説明

近赤外蛍光造影剤

【課題】近赤外蛍光造影剤の造影成分として有用な新規化合物の提供。
【解決手段】下記一般式(I)で表される化合物又はその医薬上許容しうる塩:


式中、Xはスルホン酸基又はホスホン酸基を示し;R1とR2は置換基を表し;R3〜R6は置換基を有していてもよいアルキル基を表し;R7及びR8は置換基を有していてもよいアルキル基を表し;L1〜L3は置換基を有していてもよいメチン基を表し、rは0〜3の整数を表し、rが2以上の場合に複数存在するL2及びL3は同一でも異なっていてもよく;m,nは0〜3の整数を表し;上記置換基には一つ以上の、スルホン酸基、カルボン酸基及びホスホン酸基からなる群より選択される酸基又は該酸基を含む基が含まれ、かつ、前記酸基及びXのうち2つ以上はカルボン酸基またはホスホン酸基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規化合物を含む近赤外蛍光造影剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
疾患の治療において、生体内の疾患によって引き起こされる形態学的および機能的変化をその疾患の早期段階で検出することは重要である。特に癌の治療のためには、腫瘍の位置や大きさ、性質を予め知ることは、将来の治療のための戦略やプロトコルを決定するために極めて重要となる。このために従来用いられている方法としては、穿刺等による生検の他、X線造影、MRI、PET、超音波造影などの画像診断が挙げられる。生検は確定診断としては有効であるが、被験者への負担が大きく、また病変の経時的な追跡には適さない。またX線造影やMRI、PETは必然的に被験者に放射線や電磁波への被曝を起こす。さらに、上述したような従来の画像診断は、測定と診断に複雑な操作と長い時間を要する。また、装置の大きさおよび形状の点から、外科手術中にこれらの方法を用いながらナビゲーション下で手術を行うことも困難である。
【0003】
蛍光造影法はこれらの問題を解決する画像診断法の一つである。この方法は、特定の波長の励起光への暴露により蛍光を発する物質を造影剤として用いる。また、この方法は、生体外から励起光を照射し、生体内の蛍光物質から放射される蛍光を検出する工程を含む。
シアニン系化合物はこのような蛍光造影法に用いることができる代表的な化合物である。実際、インドシアニングリーン(以下、ICGと略す)は、現在、肝機能検査、眼底検査に用いられている。しかし、ICGは易溶化のためにヨウ素が添加された製剤として用いる必要があるため、ヨウ素過敏症患者には用いることができないといった問題点を有する。
この溶解性の問題を解決したシアニン系化合物として、特許文献1の請求項1に記載の化合物(以下SF-64と称する)が挙げられる。該色素は、水溶性に優れた低毒性の色素であることを特徴としており、また腫瘍描出性能を有することが該特許内に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3507060号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、近赤外蛍光造影剤の造影成分として有用な新規化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らはSF-64を用いて、シアニン系化合物の腫瘍集積機序について鋭意検討を行った。その結果、該色素および、その誘導体が血漿中においてアルブミンと複合体を形成することを初めて明らかとした。この知見に基づいて、SF64と比較して腫瘍描出時間などにおいて実際的な造影機能が向上している新規な色素化合物群を見出した。さらにこの色素化合物群は動物種による腫瘍描出能の差が少ないことを見出し、動物実験において、ヒトに投与した場合の正確な効果の予想が容易で、ヒトでの腫瘍描出能が高い化合物を早期の段階で選別可能であることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明は以下[1]〜[11]を提供するものである。
[1]下記一般式(I)で表される化合物又はその医薬上許容しうる塩:
【0007】
【化1】

式中、Xはスルホン酸基又はホスホン酸基を示し;R1とR2はそれぞれ独立に置換基を表し;R3〜R6は同一又は異なって、それぞれ置換基を有していてもよいアルキル基を表し;R7及びR8はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基を表し;L1〜L3は同一又は異なって、それぞれ置換基を有していてもよいメチン基を表し、rは0〜3の整数を表し、rが2以上の場合に複数存在するL2及びL3は同一でも異なっていてもよく;m,nはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し;上記置換基には一つ以上の、スルホン酸基、カルボン酸基及びホスホン酸基からなる群より選択される酸基又は該酸基を含む基が含まれ、かつ、前記酸基及びXのうち2つ以上はカルボン酸基またはホスホン酸基である。
[2]下記一般式(II)で表される[1]に記載の化合物又はその医薬上許容しうる塩:
【0008】
【化2】

【0009】
式中、
10及びR11は同一又は異なって、カルボン酸基、スルホン酸基、又はホスホン酸基で置換されているアルキル基を表し;R9は、水素、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、ヘテロ環基、アシルアミノ基、アリールアミノ基、N−アリール−N−アルキルアミノ基、アリールチオ基、アリールオキシ基、又はアシルアミノアリールオキシ基を表す。
[3]R9が水素原子、メチル基、又はフェニル基である、メチル、エチル、アリールである[2]に記載の化合物又はその医薬上許容しうる塩。
[4]R10及びR11が、いずれもスルホン酸基又はホスホン酸基で置換されているアルキル基である[2]又は[3]に記載の化合物又はその医薬上許容しうる塩。
[5]R10及びR11が、いずれもホスホン酸基で置換されているアルキル基である[2]又は[3]に記載の化合物又はその医薬上許容しうる塩。
【0010】
[6]Xがスルホン酸基である[1]〜[5]のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬上許容しうる塩。
[7]カルボン酸基、スルホン酸基、又はホスホン酸基の1つ以上がナトリウムイオンと塩を形成している[1]〜[6]のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬上許容しうる塩。
[8][1]〜[7]のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬上許容しうる塩を含む近赤外蛍光造影剤。
[9] 腫瘍の造影に用いられる[8]に記載の近赤外蛍光造影剤。
[10]SPARCが高発現している癌種の造影に用いられる[9]に記載の近赤外蛍光造影剤。
[11]口腔、咽頭、消化器、呼吸器、骨および間接、軟組織、皮膚、乳房、生殖系、泌尿器系、眼および眼窩、脳及び中枢神経又は内分泌系に発生する腫瘍の造影に用いられる[9]又は[10]に記載の近赤外蛍光造影剤。
【0011】
本発明のさらに別の観点からは、蛍光造影剤の製造のための上記の化合物の使用;蛍光造影法であって、上記の化合物を、ヒトを含む哺乳類動物に投与した後に蛍光造影する工程を含む方法;腫瘍の造影方法であって、上記の化合物を、ヒトを含む哺乳類動物に投与した後に蛍光造影する工程を含む方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、新規なシアニン系化合物が提供される。上記シアニン系化合物は腫瘍等の疾患部位への集積性が高く、近赤外蛍光造影剤の造影成分として適している。また、上記シアニン系化合物はアルブミンに対する結合能の動物種による差異が少ないため動物実験によりヒトに投与した場合の効果の予想がしやすい。さらに、本発明の化合物を含む近赤外蛍光造影剤は、腫瘍描出時間が長いという特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本明細書において、「置換基」、または「置換又は無置換の」というときの置換基としては例えば下記の置換基群から選択される置換基が挙げられる。
【0014】
置換基群:ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボン酸基(カルボキシル基)、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホン酸基(スルホ基)、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールアゾ基、ヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスホン酸基(リン酸基)、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、及びシリル基。
【0015】
なお、これらの基のうち塩を形成することが可能な基、又は一個もしくは二個以上の水素イオンの脱離により塩を形成することが可能な基については、これらいずれかの基が塩を形成したものであってもよい。これらの塩における対イオンとしては、本発明の化合物中に存在し得る陽電荷又は陰電荷、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンが挙げられる。
【0016】
ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
アルキル基としては、直鎖、分岐、もしくは環状のアルキル基、又はそれらの任意の組み合わせのいずれでもよく、炭素数1から30の直鎖アルキル基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−エチルヘキシル)、炭素数3から30のシクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、炭素数5から30のビシクロアルキル基(炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基:例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、及び更に環構造が多いトリシクロ構造を有するアルキル基などが挙げられる。
アルキル部分を持つ置換基のアルキル部分についても、別に説明の無い限り、上記アルキル基の説明と同様である。
【0017】
アルケニル基としては、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、炭素数2から30の直鎖アルケニル基(例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、炭素数3から30シクロアルケニル基(炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基:例えば2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、及び炭素数5から30のビシクロアルケニル基(二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基:例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)などが挙げられる。アルキニル基としては、炭素数2から30のアルキニル基(例えば、エチニル、プロパルギル)が好ましく挙げられる。アリール基としては好ましくは炭素数6から30のアリール基であればよく、例えばフェニル、p−トリル、ナフチルが挙げられる。
【0018】
ヘテロ環基としては好ましくは5又は6員のヘテロ環基であればよく、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であればよい。より好ましくは、炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基であり、例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、及び2−ベンゾチアゾリルが挙げられる。
アルコキシ基としては、好ましくは、炭素数1から30のアルコキシ基であればよく、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシが挙げられる。アリールオキシ基としては、好ましくは、炭素数6から30のアリールオキシ基であればよく、例えば、フェノキシ基が挙げられる。シリルオキシ基としては、好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基であればよく、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシが挙げられる。
【0019】
ヘテロ環オキシ基としては、好ましくは、炭素数2から30のヘテロ環オキシ基であればよく、テトラゾールー5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシが挙げられる。アシルオキシ基としては、ホルミルオキシ基、炭素数2から30のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30のアリールカルボニルオキシ基等であればよく、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、フェニルカルボニルオキシが挙げられる。カルバモイルオキシ基としては、好ましくは、炭素数1から30のカルバモイルオキシ基であればよく、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、及びN−n−オクチルカルバモイルオキシが挙げられる。アルコキシカルボニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数2から30のアルコキシカルボニルオキシ基であればよく、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、及びn−オクチルカルボニルオキシが挙げられる。
【0020】
アリールオキシカルボニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数7から30のアリールオキシカルボニルオキシ基であればよく、例えば、フェノキシカルボニルオキシが挙げられる。アルキルアミノ基としては炭素数1から30のアルキルアミノ基であればよく、例えばメチルアミノ及びジメチルアミノが挙げられる。アリールアミノ基としては好ましくは炭素数6から30のアリールアミノ基であればよく、例えば、アニリノ及びジフェニルアミノが挙げられる。アシルアミノ基としては好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30のアルキルカルボニルアミノ基又は炭素数6から30のアリールカルボニルアミノ基であればよく、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、及び3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノが挙げられる。アミノカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数1から30のアミノカルボニルアミノ基であればよく、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、及びモルホリノカルボニルアミノが挙げられる。
【0021】
アルコキシカルボニルアミノ基としては、好ましくは炭素数2から30のアルコキシカルボニルアミノ基であればよく、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、及びn−オクタデシルオキシカルボニルアミノが挙げられる。アリールオキシカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数7から30のアリールオキシカルボニルアミノ基であればよく、例えば、フェノキシカルボニルアミノが挙げられる。スルファモイルアミノ基としては、好ましくは、炭素数0から30のスルファモイルアミノ基であればよく、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、及びN−n−オクチルアミノスルホニルアミノが挙げられる。アルキル及びアリールスルホニルアミノ基としては、好ましくは炭素数1から30のアルキルスルホニルアミノ又は炭素数6から30のアリールスルホニルアミノであればよく、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、及びフェニルスルホニルアミノが挙げられる。アルキルチオ基としては、好ましくは、炭素数1から30のアルキルチオ基であればよく、例えばメチルチオ、エチルチオ及びn−ヘキサデシルチオが挙げられる。アリールチオ基としては、好ましくは炭素数6から30のアリールチオ基であればよく、例えば、フェニルチオが挙げられる。ヘテロ環チオ基としては、好ましくは炭素数2から30のヘテロ環チオ基であればよく、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ及びテトラゾール−5−イルチオが挙げられる。
【0022】
スルファモイル基としては、好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイル基であればよく、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、及びN−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイルが挙げられる。アルキルスルフィニル基及びアリールスルフィニル基としては、好ましくは、炭素数1から30のアルキルスルフィニル基、又は6から30のアリールスルフィニル基であればよく、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、及びフェニルスルフィニルが挙げられる。アルキル及びアリールスルホニル基としては、好ましくは、炭素数1から30のアルキルスルホニル基又は6から30のアリールスルホニル基であればよく、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、及びフェニルスルホニルが挙げられる。アシル基としては、好ましくはホルミル基、炭素数2から30のアルキルカルボニル基、炭素数7から30のアリールカルボニル基、又は炭素数4から30の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基であればよく、例えば、アセチル、ピバロイル、ステアロイル、ベンゾイル、2―ピリジルカルボニル、及び2―フリルカルボニルが挙げられる。アリールオキシカルボニル基としては、好ましくは、炭素数7から30のアリールオキシカルボニル基であればよく、例えば、フェノキシカルボニルが挙げられる。
【0023】
アルコキシカルボニル基としては、好ましくは、炭素数2から30のアルコキシカルボニル基であればよく、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、及びn−オクタデシルオキシカルボニルが挙げられる。カルバモイル基としては、好ましくは、炭素数1から30のカルバモイル基であればよく、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、及びN−(メチルスルホニル)カルバモイル)が挙げられる。アリールアゾ基及びヘテロ環アゾ基としては、好ましくは炭素数6から30のアリールアゾ基、炭素数3から30のヘテロ環アゾ基であればよく、例えば、フェニルアゾ、1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾが挙げられる。イミド基として好ましい例としては、N−スクシンイミド及びN−フタルイミドが挙げられる。ホスフィノ基としては、好ましくは、炭素数2から30のホスフィノ基であればよく、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、及びメチルフェノキシホスフィノが挙げられる。ホスフィニル基としては、好ましくは、炭素数2から30のホスフィニル基であればよく、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、及びジエトキシホスフィニルが挙げられる。ホスフィニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数2から30のホスフィニルオキシ基であればよく、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ及びジオクチルオキシホスフィニルオキシが挙げられる。ホスフィニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数2から30のホスフィニルアミノ基であればよく、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ及びジメチルアミノホスフィニルアミノが挙げられる。シリル基としては、好ましくは、炭素数3から30のシリル基であればよく、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル及びフェニルジメチルシリルが挙げられる。
【0024】
上記の置換基は更に上記の置換基で置換されていてもよい。そのような置換基の例としては、アリールアルキル基、アシルアミノアリールオキシ基、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、及びアリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル、アセチルアミノスルホニル、及びベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0025】
以下、一般式(I)で表される化合物について詳細に説明する。
一般式(I)で表される化合物は分子中にスルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基から選択される3個以上の酸基を有する。また前記の3個以上の酸基のうち2つ以上はカルボン酸基またはホスホン酸基である。また、一般式(I)の置換基Xは酸基であるが、カルボン酸基ではない。なお、酸基はプロトンが脱離して塩を形成している基であってもよい。
【0026】
一般式(I)において、R1及びR2はそれぞれ独立に置換基を表す。置換基は上記置換基群から選択される置換基であればよい。R1、R2として好ましくはハロゲン原子、アルキル基(直鎖、分岐、環状アルキル基を含む)、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、カルボン酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホン酸基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基が挙げられる。より好ましくはハロゲン原子、アルキル基(直鎖、分岐、環状アルキル基を含む)、アリール基、ヘテロ環基、カルボン酸基、アルコキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、スルファモイル基、スルホン酸基、カルバモイル基、イミド基が挙げられる。さらに好ましくはハロゲン原子、炭素数1〜6の直鎖、分岐又は環状アルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜10のヘテロ環基、カルボン酸基又はスルホン酸基が挙げられる。特に好ましくは、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、ナフチル基、チエニル基、フリル基、ピリジル基が挙げられる。
【0027】
一般式(I)において、m、nは0〜3の整数である。m、nが2又は3のときは複数存在するR1、R2はそれぞれ異なっていても同一でもよい。m、nは0又は1であることが好ましく、特に好ましくは0である。
【0028】
一般式(I)において、R3〜R6は同一又は異なって、それぞれ置換又は無置換のアルキル基であるが、該アルキル基は、R1、R2におけるアルキル基と同義であり、置換基を有する場合は上記置換基群から選択される置換基であればよい。R3〜R6はそれぞれ独立に1〜20のアルキル基であることが好ましく、総炭素数1〜15のアルキル基であることがより好ましく、総炭素数1〜10のアルキル基であることがさらに好ましく、総炭素数1〜3のアルキル基であることが特に好ましい。また、R3〜R6はそれぞれ独立に無置換のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがもっとも好ましい。
【0029】
一般式(I)において、R7及びR8は同一又は異なって、それぞれ置換又は無置換のアルキル基である。アルキル基は、直鎖アルキル基(好ましくは炭素数1から30の直鎖アルキル基)、分岐アルキル基(好ましくは炭素数3から30の分岐アルキル基)、又は環状のアルキル基(トリシクロ構造を有するものを含み、好ましくは炭素数3から30のシクロアルキル基、又は炭素数5から30のビシクロアルキル基、(炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基)であればよい。例としてはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イルが挙げられる。
これらのうち、炭素数1から20の直鎖アルキル基が好ましく、炭素数1から10の直鎖アルキル基がより好ましく、炭素数1から5の直鎖アルキル基がさらに好ましい。
【0030】
7又はR8で表される置換アルキル基における置換基の種類、数、位置は特に限定されない。R7又はR8が置換アルキル基の場合の置換基として好ましくはハロゲン原子、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基であり、より好ましくはカルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基であり、更に好ましくはカルボン酸基、ホスホン酸基、最も好ましくはホスホン酸基である。酸基においては水素原子が脱離して塩を形成した基も同様に好ましい。置換アルキル基が置換直鎖アルキル基の場合、置換位置はR7又はR8として置換直鎖アルキル基が置換している窒素原子から炭素数2個以上介した位置にあることが好ましく、より好ましくは末端の炭素であることが好ましい。置換基の数は1が好ましい。
【0031】
1〜L3は同一又は異なって、それぞれ置換又は無置換のメチン基を表す。但しL1〜L3の少なくとも一つは置換メチン基である。rは0〜3の整数を表す。 rが2以上の場合に複数存在するL2及びL3は同一でも異なっていてもよい。L1〜L3が置換メチン基である場合には、その置換基は上記置換基群から選択される置換基であればよい。L1〜L3のいずれか2つ以上が置換メチン基である場合には、それらの置換基同士が結合して環を形成していてもよい。
置換メチン基における置換基の具体例及び置換基同士が結合して環を形成する場合の具体例を以下に示す。なお、以下においてはr=2であって、2つのL2に挟まれるL3がエチル基以上の嵩高さの置換基を含む場合のL1〜L3で表されるポリメチン基部分の構造として示す。なお、*は他の2つの部分構造それぞれとの結合部分を示す。
【0032】
【化3】

【0033】
【化4】

【0034】
【化5】

【0035】
【化6】

【0036】
【化7】

【0037】
【化8】

【0038】
rは0〜3の整数を表すが、好ましくは1〜3であり、より好ましくは2又は3であり、特に好ましくは3である。L1〜L3において、好ましくは無置換メチン基がL1〜L3のうち一つ以上あり、より好ましくは置換メチン基が1〜3個であり残りは全て無置換メチン基であり、特に好ましくは置換メチン基が1個であり残りは全て無置換メチン基である。
【0039】
酸基が塩を形成している基である場合、塩としては陰電荷となっているもの、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属と塩を形成しているものが好ましい。アルカリ金属、又はアルカリ土類金属として好ましくはNa又はKであり、より好ましくはNaである。
【0040】
なお一般式(I)で表される化合物の陽電荷は分子内あるいは分子外にある対アニオンにより中和されている。対アニオンの例としては、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンなどのハロゲンイオン、アセテートイオン、オキサレートイオン、フマレートイオン、ベンゾエートイオンなどのカルボキシレートイオン、p−トルエンスルホネート、メタンスルホネート、ブタンスルホネート、ベンゼンスルホネートなどのスルホネートイオン、硫酸イオン、過塩素酸イオン、炭酸イオン、硝酸イオン、等が挙げられる。分子内にカルボキシレート基、スルホネート基等に負電荷を有する基が存在する場合には、化合物の陽電荷とともに分子内塩を形成していてもよい。分子外対アニオンとしては、ハロゲンイオン、メタンスルホネートイオン、硫酸イオン、が好ましく、クロロイオン、ブロモイオン又はメタンスルホネートイオンが特に好ましい。
【0041】
一般式(I)で表される化合物はより好ましくは、上記一般式(II)で表される化合物であればよい。
【0042】
一般式(II)において、R9がアルキル基の場合、該アルキル基の総炭素数が1〜20であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましい。特に好ましい具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、2-プロピル基、シクロプロピル基が挙げられ、更に好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、2-プロピル基、シクロプロピル基である。
【0043】
9がアリール基の場合、該アリール基の総炭素数が5〜20であることが好ましく、5〜15であることがより好ましく、5〜10であることがさらに好ましい。特に好ましい具体例としては、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−フェニルフェニル基、ナフチル基が挙げられる。
【0044】
9がアリールアルキル基の場合、該アリールアルキル基の総炭素数が7〜30であることが好ましく、7〜20であることがより好ましく、7〜10であることがさらに好ましい。特に好ましい具体例としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基が挙げられる。
【0045】
9がヘテロ環基の場合、該ヘテロ環基の総炭素数が1〜20であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましい。特に好ましい具体例としては、4−ピリジル基、2−フリル基、2−チエニル基、2−オキソピロリジン−1−イル基が挙げられる。
【0046】
9がアシルアミノ基の場合、該アシルアミノ基の総炭素数が1〜20であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましい。特に好ましい具体例としては、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、ピバロイルアミノ基、4-フェニルベンゾイルアミノ基が挙げられる。
【0047】
9がアリールアミノ基の場合、該アリールアミノ基の総炭素数が1〜20であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましい。特に好ましい具体例としては、N-フェニルアミノ基、N-トリルアミノ基、N,N-ジフェニルアミノ基が挙げられる。
【0048】
9がN-アリール-N-アルキルアミノ基の場合、該N-アリール-N-アルキルアミノ基の総炭素数が7〜30であることが好ましく、7〜20であることがより好ましく、7〜15であることがさらに好ましい。
特に好ましい具体例としては、N-フェニル-N-メチルアミノ基、N-トリル-N-メチルアミノ基が挙げられる。
【0049】
9がアリールチオ基の場合、該アリールチオ基の総炭素数が1〜20であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましい。特に好ましい具体例としては、フェニルチオ基、トリルチオ基、4-フェニルフェニルチオ基、ナフチルチオ基が挙げられる。
【0050】
9がアリールオキシ基の場合、該アリールチオ基の総炭素数が1〜20であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましい。特に好ましい具体例としては、フェニルオキシ基、4-アセチルアミノフェニルオキシ基、4-フェニルフェニルオキシ基、ナフチルオキシ基が挙げられる。
【0051】
9がアシルアミノアリールオキシ基の場合、該アシルアミノアリールオキシ基の総炭素数が7〜30であることが好ましく、7〜20であることがより好ましく、7〜15である
ことがさらに好ましい。特に好ましい具体例としては、ベンゾイルアミノフェニルオキシ基が挙げられる。
【0052】
10、R11は、それぞれ独立して、カルボン酸基、スルホン酸基、又はホスホン酸基で置換されているアルキル基を表す。R10、R11は同一又は異なって、アルキル基としては、直鎖アルキル基(好ましくは炭素数1から30の直鎖アルキル基)、分岐アルキル基(好ましくは炭素数3から30の分岐アルキル基)、又は環状のアルキル基(トリシクロ構造を有するものを含み、好ましくは炭素数3から30のシクロアルキル基、又は炭素数5から30のビシクロアルキル基、(炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基)であればよい。例としてはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イルが挙げられる。これらのうち、炭素数1から20の直鎖アルキル基が好ましく、炭素数1から10の直鎖アルキル基がより好ましく、炭素数1から5の直鎖アルキル基がさらに好ましい。
【0053】
10、R11におけるカルボン酸基、スルホン酸基、又はホスホン酸基の数、位置は特に限定されないが、R10、R11は好ましくはカルボン酸基、スルホン酸基を有するアルキル基であり、更に好ましくはカルボン酸基、ホスホン酸基、最も好ましくはホスホン酸基である。
またR10、R11に上記の基が置換するとき、その置換基の位置はR10、R11がそれぞれ置換している窒素原子から炭素数2個以上介した位置であることが好ましく、より好ましくは末端の炭素であることが好ましい。
【0054】
生体内で使用されることになる蛍光造影剤は特に水溶性であることが必要である。本発明の近赤外蛍光造影剤は上記化合物中にスルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基から選択される3個以上の酸基を導入することにより水溶性が顕著に改善されている。優れた水溶性を得るにはスルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基の総数は4個以上であることが好ましい。合成を容易にするには、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基の数は10個以下、好ましくは8個以下である。水溶性の改善は各化合物の分配係数の測定、例えば分配係数をブタノール/水の二相系で測定することにより調べることができる。より詳しく言えば、3個以上のスルホン酸基の導入によりn-ブタノール/水の分配係数log Po/wは -1.00以下となる。
【0055】
生体における水溶性は、生理的食塩水に溶解し、36℃において時間経過後も沈殿や析出のないことを指標として判断することができる。
【0056】
本発明の近赤外蛍光造影剤に造影成分として含まれる物質は、一般式(I)で表される化合物又はその医薬上許容される塩である限りいかなるものでもよい。これらの化合物は「シアニン染料及び関連化合物」, F.M. Hamer, John Wiley and Sons, New York, 1964; Cytometry, 10, 3-10 (1989); Cytometry, 11, 418-430 (1990); Cytometry, 12, 723-730 (1990); Bioconjugate Chem. 4, 105-111 (1993), Anal. Biochem., 217, 197-204 (1994), Tetrahedron, 45, 4845-4866 (1989), EP-A-0591820A1, EP-A-0580145A1等に開示されているシアニン染料化合物の公知の製造方法によって合成することができる。あるいは、それらは市販のシアニン染料化合物から公知の方法によって半合成することもできる。特に、それらはジアニル化合物及びヘテロ環化合物四級塩を反応させることによって合成することができる。
【0057】
本発明の化合物の具体例として、例えば以下の化合物があげられる。
【0058】
【化9】

【0059】
【化10】

【0060】
【化11】

【0061】
【化12】

【0062】
本発明の近赤外蛍光造影剤に含まれるべき上記化合物は700-1300 nm、特に約700-900 nmの近赤外光領域に吸収及び蛍光を示し、100,000以上のモル吸光係数を有する。
【0063】
本発明の近赤外蛍光造影剤は一般式(I)で表される化合物及び/又はそれらの医薬上許容しうる塩を含み、分子中に3個以上、好ましくは4個以上のスルホン酸基を有する限りは特に限定されない。この化合物又はその塩は単独で又は組み合わせて当該造影剤に含まれていてもよい。
【0064】
具体的には、該造影剤は、上記化合物もしくはその医薬上許容しうる塩、又は注射用蒸留水、生理食塩水、リンゲル液等のような溶媒中に懸濁若しくは溶解した上記化合物を含む。必要に応じて、担体、賦形剤等のような薬理上許容しうる添加物を加えてもよい。これらの添加物としては、薬理上許容しうる電解質、バッファー、洗剤のような物質及び浸透圧を調整し安定性及び溶解性を改善するための物質(例えば、シクロデキストリン、リポソーム等)が挙げられる。関連分野で一般に使用される多様な添加物が使用できる。本発明の近赤外蛍光造影剤は医薬用の場合は好ましくは滅菌処理を経て製造される。
当該造影剤は、注射、噴射又は塗布、血管内(静脈、動脈)、経口、腹膜内、経皮、皮下、膀胱内又は気管支内投与によって生体に投与することができる。好ましくは、本造影剤は血管内に水剤、乳剤又は懸濁剤の形態で投与される。
【0065】
本発明の近赤外蛍光造影剤の用量は、その用量によって最終的に診断すべき部位の検出が可能である限りは特に限定されず、使用される近赤外蛍光を放射する化合物の種類、年齢、体重及び投与対象の標的器官などによって適当に調整される。典型的には、用量は当該化合物の量として0.01-100 mg/kg体重、好ましくは0.01-20 mg/kg体重である。本発明の造影剤はヒト以外の多様な動物に適宜使用することができる。投与の形態、経路及び用量は対象動物の体重及び状態によって適当に決定される。
【0066】
一般式(I)で表される化合物、特に好ましくは一般式(II)で表される化合物が腫瘍組織中に顕著に蓄積される傾向がある。この特性を利用することにより、本発明の蛍光造影剤を用いて腫瘍組織を特異的にイメージングすることができる。さらに、本発明の化合物は血清中半減期が長いことから、血管造影剤としても良好に機能することが期待される。
【0067】
本発明の近赤外蛍光造影剤は、蛍光造影法(蛍光イメージング)に用いることができる。この方法は公知の方法に準じて実施され、励起波長及び検出すべき蛍光波長のようなそれぞれのパラメーターは投与される近赤外蛍光造影剤の種類及び投与対象により最適のイメージング及び評価が行えるように適宜決定される。本発明の近赤外蛍光造影剤の測定対象への投与から本発明の蛍光イメージング法による測定開始までにかかる時間は使用される近赤外蛍光造影剤の種類及び投与対象によって異なる。例えば、腫瘍イメージングを目的として造影剤が一般式(I)で表される化合物を含む場合、消失時間は投与後およそ4-120時間と考えられる。特に、一般式(II)で表される化合物の場合、消失時間は投与後およそ24-120時間と考えられる。消失時間が短すぎると、蛍光が強すぎて標的部位と他の部位を明確に分けることができない。長すぎると、当該造影剤が身体から排泄されてしまうことがある。
【0068】
SF-64に基づいた本発明者らの研究の結果、シアニン系化合物は血漿中においてアルブミンと複合体を形成することにより腫瘍に集積することが初めて明らかになった。カルボン酸基及びホスホン酸基から選択される酸基を2つ以上有する一般式(I)で表される化合物はSF-64よりも高いアルブミン結合性を有する。
本発明の化合物は、高いアルブミン結合性を有することにより、SPARC、キュビリン、またはTGFβのようなアルブミン結合タンパク質と結合可能である。そのため、本発明の化合物はアルブミン結合タンパク質が主要な役割を果たすと共に、正常組織に比べて過剰発現されている疾患を対象として造影を行う際の造影剤として使用できる。アルブミン結合性タンパク質はSPARC、キュビリン、またはTGFβから選択されることが好ましい。より好ましくは、アルブミン結合性タンパク質はSPARCである。
【0069】
すなわち、本発明の化合物およびその医薬上許容しうる塩は、SPARC発現組織の検出剤として機能し、SPARCが関与する病態全般に対する診断薬として使用することができる。具本発明の化合物を造影剤として用いることが適した病態としては、軟組織、結合組織、骨、固形臓器、血管等を含めた任意の肉体組織中での、増殖の異常形態、組織再構築、過形成、過度の創傷治癒が挙げられる。具体的には例えば、癌、糖尿病性又は他の網膜症、炎症、関節炎、血管または人工血管移植片又は、血管内装置における再狭窄等が挙げられる。
【0070】
本発明の化合物によって検出される腫瘍型は、一般的にヒトを含む哺乳動物中に見出されるものである。該腫瘍は、実験動物などでのように、接種からも生じ得る。該腫瘍とは公知のように「新生物」としても知られており、多くの型と種類とがある。本発明の化合物が造影剤として適用される腫瘍はいかなる特定の腫瘍型又は種類にも限定されない。
本発明の化合物は、腫瘍細胞及び関連間質細胞、固形腫瘍、並びに、例えばヒトの軟組織肉腫のような軟組織に関連した腫瘍の造影に有用である。腫瘍又は癌は、口腔および咽頭、消化器系、呼吸器系、骨および関節(例えば骨転移)、軟組織、皮膚(例えばメラノーマ)、乳房、生殖系、泌尿器系、眼および眼窩、脳及び中枢神経(例えばグリオーマ)又は内分泌系(例えば甲状腺)中に位置し、必ずしも原発腫瘍又は癌に限定されない。口腔に関連した組織としては、例えば、舌および口の組織が挙げられる。癌は、例えば食道、胃、十二指腸、小腸、結腸、直腸、肛門、肝臓、胆嚢および膵臓を含む、消化器系の組織中で発生し得る。呼吸系の癌は、咽頭、肺および気管支に発生し得る。腫瘍は、男性および女性の生殖器を構成する、子宮頚部、子宮体部、卵巣外陰、膣、前立腺、精巣および陰茎、並びに、泌尿器系を構成する膀胱、腎臓、腎盂及び尿管で発生し得る。腫瘍又は癌は頭部および/又は、頚部で発生し得る。腫瘍または癌は、リンパ組織系においても発生しうるものであり、そのような例としてはホジキン病および非ホジキンリンパ腫が挙げられる。腫瘍または癌は、造血系においても発生しうるものであり、そのような例としては多発性骨髄種または白血病、例えば急性リンパ性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病などが挙げられる。腫瘍は、膀胱、肝臓、膵臓、卵巣、腎臓、食道、胃、腸、脳、皮膚または乳房に位置することが好ましい。
【0071】
アルブミンは、SPARCに対して親和性を持つ。従って、本発明の化合物は、正常組織への集積をほとんど又は全く伴うことなく、SPARCが発現している疾患部位に蓄積する。
【0072】
試料中のSPARCタンパク質の発現は、当該分野で公知のあらゆる好適な方法により検出および定量化することができる。タンパク質の検出および定量化の好適な方法としては、ウエスタンブロット法、酵素免疫測定法(ELISA)、銀染色法、BCAアッセイ(Smith et al., Anal.. Biochem., 150, 76-85 (1985))に記載)、タンパク質−銅複合体に基づく比色分析法であるローリータンパク質アッセイ(例えばLowry et. al., J. Biol. Chem., 193, 265-275 (1951)に記載)および、タンパク質結合の際のクマシーブルー G-250の吸光度変化に基づくブラッドフォードタンパク質分析(例えば Bradford et. al., Anal. Biochem., 72, 248, (1976)に記載)が挙げられる。腫瘍生検は、任意の従来の方法により行うか、又は適切な可視化システム(すなわち、HRP基質およびHRP接合二次抗体)と併せて、抗SPARC抗体(モノクロナールもしくはポリクロナールのいずれか)を用いる免疫組織化学により行うことができる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。なお、下記の実施例中の化合物番号は上記に示した化合物例の番号に対応している。尚、以下の実施例において示された化合物名は、必ずしもIUPAC命名法に従うものではない。
以下の実施例において、化合物の連続番号は化学構造式とともに上に列挙した化合物の番号に対応する。
【0074】
以下の手順に従い、本発明化合物合成のための中間体を得た。
なお、5−スルホー2,3,3−トリメチルインドレインは公知の合成法に従って合成した(特開平2−233658号公報)
【0075】
【化13】

【0076】
中間体1(ヘテロ環四4級塩化合物)は特許記載の方法によって合成した(特表-2002-526458号公報)。
すなわち、2−クロロエタンスルホニルクロリドを、トリエチルアミン存在下、DMACに溶解した5−スルホー2,3,3−トリメチルインドレイン溶液へ室温にて攪拌しながら2時間かけて滴下した後、更に3時間攪拌した。メタノールを30分かけて滴下した後に、水酸化ナトリウム水溶液を1時間かけて滴下し、更に1時間室温にて攪拌した。反応終了後、アセトニトリルを2時間かけて滴下し、室温にて一晩放置することで結晶を沈殿させた。濾過により結晶を回収後、DMAc/メタノール/水/アセトニトリル=5/4/4/40溶液、続いてアセトニトリルで洗浄し、減圧下にて乾燥することで中間体1を得た。
【0077】
【化14】

【0078】
5−スルホー2,3,3−トリメチルインドレイン(1当量)、ブロモ酢酸(1.5当量)、およびトリエチルアミン(1当量)をo-ジクロロベンゼン中、120℃にて6時間攪拌した。反応終了後、デカンテーションにより上清を除いた。残渣を酢酸エチルで洗浄した。得られた粗生成物を水/メタノール/酢酸エチル系から再結晶することで淡赤白色固体として中間体2を得た。
【0079】
【化15】

【0080】
中間体3は、5−スルホー2,3,3−トリメチルインドレインおよび、2−ブロモプロピオンサンを用いて、中間体2と同様の方法によって合成した。
【0081】
【化16】

【0082】
中間体4は、5−スルホー2,3,3−トリメチルインドレインおよび、4−ブロモ―n―酪酸を用いて、中間体2と同様の方法によって合成した。
【0083】
【化17】

【0084】
5−スルホー2,3,3−トリメチルインドレイン(1当量)、2−ブロモエチルホスホン酸ジエチル(1.1当量)、およびトリエチルアミン(1.5当量)をトルエン中、135℃にて6時間攪拌した。反応終了後、溶媒を減圧下において留去した粗生成物に6N塩酸を加え、24時間還流した。反応終了後、溶媒を減圧下において留去することで赤色オイルとして中間体5を含む粗生成物を得た。
【0085】
【化18】

【0086】
5−スルホー2,3,3−トリメチルインドレイン(1当量)、3−ブロモプロピルホスホン酸ジエチル(1.1当量)、およびトリエチルアミン(1.5当量)をトルエン中、135℃にて6時間攪拌した。反応終了後、溶媒を減圧下において留去した粗生成物に6N塩酸を加え、24時間還流した。反応終了後、溶媒を減圧下において留去することで赤色オイルとして中間体5を含む粗生成物を得た。
【0087】
【化19】

【0088】
中間体7は、非特許文献(Bioconjugate Chem. 18, 2178-2190 (2007))に記載の方法に従い合成した。
具体的には、4−ブロモフェニルヒドラジン1塩酸塩および3−メチル−2−ブタノンをエタノールに溶解し、得られた溶液に濃硫酸を滴下後、6時間攪拌しながら還流した。反応終了後、溶液を減圧下で濃縮し、水酸化ナトリウム溶液にてpH8とした後に酢酸エチルにて油層を抽出した。油層を飽和食塩水にて洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)によって精製し、褐色液体として中間体7を得た。MS(ESI+) 238 [M+1]+
【0089】
【化20】

【0090】
中間体7(1当量)、ジエチルホスホネート(1.1当量)、トリエチルアミン(1.1当量)、およびテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0.06当量)をトルエンに加えた溶液を窒素雰囲気下、95℃で6時間攪拌した。反応終了後、大過剰の酢酸エチルを加えることで生じた沈殿を濾過により除去した後に溶媒を留去した。得られた中間体8をアセトニトリルに溶解した後に、トリメチルシリルブロマイド(6当量)を加え、室温で5時間攪拌した。減圧下にて余剰のトリメチルシリルブロマイドおよび溶媒を留去した後、アセトニトリル:水=2:1溶液を加え、室温にて12時間攪拌した。減圧下で溶媒を留去することで得られた粗生成物にメタノールを添加することで生じた不溶物を濾過により除き、濾液に酢酸エチルを加えることで分離したオイルを分液操作により回収、減圧下において乾燥することで、中間体9を得た。
中間体9:1H NMR (300MHz, MeOD) δ1.50 (s, 6H), 3.34 (s, 3H), 7.72-7.98 (m, 1H), 7.85-7.99 (m, 2H)、MS(ESI+) 240 [M+1]+
【0091】
【化21】

【0092】
中間体9にDMAcおよびトリエチルアミン(1当量)を加えた溶液を室温に保ちながら、2−クロロエタンスルホニルクロリド(3当量)を滴下した。室温にて4時間攪拌の後、1N水酸化ナトリウム水溶液を加えた。室温にて1時間攪拌した後、溶液を大過剰のアセトンに滴下することで得られたオイルを分液操作にて回収。再度、メタノールに溶解した後に、アセトンに滴下することで沈殿してきた粉末を濾取することで、中間体10を得た。MS(ESI+) 348 [M+1]+
【0093】
【化22】

【0094】
中間体9の合成と同様の方法により得た中間体10と、2−ブロモプロピオンサンを用いて、中間体2と同様の方法によって合成した。MS(ESI+) 312 [M+1]+
【0095】
【化23】

【0096】
中間体9の合成と同様の方法により得た中間体10と、4−ブロモ―n―酪酸を用いて、中間体2と同様の方法によって合成した。
【0097】
【化24】

【0098】
3−フェニルピリジン(1当量)、2−クロロベンゾチアゾール(2当量)をDMAc中、100℃で3時間攪拌した。反応終了後、アセトンを加え、固体を濾取することで中間体15を得た。
【0099】
以下に示す、ジアニル化合物は特許文献(特表2008-526802号公報)記載の方法により入手または合成した。
【0100】
【化25】

【0101】
以下に示す化合物およびその塩、上記のヘテロ4級塩化合物およびジアニル化合物またはベンゾチアゾール化合物を用いて、例えば下記に示される方法によって製造された。
公知または公知の合成法または上記の合成法により合成されるヘテロ4級塩化合物(5mmol)を、メタノール溶媒中、トリエチルアミン(25mmol)および無水酢酸(45mmol)存在下、公知または公知の合成法または上記の合成法により合成されるジアニル化合物(10mmol)またはベンゾチアゾール化合物(10mmol)と室温にて4時間攪拌する。反応混合物に酢酸ナトリウム(33mmol)を加え、室温で30分攪拌する。生成した結晶を濾取し、メタノールで洗浄する。逆相薄相クロマトグラフィーにて目的物以外の生成物の存在を確認した場合は、展開溶媒にメタノールを用いたサイズ排除クロマトグラフィーや、展開溶媒に水・メタノール混合溶媒を用いた逆相クロマトグラフィーによる精製を行うことにより製造できる。
【0102】
HPLCによる分析条件は以下のとおりである。
HPLC条件カラム:東ソ−TSKgel ODS-100V、150×4.6mm
カラム温度:40 ℃
流速:1.0 mL/min
溶離剤:A)水/酢酸/トリエチルアミン(100/0.1/0.1)、B)アセトニトリル/酢酸/トリエチルアミン(100/0.1/0.1)
グラジエント:0−100%B(0―30分)
検出:254nmおよび780nmでの吸光度
【0103】
化合物4:中間体2と中間体16から上記の方法に従って合成した。
1H NMR (400MHz, D2O) δ1.68 (s, 12H), 4.60 (s, 4H), 6.11 (d, 2H), 6.54 (dd, 2H), 7.33 (d, 2H), 7.49 (dd, 1H), 7.74-7.92 (m,6H) 、HPLC 10.7min、λmax=744nm

化合物5:中間体2と中間体17から上記の方法に従って合成した。
化合物5:
1H NMR (400MHz, D2O) δ1.68 (s, 12H), 2.30 (s, 3H), 4.60 (s, 4H), 6.25 (d, 2H), 6.54 (dd, 2H), 7.25 (d, 2H), 7.74-7.92 (m,6H) HPLC 12.2min、λmax=759nm
化合物6:中間体4と中間体16から上記の方法に従って合成した。
化合物6:
1H NMR (400MHz, D2O) δ1.60 (s, 12H), 1.90-2.05 (m, 8H), 2.90 (s, 4H), 4.60 (s, 4H), 6.11 (d, 2H), 6.54 (dd, 2H), 7.33 (d, 2H), 7.49 (dd, 1H), 7.74-7.92 (m,6H), λmax=759nm
化合物7:中間体4と中間体17から上記の方法に従って合成した。
1H NMR (400MHz, D2O) δ1.65 (s, 12H) , 1.90-2.20 (m, 8H), 2.90 (s, 4H), 4.60 (s, 4H), 6.11 (d, 2H), 6.54 (dd, 2H), 7.33 (d, 2H), 7.49 (dd, 1H), 7.74-7.92 (m,6H),λmax=752nm
化合物8: 中間体2と中間体15から上記の方法に従って合成した。
1H NMR (400MHz, D2O) δ1.21 (s, 12H), 4.58 (s, 4H), 6.15 (d, 2H), 6.68 (d, 2H), 6.85-6.95 (m, 2H), 7.10 (d, 2H), 7.28 (dd, 2H), 7.46-7.56 (m, 3H), 7.65-7.72 (m, 4H)、MS(ESI+) 733 [M+1]+、HPLC 12.4min、λmax=785nm
化合物9: 中間体5と中間体16から上記の方法に従って合成した。
1H NMR (400MHz, D2O) δ1.60 (s, 12H), 2.07 (m, 4H), 4.28-4.33 (m, 4H), 6.27 (d, 2H), 6.57 (dd, 2H), 6.33 (d, 2H), 7.45 (dd, 1H), 7.74-7.88 (m,6H)、MS(ESI+) 758 [M+1]+ 、HPLC 10.3min、λmax=773nm
化合物10:
中間体6と中間体16から上記の方法に従って合成した。
1H NMR (400MHz, D2O)δ1.23 (s, 12H), 1.7-1.9 (m, 4H), 3.2-3.4 (m, 4H), 4.0-4.2 (m, 4H) , 6.27 (d, 2H), 6.57 (dd, 2H), 6.33 (d, 2H), 7.45 (dd, 1H), 7.74-7.88 (m,6H) 、HPLC 10.5min、λmax=775nm
【0104】
化合物11: 中間体5と中間体15から上記の方法に従って合成した。
1H NMR (400MHz, D2O) δ1.07 (s, 12H), 1.92-2.10 (m, 4H), 4.15-4.28 (m, 4H), 6.40 (d, 2H), 6.69 (dd, 2H), 7.19 (dd, 2H), 7.45-7.57 (m, 5H), 7.58-7.69 (m, 6H) 、HPLC 13.6min、λmax=786nm
化合物12: 中間体6と中間体15から上記の方法に従って合成した。
1H NMR (400MHz, D2O) δ1.23 (s, 12H), 1.7-1.9 (m, 4H), 3.2-3.4 (m, 4H), 4.0-4.2 (m, 4H), 6.26-6.44 (m, 4H), 6.74-6.84 (m, 2H), 7.15-7.71 (m, 13H) 、HPLC 12.8min、λmax=783nm
化合物13: 中間体11と中間体16から上記の方法に従って合成した。
1H NMR (400MHz, D2O) δ1.59 (s, 12H), 2.61 (t, 4H), 4.20-4.40 (m, 4H), 6.26 (d, 2H), 6.53 (dd, 2H), 7.254 (d, 2H), 7.45 (dd, 1H), 7.55-7.95 (m, 6H) 、λmax=781nm
化合物14: 中間体10と中間体16から上記の方法に従って合成した。
1H NMR (300MHz, D2O) δ1.64 (s, 12H), 3.35 (t, 4H), 4.43 (t, 4H), 6.30 (d, 2H), 6.53-6.66 (m, 2H), 7.26-7.33 (m, 2H), 7.45-7.59 (m, 1H), 7.64-7.79 (m, 4H), 7.86-7.99 (m, 2H) 、HPLC 11.0min、λmax=776nm
化合物15: 中間体10と中間体15から上記の方法に従って合成した。
1H NMR (400MHz, D2O) δ1.33 (s, 12H), 3.15-3.22 (m, 4H), 4.38-4.45 (m, 4H), 6.48 (dd, 2H), 6.83 (d, 2H), 7.30-7.39 (m, 4H), 7.47 (dd, 2H), 7.61-7.69 (m, 3H), 7.73 (dd, 2H), 7.78-7.86 (m, 4H) 、HPLC 10.8min、λmax=788nm
化合物16:中間体11と中間体15から上記の方法に従って合成した。
1H NMR (400MHz, D2O)δ1.32 (s, 12H), 2.65-2.73 (m, 4H), 4.29-4.41 (m, 4H), 6.44 (dd, 2H), 6.79 (d, 2H), 7.26-7.37 (m, 4H), 7.47 (dd, 2H), 7.61-7.69 (m, 3H), 7.70-7.85 (m, 4H) 、λmax=792nm
化合物17:中間体11と中間体17から上記の方法に従って合成した。
1H NMR (400MHz, D2O)δ1.75 (s, 12H), 2.38 (s, 3H), 3.65 (t, 4H), 4.34 (t, 4H), 6.43 (dd, 2H), 6.64 (d, 2H), 7.33 (dd, 2H), 7.84 (dd, 4H), 8.08 (dd, 2H) 、λmax=791nm
化合物18:中間体10と中間体17から上記の方法に従って合成した。
1H NMR (400MHz, D2O)δ1.72 (s, 12H), 2.40 (s, 3H), 3.23 (t, 4H), 4.46 (t, 4H), 6.43 (dd, 2H), 6.68 (d, 2H), 7.31 (dd, 2H), 7.87 (dd, 4H), 8.10 (dd, 2H) 、λmax=789nm
化合物19: 中間体11と中間体18から上記の方法に従って合成した。
1H NMR (400MHz, D2O)δ1.32 (s, 12H), 2.65-2.73 (m, 4H), 4.29-4.41 (m, 4H), 6.44 (dd, 2H), 6.79 (d, 2H), 7.26-7.37 (m, 4H), 7.47 (dd, 2H), 7.61-7.69 (m, 3H), 7.70-7.85 (m, 4H) 、λmax=813nm
【0105】
以下の化合物Aを中間体1と中間体16から上記の方法に従い調製し比較化合物として用いた。
また、以下の化合物B(SF-64)を中間体1と中間体17から特許3507060号の段落「0058」に記載されているように合成し、比較化合物として用いた。
【0106】
【化26】

【0107】
試験例1
超遠心法による血清タンパク結合率試験
被験物質をcalf serumに5μg/mLとなるように溶解し、37℃で20分間振とうした後、NaBrを用いた密度勾配遠心(1000000×g, 24h)を行った。遠心後、アルブミン、リポタンパク分画および残りの分画中に含まれる色素濃度をHPLCにより定量した。結果を表1に示す。
【0108】
【表1】

【0109】
表1より、本発明の化合物を含む一般式(I)で表される構造を有する本発明の化合物は、血液中のタンパク成分のうち、特にアルブミンに対して高い結合率を有することが明らかである。また、ICGのように水溶性に劣る化合物は、主に血液中のタンパク成分のうちリポタンパク質に結合することも明らかである。
【0110】
試験例2
平衡透析法による血漿タンパク結合性試験
化合物の血漿タンパク質結合を、平衡透析法(W. Lindner et al, J.Chromatography, 1996, 677, 1-28 )により測定した。被験物質を蒸留水に対して200uMとなるように溶解した溶液をマウス、イヌ、ウサギ、サルまたは、ヒトの血漿に最終濃度が5μMとなるようにそれぞれ添加した。該溶液300uLおよび、PBS溶液500uLを平衡透析ユニットRED device(Pierce Biotechnology)の各透析セルに添加した後、37℃、100rpmの速さで振とうした。4時間後、血漿および緩衝液試料を採取し、それぞれの蛍光強度をEnVision(GE社)を用いて分析し、検量線から濃度を算出した後に血漿中の遊離濃度%を算出した。結果を表2及び表3に示す。
【0111】
【表2】

【0112】
【表3】

【0113】
表2及び3より、一般式(I)で表される本発明の化合物は、SF-64に比較して動物種間での血漿タンパク結合率に差がないことがわかる。また、表3の化合物Aと15の標準偏差値の比較より、X基をスルホン酸からホスホン酸に置換すること、及び、表3の化合物A, 4, 6, 9, 10の標準偏差値の比較より、一般式(I)で表される化合物におけるR7基及びR8基に置換される酸基をスルホン酸からカルボン酸、更にはホスホン酸へと置換することが、動物種間での血漿タンパク結合率の差を小さくする傾向があることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される化合物又はその医薬上許容しうる塩:
【化1】

式中、Xはスルホン酸基又はホスホン酸基を示し;R1とR2はそれぞれ独立に置換基を表し;R3〜R6は同一又は異なって、それぞれ置換基を有していてもよいアルキル基を表し;R7及びR8はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基を表し;L1〜L3は同一又は異なって、それぞれ置換基を有していてもよいメチン基を表し、rは0〜3の整数を表し、rが2以上の場合に複数存在するL2及びL3は同一でも異なっていてもよく;m,nはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し;上記置換基には一つ以上の、スルホン酸基、カルボン酸基及びホスホン酸基からなる群より選択される酸基又は該酸基を含む基が含まれ、かつ、前記酸基及びXのうち2つ以上はカルボン酸基またはホスホン酸基である。
【請求項2】
下記一般式(II)で表される請求項1に記載の化合物又はその医薬上許容しうる塩:
【化2】

式中、
10及びR11は同一又は異なって、カルボン酸基、スルホン酸基、又はホスホン酸基で置換されているアルキル基を表し;R9は、水素、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、ヘテロ環基、アシルアミノ基、アリールアミノ基、N−アリール−N−アルキルアミノ基、アリールチオ基、アリールオキシ基、又はアシルアミノアリールオキシ基を表す。
【請求項3】
9が水素原子、メチル基、又はフェニル基である、メチル、エチル、アリールである請求項2に記載の化合物又はその医薬上許容しうる塩。
【請求項4】
10及びR11が、いずれもスルホン酸基又はホスホン酸基で置換されているアルキル基である請求項2又は3に記載の化合物又はその医薬上許容しうる塩。
【請求項5】
10及びR11が、いずれもホスホン酸基で置換されているアルキル基である請求項2又は3に記載の化合物又はその医薬上許容しうる塩。
【請求項6】
Xがスルホン酸基である請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬上許容しうる塩。
【請求項7】
カルボン酸基、スルホン酸基、又はホスホン酸基の1つ以上がナトリウムイオンと塩を形成している請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬上許容しうる塩。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬上許容しうる塩を含む近赤外蛍光造影剤。
【請求項9】
腫瘍の造影に用いられる請求項8に記載の近赤外蛍光造影剤。
【請求項10】
SPARCが高発現している癌種の造影に用いられる請求項9に記載の近赤外蛍光造影剤。
【請求項11】
口腔、咽頭、消化器、呼吸器、骨および間接、軟組織、皮膚、乳房、生殖系、泌尿器系、眼および眼窩、脳及び中枢神経又は内分泌系に発生する腫瘍の造影に用いられる請求項9又は10に記載の近赤外蛍光造影剤。

【公開番号】特開2011−46662(P2011−46662A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197726(P2009−197726)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】