説明

送信装置、受信装置および通信システム

【課題】生産時における周波数の調整が容易であり、周波数安定性および出力安定性の高い送信装置、受信装置および通信システムを提供する。
【解決手段】送信装置100において、第1の周波数逓倍部151は、第1の局部発振信号S23の周波数をM逓倍した第1の逓倍信号S91を生成する。第1のアップコンバート部140は、第1の局部発振信号S23を用いて入力信号S10をアップコンバートすることによって第1の中間周波数帯信号S21,S22を生成する。合成器125は、第1の中間周波数帯信号S21,S22と第1の局部発振信号S23とを合成した第1の合成信号S20を生成する。第2のアップコンバート部160は、第1の逓倍信号S91を用いて第1の合成信号S20をアップコンバートすることによってミリ波帯の送信信号S30を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、送信装置、受信装置および通信システムに関し、特にミリ波帯の無線通信に使用される送信装置、受信装置および通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信の大容量化に伴い、様々なブロードバンドの無線通信システムが提案されてきている。その中で、放送や通信の分野では、特に準ミリ波からミリ波帯の無線通信が注目されている。ミリ波はビームを鋭く絞ることができるので、軌道上に並んだ衛星間や地上の通信装置間での混信を防ぐことができる。さらには、特定の見通しエリアに対して、反射や混信の影響を小さくして確実に電波を送ることができる。なお、ミリ波の周波数帯域は、概ね30GHz〜300GHz(波長1cm〜1mm)とされ、準ミリ波の周波数帯域は、概ね3GHz〜30GHz(波長10cm〜1cm)とされており、いずれもマイクロ波帯に含まれる。
【0003】
以下、準ミリ波からミリ波帯の無線通信システムの一例として、特開2003−258655号公報(特許文献1)に開示された無線送信機および無線受信機の構成について説明する。
【0004】
図21は、従来の送信装置1000および受信装置1500の構成を示すブロック図である。図21(A)は、特開2003−258655号公報(特許文献1)の図4に相当する送信装置1000の構成を示す図であり、図21(B)は、同文献の図8に相当する受信装置1500の構成を示す図であり、図21(C)は、同文献の図3に相当する無線信号2000の周波数配置を示す図である。
【0005】
図21(A)を参照して、送信装置1000は、入力部1100、第1のアップコンバート部1200、第2のアップコンバート部1300、および送信アンテナ1400により構成されている。
【0006】
第1のアップコンバート部1200は、入力される変調波信号を中間周波数(IF:Intermediate Frequency)に周波数変換する部分であり、周波数ミキサ1201、フィルタ1202、電力合成器1203、増幅器1204、電力分配器1205、基準信号源1206、および減衰器1207を備えている。
【0007】
第1のアップコンバート部1200には、第1のIF信号IF1が入力される。この信号IF1は、例えば、直交マルチキャリア変調方式(OFDM変調方式)等で変調された変調波信号である。
【0008】
周波数ミキサ1201は、入力された信号IF1と、基準信号源1206から出力された第1の局部発振(LO:Locally Oscillated)信号(fLO1)とを乗積する。周波数ミキサ1201の直後に設けられたフィルタ1202は、周波数ミキサ1201の出力信号のうち上側波帯の信号(fRF1)を通過選択させる。
【0009】
電力分配器1205は、基準信号源1206が出力した信号(fLO1)の一部を分配している。減衰器1207は、分配された一部の信号のレベルを調整する。
【0010】
減衰器1207から出力された信号(fLO1)は、電力合成器1203で、信号(fRF1)と合流する。これにより、送信機への入力変調波信号から中間周波数信号に変換された信号(fRF1)と基準信号となる信号(fLO1)とが重畳された中間周波数多重信号が生成される。この中間周波数多重信号が、増幅器1204により増幅され、増幅された中間周波数多重信号が、第2のIF信号IF2(fLO1、fRF1)として、第2のアップコンバート部1300に出力される。
【0011】
第2のアップコンバート部1300は、入力された信号IF2をミリ波帯に周波数変換する部分であり、周波数ミキサ1301、フィルタ1302、増幅器1303、および局部発振器1304を備えている。
【0012】
第2のアップコンバート部1300に、第1のアップコンバート部1200から出力された信号IF2が入力されると、周波数ミキサ1301は、信号(fRF1)および信号(fLO1)を含む中間周波数多重波信号と、局部発振器1304から出力された第2のLO信号(fLO2)とを乗積し、ミリ波帯へのアップコンバートを行なう。
【0013】
次いで、周波数ミキサ1301の直後に設けられたフィルタ1302が、アップコンバートされた無線多重信号に対して、所望の周波数のみの無線多重信号を通過させる。これにより、図21(C)に示すように、無線変調信号成分(fRF1+fLO2)と、無線基準信号成分(fLO1+fLO2)とを含む無線多重波信号が生成される。この無線多重波信号が、増幅器1303により増幅され、増幅された無線多重波信号2000が送信アンテナ1400から放射される。
【0014】
次に、図21(B)を参照して、図21(A)の送信装置1000から送信された無線多重波信号2000を受信する受信装置1500について説明する。受信装置1500は、受信アンテナ1600、第1のダウンコンバート部1700、および第2のダウンコンバート部1800により構成されている。
【0015】
受信アンテナ1600は、送信装置1000の送信アンテナ1400から送られてきた、基準信号成分(fLO1+fLO2)および無線変調信号成分(fRF1+fLO2)から成る無線多重波信号2000を受信する。
【0016】
第1のダウンコンバート部1700は、入力される無線多重波信号を中間周波数信号に周波数変換する部分であり、フィルタ1701、増幅器1702、周波数ミキサ1703、増幅器1704、および局部発振器1705を備えている。
【0017】
フィルタ1701は必要な信号を通過させる。フィルタ1701を通過した信号は増幅器1702によって増幅される。次いで、周波数ミキサ1703は、局部発振器1705からの信号(fLO2)で、第1の周波数変換を行なう。すなわち、基準信号成分(fLO1+fLO2)と無線変調信号成分(fRF1+fLO2)とは、中間周波数多重波信号である第2のIF信号IF2(すなわちfLO1、fRF1)にダウンコンバートされる。この第2のIF信号IF2が、増幅器1704により増幅され、増幅された信号IF2が第2のダウンコンバート部1800に出力される。
【0018】
第2のダウンコンバート部1800は、入力される第2のIF信号IF2を第1のIF信号IF1に周波数変換する部分であり、分配器1801、フィルタ1802、フィルタ1803、周波数ミキサ1804、増幅器1805、および出力部1806を備えている。
【0019】
第2のダウンコンバート部1800に、第2のIF信号IF2が入力されると、該信号は分配器1801で分配される。分配された一方の信号は、信号(fRF1)のみが通過できるフィルタ1802を介して、周波数ミキサ1804に入力される。他方の信号は、信号(fLO1)のみを抽出するフィルタ1803を通過し、増幅器1805によって増幅された後、周波数ミキサ1804に入力される。
【0020】
周波数ミキサ1804は、信号(fRF1)と信号(fLO1)とを乗積する。これにより、信号(fRF1)がダウンコンバートされ、第1のIF信号IF1に復調される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2003−258655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかしながら、上記従来の送信装置1000および受信装置1500は、以下のような問題点を有している。
【0023】
第1の問題点として、送信装置1000から漏洩した局部発振信号が、受信装置1500でダウンコンバートされた信号と混信してしまうという点が挙げられる。この問題は近距離通信の場合に顕著であり、具体的には次のような理由による。
【0024】
従来装置では、送信装置1000の局部発振周波数fLO2と受信装置1500の局部発振周波数fLO2が同一の周波数であるために、第1のダウンコンバート部1700の出力信号の周波数IF2(fLO1,fRF1)が、送信装置1000の第1のアップコンバート部1200における局部発振周波数fLO1と同一の周波数になってしまう。このため、送信装置からの漏れ信号fLO1,fLO2が、スプリアス信号として放射された場合に、受信機側の局部発振信号fLO2によってダウンコンバートされた信号fLO1と混信が生じてしまう。スプリアス信号によるfLO2,fLO1は、受信機側のfLO2によってダウンコンバートされた信号fLO1とは、位相が異なる妨害波であるからである。この結果、第2のダウンコンバート部1800で、入力信号(fIF1)の復調・再生が困難となってしまう。
【0025】
第2の問題点として、送信装置1000および受信装置1500に設けられた局部発振器1304,1705は、準ミリ波帯からミリ波帯の信号を発振するために周波数や出力が不安定であるという点が挙げられる。準ミリ波帯からミリ波帯の局部発振器では、発振周波数が高いため共振器のQ値が小さくなり、温度に対する周波数安定性及び発振出力の安定性が悪くなる。特に、受信装置1500において信号fLO1のみを通過させるフィルタ1803は狭帯域特性の急峻性が要求されるが、局部発振周波数fLO2でダウンコンバートされて生成された信号fLO1の周波数は、不安定であるためにフィルタ1803の帯域からずれてしまい、第2のダウンコンバートが困難になってしまう。ミリ波帯の局部発振器は、上記Q値の課題のみならず、マイクロ波トランジスタの小さい利得の領域で正帰還かけて発振していることもあり、温度依存性が大きく、高温時に送信出力および受信出力が低下してしまう、または、発振停止し、出力が出てこないという問題もある。
【0026】
第3の問題点として、送信装置1000に設けられた基準信号源1206および局部発振器1304の発振周波数、ならびに受信装置1500に設けられた局部発振器1705の発振周波数の全てを所定の周波数に調整する必要があるので、それらの調整が困難であるという点が挙げられる。
【0027】
具体的に説明すると、送信装置1000では、基準信号源1206の発振周波数fLO1と、局部発振器1304の発振周波数fLO2の2つの周波数によって、無線周波数が決定される。このため、送信装置1000の生産時においては、2つの周波数fLO1およびfLO2を調整する必要があり、これらの周波数を、所定の決められた無線周波数に調整することは、時間かかるうえに精度よく決定することは困難である。
【0028】
受信装置1500では、局部発振器1705の発振周波数fLO2は、20GHz以上の準ミリ波〜ミリ波周波数であり、所定の周波数内に調整することは難しい。特に、上記の従来の送信装置1000および受信装置1500の場合には、送信側の局部発振周波数fLO2と受信側の発振周波数fLO2をほぼ等しくする必要がある。このため、生産時の局部発振器1304および局部発振器1705の発振周波数fLO2の調整は、極めて困難で、調整に多大時間を要してしまう。
【0029】
仮にこれらの局部発振器1304および1705をPLL方式の発振器で構成したとしても、局部発振源である電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)の発振周波数が高いために、周波数安定性や感度特性の再現性が悪くなる。この結果、周囲温度の影響や回路定数のばらつきなどのために位相同期が掛からなかったり、外れたりする問題や、それに伴って、生産時の歩留まり低下という問題が生じる。
【0030】
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、生産時における周波数の調整が容易であり、周波数安定性および出力安定性の高い送信装置、受信装置および通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
この発明は一局面において送信装置であって、第1の局部発振器と、第1の周波数逓倍部と、第1のアップコンバート部と、合成器と、第2のアップコンバート部とを備える。第1の局部発振器は、第1の局部発振信号を生成する。第1の周波数逓倍部は、第1の局部発振信号の周波数をM逓倍した第1の逓倍信号を生成する。第1のアップコンバート部は、第1の局部発振信号を用いて入力信号をアップコンバートすることによって第1の中間周波数帯信号を生成する。合成器は、第1の中間周波数帯信号と第1の局部発振信号とを合成した第1の合成信号を生成する。第2のアップコンバート部は、第1の逓倍信号を用いて第1の合成信号をアップコンバートすることによってミリ波帯の送信信号を生成する。
【0032】
好ましくは、上記の送信装置は、第1のバッファアンプと第1の整合回路とをさらに備える。第1のバッファアンプは、第1の局部発振信号の周波数において所定の出力インピーダンスを有する。第1の整合回路は、第1の局部発振信号の周波数において第1の周波数逓倍部の入力側のインピーダンスを第1のバッファアンプの所定の出力インピーダンスに整合させる。第1の局部発振信号は、第1のバッファアンプによって増幅された後、第1の整合回路を介して第1の周波数逓倍部に入力される。
【0033】
好ましくは、第1のアップコンバート部は、第1の局部発振信号と入力信号とを乗積する第1の周波数ミキサと、第1の周波数ミキサの出力信号の側波帯を第1の中間周波数帯信号として出力する第1のバンドパスフィルタとを含む。第2のアップコンバート部は、第1の逓倍信号と第1の合成信号とを乗積する第2の周波数ミキサと、第2の周波数ミキサの出力信号の側波帯を送信信号として出力する第2のバンドパスフィルタとを含む。
【0034】
この発明は他の局面において、送信装置から送信されたミリ波帯の送信信号を受信する受信装置である。送信装置は、第1の局部発振信号を用いて入力信号をアップコンバートした第1の中間周波数帯信号を生成し、生成した第1の中間周波数帯信号と第1の局部発振信号とを合成した第1の合成信号を、第1の局部発振信号の周波数をM逓倍した第1の逓倍信号を用いてさらにアップコンバートすることによって送信信号を生成する。受信装置は、第2の局部発振器と、第2の周波数逓倍部と、第1のダウンコンバート部と、信号抽出部と、第2のダウンコンバート部とを備える。第2の局部発振器は、第2の局部発振信号を生成する。第2の周波数逓倍部は、第2の局部発振信号の周波数をN逓倍した第2の逓倍信号を生成する。第1のダウンコンバート部は、第2の逓倍信号を用いて送信信号をダウンコンバートすることによって、第2の合成信号を生成する。信号抽出部は、第2の合成信号から第3の局部発振信号と第2の中間周波数帯信号を抽出する。ここで、第3の局部発振信号は、第1の逓倍信号の周波数と第2の逓倍信号の周波数との差に応じた特定の周波数を第1の局部発振信号の周波数に加算した周波数を有する信号である。第2の中間周波数帯信号は、特定の周波数を送信装置の入力信号の周波数帯域に加算した周波数帯域を有する信号である。第2のダウンコンバート部は、信号抽出部によって抽出された第3の局部発振信号を用いて信号抽出部によって抽出された第2の中間周波数帯信号をダウンコンバートすることによって、送信装置の入力信号を復調する。
【0035】
好ましくは、上記の受信装置は、第2のバッファアンプと第2の整合回路とをさらに備える。第2のバッファアンプは、第2の局部発振信号の周波数において所定の出力インピーダンスを有する。第2の整合回路は、第2の局部発振信号の周波数において第2の周波数逓倍部の入力側のインピーダンスを第2のバッファアンプの所定の出力インピーダンスに整合させる。第2の局部発振信号は、第2のバッファアンプによって増幅された後、第2の整合回路を介して第2の周波数逓倍部に入力される。
【0036】
好ましくは、上記の第1のダウンコンバート部は、第2の逓倍信号と送信信号とを乗積する第3の周波数ミキサを含む。上記の信号抽出部は、分配器と、第3のバンドパスフィルタと、第1の増幅器と、第4のバンドパスフィルタと、第2の増幅器とを含む。ここで、分配器は、第2の合成信号を複数の経路に分配する。第3のバンドパスフィルタは、分配器によって分配された第2の合成信号の一部から第3の局部発振信号を抽出する。第1の増幅器は、第3のバンドパスフィルタによって抽出された第3の局部発振信号を増幅する。第4のバンドパスフィルタは、分配器によって分配された第2の合成信号の他の一部から第2の中間周波数帯信号を抽出する。第2の増幅器は、第4のバンドパスフィルタによって抽出された第2の中間周波数帯信号を増幅する。上記の第2のダウンコンバート部は、第1の増幅器による増幅後の第3の局部発振信号と第2の増幅器による増幅後の第2の中間周波数帯信号とを乗積する第4の周波数ミキサを含む。
【0037】
好ましくは、第1の局部発振信号の周波数は、第2の局部発振信号の周波数と異なる。さらに、第1の逓倍信号の倍率Mは、第2の逓倍信号の倍率Nと異なる。第1の局部発振信号の周波数と同じ周波数を有する信号は、第3のバンドパスフィルタを通過しない。
【0038】
この発明はさらに他の局面において、送信装置と受信装置とを備えた通信システムである。
【0039】
ここで、送信装置は、第1の局部発振器と、第1の周波数逓倍部と、第1のアップコンバート部と、合成器と、第2のアップコンバート部とを含む。第1の局部発振器は、第1の局部発振信号を生成する。第1の周波数逓倍部は、第1の局部発振信号の周波数をM逓倍した第1の逓倍信号を生成する。第1のアップコンバート部は、第1の局部発振信号を用いて入力信号をアップコンバートすることによって第1の中間周波数帯信号を生成する。合成器は、第1の中間周波数帯信号と第1の局部発振信号とを合成した第1の合成信号を生成する。第2のアップコンバート部は、第1の逓倍信号を用いて第1の合成信号をアップコンバートすることによってミリ波帯の送信信号を生成する。
【0040】
受信装置は、第2の局部発振器と、第2の周波数逓倍部と、第1のダウンコンバート部と、信号抽出部と、第2のダウンコンバート部とを含む。第2の局部発振器は、第2の局部発振信号を生成する。第2の周波数逓倍部は、第2の局部発振信号の周波数をN逓倍した第2の逓倍信号を生成する。第1のダウンコンバート部は、第2の逓倍信号を用いて送信信号をダウンコンバートすることによって、第2の合成信号を生成する。信号抽出部は、第2の合成信号から第3の局部発振信号と第2の中間周波数帯信号を抽出する。ここで、第3の局部発振信号は、第1の逓倍信号の周波数と第2の逓倍信号の周波数との差に応じた特定の周波数を第1の局部発振信号の周波数に加算した周波数を有する信号である。第2の中間周波数帯信号は、特定の周波数を送信装置の入力信号の周波数帯域に加算した周波数帯域を有する信号である。第2のダウンコンバート部は、信号抽出部によって抽出された第3の局部発振信号を用いて信号抽出部によって抽出された第2の中間周波数帯信号をダウンコンバートすることによって、送信装置に入力された入力信号を復調する。
【0041】
好ましくは、第1および第2の局部発振器は、誘電体共振器を用いたマイクロ波発振器によって構成される。
【0042】
好ましくは、送信装置に入力される入力信号は、多チャネルの信号が多重化されている信号である。
【発明の効果】
【0043】
この発明によれば、送信装置におけるミリ波帯へのアップコンバートは、第1の局部発振信号をM逓倍した第1の逓倍信号を用いて行なわれ、受信装置におけるミリ波帯からのダウンコンバートは、第2の局部発振信号をN逓倍した第2の逓倍信号を用いて行なわれる。したがって、生産時における周波数の調整が容易になり、周波数安定性および出力安定性の高い送信装置、受信装置および通信システムを提供することができる。さらには、第1の逓倍信号の周波数と第2の逓倍信号の周波数を異ならせることによって、送信装置から漏洩した第1の局部発振信号と受信装置内で生成された信号とが混信する虞をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明の実施の一形態による無線通信システム1の構成例を示す図である。
【図2】図1の送信装置100の構成を示すブロック図である。
【図3】図2のBB回路110に入力される入力信号S10のスペクトラムを示す図である。
【図4】図2のIF帯回路120から出力される合成信号S20のスペクトラムを示す図である。
【図5】図2のミリ波ICモジュール150から出力される送信信号S30のスペクトラムを示す図である。
【図6】M逓倍器151の構成の一例を示す図である。
【図7】図1の受信装置200の構成を示すブロック図である。
【図8】図7のミリ波ICモジュール210から出力される合成信号S40のスペクトラムを示す図である。
【図9】バンドパスフィルタ233によって抽出されたIF帯受信基準信号S43の周波数スペクトラムを示す図である。
【図10】バンドパスフィルタ234で抽出されたIF帯受信基準信号S43と第1のIF帯映像信号S41との合成信号のスペクトラムを示す図である。
【図11】バンドパスフィルタ235で抽出された第2のIF帯映像信号S42のスペクトラムを示す図である。
【図12】図7のベースバンド回路250で生成された映像信号S50のスペクトラムを示す図である。
【図13】整合器205が無い場合における常温(25℃)での受信装置200の出力特性を示す図である。
【図14】整合器205が無い場合における高温(85℃)での受信装置200の出力特性を示す図である。
【図15】整合器205として0.1pFのチップ部品を設けた場合における常温(25℃)での受信装置200の出力特性を示す図である。
【図16】整合器205として0.1pFのチップ部品を設けた場合における高温(85℃)での受信装置200の出力特性を示す図である。
【図17】図2の整合器123が無い場合において、常温(25℃)での送信出力(dBm)と高温(80℃)での送信出力とを比較して示す図である。
【図18】図2の整合器123を設けた場合において、常温(25℃)での送信出力(dBm)と高温(80℃)での送信出力とを比較して示す図である。
【図19】送信装置100で用いられている5GHz帯DROの発振周波数の温度依存性を示す図である。
【図20】受信装置200で用いられている9GHz帯DROの発振周波数の温度依存性を示す図である。
【図21】従来の送信装置1000および受信装置1500の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰返さない。
【0046】
[ミリ波帯の無線通信システムの構成]
図1は、この発明の実施の一形態による無線通信システム1の構成例を示す図である。図1の無線通信システム1は、ビル・マンションなどの屋上に設けられた共同受信アンテナで受信した放送波を、各住宅内に設けられたビデオ録画機51、テレビ受像機(TV set)52、およびパーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)53などに配信するためのシステムである。図1の例では、共同受信アンテナとして、ビル・マンションなどの屋上に地上デジタル放送用アンテナ14、BS(Broadcasting Satellite)デジタル放送用のパラボラアンテナ21、およびCS(Communication Satellite)デジタル放送用のパラボラアンテナ31が設けられている。各アンテナ14,21,31で受信される放送波は、多チャンネルの信号が周波数多重化された多重化変調信号である。
【0047】
無線通信システム1は、送信装置100と受信装置200とを含む。送信装置100はビル・マンションなどの屋上に設けられている。アンテナ14,21,31から出力された多重化変調信号はそれぞれ増幅器12,22,32によって適当なレベルまでレベル調整された後、合成器40によって合成される。合成された信号は、さらに、送信装置100の駆動に必要な直流電圧(たとえば15V)が重畳された状態で、送信装置100の入力端子101に入力信号S10として入力される。
【0048】
送信装置100は、入力信号S10をミリ波帯(たとえば、60GHz帯)にアップコンバートした送信信号S30を生成し、生成した送信信号S30を内蔵のアンテナ102によって受信装置200に向けて送信する。
【0049】
受信装置200は、各階のベランダなど、送信装置100から見通せる位置に設置される。受信装置200は、送信装置100から送信されたミリ波帯の送信信号S30を、内蔵のアンテナ202を介して受信し、受信した送信信号S30をダウンコンバートすることによって元の入力信号S50を復調する。復調された入力信号S50は、出力端子S201から同軸ケーブルを介して分配器50に出力され、分配器50によって複数に分配された後、ビデオ録画機51、テレビ受像機52およびパーソナルコンピュータ53などにそれぞれ伝送される。
【0050】
[送信装置100の構成]
図2は、図1の送信装置100の構成を示すブロック図である。図2を参照して、送信装置100は、ベースバンド(BB:Baseband)回路110と、中間周波数(IF)帯回路120と、ミリ波IC(Integrated Circuit)モジュール150と、出力ポートPoutに接続されたアンテナ102とを含む。
【0051】
図3は、図2のBB回路110に入力される入力信号S10のスペクトラムを示す図である。図3を参照して、入力信号S10は、図1のアンテナ11で受信した第1の映像信号(地上デジタル放送波)S11と、図1のパラボラアンテナ21,31で受信した第2の映像信号(BS,CSデジタル放送波)S12とを含む。地上デジタル放送波の周波数帯fbb1は、たとえば、450MHz〜770MHzであり、BS,CSデジタル放送波の周波数帯fbb2は、たとえば、1000MHz〜2100MHzである。以下、この明細書では、入力信号S10を映像信号S10とも称する。映像信号S10の周波数帯fbb(fbb1,fbb2を含む)をベースバンドとも称する。
【0052】
再び図2を参照して、BB回路110は、インピーダンス変換器111と、増幅器112と、電力リミタ113とを含む。インピーダンス変換器111は、75Ωから50Ωにインピーダンス変換するために設けられる。増幅器112は、インピーダンス変換器111を介して入力された映像信号S10を、適当なレベルまで増幅する。電力リミタ113は、増幅器112によって増幅された映像信号S10を適当なレベルで電力制限する。電力リミタ113によって電力制限された映像信号S10は、IF帯回路120に入力される。
【0053】
IF帯回路120は、映像信号S10をベースバンドの周波数から5GHz帯の中間周波数帯に変換する。IF帯回路120は、局部発振器121と、信号分配部130と、第1のアップコンバート部140と、減衰器124と、合成器125と、バッファアンプ122と、整合器123とを含む。
【0054】
局部発振器121は、一例として、誘電体共振型発振器(DRO:Dielectric Resonator Oscillator)によって構成される。図2の場合、局部発振器121は、発振周波数ftlo=5.573GHzの局部発振信号S23を生成する。局部発振信号S23をIF帯基準信号S23(周波数ftIFstd=ftlo=5.573GHz)とも称する。
【0055】
信号分配部130は、バッファアンプ131,132,133と、2分配器134,135とを含み、局部発振器121から出力された局部発振信号S23を3分配する。3分配された第1の局部発振信号は第1のアップコンバート部140に入力され、第2の局部発振信号は減衰器124を介して合成器125に入力され、第3の局部発振信号はバッファアンプ122および整合器123を介してミリ波ICモジュール150のM逓倍器151に入力される。
【0056】
より詳細に説明すると、まず、局部発振器121から出力された局部発振信号S23は2分配器134によって2分配される。2分配器134で分配された一方の信号は、バッファアンプ131によって増幅された後、2分配器135によってさらに分配される。そして、2分配器135によって分配された一方の信号はバッファアンプ133によって増幅された後、第1のアップコンバート部140に入力され、他方の信号は、減衰器124を介して合成器125に入力される。一方、2分配器134で分配された他方の信号は、バッファアンプ122および整合器123を介してミリ波ICモジュール150のM逓倍器151に入力される。
【0057】
第1のアップコンバート部140は、周波数ミキサ141と、バンドパスフィルタ(BPF:Band Pass Filter)142と、増幅器143,145と、減衰器144とを含む。周波数ミキサ141は、BB回路110から入力された映像信号S10と、信号分配部130を介して入力された局部発振信号S23とを乗積する。バンドパスフィルタ142は、周波数ミキサ141の出力信号から下側波帯(LSB:Lower Side Band)を抽出することによって中間周波数帯信号(S21+S22)を生成する。抽出されたIF帯映像信号(S21+S22)は、増幅器143、減衰器144および増幅器145を順に通過することによってレベル調整された後、合成器125において、減衰器124を通過した局部発振信号S23と合流する。これによって、IF帯映像信号(S21+S22)と局部発振信号S23とが合成された合成信号S20が生成される。この合成信号S20は、ミリ波ICモジュール150に入力される。
【0058】
図4は、図2のIF帯回路120から出力される合成信号S20のスペクトラムを示す図である。図4を参照して、合成信号S20は、第1のIF帯映像信号S21と、第2のIF帯映像信号S22と、IF帯基準信号S23とを含む。
【0059】
第1のIF帯映像信号S21は、図3の第1の映像信号S11(fbb1=450MHz〜770MHz)が周波数ミキサ141においてIF帯基準信号(ftIFstd=5.573GHz)と乗積された後、バンドパスフィルタ142によって下側波帯が抽出された信号である。したがって、その周波数帯域ftIFbb1は4803MHz〜5123MHzになる。
【0060】
第2のIF帯映像信号S22は、図3の第2の映像信号S12(fbb2=1000MHz〜2100MHz)が周波数ミキサ141においてIF帯基準信号(ftIFstd=5.573GHz)と乗積された後、バンドパスフィルタ142によって下側波帯が抽出されたものである。したがって、その周波数帯域ftIFbb2は3473MHz〜4573MHzになる。
【0061】
結果として、第1のIF帯映像信号S21と第2のIF帯映像信号S22とを合わせたIF帯映像信号(S21+S22)の周波数帯域ftIFbbは、3473MHz〜5123MHzになり、合成信号S20の周波数帯域は3473MHz〜5573MHzになる。
【0062】
再び図2を参照して、ミリ波ICモジュール150は、IF帯回路120から出力された合成信号S20を、ミリ波帯(たとえば、60GHz帯)にアップコンバートする。ミリ波ICモジュール150は、M逓倍器151と、バッファアンプ152と、第2のアップコンバート部160とを含む。
【0063】
M逓倍器151には、局部発振器121で生成され、信号分配部130で分配された局部発振信号S23が、バッファアンプ122および整合器123を介して入力される。M逓倍器151は、入力された局部発振信号S23の周波数をM倍した逓倍信号S91を生成する。この実施の形態の場合、逓倍器151の倍率Mは5であるとする。したがって、逓倍信号S91の周波数は27.865GHzである。逓倍信号S91はバッファアンプ152でレベル調整された後、第2のアップコンバート部160に入力される。
【0064】
第2のアップコンバート部160は、周波数ミキサ161と、バンドパスフィルタ(BPF)162と、増幅器163とを含む。周波数ミキサ161には、IF帯回路120の合成器125からの合成信号S20と、バッファアンプ152からの逓倍信号S91とが入力される。なお、周波数ミキサ161およびバンドパスフィルタ162に代えて、両者の機能を併せ持つイメージリジェクションミキサを用いてもよい。
【0065】
本実施の形態の場合、周波数ミキサ161は、2次高調波型ミキサ(たとえば、アンチパラレルダイオードペアを用いた偶高調波ミキサ)である。したがって、周波数ミキサ161の内部で、逓倍信号S91の周波数が2倍されることによって55.73GHzの信号が生成され、この55.73GHzの信号によって、合成信号S20がアップコンバートされる。バンドパスフィルタ162は、周波数ミキサ141の出力信号から上側波帯(USB:Upper Side Band)を抽出することによって送信信号S30を生成する。抽出された送信信号S30は、増幅器163によってレベル調整された後、アンテナ102から出力される。
【0066】
図5は、図2のミリ波ICモジュール150から出力される送信信号S30のスペクトラムを示す図である。図5を参照して、送信信号S30は、第1のRF帯映像信号S31と、第2のRF帯映像信号S32と、RF帯基準信号S33とを含む。
【0067】
第1のRF帯映像信号S31は、図4の第1のIF帯映像信号S21(ftIFbb1=4803MHz〜5123MHz)がIF帯基準信号S23の10倍の周波数(10×ftIFstd=55.73GHz)の信号によってアップコンバートされた後、バンドパスフィルタ162によって上側波帯が抽出された信号である。したがって、その周波数帯域fRFbb1は、60.53GHz〜60.85GHzになる。
【0068】
第2のRF帯映像信号S32は、図4の第2のIF帯映像信号S22(ftIFbb2=3473MHz〜4573MHz)がIF帯基準信号S23の10倍の周波数(10×ftIFstd=55.73GHz)の信号によってアップコンバートされた後、バンドパスフィルタ162によって上側波帯が抽出された信号である。したがって、その周波数帯域fRFbb2は、59.20GHz〜60.30GHzになる。
【0069】
RF帯基準信号S33は、図4のIF帯基準信号S23(FtIFstd=5.573GHz)がIF帯基準信号S23の10倍の周波数(10×ftIFstd=55.73GHz)の信号によってアップコンバートされた後、バンドパスフィルタ162によって上側波帯が抽出された信号である。したがって、その周波数fRFstdは、61.30GHzになる。
【0070】
結果として、第1のRF帯映像信号S31と第2のRF帯映像信号S32とを合わせたRF帯映像信号(S31+S32)の周波数帯域ftRFbbは、59.20GHz〜60.85GHzになり、送信信号S30の周波数帯域fRFは59.20GHz〜61.30GHzになる。
【0071】
[M逓倍器151の構成]
図6は、M逓倍器151の構成の一例を示す図である。以下、図6を参照して、M逓倍器151の構成例について説明するとともに、M逓倍器の入力側に設けられた整合器123の効果について説明する。
【0072】
M逓倍器151は、入力端子337と、出力端子347と、入力整合回路331と、トランジスタ332と、伝送線路340と、反射型基本波信号帯抑圧回路341と、出力整合回路342と、コンデンサ336,346とを含む。上記の入力整合回路331は、入力信号に対して整合をとるために設けられ、伝送線路334とスタブ335とコンデンサ338とを含む。出力整合回路342は、出力信号(逓倍信号)に対して整合をとるために設けられ、伝送線路344とスタブ345とコンデンサ348とを含む。
【0073】
M逓倍器151の中核となるトランジスタ332は、たとえば、高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)などのマイクロ波用のトランジスタによって構成される。トランジスタ332は、ソース(S)接地で使用され、このトランジスタ332を大信号で駆動することによって非線形動作させ、これによって生じた高調波信号が抽出される。したがって、図6に示すように、バッファアンプ122によって増幅された大振幅の局部発振信号S23がM逓倍器151に入力される。
【0074】
トランジスタ332のゲートGは、入力整合回路331に接続される。入力整合回路331を構成する伝送線路334の一端がトランジスタ332のゲートGに接続され、他端がコンデンサ336を介して入力端子337と接続される。上記の伝送線路334の他端にはさらにスタブ335の一端が接続される。スタブ335の他端は、コンデンサ338を介して接地されるとともに、ゲートバイアスを供給する電圧端子339となっている。
【0075】
トランジスタ332のドレインDは、定在波を発生する伝送線路340の一端に接続されている。定在波を発生させることによって、ドレインDにかかる高調波電圧を高くし、トランジスタ332の入出力特性の非線形性をより大きくする。この伝送線路340の他端には、反射型基本波信号帯抑圧回路341および出力整合回路342が接続される。反射型基本波信号帯抑圧回路341は基本波の1/4波長に対応したオープンスタブ343によって構成される。出力整合回路342を構成する伝送線路344の一端が上記の伝送線路340の他端に接続され、伝送線路344の他端がコンデンサ346を介して出力端子347と接続される。上記の伝送線路344の他端にはさらに、スタブ345の一端と接続される。スタブ345の他端は、コンデンサ348を介して接地されるとともに、ドレインバイアスを供給するための電圧端子349となっている。
【0076】
[バッファアンプ122および整合器123の効果]
一般に、入力周波数がマイクロ波帯の逓倍器の場合、入力整合および出力整合は概ね取れているものの、広帯域に対応させるため、あるいは、出力レベルや効率を上げるために整合が不十分である場合が多い(このため、電圧定在波比(VSWR:Voltage Standing Wave Ratio)がやや大きくなる)。さらに、逓倍器がIC化されることによりセラミック基板上でモジュール化されている場合には、図6に示すように、ボンディングワイヤによる寄生インダクタンス312やセラミック基板上の配線パターンによる寄生伝送線路311が存在する。この寄生インダクタンス312および寄生伝送線路311によっても入力整合が悪化する。入力整合が悪化すると、入力信号がM逓倍器151の核となっているトランジスタ332に十分に入力されず、反射されてしまう。この結果、M逓倍器151からの出力信号レベルの低下を招く。
【0077】
M逓倍器151の入力整合は、M逓倍器151の外部環境とりわけ周囲温度によっても変化する。具体的には、周囲温度の増加に伴って、M逓倍器151に設けられたトランジスタ332の利得や後段のバッファアンプ152に使用しているトランジスタの利得が低下し、トランジスタの容量成分も変化する。さらには、周囲温度の増加に伴って、出力側のインピーダンスの影響がトランジスタの入力インピーダンスに現れるようになってくる。この結果、入力整合が悪化し、M逓倍器151の出力が減少してしまう。
【0078】
特にM逓倍器のように非線形デバイスの場合には、入力信号レベルの変化に対して出力信号レベルが急激に変化する点が問題となる。たとえば、入力レベルが1dBの違いでも、出力側が数dB以上の違いが生じ、この傾向は逓倍次数Mが増加するほど顕著になる。通常、出力信号レベルは、ある入力信号レベル以上で飽和するので、出力信号レベルが十分に飽和した点(出力が飽和し始める入力信号レベルよりも3dB以上大きな入力信号レベル)が動作点として用いられる。しかしながら、周囲温度が上昇すると入力整合が悪化するために動作点がずれ、結果として、出力信号レベルが著しく低下する。
【0079】
これに対して、本実施の形態による送信装置100では、図2、図6に示すように、局部発振器121とM逓倍器151との間にはバッファアンプ122および整合器123が設けられる。局部発振信号S23は、バッファアンプ122で増幅された後、整合器123を介してM逓倍器151に入力される。
【0080】
バッファアンプ122は、M逓倍器151への入力信号レベルを確保するとともに、バッファアンプ122の入力側に設けられた局部発振器121のインピーダンスの影響を受けなくするために設けられる。さらには、バッファアンプ122を設けることによって、バッファアンプ122の出力インピーダンスを所定の値(通常50Ω)に固定することができる。
【0081】
整合器123は、局部発振信号S23の周波数(狭帯域整合)で、M逓倍器151の入力側のインピーダンスをバッファアンプ122の出力インピーダンス(通常50Ω)に整合するために設けられている。局部発振器121からM逓倍器151へ入力される局部発振信号S23は、1つの周波数ftloで規定される正弦波信号であるので、整合器123によって、M逓倍器151の入力側のインピーダンスをこの周波数ftloで50Ωに容易に整合(狭帯域整合)させることができる。
【0082】
本実施の形態の場合には、一例として、M逓倍器151へ入力される局部発振信号S23の周波数を5.573GHzの正弦波とし、温湿度変化を含めて、最大で帯域10MHzとしている(5.573GHz±5MHz)。5.573GHzの中心周波数に対して、比帯域で2%程度である。このようにM逓倍器151への入力信号の周波数が15GHz程度までの信号であれば、1mm×0.5mmサイズのチップ部品(インダクタおよび/またはコンデンサ)を1個〜3個使用することによって、容易にインピーダンスを50Ωに調整するための整合器123を構成することができる。この整合器の構成は、前記寄生成インダクタンスや寄生伝送線路による寄生成分を、本整合器で打ち消すことを意味する。経験的に10GHz以下の周波数であれば、上記ボンディングワイヤや、パッケージ等の寄生線路が、直列につながっていることが入力整合を悪化させている主因であることから、この寄生成分の効果を打ち消すために、直列のコンデンサや、直列のインダクタンスで打ち消すことができる。これは、整合をとるもう一端が、前記バッファアンプ122で出力インピーダンス50Ωであること、周波数が正弦波一周波数であり帯域幅が極端に狭いことから、低損失の整合器を容易に構成することができる。
【0083】
このように、整合器123を用いて、実際に使用する局部発振周波数の周波数付近で狭帯域整合をとることにより(この局部発振周波数では極めて良好な整合、すなわち小さなVSWRになる)、環境条件、特に周囲温度が大きく変化しても、M逓倍器に効率よく局部発振信号を伝達することができる。この結果、M逓倍器151の入力整合の変動による出力信号レベルの変動を低減することができる。これにより、M逓倍器151としての温度特性、ひいては無線送信装置100としての温度特性を向上させることができる。
【0084】
[受信装置200の構成]
図7は、図1の受信装置200の構成を示すブロック図である。図7を参照して、受信装置200は、入力ポートPinに接続されたアンテナ202と、局部発振器203と、バッファアンプ204と、整合器205と、ミリ波ICモジュール210と、IF帯回路220と、ベースバンド(BB)回路250とを含む。アンテナ202によって図2の送信装置100から出力された送信信号S30が受信され、受信された送信信号S30は、ミリ波ICモジュール210に入力される。
【0085】
局部発振器203は、一例として、誘電体共振型発振器(DRO)によって構成される。図7の場合、局部発振器203は、発振周波数frlo=9.266GHzの局部発振信号S92を生成する。バッファアンプ204は、局部発振器203で生成された局部発振信号S92を増幅する。増幅後の局部発振信号S92は、整合器205を介してミリ波ICモジュール210のN逓倍器211に入力される。
【0086】
ミリ波ICモジュール210は、送信装置100からのミリ波帯の送信信号S30を、中間周波数(IF)帯にダウンコンバートする。ミリ波ICモジュール210は、N逓倍器211と、バッファアンプ212と、増幅器213と、バンドパスフィルタ214と、第1のダウンコンバート部としての周波数ミキサ215とを含む。なお、バンドパスフィルタ214および周波数ミキサ215に代えて、両者の機能を併せ持つイメージリジェクションミキサを用いてもよい。
【0087】
N逓倍器211には、バッファアンプ204で増幅された局部発振信号S92が整合器205を介して入力される。図2の送信装置100の場合と同様に、バッファアンプ204は、N逓倍器211への入力信号レベルを確保するとともに、所定の出力インピーダンス(通常50Ω)に固定するために設けられている。この場合、バッファアンプ204の出力インピーダンスは、バッファアンプ204の入力側の局部発振器203のインピーダンスの影響を受けない。整合器205は、局部発振信号S92の周波数(狭帯域整合)で、N逓倍器211の入力側のインピーダンスをバッファアンプ204の出力インピーダンス(通常50Ω)に整合させるために設けられている。
【0088】
本実施の形態の場合には一例として、N逓倍器211へ入力される局部発振信号S92の周波数は、9.266GHzの正弦波とし、温湿度変化を含めて、最大で帯域10MHzとしている(9.266GHz±5MHz)。9.266GHzの中心周波数に対して、比帯域で1%程度であるので、1mm×0.5mmサイズのチップ部品(インダクタおよび/またはコンデンサ)を1個〜3個使用することによって、容易に50Ωの狭帯域整合用の整合器205を構成することができる。繰り返しになるが、受信側も、この整合器の構成は、前記寄生成インダクタンスや寄生伝送線路による寄生成分を、本整合器で打ち消すことを意味する。経験的に10GHz以下の周波数であれば、上記ボンディングワイヤや、パッケージ等の寄生線路が、直列につながっていることが入力整合を悪化させている主因であることから、この寄生成分の効果を打ち消すために、直列のコンデンサや、直列のインダクタンスで打ち消すことができる。これは、整合をとるもう一端が、前記バッファアンプ204で出力インピーダンス50Ωであること、周波数が正弦波の一周波数であり帯域幅が極端に狭いことから、低損失の整合器を容易に構成することができる。
【0089】
N逓倍器211の逓倍率Nは、本実施の形態の場合には3である。すなわち、N逓倍器211は、局部発振信号S92の周波数frlo=9.266GHzを3倍した27.798MHzの周波数を有する逓倍信号S93を生成する。生成された逓倍信号S93は、バッファアンプ212でレベル調整された後、周波数ミキサ215に入力される。
【0090】
一方、アンテナ202で受信したミリ波帯の送信信号S30は、まず、増幅器213で増幅され、その後、バンドパスフィルタ214によって不要波が抑圧される。バンドパスフィルタ214を通過した送信信号S30は、周波数ミキサ215に入力される。
【0091】
本実施の形態の場合、周波数ミキサ215は、2次高調波型ミキサ(たとえば、アンチパラレルダイオードペアを用いた偶高調波ミキサ)である。したがって、周波数ミキサ215の内部で、逓倍信号S93の周波数が2倍されることによって55.596GHzの信号が生成される。この55.596GHzの信号によって送信信号S30がダウンコンバートされることにより、中間周波数(IF)帯の合成信号S40が生成される。
【0092】
図8は、図7のミリ波ICモジュール210から出力される合成信号S40のスペクトラムを示す図である。図8を参照して、合成信号S40は、第1のIF帯映像信号S41と、第2のIF帯映像信号S42と、IF帯受信基準信号S43とを含む。
【0093】
第1のIF帯映像信号S41は、図5の第1のRF帯映像信号S31(fRFbb1=60.53GHz〜60.85GHz)が55.596GHzの信号によってダウンコンバートされることによって生成された信号である。したがって、第1のIF帯映像信号S41の周波数帯域frIFbb1は4933MHz〜5254MHzになる。この値は、図4に示す第1のIF帯映像信号S21の周波数帯域(ftIFbb1=4803MHz〜5123MHz)に対して、送信装置100側の局部発振器121の発振周波数(ftlo=5.573GHz)と受信装置200側の局部発振器203の発振周波数(frlo=9.266GHz)とに応じて決まる特定の周波数Δfを加算した値に等しい。この周波数Δfは、2次高調波ミキサ215の2逓倍機能を考慮し、
Δf=2×(5×ftlo−3×frlo)
=10×ftlo+6×frlo=131MHz …(1)
と表わされる。すなわち、特定の周波数Δfは、送信装置側のM逓倍器151によって逓倍された逓倍信号S91の周波数(5×ftlo=27.865GHz)と、受信装置側のN逓倍器211によって逓倍された逓倍信号S93の周波数(3×frlo=27.698)との周波数差に応じた値である。ここでは、本実施例では、2次高調波ミキサを用いているため、前記M(5)、N(3)の逓倍次数は、10逓倍、6逓倍となっており、ここで周波数に応じた値というのは、高調波ミキサの次数を考慮したトータルの逓倍次数での周波数差のことである。
【0094】
第2のIF帯映像信号S42は、図5の第2のRF帯映像信号S32(fRFbb2=59.20GHz〜60.30GHz)が55.596GHzの信号によってダウンコンバートされることによって生成された信号である。したがって、その周波数帯域frIFbb2は3604MHz〜4704MHzになる。この値は、図4に示す第2のIF帯映像信号S22の周波数帯域(ftIFbb2=3473MHz〜4573MHz)に上記の特定の周波数Δfを加算した値になる。
【0095】
IF帯受信基準信号S43は、図5のRF帯基準信号S33(fRFstd=61.3GHz)が55.596GHzの信号によってダウンコンバートされることによって生成された信号である。したがって、その周波数frIFstdは、5.704GHzになり、図4に示すIF帯基準信号S23の周波数(ftIFstd=5.573GHz)に上記の特定の周波数Δfを加算した値になる。
【0096】
以上の結果、第1のIF帯映像信号S41と第2のIF帯映像信号S42とを合わせたIF帯映像信号(S41+S42)の周波数帯域frIFbbは、3604MHz〜5254MHzになり、合成信号S40の周波数帯域は3604MHz〜5704MHzになる。
【0097】
再び図7を参照して、IF帯回路220は、ミリ波ICモジュール210から出力された中間周波数帯の合成信号S40をダウンコンバートすることによって、元の映像信号を復調する。IF帯回路220は、増幅器221と、信号抽出部230と、第2のダウンコンバート部としての周波数ミキサ222,223とを含む。
【0098】
信号抽出部230は、増幅器221で増幅された合成信号S40から、図8で説明したIF帯受信基準信号S43、IF帯受信基準信号S43と第1のIF帯映像信号S41との合成信号(S41+S43)、および第2のIF帯映像信号S42を抽出する。具体的に信号抽出部230は、3分配器232と、バンドパスフィルタ233,234,235と、2分配器236と、増幅器237〜240と、減衰器241,242とを含む。
【0099】
3分配器232は、増幅器221で増幅された合成信号S40を3つの経路231A,231B,231Cに分配する。第1の経路231Aに分配された信号がバンドパスフィルタ233を通過することよってIF帯受信基準信号S43が抽出される。第2の経路231Bに分配された信号がバンドパスフィルタ234を通過することによってIF帯受信基準信号S43と第1のIF帯映像信号S41との合成信号(S41+S43)が抽出される。第3の経路231Cに分配された信号がバンドパスフィルタ235を通過することによって第2のIF帯映像信号S42が抽出される。
【0100】
図9は、バンドパスフィルタ233によって抽出されたIF帯受信基準信号S43の周波数スペクトラムを示す図である。図9を参照して、IF帯受信基準信号S43の周波数frIFstdは5.704GHzである。
【0101】
ここで、本実施の形態の場合、IF帯受信基準信号S43の周波数(frIFstd=5.704GHz)と、送信側のIF帯基準信号S23の周波数(ftIFstd=5.573GHz)との周波数差は0.131GHz(上式(1)のΔfに等しい)であり、バンドパスフィルタ233の通過帯域幅(BW=±100MHz)より大きい。このため、送信装置100から漏洩したIF帯基準信号S23(スプリアス信号成分)は、バンドパスフィルタ233によって抑圧されるので、スプリアス信号成分によって映像信号の復調が妨害されることはない。
【0102】
図10は、バンドパスフィルタ234で抽出されたIF帯受信基準信号S43と第1のIF帯映像信号S41との合成信号のスペクトラムを示す図である。図10を参照して、合成信号(S41+S43)の周波数帯域は、4.933GHz〜5.704GHzである。バンドパスフィルタ234によって第1のIF帯映像信号S41を第2のIF帯映像信号S42に対して分離する必要があるが、IF帯受信基準信号S43とは必ずしも分離しなくてよい。
【0103】
図11は、バンドパスフィルタ235で抽出された第2のIF帯映像信号S42のスペクトラムを示す図である。図11を参照して、第2のIF帯映像信号S42の周波数帯域frIFbb2は3.604GHz〜4.704GHzである。
【0104】
再び図7を参照して、バンドパスフィルタ233を通過したIF帯受信基準信号S43は2分配器236によって分配される。2分配された一方の信号は増幅器237によってレベル調整された後、周波数ミキサ222に入力される。2分配された他方の信号は増幅器238によってレベル調整された後、周波数ミキサ223に入力される。すなわち、抽出されたIF帯受信基準信号S43は、周波数ミキサ222,223の各々に局部発振信号として入力される。
【0105】
バンドパスフィルタ234を通過したIF帯受信基準信号S43と第1のIF帯映像信号S41との合成信号(S41+S43)は、増幅器239および減衰器241によってレベル調整された後、周波数ミキサ222に入力される。周波数ミキサ222において、合成信号(S41+S43)はIF帯受信基準信号S43と乗積されることによってダウンコンバートされ、元の第1の映像信号S51(図3のS11と同じ)が復調・再生される。
【0106】
バンドパスフィルタ235を通過した第2のIF帯映像信号S42は、増幅器240および減衰器242によってレベル調整された後、周波数ミキサ223に入力される。周波数ミキサ223において、第2のIF帯映像信号S42はIF帯受信基準信号S43と乗積されることによってダウンコンバートされ、元の第2の映像信号S52(図3のS12と同じ)が復調・再生される。
【0107】
ベースバンド回路250は、バンドパスフィルタ251,252と、減衰器253,354と、増幅器255,256と、合成器257とを含む。
【0108】
IF帯回路220の周波数ミキサ222によって再生された第1の映像信号S51は、バンドパスフィルタ251によって不要波が除去され、減衰器253および増幅器255によってレベル調整された後、合成器257に入力される。
【0109】
IF帯回路220の周波数ミキサ223によって再生された第2の映像信号S52は、バンドパスフィルタ252によって不要波が除去され、減衰器254および増幅器256によってレベル調整された後、合成器257に入力される。
【0110】
合成器157は、第1の映像信号S51と第2の映像信号S52を合成した映像信号S50(図2、図3の入力信号S10と同じ)を生成し、生成した映像信号S50を出力端子S201(同軸ケーブルのコネクタ)から同軸ケーブルを介して図1の分配器50に出力する。分配器50によって分配された映像信号S50は、同軸ケーブルを介してビデオ録画機51、テレビ受像機52およびパーソナルコンピュータ53などにそれぞれ伝送される。
【0111】
図12は、図7のベースバンド回路250で生成された映像信号S50のスペクトラムを示す図である。図12を参照して、映像信号S50は、第1の映像信号(地上デジタル放送波)S51と第2の映像信号(BS,CSデジタル放送波)とを含む。これらの映像信号S51,S52は、図3に示す第1の映像信号(地上デジタル放送波)S11と第2の映像信号(BS,CSデジタル放送波)とにそれぞれ相当する。
【0112】
次に、上記で説明した通信システム1(送信装置100および受信装置200)に特有な効果について説明する。
【0113】
[効果1:周波数調整が容易なこと]
図2の送信装置100に設けられた局部発振器121は1個のみであり、この1個の局部発振器121によって送信装置100全体で用いられる基準信号の周波数が決定されるので、周波数調整が容易である。同様に、図7の受信装置200に設けられた局部発振器203は1個のみであり、この1個の局部発振器203によって受信装置200全体で用いられる基準信号の周波数が決定されるので、周波数調整が容易である。
【0114】
まず、図2を参照して、送信装置100の場合について具体的に説明する。第2のアップコンバートに用いられるミリ波帯の基準信号(逓倍信号)S91はM逓倍器151によって生成されるので、局部発振器121で生成する局部発振信号S23は15GHz帯以下のマイクロ波でよい。この周波数帯域の局部発振器121は、ミリ波帯の発振器に比べて周囲温度の変化に対する周波数安定性および出力安定性がよい。この理由は、たとえば局部発振器121を誘電体共振型発振器(DRO)によって構成する場合には、ミリ波帯の場合に比べて共振器のQ値が高いことによる。局部発振器121をPLL(Phase Locked Loop)発振器によって構成する場合には、ミリ波帯の場合に比べてVCO感度が小さく(したがって、Q値が大きくなり)、温度に対して安定した周波数ループ回路を構成できることによる。加えて、DRO発振器やPLL発振器は、ミリ波帯で発振させるよりも、15GHz帯以下のマイクロ波で発振させるほうが安価に構成できるというメリットがある。このように、局部発振器121の発振周波数を精度良く設定することによって、その周波数をM倍したミリ波帯の基準信号の周波数も精度良く設定することができる。
【0115】
さらに、局部発振器121の発振周波数の調整も容易である。15GHz帯以下のマイクロ波の場合には、局部発振器121で生成された局部発振信号の一部は、送信装置100の入力端子(同軸ケーブル用のコネクタ)101から漏洩する。送信装置100の生産時には、この漏洩した局部発振信号を15GHz帯以下のマイクロ波用のスペクトラムアナライザを用いて検出することによって、局部発振器121の発振周波数を容易に精度良く調整することができるからである。この場合、ミリ波帯の基準信号は局部発振信号をN逓倍することによって生成されるので、高価なミリ波帯用のスペクトラムアナライザは必要でない。なお、ミリ波帯の局部発振器の場合には、途中の線路やコネクタでの減衰が大きいために入力端子101からの漏洩が小さいので、上記のような簡便な検出方法を用いることはできない。
【0116】
受信装置200の場合も同様に、局部発振器203は、その周波数が15GHz帯以下のマイクロ波でよいので、ミリ波帯の場合に比べて安価であるとともに温度の変化に対する周波数安定性および出力安定性に優れている。そして、局部発振器203の発振周波数を精度良く設定することによって、その周波数をM倍したミリ波帯の基準信号の周波数も精度良く設定することができる。さらに、局部発振器203の出力端子(同軸ケーブル用のコネクタ)201に15GHz帯以下のマイクロ波用のスペクトルアナライザを接続して、漏洩した局部発振信号の周波数を検出することによって、局部発振器203の発振周波数を容易に調整することができる。
【0117】
[効果2:温度の変動に対して出力信号レベルが安定であること]
図6で説明したように、図2の局部発振器121とM逓倍器151の間にバッファアンプ122および整合器123を設けることによって、局部発振信号S23の周波数において、バッファアンプ122の出力インピーダンス(通常50Ω)に、M逓倍器151の入力側のインピーダンスに整合させることができる。これによって、M逓倍器151の出力信号強度の温度による変動を抑制することができる。
【0118】
同様に、図7で説明したように、局部発振器203とN逓倍器211との間にバッファアンプ204および整合器205を設けることによって、局部発振信号S92の周波数において、バッファアンプ204の出力インピーダンス(通常50Ω)にN逓倍器211の入力側のインピーダンスを整合させることができる。これによって、N逓倍器211の出力信号強度の温度による変動を抑制することができる。そして、このようにM逓倍器151およびN逓倍器211の温度特性を向上させることによって、送信装置100の出力信号レベルおよび受信装置200の出力信号レベルを、温度の変動に対して安定させることができる。
【0119】
以下、具体例を挙げて説明する。この例では、図2の整合器123として、チップ部品(サイズ:1mm×0.5mm)で構成された1.8nHのインダクタが直列に挿入される。図7の整合器205として、チップ部品で構成された0.1pFのコンデンサが直列に挿入される。これらのインダクタンス値および容量値は、回路基板に実装されたM(N)逓倍器の入力側のSパラメータを測定することによってまたはシミュレーションによって決定する。具体的には、整合器としてのチップ部品が有る場合と無い場合とを比較するともに、常温(25℃)と高温(80〜85℃程度)とを比較することによって、温度依存性ができるだけ小さくなるパラメータを見出す。以下、図13〜図16を参照して、受信装置200の出力信号S50の信号レベルの測定例について説明する。
【0120】
図13は、整合器205が無い場合における常温(25℃)での受信装置200の出力特性を示す図である。
【0121】
図14は、整合器205が無い場合における高温(85℃)での受信装置200の出力特性を示す図である。
【0122】
図15は、整合器205として0.1pFのチップ部品を設けた場合における常温(25℃)での受信装置200の出力特性を示す図である。
【0123】
図16は、整合器205として0.1pFのチップ部品を設けた場合における高温(85℃)での受信装置200の出力特性を示す図である。図13〜図16のグラフにおいて、縦軸は受信装置200の出力信号レベル(dBm)を示し、横軸は出力信号(ベースバンド)の周波数を示す。各グラフには、ベースバンド信号を50MHzステップで変更したときの各ベースバンド周波数に対する出力信号レベルが示されている。下側の包絡線がノイズレベルNLの周波数特性を示し、上側の包絡線が信号レベルSLの周波数特性を示す。
【0124】
図13および図15に示す常温の場合には、整合器無しの場合(図13)と整合器有りの場合(図15)とを比較して、出力信号レベルSLは1dB〜3dB程度の差しかない。これに対して、図14および図16に示す85℃の場合には、整合器有りの場合(図16)と整合器無しの場合(図14)とで30dB程度の差が生じてしまっている。すなわち、図14に示す整合器無しの場合に大きなレベル低下が生じているのに対して、整合器205を設けることによって図16に示すように30dB程度出力信号レベルの改善が見られる。図13〜図16では1サンプルの場合について示したが、100サンプル程度で同様の測定を実施すると、整合器有りの場合が整合器無しの場合に比べて3dBから40dB程度、出力信号レベルが改善されている。
【0125】
次に、図17、図18に送信装置100の出力信号S30の信号レベルの測定例を示す。
【0126】
図17は、図2の整合器123が無い場合において、常温(25℃)での送信出力(dBm)と高温(80℃)での送信出力とを比較して示す図である。
【0127】
図18は、図2の整合器123を設けた場合において、常温(25℃)での送信出力(dBm)と高温(80℃)での送信出力とを比較して示す図である。図17、図18において、横軸はサンプル名で6個のサンプルを並べて示している。縦軸は、高温(80℃)および常温(25℃)での送信出力(dBm)と、高温の場合から常温の場合を差し引いた出力変動量(ΔdB)とを示している。
【0128】
図18に示す整合器有りの場合には、常温(25℃)と高温(80℃)での出力変動量は3dB以内となっている。これに対して、図17に示す整合器無しの場合には、常温(25℃)と高温(80℃)での出力変動量は最大で8dB程度となっている。すなわち、常温(25℃)では、整合器無しの場合(図17)と有りの場合(図18)とを比較して出力信号レベルに大差はないが、高温(80℃)では、整合器無しの場合(図17)には有りの場合(図18)に比べて出力低下が大きくなっている。
【0129】
以上の図13〜図18では、送信装置100の温度特性と受信装置200の温度特性とをそれぞれ単独で示した。送信装置100と受信装置200とを合わせた通信システム1としての温度特性は、単独の特性の重ね合わせとなる。したがって、送信装置100に整合器123を設け、受信装置200に整合器205を設けることによって、通信システム1の温度特性が大きく改善することが分かる。
【0130】
[効果3:送信装置からのスプリアス成分によって復調信号に劣化が生じないこと]
本実施の形態の通信システム1では、図2の送信装置100に設けられた局部発振器121の発振周波数ftloと、図7の受信装置200に設けられた局部発振器203の発振周波数frloとが異なる。さらに、送信側のIF帯基準信号S23の周波数ftIFstd(本実施の形態では5.573GHz)と、受信側のIF帯受信基準信号S43の周波数frIFstd(本実施の形態では、5.704GHz)とは、受信側のIF帯受信基準信号S43を抽出するバンドパスフィルタ233の帯域幅(BW:±100MHz)以上に異なっている。
【0131】
このため、本実施の形態の通信システム1で近距離通信を行なう場合、送信側のIF帯基準信号S23(周波数ftIFstd=5.573GHz)や、その逓倍信号(本実施の形態では、信号周波数は10×ftlo=55.73GHz)がスプリアス信号として空間を伝搬してきたとしても、受信側の周波数ミキサ215で生成されたIF帯受信基準信号S43(周波数frIFstd=5.704GHz)と混信することがない。なぜなら、送信側からのスプリアス成分である周波数ftIFstd(本実施の形態では、5.573GHz)の信号成分は、IF帯用のバンドパスフィルタ233で抑圧されてしまうからである。このため、受信側でIF帯受信基準信号S43を精度良く抽出することができ、その結果、第1および第2のIF帯映像信号S41,S42の周波数ダウンコンバートを忠実に行なえるため、良好な受信特性を得ることができる。
【0132】
[効果4:誘電体共振型発振器を用いることで周波数安定性を向上できること]
本実施の形態で局部発振器121,203として用いている誘電体共振型発振器(DRO)は、たとえば、マイクロ波トランジスタのゲートドレイン間に設けられたコの字状の伝送線路の間に誘電体共振器が設置されたような構造を有している。このようなDRO型発振器の発振周波数は、温度が増加するにつれて発振周波数が低下する右肩下がりの温度依存性を有する。具体的な特性例を図19、図20に示す。
【0133】
図19は、送信装置100で用いられている5GHz帯DROの発振周波数の温度依存性を示す図である。
【0134】
図20は、受信装置200で用いられている9GHz帯DROの発振周波数の温度依存性を示す図である。図19、図20において、縦軸が発振周波数(GHz)を示し、横軸が温度(℃)を示す。図19に示す送信装置100で用いられているDROの場合には、−40℃から40℃の範囲で、温度の増加に伴ってΔ33kHz/℃の割合で発振周波数が低下する。図20に示す受信装置200で用いられているDROの場合には、−40℃から80℃の範囲で、温度の増加に伴ってΔ33kHz/℃の割合で発振周波数が低下する。
【0135】
ミリ波帯通信では、送信装置100と受信装置200とが見通し範囲内に配置された近距離通信が主体であるので、送信装置100の周囲温度と受信装置200の周囲温度とは同様の温度変化をするものと考えられる。以下で詳しく説明するように、温度変化に起因した送信側のDROの周波数変動量をΔftloとし、受信側のDROの周波数変動量をΔfrloとすれば、図7の受信装置200で生成されるIF帯受信基準信号S43の周波数変動量ΔfrIFstdは、
ΔFrIFstd=(2×M+1)×Δftlo−(2×N+1)×Δfrlo …(2)
と表わされる。すなわち、IF帯受信基準信号S43の周波数変動量ΔfrIFstdは、送信側のDROの周波数変動量Δftloと受信側のDROの周波数変動量Δfrloとを打ち消す方向である。このため、IF帯受信基準信号S43は周囲温度の変化の影響を受け難くなっている。なお、上式(2)において、図2の送信装置100に設けられた逓倍器151の逓倍率をMとし、周波数ミキサ161を2倍波高調波ミキサとしている。さらに、図7の受信装置200に設けられた逓倍器211の低倍率をNし、周波数ミキサ215を2倍波高調波ミキサとしている。
【0136】
受信装置200で生成される第1のIF帯映像信号S41の周波数変動量ΔfrIFbb1および第2のIF帯映像信号S42の周波数変動量ΔfrIFbb2についても、上式(2)と同じ関係式で表わされる。すなわち、受信側の第1および第2のIF帯映像信号S41,S42についても周囲温度の変化の影響を受け難くなっており、この実施の形態による通信システム1は温度安定性が非常に優れたシステムとなっている。以下、さらに詳しく説明する。
【0137】
(1.送信側でのIF帯域へのアップコンバート)
図2、図3および図4を参照して、入力信号(映像信号)S10(周波数fbb)は、第1のアップコンバート部140によってアップコンバートされるとともに下側波帯が選択されることにより、IF帯映像信号(S21+S22)に変換される。このとき、IF帯基準信号S23の周波数をftIFstdとすると、IF帯映像信号(S21+S22)の周波数ftIFbbは、
ftIFbb=ftIFstd−fbb …(3)
で与えられる。
【0138】
(2.送信側でのRF帯域へのアップコンバート)
図2、図4および図5を参照して、IF帯映像信号(S21+S22)は、第2のアップコンバート部160によってアップコンバートされるとともに上側波帯が選択されることにより、RF帯映像信号(S31+S32)に変換される。この際、IF帯基準信号S23(周波数ftIFstd)を5逓倍した逓倍信号S91を用いるとともに、2倍波高調波ミキサ161が利用されるので、RF帯映像信号(S31+S32)の周波数fRFbbは、
fRFbb=ftIFbb+10×ftIFstd
=ftIFstd−fbb+10×ftIFstd
=11×ftIFstd−fbb …(4)
で与えられる。同様に、IF帯基準信号S23も、第2のアップコンバート部160によってアップコンバートされるとともに上側波帯が選択されることにより、RF帯基準信号S33に変換される。したがって、RF帯基準信号S33の周波数fRFstdは、
fRFstd=ftIFstd+10×ftIFstd=11×ftIFstd …(5)
で与えられる。
【0139】
(3.受信側でのIF帯へのダウンコンバート)
図7、図5および図8を参照して、RF帯映像信号(S31+S32)は、周波数ミキサ215によってダウンコンバートされることにより、IF帯映像信号(S41+S42)に変換される。この際、局部発振信号S92(周波数frlo)を3逓倍した逓倍信号S93を用いるとともに2倍波高調波ミキサ215が利用されるので、IF帯映像信号(S41+S42)の周波数frIFbbは、上側波帯の選択により、
frIFbb=fRFbb−6×frlo
=(11×ftIFstd−fbb)−6×frlo
=11×ftIFstd−6×frlo−fbb …(6)
で与えられる。ここで、IF帯映像信号(S41+S42)は、第1のIF帯映像信号S41(周波数frIFbb1)と第2のIF帯映像信号S42(周波数frIFbb2)が合成されたものであるので、
frIFbb1=11×ftIFstd−6×frlo−fbb1 …(7)
frIFbb2=11×ftIFstd−6×frlo−fbb2 …(8)
の関係が成立つ。
【0140】
IF帯受信基準信号S43(周波数frIFstd)についても同様に、
frIFstd=fRFstd−6×frlo
=11×ftIFstd−6×frlo …(9)
の関係が成立つ。
【0141】
(4A.受信側でのBB帯への第1のダウンコンバート)
図7、図8、図12を参照して、第1のIF帯映像信号S41(周波数frIFbb1)は、IF帯受信基準信号S43(周波数frIFstd)を用いて周波数ミキサ222によってダウンコンバートされることにより、第1の映像信号S51(周波数fbb1)に変換される。この際、下側波帯が選択されることにより、
frIFstd−frIFbb1=(11×ftIFstd−6×frlo)−(11×ftIFstd−6×frlo−fbb1)
=fbb1 …(10)
のように、周波数fbb1の第1の映像信号S51が復調される。
【0142】
(4B.受信側でのBB帯への第2のダウンコンバート)
図7、図8、図12を参照して、第2のIF帯映像信号S42(周波数frIFbb2)は、IF帯受信基準信号S43(周波数frIFstd)を用いて周波数ミキサ223によってダウンコンバートされることにより、第2の映像信号S52に変換される。この際、下側波帯が選択されることにより、
frIFstd−frIFbb2=(11×ftIFstd−6×frlo)−(11×ftIFstd−6×frlo−fbb2)
=fbb2 …(11)
のように、周波数fbb2の第2の映像信号S52が復調される。
【0143】
(5.周波数安定性について)
以上のように、上記4A,4Bのダウンコンバートの過程で、送信側のDRO型発振器121による局部発振信号S23の周波数ftIFstd(=ftlo)と、受信側のDRO型発振器203による局部発振信号S92の周波数frloはキャンセルされる。したがって、受信側で復調された第1の映像信号S51(周波数fbb1)と第2の映像信号52(周波数fbb2)は、送受信側のDRO型の局部発振器121,203の周波数変動と位相雑音の影響は受けない構成である。
【0144】
しかしながら、受信側のIF帯受信基準信号S43用のバンドパスフィルタ233は狭帯域性が必要であり、帯域幅として±100MHzが要求される。本システムでは局部発振信号が送信装置側で10逓倍されるとともに受信装置側で6逓倍されるため、使用されるDRO型の局部発振器121,203の安定度は最大で±5MHz程度必要となる。
【0145】
DRO型の局部発振器121,203の周波数安定度をそれぞれΔftIFstd、Δfrloとすると、
ftIFstd=ftIFstd'+ΔftIFstd …(12)
frlo=frlo'+Δfrlo …(13)
と表わされる。ここで、ftIFsrd’は、送信装置において温度依存性が無い場合の局部発振周波数を示し、frlo’は、受信装置において温度依存性が無い場合の局部発振周波数を示す。
【0146】
この場合、受信側の第1のIF帯映像信号S41の周波数frIFbb1は、上式(7)に(12)式および(13)式を代入することにより、
frIFbb1=11×ftIFstd−6×frlo−fbb1
=11×(ftIFstd'+ΔftIFstd)−6×(frlo'+Δfrlo)−fbb1
=(11×ftIFstd'−6×frlo'−fbb1)
+(11×ΔftIFstd−6×Δfrlo) …(14)
と表わされる。
【0147】
受信側の第2のIF帯映像信号S42の周波数frIFbb2は、上式(8)に(12)式および(13)式を代入することにより、
frIFbb1=11×ftIFstd−6×frlo−fbb2
=11×(ftIFstd'+ΔftIFstd)−6×(frlo'+Δfrlo)−fbb2
=(11×ftIFstd'−6×frlo'−fbb2)
+(11×ΔftIFstd−6×Δfrlo) …(15)
と表わされる。
【0148】
IF帯受信基準信号S43の周波数frIFstdは、上式(9)に(12)式および(13)式を代入することにより、
frIFstd=11×ftIFstd−6×frlo
=11×(ftIFstd'+ΔftIFstd)−6×(frlo'+Δfrlo)
=(11×ftIFstd'−6×frlo')+(11×ΔftIFstd−6×Δfrlo) …(16)
と表わされる。
【0149】
以上のように受信側の第1、第2のIF帯映像信号S41,S42およびIF帯受信基準信号S43のいずれも、周波数安定性は(11×ΔftIFstd−6×Δfrlo)となる。既に説明したように、送信側のDRO型局部発振器121と受信側のDRO型局部発振器203とで、それぞれの安定性は、完全に打ち消しあうことはできないが互いに打ち消しあう方向にある。すなわち、送信側のDRO型局部発振器121の周波数安定性は−40℃〜40℃で右下がりにΔ33kHz/℃となり、受信側のDRO型局部発振器203の周波数安定性は−40℃〜80℃で右下がりにΔ33kHz/℃となる。したがって、−40℃〜40℃の範囲では、受信側のIF帯信号の安定性はより向上することになる。40℃以上においても送信側のDRO型局部発振器121の安定性は非常に高くなっているため、受信側のDRO型局部発振器203の周波数安定性が支配的となる。結論として、無線通信システム1は温度安定性に非常に優れたシステムであると言える。
【0150】
[効果5:受信装置での寄生発振を防止できること]
図21(B)に示す従来の受信装置1500では、第2のダウンコンバート部1800において、分配器1801および周波数ミキサ1804のアイソレーションが十分で無い場合には、IF帯の基準信号fLO1が循環するループが生じる。この場合、増幅器1805の利得が十分に大きい場合には寄生発振が生じてしまう。
【0151】
これに対して図7に示す本実施の形態による受信装置200の場合には、周波数ミキサ222,223のアイソレーションが十分でないとしても、IF帯受信基準信号S43は減衰器241,242および増幅器239,240で減衰されるので寄生発振が生じないようになっている。
【0152】
[効果6:受信感度の向上]
本実施の形態の受信装置200では、周波数ミキサ215によってダウンコンバートされたIF帯の合成信号S40を増幅するための増幅器221が設けられる。これによって、合成信号S40から抽出されるIF帯受信基準信号S43の出力が増大するので、受信感度特性を大きく改善することができ、この結果、信号の伝送距離を確保できる。たとえば、送信側のアンテナ102および受信側のアンテナ202の利得をそれぞれ23dBiとしたとき、10m〜100mまでの伝送距離が可能となる。
【0153】
[変形例]
上記では、入力信号S10を映像信号として説明したが、データ信号などのその他の種類の信号であっても構わない。
【0154】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0155】
1 通信システム、102,202 アンテナ、112,143,145,163,213,221,237〜240,255,256 増幅器、125,157,257 合成器、134,135,232,236 分配器、100 送信装置、121 局部発振器(DRO)、122,131,132,133,152,204,211,212 バッファアンプ、123,205 整合器、130 信号分配部、140 第1のアップコンバート部、141,161,215,222,223 周波数ミキサ、142,162,214,233,234,235,251,252 バンドパスフィルタ、151 M逓倍器、160 第2のアップコンバート部、200 受信装置、230 信号抽出部、S10 入力信号(映像信号)、S50 映像信号、S11,S51 第1の映像信号、S12,S52 第2の映像信号、S20,S40 合成信号、S21,S22,S41,S42 IF帯映像信号、S31,S32 RF帯映像信号、S23 局部発振信号(IF帯基準信号)、S30 送信信号、S43 IF帯受信基準信号、S91,S93 逓倍信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の局部発振信号を生成する第1の局部発振器と、
前記第1の局部発振信号の周波数をM逓倍した第1の逓倍信号を生成する第1の周波数逓倍部と、
前記第1の局部発振信号を用いて入力信号をアップコンバートすることによって第1の中間周波数帯信号を生成する第1のアップコンバート部と、
前記第1の中間周波数帯信号と前記第1の局部発振信号とを合成した第1の合成信号を生成する合成器と、
前記第1の逓倍信号を用いて前記第1の合成信号をアップコンバートすることによってミリ波帯の送信信号を生成する第2のアップコンバート部とを備えた送信装置。
【請求項2】
前記第1の局部発振信号の周波数において所定の出力インピーダンスを有する第1のバッファアンプと、
前記第1の局部発振信号の周波数において前記第1の周波数逓倍部の入力側のインピーダンスを前記第1のバッファアンプの前記所定の出力インピーダンスに整合させる第1の整合回路とをさらに備え、
前記第1の局部発振信号は、前記第1のバッファアンプによって増幅された後、前記第1の整合回路を介して前記第1の周波数逓倍部に入力される、請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記第1のアップコンバート部は、
前記第1の局部発振信号と前記入力信号とを乗積する第1の周波数ミキサと、
前記第1の周波数ミキサの出力信号の側波帯を前記第1の中間周波数帯信号として出力する第1のバンドパスフィルタとを含み、
前記第2のアップコンバート部は、
前記第1の逓倍信号と前記第1の合成信号とを乗積する第2の周波数ミキサと、
前記第2の周波数ミキサの出力信号の側波帯を前記送信信号として出力する第2のバンドパスフィルタとを含む、請求項2に記載の送信装置。
【請求項4】
送信装置から送信されたミリ波帯の送信信号を受信する受信装置であって、
前記送信装置は、第1の局部発振信号を用いて入力信号をアップコンバートした第1の中間周波数帯信号を生成し、生成した前記第1の中間周波数帯信号と前記第1の局部発振信号とを合成した第1の合成信号を、前記第1の局部発振信号の周波数をM逓倍した第1の逓倍信号を用いてさらにアップコンバートすることによって前記送信信号を生成し、
前記受信装置は、
第2の局部発振信号を生成する第2の局部発振器と、
前記第2の局部発振信号の周波数をN逓倍した第2の逓倍信号を生成する第2の周波数逓倍部と、
前記第2の逓倍信号を用いて前記送信信号をダウンコンバートすることによって、第2の合成信号を生成する第1のダウンコンバート部と、
前記第2の合成信号から第3の局部発振信号と第2の中間周波数帯信号を抽出する信号抽出部とを備え、
前記第3の局部発振信号は、前記第1の逓倍信号の周波数と前記第2の逓倍信号の周波数との差に応じた特定の周波数を前記第1の局部発振信号の周波数に加算した周波数を有する信号であり、
前記第2の中間周波数帯信号は、前記特定の周波数を前記送信装置の前記入力信号の周波数帯域に加算した周波数帯域を有する信号であり、
さらに、前記信号抽出部によって抽出された前記第3の局部発振信号を用いて前記信号抽出部によって抽出された前記第2の中間周波数帯信号をダウンコンバートすることによって、前記送信装置の前記入力信号を復調する第2のダウンコンバート部とを備えた受信装置。
【請求項5】
前記第2の局部発振信号の周波数において所定の出力インピーダンスを有する第2のバッファアンプと、
前記第2の局部発振信号の周波数において前記第2の周波数逓倍部の入力側のインピーダンスを前記第2のバッファアンプの前記所定の出力インピーダンスに整合させる第2の整合回路とをさらに備え、
前記第2の局部発振信号は、前記第2のバッファアンプによって増幅された後、前記第2の整合回路を介して前記第2の周波数逓倍部に入力される、請求項4に記載の受信装置。
【請求項6】
前記第1のダウンコンバート部は、前記第2の逓倍信号と前記送信信号とを乗積する第3の周波数ミキサを含み、
前記信号抽出部は、
前記第2の合成信号を複数の経路に分配する分配器と、
前記分配器によって分配された前記第2の合成信号の一部から前記第3の局部発振信号を抽出する第3のバンドパスフィルタと、
前記第3のバンドパスフィルタによって抽出された前記第3の局部発振信号を増幅する第1の増幅器と、
前記分配器によって分配された前記第2の合成信号の他の一部から前記第2の中間周波数帯信号を抽出する第4のバンドパスフィルタと、
前記第4のバンドパスフィルタによって抽出された前記第2の中間周波数帯信号を増幅する第2の増幅器とを含み、
前記第2のダウンコンバート部は、前記第1の増幅器による増幅後の前記第3の局部発振信号と前記第2の増幅器による増幅後の前記第2の中間周波数帯信号とを乗積する第4の周波数ミキサを含む、請求項5に記載の受信装置。
【請求項7】
前記第1の局部発振信号の周波数は、前記第2の局部発振信号の周波数と異なり、
前記第1の逓倍信号の倍率Mは、前記第2の逓倍信号の倍率Nと異なり、
前記第1の局部発振信号の周波数と同じ周波数を有する信号は、前記第3のバンドパスフィルタを通過しない、請求項6に記載の受信装置。
【請求項8】
送信装置と受信装置とを備えた通信システムであって、
前記送信装置は、
第1の局部発振信号を生成する第1の局部発振器と、
前記第1の局部発振信号の周波数をM逓倍した第1の逓倍信号を生成する第1の周波数逓倍部と、
前記第1の局部発振信号を用いて入力信号をアップコンバートすることによって第1の中間周波数帯信号を生成する第1のアップコンバート部と、
前記第1の中間周波数帯信号と前記第1の局部発振信号とを合成した第1の合成信号を生成する合成器と、
前記第1の逓倍信号を用いて前記第1の合成信号をアップコンバートすることによってミリ波帯の送信信号を生成する第2のアップコンバート部とを含み、
前記受信装置は、
第2の局部発振信号を生成する第2の局部発振器と、
前記第2の局部発振信号の周波数をN逓倍した第2の逓倍信号を生成する第2の周波数逓倍部と、
前記第2の逓倍信号を用いて前記送信信号をダウンコンバートすることによって、第2の合成信号を生成する第1のダウンコンバート部と、
前記第2の合成信号から第3の局部発振信号と第2の中間周波数帯信号を抽出する信号抽出部とを含み、
前記第3の局部発振信号は、前記第1の逓倍信号の周波数と前記第2の逓倍信号の周波数との差に応じた特定の周波数を前記第1の局部発振信号の周波数に加算した周波数を有する信号であり、
前記第2の中間周波数帯信号は、前記特定の周波数を前記送信装置の前記入力信号の周波数帯域に加算した周波数帯域を有する信号であり、
前記受信装置は、さらに、前記信号抽出部によって抽出された前記第3の局部発振信号を用いて前記信号抽出部によって抽出された前記第2の中間周波数帯信号をダウンコンバートすることによって、前記送信装置に入力された前記入力信号を復調する第2のダウンコンバート部とを含む、通信システム。
【請求項9】
前記第1および第2の局部発振器は、誘電体共振器を用いたマイクロ波発振器によって構成される、請求項8に記載の通信システム。
【請求項10】
前記送信装置に入力される前記入力信号は、多チャネルの信号が多重化されている信号である、請求項8に記載の通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−93756(P2013−93756A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234810(P2011−234810)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】