説明

近赤外線の熱入力量を増加させるために使用される酸化タングステン

本発明は、プラスチックのレーザー溶着、コーティングのNIR硬化、印刷インキの乾燥、インクトナーの基材への定着、プラスチック予備成形体の加熱、プラスチック又は紙のレーザーマーキングから選択される工程で、近赤外線の熱入力量を増加させるための、酸化タングステンの、又はタングステン酸塩の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線の熱入力量を増加させるための、酸化タングステンの、又はタングステン酸塩の使用に関する。
【0002】
原理的には、タングステン亜酸化物及びタングステンブロンズのIR吸収特性は、公知である。EP1 847 635は例えば、Cs0.33WO3の粒子分散液を熱吸収材料として開示している。
【0003】
これらの材料は、同一量のエネルギーを吸収するにもかかわらず、他の公知のIR吸収剤よりも明らかに効果が高いことが判明した。これは非常に意想外のことであり、現時点では説明することができない。タングステンブロンズ(例えばコーティング内に組み込まれたもの)は、赤外線照射の際、そのスペクトル吸収能力に従って予測されるよりも、ずっと高い温度上昇につながった。測定されたこの温度上昇は、他の公知のIR吸収剤よりも明らかに高く、カーボンブラックについて観察される温度にほぼ達した。或いは紙のレーザーマーキングについて、タングステンブロンズ又はタングステン亜酸化物は、ランタンヘキサボライド(よく知られた、ほぼ無色のIR吸収剤)よりも10倍効率的であると判明した。このことは実際、非常に意想外であり、そしてその理由については不明である。
【0004】
多くの技術工程(プラスチックのレーザー溶着及びマーキング、コーティングのNIR硬化及び乾燥、印刷の乾燥、紙のレーザーマーキング、接着剤の硬化及び乾燥、インクトナーの基材への定着、プラスチック予備成形体の加熱など)には、効率的で迅速かつ局所集中的な、赤外線による熱入力が要求される。赤外線の熱への変換は、熱が必要とされる箇所に、適切なIR吸収材を配置することによって実現される。カーボンブラックは、このような工程のための、よく知られた効率的なIR吸収剤である。しかしながら、カーボンブラックには、1つの大きな欠点がある:それはその黒色が濃いことである。従ってカーボンブラックは、(黒又は灰色以外に)着色された、着色されていない、白色の、又は透明のシステムには適用することができない。このようなシステムに対して、「白色又は無色のカーボンブラック」は、技術的な需要が高い。
【0005】
従って本発明の目的は、そのような「無色、及び透明のカーボンブラック」を発見することであった。
【0006】
非常に意想外にも、本発明の酸化タングステン材料は、やや青みがかっている〜灰色っぽくはあるものの、目的とするこの特性に非常に近づいている。
【0007】
しかし、赤外線を熱に変換する効率が意想外に高いため、この酸化タングステン材料は、ほとんどの適用に対してその色が許容可能なほど低い濃度で適用することができる。
【0008】
同じことが透明性にも当てはまる:この酸化タングステンを含む材料(プラスチック、コーティング)は、透明性も非常に高いままである。
【0009】
酸化タングステンとタングステン酸塩は、赤外線遮断材料として知られている。EP 1 676 890、及びUS 2007/0187653 (Sumitomo Metal Mining Company) の公報は、酸素が低減された三酸化タングステンを含む、赤外線遮断性ナノ粒子分散液を開示している。
【0010】
従って本発明は、コーティングのNIR硬化工程、及びコーティングのNIR乾燥工程で、近赤外線の熱入力量を増加させるための、式
WO3−x
[式中、Wはタングステン、Oは酸素、及びxは0.1〜1である]
の酸化タングステンの使用、及び/又は式
MxWyOz
[式中、
Mは、NH4、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Ba、Sr、Fe、Sn、Mo、Nb、Ta、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tlから選択される1又は1つより多い要素であり、
Wはタングステンであり、Oは酸素であり、
0.001≦x/y≦1、かつ2.0<z/y≦3.0である]
のタングステン酸塩の使用に関する。
【0011】
熱入力量とは、近赤外線により供給される熱エネルギーであり、これはコーティングのNIR硬化及び乾燥後に達する温度に相応する。
【0012】
好ましいのは第一の実施例:H0.53WO3、Na0.33WO3、K0.33WO3、Cs0.33WO3、Ba0.33WO3、Rb0.33WO3である。
【0013】
好ましいのは、タングステン亜酸化物(例えばWO2.7)、及びタングステンブロンズ(例えばH0.53WO3、Na0.33WO3、Cs0.33WO3)の使用である。特に好ましいのは、Cs0.2-0.5WO3である。
タングステンブロンズは、EP 1676890に従って製造することができ、ここでは、メタタングステン酸アンモニウムの水溶液を金属塩とともに約300〜700℃に加熱し、そしてこの水性混合物を乾燥させて個体生成物を得ることによって、式MxWO3で表されるタングステンブロンズが製造できるとされている。
【0014】
酸化タングステン粉末(例えばWO2.7)は例えば、Osram Sylvaniaから市販で手に入る。WO2.7はまた、タングステン酸アンモニウムをプラズマ反応器内で還元することによって製造することができる。市販で手に入るWO2.7は分散させることができ、そしてその後、この分散液を例えば、0.4μmのジルコニウムボールを有するDynomill粉砕機内で粉砕して、粒径が10nm〜1μm、好ましくは10nm〜500nm、より好ましくは10nm〜200nmの粒子を得る。
【0015】
酸化タングステンの、又はタングステン酸塩の適用量は、0.01〜2.0質量%である。この量では、酸化タングステンのやや青みがかった色は、問題とならない。
【0016】
本発明による工程で使用される近赤外線は、波長約700nm〜約3000nmの範囲の短波の赤外線である。近赤外線の放射源は例えば、(例えばAdphos社から)市販で手に入る、800〜1500nmの範囲のメイン照射、ダイオードレーザー、ファイバーレーザー、又はNd:YAGレーザーを備える、慣用の近赤外線放射器を含む。
【0017】
コーティングのNIR硬化は、顔料着色された、及び顔料着色されていないコーティング材料の両方を含む、あらゆる種類のコーティングに使用することができる。有機バインダーの性質次第で、コーティングは溶剤、及び/又は水を含むことができ、或いは溶剤不含、又は水不含であってもよい。コーティングはまた、顔料に加えて、充填材、及び他の添加剤を含んでいてよい。本発明による方法では、例えばパウダーコーティング、クリアコート、ハイソリッドコーティング、エフェクトコーティング、ハイグロスコーティング、シルク仕上げコーティング、つや消し仕上げコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、流し塗りなど、あらゆる種類のコーティングが適している。相応する原材料と組成は当業者に公知であり、例えば、"Lehrbuch der Lacktechnologie", Vincentz Verlag, 1998年に記載されている。
【0018】
コーティングのNIR硬化は、コイルコーティング分野での最新技術である。コーティング調製物自体は近赤外線を吸収しないので、乾燥及び/又は硬化中のコーティング加熱速度は、幾つかの要因に大きく依存する:
・基材
・顔料着色度
・顔料化学物質。
【0019】
このことは、幾つかのコーティング工程で欠点につながる。その欠点とは、
a)近赤外線の損失に起因する低エネルギー効率
b)例えば黒色(FW200)に顔料着色したものと、白色に(TiO2)顔料着色したものとの、硬化速度の差異
c)NIR乾燥は、クリアコート適用のためには使用できない
d)9002、9010&9016のような、特に白色のRALシェードが、NIR硬化の間、エネルギー効率が低い
ということである。
【0020】
顔料着色されたコーティング、特にTiO2で顔料着色されたシステムでは、NIR吸収剤の添加が、変色を引き起こさないことが重要である。従って、本発明の1つの態様は、顔料着色されたコーティング内での使用である。
【0021】
従って、欠点a〜dを克服するために、無色の、並びに透明の近赤外線吸収剤に対する需要がある。最新技術の材料は、コーティング調製物に組み込む時に、着色されるか(Lumogen IR 765, 788)、又は著しい曇りを示す(Minatec 230 A-IR, Lazerflair 825, LaB6)。従って、使用されるIR吸収剤に対する付加的な要求は、曇りを避けることである。
【0022】
Minatec 230 A-IRは、特定のアンチモンスズ組成物(Merck)から成り、Lazerflair 825は、マイカベースのフレーク状顔料(Merck)であり、そしてLumogen IR 765及びIR 788は、有機クアテリレン−ビスイミド(BASF)である。LaB6は、Aldrich社から購入できる。
【0023】
NIR硬化後に到達する温度は、上記酸化タングステン及びタングステン酸塩を用いる場合、又はカーボンブラックを使用する場合、ほぼ同じである。上記酸化タングステン及びタングステン酸塩を用いて到達可能な非常に高い温度の予想外の効果は、近赤外線吸収性が高いことのみによっては説明することができない。近赤外線で総体的に(integral)吸収性が高い材料又は濃度は、NIR硬化サイクル後、比較的低い温度上昇を示している(実施例3.1)。
【0024】
実施例1(粉砕によるWO2.7の製造)
0.4μmのジルコニウムボール240mlを、水450ml中の Osram/ Sylvania社のWO2.7 106.5gの懸濁液に加える。この懸濁液を、Dynomill内で8時間、4500回転/分で粉砕する。得られる懸濁液を濾別し、乾燥させる。粒径は主に、30〜100nmである。
【0025】
実施例2(プラズマ反応器を用いた、水素タングステンブロンズ(H0.53WO3)の製造)
パラタングステン酸アンモニウム粉末((NH410122042・4H2O、Osram Sylvania)を、振動型粉末供給機を10g/分で稼働させてアルゴンキャリアガス中に運んだ。流動化された粉末を、Tekna PL-50プラズマトーチを備えるプラズマ反応器に供給して、出力65kWで稼働させた。反応器のプラズマホットゾーンで通常達成される温度範囲は、5000〜10,000Kである。アルゴン140slpm、水素0.5slpm、及びヘリウム5slpmから成る混合物[slpm=1分あたりの標準リットル;slpmの計算のための標準条件は、次のように定義される:Tn 0℃(32°F)、Pn=1.01bar(14.72psi)]を、シースガスに対して使用した。反応体の蒸気は急冷ガスにより冷却し、そして生成する粉末をバッグフィルタに集めた。生成する水素タングステンブロンズ粉末は、粉末X腺回折、電子顕微鏡、及びUV vis NIR分光分析により分析した。
【0026】
粒径は、30〜200nmである。この材料は、コーティング又はプラスチックなどの中で非常に良好な分散性を示す。
【0027】
実施例3.1(NIR硬化の適用例)
様々なNIR吸収剤を2P−PU調製物内で、NIR硬化の間の温度吸収量について、並びに最終的なコーティング特性について試験した。NIR吸収剤は、以下の表(値はgで記載)に従って16時間にわたり、ガラスビーズとscandex社の撹拌機を用いてミルベースに組み込んだ。
【表1】

【0028】
このミルベースを、レットダウン調製物及び架橋剤と、以下の表に従って添加した。
【表2】

【表3】

【0029】
DABCO-33LVとは、Air Products & Chemicalsから市販の、トリエチレンジアミンとジプロピレングリコールとの混合物であり、これを触媒として用いる。
【0030】
TINUVIN 292は、Ciba Incから市販のヒンダードアミン光安定剤(「HALS」)である。
【0031】
TINUVIN 99-2は、Ciba Inc.から市販のUV吸収剤である。
【0032】
コーティングはワイヤバーを用いて、80μmのWFT(湿潤膜厚)で適用した。このコーティングを、異なる照明設定(Adphos社のhigh-burn NIRランプ六個、出力50〜100%)、及びベルト速度(1〜4m/分)で、NIR乾燥機内で乾燥させた。
【0033】
NIR−Aのコーティング調製物への分布は、黒の上での曇りの測定によって検査した。値が低ければ低いほど、調製物中での分布は良くなり、そして視覚的な塗膜特性に対する影響がより少ないことが観察される。
【表4】

【0034】
コーティング表面の温度は、硬化直後に測定した。
【0035】
以下の表が示すのは、ベルト速度2m/分、Adphos社のhigh-burn NIRランプ六個、出力70%、ランプとの距離は100mmでの結果である。
【表5】

【0036】
この表がはっきり示すように、H0.53WO3は、カーボンブラックとほぼ同等のレベルで赤外線を熱に変換することができる(232℃に比して216℃)。従って、本発明の酸化タングステン材料は、目的とする「無色のカーボンブラック」に極めて近づいている。NIR範囲(800〜1500nm)で総体的に吸収力が高い近赤外線吸収剤であっても、上記酸化タングステン及びタングステン酸塩に比べて、温度上昇がかなり低い(例えば、Lumogenを0.1%の濃度で有するH0.53WO3と比較して)。
【0037】
これは特に、TiO2を用いた適用において見られた(実施例3.2)。
【表6】

【0038】
ミルベースは標準工程に従い、予備混合及び付加的な粉砕にはdispermatを用いて1時間、Lau社の分散機DAS200を用いて調製した。スリットコーターを用いて、このコーティングを事前に用意した白色アルミニウム板に適用し、約80μmの乾燥膜厚(DFT)を得た。TiO2を有する調製物、及びTiO2とNIR吸収剤との混合物を試験した。硬化は、異なるベルト速度で、Adphos社の6個のHB−NIR放射器を用いて行った。
【0039】
コイルコーティングの分野では特に、主な用途は、「白色」シェードの分野、例えばRAL9001、9003、9010、9016である。RAL9010が、放出エネルギーの吸収効率に関して最も重要である。NIR−Aの添加による硬化速度への影響を試験するために(実施例2)、45質量%/質量のTiO2で顔料着色されたシステムを、基準として使用した。NIR−Aは、粉砕工程で直接、又は代替的には樹脂不含の顔料ペースト(溶剤ベースの適用のためのCiba EFKA(登録商標) 4310ベースのもの)を介して添加することができる。このNIR−Aの添加により、硬化時間の大きな減少につながる(表1参照)。このことにより、ベルト速度の上昇、コーティングラインの処理量の増加、又はランプ出力の減少による電気コストの低減につながる。
【表7】

【0040】
硬化させるためのベルト速度は、MEK往復摩擦100回に対する、硬化したコーティングの安定性により決定した。
【0041】
上記表が示しているのは、硬化はより速い速度で行うことができ、そしてTiO2で顔料着色されたシステムに比べると、CIE−Lab三次元系内でのa値、及びb値の僅かな変化のみが、NIR−A1の添加レベル上昇とともに観察されたということである。
【0042】
実施例3.3(NIR硬化の適用例)
実施例3.2と同一の調製物を使用した。45質量%の固体TiO2を有する調製物を、基準として使用した。
【表8】

【0043】
硬化させるためのベルト速度は、MEK往復摩擦100回に対する、硬化したコーティングの安定性により決定した。
【0044】
上記表が示しているのは、本発明によるNIR−A(実施例2)は、TiO2で顔料着色されたシステムの変色に対する影響よりも、その影響が低いということである。
【0045】
他の実施態様において本発明は、プラスチックのレーザーマーキング工程で、近赤外線の熱入力量を増加させるための、式
WO3−x
[式中、Wはタングステン、Oは酸素、及びxは0.1〜1である]
の酸化タングステンの使用、及び/又は式
MxWyOz
[式中、
Mは、NH4、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Ba、Sr、Fe、Sn、Mo、Nb、Ta、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tlから選択される1又は1つより多い要素であり、
Wはタングステンであり、
Oは酸素であり、
0.001≦x/y≦1、かつ2.0<z/y≦3.0である]
のタングステン酸塩の使用に関する。
【0046】
好ましいのは、タングステン亜酸化物(例えばWO2.72)、及びタングステンブロンズ(例えばH0.53WO3、Na0.33WO3、Cs0.33WO3)の使用である。特に好ましいのは、Cs0.2-0.5WO3である。
【0047】
他の実施態様において本発明は、プラスチックのレーザー溶着工程で、近赤外線の熱入力量を増加させるための、式
WO3−x
[式中、Wはタングステン、Oは酸素、及びxは0.1〜1である]
の酸化タングステンの使用、及び/又は式
MxWyOz
[式中、
Mは、NH4、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Ba、Sr、Fe、Sn、Mo、Nb、Ta、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tlから選択される1又は1つより多い要素であり、
Wはタングステンであり、
Oは酸素であり、
0.001≦x/y≦1、かつ2.0<z/y≦3.0である]
のタングステン酸塩の使用に関する。
【0048】
好ましいのは、タングステン亜酸化物(例えばWO2.72)、及びタングステンブロンズ(例えばH0.53WO3、Na0.33WO3、Cs0.33WO3)の使用である。特に好ましいのは、Cs0.2-0.5WO3である。
【0049】
レーザー照射は、溶解結合性プラスチックを製造するための溶着工程で使用される。使用される典型的なレーザー波長は、808nm、850nm、940nm、980nm、又は1064nmである。レーザー照射の吸収、及び溶融工程のための熱への変換には、IR吸収剤を添加することが必要である。一般的なIR吸収剤は、カーボンブラックである。その暗い色が原因で、明るく着色された、又は透明な部材の溶着は、不可能である。
【0050】
酸化タングステン又はタングステン酸塩の濃度は、10〜800ppm、好ましくは100〜300ppmである。
【0051】
酸化タングステン又はタングステン酸塩は、射出成形、押出成形などのような公知の方法でプラスチック部材に直接組み込んでよい。
【0052】
レーザー溶着工程で使用されるプラスチックの例は、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリカーボネート−ポリエチレンテレフタレートブレンド、ポリカーボネート−ポリブチレンテレフタレートブレンド、ポリカーボネート−アクリロニトリル/スチレン/アクリロニトリルコポリマーブレンド、ポリカーボネート−アクリロニトリル/ブタジエン/スチレンのコポリマーブレンド、ポリメチルメタクリレート−アクリロニトリル/ブタジエン/スチレンコポリマーブレンド(MABS)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート−ポリビニリデンジフルオリドブレンド、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレンコポリマー(ABS)、スチレン/アクリロニトリルコポリマー(SAN)、及びポリフェニレンスルホン、並びにこれらの混合物である。
【0053】
実施例4(プラスチックのレーザー溶着の適用例)
実施例2に記載のIR吸収剤を、射出成形機によってポリカーボネートシート(厚さ2mm)に500ppmの濃度で組み込む。生成するやや青みがかった透明なシートは、250ワットのNd:YAGレーザーを用いて、ポリカーボネートシート(厚さ1mm)と一緒に溶着する。その表面を、20mm/秒の速度でレーザービームによりスキャンした。
【0054】
生成する溶着は、優れた結合を示し、透明性が高く、局所的なプラスチック変形が無く、溶着中に気泡を発生しない。機械的応力による、溶着継ぎ目の破断は起こらない。
【0055】
Lumogen IR 765又はLumogen IR 788 のようなプラスチックのレーザー溶着のための最新のIR吸収剤技術では、これらの条件では溶着が起こらない。このことはまた、Nd:YAGレーザー(1064nm)の代わりに、例えば980nm、940nm、又は850nmでのダイオードレーザーについても当てはまる。808nmでのみ、これらのIR吸収剤により溶着が起こる。
【0056】
他の実施態様において本発明は、接着剤及び封止剤のNIR硬化工程、並びに接着剤及び封止剤のNIR乾燥工程で、近赤外線の熱入力量を増加させるための、式
WO3−x
[式中、Wはタングステン、Oは酸素、及びxは0.1〜1である]
の酸化タングステンの使用、及び/又は式
MxWyOz
[式中、
Mは、NH4、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Ba、Sr、Fe、Sn、Mo、Nb、Ta、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tlから選択される1又は1つより多い要素であり、
Wはタングステンであり、
Oは酸素であり、
0.001≦x/y≦1、かつ2.0<z/y≦3.0である]
のタングステン酸塩の使用に関する。
【0057】
好ましいのは、タングステン亜酸化物(例えばWO2.72)、及びタングステンブロンズ(例えばH0.53WO3、Na0.33WO3、Cs0.33WO3)の使用である。特に好ましいのは、Cs0.2-0.5WO3である。
【0058】
液状接着剤、とりわけ水ベースの接着剤への、及び溶剤ベースの接着剤へのNIR吸収性添加剤の添加は、放射された近赤外線の集中的な吸収によって、液状接着剤の乾燥性能を改善することができる。近赤外線の使用、及び液状接着剤を乾燥させるためのNIR吸収性添加剤は、慣用の乾燥工程、例えば温風や赤外線乾燥、又は独立した乾燥工程に加えて、使用することができる。
【0059】
液状接着剤へのNIR吸収性添加剤の添加、及び引き続いた所与の一定の条件下でのNIRによる照射により、残留液体(水)の含分が、NIR吸収性添加剤無しの同一の添加剤と比べて、より低くなる。このことは、液状接着剤のウェブコーティング適用、例えばラベルラミネート又はテープの製造において、特に興味深い。さらに、非多孔質材料、例えばフィルム又はホイルのウェブラミネート工程においては、液状接着剤をラミネート工程の前に完全に乾燥させる必要がある。多孔質基材、例えば紙又は繊維についてもまた、ラミネート前の完全な接着剤乾燥により、水分又は水に敏感な物質の平坦性(flatness)について利点が得られる。
【0060】
NIR吸収性添加剤の添加によって、導入されたエネルギーが主に接着剤層自体の中に主に吸収され、これが慣用の乾燥操作と比べてより低い基材温度につながるという、さらなる利点が得られる。このことにより、温度敏感性の基材、例えば低温で溶融する、又は収縮しうるフィルム及び繊維上で液状接着剤コーティングを乾燥させるための、興味深い可能性が開かれる。
【0061】
実施例5.1(接着剤及び封止剤のNIR硬化の適用例)
水ベースの感圧性アクリル接着剤(PSA)(BASF Corp.社のAcronal V 212、固体含分は69%)を、水で希釈した。実施例2に記載のNIR吸収性添加剤を、Ciba社のアクリルコポリマー分散剤EFKA4585を用いてスピードミキサー中で混合した。ステンレス鋼のコーティングバーで、50ミクロンの接着剤層をガラス板に適用した。接着剤の質量は、NIR放射器のもと、複数回にわたる照射(multiple passes)の前、及び後に測定した。
【0062】
結果が示しているように、NIR吸収性添加剤を含む水ベースの接着剤は、添加剤のない同一の接着剤よりも早く乾く。
【表9】

【0063】
さらなる態様ではNIR吸収性添加剤を、100%固体の、熱可塑性の、熱により活性化される接着剤システムに添加することができる。通常、熱により活性化される接着剤層は、相応する接着剤システムを、結合させるべき基材のうちの1つ、又は適切な中間担体にコーティング又は押出成形することによって形成される。代替的には、熱により活性化される接着剤は、水性又は溶剤の担体から、相応する接着剤をコーティング及び乾燥することにより形成することができる。こうして調製された接着剤層は、触って粘着性であってもよいが、通常は非粘着性であり、そして、後の活性化及び第二の基材への結合のために、より小さな単位、例えばスリットロール又はシートに変えることができる。熱で活性化される接着剤はまた、自立性のフィルム(接着フィルム)、ウェブ(ウェブ接着剤)、又は粉末(粉末接着剤)として製造、及び供給することができる。結合を確立するために、こうして製造した熱で活性化可能な接着層、又は自立性接着構造は、その活性化温度より高く加熱しなければならず、そしてその後、結合基材と結合させる。典型的な接着剤活性化法は、火力活性化、温風活性化、IR活性化、加熱されたローラ若しくは加熱カレンダーで加熱されたプレート、くさび、又はプレスによる活性化である。
【0064】
熱で活性化される接着剤にNIR吸収性添加剤を添加することにより、活性化はNIR放射器で簡便に行うことができる。適度に変性された接着剤は、近赤外線を吸収する;それ以上の熱には活性化温度が必要となり、結合を確立することができる。液状接着剤が乾燥するにつれて、NIR吸収性添加剤の添加により、エネルギーが基材ではなく接着剤によって主に吸収され、従ってまた温度敏感性の材料もまた、この結合法に利用可能になるという、さらなる利点が得られる。熱で活性化される接着剤のための典型的な化学物質は、ポリオレフィン、非晶質α−ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、例えばEVA、EAA、BAA、ポリプロピレン、コポリエステル、コポリアミド、熱可塑性ポリウレタン、ポリカプロラクトン、スチレンブロックコポリマーベースのホットメルト接着剤を含む。
【0065】
実施例5.2(接着剤及び封止剤のNIR硬化の適用例)
熱で活性化される典型的なホットメルト接着剤(非晶質α−ポリオレフィンベースのもの、APAO)を、シグマブレード混練機内で170℃で1時間混合した。APAPポリマーはEvonik Industries社から、炭化水素樹脂及びスチレンブロックコポリマーはExxon Chemical社から、抗酸化剤はCiba Incから、そしてロジンエステルの粘着性増進剤(tackyfier)はEastman社から得た。これらの接着剤はホットメルトスロットダイコーターを用いて、シリコーン化された紙上にコーティングし、鋼製プレート担体に移した。接着剤試料を近赤外線に被曝し、そして接着剤表面の温度を、レーザー温度計により観察した。その結果、実施例2に従ったNIR吸収性添加剤を含まない接着剤は、対照の鋼製キャリアプレートのような温度にしか到達しないことがわかる。異なる量のNIR吸収性添加剤を加えることにより、接着剤表面温度はそれぞれ、99℃、109℃、及び162℃に急上昇する。
【表10】

【0066】
他の実施態様において本発明は、紙のレーザーマーキング工程での、近赤外線の熱入力量及び効率性を増加させるための、式
WO3−x
[式中、Wはタングステン、Oは酸素、及びxは0.1〜1である]
の酸化タングステンの使用、及び/又は式
MxWyOz
[式中、
Mは、NH4、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Ba、Sr、Fe、Sn、Mo、Nb、Ta、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tlから選択される1又は1つより多い要素であり、
Wはタングステンであり、
Oは酸素であり、
0.001≦x/y≦1、かつ2.0<z/y≦3.0である]
のタングステン酸塩の使用に関する。
【0067】
好ましいのは、タングステン亜酸化物(例えばWO2.72)、及びタングステンブロンズ(例えばH0.53WO3、Na0.33WO3、Cs0.33WO3)である。特に好ましいのは、Cs0.2-0.5WO3である。
【0068】
実施例6(紙のレーザーマーキングの適用例)
Tioxide AH-R(アナターゼ)45質量部、アクリルワニス54.9質量部(Wacker社のVinnapas C501樹脂、酢酸ビニルとクロトン酸とから成る固体コポリマー20質量部と、酢酸プロピル80質量部とを一緒に混合することにより製造される)、及び実施例2から得られる材料0.1質量部から成る無色のインク調製物を、バーコーターを用いてクレーコーティングされた紙に適用する。様々な出力でNd:YAGレーザー(14-25A, 20 kHz, 1500 mms, 4.2-7.6W)を用いたレーザーマーキングにより、コントラストが高い優れたマーキング結果が得られる。
【0069】
実施例7(紙のレーザーマーキングの比較例)
実施例2の材料の代わりにランタンヘキサボライドを用いると、同一のレーザーマーキング性能を得るために、IR吸収剤が10倍以上必要となる(LaB6 1.4質量部)。
【0070】
他の実施態様において本発明は、印刷の乾燥工程、又はインクトナーを基材に固着する工程で、近赤外線の熱入力量を増加させるための、式
WO3−x
[式中、Wはタングステン、Oは酸素、及びxは0.1〜1である]
の酸化タングステンの使用、及び/又は式
MxWyOz
[式中、
Mは、NH4、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Ba、Sr、Fe、Sn、Mo、Nb、Ta、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tlから選択される1又は1つより多い要素であり、
Wはタングステンであり、
Oは酸素であり、
0.001≦x/y≦1、かつ2.0<z/y≦3.0である]
のタングステン酸塩の使用に関する。
【0071】
好ましいのは、タングステン亜酸化物(例えばWO2.72)、及びタングステンブロンズ(例えばH0.53WO3、Na0.33WO3、Cs0.33WO3)の使用である。特に好ましいのは、Cs0.2-0.5WO3である。
【0072】
他の実施態様において本発明は、プラスチック予備成形体の加熱工程で、近赤外線の熱入力量を増加させるための、式
WO3−x
[式中、Wはタングステン、Oは酸素、及びxは0.1〜1である]
の酸化タングステンの使用、及び/又は式
MxWyOz
[式中、
Mは、NH4、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Ba、Sr、Fe、Sn、Mo、Nb、Ta、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tlから選択される1又は1つより多い要素であり、
Wはタングステンであり、
Oは酸素であり、
0.001≦x/y≦1、かつ2.0<z/y≦3.0である]
のタングステン酸塩の使用に関する。
【0073】
好ましいのは、タングステン亜酸化物(例えばWO2.72)、及びタングステンブロンズ(例えばH0.53WO3、Na0.33WO3、Cs0.33WO3)の使用である。特に好ましいのは、Cs0.2-0.5WO3である。
【0074】
さらなる態様において本発明は、近赤外線の熱入力量を増加させるための、先に定義された酸化タングステン及び/又はタングステン酸塩、及び加えて国際出願WO 2008/086931で開示されたような式I又はII
【化1】

[式中、
MはNi、Pd、Pt、Au、Ir、Fe、Zn、W、Cu、Mo、In、Mn、Co、Mg、V、Cr及びTiであり、
1、X2及びX3は、相互に独立して、硫黄又は酸素であり;
1、R2、R3、R4、R5及びR6は相互に独立して水素、NR78、C1〜C18アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキルである(この際、R7とR8は相互に独立してC1〜C18アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキルである)]
のジチオレン金属錯体を含むブレンドの使用に関する。
【0075】
1〜C18アルキルの例は、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s.ブチル、t.ブチル、n−ヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシルである。
【0076】
アリールとは、フェニル、ナフチル、アントリル又はフェナントリルである。アリールアルキルは例えば、ベンジルである。ヘテロアリールアルキルは、低級アルキレンを介して、イミダゾール、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、インドリル、キノリニル、ピラゾリル、ピラジル、ピリダジル、ピリミジニルから選択されるヘテロ芳香族環に結合された、置換基としてのヘテロアリール基と理解される。
【0077】
特定の例は
【化2】

である。
【0078】
酸化タングステンに対するジチオレン金属錯体の量は、5〜90質量%の範囲である。
【0079】
さらなる態様において本発明は、先に定義された酸化タングステン及び/又はタングステン酸塩、及び加えて、キノンジイモニウム塩、アミニウム塩、ポリメチン、例えばシアニンスクアライン、クロコナイン、フタロシアニン、ナフタロシアニン、及びクアテリレンビスイミドから選択される少なくとも1つの有機IR吸収剤、又は加えて、ランタンヘキサボライド、インジウムスズ酸化物(ITO)アンチモンスズ酸化物、例えばMerck社から市販のMinatec 230 A-IR、若しくはMerck社から市販のLazerflair(登録商標)顔料から選択される少なくとも1つの無機IR吸収剤を含む、ブレンドの使用に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングのNIR硬化工程、及びコーティングのNIR乾燥工程で、近赤外線の熱入力量を増加させるための、式
WO3−x
[式中、Wはタングステン、Oは酸素、及びxは0.1〜1である]
の酸化タングステンの使用、及び/又は式
MxWyOz
[式中、
Mは、NH4、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Ba、Sr、Fe、Sn、Mo、Nb、Ta、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tlから選択される1又は1つより多い要素であり、
Wはタングステンであり、
Oは酸素であり、
0.001≦x/y≦1、かつ2.0<z/y≦3.0である]
のタングステン酸塩の使用。
【請求項2】
タングステン亜酸化物WO2.72、及びH0.3-0.7WO3、Na0.2-0.5WO3、Cs0.2-0.5WO3から選択されるタングステンブロンズが使用される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
Cs0.2-0.5WO3が使用される、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
コイルコーティングのNIR硬化工程又はNIR乾燥工程での、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
NIR硬化工程又はNIR乾燥工程における、顔料着色されたコーティング内での、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
プラスチックのレーザーマーキング工程での、近赤外線の熱入力量を増加させるための、式
WO3−x
[式中、Wはタングステン、Oは酸素、及びxは0.1〜1である]
の酸化タングステンの使用、及び/又は式
MxWyOz
[式中、
Mは、NH4、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Ba、Sr、Fe、Sn、Mo、Nb、Ta、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tlから選択される1又は1つより多い要素であり;
Wはタングステンであり、
Oは酸素であり、
0.001≦x/y≦1、かつ2.0<z/y≦3.0である]
のタングステン酸塩の使用。
【請求項7】
タングステン亜酸化物WO2.72、及びH0.3-0.7WO3、Na0.2-0.5WO3、Cs0.2-0.5WO3から選択されるタングステンブロンズが使用される、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
Cs0.2-0.5WO3が使用される、請求項6に記載の使用。
【請求項9】
プラスチックのレーザー溶着工程で、近赤外線の熱入力量を増加させるための、式
WO3−x
[式中、Wはタングステン、Oは酸素、及びxは0.1〜1である]
の酸化タングステンの使用、及び/又は式
MxWyOz
[式中、
Mは、NH4、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Ba、Sr、Fe、Sn、Mo、Nb、Ta、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tlから選択される1又は1つより多い要素であり;
Wはタングステンであり、
Oは酸素であり、
0.001≦x/y≦1、かつ2.0<z/y≦3.0である]
のタングステン酸塩の使用。
【請求項10】
タングステン亜酸化物WO2.72、及びH0.3-0.7WO3、Na0.2-0.5WO3、Cs0.2-0.5WO3から選択されるタングステンブロンズが使用される、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
Cs0.2-0.5WO3が使用される、請求項9に記載の使用。
【請求項12】
接着剤及び封止剤のNIR硬化工程、並びに接着剤及び封止剤のNIR乾燥工程で、近赤外線の熱入力量を増加させるための、式
WO3−x
[式中、Wはタングステン、Oは酸素、及びxは0.1〜1である]
の酸化タングステンの使用、及び/又は式
MxWyOz
[式中、
Mは、NH4、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Ba、Sr、Fe、Sn、Mo、Nb、Ta、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tlから選択される1又は1つより多い要素であり;
Wはタングステンであり、
Oは酸素であり、
0.001≦x/y≦1、かつ2.0<z/y≦3.0である]
のタングステン酸塩の使用。
【請求項13】
タングステン亜酸化物WO2.72、及びH0.3-0.7WO3、Na0.2-0.5WO3、Cs0.2-0.5WO3から選択されるタングステンブロンズが使用される、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
Cs0.2-0.5WO3が使用される、請求項12に記載の使用。
【請求項15】
紙のレーザーマーキング工程で、近赤外線の熱入力量を増加させるための、式
WO3−x
[式中、Wはタングステン、Oは酸素、及びxは0.1〜1である]
の酸化タングステンの使用、及び/又は式
MxWyOz
[式中、
Mは、NH4、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Ba、Sr、Fe、Sn、Mo、Nb、Ta、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tlから選択される1又は1つより多い要素であり;
Wはタングステンであり、
Oは酸素であり、
0.001≦x/y≦1、かつ2.0<z/y≦3.0である]
のタングステン酸塩の使用。
【請求項16】
タングステン亜酸化物WO2.72、及びH0.3-0.7WO3、Na0.2-0.5WO3、Cs0.2-0.5WO3から選択されるタングステンブロンズが使用される、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
Cs0.2-0.5WO3が使用される、請求項15に記載の使用。
【請求項18】
印刷インキの乾燥工程、又はインクトナーを基材に定着させる工程で、近赤外線の熱入力量を増加させるための、式
WO3−x
[式中、Wはタングステン、Oは酸素、及びxは0.1〜1である]
の酸化タングステンの使用、及び/又は式
MxWyOz
[式中、
Mは、NH4、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Ba、Sr、Fe、Sn、Mo、Nb、Ta、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tlから選択される1又は1つより多い要素であり;
Wはタングステンであり、
Oは酸素であり、
0.001≦x/y≦1、かつ2.0<z/y≦3.0である]
のタングステン酸塩の使用。
【請求項19】
タングステン亜酸化物WO2.72、及びH0.3-0.7WO3、Na0.2-0.5WO3、Cs0.2-0.5WO3から選択されるタングステンブロンズが使用される、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
Cs0.2-0.5WO3が使用される、請求項18に記載の使用。
【請求項21】
近赤外線の熱入力量を増加させるための、請求項1に記載の酸化タングステン及び/又はタングステン酸塩、並びに加えて、式I又はII
【化1】

[式中、
MはNi、Pd、Pt、Au、Ir、Fe、Zn、W、Cu、Mo、In、Mn、Co、Mg、V、Cr及びTiであり、
1、X2及びX3は、相互に独立して、硫黄又は酸素であり;
1、R2、R3、R4、R5及びR6は相互に独立して水素、NR78、C1〜C18アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキルである(この際、R7とR8は相互に独立してC1〜C18アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキルである)]
のジチオレン金属錯体を含む、ブレンドの使用。
【請求項22】
請求項1に記載の酸化タングステン及び/又はタングステン酸塩、並びに加えて、キノンジイモニウム塩、アミニウム塩、ポリメチンフタロシアニン、ナフタロシアニン、及びクアテリレンビスイミドから選択される少なくとも1つの有機IR吸収剤、又は加えて、ランタンヘキサボライド、インジウムスズ酸化物(ITO)アンチモンスズ酸化物、若しくは顔料から選択される少なくとも1つの無機IR吸収剤を含む、ブレンドの使用。

【公表番号】特表2011−503274(P2011−503274A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532540(P2010−532540)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際出願番号】PCT/EP2008/064335
【国際公開番号】WO2009/059900
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】