的に不活性のままである。典型的にはpHが約1〜約3である胃腔内の胃液に接触すると、迅速放出薬剤は急速に分解し、治療組成物の原薬の迅速放出をもたらす。
【0011】
さらに別の態様では、ゼラチンおよび水不溶性の迅速放出薬剤を含み、水不溶性の迅速放出薬剤のゼラチンに対する質量比が約1:1〜約1:20の範囲である、迅速放出硬質カプセル外殻組成物を提供する。さらなる態様では、ゼラチンおよび水不溶性の迅速放出薬剤を含み、水不溶性の迅速放出薬剤のゼラチンに対する質量比が約1:1〜約1:20の範囲である、迅速放出軟質ゼラチンカプセルのカプセル化組成物を提供する。さらなる別の態様では、ゼラチンおよび水不溶性の迅速放出薬剤を含み、水不溶性の迅速放出薬剤のゼラチンに対する質量比が約1:1〜約1:20の範囲である、迅速放出錠剤コーティング組成物が提供される。上述の迅速放出カプセル化組成物のいずれもゼラチン加水分解物をさらに含んでも良い。
【0012】
別の態様では、迅速放出コーティング内にカプセル化された複数種の原薬の粒子を含むチュアブル型の治療組成物が提供される。この態様では、迅速放出コーティングがゼラチンおよび水不溶性の迅速放出薬剤を含み、前記組成物は水不溶性の迅速放出薬剤のゼラチンに対する質量比が約1:1〜約1:20の範囲である。迅速放出コーティングはゼラチン加水分解物をさらに含んでもよい。
【0013】
さらに別の態様では、迅速放出コーティング内にカプセル化された複数種の原薬の粒子を含む治療用チューインガム組成物であって、迅速放出コーティングがゼラチンおよび水不溶性の迅速放出薬剤を含む組成物が提供される。この態様の組成物は、水不溶性の迅速放出薬剤のゼラチンに対する質量比が約1:1〜約1:20の範囲である。迅速放出コーティングはゼラチン加水分解物をさらに含んでもよい。
【0014】
本発明のさらなる別の態様では、迅速放出カプセル化組成物を製造するための方法が提供される。この方法は(a)水媒体中にゼラチン成分を溶出するステップ、および(b)ゼラチン水溶液に水不溶性の迅速放出薬剤を加えるステップを含む。ステップ(a)のゼラチン成分は、約50,000ダルトン〜約300,000ダルトンの範囲の分子量をもつゼラチンと、約100ダルトン〜約2000ダルトンの範囲の分子量をもつゼラチン加水分解物との組合せを含みうる。約50,000ダルトン〜約300,000ダルトンの範囲の分子量をもつゼラチンの、約100ダルトン〜約2000ダルトンの範囲の分子量をもつゼラチン加水分解物に対する質量比は、約3:1〜約99:1、約4:1〜約19:1、および約5:1〜約13:1の範囲でありうる。ステップ(b)の水不溶性の迅速放出薬剤は、オキシ炭酸ビスマス、炭酸カルシウム、炭酸コバルト、炭酸ランタン、炭酸鉛、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、炭酸マンガン、炭酸ニッケル(II)、炭酸銀、炭酸ストロンチウムおよびそれらの組合せを含みうる。ステップ(b)の水媒体は水を含みうる。一般的に、迅速放出薬剤はpHが約6〜約8の範囲で本質的に不溶性であり、迅速放出薬剤はpHが0〜約3の範囲で分解する。典型的には、水不溶性の迅速放出薬剤のゼラチン成分に対する質量比は、約1:1〜約1:20、約1:2〜約1:15、および約1:4〜約1:9の範囲である。
【0015】
迅速放出カプセル化組成物の製造方法が可塑剤を添加する工程をさらに含みうる。典型的な可塑剤には、セバシン酸ジブチル、ジエチルフタレート、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、エリトリトール、トリアセチンおよびクエン酸トリエチルならびにそれらの混合物が含まれる。一般的には、ゼラチン成分はゼラチン、可塑剤、および水の組合せ、またはゼラチン、ゼラチン加水分解物、可塑剤、および水の組合せを含みうる。本方法の1つの実施形態では、ステップ(a)は、組み合わせされたゼラチン水溶液の約0.01重量%〜約30重量%のゼラチン成分を、組み合わされたゼラチン水溶液の約40重量%〜約99.9重量%の水媒体中に溶出する工程を含みうる。本方法の別の実施形態では、ステップ(a)は、組み合わされたゼラチン水溶液の約10重量%〜約20重量%のゼラチン成分を、組み合わされたゼラチン水溶液の約70重量%〜約90重量%の水媒体中に溶出する工程を含みうる。さらに別の実施形態において、ステップ(a)は、約10重量%〜約20重量%の約50,000ダルトン〜約300,000ダルトンの範囲の分子量をもつゼラチンと、約1重量%〜約5重量%の約100ダルトン〜約2000ダルトンの分子量をもつゼラチン加水分解物とを、組み合わされたゼラチン水溶液の約70重量%〜約90重量%の水媒体中に溶出する工程を含みうる。
【0016】
本方法のさらに別の実施形態において、ステップ(a)は、ゼラチン成分の約35重量%〜約60重量%のゼラチン、ゼラチン成分の約15重量%〜約30重量%の可塑剤およびゼラチン成分の約25重量%〜約40重量%の水を溶解する工程を含む。また、ステップ(a)は、ゼラチン成分の約42重量%〜約48重量%のゼラチン、ゼラチン成分の約20重量%〜約25重量%の可塑剤およびゼラチン成分の約30重量%〜約35重量%の水を溶解する工程を含みうる。
【0017】
本方法のさらに別の実施形態では、ステップ(a)は、約32重量%〜約40重量%の約50,000ダルトン〜約300,000ダルトンの範囲の分子量をもつゼラチン、約17重量%〜約22重量%の可塑剤と、約26重量%〜約31重量%の水と、約2重量%〜約6重量%の約100ダルトン〜約2000ダルトンの範囲の分子量をもつゼラチン加水分解物とを溶解する工程を含みうる。またステップ(b)は、約10重量%〜約15重量%の炭酸カルシウムを添加する工程を含む。
【0018】
本発明の別の態様および反復を以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図の説明
以下の図は本発明の種々の態様を示す。
【図1】種々の酸性化合物を含むゼラチン組成物のpH=1の緩衝液における測定溶出性を示すグラフである。
【図2】炭酸塩の添加が、ゼラチン組成物のpH=1の緩衝液における測定された溶解率に与える影響を示すグラフである。
【図3】ゼラチンの保管が、ゼラチン組成物のpH=1の緩衝液における測定された溶解特性に与える影響を示すグラフである。
【図4】炭酸カルシウムを含むゼラチン組成物の保管が、そのゼラチン組成物のpH=1の緩衝液における測定された溶解特性に与える影響を示すグラフである。
【図5】炭酸カルシウムおよびゼラチン加水分解物を含むゼラチン組成物の保管が、そのゼラチン組成物のpH=1の緩衝液における測定された溶解特性に与える影響を示すグラフである。
【図6】3種類のゼラチン組成物の、11週間の保管後の、pH=1の緩衝液における測定された溶解率を比較したグラフである。
【図7】炭酸カルシウムを含むゼラチン組成物の保管が、そのゼラチン組成物の脱イオン水での測定された溶解特性に与える影響を示すグラフである。
【図8】炭酸カルシウムを含むゼラチン組成物の保管が、そのゼラチン組成物の脱イオン水での測定された溶解率特性に与える影響を示すグラフである。
【図9】炭酸カルシウムおよびゼラチン加水分解物を含むゼラチン組成物の保管が、そのゼラチン組成物の脱イオン水での測定された溶解率特性に与える影響を示すグラフである。
【図10】3種類のゼラチン組成物の、11週間の保管後の、脱イオン水での測定された溶解率を比較したグラフである。
【図11】人工胃液(pHが1.3程度であり、いかなる酵素も存在しないもの)での、3種のゼラチン配合物の溶解プロファイルを示す。3種のゼラチン配合物は、さらなる修飾が行われていない骨ゼラチン(標準骨ゼラチン(Std bone gelatine))と、骨ゼラチンおよび15重量%の炭酸カルシウム(CaCO3)(RRのみ)と、骨ゼラチンと15重量%の炭酸カルシウム(CaCO3)および10重量%の分子量が約500ダルトンの加水分解された骨ゼラチン(RR RXL)とを含む。
【図12】配合物が温度40℃、相対湿度75%で、2週間の間保管された後の、水(ほぼ中性のpHレベルのもの)中の、3種のゼラチン配合物の溶解プロファイルを示す。3種のゼラチン配合物は、さらなる修飾が行われていない骨ゼラチン(標準骨ゼラチン)、骨ゼラチンおよび15重量%の炭酸カルシウム(CaCO3)(RRのみ)、骨ゼラチン、15重量%の炭酸カルシウム(CaCO3)、および分子量が約500ダルトンの10重量%の加水分解された骨ゼラチン(RR RXL)を含む。
【図13】配合物が温度40°C、相対湿度75%で、2週間の間保管された後の、人工胃液(pHが1.3程度であり、いかなる酵素も存在しないもの)中の、3種のゼラチン配合物の溶解プロファイルを示す。3種のゼラチン配合物には、さらなる修飾が行われていない骨ゼラチン(標準骨ゼラチン)と、骨ゼラチンおよび15重量%の炭酸カルシウム(CaCO3)(RRのみ)と、骨ゼラチン、15重量%の炭酸カルシウム(CaCO3)、および分子量が約500ダルトンの10重量%の加水分解された骨ゼラチン(RR RXL)とが含まれる。
【図14】配合物が温度40°C、相対湿度75%で、4週間の間保管された後の、人工胃液(pHが1.3程度であり、いかなる酵素も存在しないもの)中の、3種のゼラチン配合物の溶解プロファイルを示す。3種のゼラチン配合物には、さらなる修飾が行われていない骨ゼラチン(標準骨ゼラチン)と、骨ゼラチンおよび15重量%の炭酸カルシウム(CaCO3)(RRのみ)と、骨ゼラチン、15重量%の炭酸カルシウム(CaCO3)、および分子量が約500ダルトンの10重量%の加水分解された骨ゼラチン(RR RXL)とが含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
I.組成物
本発明は、炭酸塩等の水不溶性の迅速放出薬剤と、ゼラチン成分とを含有する迅速放出カプセル化組成物を含む。水不溶性の迅速放出薬剤は、pHが約6〜約8の範囲の水溶液中では、迅速放出薬剤が相対的に不溶性を保つことによって、種々のカプセル化組成物の製造中に、結果のカプセル化組成物の安定性に悪影響を与えることなく、迅速放出薬剤がゼラチン水溶液中に混和されることを許容するように選択される。さらに、迅速放出薬剤は、胃液を含むがそれに限定されないpHが約0〜約3の水溶液に接触すると分解するように選択される。
【0021】
迅速放出薬剤は、胃液に接触する際の分解の副産物として、二酸化炭素を含むがそれに限定されないガスを放出する。いかなる特定の理論にも拘束されることなく、迅速放出薬剤の分解がコーティング組成物内に気泡を放出すると考えられる。カプセル内の迅速放出薬剤の分解によって放出された気泡の静水圧がカプセルの周りの高分子材料に物理的応力を与えることで、カプセルの分裂、そして最終的には破裂を引き起こすと考えられる。迅速放出薬剤の分解によって放出される気泡の破壊的な力が、迅速放出カプセル化組成物によってカプセル化された活性化合物に、迅速放出薬剤を含まない組成物に比べて著しく高い迅速放出をもたらす。
【0022】
高温、高湿度、およびその組合せを含むがそれに限定されない条件下で保管中に、カプセル内で架橋の形成を抑制するために、カプセルがゼラチンの加水分解物をさらに含んでもよい。カプセル内での架橋の形成がカプセルの溶解を妨げることがあるため、ゼラチン加水分解物を添加することで長期の保管期間の後でも、カプセルの初期溶解特性を維持することができる。1つの例示的実施形態では、迅速放出カプセル化組成物内に含まれるゼラチンの加水分解物は、約100〜約2000ダルトンの範囲の分子量をもつ。
【0023】
カプセル化組成物の使用としては、錠剤のコーティング、軟質ゼラチンキャップ、および硬質カプセルが含まれるがそれらに限定されない。カプセル化組成物実施形態の別の使用としては、チュアブル型の組成物、およびカプセル化された活性治療化合物を含むチューインガムが含まれるがそれらに限定されない。
【0024】
本発明の種々の態様のさらに詳細な説明を以下に示す。
【0025】
II.迅速放出薬剤
適切な迅速放出薬剤としては、pHが0〜約3の範囲のpHの水溶液中で分解可能な任意の化合物が含まれる。適切な迅速放出薬剤はpHが0〜約3の水溶液中において分解中に、二酸化炭素を含むがそれに限定されないガスをさらに放出しうる。
【0026】
適切な迅速放出薬剤としては、重炭酸塩および炭酸塩が含まれうるがそれに限定されない。迅速放出薬剤は、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウムおよびそれらの組合せを含みうるがそれに限定されないアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩でありうる。また迅速放出薬剤は、炭酸マンガン、炭酸鉄(II)、炭酸コバルト、炭酸ニッケル(II)、炭酸銅(II)、炭酸亜鉛、炭酸カドミウムおよびそれらの組合せを含むがそれに限定されない遷移元素の炭酸塩でありうる。また、迅速放出薬剤はさらに、炭酸タリウム(I)、炭酸鉛(II)、オキシ炭酸ビスマスおよびそれらの組合せを含むがそれに限定されない他の金属の炭酸塩でありうる。さらに迅速放出薬剤は、炭酸ランタンを含むがそれに限定されないランタニドの炭酸塩でありうる。
【0027】
適切な迅速放出薬剤は、pHが約6〜約8の範囲の水溶液中で本質的に不溶性であり、且つpHが0〜約3の水溶液中で可溶性である任意の化合物であるように選択されうる。これらの溶解特性を有する適切な迅速放出薬剤は、オキシ炭酸ビスマス、炭酸カルシウム、炭酸コバルト、炭酸ランタン、炭酸鉛、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、炭酸マンガン、炭酸ニッケル(II)、炭酸銀、炭酸ストロンチウムおよびそれらの組合せを含むがそれに限定されない炭酸塩でありうる。特に、迅速放出薬剤は炭酸カルシウムでありうる。
【0028】
食品、栄養補助食品、および医薬品を含むがそれに限定されない迅速放出カプセル化組成物を含みうる種々の食用製品に関し、迅速放出薬剤は少なくとも食品用品質でありうる。より好ましくは、迅速放出薬剤はGRASおよびUSP品質でありうる。
【0029】
迅速放出薬剤は、粒径約0.152mm(約100メッシュ)未満の細粒の形態で使用されうる。細粒は粒径が約0.089mm(約170メッシュ)未満、約0.075mm(約200メッシュ)未満、約0.066mm(約230メッシュ)未満、または約0.053mm(約270メッシュ)未満でありうる。特に、迅速放出薬剤は粒径約0.075mm(約200メッシュ)未満の細粒の形態で使用されうる。
【0030】
迅速放出カプセル化組成物内に含まれる迅速放出薬剤の量は、カプセルが胃液等の酸性溶液に曝されたときに、二酸化炭素等の気泡の形成を誘導するように、充分多い量でありうる。迅速放出薬剤は組成物の総重量の約5%〜約50%の範囲の量で、迅速放出カプセル化組成物内に含まれうる。あるいは、迅速放出カプセル化組成物内に含まれる迅速放出薬剤の量は、組成物の総重量の、約5%〜約13%、約9%〜約17%、約10%〜約18%、約14%〜約22%、約18%〜約26%、約22%〜約30%、約26%〜約34%、約30%〜約36%、約34%〜約40%、約38%〜約44%、約42%〜約48%、および約46%〜約50%の範囲でありうる。1つの実施形態では、迅速放出カプセル化組成物内に含まれる迅速放出薬剤の量は、ゼラチンの重量に対して約5%〜約40%の範囲を含む。別の実施形態では、迅速放出カプセル化組成物内に含まれる迅速放出薬剤の量は、ゼラチンの重量に対して約10%〜約30%の範囲を含む。さらに別の実施形態では、迅速放出カプセル化組成物内に含まれる迅速放出薬剤の量は、ゼラチンの重量に対して約15%〜約20%の範囲を含む。
【0031】
好ましくは、迅速放出カプセル化組成物内に含まれる迅速放出薬剤の量は、組成物が胃液等の酸性溶液に接触されたときに泡の形成を誘導するためにちょうど充分な量でありうる。炭酸カルシウム等の迅速放出薬剤の比率が高いと、その結果、望ましくない脆弱な材料特性を有するカプセル化組成物となりうる。さらに、炭酸カルシウム等の迅速放出薬剤の比率が相対的に高いカプセル化組成物はカプセル材料の製造中に、望ましくない膜の形成を起こしやすくなりうる。特に、炭酸カルシウムは約15重量%の量で迅速放出カプセル化組成物内に含まれうる。
【0032】
III.ゼラチンおよびその他のポリマー
迅速放出薬剤に加えて、迅速放出カプセル化組成物はゼラチンを含む。ゼラチンは豚や家畜の皮膚および骨を含むがそれに限定されないコラーゲンまたはコラーゲンリッチ組織から誘導される。ゼラチンの非限定的な例としては、タイプAゼラチン、タイプBゼラチンおよびそれらの組合せが含まれる。タイプAゼラチンは、等イオン点が約7〜約10.0の範囲であることによって特徴付けられ、典型的には当分野では周知の酸前処理を用いてコラーゲンから誘導される。タイプBゼラチンは、等イオン点が約4.8〜約5.8の範囲であることによって特徴付けられる。
【0033】
ゼラチンは、典型的には、約80重量%〜約90重量%のタンパク質、約0.1重量%〜約2重量%の鉱物塩および約10重量%〜15重量%の水を含みうる。本明細書中では「タンパク質」は、カルボキシル基と各隣接するアミノ酸のアミノ基との間のペプチド結合によって結合された複数のアミノ酸から作られた有機化合物を意味するよう定義される。ゼラチンは、約50,000ダルトン〜約300,000ダルトンの範囲の平均分子量をもちうる。別の実施形態では、ゼラチンは約70,000ダルトン〜約150,000ダルトンの範囲の平均分子量をもつ。さらに別の実施形態では、ゼラチンは約80,000ダルトン〜約120,000ダルトンの範囲の平均分子量をもつ。さらに、ゼラチンのブルーム値は典型的には約50〜約300である。1つの実施形態では、ゼラチンのブルーム値が約125〜約200の範囲である。さらに別の実施形態では、ブルーム値が約150〜約175の範囲でありうる。ゼラチンのpHは典型的には約3.8〜約7.5である。別の実施形態では、ゼラチンのpHが約6.2〜約7.3の範囲である。さらに別の実施形態では、ゼラチンのpHが約6.6〜約7.0の範囲である。また、ゼラチンの等電点は約4.7〜約9.0であり、粘度は約15〜約75mPであり、灰分は約0.1重量%〜約2.0重量%の範囲でありうる。
【0034】
ゼラチンが実質的にタイプAゼラチンである場合は、ブルーム強度は約50〜約300の範囲であり、pHは約3.8〜約5.5の範囲であり、等電点は約7.0〜約9.0の範囲であり、粘度は約15〜約75mPの範囲であり、灰分は約0.1重量%〜約2.0重量%の範囲でありうる。
【0035】
ゼラチンが実質的にタイプBゼラチンである場合は、ブルーム強度は約50〜約300の範囲であり、pHは約5.0〜約7.5の範囲であり、等電点は約4.7〜約5.8の範囲であり、粘度は約20〜約75mPの範囲であり、灰分は約0.5重量%〜約2.0重量%の範囲でありうる。
【0036】
ゼラチンは使用前に随意的に、イオン交換樹脂の混床を用いるイオン交換を含むがそれに限定されない既知の方法で脱イオン化されうる。また、ゼラチンは、約100ダルトン〜約2000ダルトンの分子量をもつゼラチン加水分解物を含みうる。ゼラチン加水分解物および該加水分解物を製造する方法については、参照としてその全体を本明細書に組み込まれる米国特許第7、485、323号に説明されている。
【0037】
ゼラチンの物理的特性は、その意図する用途に依存して変化可能であり、変化する。ゼラチンが硬質カプセル医薬製品の製造に用いられる場合は、ゼラチンのブルーム強度は約200〜約300の範囲であり、粘度は約40〜約60mPの範囲であり、pHは約4.5〜約6.5の範囲でありうる。ゼラチンが軟外殻カプセル医薬製品の製造に用いられる場合は、ゼラチンのブルーム強度は約125〜約200の範囲であり、粘度は約25〜約45mPの範囲であり、pHは約4.5〜約6.5の範囲でありうる。
【0038】
迅速放出カプセル化組成物の特定のゼラチンは約7.5未満の等電点を有するように選択されうる。迅速放出薬剤の添加の結果、以前のゼラチンカプセル化組成物よりも組成物のpHが著しく高くなるため、ゼラチン等電点をより低くすることによって、ゼラチンの脱アミドを含むがそれに限定されない有害な化学プロセスが迅速放出カプセル化組成物の製造中に発生する可能性を軽減する。
【0039】
特に、迅速放出カプセル化組成物は、最も典型的なタイプBゼラチンを含みうる。迅速放出カプセル化組成物のために適切な特定のゼラチンの非限定的な例には、酸性骨ゼラチン、石灰化骨ゼラチン、および牛皮ゼラチンが含まれる。
【0040】
迅速放出カプセル化組成物を生成するために用いられるゼラチン懸濁液の粘度は生成中に迅速放出薬剤が懸濁したまま残らないようなレベルでありうる。これらのケースでは迅速放出カプセル化組成物の生成中にゼラチン懸濁液の粘度を充分に高く維持するために、ヒドロキシエチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロース等のヒドロコロイドを含むがそれに限定されないチキソトロープ化合物を迅速放出カプセル化組成物にさらに添加してもよい。
【0041】
また、ゼラチンまたはゼラチン成分という用語は、ゼラチンと、可塑剤、水性溶剤または媒体、および当分野で周知のその他の成分とを含むがそれに限定されない他の配合添加剤との組合せを包含するものとして解釈される。可塑剤(分散剤としても知られる)という用語は一般的にゼラチン配合物にさらに高い柔軟性および可撓性を付与する添加剤を記述するために用いられる。具体的には、可塑剤はクエン酸トリエチルおよびポリエチレングリコール等の親水性、および/またはジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジブチルセバケート、およびアセチルトリブチルシトレート等の疎水性でありうる。当業者であれば、これらのポリマー/可塑剤を、同様の機能を達成可能な他の材料、即ちゼラチン配合物にさらに高いレベルの柔軟性および可撓性を付与することを達成可能な他の材料で置き換えてもよいことが理解されるであろう。この点においてオイルやワックスを含む種々の疎水性材料を用いることができ、且つそれらは通常の実験を通して、あるいは当業者に周知の文献において見出だすことができる。1つの実施形態では、可塑剤は、ジブチルセバケート、ジエチルフタレート、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、トリアセチンおよびクエン酸トリエチルならびにそれらの混合物を含む。別の実施形態では、可塑剤は、グリセリン、ソルビトール、エリトリトールおよびそれらの組合せからなる群から選択される。さらに別の実施形態では、可塑剤はグリセリンとソルビトールの1:1の混合物を含む。
【0042】
水性溶剤または水媒体という用語はゼラチン組成物を形成可能な任意の溶剤を包含するものとして解釈されうる。水媒体は水を含むがそれに限定されない。
【0043】
1つの実施形態では、迅速放出カプセル化組成物のゼラチン成分は、ゼラチンと、可塑剤と、水を含む水媒体との組合せを含む。ゼラチン成分は、ゼラチン成分の約35重量%〜約60重量%のゼラチンと、ゼラチン成分の約15重量%〜約30重量%の可塑剤と、ゼラチン成分の約25重量%〜約40重量%の水を含みうる。別の実施形態では、ゼラチン成分は、ゼラチン成分の約42重量%〜約48重量%のゼラチンと、ゼラチン成分の約20重量%〜約25重量%の可塑剤と、ゼラチン成分の約30重量%〜約35重量%の水とを含みうる。
【0044】
さらに別の実施形態では、迅速放出カプセル化組成物のゼラチン成分は、ゼラチンと、水を含む水媒体との組合せを含む。ゼラチン成分は、ゼラチン成分の約5重量%〜約30重量%のゼラチンと、ゼラチン成分の約70重量%〜約95重量%の水とを含みうる。別の実施形態では、ゼラチン成分は、ゼラチン成分の約10重量%〜約20重量%のゼラチンと、ゼラチン成分の約80重量%〜約90重量%の水とを含む。
【0045】
別の実施形態では、迅速放出カプセル化組成物のゼラチン成分は、上述したように、ゼラチンとゼラチン加水分解物との組合せを含む。ゼラチンのゼラチン加水分解物に対する重量比は、一般に、約3:1〜約99:1の範囲である。別の実施形態では、ゼラチンのゼラチン加水分解物に対する重量比は、約4:1〜約49:1の範囲である。さらに別の実施形態では、ゼラチンのゼラチン加水分解物に対する重量比は、約5:1〜約19:1の範囲である。
【0046】
迅速放出カプセル化組成物は、ポリマーをさらに含みうる。ポリマーとしては、合成ポリビニルポリマー、合成ポリエチレンポリマー、合成アクリルポリマー、バイオポリマー、改質バイオポリマーおよびそれらの組合せを含むがそれに限定されない当分野で既知の任意の適切なカプセルポリマーが含まれうる。適切な合成ポリビニルポリマーとしてはポリ塩化ビニル、ポリビニルアセテートおよびそれらの共重合体、ポリビニルアルコール、およびポリビニルピロリドンが含まれうるがそれに限定されない。合成ポリエチレンポリマーとしては、ポリエチレンおよびポリスチレンが含まれうるがそれに限定されない。合成アクリルポリマーとしては、メチルメタクリレートまたはアクリルモノマーの共重合体が含まれうるがそれに限定されない。バイオポリマーおよび改質バイオポリマーの非限定的な例としては、エチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキリプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロース、Na−カルボキシメチルセルロース、セラック、およびゼラチンが含まれる。
【0047】
カプセル成分の水溶液を用いて種々のカプセル実施形態を製造する目的に関しては、水溶性ポリマーが様々な実施形態に適しうる。その理由は錠剤コーティング、軟質ゼラチンカプセル、および硬質カプセルを含むがそれに限定されない多くのカプセルが液体ポリマー溶液から形成されるためである。水溶性ポリマーはpHが約6〜約8の範囲の水溶液中で可溶性でありうる。水溶性ポリマーの非限定的な例には、カルボキシメチルセルロース、架橋したポリビニルピロリドン、ヒドロキシルプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶性セルロース、シェラック、およびゼラチンが含まれうる。特に、迅速放出カプセル化組成物はゼラチンおよびカルボキシメチルセルロースを含みうる。
【0048】
IV.迅速放出カプセル化組成物の生成方法
迅速放出薬剤およびゼラチンを含む迅速放出カプセル化組成物は、当分野では既知の膨潤プロセスにおいてゼラチンを水に溶解して、ゼラチンが約5重量%〜約60重量%の範囲の水溶液を形成することによって、生成しうる。あるいは、ゼラチン水溶液は、ゼラチンが約5重量%〜約15重量%、約10重量%〜約20重量%、約15重量%〜約25重量%、約20重量%〜約30重量%、約25重量%〜約35重量%、約30重量%〜約40重量%、約35重量%〜約45重量%、約40重量%〜約50重量%、約45重量%〜約55重量%、または約50重量%〜約60重量%の範囲でありうる。特に、水溶液はゼラチンが約15重量%でありうる。
【0049】
ゼラチンの水溶液を形成するために水にゼラチンを添加する前のゼラチンの粒径は様々でありうる。1つの実施形態では、ゼラチンの粒径は、約0.1mm〜約10mmの範囲でありうる。別の実施形態では、ゼラチンの粒径は、約0.1〜約0.3mm、約0.2〜約0.8mm、約0.5〜約1.5mm、約1〜約3mm、約2〜約6mm、または約5〜約10mmの範囲でありうる。いかなる特定の理論にも拘束されることなく、ゼラチンの粒径はゼラチンが水溶液中で崩壊するのに必要な時間量に影響を与えうると考えられる。粒径が約0.1〜約0.3mmの範囲のゼラチンは、数分間以内に溶液中で膨潤し、粒径が約0.3〜約0.8mmの範囲のゼラチンは約8〜約12分の時間内に溶液中で膨潤し、粒径が約0.8mmを超えるゼラチンは約1時間以内に膨潤しうる。
【0050】
ゼラチンが約10重量%〜約20重量%の範囲の濃度のゼラチン溶液は、任意のゼラチン粒径を用いて調整しうる。ゼラチンが約30重量%〜約34重量%の範囲の、より高濃度の別の実施形態では、プロセス中の魏集および気泡の形成を抑制するために、ゼラチンの粒径が約0.8mmを超えるものが用いられる。
【0051】
ゼラチン溶液のpHは、酸または塩基を添加することによって、約6〜約8の範囲に調整されうる。1つの実施形態では迅速放出薬剤の添加の前にゼラチン溶液のpHが約6.6〜約7.0の範囲のレベルに調整される。別の実施形態では、迅速放出薬剤の添加の前にゼラチン溶液のpHが約6.8に調整される。カプセル材料が医療用カプセル材料用途のために用いられるような実施形態では、適切な酸としては食品用品質の酸が含まれる。適切な食品用品質の酸の非限定的な例としては、硫酸、酒石酸、クエン酸、酢酸、およびドライアイスを含むがそれに限定されない二酸化炭素源からの二酸化炭素ガス、リン酸、またはそれらの組合せが含まれる。適切な食品用品質の塩基の非限定的な例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、酸化カルシウム、またはそれらの組合せが含まれる。いかなる特定の理論にも拘束されることなく、pHの調整が、ゼラチン分子の架橋またはイオン相互作用を変化させて、それによって結果のゼラチンカプセル材料物質の硬度、0〜約3の範囲の低pHの水溶液中の溶出度、およびそれらの組合せを含むがそれに限定されない物質特性を変化させうると考えられる。
【0052】
迅速放出薬剤がゼラチンの水溶液に添加されて、迅速放出薬剤のゼラチンに対する質量比が約1:1〜約1:20の範囲のカプセル化組成物が形成される。質量比は、ゼラチン溶液の質量に対する迅速放出薬剤の質量の比として定義され、ここでゼラチン溶液はゼラチン、ゼラチンが溶解される水溶液、および溶液に混和されるゼラチン加水分解物を組み合わせた質量を含む。あるいは、カプセル化組成物中の迅速放出薬剤のゼラチンに対する質量比は、約1:1〜約1:8、約1:4〜約1:10、約1:6〜約1:12、約1:8〜約1:14、約1:10〜約1:16、約1:12〜約1:18、または約1:14〜約1:20の範囲でありうる。1つの実施形態では、カプセル化組成物中の迅速放出薬剤のゼラチンに対する質量比は約1:2〜約1:15の範囲でありうる。さらに別の実施形態では、カプセル化組成物中の迅速放出薬剤のゼラチンに対する質量比は約1:4〜約1:9の範囲でありうる。
【0053】
迅速放出薬剤は、ゼラチンの水溶液中で本質的に不溶性である。いかなる特定の理論にも拘束されることなく、迅速放出薬剤の添加が、カプセル化組成物中のゼラチン分子の架橋またはイオン相互作用における変化を誘発しうるpHを含むがそれに限定されないカプセル化組成物の化学的特性のいかなるものも著しく変化させることはないと考えられる。いくつかの実施形態では、迅速放出薬剤はゼラチン溶液のpHを僅かに変化させうるが、その変化の規模は加水分解に対するゼラチンの過度の不安定性を引き起こす程充分ではないことがありうる。
【0054】
V.例示的カプセル材料組成物
迅速放出カプセル化組成物は上記セクション(II)で説明された迅速放出薬剤、および上記セクション(III)で説明されたゼラチンを含む。迅速放出カプセル化組成物は上記セクション(IV)で説明された方法を用いて生成されうる。
【0055】
1つの例示的迅速放出カプセル化組成物は、約15重量%のゼラチン、および約2重量%〜約10重量%の重炭酸ナトリウムを含有する水溶液中でゼラチンを含む。別の例示的迅速放出カプセル化組成物としては、約15重量%のゼラチン、および約5重量%〜約15重量%の炭酸カルシウムを含有する水溶液中でゼラチンを含む。任意の例示的実施形態における特定のゼラチンの組成物は、上記セクション(III)で説明したように、カプセル化組成物の使用目的に依存して変わりうる。
【0056】
さらに別の例示的迅速放出カプセル化組成物は、約10重量%〜約15重量%のゼラチン、約5重量%〜約15重量%の炭酸カルシウム、および約1重量%〜約5重量%のゼラチン加水分解物を含有する水溶液中でゼラチンを含む。任意の例示的実施形態における特定のゼラチンの組成物は、上記セクション(III)で説明したように、カプセル化組成物の使用目的に依存して変わりうる。
【0057】
さらに別の例示的迅速放出カプセル化組成物は、約36重量%〜42重量%のゼラチン、約17重量%〜約22重量%の可塑剤、約26重量%〜約31重量%の水、および約10重量%〜約15重量%の炭酸カルシウムを含有する水溶液中でゼラチンを含む。任意の例示的実施形態における特定のゼラチンの組成物は、上記セクション(III)で説明したように、カプセル化組成物の使用目的に依存して変わりうる。
【0058】
別の例示的迅速放出カプセル化組成物は、約32重量%〜約40重量%のゼラチン、約17重量%〜約22重量%の可塑剤、約26重量%〜約31重量%の水、約10重量%〜約15重量%の炭酸カルシウム、および約2重量%〜約6重量%のゼラチン加水分解物を含有する水溶液中でゼラチンを含む。任意の例示的実施形態における特定のゼラチンの組成物は、上記セクション(III)で説明したように、カプセル化組成物の使用目的に依存して変わりうる。
【0059】
VI.治療用組成物
上述の迅速放出カプセル化組成物のいずれも、迅速放出カプセル化組成物を含む各種の治療用組成物の製造に用いられうる。治療用組成物の実施形態の非限定的な例としては、迅速放出コーティングされた錠剤、軟質ゼラチンカプセル、硬質カプセル外殻、チュアブル型の酸中和剤組成物を含むがそれに限定されないチュアブル型の治療組成物、およびチュアブル型の酸中和剤組成物を含むがそれに限定されないカプセル化された活性化合物を含むチューインガムが含まれる。
【0060】
種々の治療用組成物は、迅速放出カプセル材料組成物に加えて、原薬(API)を含む。原薬(API)は、堕胎薬、ACE阻害薬、副腎皮質刺激ホルモン、α−アドレナリン作用薬、α−アドレナリン遮断薬、α−グルコシダーゼ阻害薬、同化ステロイドホルモン、麻薬性鎮痛薬、非麻薬性鎮痛薬、食欲減退薬、酸中和剤、駆虫薬、抗アレルギー性物質、抗脱毛剤、抗アメーバ薬、抗狭心症薬、抗不整脈剤、抗関節炎薬、抗喘息薬、抗生物質、抗コリン作用薬、けいれん防止剤、抗鬱剤、抗糖尿病薬、止瀉薬、解毒剤、抗運動障害薬、制吐剤、抗エストロゲン薬、抗真菌剤、抗緑内障薬、抗痛風薬、抗ヒスタミン薬、降圧剤、非ステロイド性抗炎症薬、抗マラリア薬、偏頭痛薬、抗ムスカリン薬、制嘔吐剤、抗悪性腫瘍薬、抗パーキンソン病薬、褐色細胞腫薬、抗ニューモシスティス薬、抗前立腺肥大薬、抗原虫薬、かゆみ止め、乾癬治療薬、抗精神病薬、解熱剤、抗リケッチア薬、鎮痙薬、抗血小板血症薬、抗血栓剤、抗甲状腺薬剤、抗結核性薬剤、鎮咳剤、抗潰瘍薬、抗ウイルス薬、不安緩解剤、アロマターゼ阻害薬、自律神経薬、バルビツール酸塩、ベンゾダイアゼピン拮抗物質、β-アドレナリン拮抗物質、β-アドレナリン遮断薬、徐脈薬、気管支拡張薬、カルシウムチャネル遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬、心臓病薬、強心剤、胆汁分泌促進薬、コリン作動薬、コリンエステラーゼ阻害薬、コリンエステラーゼ再‐活性剤、CNS刺激剤、細胞保護剤、うっ血除去剤、利尿剤、ドーパミン受容体作動薬、ドーパミン受容体拮抗物質、外部寄生虫撲滅薬、催吐剤、去痰剤、ファブリノゲン受容体拮抗薬、胃液分泌阻害物質、胃腸薬、胃運動促進薬、泌尿生殖器の平滑筋弛緩薬、重金属拮抗物質、止血薬、ヒスタミンH2受容体拮抗薬、催眠薬、免疫調節薬、免疫抑制剤、鉄剤、角質溶出薬、MAO阻害物質、粘液溶出剤、筋弛緩薬、散瞳薬、麻薬拮抗薬、向知性薬、アヘン剤作動体、子宮収縮薬、カリウムチャネル活性剤、呼吸促進薬、鎮静剤、セレニック(serenics)、セロトニン受容体作動体、セロトニン受容体拮抗薬、セロトニン取り込み阻害物質、刺激剤、交感神経遮断薬、交感神経興奮剤、血栓溶出剤、子宮収縮抑制薬、トランキライザー、血管拡張神経、血管保護薬、およびビタミンを含むがそれに限定されないAPIの群から選択されうる。
【0061】
迅速放出治療用組成物は、水溶性のAPIを含みうるがそれに限定されない。APIはpHが0〜約9の範囲の水溶液中では水溶性でありうる。あるいは、水溶性APIは、胃液を含むがそれに限定されないpHが0〜約3の範囲の水溶液中で水溶性でありうる。水溶性APIの非限定的な例には、硫酸アバカビル、アセブトロール、アセトアミノフェン、アシクロビル、アルベンダゾール、アレンドロネートナトリウム、アロプリノール、アモキシシリン、アマンタジンHCl、アミノベンゾエートカリウム、アミノカプロン酸、アミノアロンHCl、塩酸アミトリプチリン、アンフェタミン、アスピリン、アテノロール、アトルバスタチンカルシウム、硫酸アトロピン、アジスロマイシン、バルサラジド、塩酸ベンゼプリル、ベプリジルHCl、ベタインHCl、ビソプロロールフマレート、ブホルミン、ブプロピオンHCl、カラシクロビル、カペシタビン、カプトプリル、カリソプロドール、セファドロキシル、セフドニル、セフィキシム、セフポドキシムプロキセチル、セフプロジル、セフロキシムアキセチル、セレコキシブ、塩酸セトリジン、コンドロイチン、クロラチアジド、クロルフェニラミンマレエート、クロルプロマジンHCl、クロルゾキサゾン、コリンマグネシウムトリサリチレート、シメチジン、シプロフロキサシン、クラブラネートカリウム、クリンダマイシン、塩酸クロミプラミン、塩酸クロニジン、重硫酸クロピドグレル、クロキサシリンナトリウム、コデインホスフェート、コルヒチン、コルセベラムHCl、クレアチン、シクロホスファミド、シプロヘプタジン、デラビルジンメシレート、デメクロサイクリンHCl、ジクロフェナク、ジダノシン、ジエチルカルバマジンシトレート、ジルチアゼムHCl、DL−メチオニン、ドキセピンHCl、ドキシサイクリン、エファビレンズ、エプロサルタンメシレート、エンタカポン、塩酸エテンブトール、エプロサルタン、エリスロマイシン、エトスクシミド、エチドロネートジナトリウム、エトドラク、硫酸第一鉄、フレカイニドアセテート、フェルバメート、フェキソフェナジンHCl、フィロコキシブ、フルコナゾール、塩酸フルオキセチン、フルリプロフェン、フルバスタチン、ホソノプリルナトリウム、フマレート、ガバペンチン、ガチフロキサシン、ガンシクロビル、グアイフェネシン、塩酸ヒドララジン、ヒドロコドンビタルトレート、硫酸ヒドロキシクロロキン、ヒドロキシ尿素、塩酸ヒドロキシジン、イブプロフェン、硫酸インジナビル、イルベサルタン、イソフラボン、イソニアジド、イソソルビドモノニトレート、ケトプロフェン、ラクトビオネート、ラミブジン、塩酸レバミソール、レボフロキサシン、リシノプリル、リチウムカルボネート、ロサルタンカリウム、メベンダゾール、メフェナム酸、メペリジンHCl、メサラミン、メタプロロールタルトレート、メタキサロン、メトホルミンHCl、メテナミンマンデレート、メトドパ、メトカルバモール、メチルフェニデート、塩酸メチルフェニデート、メチロシン、塩酸ミノサイクリン、モダフィニル、モンテルカストナトリウム、硫酸モルヒネ、モキシフロキサシンHCl、ミコフェノレートメフェチル、ナブメトン、ナプロキセンナトリウム、ネファゾドンHCl、ネルフィナビルメスリエート、ネオスチグミンブロミド、ナイアシン、ニコチンアミド、ニトロフラントイン、ニフルチモキス、ニザチジン、ノルフロキサシン、塩酸ノルトリプチリン、オフロキサシン、オランゼピン、オルリスタット、オキシビチニンクロリド、パンクレアチン、パントテン酸、ペニシラミン、ペニシリンVカリウム、ペントサンポリスルフェートナトリウム、フェンホルミン、フェニルブタゾン、フェニトインナトリウム、フィトエストロゲン、塩化カリウム、プラミペキソール、プラバスタチンナトリウム、プラジクアンテル、プリマキンホスフェート、プロアントシアニジン、プロカインアミド、プロメタジン、塩酸プロメタジン、プロパフェノンHCl、プロパノロールHCl、塩酸プロポキシフェン、プロポキシフェンナプシレート、プロゾシン、塩酸プソイドフェドリン、硫酸プソイドエフェドリン、プシルリウム、ピクノゲノール、ピラジンアミド、ピリドスチグミンブロミド、塩酸ピリドキシン、ピルバート、ケチアピン カラフェート、硫酸キニジン、塩酸キナプリル、ラミプリル、塩酸ラニチジン、レボキセチン、リファブチン、リファンピン、リセドロネートナトリウム、ロフェコキシブ、ロシグリタゾンマレエート、硫酸サルブタモール、サキナビルメシレート、セルトラリンHCl、セベラマーHCl、シルデナフィル、シメチコン、ナトリウムバルプロエート、ソタロールHCl、スタブジン、サクシマー、スマニロール、スマトリプタンサクシネート、スンテアニン、塩酸テルアゾシン、テルビナフィンHCl、テトラサイクリンHCl、テオフィリン、チオベンダゾール、チクロピジンHCl、チモロールメレエート、トカイニドHCl、トルカプン、トルメチンナトリウム、トラマドールHCl、トロバフロキサシンメシレート、バラシクロビルHCl、バルガンシクロビルHCl、バルサルタン、バンコマイシン、塩酸ベンラファキシン、ベラパミルHCl、ワーファリンナトリウム、キシルアミン、ジドブジンおよびそれらの組合せが含まれる。特定の実施形態に依存して、APIは固体、粉体、微粒子、または液体の形態でありうる。
【0062】
A.コーティングされた錠剤
1つの治療用組成物は、固形錠剤形態のAPIの外側表面上の薄膜として適用される迅速放出カプセル化組成物を含む迅速放出錠剤コーティング組成物でありうる。このカプセル化組成物は、パンコーティング、ドラムコーティング、フィルムコーティング、スプレーコーティング、およびディップコーティングを含むがそれに限定されない当分野で周知の任意の技術を用いて、APIに適用されうる。
【0063】
B.軟質ゼラチンカプセル
別の治療用組成物は、液体または粉体状のAPIを包む連続した膜を形成する迅速放出カプセル化組成物を含む迅速放出軟質ゼラチンカプセル化組成物でありうる。このカプセル化組成物は、当分野で周知の任意の技術を用いてゼラチンカプセルとして形成されうる。これらの技術には、成形型内で個々のゼラチンカプセルを形成および充填する技術、回転ダイを用いてゼラチンカプセルを形成して、ブロー成形を用いて充填する技術、またはアコジェル型カプセル技術が含まれるがそれに限定されない。これらの実施形態では、カプセル化組成物は、グリセリン、ソルビトール派生物の混合物、またはそれらの混合物を含むがそれに限定されない可塑剤をさらに含みうる。
【0064】
C.硬質カプセル
さらに別の治療用組成物は、液体、粒体、または粉体のAPIを包む硬質の外殻を形成する迅速放出カプセル化組成物を含む硬質カプセル化組成物でありうる。硬質カプセル化組成物は、APIの周りに形成される連続した外殻、または入れ子式に連結される2つの半外殻、の形態を含むがそれに限定されない。2つの半外殻はそれぞれ別々に形成され、その中にAPIが挿入されてから、結合される。カプセル化組成物は、金属性ロッドの端部のディップコーティングまたは射出成形を含むがそれに限定されない当分野で周知の任意の技術を用いて、硬質カプセルとして形成されうる。
【0065】
D.チュアブル型の活性化合物
さらに別の治療用組成物は、複数のAPI微粒子の各々をコーティングする迅速放出カプセル化組成物を含むチュアブル型の治療組成物でありうる。胃液を含むがそれに限定されない酸性水溶液に接触すると、カプセルが急速に崩壊して、APIの迅速な放出を起こす。1つの非限定的な例示的治療用組成物は、APIがカプセル材料組成物でコーティングされた酸中和剤であるチュアブル型の酸中和配合物でありうる。チュアブル型の活性組成物であるコーティングされたAPI粒子は、スプレーコーティング、パンコーティング、ドラムコーティング、またはエマルジョンコーティングを含むがそれに限定されない当分野で周知の任意の方法によって形成されうる。チュアブル型の活性組成物は、直接圧縮、湿式造粒、乾式造粒、および流動床造粒を含むがそれに限定されない当分野で周知の技術を用いて硬質の錠剤として形成されうる。
【0066】
E.治療用チューインガム組成物
さらに別の治療用組成物は、APIの小粒子をコーティングする迅速放出カプセル化組成物を含む治療用チューインガム組成物でありうる。カプセル化組成物は、API粒子を包むチュアブル型のゼラチンカプセルを形成する。胃液を含むがそれに限定されない酸性水溶液に接触すると、カプセルは急速に崩壊し、APIの迅速な放出を起こす。1つの非限定的な例示的治療用組成物は、APIがカプセル材料組成物によってコーティングされた酸中和剤である、酸中和剤チューインガム組成物である。チュアブル型の組成物のコーティングされたAPI粒子は、スプレーコーティング、パンコーティング、ドラムコーティング、またはエマルジョンコーティングを含むがそれに限定されない当分野で周知の任意の方法によって形成されうる。チュアブル型の活性組成物は、カプセル化されたAPIをパニングシロップの中に混合し、その混合物をパニング技術を用いてガムコーティングとして塗布する技術が含まれるがそれに限定されない当分野で周知の技術を用いて形成されうる。
【0067】
実施例
以下の実施例は本発明の種々の態様を示す。
【実施例1】
【0068】
実施例1.製造方法がゼラチンカプセル材料組成物の溶解特性に与える影響
ゼラチンカプセル材料組成物の製造に用いられる酸化合物の添加が組成物の溶解特性に与える影響を評価するために、以下の実験を行った。
600グラムの豚皮ゼラチンを、3400gの脱イオン水中に溶解し、混合物をイオン交換樹脂(pH>9)の混床を通してろ過した。このゼラチン混合物を次に5部に分割して、硫酸、酒石酸、クエン酸、酢酸、および二酸化炭素を用いてpH5.5±0.1に調整した。二酸化炭素は、ドライアイスの昇華、または重炭酸ナトリウムの使用のいずれかによって供給した。5部の混合物の各々を一晩冷却し、次いで脱水器で乾燥した。二酸化炭素で処理したケースは、pH5.5を達成しなかったが、pHがpH9から著しく低下した。
乾燥した試料を挽いてコーティングとして調製した。50グラムの乾燥したゼラチンを秤量して250mlのビーカーに入れ、116.7gの脱イオン水を添加し、攪拌して混合することにより、各試料の30%ゼラチン溶液を調製した。混合した後、ビーカーを時計皿で覆い、1時間室温で膨潤させた。混合するために約1時間撹拌した後、撹拌しながら、混合物は60℃で約4時間溶融された。一連のガラス板を約60℃の温度に予熱して、自動コーティング装置に装填した。溶融したゼラチン混合物の表面から皮や泡を全て取り除いてから、混合物を自動コーティング装置に装填し、一連の予熱されたガラス板の上にコーティングした。皮膜を一晩(17時間程度)湿度と温度がそれぞれ45%±5%RHおよび70o±5oFに調整された室内で保管した。
5部の組成物の各々のために、重量0.075g程度のコーティング試料を、pHが3.0の900gのKH2PO4溶液を満たした6個の反応槽のぞれぞれに投入し、37℃に加熱した。反応槽内容物の、波長218nmにおける吸光率を使用して、コーティング試料の溶解率を約15分間に亘り測定した。
溶解率測定の結果を図1に示す。重炭酸ナトリウムまたはドライアイスの形で二酸化炭素を混和したコーティング組成物の溶解率曲線は、任意の他のコーティング組成物に比べて、組成物の溶解特性に著しい影響を与えることはなかった。しかしながら、この実験では、組成物の溶解中にCO2の気泡の形成を誘導するために充分な量の重炭酸ナトリウムがコーティング組成物に添加されなかった。
この実験の結果は、この実験で試験されたコーティング組成物の溶解速度はコーティングの組成物に対して敏感であることを実証した。特に、この実験で明記された量の、ドライアイスまたは重炭酸ナトリウムを用いて生成された二酸化炭素を混和したコーティング組成物の溶解特性は、試験した任意の他のコーティング組成物と比べ、著しく異なることはなかった。
【実施例2】
【0069】
実施例2.ゼラチンカプセル化組成物製造中に添加された重炭酸ナトリウムが溶解特性に与える影響
ゼラチンカプセル化組成物製造中の重炭酸ナトリウムの添加がその結果のゼラチンコーティングの溶解特性に与える影響を評価するために、以下の実験を行った。
600グラムのゼラチンを、3400gの脱イオン水中に溶解し、混合物をイオン交換樹脂(pH>9)の混床を通してろ過した。次に硫酸を使用してゼラチン混合物をpH5.5±0.1に調整した。次にゼラチン混合物2等分に分け、ゼラチン混合物の片方の半分に2重量%の重炭酸ナトリウムを添加した。2つの混合物の各々を一晩冷却し、次いで脱水器で乾燥した。実施例1で説明した方法を用いて2つの混合物からコーティング試料を生成した。
200mlの2M HClおよび29.8gのKClを1800mlの脱イオン水に添加することによって、pH1.0の緩衝液を生成した。900gのpH=1の緩衝液を含む6個の反応槽、2組に、2つのゼラチン混合物からのコーティング試料を添加し、実施例1で既に説明した方法を用いて、コーティング試料の溶解率を測定した。
コーティング試料の測定された溶解率を図2に示す。ゼラチンカプセル材料組成物の製造中に、ゼラチン混合物に重炭酸ナトリウムを添加することが、重炭酸ナトリウムの添加を行わずに製造された同じゼラチンコーティングに比べて、その結果のゼラチンコーティングの溶解速度を著しく上昇させた。特に、重炭酸ナトリウムの添加は、プロセス中の皮膜の分裂速度を著しく上昇させた。
この実験の結果は、ゼラチンコーティング組成物の生成中の重炭酸ナトリウムの添加が、炭酸ナトリウムを含まない同じゼラチンコーティング組成物に比べて、その結果のゼラチンコーティングの溶解速度を著しく上昇させたこと、およびそれがこのプロセス中に炭酸ナトリウムから生成される二酸化炭素の泡によって、被膜の分裂速度が上昇することによることを実証した。
【実施例3】
【0070】
実施例3.炭酸化合物がゼラチン混合物のpHに与える影響
種々の炭酸化合物の添加に対する、脱イオン化ゼラチン懸濁液のpHの感度を評価するために、以下の実験を行った。実施例1で説明した方法を用いて、脱イオン化ゼラチン懸濁液を生成し、ゼラチン懸濁液に硫酸を添加して、懸濁液のpHを約4.7に調整した。ゼラチン懸濁液を3等分に分けた。ゼラチン懸濁液の第1部に対しては、10重量%の炭酸カルシウムを添加した。ゼラチン懸濁液の第2部、および第3部に対しては、それぞれ5重量%および7.5重量%の量の重炭酸ナトリウムを添加した。炭酸塩の添加の前後で、各ゼラチン懸濁液のpHを測定した。それを下の表1に示す。
【表1】
溶液中の炭酸塩の塩基特性から予想されるように、ゼラチン混合物に炭酸塩を添加することが、一般に、ゼラチン懸濁液のpHを上昇させる。しかしながら、炭酸カルシウムの添加は、ゼラチン懸濁液のpHを上昇させたが、重炭酸ナトリウムの添加に比べて、炭酸カルシウムの方が添加量が多かったにもかかわらず、その上昇は著しく少ないものであった。これは、ゼラチン懸濁液の元のpH(pH=4.7)における炭酸カルシウムの溶解度が、重炭酸ナトリウムに比べて低いことによる可能性が最も高い。ゼラチン混合物中で分解される炭酸カルシウムの量が少ないと、ゼラチン懸濁液の中和の発生が少なくなり、その結果、ゼラチン懸濁液において炭酸カルシウムの添加の後も低いpHが維持される。
この実験の結果は、試験したゼラチン懸濁液のpHが懸濁液に添加される炭酸塩の量および組成物に対して高感度であることを実証した。
【実施例4】
【0071】
実施例4.高温および高湿度での長期保管がゼラチンカプセル化組成物溶解特性に与える影響
高温および高湿度での長期間保管に対するいくつかのゼラチンカプセル化組成物の溶解特性の感度を評価するために、以下の実験を行った。実施例1に記載されたものと同様の方法を用いて、脱イオン化骨ゼラチン懸濁液を生成し、カプセル化組成物として使用した。3種類の異なるカプセル化組成物を生成するためにゼラチン懸濁液を3等分に分けて使用した。第1のカプセル化組成物はさらなる修飾を行わない骨ゼラチンを含むもの(対照)であった。第2のカプセル化組成物は、骨ゼラチン、および15重量%のCaCO3を含むもの(FD−高速溶解)であった。第3のカプセル化組成物は、骨ゼラチン、15重量%のCaCO3、および分子量が約500ダルトンの10重量%の加水分解された骨ゼラチンを含むもの(FD+SH)であった。脱イオン水中、およびpH=1の緩衝液中の、3種類のカプセル化組成物の各々の溶解率を、実施例1に記載された方法を用いて測定した。組成物の製造の直後と、温度50℃および相対湿度80%で2週間、5週間、および11週間保管した後のカプセル化組成物の溶解率を測定した。
pH=1の緩衝液中の、対照、FD、およびFD+SHのカプセル化組成物に関する溶解結果を、それぞれ図3、図4、および図5に示す。図3および図4は共に、温度50℃、相対湿度80%での、より長期保管の溶解速度で顕著な低下を示した。図5は、2週間の保管後のFD+SHのカプセル化組成物については溶解速度の低下という同様の傾向を示すが、5週間および11週間の保管後は、溶解速度が初期の溶解速度のレベルまで戻っている。図6は、11週間の保管後のpH=1の緩衝液中の3種類のカプセル化組成物の溶解結果の比較である。FD+SH組成物の溶解率は、対照またはFD組成物よりも、著しく高いレベルで維持されている。
脱イオン水中の対照、FD、およびFD+SHのカプセル化組成物の溶解結果をそれぞれ図7、図8、および図9に示す。図7および図8は共に、図3および図4に示す低下と同様に、長期保管後の対照およびFD組成物についての溶解速度の低下を示している。図9に示すように、脱イオン水中のFD+SH組成物の溶解速度は、温度50℃および相対湿度80%での長期保管の期間による影響を本質的に受けなかった。図10は、11週間の保管後の、脱イオン水中の対照、FD、およびFD+SH組成物についての溶解結果の比較であり、FD+SH組成物が11週間の保管の後でさえ、明らかに著しく高い溶解速度を維持していることを示している。
高温および高湿度条件下で保管後の対照およびFDカプセル化組成物における溶解速度の低下は、カプセル化組成物中のゼラチン内での架橋の形成による可能性が高い。分子量が約100〜約2000ダルトンの低分子量の加水分解物をカプセル化組成物に添加することは、架橋の形成を妨害し、それによってたとえ長期保存の後でもゼラチンカプセル化組成物の溶解特性が初期レベルに維持されうる。
この実験の結果は、高温および高湿度で保管した後に、ゼラチンカプセル化組成物の溶解特性が低下することを実証した。この低下は特定の組成物に対して高感度であり、分子量が約100〜約2000ダルトンの加水分解物をゼラチンカプセル化組成物中に添加することで、この低下は事実上に除去されうる。
【実施例5】
【0072】
実施例5.高温および高湿度での長期保管が溶解特性に与える影響
本明細書中に記載された種々のゼラチン配合物の、温度および湿度条件に曝された後の溶解特性をさらに評価するために、以下の軟カプセル実験を行った。60℃の粘度が約10、000mPasである軟カプセルのカプセル化組成物を調製した。第1のカプセル化組成物は、43.00重量%のさらなる修飾を行わない骨ゼラチン、10.75重量%のソルビトール、10.75重量%のグリセロール、および35.5重量%の水を含むもの(標準の骨ゼラチン)であった。第2のカプセル化組成物は、40.8重量%の骨ゼラチン、7.2%の炭酸カルシウム(CaCO3)、10.2重量%のソルビトール、10.2重量%のグリセロール、および31.6重量%の水を含むもの(RRのみ)であった。第3のカプセル化組成物は、38.35重量%の骨ゼラチン、2.45重量%の、分子量が約500ダルトンの加水分解された骨ゼラチン、7.2重量%の炭酸カルシウム(CaCO3)、10.2重量%のソルビトール、10.2重量%のグリセロール、および31.6重量%の水を含むもの(RR RXL)であった。7.5サイズの楕円形カプセル製造用に2重キャビティダイロールを備え2.5rpmで動作する改良型チャンソン軟カプセル装置タイプM3(Modified Chan Sung soft caplule machine Type M3)上でこれら3種類のカプセル化組成物が用いられて、30分間タンブル乾燥し、その後、温度約25℃および相対湿度約35%RHで、1週間室内乾燥して軟カプセルを製造した。カプセルに96.51重量%のポリエチレングリコール、2.99重量%のグリセロール、および0.50%のブリリアントブルーの色素を含む液体配合物(充填材料)を充填した。3種の個別の溶解媒体に関して経時の溶解プロファイルを判定するために3種類の配合物を試験した。各ケースでは、溶解媒体を分光測光学的に監視し、媒体中のブリリアントブルーの色素の出現を観察した。第1の試験は、人工胃液(pHが1.3程度で、酵素が存在しない状態)中の、3種類の配合物の新鮮なカプセルに関する溶解プロファイルを評価した。第1の試験の結果を図11に示す。第2の試験は、温度40℃、相対湿度75%で2週間配合物を保管した後の、水(pHがほぼ中性レベル)中での、3種類の配合物の溶解プロファイルを評価した。この第2の試験の結果を図12に示す。第3の試験は、温度40℃、相対湿度75%で2週間、および4週間、配合物を保管した後の、人工胃液(pHが1.3程度で、酵素が存在しない状態)中での、3種類の配合物の溶解プロファイルを評価した。この試験の2週間の保管、および4週間の保管に関する結果をそれぞれ図13、および図14に示す。
図11に示す第1の試験の結果を参照すると、標準骨ゼラチン配合物、、RRのみ配合物、およびRR RXL配合物に関して、存在する溶解プロファイルに少ししか違いがないことをチャートが示している。カプセルは、製造された直後の新鮮な時は、継ぎ目に沿って容易に開き、色素を放出するので、この結果は予想された。
図12に示す第2の試験の結果は、2週間の保管後の3種類の配合物に関し、溶解プロファイルにおける差異を示している。詳細には、図12は、RR RXL配合物がRRのみ配合物および標準骨ゼラチン配合物に比べて、実質的により高速で、より完全な溶解プロファイルを示したことを表している。図12の結果は、加水分解されたゼラチン成分を混和することの影響を示すもので、配合物が中性の水中で試験されたにもかかわらず、溶出率を改善することを示している。RRのみ配合物は、標準骨ゼラチン配合物の溶解プロファイルに比べていくつかの改善を示した。しかしながら、結果はRR RXL配合物のように堅牢なものではなかった。これは、溶解媒体が中性の水溶液であるため、炭酸カルシウムが、気泡を発生させ、配合物の溶解をさらに促進するようなpHレベルに曝されなかったためで、予想外ではない。標準骨ゼラチン配合物に関する溶解プロファイルが、第1の試験の結果に比べて、溶解速度が遅く、全体の溶解率が低下を示したということに注目することが重要である。これは、高温(40℃)および高湿度(75%の相対湿度)で保管すると、標準ゼラチン配合物の溶解特性に悪影響を与えるという証拠である。
図13および図14に示す第3の試験の結果は、標準骨ゼラチン配合物に比べて、RR RXL配合物およびRRのみ配合物に関する溶解プロファイルが改善されていることを示している。詳細には、RR RXL配合物およびRRのみ配合物は、より高速な溶解速度と、より完全な溶解プロファイル、すなわち試験期間の最後には100%に近い溶解プロファイルを呈した。これらの結果は、炭酸カルシウム(RR RXL配合物およびRRのみ配合物へ)、および加水分解されたゼラチン(RR RXL配合物へ)の混和による溶解速度への影響を示している。また、標準骨ゼラチン配合物の溶解プロファイルが、第1の試験の結果、特に4週間の保管後の溶解を図示した図14の結果に比べて、溶解速度が遅く、全体の溶解率も低下していることを示したことに注目することも重要である。これは、高温(40℃)および高湿度(75%の相対湿度)で保管すると、標準ゼラチン配合物の溶解特性に悪影響を与えるという証拠である。
【0073】
以上本発明について詳細に説明してきたが、修正および変更が可能であることは明らかであろう。当業者は本開示の観点から開示された特定の実施形態に多くの変更が可能であり、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく同等あるいは同様の結果が得られ、従って、記載された全ては例示として解釈されるべきであり限定するものではないことを理解すべきであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水不溶性の迅速放出薬剤およびゼラチン成分を含む迅速放出カプセル化組成物。
【請求項2】
約100ダルトン〜約2000ダルトンの範囲の分子量をもつゼラチン加水分解物をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記水不溶性の迅速放出薬剤が、オキシ炭酸ビスマス、炭酸カルシウム、炭酸コバルト、炭酸ランタン、炭酸鉛、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、炭酸マンガン、炭酸ニッケル(II)、炭酸銀、炭酸ストロンチウムおよびそれらの組合せから選択される水不溶性の炭酸塩を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記水不溶性の迅速放出薬剤が炭酸カルシウムからなる、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記迅速放出薬剤が約6〜約8の範囲のpHで本質的に不溶性であり、前記迅速放出薬剤が0〜約3の範囲のpHで分解する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は前記水不溶性の迅速放出薬剤の前記ゼラチン成分に対する質量比が約1:1〜約1:20の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物は前記水不溶性の迅速放出薬剤の前記ゼラチン成分に対する質量比が約1:4〜約1:9の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記迅速放出カプセル化組成物が、0〜約3の範囲のpHで、15分未満内に本質的に完全に分解する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
可塑剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記可塑剤が、セバシン酸ジブチル、ジエチルフタレート、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、エリトリトール、トリアセチンおよびクエン酸トリエチルならびにそれらの混合物を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記ゼラチン成分がゼラチン、可塑剤および水の組合せを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記ゼラチン成分が、前記ゼラチン成分の約35重量%〜約60重量%のゼラチン、前記ゼラチン成分の約15重量%〜約30重量%の可塑剤および前記ゼラチン成分の約25重量%〜約40重量%の水を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記ゼラチン成分が、前記ゼラチン成分の約42重量%〜約48重量%のゼラチン、前記ゼラチン成分の約20重量%〜約25重量%の可塑剤および前記ゼラチン成分の約30重量%〜約35重量%の水を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記ゼラチン成分がゼラチンおよび水の組合せを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記ゼラチン成分が約5%〜約30%のゼラチンおよび約70%〜約95%の水を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記ゼラチン成分が約10%〜約20%のゼラチンおよび約80%〜約90%の水を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物は前記ゼラチン成分の前記ゼラチン加水分解物に対する質量比が約3:1〜約99:1の範囲である、請求項2に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物は前記ゼラチン成分の前記ゼラチン加水分解物に対する質量比が約4:1〜約19:1の範囲である、請求項2に記載の組成物。
【請求項19】
a.水不溶性の迅速放出薬剤;
b.ゼラチン成分;および
c.ゼラチン加水分解物
を含む迅速放出カプセル化組成物であって、
前記組成物は前記水不溶性の迅速放出薬剤の前記ゼラチン成分に対する質量比が約1:1〜約1:20の範囲であり、
前記ゼラチン加水分解物は約100ダルトン〜約2000ダルトンの範囲の分子量をもち、かつ、
前記組成物は前記ゼラチン成分の前記ゼラチン加水分解物に対する質量比が約3:1〜約99:1の範囲である組成物。
【請求項20】
前記水不溶性の迅速放出薬剤の前記ゼラチン成分に対する前記質量比が約1:4〜約1:9の範囲である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記可塑剤がセバシン酸ジブチル、ジエチルフタレート、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、エリトリトール、トリアセチンおよびクエン酸トリエチルならびにそれらの混合物を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
前記可塑剤がグリセリン、ソルビトール、エリトリトールおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
前記ゼラチン成分がゼラチン、可塑剤および水の組合せを含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項24】
前記ゼラチン成分が前記ゼラチン成分の約35重量%〜約60重量%のゼラチン、前記ゼラチン成分の約15重量%〜約30重量%の可塑剤および前記ゼラチン成分の約25重量%〜約40重量%の水を含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記ゼラチン成分が前記ゼラチン成分の約42重量%〜約48重量%のゼラチン、前記ゼラチン成分の約20重量%〜約25重量%の可塑剤および前記ゼラチン成分の約30重量%〜約35重量%の水を含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
前記ゼラチン成分がゼラチンおよび水の組合せを含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項27】
前記ゼラチン成分が約5%〜約30%のゼラチンおよび約70%〜約95%の水を含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記組成物は前記ゼラチン成分の前記ゼラチン加水分解物に対する質量比が約4:1〜約19:1の範囲である、請求項19に記載の組成物。
【請求項29】
炭酸カルシウムおよびゼラチン成分を含む迅速放出カプセル化組成物であって、前記組成物は前記炭酸カルシウムの前記ゼラチン成分に対する質量比が約1:1〜約1:20の範囲である組成物。
【請求項30】
前記炭酸カルシウムの前記ゼラチン成分に対する質量比が約1:4〜約1:9の範囲である、請求項29に記載の迅速放出カプセル化組成物。
【請求項31】
約100ダルトン〜約2000ダルトンの範囲の分子量をもつゼラチン加水分解物をさらに含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項32】
さらに可塑剤を含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項33】
前記可塑剤がセバシン酸ジブチル、ジエチルフタレート、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、エリトリトール、トリアセチンおよびクエン酸トリエチルならびにそれらの混合物を含む、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
水溶液中に溶解しているゼラチンを含む迅速放出カプセル化組成物であって、前記水溶液中に懸濁している水不溶性の迅速放出薬剤をさらに含有する組成物。
【請求項35】
約100ダルトン〜約2000ダルトンの範囲の分子量をもつゼラチン加水分解物をさらに含む、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記水溶液のpHが約6〜約8の範囲である、請求項34に記載の組成物。
【請求項37】
ゼラチンおよび前記水不溶性の炭酸塩を含み、組み合わせた量が前記水溶液の約10重量%〜約60重量%である、請求項34に記載の組成物。
【請求項38】
前記水不溶性の迅速放出薬剤が、オキシ炭酸ビスマス、炭酸カルシウム、炭酸コバルト、炭酸ランタン、炭酸鉛、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、炭酸マンガン、炭酸ニッケル(II)、炭酸銀、炭酸ストロンチウムおよびそれらの組合せから選択される水不溶性の炭酸塩を含む、請求項34に記載の組成物。
【請求項39】
可塑剤をさらに含む、請求項34に記載の組成物。
【請求項40】
前記可塑剤がセバシン酸ジブチル、ジエチルフタレート、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、エリトリトール、トリアセチンおよびクエン酸トリエチルならびにそれらの混合物を含む、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
複数種の原薬の粒子を含むチュアブル型の治療組成物であって、各原薬の粒子が迅速放出コーティング中にカプセル化され、前記迅速放出コーティングがゼラチン成分および水不溶性の迅速放出薬剤を含み、前記迅速放出コーティングは前記水不溶性の迅速放出薬剤の前記ゼラチン成分に対する質量比が約1:1〜約1:20の範囲である組成物。
【請求項42】
前記原薬が酸中和剤を含む、請求項41に記載のチュアブル型の治療組成物。
【請求項43】
迅速放出カプセル化組成物を製造するための方法であって、
a.水媒体中にゼラチン成分を溶解するステップ、および
b.ゼラチン水溶液に水不溶性の迅速放出薬剤を加えるステップ
を含む方法。
【請求項44】
ステップ(a)の前記ゼラチン成分が、約50,000ダルトン〜約300,000ダルトンの範囲の分子量をもつゼラチンおよび約100ダルトン〜約2000ダルトンの範囲の分子量をもつゼラチン加水分解物の組合せを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記水不溶性の迅速放出薬剤の前記ゼラチン成分に対する前記質量比が約1:1〜約1:20の範囲である、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
ステップ(a)が可塑剤を加える工程をさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記可塑剤がセバシン酸ジブチル、ジエチルフタレート、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、エリトリトール、トリアセチンおよびクエン酸トリエチルならびにそれらの混合物を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記ゼラチン成分がゼラチンおよび可塑剤の組合せを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
約50,000ダルトン〜約300,000ダルトンの範囲の分子量をもつ前記ゼラチンの約100ダルトン〜約2000ダルトンの範囲の分子量をもつ前記ゼラチン加水分解物に対する前記質量比が約3:1〜約99:1の範囲である、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
ステップ(a)が、前記組み合わされたゼラチン水溶液の約5重量%〜約25重量%の前記ゼラチン成分を、前記組み合わされたゼラチン水溶液の約75重量%〜約95重量%の前記水媒体中に溶解する工程を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項51】
ステップ(a)が、約10重量%〜約20重量%の約50,000ダルトン〜約300,000ダルトンの範囲の分子量をもつゼラチンおよび約1重量%〜約5重量%の約100ダルトン〜約2000ダルトンの範囲の分子量をもつゼラチン加水分解物を、前記組み合わされたゼラチン水溶液の約70重量%〜約90重量%の水媒体中に溶解する工程を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項52】
ステップ(a)が、前記ゼラチン成分の約35重量%〜約60重量%のゼラチン、前記ゼラチン成分の約15重量%〜約30重量%の可塑剤および前記ゼラチン成分の約25重量%〜約40重量%の水媒体を溶解する工程を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項53】
ステップ(a)が、前記ゼラチン成分の約42重量%〜約48重量%のゼラチン、前記ゼラチン成分の約20重量%〜約25重量%の可塑剤および前記ゼラチン成分の約30重量%〜約35重量%の水媒体を溶解する工程を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項54】
ステップ(a)が、約32重量%〜約40重量%の約50,000ダルトン〜約300,000ダルトンの範囲の分子量をもつゼラチンと、約17重量%〜約22重量%の可塑剤と、約26重量%〜約31重量%の前記水媒体と、約2重量%〜約6重量%の約100ダルトン〜約2000ダルトンの範囲の分子量をもつゼラチン加水分解物とを溶解する工程を含み、ステップ(b)が、約10重量%〜約15重量%の炭酸カルシウムを加える工程を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項55】
前記水媒体が水を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項1】
水不溶性の迅速放出薬剤およびゼラチン成分を含む迅速放出カプセル化組成物。
【請求項2】
約100ダルトン〜約2000ダルトンの範囲の分子量をもつゼラチン加水分解物をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記水不溶性の迅速放出薬剤が、オキシ炭酸ビスマス、炭酸カルシウム、炭酸コバルト、炭酸ランタン、炭酸鉛、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、炭酸マンガン、炭酸ニッケル(II)、炭酸銀、炭酸ストロンチウムおよびそれらの組合せから選択される水不溶性の炭酸塩を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記水不溶性の迅速放出薬剤が炭酸カルシウムからなる、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記迅速放出薬剤が約6〜約8の範囲のpHで本質的に不溶性であり、前記迅速放出薬剤が0〜約3の範囲のpHで分解する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は前記水不溶性の迅速放出薬剤の前記ゼラチン成分に対する質量比が約1:1〜約1:20の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物は前記水不溶性の迅速放出薬剤の前記ゼラチン成分に対する質量比が約1:4〜約1:9の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記迅速放出カプセル化組成物が、0〜約3の範囲のpHで、15分未満内に本質的に完全に分解する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
可塑剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記可塑剤が、セバシン酸ジブチル、ジエチルフタレート、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、エリトリトール、トリアセチンおよびクエン酸トリエチルならびにそれらの混合物を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記ゼラチン成分がゼラチン、可塑剤および水の組合せを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記ゼラチン成分が、前記ゼラチン成分の約35重量%〜約60重量%のゼラチン、前記ゼラチン成分の約15重量%〜約30重量%の可塑剤および前記ゼラチン成分の約25重量%〜約40重量%の水を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記ゼラチン成分が、前記ゼラチン成分の約42重量%〜約48重量%のゼラチン、前記ゼラチン成分の約20重量%〜約25重量%の可塑剤および前記ゼラチン成分の約30重量%〜約35重量%の水を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記ゼラチン成分がゼラチンおよび水の組合せを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記ゼラチン成分が約5%〜約30%のゼラチンおよび約70%〜約95%の水を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記ゼラチン成分が約10%〜約20%のゼラチンおよび約80%〜約90%の水を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物は前記ゼラチン成分の前記ゼラチン加水分解物に対する質量比が約3:1〜約99:1の範囲である、請求項2に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物は前記ゼラチン成分の前記ゼラチン加水分解物に対する質量比が約4:1〜約19:1の範囲である、請求項2に記載の組成物。
【請求項19】
a.水不溶性の迅速放出薬剤;
b.ゼラチン成分;および
c.ゼラチン加水分解物
を含む迅速放出カプセル化組成物であって、
前記組成物は前記水不溶性の迅速放出薬剤の前記ゼラチン成分に対する質量比が約1:1〜約1:20の範囲であり、
前記ゼラチン加水分解物は約100ダルトン〜約2000ダルトンの範囲の分子量をもち、かつ、
前記組成物は前記ゼラチン成分の前記ゼラチン加水分解物に対する質量比が約3:1〜約99:1の範囲である組成物。
【請求項20】
前記水不溶性の迅速放出薬剤の前記ゼラチン成分に対する前記質量比が約1:4〜約1:9の範囲である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記可塑剤がセバシン酸ジブチル、ジエチルフタレート、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、エリトリトール、トリアセチンおよびクエン酸トリエチルならびにそれらの混合物を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
前記可塑剤がグリセリン、ソルビトール、エリトリトールおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
前記ゼラチン成分がゼラチン、可塑剤および水の組合せを含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項24】
前記ゼラチン成分が前記ゼラチン成分の約35重量%〜約60重量%のゼラチン、前記ゼラチン成分の約15重量%〜約30重量%の可塑剤および前記ゼラチン成分の約25重量%〜約40重量%の水を含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記ゼラチン成分が前記ゼラチン成分の約42重量%〜約48重量%のゼラチン、前記ゼラチン成分の約20重量%〜約25重量%の可塑剤および前記ゼラチン成分の約30重量%〜約35重量%の水を含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
前記ゼラチン成分がゼラチンおよび水の組合せを含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項27】
前記ゼラチン成分が約5%〜約30%のゼラチンおよび約70%〜約95%の水を含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記組成物は前記ゼラチン成分の前記ゼラチン加水分解物に対する質量比が約4:1〜約19:1の範囲である、請求項19に記載の組成物。
【請求項29】
炭酸カルシウムおよびゼラチン成分を含む迅速放出カプセル化組成物であって、前記組成物は前記炭酸カルシウムの前記ゼラチン成分に対する質量比が約1:1〜約1:20の範囲である組成物。
【請求項30】
前記炭酸カルシウムの前記ゼラチン成分に対する質量比が約1:4〜約1:9の範囲である、請求項29に記載の迅速放出カプセル化組成物。
【請求項31】
約100ダルトン〜約2000ダルトンの範囲の分子量をもつゼラチン加水分解物をさらに含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項32】
さらに可塑剤を含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項33】
前記可塑剤がセバシン酸ジブチル、ジエチルフタレート、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、エリトリトール、トリアセチンおよびクエン酸トリエチルならびにそれらの混合物を含む、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
水溶液中に溶解しているゼラチンを含む迅速放出カプセル化組成物であって、前記水溶液中に懸濁している水不溶性の迅速放出薬剤をさらに含有する組成物。
【請求項35】
約100ダルトン〜約2000ダルトンの範囲の分子量をもつゼラチン加水分解物をさらに含む、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記水溶液のpHが約6〜約8の範囲である、請求項34に記載の組成物。
【請求項37】
ゼラチンおよび前記水不溶性の炭酸塩を含み、組み合わせた量が前記水溶液の約10重量%〜約60重量%である、請求項34に記載の組成物。
【請求項38】
前記水不溶性の迅速放出薬剤が、オキシ炭酸ビスマス、炭酸カルシウム、炭酸コバルト、炭酸ランタン、炭酸鉛、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、炭酸マンガン、炭酸ニッケル(II)、炭酸銀、炭酸ストロンチウムおよびそれらの組合せから選択される水不溶性の炭酸塩を含む、請求項34に記載の組成物。
【請求項39】
可塑剤をさらに含む、請求項34に記載の組成物。
【請求項40】
前記可塑剤がセバシン酸ジブチル、ジエチルフタレート、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、エリトリトール、トリアセチンおよびクエン酸トリエチルならびにそれらの混合物を含む、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
複数種の原薬の粒子を含むチュアブル型の治療組成物であって、各原薬の粒子が迅速放出コーティング中にカプセル化され、前記迅速放出コーティングがゼラチン成分および水不溶性の迅速放出薬剤を含み、前記迅速放出コーティングは前記水不溶性の迅速放出薬剤の前記ゼラチン成分に対する質量比が約1:1〜約1:20の範囲である組成物。
【請求項42】
前記原薬が酸中和剤を含む、請求項41に記載のチュアブル型の治療組成物。
【請求項43】
迅速放出カプセル化組成物を製造するための方法であって、
a.水媒体中にゼラチン成分を溶解するステップ、および
b.ゼラチン水溶液に水不溶性の迅速放出薬剤を加えるステップ
を含む方法。
【請求項44】
ステップ(a)の前記ゼラチン成分が、約50,000ダルトン〜約300,000ダルトンの範囲の分子量をもつゼラチンおよび約100ダルトン〜約2000ダルトンの範囲の分子量をもつゼラチン加水分解物の組合せを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記水不溶性の迅速放出薬剤の前記ゼラチン成分に対する前記質量比が約1:1〜約1:20の範囲である、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
ステップ(a)が可塑剤を加える工程をさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記可塑剤がセバシン酸ジブチル、ジエチルフタレート、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、エリトリトール、トリアセチンおよびクエン酸トリエチルならびにそれらの混合物を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記ゼラチン成分がゼラチンおよび可塑剤の組合せを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
約50,000ダルトン〜約300,000ダルトンの範囲の分子量をもつ前記ゼラチンの約100ダルトン〜約2000ダルトンの範囲の分子量をもつ前記ゼラチン加水分解物に対する前記質量比が約3:1〜約99:1の範囲である、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
ステップ(a)が、前記組み合わされたゼラチン水溶液の約5重量%〜約25重量%の前記ゼラチン成分を、前記組み合わされたゼラチン水溶液の約75重量%〜約95重量%の前記水媒体中に溶解する工程を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項51】
ステップ(a)が、約10重量%〜約20重量%の約50,000ダルトン〜約300,000ダルトンの範囲の分子量をもつゼラチンおよび約1重量%〜約5重量%の約100ダルトン〜約2000ダルトンの範囲の分子量をもつゼラチン加水分解物を、前記組み合わされたゼラチン水溶液の約70重量%〜約90重量%の水媒体中に溶解する工程を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項52】
ステップ(a)が、前記ゼラチン成分の約35重量%〜約60重量%のゼラチン、前記ゼラチン成分の約15重量%〜約30重量%の可塑剤および前記ゼラチン成分の約25重量%〜約40重量%の水媒体を溶解する工程を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項53】
ステップ(a)が、前記ゼラチン成分の約42重量%〜約48重量%のゼラチン、前記ゼラチン成分の約20重量%〜約25重量%の可塑剤および前記ゼラチン成分の約30重量%〜約35重量%の水媒体を溶解する工程を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項54】
ステップ(a)が、約32重量%〜約40重量%の約50,000ダルトン〜約300,000ダルトンの範囲の分子量をもつゼラチンと、約17重量%〜約22重量%の可塑剤と、約26重量%〜約31重量%の前記水媒体と、約2重量%〜約6重量%の約100ダルトン〜約2000ダルトンの範囲の分子量をもつゼラチン加水分解物とを溶解する工程を含み、ステップ(b)が、約10重量%〜約15重量%の炭酸カルシウムを加える工程を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項55】
前記水媒体が水を含む、請求項43に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2013−520437(P2013−520437A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554057(P2012−554057)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【国際出願番号】PCT/US2011/025447
【国際公開番号】WO2011/103436
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(512216296)ゲリタ アーゲー (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【国際出願番号】PCT/US2011/025447
【国際公開番号】WO2011/103436
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(512216296)ゲリタ アーゲー (1)
【Fターム(参考)】
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