説明

送り機構およびミシン

【課題】ミシン10でプリーツ地700にシークイン103を縫着する。
【解決手段】ミシン10においてプリーツ地700を搬送する送り機構100であって、プリーツ地700を支持する支持面310を有する針板300と、針板300から上方に周期的に突出して、針板300に支持されたプリーツ地700を移動させる送り歯400と、針落ち位置の周囲において、プリーツ地700を送り歯400に対して上方から押し付ける押さえ金500とを備え、針板300は、プリーツ地700の下面から内側に当接して山部702を針落ち位置に案内する案内リブ330を有して、送り歯400は、案内リブ330の延在方向および針落ち位置を含む直線上であって、針落ち位置の下流側において、案内リブ330と同じかそれよりも高い位置まで上昇する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は送り機構およびミシンに関する。より詳細には、ミシンにおいて被縫製物を移動させる送り機構と、それを備えたミシンとに関する。
【背景技術】
【0002】
ミシンは、単純な縫製以外に、刺繍、縁かがり、パイピング等の形成、ボタンの縫着等の多様な用途で用いられる。家庭用ミシンの多くはカム装置を内蔵してそれを切り替えることにより多様な用途に対応する。一方、工業用ミシンは、用途に応じた専用機が用いられる。また、一部の職業用ミシンは、アダプタを装着することにより単純縫製以外の用途に用いられる。
【0003】
下記の特許文献1および特許文献3には、シークインを縫着する専用ミシンとしてシークイン縫着装置が記載される。このような装置を用いることにより、シークインを様々なレイアウトで縫着することができる。また、下記の特許文献2および特許文献4には、シークインのサイズに合わせた適切な送り量でミシンにシークインを供給する供給装置が記載される。このような供給装置を直線縫いミシンに装着することにより、比較的軽微な設備投資でシークインをミシンで縫着できる。
【特許文献1】特開2005−052571号公報
【特許文献2】特開2006−110074号公報
【特許文献3】特開2006−346135号公報
【特許文献4】特開2007−014600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、ミシンによりシークインを縫着する装置が供給されている。しかしながら、シークインを縫着する対象となる被縫製物にも多くの種類がある。特に、平行な山部と谷部が交互に形成されたプリーツ地にシークインを縫着する場合、縫着位置はその山部とすることが求められる。
【0005】
即ち、プリーツ地は柔軟な伸縮性とそれにより誘起される風合いを特徴とする。このため、それ自体は柔軟性が低いシークインがプリーツ地の谷部に縫着された場合、シークインにより生地が変形して、生地の風合いが損なわれる。また、生地の谷部に入り込んだシークインは、生地の陰になって光学的な効果が低くなる。
【0006】
そこで、シークインをプリーツ地に縫着する場合はその山部に縫着することが好ましい。しかしながら、ミシンの送り機構にプリーツ地を装填した場合、当初は針落ち位置に山部が合わせて装填しても、シークインの縫着を繰り返してプリーツ地が送られるうちに、山部が針落ち位置がずれる場合がある。このため、プリーツ地にシークインを縫着する作業には作業者の技術に高い練度が求められる。従って、シークインを縫着された製品の生産性は低く、結果的に高価になる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決を目して、本発明の第1の形態として、平行な山部と谷部が交互に形成された被縫製物の山部に沿って薄片状装飾物を縫いつける場合に、当該被縫製物を周期的に搬送するミシンの送り機構であって、針落ち位置の周囲において被縫製物を下方から支持する上面を有する針板と、針板に形成された穴から上方に周期的に突出して、針板に支持された被縫製物を所定の搬送方向について上流側から下流側に向かって移動させる送り歯と、針落ち位置の周囲において、被縫製物を送り歯に対して上方から押し付ける押さえ金とを備え、針板は、針落ち位置よりも上流側において搬送方向に延在して、上面から隆起して被縫製物の下面から山部の内側に当接して、被縫製物の山部を針落ち位置に案内する案内リブを有し、送り歯は、案内リブの延在方向および針落ち位置を含む直線上であって、針落ち位置の下流側において、案内リブと同じかそれよりも高い位置まで上昇する送り機構が提供される。
【0008】
また、本発明の第2の形態として、平行な山部と谷部が交互に形成された被縫製物の山部に沿って薄片状装飾物を縫いつける場合に、当該被縫製物を周期的に搬送する送り機構と、針落ち位置に薄片状装飾物を繰り返し供給する供給装置と備えたミシンであって、送り機構は、針落ち位置の周囲において被縫製物を下方から支持する上面を有する針板と、針板に形成された穴から上方に周期的に突出して、針板に支持された被縫製物を所定の搬送方向について上流側から下流側に向かって移動させる送り歯と、針落ち位置の周囲において、被縫製物を送り歯に対して上方から押し付ける押さえ金とを備え、針板は、針落ち位置よりも上流側において搬送方向に延在して、上面から隆起して被縫製物の下面から山部の内側に当接して、被縫製物の山部を針落ち位置に案内する案内リブを有し、送り歯は、案内リブの延在方向および針落ち位置を含む直線上であって、針落ち位置の下流側において、案内リブと同じかそれよりも高い位置まで上昇することを特徴とするミシンが提供される。
【0009】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションも発明となり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明する。しかしながら、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【実施例1】
【0011】
図1は、ひとつの実施の形態に係るミシン10の外観を示す斜視図である。同図に示すように、このミシン10は、ジグザグ縫いのできるミシン本体11に対して、後述する送り機構100および供給装置200を装着して形成される。なお、このミシン10において、供給装置200は、リンク12を介してミシン本体11から駆動力を供給される。また、後述する被縫製物は、図中に矢印Pにより示す搬送方向に送られる。
【0012】
図2は、図1に示したミシン10によりシークイン103を縫着されたプリーツ地700の仕上がり状態を示す図である。同図に示すように、このプリーツ地700は、図中に矢印Xで示す方向に沿って2回の折り目加工を施された布地を、更に矢印Yで示す方向に沿って折り目加工した布地により形成される。このような加工により、矢印X方向に延在する折り目が折り畳まれた状態になり、矢印Yの方向に沿って交互に延在する、互いに平行な山部702および谷部704が目立つ風合いが形成される。
【0013】
プリーツ地700の山部702および谷部704の折り目は、それぞれ化学的あるいは物理的な処理により恒久的にその形状を維持する。一方、素材である布は柔軟な材料なので、全体としてはヤング率の低い柔軟性を有する。また、交互に向きの異なる面が連続するので、光が当たると独特の風合いを有する。
【0014】
上記のような多重の折り目加工されたプリーツ地700は、2次元的な高い伸縮性を有して、特に被服製品とした場合に、体型および寸法の相違に対して柔軟に対応する。また、通気性および保気性を共に有すると共に、皺が目立たない等、衣類の材料として高い性能を有する。ただし、プリーツ地700は2次元的な高い伸縮性を有するので、ミシン10を用いて縫着加工する場合には、プリーツ地700自体に応力を作用させることなく確実に搬送できる送り機構100(図3参照)が求められる。
【0015】
一方、シークイン103は、反射率が高い平坦な表面を有する薄片状装飾物であり、縫着時に糸を挿通する穴105を略中央に有する。このようなシークイン103は、光線が当たった場合にそれを反射して、一般に光の反射率が低い布に対して特異な印象をもたらす。ただし、反射率の高い表面性状を形成する目的で、シークイン103は樹脂等の硬質な材料で形成される。
【0016】
このように、シークイン103には柔軟性がないので、プリーツ地700に縫着する場合は、山部702の稜線に沿って縫着することが好ましい。その理由は、谷部704に縫着された場合、シークイン103がプリーツ地700を押し開いてしまい、プリーツ地700独特の風合いが損なわれるからである。また、プリーツ地700の山部702の陰になってシークイン103に当たる光量が低下するので、シークイン103を縫着した効果も低くなる。
【0017】
上記のような理由により、シークイン103をプリーツ地700に縫着する場合は、山部702の稜線に沿って一列に縫着される。換言すれば、シークイン103を縫着するミシンにおいては、プリーツ地700の山部702が針落ち位置を通過し続けることが求められる。
【0018】
図3は、ミシン10の送り機構100の周辺を拡大して示す斜視図である。同図に示すように、ミシン10に水平に装着された針板300と、その上方に配置された押さえ金500が送り機構100に含まれる。送り機構100に対して、供給装置200は側方から押さえ金500の上に差しかかるように配置される。
【0019】
この送り機構において、被縫製物は図上の右下から左上に、針板300の上面に沿って送り込まれる。送り込まれた被縫製物は、押さえ金500の押さえ足520により、針板300から上方に突出する送り歯400(図6参照)に押し付けられる。これにより、被縫製物は、歯部420の変位に応じて図上の左上方に間欠的に送られる。
【0020】
このような被縫製物に対して、供給装置200は、押さえ足520の上方でシークインを1チップずつ送り出す。送り出されたシークイン103は、押さえ金500の供給穴540を通じて下方を通過する被縫製物に対して縫着される。なお、各部材の詳細については、個別の図面を参照して後述する。
【0021】
図4は、供給装置200を単体で示す斜視図である。同図に示すように、供給装置200は、ミシン10から互いに平行に垂直に起立する一対のフレーム220、240を構造材として形成される。フレーム220の外側には作動レバー210が装着され、フレーム240の外側にはクラッチレバー270が装着される。
【0022】
一方、フレーム220、240の間には、シークイン103の穴105に係合してシークイン前進させる送り爪230と、シークイン103が1チップ送られる毎に残るシークインを係止するラッチ260とが配置される。また、供給装置200の前端には、送られたシークイン103が送り出される送り出し口280が開口すると共に、送り出し口280から送り出されたシークイン103を1チップ毎に切断するカッタ250が配置される。更に、供給装置200の後方には、シークイン103を装填または除去する場合に送り爪230およびラッチ260の係合を解く開放レバー232が配置される。
【0023】
上記のような供給装置200において、作動レバー210およびクラッチレバー270は、それぞれ一端を軸として回動する。作動レバー210は、ミシン本体11からリンクを介して引き上げられた場合に、その回動を送り爪230に伝達して、シークイン103を1チップ送り出す。また、シークイン103を送り出した後は、自律的に元の位置に復帰する。
【0024】
これに対して、クラッチレバー270は、倒された位置と起立した位置のいずれかに停まる。この実施形態に係る供給装置200では、クラッチレバー270が起立した位置にある場合は、作動レバー210と送り爪230との伝達が遮断され、ミシン本体11が動作した場合も供給装置200は休止する。
【0025】
図5は、送り機構100における針板300を単独で示す斜視図である。同図に示すように、針板300は、全体としては平坦な板状の部材であり、その上面を、被縫製物を支持する支持面310とする。
【0026】
また、その略中央に縫針800(図12参照)を挿通させる針穴338を有する。この針穴338の位置は、ミシン本体11の針落ち位置となる。なお、図5において、図上の右下側が被縫製物の搬送方向について上流側に当たる。従って、被縫製物は、図中の矢印Pにより示す搬送方向に送られる。
【0027】
また、針板300は、図3で押さえ金500の押さえ足520に隠れていた領域に、下面まで貫通した3列の送り歯道340、350、360を有する。送り歯道340、350、360からは、後述する送り歯400の歯部420(図6参照)が上昇する。なお、中央の送り歯道350は針穴338よりも下流側に位置するが、送り歯道350を挟む送り歯道340、360は、針穴338の上流側から下流側まで延在する。
【0028】
更に、針板300の長手方向上端および下端には、ネジ穴320が形成される。このネジ穴320に挿通されたネジにより、針板300はミシン本体11に装着される。換言すれば、既存の針板300と交換してミシン本体11に装着することもできる。
【0029】
また更に、針板300は、図上下側のネジ穴320の近傍に始まる案内リブ330を有する。案内リブ330は、針穴338を越えて、中央の送り歯道350の直前まで、送り歯道340、350、360に対して平行に延在する。これにより、案内リブ330、針穴338および送り歯道350の内部に突出する高送り歯424(図6参照)は、共通の直線上に一列に配列される。
【0030】
案内リブ330は、搬送方向Pについて上流側においてテーパ状の先端部332を有する。先端部332に続くリブ本体334は略一定の断面形状を維持するが、針穴338の近傍から、その幅が徐々に広くなる拡幅部336を形成する。
【0031】
なお、拡幅部336が十分な広さを有するので、針穴338の開口部は案内リブ330の側面に蹴られることがなく、円形の開口を有する。また、案内リブ330の拡幅部336の幅は、案内される被縫製物が、後述する高送り歯424の幅に円滑に案内される形状を有する。
【0032】
図6は、送り機構100における送り歯400を単独で示す斜視図である。同図に示すように、送り歯400は、先端が3つに分かれた歯部420と、歯部420を一体的に結合するフレーム430とを有する。フレーム430の一端には、この送り歯400をミシン本体11の内部機構に装着する場合に利用するネジ穴が設けられる。
【0033】
また、送り歯400において、歯部420の中央には、図13に示すように他よりも高い高送り歯424が形成される。高送り歯424よりも低い一対の低送り歯422、426が高送り歯424を挟んで配置される。
【0034】
図7および図8は、送り機構100における押さえ金500を単独で示す斜視図であり、相互に異なる角度から押さえ金500を見た様子を示す。同図に示すように、押さえ金500は、全体としてL字型の形状を有する。そのうち、垂直に起立した部分の中央にネジ穴510が形成される。これにより、ミシン本体11に装着される。
【0035】
また、押さえ金500の水平部分は、被縫製物を針板300に向かって押さえつける押さえ足520となる。その場合、押さえ足520の下面が、被縫製物に当接する押さえ面501となる。
【0036】
更に、押さえ足520の略中央には、シークイン103を通過させる寸法を有する供給穴540が形成される。また、被縫製物の搬送方向Pに向かって右側の、押さえ足520の側縁部には、供給装置200との干渉を避ける切欠き部530が形成される。
【0037】
図9は、押さえ金500を、押さえ足520の下面に形成された押さえ面501から見た様子を示す斜視図である。同図に示すように、押さえ面501は、全体としては単一の水平面をなすが、複数の溝を有する独特の形状を有する。なお、以下の説明においては、図中に矢印Pにより示す被縫製物の搬送方向について、上流側を前側、下流側を後側と記載する。
【0038】
押さえ面501の略中央には、供給穴540の下端が開口する。これに対して、押さえ金500の前端(図上では左下)から供給穴540までの間には、V字型の断面形状を有する短V溝550が形成される。短V溝550の前端は押さえ金500の前端に開口する。また、短V溝550の後端は供給穴540の内面に開口する。なお、押さえ金500の前端において作業者が目視できる位置には、短V溝550の位置を示す合いマーク522が形成される。
【0039】
一方、供給穴540の後側には、供給穴540から押さえ金500の後端までの間に、短広溝580が形成される。短広溝580は、その前端を供給穴540の内面に開口する。また、その後端を押さえ金500の後端に開口する。また、短広溝580は、供給穴540と略同じ幅を有する。これは、短広溝580が、縫着後のシークイン103を円滑に通過させることができる幅を有することを意味する。
【0040】
更に、短広溝580の前端近傍では、短広溝580の底面が供給穴540に向かって深くなり、供給穴540に対する後逃げ溝570を形成する。更に、押さえ金がミシン本体11に装着された場合には天面となる短広溝580の底面には、その全長にわたって、より深い短狭溝590が形成される。短狭溝590は、後述するように、シークイン103を縫着した糸810を通過させる広さを有する。
【0041】
また更に、押さえ面501には、供給穴540を挟んで長手方向に延在する一対の長広溝610、660が形成される。一方の長広溝660の底部には、短広溝580の底部の短短狭溝590と同じ断面形状を有する長狭溝560が形成される。これに対して、他方の長広溝610は、その側面が、押さえ足520の側面に開放される。これら長広溝610、660および長狭溝560は、被縫製物の搬送方向Pと平行に、押さえ面501の全長にわたって形成される。
【0042】
図10は、図5において矢印Aにより示す位置の断面により、送り機構100の各部の動作を模式的に示す断面図である。矢印Aが示す位置は、案内リブ330の先端部332を含む。
【0043】
同図に示すように、プリーツ地700を送り機構100に装填する場合は、プリーツ地700の山部702のひとつが合いマーク522と一致するように装填位置を調整する。これにより、山部702は、短V溝550および案内リブ330の先端部332に一致する位置に装填される。
【0044】
このとき、短V溝550に一致した山部702に隣接する他の山部702が、長狭溝560に一致する位置にある。このような状態で送り機構100を動作させることにより、低送り歯422、426の動作に応じて、プリーツ地700の送りが開始される。
【0045】
図11は、図5において矢印Bにより示す位置の断面により、送り機構100の各部の動作を模式的に示す断面図である。矢印Bが示す位置は、案内リブ330のリブ本体334を含む。
【0046】
同図に示すように、リブ本体334が存在する位置では、山部702の内面に下側から当接したリブ本体334によりプリーツ地700の山部702が押し上げられ、短V溝550の内部に押し込まれる。これにより、プリーツ地700が側方に変位することがなくなり、山部702は、案内リブ330および短V溝550に沿って送られる。
【0047】
これに伴い、隣接する山部702も、長狭溝560の内部を移動する。これにより、プリーツ地700の側方への変位がさらに抑止されると共に、プリーツ地700の変形が防止される。
【0048】
図12は、図5において矢印Cにより示す位置の断面により、送り機構100の各部の動作を模式的に示す断面図である。矢印Cが示す位置は、案内リブ330に形成された針穴338を含む。
【0049】
同図に示すように、針落ち位置に相当する針穴338を含む位置では、押さえ金500に供給穴540が開口する。従って、この位置では、供給穴540を介して、供給装置200から1チップのシークイン103が、プリーツ地700の山部702の上に供給される。更に、上方からは、縫針800が降下して、供給穴540、シークイン103の穴105および針穴338を順次貫通して、シークイン103を山部702に縫着する。
【0050】
このとき、プリーツ地700の上流側は、図11に示したように、案内リブ330、短V溝550および長狭溝560により位置決めされているので、針穴338の上には、山部702が確実に位置する。また、プリーツ地700は、低送り歯422、426によっても送られているので、パッカリングが生じることもない。
【0051】
図13は、図5において矢印Dにより示す位置の断面により、送り機構100の各部の動作を模式的に示す断面図である。矢印Dが示す位置は、歯部420の高送り歯424を含む。
【0052】
同図に示すように、針穴338よりも下流側には案内リブ330がない。しかしながら、案内リブ330と同じ高さか、それ以上に高い位置まで上昇する高送り歯424が、プリーツ地700の下面から山部702に当接する。これにより、山部702の位置でプリーツ地700が強く搬送される。なお、高送り歯424が降下した場合は、案内リブ330よりも低い位置まで降下する。これにより、プリーツ地700は円滑に送られる。
【0053】
また、プリーツ地700の山部702に縫着されたシークイン103は、押さえ面501に形成された短広溝580の内部を通過する。更に、シークイン103を縫いつけた糸810は、短広溝580の天面に形成された短狭溝590の内部を通過する。これにより、シークイン103を縫着されたプリーツ地700は、送り機構100の後方に円滑に送り出される。
【0054】
なお、図9に示した通り、押さえ金500の供給穴540の下流側には、後逃げ溝570が形成される。これにより、プリーツ地700に縫着されたシークイン103および糸810は、短広溝580および短狭溝590の内部に円滑に導入される。
【0055】
また、図5に示した通り、案内リブ330は、針穴338の近傍からその幅が徐々に広くなる拡幅部336を有する。これにより、プリーツ地700の山部702は、幅の広い高送り歯424に向かって円滑に誘導される。
【0056】
更に、プリーツ地700の谷部704は、依然として当接した低送り歯422、426により送られている。これにより、谷部704も山部702と等しく送られるので、プリーツ地700にパッカリング等が生じることもない。
【0057】
なお、上記の説明では、1列のシークイン103が縫着されるが、複数列のシークイン103が縫着される場合があることはいうまでもない。このような場合、シークイン103を縫着中の山部702に隣接する山部702に既に縫着されたシークイン103は、押さえ金500の押さえ面501に形成された長広溝610、660のいずれかの内部を通過するので、縫着済みのシークイン103は、送り機構の負荷に殆ど影響を与えない。
【0058】
なお、一方の長広溝610の天面が平坦であり、また、その側面が開放されているのは、シークイン103の供給装置200との干渉により、他方の長広溝660と同じ形状とするスペースがとれないからである。従って、供給装置200の仕様が許せば、一方の長広溝610は、他方の長広溝660と同じ断面形状を有することが好ましい。
【0059】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施の形態に係るミシン10の外観を示す斜視図である。
【図2】シークイン103を縫着されたプリーツ地700の外観を示す図である。
【図3】送り機構100の周辺を拡大して示す図である。
【図4】シークイン103の供給装置200を単体で示す斜視図である。
【図5】送り機構100における針板300を単独で示す斜視図である。
【図6】送り機構100における送り歯400を単独で示す斜視図である。
【図7】送り機構100における押さえ金500を単独で示す斜視図である。
【図8】押さえ金500を他の角度から見た様子を示す斜視図である。
【図9】押さえ金500を押さえ面501から見た様子を示す斜視図である。
【図10】案内リブ330の先端部332付近における送り機構100の動作を模式的に示す断面図である。
【図11】案内リブ330のリブ本体334付近における送り機構100の動作を模式的に示す断面図である。
【図12】針落ち位置における送り機構100の動作を模式的に示す断面図である。
【図13】高送り歯424付近における送り機構100の動作を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0061】
10 ミシン、11 ミシン本体、100 送り機構、103 シークイン、105 穴、200 供給装置、210 作動レバー、220、240、430 フレーム、230 送り爪、232 開放レバー、250 カッタ、260 ラッチ、270 クラッチレバー、280 送り出し口、300 針板、310 支持面、320、410、510 ネジ穴、330 案内リブ、332 先端部、334 リブ本体、336 拡幅部、338 針穴、340、350、360 送り歯道、400 送り歯、420 歯部、422、426 低送り歯、424 高送り歯、500 押さえ金、501 押さえ面、520 押さえ足、522 合いマーク、530 切欠き部、540 供給穴、550 短V溝、560 長狭溝、570 後逃げ溝、580 広溝、590 短狭溝、610、660 長広溝、700 プリーツ地、702 山部、704 谷部、800 縫針、810 糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行な山部と谷部が交互に形成された被縫製物の前記山部に沿って薄片状装飾物を縫いつける場合に当該被縫製物を周期的に搬送する、ミシンの送り機構であって、
針落ち位置の周囲において被縫製物を下方から支持する上面を有する針板と、
前記針板に形成された穴から上方に周期的に突出して、前記針板に支持された前記被縫製物を所定の搬送方向について上流側から下流側に向かって移動させる送り歯と、
針落ち位置の周囲において、前記被縫製物を前記送り歯に対して上方から押し付ける押さえ金と
を備え、
前記針板は、針落ち位置よりも上流側において前記搬送方向に延在して、前記上面から隆起して前記被縫製物の下面から前記山部の内側に当接して、前記被縫製物の前記山部を針落ち位置に案内する案内リブを有し、
前記送り歯は、前記案内リブの延在方向および針落ち位置を含む直線上であって、針落ち位置の下流側において、前記案内リブと同じかそれよりも高い位置まで上昇する
送り機構。
【請求項2】
前記針板は、前記案内リブの下流側の端部近傍において前記案内リブの頂面に開口して前記針板を貫通する針穴を有する請求項1に記載の送り機構。
【請求項3】
前記針穴は、前記案内リブの前記頂面において円形をなす開口を有する請求項2に記載の送り機構。
【請求項4】
前記案内リブは、前記搬送方向と直交する方向の幅が下流側へ行くほど広い請求項1に記載の送り機構。
【請求項5】
前記案内リブは、前記搬送方向について上流側の端部において前記針板の前記上面から連続的に隆起する請求項1に記載の送り機構。
【請求項6】
前記送り歯は、
前記搬送方向に沿って前記案内リブの下流側に配列された高送り歯と、
前記搬送方向と直交する方向について前記高送り歯の側方に配置され、前記案内リブの頂面よりも低い位置で、前記高送り歯と同期して前記被縫製物を押し上げる低送り歯と
を含む請求項1に記載の送り機構。
【請求項7】
前記低送り歯は、前記搬送方向について針落ち位置よりも上流側まで延在する請求項6に記載の送り機構。
【請求項8】
前記低送り歯は、前記被縫製物の下面から、当該被縫製物の谷部に当接する請求項6に記載の送り機構。
【請求項9】
前記押さえ金は、針落ち位置において、針と共に前記薄片状装飾物を通過させる供給穴を有する請求項1に記載の送り機構。
【請求項10】
前記押さえ金は、前記被縫製物に縫着された前記薄片状装飾物と同じ幅を有し、前記供給穴から連続して形成された後逃げ溝を底面に有する請求項9に記載の送り機構。
【請求項11】
前記押さえ金は、前記搬送方向について前記供給穴よりも上流側において、当該押さえ金の上流側端面から前記供給穴まで、前記搬送方向に連続して、前記案内リブに対向して形成され、前記被縫製物の前記山部を案内する短V溝を底面に有する請求項9に記載の送り機構。
【請求項12】
前記押さえ金は、作業者が目視できる領域に、前記短V溝の位置を示すマークを有する請求項11に記載の送り機構。
【請求項13】
前記押さえ金は、針落ち位置よりも前記搬送方向について下流側に、前記供給穴から当該押さえ金の後端まで連続して、前記被縫製物に縫着された前記薄片状装飾物を通過させる広さを有する広溝を、底面に有する請求項9に記載の送り機構。
【請求項14】
前記押さえ金は、針落ち位置よりも前記搬送方向について下流側に、前記供給穴から当該押さえ金の後端まで連続して、前記薄片状装飾物を前記被縫製物に縫着する糸を通過させる狭溝を、前記広溝の天面に有する請求項13に記載の送り機構。
【請求項15】
前記押さえ金は、前記被縫製物の搬送方向と平行に、前記押さえ金の全長にわたって形成されて、前記被縫製物の前記山部に当接して、前記被縫製物の前記山部の移動方向を案内する長V溝を有する請求項1に記載の送り機構。
【請求項16】
平行な山部と谷部が交互に形成された被縫製物の前記山部に沿って薄片状装飾物を縫いつける場合に、当該被縫製物を周期的に搬送する送り機構と、
針落ち位置に薄片状装飾物を繰り返し供給する供給装置と
を備えたミシンであって、
前記送り機構は、
針落ち位置の周囲において被縫製物を下方から支持する上面を有する針板と、
前記針板に形成された穴から上方に周期的に突出して、前記針板に支持された前記被縫製物を所定の搬送方向について上流側から下流側に向かって移動させる送り歯と、
針落ち位置の周囲において、前記被縫製物を前記送り歯に対して上方から押し付ける押さえ金と
を備え、
前記針板は、針落ち位置よりも上流側において前記搬送方向に延在して、前記上面から隆起して前記被縫製物の下面から前記山部の内側に当接して、前記被縫製物の前記山部を針落ち位置に案内する案内リブを有し、
前記送り歯は、前記案内リブの延在方向および針落ち位置を含む直線上であって、針落ち位置の下流側において、前記案内リブと同じかそれよりも高い位置まで上昇する
ことを特徴とするミシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−39220(P2009−39220A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−205796(P2007−205796)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(501348449)株式会社スペッチオ (2)
【Fターム(参考)】