説明

送受信システム

【課題】送信機から安定したレベルの信号を得るとともに、受信信号の劣化を防止することができる送受信システムを提供する。
【解決手段】送信機1に入力されて変調された送信信号に対して、送信側タップ係数に応じた特性を付加する送信側フィルタ12と、送信側フィルタ12から出力されて光伝送路3により伝送され、受信機2に受信された送信信号に対して、受信側タップ係数に応じた特性を付加する受信側フィルタ24と、光伝送路3の伝送路特性を算出する伝送路特性算出部4と、送信側タップ係数および受信側タップ係数を算出するタップ係数算出部5とを備え、タップ係数算出部5は、伝送路特性と伝送路特性に応じて設定される追加特性とを組み合わせて合成特性を算出し、合成特性の逆特性に基づいて送信側タップ係数を算出するとともに、追加特性に基づいて受信側タップ係数を算出するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光伝送路で信号を伝送する際に、伝送路特性に起因して発生する信号の歪みを補償する送受信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の補償システムは、伝送路特性算出回路と、逆特性算出回路と、フィルタ回路を含む送信機と、受信機とを備え、光伝送路で信号を伝送する際に、伝送路特性に起因して発生する信号の歪みを補償している(例えば、特許文献1参照)。
伝送路特性算出回路は、光ファイバ等で構成された光伝送路の伝送路特性を算出する。逆特性算出回路は、伝送路特性算出回路で算出された伝送路特性の逆特性を算出する。
【0003】
送信機は、逆特性算出回路で算出された伝送路特性の逆特性に基づいて、入力されて変調された送信信号に対して、電気的領域においてフィルタ回路により逆特性を付加する。また、送信機は、逆特性が付加された送信信号を、光変調器により電気信号から光信号に変換して光伝送路に出力する。
【0004】
ここで、送信信号には、伝送路特性の逆特性が付加されているので、光伝送路で伝送路特性に起因して発生する信号の歪みは、逆特性による送信信号の歪みと相殺されて除去される。
受信機は、光伝送路を通過した送信信号を受信信号として受信し、受信信号を光信号から電気信号に変換して、送信されたデータを受信する。
【0005】
送信信号に伝送路特性の逆特性を付加するフィルタ回路としては、FIR(Finite Impulse Response:有限インパルス応答)フィルタまたはトランスバーサルフィルタ等と呼ばれるデジタルフィルタが用いられる。また、これらのフィルタに代えて、ルックアップテーブル値を記憶し、メモリアクセスにより積算結果を出力するRAMが用いられることもある。
【0006】
【特許文献1】特表2006−522508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術には、次のような課題がある。
すなわち、同じ送信信号に対して伝送路特性の逆特性を付加する場合であっても、伝送路特性の大きさにより、フィルタ回路から出力される信号の平均レベルが変化する。
ここで、伝送路特性が大きい場合には、光伝送路で発生する信号の歪みが大きくなり、伝送路特性が小さい場合には、光伝送路で発生する信号の歪みが小さくなる。
【0008】
そのため、伝送路特性が非常に小さい場合とある程度大きい場合とでは、これらの伝送路特性の逆特性をそれぞれ送信信号に付加したときに、フィルタ回路から出力される信号の平均レベルが、互いに大きく異なる。
そのため、フィルタ回路から安定したレベルの信号を得ることができず、送信機から出力される信号のレベルも安定したものにならないという問題点があった。また、送信機から出力される信号のレベルが安定しないことにより、光伝送路を伝送されて受信機に受信された受信信号に、劣化が生じる恐れがあるという問題点もあった。
【0009】
なお、特にOOK(On−Off Keying:オンオフキーイング)により変調された送信信号に対して、伝送路特性が非常に小さい場合の逆特性を付加すると、フィルタ回路から出力される信号の虚部の値が非常に小さくなることが知られている。
この場合には、フィルタ回路から出力される信号の実部および虚部に基づいて直交変換を実行する光変調器において、送信SNR(Signal to Noise Ratio:信号対雑音の比)を高めることができない。
そのため、伝送路特性が非常に小さい場合には、受信信号にさらに劣化が生じるという問題点もあった。
【0010】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、送信機から安定したレベルの信号を得るとともに、受信信号の劣化を防止することができる送受信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る送受信システムは、送信機および受信機が、光伝送路を介して互いに接続された送受信システムであって、送信機に設けられ、送信機に入力されて変調された送信信号に対して、送信側タップ係数に応じた特性を付加する送信側特性付加手段と、受信機に設けられ、送信側特性付加手段から出力されて光伝送路により伝送された送信信号に対して、受信側タップ係数に応じた特性を付加する受信側特性付加手段と、光伝送路の伝送路特性を算出する伝送路特性算出手段と、送信側タップ係数および受信側タップ係数を算出するタップ係数算出手段とを備え、タップ係数算出手段は、伝送路特性と伝送路特性に応じて設定される追加特性とを組み合わせて合成特性を算出し、合成特性の逆特性に基づいて送信側タップ係数を算出するとともに、追加特性に基づいて受信側タップ係数を算出するものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明の送受信システムによれば、タップ係数算出手段は、伝送路特性と伝送路特性に応じて設定される追加特性とを組み合わせて合成特性を算出し、合成特性の逆特性に基づいて送信側タップ係数を算出するとともに、追加特性に基づいて受信側タップ係数を算出する。送信側特性付加手段は、送信機に入力されて変調された送信信号に対して、送信側タップ係数に応じた特性を付加する。また、受信側特性付加手段は、受信機に受信信号として受信された送信信号に対して、受信側タップ係数に応じた特性を付加する。
そのため、送信機から安定したレベルの信号を得るとともに、受信信号の劣化を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の各実施の形態について図に基づいて説明するが、各図において同一、または相当する部分については、同一符号を付して説明する。
【0014】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る送受信システムを示すブロック構成図である。
図1において、この送受信システムは、送信機1と、受信機2と、光伝送路3と、伝送路特性算出器4(伝送路特性算出手段)と、タップ係数算出部5(タップ係数算出手段)とを備えている。
【0015】
送信機1は、送信データ生成部11と、送信側フィルタ12(送信側特性付加手段)と、D/A(Digital to Analog)変換器13と、E/O(Electronic to Optical)変換器14とを含んでいる。また、受信機2は、O/E変換器21と、波形整形フィルタ22と、A/D変換器23と、受信側フィルタ24(受信側特性付加手段)と、等化器25と、データ判定部26とを含んでいる。
また、光伝送路3は、例えば光ファイバ等で構成されている。
【0016】
まず始めに、送信機1側の機能について説明する。
送信データ生成部11は、送信機1に入力されたデジタル信号である送信情報系列に対して、信号マッピングを実行する。信号マッピングには、例えばOOKやQPSK(Quadrature Phase Shift Keying:4位相偏位変調方式)等の方法が考えられる。また、受信機2において遅延検波方式を用いることを想定している場合には、送信データ生成部11において差動符号化も併せて実行される。
送信データ生成部11は、信号マッピングによって得られた信号を、送信信号として送信側フィルタ12に出力する。
【0017】
送信側フィルタ12は、デジタルフィルタである複素トランスバーサルフィルタを有している。複素トランスバーサルフィルタは、複数の遅延器と、各遅延器で遅延された信号にタップ係数を乗算する乗算器と、各乗算器からの出力を加算する加算器とを有している。また、複素トランスバーサルフィルタは、時間領域で信号処理を実行し、高速処理が要求される場合には、信号処理を並列化して実行してもよい。
【0018】
送信側フィルタ12は、複素トランスバーサルフィルタを用いて、送信データ生成部11からの送信信号に対して、タップ係数算出部5で算出された送信側タップ係数(後述する)に応じた特性を付加する。送信側タップ係数は、光伝送路3の伝送路特性と伝送路特性に応じて設定される追加特性とを組み合わせた合成特性(後述する)に応じて算出される。
また、送信側フィルタ12は、送信信号に合成特性の逆特性を付加した信号を、フィルタ後送信信号としてD/A変換器13に出力する。
【0019】
D/A変換器13は、送信側フィルタ12からのフィルタ後送信信号をデジタル信号からアナログ信号に変換し、アナログ送信信号としてE/O変換器14に出力する。
E/O変換器14は、D/A変換器13からのアナログ送信信号を電気信号から光信号に変換し、光送信信号として光伝送路3に出力する。このとき、アナログ送信信号は、複素信号の実部信号および虚部信号に基づいて直交変調される。E/O変換器14としては、例えば上記特許文献1に示された2次元光変調器等が用いられる。
光伝送路3は、E/O変換器14からの光送信信号を伝送して、受信機2のO/E変換器21に出力する。
【0020】
続いて、受信機2側の機能について説明する。
O/E変換器21は、光伝送路3により伝送された光送信信号を光受信信号として受信する。また、O/E変換器21は、光受信信号を光信号から電気信号に変換し、アナログ受信信号として波形整形フィルタ22に出力する。このとき、光受信信号は、直交検波されて、実部信号および虚部信号を有する複素信号として出力される。
【0021】
波形整形フィルタ22は、例えばバンドパスフィルタ等で構成されており、O/E変換器21からのアナログ受信信号に対して、受信帯域制限のためのアナログフィルタ処理を実行する。波形整形フィルタ22は、アナログ受信信号の受信帯域を制限した信号を、整形後受信信号としてA/D変換器23に出力する。
A/D変換器23は、波形整形フィルタ22からの整形後受信信号をアナログ信号からデジタル信号に変換し、デジタル受信信号として受信側フィルタ24に出力する。
【0022】
受信側フィルタ24は、送信側フィルタ12と同様に、複素トランスバーサルフィルタを有している。受信側フィルタ24は、タップ係数算出部5で算出された受信側タップ係数(後述する)に基づいて、A/D変換器23からのデジタル受信信号に対して、前述した追加特性を付加する。
受信側フィルタ24は、デジタル受信信号に追加特性を付加した信号を、フィルタ後受信信号として等化器25に出力する。
【0023】
等化器25は、複素トランスバーサルフィルタやフィードバックフィルタ等のフィルタと、これらのフィルタのタップ係数を推定するタップ係数推定器とを有している。等化器25は、受信側フィルタ24からのフィルタ後受信信号から、前述した光伝送路3の伝送路特性および追加特性以外の原因で発生する信号の歪みを除去する。また、等化器25は、光伝送路3の伝送路特性が時間的に変動した場合にも、この変動に起因する信号の歪み等を除去する。また、タップ係数の推定方法としては、例えばLMS(Least Mean Square)アルゴリズム等が用いられる。
等化器25は、フィルタ後受信信号からこれらの信号歪みを除去した信号を、補償後受信信号としてデータ判定部26に出力する。
【0024】
データ判定部26は、等化器25からの補償後受信信号に対して、マッピング規則に基づいて、データ判定を実行する。データ判定部26は、データ判定の結果を出力信号として外部に出力する。
【0025】
次に、伝送路特性算出器4とタップ係数算出部5について説明する。
伝送路特性算出器4は、光伝送路3により伝送された光送信信号に基づいて、光伝送路3の伝送路特性を算出し、伝送路特性をタップ係数算出部5に出力する。また、伝送路特性算出器4は、光伝送路3の伝送路特性とともに、伝送路インパルス応答を算出する。
なお、伝送路特性算出器4は、光送信信号以外に、O/E変換器21からのアナログ受信信号、波形整形フィルタ22からの整形後受信信号、またはA/D変換器23からのデジタル受信信号に基づいて光伝送路3の伝送路特性を算出することもできる。
【0026】
光伝送路3の伝送路特性は、4光波混合、自己位相変調もしくは相互位相変調等の光ファイバの非線形歪み、波長分散または偏波モード分散等によって決まる。以下の説明では、波長分散によって伝送路特性が決定される場合を例として示す。
また、光伝送路3の伝送路特性は、実部および虚部を有する複素数として表される。
【0027】
伝送路特性算出器4が算出した光伝送路3の伝送路特性を伝送路特性Hとし、伝送路特性Hを周波数領域で表現したものを伝送路周波数特性H(f)とすると、伝送路周波数特性H(f)は、次式(1)で表される。
【0028】
H(f)=exp[jφ(DL)] ・・・(1)
【0029】
式(1)において、φはあらかじめ設定された定数、Dは光ファイバの材料に応じて決まる単位長さあたりの損失、Lはファイバ長を示しており、DとLとを乗算したものが波長分散量となる。
【0030】
タップ係数算出部5は、伝送路特性算出器4で算出された伝送路特性Hに基づいて、送信側フィルタ12に対する送信側タップ係数と、受信側フィルタ24に対する受信側タップ係数とを算出する。タップ係数算出部5は、算出した送信側タップ係数および受信側タップ係数を、それぞれ送信側フィルタ12および受信側フィルタ24に出力する。
【0031】
タップ係数算出部5は、まず、伝送路特性Hと伝送路特性Hに応じて設定される追加特性ΔHとを組み合わせて、合成特性Sを算出する。
追加特性ΔHを周波数領域で表現したものを追加周波数特性ΔH(f)とし、合成特性Sを周波数領域で表現したものを合成周波数特性S(f)とすると、追加周波数特性ΔH(f)および合成周波数特性S(f)は、それぞれ次式(2)および次式(3)で表される。
【0032】
ΔH(f)=exp[jφ(R)] ・・・(2)
S(f)=H(f)ΔH(f) ・・・(3)
【0033】
式(2)において、Rは、例えば5ns/nm以上の値とする。追加周波数特性ΔH(f)は、伝送路周波数特性H(f)が非常に小さい場合であっても、合成周波数特性S(f)が所定の値よりも大きな値になるように設定される。この所定の値としては、送信信号に合成特性の逆特性を付加した場合に、送信機から出力される信号のレベルが不安定になったり、受信信号が劣化したりしない値が、各光伝送路3に応じて設定される。
【0034】
続いて、タップ係数算出部5は、合成周波数特性S(f)の逆特性C(f)を算出する。
逆特性の算出方法としては、例えばZF(Zero Focing:ゼロ・フォーシング)基準の方法や、MMSE(Minimum Means Square Error:最小二乗誤差)基準の方法や、あらかじめ得られた送受信信号に対して逆行列を演算する方法等が考えられる。
ここで、例えばZF基準の方法を用いると、式(3)に示した合成周波数特性S(f)の逆特性C(f)は、次式(4)で表される。
【0035】
【数1】

【0036】
次に、タップ係数算出部5は、合成周波数特性S(f)の逆特性C(f)に基づいて、送信側タップ係数TTrを算出する。
送信側タップ係数TTrは、IDTF(Inverse Discrete Fourier Transform:逆離散フーリエ変換)を用いて、時間領域の複素数として次式(5)で表される。
【0037】
Tr(n)=IDFT[C(f)] (n:0・・・N−1) ・・・(5)
【0038】
式(5)において、nは、送信側フィルタ12の複素トランスバーサルフィルタのタップ数を示している。タップ数nは、伝送路インパルス応答よりも長い値(ここでは、N)として、タップ係数算出部5により設定される。
なお、送信側タップ係数TTrを周波数領域で表現すると、逆特性C(f)となる。
【0039】
続いて、タップ係数算出部5は、追加周波数特性ΔH(f)に基づいて、受信側タップ係数TReを算出する。
受信側タップ係数TReは、送信側タップ係数TTrと同様にして算出され、次式(6)で表される。
【0040】
Re(m)=IDFT[ΔH(f)] (m:0・・・M−1) ・・・(6)
【0041】
式(6)において、mは、受信側フィルタ24の複素トランスバーサルフィルタのタップ数を示している。タップ数mは、送信側フィルタ12の複素トランスバーサルフィルタのタップ数nよりも大きな値(ここでは、M)として、タップ係数算出部5により設定される。
なお、受信側タップ係数TReを周波数領域で表現すると、追加周波数特性ΔH(f)となる。
【0042】
以下、上記構成の送受信システムの動作について説明する。
まず、送信機1に入力されたデジタル信号は、信号マッピングされ、送信信号として出力される。
送信側フィルタ12に入力された送信信号は、送信側タップ係数TTrに応じて合成周波数特性S(f)の逆特性C(f)が付加され、複素信号であるフィルタ後送信信号として出力される。
ここで、送信信号をx(t)とし、送信信号x(t)およびフィルタ後送信信号を周波数領域で表現したものをそれぞれX(f)およびF(f)とすると、F(f)は、合成周波数特性S(f)の逆特性C(f)を用いて、次式(7)で表される。
【0043】
【数2】

【0044】
続いて、フィルタ後送信信号は、D/A変換器13でアナログ送信信号に変換され、E/O変換器14で光送信信号に変換されて、光伝送路3により伝送される。
ここで、光伝送路3により伝送された光送信信号を周波数領域で表現したものをR(f)とすると、R(f)は、光伝送路3の伝送路周波数特性H(f)を用いて、次式(8)で表される。
【0045】
【数3】

【0046】
次に、光伝送路3により伝送された光送信信号は、O/E変換器でアナログ受信信号に変換され、波形整形フィルタ22で受信帯域が制限され、A/D変換器23でデジタル信号に変換されて、デジタル受信信号として出力される。
受信側フィルタ24に入力されたデジタル受信信号は、受信側タップ係数TReに応じて追加周波数特性ΔH(f)が付加され、フィルタ後受信信号として出力される。
【0047】
ここで、フィルタ後受信信号を周波数領域で表現したものをD(f)とすると、D(f)は、追加周波数特性ΔH(f)を用いて、次式(9)で表される。
【0048】
D(f)=R(f)ΔH(f)=X(f) ・・・(9)
【0049】
式(9)において、送信信号x(t)を周波数領域で表現したものがX(f)なので、フィルタ後受信信号は、光伝送路3の伝送路特性Hに起因して発生する歪みが除去された信号になっていることが分かる。
【0050】
続いて、等化器25に入力されたフィルタ後受信信号は、光伝送路3の伝送路特性Hおよび追加特性ΔH(f)以外の原因で発生する信号の歪みが除去され、補償後受信信号として出力される。
次に、データ判定部26に入力された補償後受信信号は、データ判定が実行され、出力信号として出力される。
【0051】
この発明の実施の形態1に係る送受信システムによれば、タップ係数算出部5は、伝送路周波数特性H(f)と追加周波数特性ΔH(f)とを組み合わせて合成周波数特性S(f)を算出し、合成周波数特性S(f)に基づいて送信側タップ係数TTrを算出する。また、タップ係数算出部5は、追加周波数特性ΔH(f)に基づいて受信側タップ係数TReを算出する。送信側フィルタ12は、送信信号に対して、送信側タップ係数TTrに応じて合成周波数特性S(f)の逆特性C(f)を付加する。受信側フィルタ24は、デジタル受信信号に対して、受信側タップ係数TReに応じて追加周波数特性ΔH(f)を付加する。
そのため、送信機1から安定したレベルの信号を得るとともに、受信機2で受信した信号の劣化を防止することができる。
【0052】
なお、上記実施の形態1では、波長分散によって伝送路特性が決定される場合について説明したが、これに限定されない。
4光波混合、自己位相変調もしくは相互位相変調等の光ファイバの非線形歪み、または偏波モード分散によって伝送路特性が決定される場合、または分散や歪みが混合している場合であっても、同様に信号の歪みを除去することができる。
【0053】
実施の形態2.
図2は、この発明の実施の形態2に係る送受信システムを示すブロック構成図である。
図2において、この送受信システムは、図1に示した送信側フィルタ12に代えて、送信側テーブル値算出部15(テーブル値算出手段)および送信側RAM16を備えている。また、受信側フィルタ24に代えて、受信側テーブル値算出部26(テーブル値算出手段)および受信側RAM27を備えている。
その他の構成については、前述の実施の形態1と同様であり、その説明を省略する。
【0054】
送信側テーブル値算出部15は、タップ係数算出部5で算出された送信側タップ係数TTrに基づいて、送信側RAM16に対するルックアップテーブル値を算出し、送信側RAM16に記憶させる。
具体的には、送信側テーブル値算出部15は、送信側RAM16に入力されると考えられる送信信号の信号系列を入力値とし、各入力値と送信側タップ係数TTrとを乗算した値を出力とするテーブル値を算出する。
【0055】
受信側テーブル値算出部26は、タップ係数算出部5で算出された受信側タップ係数TReに基づいて、送信側テーブル値算出部15と同様にして受信側RAM27に対するルックアップテーブル値を算出し、受信側RAM27に記憶させる。
なお、送信側RAM16および受信側RAM27は、高速処理に対応するためにそれぞれ複数個設けられて、処理が並列して実行されるようにしてもよい。
【0056】
この発明の実施の形態2に係る送受信システムによれば、実施の形態1で示した送信側フィルタ12および受信側フィルタ24の代わりに、送信側テーブル値算出部15および受信側テーブル値算出部26と、送信側RAM16および受信側RAM27とを備えている。
そのため、送信側フィルタ12および受信側フィルタ24で必要となる乗算処理を不要にして演算量を削減するとともに、回路規模を縮小することができる。
【0057】
なお、上記実施の形態2では、送信側テーブル値算出部15および受信側テーブル値算出部26がそれぞれ送信機1Aおよび受信機1B内に設けられている。しかしながら、これに限定されず、送信側テーブル値算出部15および受信側テーブル値算出部26は、送信機1Aおよび受信機1Bの外部に設けられてもよい。
この場合も、上記実施の形態2と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】この発明の実施の形態1に係る送受信システムを示すブロック構成図である。
【図2】この発明の実施の形態2に係る送受信システムを示すブロック構成図である。
【符号の説明】
【0059】
1、1A 送信機、2、2B 受信機、3 光伝送路、4 伝送路特性算出器(伝送路特性算出手段)、5 タップ係数算出部(タップ係数算出手段)、12 送信側フィルタ(送信側特性付加手段)、15 送信側テーブル値算出部(テーブル値算出手段)、16 送信側RAM、24 受信側フィルタ(受信側特性付加手段)、26 受信側テーブル値算出部(テーブル値算出手段)、27 受信側RAM。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信機および受信機が、光伝送路を介して互いに接続された送受信システムであって、
前記送信機に設けられ、前記送信機に入力されて変調された送信信号に対して、送信側タップ係数に応じた特性を付加する送信側特性付加手段と、
前記受信機に設けられ、前記送信側特性付加手段から出力されて前記光伝送路により伝送された前記送信信号に対して、受信側タップ係数に応じた特性を付加する受信側特性付加手段と、
前記光伝送路の伝送路特性を算出する伝送路特性算出手段と、
前記送信側タップ係数および前記受信側タップ係数を算出するタップ係数算出手段と、を備え、
前記タップ係数算出手段は、前記伝送路特性と前記伝送路特性に応じて設定される追加特性とを組み合わせて合成特性を算出し、前記合成特性の逆特性に基づいて前記送信側タップ係数を算出するとともに、前記追加特性に基づいて前記受信側タップ係数を算出することを特徴とする送受信システム。
【請求項2】
前記送信側特性付加手段および前記受信側特性付加手段は、トランスバーサルフィルタであることを特徴とする請求項1に記載の送受信システム。
【請求項3】
前記送信側特性付加手段および前記受信側特性付加手段は、
前記送信側タップ係数または受信側タップ係数に基づいてルックアップテーブル値を算出するテーブル値算出手段と、
前記ルックアップテーブル値を記憶したRAMと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の送受信システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−188788(P2009−188788A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27325(P2008−27325)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人情報通信研究機構、「高速電気信号処理技術に基づく適応制御光トランスポートネットワークの研究」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】