説明

送入コンベア装置とその制御方法

【課題】上流側機器で発生した不良品を搬送ライン外へ自動的に取り出すことができ、上流側機器の稼動率を向上させると共に、省力化を図ることができる送入コンベア装置を提供する。
【解決手段】受取り側端部で受取った長尺木材aを排出側端部に移送する送入コンベア14を、駆動軸15に起伏動可能となるよう取付け、前記送入コンベア14の駆動軸15から離れた位置をシリンダ16で支持し、このシリンダ16で送入コンベア14を水平状態の材料搬送姿勢と、受取り側端部を上昇させた押し上げ姿勢に変化させ、前記送入コンベア14を起立させて跳ね上げ姿勢にすることができるよう、前記シリンダ16による送入コンベア14の支持部分を上方に分離可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、上流側の材料加工機から供給された材料を、下流側の装置に送り込むための送入コンベア装置とその制御方法、更に詳しくは、フィンガージョイントでの結合によって長尺木材を得る圧締機から供給された長尺木材を受取り、この長尺木材を下流側に位置する積み重ね装置に送り込むための送入コンベア装置と、圧締機で生じた不良長尺木材をライン外に取り出すことができる制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィンガージョイントでの結合によって長尺木材を得る工程は、両端木口にフィンガージョイントを加工した複数の板材を圧締機で長さ方向に加圧し、フィンガージョイントを嵌め合わせて接着結合することにより長尺木材とし、この長尺木材を送入コンベア装置で下流側に位置する積み重ね装置に送り込み、多数枚の長尺木材を並列させると共に積み重ねた荷姿にするものである。
【0003】
従来の送入コンベア装置1は、図5に示すようにローラコンベア2を用い、圧締機3の材料出側端部と、積み重ね装置の材料持ち上げ機構4の間に、前記ローラコンベア2を材料持ち上げ機構4側が下がる傾斜状に配置し、圧締機3の材料出側端部から押出された長尺木材aをローラコンベア2で受取り、このローラコンベア2の傾斜を利用して長尺木材aを材料持ち上げ機構4に向けて移動させ、ローラコンベア2の傾斜下がり側に位置する長尺木材aを材料持ち上げ機構4が一枚ずつ持ち上げて積み重ね装置に送り込むようになっている。
【0004】
ところで、圧締機3で長尺木材aを加工するとき、板材の状況やフィンガージョイントの加工条件によって、十分な圧締状態が得られない不良品が発生する場合がある。
【0005】
従来、圧締機3において不良品が発生した場合、圧締機3に設置してある不良品検知器でこれを検知し、警報を発すると共に圧締機3を停止させ、作業員が不良品をライン外に取り出し、この後、圧締機3の稼動を復帰させるようにしていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、圧締機3で不良品が発生するごとに圧締機3の停止と復帰の作業を行わなければならず、圧締機3や積み重ね装置の稼動率を低下させる原因になっていると共に、不良品が発生するごとに人手がとられるという問題がある。
【0007】
そこで、この発明の課題は、上記した問題点を解決するため、圧締機で不良品が発生した場合、この不良品を搬送ライン外へ自動的に取り出すことができるようにし、圧締機や積み重ね装置の稼動率を向上させると共に、省力化を図ることができる送入コンベア装置とその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、装置の発明は、受取り側端部で受取った板状の材料を送入コンベアのエンドレス走行体で支持し、このエンドレス走行体の回動で材料を排出側端部に移送する送入コンベア装置であり、前記送入コンベアをエンドレス走行体の駆動軸で、この駆動軸を支点として起伏動可能となるよう支持し、前記送入コンベアの駆動軸から離れた位置を、この送入コンベアの材料搬送姿勢と、受取り側端部を上昇させた押し上げ姿勢に変化させるためのシリンダで支持し、前記送入コンベアを起立させて跳ね上げ姿勢にすることができるよう、前記シリンダによる送入コンベアの支持部分を分離可能としたものである。
【0009】
また、制御方法の発明は、請求項1に記載の送入コンベア装置を用い、送入コンベアの受取り側端部に臨むよう位置させた材料加工機から送り出された材料を、材料搬送姿勢にした送入コンベアで受取ると、エンドレス走行体の回動により材料を排出側端部に移送するようにし、前記材料加工機で加工された材料に不良品が生じた場合、材料加工機からの不良品検知信号でシリンダを伸長させ、送入コンベアを押し上げ姿勢にすることで、材料加工機から送り出された不良品材料を送入コンベアの下部に排出してライン外に取り出すようにするものである。
【0010】
ここで、上記材料は、フィンガージョイントを嵌め合わせて接着結合することにより形成した長尺木材であり、圧締機からシリンダで押出されることになる。
【0011】
送入コンベアは、長い板状フレームの両端にスプロケットを枢止し、両スプロケット間にエンドレス走行体であるチエンを巻架し、固定台の上にモータと連結状態で配置した駆動軸に、フレームの一方端部寄りの位置をベアリングを介して枢止してこの駆動軸を支点に起伏動自在とし、前記駆動軸にチエンと噛み合ってこのチエンを回動させるスプロケットが固定されている。
【0012】
上記シリンダは、固定台のブラケットに下端が枢止され、チエンの回動方向に起立状態で所定角度の範囲を揺動可能となる配置となり、上向きとなるピストンロッドの上端と、上記送入コンベアにおけるフレームの中間部に一対の支持部材が設けられている。
【0013】
この支持部材は、ピストンロッドの上端に固定した二又金具と、フレームの中間部側面に突設した係止軸との組み合わせからなり、シリンダが収縮した状態で、係止軸を二又金具で支持することで、送入コンベアは水平の材料搬送姿勢に保持され、また、シリンダが伸長すると、フレームを押上げることで駆動軸を支点に傾斜する押し上げ姿勢になる。
【0014】
上記支持部材は、上から落とし込んだ係止軸を二又金具で受ける構造になっているので、送入コンベアを引き起こせば、二又金具から係止軸を離脱させることができ、これにより、送入コンベアをシリンダに関係なく上方に跳ね上げることができ、この跳ね上げによって、通路の確保ができ、送入コンベア下の床面に対する掃除およびメンテナンスが支障なく行えることになる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によると、送入コンベアを起伏動可能となるよう支持し、この送入コンベアをシリンダで材料搬送姿勢と、受取り側端部を上昇させた押し上げ姿勢に変化させることができるようにしたので、材料搬送姿勢での材料の送り込み時において、製品が不良品であると、送入コンベアを押し上げ姿勢にすることで、押出されてきた不良品を受取らないようにして送入コンベアの下部に排出させることができ、不良品が後続の装置に送り込まれることがないので、製品の品質が安定化させることができる。
【0016】
また、シリンダによる送入コンベアの支持部分を分離可能としたので、シリンダと関係なしに送入コンベアを起立させて跳ね上げ姿勢にすれば、送入コンベアの材料搬送姿勢にあった部分が空間となるので、作業用の通路を確保することができてメンテナンス作業が便利に行え、送入コンベアの下部床面の掃除も容易になる。
【0017】
更に、上流側に位置する加工機の不良品検知信号で、送入コンベアを押し上げ姿勢に変化させるようにしたので、この不良品を搬送ライン外へ自動的に取り出すことができ、上流側加工機や下流側装置の稼動率を向上させると共に、加工機を止めるための人員の確保が不要になり,省力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の送入コンベア装置を示す通常運転状態の側面図
【図2】この発明の送入コンベア装置を示す材料不良品検知時の側面図
【図3】この発明の送入コンベア装置を示す運転停止メンテナンス作業時の側面図
【図4】この発明の送入コンベア装置を示す通常運転状態の平面図
【図5】従来の送入コンベア装置を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態を図示例に基づいて説明する。
【0020】
図1乃至図3のように、送入コンベア装置11は、上流側の圧締機12から押出された長尺木材aを、下流側に位置する積み重ね装置の持ち上げ機構13に送り込むためのものであり、受取り側端部で受取った長尺木材aを支持し、これを排出側端部に移送する送入コンベア14と、この送入コンベア14を枢止する駆動軸15と、前記送入コンベア14を起伏動させるシリンダ16とで形成され、送入コンベア14とシリンダ16の間に一対の支持部材17が設けられている。
【0021】
上記送入コンベア14は、帯板状となるフレーム18の両端にスプロケット19を枢止し、両スプロケット19間にエンドレスの走行体であるチエン20を巻架し、チエン20の上部走行部分が長尺木材aを支持して送る搬送部分になり、上記圧締機12の長尺木材aの出側端部と、積み重ね装置の材料持ち上げ機構13の間に配置される。
【0022】
上記駆動軸15は、図4のように、床面に設置した固定台21の上面に軸受で支持された水平状態の配置となり、端部に連結したモータ22で回転が付与されるようになっており、また、上記送入コンベア14は、フレーム18の材料持ち上げ機構13に近い端部が、前記駆動軸15にベアリング23を介して枢止され、駆動軸15を支点に起伏回動可能になっていると共に、この駆動軸15には、チエン20に噛み合うスプロケット19aが固定され、駆動軸15の回転によって前記チエン20を回動させるようになっている。
【0023】
この送入コンベア14は、図4のように、長尺木材aの全長を支持することができるよう、駆動軸15の長さ方向に一定間隔の配置で複数が並列するよう平面的に並べて設けられ、積み重ね装置の材料持ち上げ機構13も、各送入コンベア14の近接位置に送入コンベア14と等しい数が配置されている。
【0024】
上記シリンダ16は、固定台21の側面に固定したブラケット24に下端が枢軸25で枢止され、起立状態でチエン20の回動方向に所定角度の範囲を揺動可能となる配置となり、上向きとなるピストンロッドの上端と、上記送入コンベア14におけるフレーム18の中間部に一対の支持部材17が設けられている。
【0025】
上記シリンダ16が収縮した通常運転状態にあるとき、図1のように、送入コンベア14は水平の材料搬送姿勢に保持され、チエン20の上部走行部分が圧締機12の長尺木材aの出側端部の高さに対応し、また、不良品検知状態時は、図2のように、シリンダ16が伸長し、フレーム18を押上げることで送入コンベア14が駆動軸15を支点に、受取り側端部が圧締機12の長尺木材aの出側端部よりも高くなるよう傾斜した押し上げ姿勢になり、送入コンベア14の受取り側端部と圧締機12の長尺木材の出側端部の間に不良長尺木材aを落とし込むための隙間26を形成することになる。
【0026】
上記した一対の支持部材17は、図3のように、シリンダ16のピストンロッドの上端に固定した二又金具17aと、フレーム18の中間部側面に突設した係止軸17bとの組み合わせからなり、シリンダ16が収縮した状態で、係止軸17bを二又金具17aで支持することで、送入コンベア14は水平の材料搬送姿勢に保持され、また、シリンダ16が伸長すると、フレーム18を押上げることで駆動軸15を支点に傾斜する押し上げ姿勢になる。
【0027】
この支持部材17は、上から落とし込んだ係止軸17bを二又金具17aで受ける構造になっているので、送入コンベア14を引き起こせば、二又金具17aから係止軸17bを離脱させることができ、これにより、送入コンベア14をシリンダ16に関係なく上方に跳ね上げて起立させることができ、この跳ね上げた起立によって、圧締機12と材料持ち上げ機構13の間にメンテナンス作業時の通路を確保することになる。
【0028】
上記シリンダ16は、図示省略したが、上記圧締機12に設置してある既存の不良品検知器と連動し、圧締機12の圧締工程において不良品が発生した場合これを不良品検知器で検知し、前記不良品検知器での検知信号で収縮状態にあるシリンダ16を伸長させ、送入コンベア14を水平の材料搬送姿勢から受取り側端部が上昇した押し上げ姿勢に変化させ、不良品の長尺木材aを搬送ライン外へ自動的に排出するように制御される。
【0029】
この発明の送入コンベア装置は、上記のような構成であり、通常の連続運転時は、図1のように、送入コンベア14はシリンダ16の収縮で水平の材料搬送姿勢にあり、モータ22の起動による駆動軸15の回転で、チエン20は図1の反時計方向に回動し、圧締機12から押し出された長尺木材aを受け取り端部で受取ると、これを材料持ち上げ機構13に向け移送して送り込み、材料持ち上げ機構13は、送入コンベア14の取り出し端部側に位置する長尺木材aを回動する腕板13aで持ち上げ、後続の積み重ね装置に向けて移送する。
【0030】
圧締機12で製作された長尺木材aが不良品の場合、圧締機12に設置してある不良品検知器が不良品を検知すると、この検知信号でシリンダ16が伸長し、図2のように、送入コンベア14は受取り側端部が上昇した押し上げ姿勢に変化し、これによって、送入コンベア14の受取り側端部と圧締機12の出側端部の間に長尺木材aを落とし込むための隙間26が形成され、押出されてきた不良品を受取らないようにして送入コンベア14の下部床面上へ自動的に排出させ、このようにすると、不良品が後続の装置に送り込まれることがないので、製品の品質が安定化させることができる。
【0031】
上記シリンダ16は、不良品が下部床面上に排出されると収縮し、送入コンベア14を水平の材料搬送姿勢に戻し、次の長尺木材aの送入に備えることになり、不良品のライン外への取出しを自動的に行うことで、この間圧締機12を停止させる必要がなく、圧締機12の稼動効率を向上させることができ、圧締機12を停止させる作業員が不要になって省力化が図れることになる。
【0032】
また、圧締機12や材料持ち上げ機構13等を停止させてメンテナンス作業を行う場合は、図3のように、モータ22を停止させた状態で、送入コンベア14を人為的に跳ね上げ姿勢にして起立させれば、圧締機12と材料持ち上げ機構13の間に空間を形成することができ、作業用の通路を確保することでメンテナンス作業が便利に行え、床面の掃除も容易である。
【符号の説明】
【0033】
11 送入コンベア装置
12 圧締機
13 持ち上げ機構
14 送入コンベア
15 駆動軸
16 シリンダ
17 支持部材
17a 二又金具
17b 係止軸
18 フレーム
19 スプロケット
20 チエン
21 固定台
22 モータ
23 ベアリング
24 ブラケット
25 枢軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受取り側端部で受取った板状の材料を送入コンベアのエンドレス走行体で支持し、このエンドレス走行体の回動で材料を排出側端部に移送する送入コンベア装置であり、
前記送入コンベアをエンドレス走行体の駆動軸で、この駆動軸を支点として起伏動可能となるよう支持し、前記送入コンベアの駆動軸から離れた位置を、この送入コンベアの材料搬送姿勢と、受取り側端部を上昇させた押し上げ姿勢に変化させるためのシリンダで支持し、前記送入コンベアを起立させて跳ね上げ姿勢にすることができるよう、前記シリンダによる送入コンベアの支持部分を分離可能とした送入コンベア装置。
【請求項2】
請求項1に記載の送入コンベア装置を用い、送入コンベアの受取り側端部に臨むよう位置させた材料加工機から送り出された材料を、材料搬送姿勢にした送入コンベアで受取ると、エンドレス走行体の回動により材料を排出側端部に移送するようにし、前記材料加工機で加工された材料に不良品が生じた場合、材料加工機からの不良品検知信号でシリンダを伸長させ、送入コンベアを押し上げ姿勢にすることで、材料加工機から送り出された不良品材料を送入コンベアの下部に排出してライン外に取り出すようにする送入コンベア装置の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−143986(P2011−143986A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4829(P2010−4829)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000148818)株式会社太平製作所 (37)
【Fターム(参考)】