説明

送受信装置

【課題】局部発振波およびRF信号の損失を極力小さくできる送受信装置を得る。
【解決手段】低周波帯域の基準信号を出力する基準信号生成装置5と、所望の変調信号を出力する変調信号生成装置6と、基準信号に応じて局部発振波を発生する高周波帯域の位相同期発振器11、および局部発振波により変調信号を周波数変換して送信信号を出力する送信用周波数変換器13を含む少なくとも1つの送信MMIC1と、基準信号に応じて局部発振波を発生する高周波帯域の位相同期発振器21、および局部発振波により受信信号を周波数変換して出力する受信用周波数変換器22を含む少なくとも1つの受信MMIC2とを備え、送信MMIC1の位相同期発振器11および受信MMIC2の位相同期発振器21は、基準信号に基づいて同期を確立し、送信MMIC1および受信MMIC2は、送信アンテナ3および受信アンテナ4の入出力端子の近傍に配置されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、送信アンテナを介してマイクロ波帯やミリ波帯の送信信号を放射するとともに、受信アンテナを介して送信信号を受信信号として受信する送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の送受信装置は、1つの局部発振源(高周波発振器)で発生した局部発振波を分配して、MMIC(モノリシックマイクロ波集積回路:Monolithic Microwave Integrated Circuit)化された送信部および受信部に供給し、注入同期現象により発振周波数が局部発振波の周波数にロックする高周波発振器を用いて、送信部および受信部の同期を確立している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−111636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
従来の送受信装置では、局部発振波を分配して送信部および受信部に供給するので、局部発振源から送信部または受信部までの物理的な長さによる高周波の損失が大きく、また分配する必要があるので、局部発振波の出力電力を大きくする必要がある。ここで、局部発振波の出力電力を大きくすると、放射による干渉が発生するという問題がある。
【0005】
また、近年では、シリコンIC等を用いて送受信系統を1チップで構成した送受信モジュール等が開発されているが、この送受信モジュールを複数のアンテナと接続する場合には、送受信モジュールとアンテナとの物理的な間隔が長く、特にミリ波帯では、高周波信号(RF信号)の大きな損失が発生するという問題もある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、局部発振波およびRF信号の損失を極力小さくすることができる送受信装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る送受信装置は、送信アンテナを介して送信信号を放射するとともに、受信アンテナを介して送信信号を受信信号として受信する送受信装置であって、低周波帯域の基準信号を出力する基準信号生成手段と、所望の変調信号を出力する変調信号生成手段と、基準信号に応じて局部発振波を発生する高周波帯域の位相同期発振器、および局部発振波により所望の変調信号を周波数変換して高周波の送信信号を出力する周波数変換器を含む少なくとも1つの送信MMICと、基準信号に応じて局部発振波を発生する高周波帯域の位相同期発振器、および局部発振波により受信信号を周波数変換して出力する周波数変換器を含む少なくとも1つの受信MMICとを備え、送信MMICの位相同期発振器および受信MMICの位相同期発振器は、基準信号に基づいて同期を確立し、送信MMICおよび受信MMICは、それぞれ送信アンテナおよび受信アンテナの入出力端子の近傍に配置されるものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係る送受信装置によれば、送信MMICの位相同期発振器および受信MMICの位相同期発振器は、基準信号生成手段からの低周波帯域の基準信号に基づいて同期を確立する。また、送信MMICおよび受信MMICは、それぞれ送信アンテナおよび受信アンテナの入出力端子の近傍に配置される。
これにより、局部発振波およびRF信号の減衰を抑制することができ、局部発振波およびRF信号の損失を極力小さくすることができる送受信装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1に係る送受信装置を示すブロック構成図である。
【図2】この発明の実施の形態2に係る送受信装置を示すブロック構成図である。
【図3】この発明の実施の形態3に係る送受信装置を示すブロック構成図である。
【図4】この発明の実施の形態4に係る送受信装置を示すブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の送受信装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明するが、各図において同一、または相当する部分については、同一符号を付して説明する。
なお、この発明の送受信装置は、レーダ装置や通信装置として用いられる。
【0011】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る送受信装置を示すブロック構成図である。
図1において、この送受信装置は、複数の送信MMIC1と、複数の受信MMIC2と、送信MMIC1の各々に接続された送信アンテナ3と、受信MMIC2の各々に接続された受信アンテナ4と、基準信号生成装置5(基準信号生成手段)と、変調信号生成装置6(変調信号生成手段)と、信号処理装置7とを備えている。ここで、各送信MMIC1および各受信MMIC2は、それぞれ送信アンテナ3および受信アンテナ4の入出力端子のごく近傍に配置される。
【0012】
送信MMIC1は、高周波帯域の位相同期発振器11と、IF(Intermediate Frequency)増幅器12と、送信用周波数変換器13と、RF(Radio Frequency)増幅器14とを有している。また、受信MMIC2は、高周波帯域の位相同期発振器21と、受信用周波数変換器22と、IF増幅器23とを有している。なお、位相同期発振器11と位相同期発振器21と、およびIF増幅器12とIF増幅器23とは、それぞれ互いに同一の機器である。
【0013】
以下、送受信装置の送信系統の機能について説明する。
基準信号生成装置5は、低周波帯域の基準信号を生成し、各送信MMIC1および各受信MMIC2にそれぞれ出力する。変調信号生成装置6は、所望の変調信号をIF信号として生成し、送信MMIC1に出力する。
【0014】
位相同期発振器11は、基準信号生成装置5からの基準信号に応じて局部発振波を発生させ、送信用周波数変換器13に出力する。このとき、各送信MMIC1の位相同期発振器11は、基準信号に基づいて同期を確立している。IF増幅器12は、変調信号生成装置6からの変調信号を増幅して送信用周波数変換器13に出力する。
【0015】
送信用周波数変換器13は、位相同期発振器11からの局部発振波により、IF増幅器12からの変調信号を周波数変換して、RF信号である送信信号をRF増幅器14に出力する。RF増幅器14は、送信用周波数変換器13からの送信信号を増幅して送信アンテナ3に出力する。送信アンテナ3に出力された送信信号は、電磁波として放射される。
【0016】
なお、送信MMIC1の内部の構成については、一例を示したにすぎず、必要な電力レベルに応じた増幅器や、周波数関係に応じた逓倍器等を追加または削除したり、高調波を用いた周波数変換器や、高調波を取り出す発振器等を用いたりしてもよい。
【0017】
ここで、送信MMIC1が送信アンテナ3の入力端子のごく近傍に配置されているので、RF信号の減衰を抑制することができる。また、送信アンテナ3が複数設けられている場合にも、この送信MMIC1をそれぞれの送信アンテナ3に接続することにより、同様の効果を得ることができる。すなわち、送受信系統を1チップで構成した場合には、実現することができない効果を得ることができる。また、何れの送信MMIC1も、同じ低周波数の基準信号によって同期を確立することが可能である。なお、この低周波帯域の基準信号は、デジタル信号であってもよい。
【0018】
続いて、送受信装置の受信系統の機能について説明する。
位相同期発振器21は、基準信号生成装置5からの基準信号に応じて局部発振波を発生させ、受信用周波数変換器22に出力する。このとき、各受信MMIC2の位相同期発振器21は、基準信号に基づいて同期を確立している。また、位相同期発振器21は、位相同期発振器11とも同期を確立している。
【0019】
受信アンテナ4は、送信アンテナ3から放射された送信信号を、受信信号として受信し、受信用周波数変換器22に出力する。受信用周波数変換器22は、位相同期発振器21からの局部発振波により、受信アンテナ4からの受信信号を周波数変換して、IF信号である復調信号をIF増幅器23に出力する。
【0020】
IF増幅器23は、受信用周波数変換器22からの復調信号を増幅して信号処理装置7に出力する。信号処理装置7は、IF増幅器23からの復調信号に対して所望の信号処理を実行する。
【0021】
なお、受信MMIC2の内部の構成については、一例を示したにすぎず、必要な電力レベルに応じた増幅器や、周波数関係に応じた逓倍器等を追加または削除したり、高調波を用いた周波数変換器や、高調波を取り出す発振器等を用いたりしてもよい。
【0022】
ここで、受信MMIC2が受信アンテナ4の出力端子のごく近傍に配置されているので、RF信号の減衰を抑制することができる。また、受信アンテナ4が複数設けられている場合にも、この受信MMIC2をそれぞれの受信アンテナ4に接続することにより、同様の効果を得ることができる。すなわち、送受信系統を1チップで構成した場合には、実現することができない効果を得ることができる。また、何れの受信MMIC2も、同じ低周波数の基準信号によって同期を確立することが可能である。なお、この低周波帯域の基準信号は、デジタル信号であってもよい。
【0023】
以上のように、実施の形態1によれば、送信MMICの位相同期発振器および受信MMICの位相同期発振器は、基準信号生成手段からの低周波帯域の基準信号に基づいて同期を確立する。また、送信MMICおよび受信MMICは、それぞれ送信アンテナおよび受信アンテナの入出力端子の近傍に配置される。
これにより、局部発振波およびRF信号の減衰を抑制することができ、各MMICの位相同期を確立した状態で、局部発振波およびRF信号の損失を極力小さくすることができる送受信装置を得ることができる。
【0024】
また、送受信のアイソレーション性能を高めることができ、通信およびレーダ性能を向上させることができる。
また、送信と受信とが別々のアンテナの場合、または個々のアンテナの間隔が広い場合には、チップ間の物理的な距離が長くなるが、実施の形態1によれば、RF信号や局部発振波の減衰が生じることはない。
【0025】
実施の形態2.
図2は、この発明の実施の形態2に係る送受信装置を示すブロック構成図である。
図2において、この送受信装置は、複数の送信MMIC1Aと、複数の受信MMIC2Aと、送信MMIC1Aの各々に接続された送信アンテナ3と、受信MMIC2Aの各々に接続された受信アンテナ4と、基準信号生成装置5と、変調信号制御装置8(変調信号生成手段)と、信号処理装置7とを備えている。ここで、各送信MMIC1Aおよび各受信MMIC2Aは、それぞれ送信アンテナ3および受信アンテナ4の入出力端子のごく近傍に配置される。
【0026】
送信MMIC1Aは、周波数変換機能を有する高周波帯域の位相同期発振器15と、RF増幅器14とを有している。ここで、位相同期発振器15は、図1に示した位相同期発振器11と送信用周波数変換器13とが一体化されて構成される機器である。また、受信MMIC2Aは、周波数変換機能を有する高周波帯域の位相同期発振器24と、受信用周波数変換器22と、IF増幅器23とを有している。なお、位相同期発振器15と位相同期発振器24とは、互いに同一の機器である。
【0027】
以下、送受信装置の送信系統の機能について説明する。なお、実施の形態1と同様の機能については、説明を省略する。
変調信号制御装置8は、所望の変調信号を含む制御信号を生成し、送信MMIC1Aに出力する。位相同期発振器15は、基準信号生成装置5からの基準信号および変調信号制御装置8からの制御信号に基づいて、基準信号と同期し、かつ制御信号に応じて周波数変換された送信信号をRF増幅器14に出力する。
【0028】
なお、送信MMIC1Aの内部の構成については、一例を示したにすぎず、必要な電力レベルに応じた増幅器や、周波数関係に応じた逓倍器等を追加または削除したり、高調波を用いた周波数変換器や、高調波を取り出す発振器等を用いたりしてもよい。
ここで、送信MMIC1Aが送信アンテナ3の入力端子のごく近傍に配置されているので、RF信号の減衰を抑制することができ、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0029】
続いて、送受信装置の受信系統の機能について説明する。なお、実施の形態1と同様の機能については、説明を省略する。
位相同期発振器24は、基準信号生成装置5からの基準信号に応じて局部発振波を発生させ、受信用周波数変換器22に出力する。このとき、必要に応じて位相同期発振器24に変調信号制御装置8を接続することにより、この局部発振波に変調をかけることができる。
【0030】
なお、受信MMIC2Aの内部の構成については、一例を示したにすぎず、必要な電力レベルに応じた増幅器や、周波数関係に応じた逓倍器等を追加または削除したり、高調波を用いた周波数変換器や、高調波を取り出す発振器等を用いたりしてもよい。
ここで、受信MMIC2Aが受信アンテナ4の出力端子のごく近傍に配置されているので、RF信号の減衰を抑制することができ、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0031】
以上のように、実施の形態2によれば、送信MMICの位相同期発振器および受信MMICの位相同期発振器は、基準信号生成手段からの低周波帯域の基準信号に基づいて同期を確立する。また、送信MMICおよび受信MMICは、それぞれ送信アンテナおよび受信アンテナの入出力端子の近傍に配置される。
これにより、上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0032】
実施の形態3.
図3は、この発明の実施の形態3に係る送受信装置を示すブロック構成図である。
図3において、この送受信装置は、複数の送信MMIC1Bと、複数の受信MMIC2Bと、送信MMIC1Bの各々に接続された送信アンテナ3と、受信MMIC2Bの各々に接続された受信アンテナ4と、基準信号生成装置5と、変調信号生成装置6と、信号処理装置7と、周波数/位相設定データ生成装置9(周波数/位相設定データ生成手段)とを備えている。ここで、各送信MMIC1Bおよび各受信MMIC2Bは、それぞれ送信アンテナ3および受信アンテナ4の入出力端子のごく近傍に配置される。また、送信アンテナ3および受信アンテナ4は、それぞれアレー状に配置されている。
【0033】
送信MMIC1Bは、図1に示した位相同期発振器11に代えて、DDS(ダイレクトデジタルシンセサイザ:Direct Digital Synthesizer)またはDDSを用いた位相同期発振器16を有している。また、受信MMIC2Bは、図1に示した位相同期発振器21に代えて、DDSまたはDDSを用いた位相同期発振器25を有している。なお、位相同期発振器16と位相同期発振器25とは、互いに同一の機器である。その他の構成は、上述した実施の形態1と同様なので、説明を省略する。
【0034】
以下、送受信装置の送信系統の機能について説明する。なお、実施の形態1と同様の機能については、説明を省略する。
周波数/位相設定データ生成装置9は、所望の周波数および位相を設定するための設定データ信号を生成し、送信MMIC1Bに出力する。位相同期発振器16は、基準信号生成装置5からの基準信号、および周波数/位相設定データ生成装置9からの設定データ信号に基づいて、基準信号と同期し、かつ設定データ信号に応じて周波数および位相が設定された局部発振波を発生させ、送信用周波数変換器13に出力する。
【0035】
なお、送信MMIC1Bの内部の構成については、一例を示したにすぎず、必要な電力レベルに応じた増幅器や、周波数関係に応じた逓倍器等を追加または削除したり、高調波を用いた周波数変換器や、高調波を取り出す発振器等を用いたりしてもよい。
【0036】
ここで、送信MMIC1Bが送信アンテナ3の入力端子のごく近傍に配置されているので、RF信号の減衰を抑制することができ、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。さらに、発振源として、DDSまたはDDSを用いた位相同期発振器16を用いることにより、それぞれの送信MMIC1Bで位相を設定することができるので、アレー状に配置した送信アンテナ3から放射されるビームの方向を制御することができる。
【0037】
続いて、送受信装置の受信系統の機能について説明する。なお、実施の形態1と同様の機能については、説明を省略する。
位相同期発振器25は、基準信号生成装置5からの基準信号、および周波数/位相設定データ生成装置9からの設定データ信号に基づいて、基準信号と同期し、かつ設定データ信号に応じて周波数および位相が設定された局部発振波を発生させ、受信用周波数変換器22に出力する。
【0038】
なお、受信MMIC2Bの内部の構成については、一例を示したにすぎず、必要な電力レベルに応じた増幅器や、周波数関係に応じた逓倍器等を追加または削除したり、高調波を用いた周波数変換器や、高調波を取り出す発振器等を用いたりしてもよい。
【0039】
ここで、受信MMIC2Bが受信アンテナ4の出力端子のごく近傍に配置されているので、RF信号の減衰を抑制することができ、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。さらに、発振源として、DDSまたはDDSを用いた位相同期発振器25を用いることにより、それぞれの受信MMIC2Bで位相を設定することができるので、アレー状に配置した受信アンテナ4に受信されるビームの方向を制御することができる。
【0040】
以上のように、実施の形態3によれば、送信MMICのダイレクトデジタルシンセサイザおよび受信MMICのダイレクトデジタルシンセサイザは、基準信号生成手段からの低周波帯域の基準信号に基づいて同期を確立する。また、送信MMICおよび受信MMICは、それぞれ送信アンテナおよび受信アンテナの入出力端子の近傍に配置される。
これにより、上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0041】
また、送信アンテナおよび受信アンテナの少なくとも一方は、アレー状に複数配置されており、ダイレクトデジタルシンセサイザは、基準信号生成手段からの基準信号、および周波数/位相設定データ生成手段からの設定データ信号に基づいて、基準信号と同期し、かつ設定データ信号に応じて周波数および位相が設定された局部発振波を発生させる。
そのため、アレー状に配置したアンテナのビーム走査を行うことができる。
【0042】
実施の形態4.
図4は、この発明の実施の形態4に係る送受信装置を示すブロック構成図である。
図4において、この送受信装置は、複数の送信MMIC1Cと、複数の受信MMIC2Cと、送信MMIC1Cの各々に2つ接続された送信アンテナ3と、受信MMIC2Cの各々に2つ接続された受信アンテナ4と、基準信号生成装置5と、変調信号生成装置6と、信号処理装置7とを備えている。ここで、各送信MMIC1Cおよび各受信MMIC2Cは、それぞれ送信アンテナ3および受信アンテナ4の入出力端子のごく近傍に配置される。
【0043】
送信MMIC1Cは、2つの送信系を有している。すなわち、送信MMIC1Cは、高周波帯域の位相同期発振器11と、それぞれ2つのIF増幅器12、送信用周波数変換器13およびRF増幅器14とを有している。また、受信MMIC2C、高周波帯域の位相同期発振器21と、それぞれ2つの受信用周波数変換器22およびIF増幅器23とを有している。なお、位相同期発振器11と位相同期発振器21と、およびIF増幅器12とIF増幅器23とは、それぞれ互いに同一の機器である。その他の構成および機能は、上述した実施の形態1と同様なので、説明を省略する。
【0044】
ここで、1つのMMICに、2つの送信系統または受信系統と各系統に共通の位相同期発振器とを設けることにより、実施の形態1〜3に示した送受信装置と比較して、MMICの合計面積を縮小することができる。また、この場合に、各MMICを、2つのアンテナからほぼ等距離となる位置に配置することにより、実施の形態1〜3と同様の効果を得ることができる。ただし、アレー状に配置したアンテナのビーム走査について、発振器で位相を制御する場合には、1つのMMIC内の2系統は、互いに同じ位相となる。この場合には、それぞれの系統に移相器等の移相手段を設けることにより、解決することができる。
【0045】
以上のように、実施の形態4によれば、送信MMICのダイレクトデジタルシンセサイザおよび受信MMICのダイレクトデジタルシンセサイザは、基準信号生成手段からの低周波帯域の基準信号に基づいて同期を確立する。また、送信MMICおよび受信MMICは、それぞれ送信アンテナおよび受信アンテナの入出力端子の近傍に配置される。
これにより、上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0046】
また、送信MMICおよび受信MMICの少なくとも1つは、高周波帯域の位相同期発振器およびダイレクトデジタルシンセサイザの何れかを共通で使用する複数の送信系統または受信系統を有する。
そのため、送信MMICおよび受信MMICの合計面積を縮小することができる。
【0047】
なお、上記実施の形態1〜4では、MMIC上に1チップ化された送信系統および受信系統を例に挙げて説明した。しかしながら、モノリシック化する範囲についてはこの限りでなく、アンテナの入出力端子の近傍に配置されること、および送信MMICおよび受信MMICの各々に発振器が設けられている限り複数のチップに分割したり、市販されているディスクリート部品を用いたり、または逆に電源制御回路等をチップ内に内蔵したりしてもよい。
これらの場合には、例えば汎用品を用いて送受信装置を安価に構成することができる。
【符号の説明】
【0048】
1、1A〜1C 送信MMIC、2、2A〜2C 受信MMIC、3 送信アンテナ、4 受信アンテナ、5 基準信号生成装置(基準信号生成手段)、6 変調信号生成装置(変調信号生成手段)、8 変調信号制御装置(変調信号生成手段)、9 位相設定データ生成装置(周波数/位相設定データ生成手段)、11、15、16、21、24、25 位相同期発振器、13 送信用周波数変換器、22 受信用周波数変換器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信アンテナを介して送信信号を放射するとともに、受信アンテナを介して前記送信信号を受信信号として受信する送受信装置であって、
低周波帯域の基準信号を出力する基準信号生成手段と、
所望の変調信号を出力する変調信号生成手段と、
前記基準信号に応じて局部発振波を発生する高周波帯域の位相同期発振器、および前記局部発振波により前記所望の変調信号を周波数変換して高周波の前記送信信号を出力する周波数変換器を含む少なくとも1つの送信MMICと、
前記基準信号に応じて局部発振波を発生する高周波帯域の位相同期発振器、および前記局部発振波により前記受信信号を周波数変換して出力する周波数変換器を含む少なくとも1つの受信MMICと、を備え、
前記送信MMICの位相同期発振器および前記受信MMICの位相同期発振器は、前記基準信号に基づいて同期を確立し、
前記送信MMICおよび前記受信MMICは、それぞれ前記送信アンテナおよび前記受信アンテナの入出力端子の近傍に配置される
ことを特徴とする送受信装置。
【請求項2】
前記送信アンテナおよび前記受信アンテナの少なくとも一方は、アレー状に複数配置されており、
所望の周波数および位相を設定するための設定データ信号を出力する周波数/位相設定データ生成手段をさらに備え、
前記高周波帯域の位相同期発振器の代わりに、前記基準信号および前記設定データ信号に基づいて、前記基準信号と同期し、かつ前記設定データ信号に応じて周波数および位相が設定された局部発振波を発生させるダイレクトデジタルシンセサイザを備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の送受信装置。
【請求項3】
前記送信MMICおよび前記受信MMICの少なくとも1つは、前記高周波帯域の位相同期発振器および前記ダイレクトデジタルシンセサイザの何れかを共通で使用する複数の送信系統または受信系統を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の送受信装置。
【請求項4】
前記送信MMICおよび前記受信MMICの少なくとも1つは、複数に分割されたICで構成されることを特徴とする請求項1から請求項3までの何れか1項に記載の送受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−273283(P2010−273283A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125530(P2009−125530)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】