説明

送液方法、液体混合方法、送液装置、液体混合装置及び燃料電池装置

【課題】安定して該2種以上の液体を所定の割合で送ることができる送液方法及び装置、これを利用することで安定して2種以上の液体を所定の割合で混合できる液体混合方法及び装置、さらには発電性能、効率の良好な小形の燃料電池装置を提供する。
【解決手段】2種以上の液体のそれぞれに対して1又は2以上のマイクロポンプP1〜P11を設け、且つ、少なくとも1種の液体については複数個のポンプP2〜P11を設け、いずれのポンプも同性能のポンプとし、一つのポンプP1を設けた液についてはそれを運転するとともに、2以上のポンプP2〜P11を設けた液についてはそれらのうちから、所定の送液割合に応じて、運転するポンプ数を決定してそれらを運転することで、該2種以上の液体を所定の送液割合で送る送液方法及び装置。これらを利用した液体混合方法及び装置100、並びに燃料電池装置C1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2種以上の液体を所定の送液割合で送るための送液方法及び送液装置に関し、さらに、該送液方法、送液装置を利用した液体混合方法、液体混合装置及び燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロマシン技術を応用して化学分析や合成などのための装置や手法を微細化して該分析や合成などを行うμ−TAS(μ−Total Analysis System)が注目されている。旧来の分析、合成等を行う装置に比べ微細化されたμ−TASでは、試料の量が少なく済む、反応時間が短い、廃棄物が少ない等のメリットがある。また、医療分野に採用した場合、検体(血液)の量を少なくすることで患者の負担を軽減でき、試薬の量を少なくすることで検査のコストを下げることができる。さらに、検体及び試薬の量が少ないことから反応時間が大幅に短縮され検査の効率化がはかれる。μ−TASは携帯性にも優れており医療検査、環境分析等の広い分野での応用が期待されている。
【0003】
かかるμ−TASではマイクロ流体システムが採用されることがある。マイクロ流体システムを用いる化学分析、環境計測等では、分析、計測等を行うデバイス(チップ)上で送液、液体混合、検出を行うために、マイクロポンプやシリンジポンプ等の送液手段が必要とされる。しかし、例えばチップと送液手段が切り離されている場合、両者を何らかのインターフェースで接続する必要があるが、その接続時に気泡が混入する等の問題が発生する。また、該両者接続部のデッドボリュームが大きくなり、そのために精密な送液制御が困難であったり、無駄な検体や試薬を必要としたりする。さらに、シリンジポンプ等の外付け送液手段を接続した場合、チップを含む装置全体が大きくなり、マイクロ流体システムの利点が生かせない。
【0004】
この点、例えば、特開2001−322099号公報は、分析、計測、検査等を行うデバイス(チップ)に搭載可能のコンパクトで嵩張らない薄型に形成可能の、圧電素子駆動型マイクロポンプを開示しており、特開2002−214241号公報は、かかるマイクロポンプを利用したコンパクトで嵩張らない薄型に形成可能の液体供給機構及びこれを利用した液体混合機構を搭載した、被検査液体と試薬との反応を検出するマイクロチップを開示している。さらに、特開2003−220322号公報は、かかるマイクロポンプを利用したコンパクトで嵩張らない薄型に形成可能の、改良された液体の拡散混合機構を開示している。
【0005】
ところで、複数種類の液体の送液、混合等が要求される分野は分析、計測、検査の分野に限られない。
ユビキタス社会の幕開けとともに電池の長寿命に対する要求が高まってきている。従来のリチウム電池はその理論限界に近づきつつあり、これ以上の大幅な性能向上は望めなくなりつつある。そんな中、重量(容積)あたりのエネルギー密度の高さから従来の電池に比べて大幅な長寿命化が可能な燃料電池が注目されている。
【0006】
燃料電池の中でも特に(1) 構造が簡単、(2) 大規模なインフラ整備を要することなく燃料の入手が容易、(3) 低コスト、低温での動作が可能などの点で、例えば携帯機器(ノート形パーソナルコンピュータ、携帯電話器等)向けの燃料電池として適していると言える直接メタノール形燃料電池(DMFC:Direct Methanol Fuel Cell)が注目されており、盛んに研究されている。
【0007】
DMFC型燃料電池を採用した燃料電池装置は燃料供給の方法により二つのタイプに分類される。一つはアクティブ型と呼ばれるもので、電池への燃料供給をポンプにより行うタイプであり、もう一つはパッシブ型と呼ばれるもので、ポンプを用いずに毛細管力等により燃料を供給するタイプである。
【0008】
ここでDMFCの反応式を示す。
燃料極側での反応:CH3 OH+H2 O→CO2 +6e- +6H+
空気極側での反応:(3/2) O2 +6H+ +6e- →3H2
全反応 :CH3 OH+(3/2) O2 →CO2 +2H2
【0009】
この反応式によればメタノールと水は等モルで反応し、CO2 と2分子のH2 Oを生成する。ところが実際に燃料極に供給される燃料には通常濃度が3〜5%と低濃度のメタノール水溶液が用いられる。その理由は、メタノールが燃料極で上記の反応を起こさないまま電解質膜を透過して空気極へ到達してしまうというクロスオーバーという現象を防ぐためである。クロスオーバー現象は燃料中のメタノール濃度が高いほど起こりやすい。このようなクロースオーバー現象が発生すると、DMFCの二つの極(燃料極及び空気極)のうち燃料極で起こるべきメタノールの反応が空気極でも起こり、燃料の無駄と空気極側の電位低下による電池効率の著しい低下が起こる。従って、通常上記の低濃度のメタノール水溶液が用いられる。
【0010】
このようにDMFCでは燃料極へ低濃度メタノール水溶液を供給するのであるが、前記のアクティブ型燃料電池装置では、空気極側で生成される水を回収してこの生成水で高濃度メタノール水溶液を希釈(混合の1種)しながら燃料極に供給する燃料希釈循環形のシステムを構築することが可能である。
【0011】
発明者の考えによれば、1例として図12の発電システムを示すことができる。図12に示すシステムでは、通電されるべき負荷Lが燃料電池(DMFC)Cに接続されており、電池の外部に燃料タンクt1、回収タンクt2及びミキサー(混合タンク)MXが設けられていて、これらは配管により燃料電池Cに接続されている。燃料電池Cの空気極側で生成される水はポンプPM3で回収タンクt2へ回収される。発電にあたっては、燃料タンクt1からポンプPM1で高濃度メタノール水溶液を、回収タンクt2からポンプPM2で希釈用液を、それぞれミキサーMXへ供給し、そこでそれらを混合することで高濃度メタノール水溶液を希釈しつつ、該希釈されたメタノール水溶液を電池の燃料極へ供給する。燃料極へ供給された燃料のうち過剰分は回収タンクt2へ回収する。
【0012】
燃料極へ供給する燃料中のメタノール濃度を適正化するために、ミキサーMXから電池へ向かう燃料のメタノール濃度を濃度検出センサDSで検出し、この検出値に基づいてコントローラCONTがポンプPM1、PM2の動作をコントロールするようにし、これによりミキサーへ供給する高濃度メタノール水溶液の量と希釈用液の量の割合を調整することも可能である。
【0013】
このシステムによると、燃料タンク中のメタノール濃度を上げることが可能になり、例えば60wt%メタノール水溶液を用いれば当初から3wt%〜5wt%メタノール水溶液を用いる場合に比べて略1/20〜1/12に燃料タンクを小さくすることができる。
【0014】
この他、例えば、特開2003−132924号公報には、メタノールタンクから、このタンクに付設されたバルブの操作により高濃度メタノール水溶液を希釈タンクへ供給する一方、燃料電池本体の空気極で生成された水を該希釈タンクへ回収し、該希釈タンクにおいてメタノールタンクからのメタノール水溶液を回収水で希釈し、希釈されたメタノール水溶液を電池の燃料極へ供給することが開示されている。
【0015】
さらに、該希釈タンクにおけるメタノール水溶液のメタノール濃度を検出し、その検出結果に基づいて前記バルブの開き量を調整することでメタノールタンクから希釈タンクへ供給する高濃度メタノール水溶液量を調整することで、燃料極へ供給するメタノール水溶液のメタノール濃度を制御することも開示されている。
【0016】
また、特開2003−346846号公報には、電池本体の外部に設けた混合室へ、メタノールタンクからメタノール水溶液を、さらに電池本体から未使用メタノール溶液や副生成物をそれぞれ流入させるとともに該混合室内燃料を電池へ導くための回路を設け、電池本体の燃料導入室或いはそれに通じる液通路の容積をそれらに対して設けた圧電アクチュエータで増減させることで該回路に燃料を循環させることが開示されている。この燃料電池装置においても、メタノールタンクに高濃度メタノール水溶液を収容しておき、これを電池本体から混合室へ回収されてくる水で希釈し、該希釈メタノール水溶液を燃料として用いることが可能であると考えられる。
このようにDMFC形の燃料電池を採用した燃料電池装置においても、2種類の液体(メタノール含有液と希釈用液)の送液、混合希釈が求められている。
【0017】
【特許文献1】特開2001−322099号公報
【特許文献2】特開2002−214241号公報
【特許文献3】特開2003−220322号公報
【特許文献4】特開2003−132924号公報
【特許文献5】特開2003−346846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、前記特開2001−322099号公報に記載されたマイクロポンプを利用した、特開2002−214241号公報や特開2003−220322号公報に開示されている送液機構や液体混合機構においては、例えば2種類の液体を1:1或いはそれに近い割合で送液したり、混合したりする場合には実質上問題はないが、1:1から大きく離れた割合、例えば1:10の割合で送液し、混合するような場合には、2液を精度よく1:10の割合で送液し、混合するためにマイクロポンプの駆動用圧電素子に印加する駆動波形や該圧電素子の駆動方法を工夫する必要がある。
【0019】
また、駆動波形等を変更しても流量が1対10にならない場合はポンプの性能自体を1対10になるように個々のポンプを設計する必要があるが、個々のポンプの性能を異ならせる場合には、外乱の影響(例えば下流側の液体の状態(抵抗等)の変化)により個々のポンプの特性の変化率も異なってきて、液体の混合(混合希釈を含む)の割合が安定しなくなる。
このような問題は、特開2001−322099号公報に開示されたマイクロポンプを採用する場合だけでなく、一般にマイクロ流体システムに利用できるマイクロポンプ利用の送液機構や液体混合機構について発生する問題である。
【0020】
また、燃料電池におけるメタノール水溶液と希釈液との混合希釈についてみると、図12に例示するようなアクティブ型燃料電池装置は、電池本体以外に燃料供給、希釈液供給、液回収用と三つのポンプ、さらに、高濃度メタノール水溶液と回収液とのミキシング機構(ミキサー)が必要となり、装置が大型化、複雑化し、例えば携帯機器用の電池装置には不向きである。
【0021】
なお、燃料電池装置の大型化を抑制するためにポンプを必要としないパッシブ型DMFCを採用した高濃度メタノール水溶液希釈型の装置が考えられるが、各液の流量等についての積極的な制御を行えない難点がある。
【0022】
特開2003−132924号公報や特開2003−346846号公報に開示された燃料電池装置では、電池本体以外に高濃度メタノール水溶液と水とのミキシング機構(ミキシング用のタンク)を必要とし、それだけ装置が大型化する。
【0023】
以上、燃料電池装置に関しては、直接メタノール形燃料電池が採用され、メタノール水溶液を水を含む希釈液で希釈して該希釈メタノール水溶液を該電池の燃料極へ供給するタイプの燃料電池装置を中心にその問題点を指摘してきたが、一般的に言って、燃料として液体燃料が使用される燃料電池が採用され、該液体燃料を希釈用液で希釈して該希釈液体燃料を該電池へ供給するタイプの燃料電池装置においては、液体燃料と希釈用液とを混合するミキシング機構(例えば混合タンク)が電池本体外に必要となり、該ミキシング機構のために燃料電池装置が大型化するという難点があった。
【0024】
そこで本発明は、マイクロポンプにより2種以上の液体を所定の割合で送る送液方法及び装置であって、安定して該2種以上の液体を所定の割合で送ることができる送液方法及び装置を提供することを課題とする。
また本発明は、かかる送液装置であって、全体をコンパクトに小形に形成できる送液装置を提供することを課題とする。
【0025】
また本発明は、マイクロポンプにより2種以上の液体を所定の割合で送って混合する液体混合方法及び装置であって、安定して該2種以上の液体を所定の割合で混合することができる液体混合方法及び装置を提供することを課題とする。
また本発明は、かかる液体混合装置であって、全体をコンパクトに小形に形成できる液体混合装置を提供することを課題とする。
【0026】
さらに本発明は、燃料として液体燃料が使用される燃料電池が採用され、該液体燃料を希釈用液で希釈して希釈液体燃料を該燃料電池へ供給する燃料電池装置であって、液体燃料の希釈用液による希釈を安定して精度よく行うことができ、それだけ発電性能及び効率が良好であり、しかも全体をコンパクトに小形に形成できる燃料電池装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
(1)送液方法及び送液装置
前記課題を解決する本発明の送液方法及び装置は次のものである。
<送液方法>
2種以上の液体を所定の送液割合で送る送液方法であり、
該2種以上の液体のそれぞれに対して1又は2以上の送液用マイクロポンプを設け、且つ、該2種以上の液体のうち少なくとも1種の液体については複数個の送液用マイクロポンプを設け、いずれの送液用マイクロポンプも同性能のポンプとし、
一つのマイクロポンプを設けた液については該一つのマイクロポンプを運転するとともに、2以上のマイクロポンプを設けた各液については該2以上のマイクロポンプのうちから、前記送液割合に応じて、運転するマイクロポンプ数を決定して該数のマイクロポンプを運転することで、該2種以上の液体を所定の送液割合で送る送液方法。
【0028】
<送液装置>
2種以上の液体を所定の送液割合で送るための送液装置であり、
該2種以上の液体のそれぞれに対して1又は2以上の送液用マイクロポンプが設けられており、且つ、該2種以上の液体のうち少なくとも1種の液体については複数個の送液用マイクロポンプが設けられており、いずれの送液用マイクロポンプも同性能のポンプである送液装置。
【0029】
この送液装置によると、一つのマイクロポンプを設けた液については該一つのマイクロポンプを運転するとともに、2以上のマイクロポンプを設けた各液については該2以上のマイクロポンプのうちから、前記送液割合に応じて、運転するマイクロポンプ数を決定して該数のマイクロポンプを運転することで、該2種以上の液体を所定の送液割合で送ることができる。
【0030】
(2)液体混合方法及び液体混合装置
前記課題を解決する本発明の液体混合方法及び装置は次のものである。
<液体混合方法>
2種以上の液体を所定の送液割合で送って混合する液体混合方法であり、
該2種以上の液体のそれぞれに対して1又は2以上の送液用マイクロポンプを設け、且つ、該2種以上の液体のうち少なくとも1種の液体については複数個の送液用マイクロポンプを設けるとともに、該2種以上の液体のそれぞれに対して設けられた送液用マイクロポンプのそれぞれに連通する共通の混合流路を設け、いずれの送液用マイクロポンプも同性能のポンプとし、
一つのマイクロポンプを設けた液については該一つのマイクロポンプを運転するとともに、2以上のマイクロポンプを設けた各液については該2以上のマイクロポンプのうちから、前記送液割合に応じて、運転するマイクロポンプ数を決定して該数のマイクロポンプを運転することで、該2種以上の液体を所定の送液割合で前記混合流路へ送って合流させ混合(混合による希釈も含む)する液体混合方法。
【0031】
<液体混合装置>
2種以上の液体を所定の送液割合で送って混合する液体混合装置であり、
該2種以上の液体のそれぞれに対して1又は2以上の送液用マイクロポンプが設けられており、且つ、該2種以上の液体のうち少なくとも1種の液体については複数個の送液用マイクロポンプが設けられているとともに、該2種以上の液体のそれぞれに対して設けられた送液用マイクロポンプのそれぞれに連通する共通の混合流路が設けられており、いずれの送液用マイクロポンプも同性能のポンプである液体混合装置。
【0032】
この液体混合装置によると、一つのマイクロポンプを設けた液については該一つのマイクロポンプを運転するとともに、2以上のマイクロポンプを設けた各液については該2以上のマイクロポンプのうちから、前記送液割合に応じて、運転するマイクロポンプ数を決定して該数のマイクロポンプを運転することで、該2種以上の液体を所定の送液割合で前記混合流路へ送って合流させ混合(混合による希釈も含む)することができる。
【0033】
本発明に係る送液方法及び装置、液体混合方法及び装置では、扱う2種以上の液体のそれぞれについて複数のマイクロポンプを採用してもよい。その場合、各液について、所定の送液割合や混合割合に応じて、該液用の複数のマイクロポンプの全部又は一部を運転することで、該2種以上の液体を所定の割合で送ったり、送って混合したりすることになる。
【0034】
本発明に係る送液方法及び装置、液体混合方法及び装置によると、送液のための複数のマイクロポンプとして、ポンプ間においてポンプ性能にバラツキがない同性能のもの(例えば同構造、同サイズであることで同性能であるもの)を採用するので、送液対象或いは送液混合対象である2種以上の液体の送液割合を、運転するポンプの数を選択することで容易に調整して、該2種以上の液体を安定して所定の送液割合で送液或いは送液混合することができる。例えば、ポンプ下流側において液体の状態の変化(例えば流れに対する抵抗変化、例えば混合することや温度変化により液体の粘度が変動することなどに起因する抵抗変化など)が生じるようなことがあっても、安定して所定の送液割合で送液或いは送液混合することができる。
【0035】
また、運転するマイクロポンプの数を変更することで、容易に送液割合或いは送液混合割合を変更することも可能である。
さらに、全体として複数のマイクロポンプが採用されているにも拘らず,それらポンプは同性能のものであるから、ポンプの駆動回路の簡略化も可能である。
【0036】
本発明に係る送液装置,液体混合装置では、送液ポンプとしてマイクロポンプを用いるので、それだけ装置をコンパクト化、小型化することが可能である。
かかるマイクロポンプの代表例として、液体を吸引するための第1絞り流路、液体を吐出するための第2絞り流路、該第1、第2の絞り流路間のポンプ室、該ポンプ室の可撓性壁に設置された圧電素子を含んでおり、該圧電素子で該ポンプ室壁を振動させることでポンプ室を収縮膨張させて該第1絞り流路からポンプ室内へ液体を吸引し、該第2絞り流路からポンプ室内液体を吐出するポンプを挙げることができる。
【0037】
このタイプのマイクロポンプはアクチュエータに圧電素子を採用しており、液体流路については例えばフィルムや板状体のエッチング処理等により溝や凹所を形成する等し、このフィルムや板状体に第2のフィルムや板状体を貼り合わせて形成できるので、全体としてコンパクトに薄型、小形に形成することが可能であり、ひいては送液装置や液体混合装置のコンパクト化、薄型化、小形化を可能にする。
【0038】
いずれにしても、かかる圧電素子利用のマイクロポンプの駆動は交番電圧を該圧電素子に印加するポンプ駆動部を用いて行えばよいが、該交番電圧の周波数として20kHz以上の周波数を採用すれば、ポンプ駆動音が人間には聞こえなくなり、送液装置や液体混合装置の運転を騒音による不快感なく行える。
いずれにしても、本発明に係る液体混合方法及び装置では、前記の混合流路として、混合対象液体の所定の混合を確実化するために蛇行流路とし、混合能を向上させてもよい。
【0039】
(3)液体燃料装置
前記課題を解決する液体燃料装置は次のものである。
燃料として液体燃料が使用される燃料電池が採用され、該液体燃料と希釈用液を所定の送液割合で供給して混合することで該液体燃料を希釈し、希釈液体燃料を該燃料電池へ供給する燃料電池装置であり、該燃料電池に第1ポンプユニットが積層されており、該第1ポンプユニットは、該液体燃料及び希釈用液のそれぞれに対して1又は2以上の送液用マイクロポンプを有しており、且つ、該液体燃料及び希釈用液のうち少なくとも一方に対しては複数個の送液用マイクロポンプを有しているとともに、該液体燃料及び希釈用液のそれぞれに対して設けられた送液用マイクロポンプのそれぞれに連通する共通の混合流路を有しており、該混合流路から希釈液体燃料を前記燃料電池へ供給するものであり、いずれの送液用マイクロポンプも同性能のポンプである燃料電池装置。
【0040】
この燃料電池装置によると、第1ポンプユニットにおける一つのマイクロポンプを設けた液については該一つのマイクロポンプを運転するとともに、2以上のマイクロポンプを設けた液については該2以上のマイクロポンプのうちから、運転するマイクロポンプ数を決定して該数のマイクロポンプを運転することで、液体燃料及び希釈用液を所定の送液割合で前記混合流路へ送って合流、混合させることで希釈液体燃料を得、これを燃料電池に供給して発電することができる。
【0041】
この燃料電池装置においても、液体燃料と希釈用液のそれぞれについて複数のマイクロポンプを採用してもよい。その場合、各液について、所定の送液混合希釈割合に応じて、該液用の複数のマイクロポンプの全部又は一部を運転することで、該2種以上の液体を所定の割合で送って混合希釈することになる。
【0042】
本発明に係る燃料電池装置によると、第1マイクロポンプユニットにおける送液のための複数のマイクロポンプは、ポンプ間においてポンプ性能にバラツキがない同性能のもの(例えば同構造、同サイズであることで同性能であるもの)であるので、液体燃料及び希釈用液の送液割合を、運転するポンプの数を選択することで容易に調整して、両液体を安定して精度よく所定の送液割合で送液混合し、液体燃料を所定濃度に希釈することができ、それだけ発電性能及び効率を良好ならしめることができる。
【0043】
また、本発明に係る燃料電池装置では、送液ポンプとしてマイクロポンプを採用したポンプユニットであって液体燃料を希釈用液で希釈して燃料電池に供給できる第1マイクロポンプユニットが燃料電池に積層され、一体化されている。従って、液体燃料と希釈用液とを混合するためのミキシング機構を燃料電池外に離して設ける必要がないとともに該燃料電池とミキシング機構とを接続する配管も必要としない。よって、それだけ燃料電池装置全体をコンパクトに、小型に形成することができ、例えば携帯機器の電源としても利用できる。
【0044】
第1ポンプユニットにおける前記混合流路は液体燃料と希釈用液との十分な混合のために蛇行させてもよい。
この燃料電池装置は、燃料電池の第1ポンプユニットを積層した面とは反対側の面に第2ポンプユニットを積層してもよい。この場合、第2ポンプユニットは少なくとも燃料電池における電気化学反応により生成される液体を回収するものである。燃料電池の燃料極側から電解質層を通過して空気極側へ出てくる液体があるときは、その液体も回収できるものでもよい。
かかる第2ポンプユニットも燃料電池に積層され、燃料電池と一体化されるから、これを設けても燃料電池装置の小形化の妨げにはならない。
【0045】
可能であるならば、燃料電池における電気化学反応により生成される液体或いはさらに燃料電池の燃料極側から電解質層を通過して空気極側へ出てくる液体も前記の希釈用液として用いてもよい。この場合、第2ポンプユニットは回収した液体を希釈用液として前記燃料電池、第1ポンプユニット及び第2ポンプユニットの積層体中に形成された希釈用液循環路を介して第1ポンプユニットへ供給するものとしてもよい。
【0046】
或いは、第2ポンプユニットは回収した液体を希釈用液として回収容器へ送るものとし、該回収容器から前記第1ポンプユニットへ希釈用液を供給するようにしてもよい。
また、回収容器を設ける場合、前記第1ポンプユニットは、過剰の希釈液体燃料を該回収容器へ送るものでもよい。
【0047】
なお、希釈前の液体燃料については、液体燃料収容容器を設け、該容器から第1ポンプユニットへ液体燃料を供給すればよい。かかる液体燃料収容容器としては、代表例として、交換可能な容器、例えばカートリッジタイプの容器を挙げることができる。
【0048】
液通路の配置をできるだけ簡素化して燃料電池装置の一層の小形化を達成するために、 第1ポンプユニットは燃料電池に、その燃料極に隣り合わせて積層することが好ましい。この場合において、前記第2ポンプユニットも設ける場合には、第2ポンプユニットは燃料電池に、その空気極に隣り合わせて積層すればよい。
燃料電池の構造等によっては、必要に応じ、第1ポンプユニットの燃料極に対向する面に該燃料極に電気的に導通された電極膜が形成されていてもよい。第2ポンプユニットについても、空気極に対向する面に該空気極に電気的に導通された電極膜が形成されていてもよい。
【0049】
いずれにしても、燃料電池装置の一層の小形化のために、燃料電池及び第1ポンプユニットはいずれも、また、第2ポンプユニットを設ける場合はそれも、平坦形状に形成されていることが好ましい。これにより、本発明に係る燃料電池装置を、アクティブ型装置でありながら、パッシブ型装置と略同等のサイズに形成することも可能である。
【0050】
いずれにしても、第1ポンプユニットを燃料電池の燃料極に隣り合わせて積層する場合、該第1ポンプユニットとして次のものを代表例として挙げることができる。すなわち、燃料極に対向する面に前記希釈液体燃料を該燃料極へ供給するための希釈液体燃料通路を有しており、該燃料極に対向する面とは反対側部分に液体燃料を供給する前記送液用マイクロポンプを含む液体燃料供給路、希釈用液を供給する前記送液用マイクロポンプを含む希釈用液供給路及び該液体燃料供給路と希釈用液供給路の双方に連通するとともに前記希釈液体燃料通路に連通する前記混合流路を有するポンプユニットである。さらに、該燃料極で発生するガスを前記希釈液体燃料通路を介して放出するためのガス抜き孔を有していてもよい。
【0051】
この第1ポンプユニットは、燃料極に対向する面に希釈液体燃料を該燃料極へ供給するための希釈液体燃料通路を有していることで、従来の燃料電池装置における燃料極側のセパレータとしても機能する。
かかる希釈液体燃料通路を有する燃料極に対向する面には導電性膜を形成して該膜を電極として使用してもよい。
この第1ポンプユニットは、後述するように平坦形状に薄型に形成することが可能である。
【0052】
また、第2ポンプユニットを燃料電池の空気極に隣り合わせて積層する場合、該第2ポンプユニットとして次のものを代表例として挙げることができる。すなわち、空気極に対向する面に回収すべき液体の通路を有しており、該空気極に対向する面とは反対側部分に該液体を回収する液回収用マイクロポンプを含む液体回収路を有しており、さらに該空気極に対向する液体通路から該液体回収路へ通じる通路を有しているポンプユニットである。さらに、空気極へ該液体通路を介して外部から空気を供給するための空気取り入れ孔を有していてもよい。
【0053】
この第2ポンプユニットは、空気極に対向する面に液体の通路を有していることで、従来の燃料電池装置における空気極側のセパレータとしても機能する。
かかる液体通路を有する空気極に対向する面には導電性膜を形成して該膜を電極として使用してもよい。
この第2ポンプユニットも、後述するように平坦形状に薄型に形成することが可能である。
【0054】
いずれにしても、本発明に係る燃料電池装置においても、前記各マイクロポンプは、代表例として、液体を吸引するための第1絞り流路、液体を吐出するための第2絞り流路、該第1、第2の絞り流路間のポンプ室、該ポンプ室の、ダイアフラムとして機能し得る可撓性壁に設置された圧電素子を含んでおり、該圧電素子で該ポンプ室壁を振動させることでポンプ室を収縮膨張させて該第1絞り流路からポンプ室内へ液体を吸引し、該第2絞り流路からポンプ室内液体を吐出するポンプを挙げることができる。
【0055】
かかる圧電素子利用のマイクロポンプの駆動は交番電圧を該圧電素子に印加するポンプ駆動部を用いて行えばよいが、該交番電圧の周波数として20kHz以上の周波数を採用すれば、ポンプ駆動音が人間には聞こえなくなり、燃料電池装置を携帯電話器等へ搭載してもその使用者に不快感を与えない。
【0056】
前記燃料電池の代表例として、既述のとおり、(1) 構造が簡単、(2) 大規模なインフラ整備を要することなく燃料の入手が容易、(3) 低コスト、低温での動作が可能などの点から、例えば携帯機器(ノート形パーソナルコンピュータ、携帯電話器等)向けの燃料電池として適していると言える直接メタノール形燃料電池(DMFC:Direct Methanol Fuel Cell)を挙げることができる。
【0057】
かかるDMFCを採用する場合、前記液体燃料はメタノール含有液体燃料(例えば高濃度メタノール水溶液)であり、前記希釈用液は水を含む液である。DMFCの空気極において生成される水或いはさらに燃料極側からの移動液は希釈用液として利用できる。
また、かかるDMFCを採用する場合、それは、燃料電池装置の小形化のために、平坦形状に薄型化が可能な所謂膜・電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)構造のものとすることが好ましい。MEAは電解質膜を燃料極と空気極で挟んだ構造の燃料電池である。
【発明の効果】
【0058】
以上説明したように本発明によると、マイクロポンプにより2種以上の液体を所定の割合で送る送液方法及び装置であって、安定して該2種以上の液体を所定の割合で送ることができる送液方法及び装置を提供することができる。
また、かかる送液装置であって、全体をコンパクトに小形に形成できる送液装置を提供することができる。
【0059】
また本発明によると、マイクロポンプにより2種以上の液体を所定の割合で送って混合する液体混合方法及び装置であって、安定して該2種以上の液体を所定の割合で混合することができる液体混合方法及び装置を提供することができる。
また、かかる液体混合装置であって、全体をコンパクトに小形に形成できる液体混合装置を提供することができる。
【0060】
さらに、本発明によると、燃料として液体燃料が使用される燃料電池が採用され、該液体燃料を希釈用液で希釈して希釈液体燃料を該燃料電池へ供給する燃料電池装置であって、液体燃料の希釈用液による希釈を安定して精度よく行うことができ、それだけ発電性能及び効率が良好であり、しかも全体をコンパクトに小形に形成できる燃料電池装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明に係る送液方法を実施できる送液装置の1例を利用した液体混合装置の1例を示している。液体混合装置は本発明に係る液体混合方法を実施できる。
図1に示す液体混合装置100は、複数のマイクロポンプP1、P2〜P6、P7〜P11を含んでいる。各ポンプは、後ほど図9を参照して詳述する、同構造、同サイズ、同動作を示す同性能のポンプである。
【0062】
ポンプP1に対して第1液体の供給口11が設けられており、供給口11は流路12を介してポンプP1の液体吸引側に連通している。ポンプP1の液体吐出側には流路13が連通している。
【0063】
ポンプP2〜P6、P7〜P11に対して第2液体の供給口14が設けられている。供給口14は流路15及び流路15から分岐した流路151を介してポンプP2〜P6のそれぞれの液体吸引側に連通しているとともに、流路16及び流路16から分岐した流路161を介してポンプP7〜P11のそれぞれの液体吸引側に連通している。
【0064】
ポンプP2〜P6のそれぞれの液体吐出側には流路171が連通しており、これら流路171は流路17に合流している。ポンプP7〜P11のそれぞれの液体吐出側には流路181が連通しており、これら流路181は流路18に合流している。
【0065】
ポンプP1に連通している流路13、ポンプP2〜P6に連通している流路17及びポンプP7〜P11に連通している流路18は合流部19で合流して混合流路20へ続いている。混合流路20の端には吐出口21を設けてある。吐出口21は第1液体と第2液体が混合された混合液体を吐出するものである。
【0066】
流路13、17及び18の合流部19より上流側の部分は送液装置を構成する部分であり、これに混合流路20をつなぐことで液体混合装置100が形成されている。
各ポンプの詳細については後述する。
【0067】
この液体混合装置100によると、第1液は供給口11から供給し、マイクロポンプP1を動作させることで流路13から混合流路20へ向け送液できる。第2液は供給口14から供給し、第2液用の10個のマイクロポンプP2〜P11のうちから選んだ数のポンプを動作させることで流路17及び(又は)流路18から混合流路20へ向け送液できる。
【0068】
このとき、各ポンプは同じ性能のポンプであり、各ポンプの送液量はいずれも同じであるから、ポンプ1を動作させつつ、ポンプP2〜P11のうちいずれか一つのポンプを動作させれば、第1液体と第2液体の送液、混合割合は1:1となる。ポンプP2〜P11の例えば4個のポンプを動作させれば、第1液体と第2液体の送液、混合割合は1:4となる。
【0069】
このようにこの液体混合装置100によると、送液のための複数のマイクロポンプとしてポンプ間においてポンプ性能にバラツキがない同性能のものを採用しているので、ポンプP1を運転するとともに、ポンプP2〜P11の中から運転するポンプの数を、第1、第2の液体の所定の送液、混合割合に応じて選択決定し、その数のポンプを動作させることで、安定して該所定の割合で、送液し、混合流路20で混合して、さらに言えば、主として混合流路の幅方向における拡散混合を利用して混合して吐出口21から吐出することができる。例えば、ポンプ下流側において液体の状態の変化(例えば流れに対する抵抗変化、例えば混合することや温度変化により液体粘度が変動することなどに起因する抵抗変化など)が生じるようなことがあっても、両液を安定して所定の割合で送液、混合することができる。なお、ここで液体の「混合」には混合よる希釈も含まれる。
【0070】
また、ポンプP2〜P11について運転するポンプ数を変更することで、容易に送液、混合割合を変更することも可能である。さらに、全体として複数のマイクロポンプP1〜P11が採用されているにも拘らず,それらポンプは同性能のものであるから、ポンプの駆動回路の簡略化も可能である。
【0071】
マイクロポンプP1〜P11のそれぞれは、図9に示す構造、動作を示すものである。 すなわち、液体を吸引するための第1絞り流路f1、液体を吐出するための第2絞り流路f2、該第1、第2の絞り流路f1、f2間のポンプ室PC、ポンプ室PCの可撓性壁(ダイアフラム)DFに設置された圧電素子PZTを含むポンプである。
【0072】
圧電素子PZTに交番電圧を印加してポンプ室壁(ダイアフラム)DFを振動させることでポンプ室PCを収縮膨張させ、第1絞り流路f1からポンプ室PC内へ液体を吸引し、第2絞り流路f2からポンプ室内液体を吐出できる。
【0073】
さらに説明すると、第1、第2の絞り流路f1、f2は断面積が同じ又は略同じであるが、流路f1より流路f2は長く形成されている。圧電素子PZTを駆動する交番電圧として図9(C)に示すように急峻な立ち上がり、緩やかな立ち下がりを示す交番電圧を用いる。
【0074】
図9(A)に示すように、印加電圧の急峻な立ち上がり時に圧電素子によりダイアフラムDFを急激に変形させてポンプ室PCを急激に収縮させると、長い流路f2では流路抵抗により液体が層流状に流れる一方、短い流路f1では液体が乱流となり、流路f1からの液体の流出が抑制される。これにより、流路f2からポンプ室内液体を吐出することができる。
【0075】
図9(B)に示すように、印加電圧の緩やかな立ち下がり時に圧電素子によりダイアフラムDFを緩やかに復帰動作させてポンプ室PCを緩やかに膨張させると、短い流路f1からはポンプ室PC内へ液体が流入する一方、このとき流路f1より流路抵抗が大きい長い流路f2からの液体吐出が抑制される。これにより、流路f1からポンプ室PC内へ液体を吸引できる。
【0076】
よって、所望の送液方向において上流側に流路f1を下流側に流路f2を配置することで所望方向に送液可能である。ポンプP1〜P11のそれぞれは、かかる構造を有し、かかる動作原理で送液を行うものである。図1等において、ポンプP1〜P11の圧電素子はPZTで示してある。
【0077】
なお、図9に示すマイクロポンプは、図9(F)に示すように、圧電素子PZTに緩やかな立ち上がり、急峻な立ち下がりを示す交番電圧を印加することで、図9(D)に示すように流路f1からポンプ室内液体を吐出させ、図9(E)に示すように流路f2から液体を吸引させることもできるが、ここでは図9(C)の駆動波形を採用する。
【0078】
図1に例示する装置100における各ポンプは図示省略のポンプ駆動部から該ポンプの圧電素子に交番電圧を印加することで駆動できる。すなわち、第1液、第2液の送液、混合或いは混合希釈にあたっては、ポンプP1の圧電素子に印加する電圧の波形として図2(A)に示すものを、ポンプP2〜P11の圧電素子に印加する電圧の波形として図2(B)に示すものを採用し、図示省略のポンプ駆動部からポンプ圧電素子にこの駆動波形を印加する。図2(A)、(B)の波形は図9(C)に示すタイプの波形であり、且つ、同じ波形である。このように液体混合装置100では、いずれのマイクロポンプも同じ駆動波形で駆動できるので、図示省略のポンプ駆動部をそれだけ簡素化することができる。
【0079】
以上説明したマイクロポンプはアクチュエータに圧電素子を採用しており、液体流路については、後ほど説明するように例えばフィルムや板状体のエッチング処理等により溝や凹所を形成し、この溝や凹所を形成したフィルムや板状体に第2のフィルムや板状体を貼り合わせて形成できるので、全体としてコンパクトに薄型、小形に形成することが可能であり、ひいては液体混合装置100のコンパクト化、薄型化、小形化が可能である。
【0080】
図3(A)は以上説明した液体混合装置100の変形例100’を示している。この装置100’は装置100における混合流路20を蛇行混合流路200としたもので、それ以外の点は装置100と同じであり、装置100と同じ部品、部分には図1と同じ参照符号を付してある。
液体混合装置100’では混合流路200が長く、且つ、蛇行しているので、合流部19から混合流路200へ流入してくる第1、第2の液体を十分拡散混合することができる。
図3(B)は液体混合装置100のもう一つの変形例100aを示している。この装置100aは、装置100において第1液体についても複数のポンプP1、P1、P13 を設けたものである。これらポンプのそれぞれもポンプP2〜P11と同性能のポンプである。この装置100aでは第1液体についても、第1、第2の液体の所望の送液、混合割合に応じて、複数のポンプP1、P1、P13 のうち1又は2以上を選択運転することができる。
【0081】
図1の装置100のように混合流路を短くしても第1液、第2液の混合を行えるようにするために、第1液用のポンプP1については、図4(A)に示す間欠駆動波形により間欠的に駆動するとともに、ポンプP2〜P11のうち選ばれた数のポンプ(動作させるポンプ)については、図4(B)に示す間欠駆動波形で間欠的に、且つ、ポンプP1が動作中は動作停止するように間欠的に駆動することで、混合流路20へ第1液と第2液を交互に流入させ、これにより、第1、第2の液を混合流路20中で拡散混合させるようにしてもよい。この場合、流路20における両液の混合は主として流路の方向における両液の拡散によりなされ、且つ、拡散距離が短くなる。拡散距離が短くなるので混合流路20は短いもので済む。
【0082】
また、この場合、ポンプP1が動作し、他のポンプが停止している時に、他のポンプ側へ第1液が逆流したり、ポンプP1が停止し、他のポンプが動作している時にポンプP1側へ第2液が逆流したりすることを抑制するために、ポンプP1については図5(A)に示す駆動波形、他のポンプについては図5(B)に示す駆動波形、すなわち、図4の駆動波形において、本来の駆動波形印加時でないときに本来の駆動波形の電圧値よりずっと低い電圧値を示す駆動波形で動作させて液の逆流を阻止するようにしてもよい。
【0083】
図1の混合装置100においては、図2の駆動波形や、図4或いは図5の駆動波形でポンプを駆動する場合、混合液吐出口21からの液吐出量を増大させようとすると、図2の駆動波形では液流速が速くなり、図4や図5の駆動波形では混合流路へ間欠的に送り込まれる液塊一つあたりの大きさ(量)が大きくなりすぎ、いずれも2液は所定状態に混合される前に吐出口21に到達してしまう恐れがある。
【0084】
混合液、あるいは混合希釈液をある程度の流量で欲するときに、このような恐れがあるときは、例えば、図6に示すように、図1に示すタイプの液体混合装置100(液体混合ブロック)を複数個採用した液体混合装置100”としてもよい。装置100”では、個々のブロック100における流路15、16に共通の流路141が連通しており、該流路141の端に第2液の供給口142を設けてある。
【0085】
装置100”では複数のブロックを採用することで、図2の駆動波形を採用するときには液体流速を遅くして所望量の混合液、あるいは混合希釈液を得ることができ、図4や図5の駆動波形を採用するときは、混合流路へ間欠的に送り込まれる液塊一つあたりの大きさを小さくして所望量の混合液、あるいは混合希釈液を得ることができる。
【0086】
また、装置100”においては個々のポンプの送液量は少なくてもよい、換言すれば個々のポンプを小さくすることができる。従って、ポンプの最適駆動周波数が高くなり、例えば20kHZ以上の駆動周波数を採用することも可能になり、20kHZ以上の駆動周波数では人間の耳には聞こえなくなり、人に不快感を与えなくて済む。
【0087】
次に、図7及び図8を参照して図6の液体混合装置100”を利用した燃料電池装置の1例について説明する。
図7(A)は燃料電池装置C1の平面図、図7(B)は該装置の側面図、図7(C)は該装置の底面図である。
また、図8(A)は図7(B)のA−A線断面図、図8(B)は図7(B)のB−B線断面図、図8(C)は図7(B)のC−C線断面図、図8(D)は図7(B)のD−D線断面図である。
【0088】
図示の燃料電池装置C1は、メタノール含有液(代表的には高濃度メタノール水溶液を希釈用液で希釈して希釈液体燃料として用いる装置であり、燃料電池3と、電池3に積層固定された第1ポンプユニット1及び第2ポンプユニット2を含んでいる。
【0089】
燃料電池3は、本例では直接メタノール形燃料電池(以下、「DMFC」と言うことがある。)であり、ここでは、電解質膜31の両面に燃料極32及び空気極33を接合したMEA(Membrane Electrode Assembly)構造のものである。MEAは各種構造のものが知られているが、本例では電解質膜31は電解質高分子膜〔例えばデュポン社製ナフィオン(パーフルオロスルホン酸膜)〕であり、燃料極32は電解質膜31に接する触媒層(例えば白金黒或いは白金合金をカーボンブラックに担持させたもの)とこれに積層されたカーボンペーパ等の電極からなり、空気極33も電解質膜31に接する同様の触媒層とこれに積層された同様の電極からなっている。
【0090】
なお、MEAの構造によっては電力取り出しのための電極層を第1、第2ポンプユニット1、2の少なくとも一方に設けてもよい。
かかる電極層は燃料極或いは空気極に対向するポンプユニットの面にスパッタリング法等の各種薄膜形成手法を利用して白金等で形成することができ、この電極膜を例えば導電性接着剤で燃料極或いは空気極に接着すればよい。
【0091】
第1ポンプユニット1は、平坦な四角形状の部材11A、12Aを含んでいる。これら部材は平坦形状に積層されている。部材11Aは、図7(A)及び図8(A)に示すように、部材12Aに対向する面に、図6に示す液体混合装置100”を形成するための、溝状の液体流路12、13、15、16、17、18、20等(図1、図6も参照)を有しており、さらに各ブロック(液体混合装置ブロック)100の流路15、16に対し連通する流路141等を有している。部材11Aの流路を形成した側の面に部材12Aが積層されることで、液体混合装置100”が形成されている。
【0092】
この場合の液体混合装置100”における各ブロック100のマイクロポンプP1を含む流路12、13は液体燃料供給路である。流路12の上流側端から部材11Aを貫通する孔11が形成されており、これが図6の液体混合装置における第1液体供給口11に相当し、液体燃料供給口11として用いられる。供給口11には図示省略の液体燃料収容容器が接続され、該容器からメタノール含有液が供給される。
【0093】
また、各ブロック100のマイクロポンプP2〜P11を含む他の流路15、16、17、18等、さらに流路141は希釈用液(ここでは水)を供給する希釈用液供給路である。流路141は凹所状部分142に連通しており、該部分142は図6の装置100”における第2液体供給口142に相当し、希釈用液供給口142として用いられる。供給口142にはさらに溝状の流路143が連通形成され、流路143の端には凹所状の希釈用液受入部144が形成されている。
【0094】
各ブロック100の流路20は液体燃料と希釈用液との混合のための混合流路20として用いられる。流路20の端には部材貫通孔21が形成されており、これは図6の装置100”における混合液吐出口21に相当し、希釈液体燃料吐出口21として用いられる。
【0095】
部材12Aは、図8(B)に示すように、電池3の燃料極32に対向する面に希釈液体燃料を該燃料極へ供給するための櫛状配列の溝状の複数本の希釈液体燃料通路121を有しているとともに該複数本の通路121に連通する共通の凹所状の希釈液体燃料通路122を有している。通路122から部材11A側へ貫通孔123が形成されている。貫通孔123は部材11Aの希釈液体燃料吐出口21に合致する位置に設けてあり、ここから通路122、121へ希釈液体燃料が流入し、燃料極32に供給される。
【0096】
また、各通路121を部材外部へ連通させる溝状のガス抜き孔124が形成されている。ガス抜き孔124は燃料極側で生成される炭酸ガスの放出に用いられる。さらに、部材12Aの端部には、貫通孔125が形成されている。貫通孔125は部材11Aにおける希釈用液受入部144に合致する位置に設けてある。なお、電池3には部材12Aの貫通孔125に合致する液通路34を形成してある(図7(B)参照)。
【0097】
以上のほか、部材11A、12Aには、互いに位置が合致するようにガス流通部GDが設けられている。ガス流通部GDは複数の微細なガス流通孔を形成するとともに液体の通過を阻止するように撥水処理を施した部分である。ガス流通部GDは少なくとも一つ、より好ましくは複数、例えば希釈液体燃料通路121(図8(B)参照)に対応させて設けるとよい。第1ポンプユニット1におけるガス流通部GDはガス放出のためのものである。
【0098】
第2ポンプユニット2は、平坦な四角形状の部材21A、22Aを含んでいる。これら部材は平坦形状に積層されている。部材21Aは、図8(C)に示すように、電池3の空気極33に対向する面に、燃料電池3における電気化学反応により生成される液体(ここでは水)の通路、すなわち、櫛状に配列された溝状の複数本の通路211及び該通路に連通する共通の凹所状の通路212を有している。通路212から部材22A側へ貫通孔213が形成されている。また、各通路211を部材外部と連通させる溝状の空気取り入り孔214が形成されている。部材21Aの端部には貫通孔215が形成されおり、該孔は電池3の液体通路34に合致する位置にある。
【0099】
部材22Aは、図7(C)及び図8(D)に示すように、部材21Aに対向する面に、前記ポンプP1等と同構造、動作を示すマイクロポンプPXを含む溝状の液体回収路221を有している。液体回収路221は燃料電池3における電気化学反応により生成される液体(ここでは水)或いはさらに燃料極32側から電解質膜31を通過して空気極33側へ来ることがある液体を回収するものである。液体回収路221のポンプPXより上流側の端には凹所状の液体受入れ部222が形成されており、ポンプP3より下流側の端には凹所状の液体排出部223が形成されている。
【0100】
電池の空気極33側で生成された水或いはさらに燃料極32側からの移動液は、ポンプPXの運転により、部材21Aの液体通路211、212から部材21Aの貫通孔213を通って部材22Aの液体受入部222へ流入し、部材22Aの液体回収路221から液体排出部223を経て、部材21Aの貫通孔215、電池の液体通路34、第1ポンプユニット1における部材12Aの貫通孔125、部材11Aの液体受入部144、流路143を経て希釈用液供給口142へ送られる。かくして、第1ポンプユニット1のブロック100におけるポンプP2〜P11のうち少なくとも一つを運転することで希釈用液を混合流路20へ供給することができる。
【0101】
以上のほか、部材21A、22Aには、図8(C)、(D)に示すように、互いに位置が合致するようにガス流通部GDが設けられている。ガス流通部GDは第1ポンプユニット1におけるものと同じもので、少なくとも一つ、より好ましくは複数、例えば液体通路211(図8(C)参照)に対応させて設けるとよい。ここでのガス流通部GDは外部からの空気取り入れに利用される。
【0102】
以上説明した燃料電池装置C1によると次のように発電させることができる。
第1ポンプユニット1に図示省略の液体燃料収容容器から液体燃料としてメタノール含有液(例えば高濃度メタノール水溶液)を供給するとともに図示省略のポンプ駆動部により各ブロック100のポンプP1を駆動して混合流路20へメタノール含有液を供給する。
【0103】
さらに、各ブロック100において、ポンプP2〜P11のうちから選んだ個数のポンプを駆動して希釈用液を混合流路20へ供給する。これらにより各ブロック100から希釈液で希釈された希釈メタノール含有液を電池3の燃料極32へ供給する。
ポンプP2〜P11のうち運転するポンプ数はメタノール含有液の所定の希釈割合、従ってメタノール含有液と希釈液との所定の送液割合が得られるように決定する。
【0104】
かくして燃料電池3では、
CH3 OH+(3/2) O2 →CO2 +2H2 O の反応が生じ、発電するので、電池3に接続した図示省略の負荷に通電することができる。
【0105】
この燃料電池装置C1の使用開始当初、電池3に供給されるのは図示省略の液体燃料収容容器から供給された液体燃料(メタノール含有液)と例えば予めポンプP2〜P11内に充填されている希釈用液であるが、その後、電池3の電気化学反応により空気極33側で生成される水等が第2ポンプユニット2により第1ポンプユニット1へ供給され始め、第1ポンプユニット1は、容器4から供給されるメタノール含有液を第2ポンプユニット2から供給されてくる希釈用液で混合希釈し、希釈液体燃料として燃料電池3に供給でき、これにより容器4に収容された原燃料をもって長時間発電させることができる。なお、ポンプP2〜P11への予めの希釈液の充填は、例えばポンプP2〜P11へ通じる希釈液流路に連通する希釈液の供給口(図示省略)を設けておいて該供給口から水等希釈液を供給することで行うことができ、かかる供給口はその後閉じておけばよい。
【0106】
以上説明した燃料電池装置C1によると、第1マイクロポンプユニット1における送液のための複数のマイクロポンプP1〜P11は、ポンプ間においてポンプ性能にバラツキがない同性能のものであるので、液体燃料及び希釈用液の送液割合を、運転するポンプの数を選択することで容易に調整して、両液体を安定して精度よく所定の送液割合で送液混合し、液体燃料を所定濃度に希釈することができ、それだけ発電性能及び効率を良好ならしめることができる。
【0107】
例えば液体燃料として60%メタノール水溶液を用いる場合、各ブロック10において該60%メタノール水溶液用の1個のポンプP1に対し希釈液用の10個のポンプP2〜P11を全部駆動することで、メタノール濃度5〜6%程度の希釈燃料が得られる。
【0108】
また、希釈液用ポンプの駆動個数を制御することで、燃料極32へ供給する燃料中のメタノール濃度を制御することが可能であり、これにより、燃料電池に接続される機器の動作負荷に応じた最適な燃料濃度制御も可能である。一般に、電池の特性を上げるためになるべく濃度の濃い燃料を使用したいのだが、電池に対する負荷が小さい場合、濃度が高いとアノード側で反応しきれなかったメタノールがカソード側に移動してしまうクロスオーバーという現象のため電池の特性が落ちてしまう。そこで、負荷が大きい時は濃度を濃く、負荷が小さい時は濃度を薄くすることが有効である。
【0109】
また、燃料電池装置C1は、このあと説明するマイクロポンプ等の製法例から分かるように、全体をコンパクトに平坦形状に薄型に形成することができ、例えばカード状に形成することも可能であり、携帯機器等の電源として適するものである。各ポンプの駆動を周波数20kHz以上の交番電圧印加により行えば、例えば携帯電話器等に搭載しても、ポンプ駆動音が人には聞こえず、電話器使用者に不快感を与えることがない。
【0110】
なお、燃料電池装置C1のマイクロポンプユニット1では、希釈用液を最初一つの供給口142から流路141によって分岐して供給するようにしているが、各ブロック毎に供給口を設け各ブロック毎に希釈液を空気極側から循環させるようにしてもよい。
また、空気極側で生成された水等は図示省略の回収容器に回収し、該回収容器から希釈液を各ブロック100に供給するようにしてもよい。さらに、燃料極32へ供給される希釈液体燃料のうち過剰のものを該回収容器へ回収するようにしてもよい。
【0111】
<送液装置、液体混合装置、マイクロポンプユニットの製造>
以下に、マイクロポンプを含む送液装置、液体混合装置、マイクロポンプユニットの製造の幾つかの例を挙げておく。
(1)Si基板とガラス板で構成する場合
Si基板上に流路溝を異方性エッチングにより加工し、このSi基板に平板のガラスを陽極接合して液通路を形成する。駆動用の圧電素子はSi基板におけるダイアフラム部分に接合する。
この方法によると、ヤング率の高い材質で液通路を形成できるのでポンプ性能が良好となる。
(2)樹脂とガラス板で構成する場合
流路溝を樹脂の射出形成、インプリント等により形成し、この樹脂板に薄板ガラスを接着剤により貼り付けて液通路形成する。駆動用圧電素子をガラス板のダイアフラム部分に貼り付ける。
この方法によると安価にポンプユニットを形成できる。
(3)ガラスで構成する場合
感光性ガラスのフォトリソ加工、ガラスのサンドブラスト加工、ガラス成型、ガラス板のレーザ加工等の方法により流路溝を形成し、流路溝を形成した第1のガラス板に、第2の平板ガラスを直接接合する。或いは第1、第2のガラスの接合面の両方または一方に低融点ガラス膜をスパッタ法、蒸着法等により形成して加熱・加圧により接合する。或いは第1、第2のガラスの一方にSi膜をスパッタ法等により形成して陽極接合する。これらのいずれかの操作により、液流路等を形成し、接合した両ガラスのいずれかのダイアフラム部分に圧電素子を接着剤等により貼り付ける。
この方法によっても安価にポンプユニットを形成できる。
(4)セラミックで構成する場合
グリーンシートの成型、サンドブラスト加工、レーザ加工等の方法で流路溝を形成し、このグリーンシートに、一方または双方が成形されたグリーンシートを位置決めして貼り合せ、加圧しながら焼成することで一体化を行う。或いは同様に成形されたグリーンシートを焼成してセラミック板とし、一方に低融点ガラス膜をスパッタ法、蒸着法等により形成して加熱・加圧により接合する。或いは同様に成形・焼成されたセラミック板の一方にガラスをもう一方にSiを成膜することで陽極接合する。これらのいずれかの操作により、液流路等を形成し、接合した両セラミックのいずれかのダイアフラム部分に圧電素子を接着剤等により貼り付ける。
この方法によるとヤング率の高い材質で液通路を形成できるのでポンプ性能が良好となる。
【0112】
上記のほか、液体や気体が流通できる溝が形成された電鋳品、カーボンの成形品、ステンレススチール板をエッチング加工したもの等も利用できる。
なお、上記(1)〜(4)のいずれの製法を採用するにしても、必要に応じガス抜き孔や空気取り入れ孔も同時に形成する。ガス流通部DGについては可能であれば同時に形成してもよいし、後で形成してもよい。
【0113】
次に、液体混合装置の製法の具体例を説明するが、説明を簡略化し、理解を容易にするため、送液装置、液体混合装置として機能する図10に示すマイクロチップMTを例にとって説明する。図10(A)はマイクロチップMTの平面図、図10(B)は該チップの側面図、図10(C)は図10(B)のX−X線断面図である。
【0114】
図10に示すチップMTでは第1液用ポンプ、第2液用ポンプは本発明と異なり1個ずつであるが、本発明に係る送液装置、液体混合装置、マイクロポンプユニットは、ポンプの数、液流路の数、配置等がチップMTと異なるだけであり、チップMTと同様にして、コンパクトに、平坦形状薄型に、小形に形成できる。
【0115】
図10の液体混合装置MTは、マイクロチップ形のもので、マイクロポンプPaを含む第1液体供給路L1、マイクロポンプPbを含む第2液体供給路L2を備えており、供給路L1のポンプ上流側端には液体供給口Li1が、供給路L2のポンプ上流側端には液体供給口Li2が設けられている。供給路L1、L2のポンプ下流側端は合流部L3でY字状に合流し、混合流路L4に続き、該流路端の液体出口Loに達している。
【0116】
流路L1〜L4は例えば幅150μm、深さ170μmである。マイクロチップMTの外形寸法は例えば、約20mm×40mm×0.5mmである。もっとも、寸法、形状は、これに限るものではない。
ポンプPa、Pbは図9に示す構造、動作を示すもので、このチップでは各ポンプの圧電素子PZTa、PZTbに駆動部から交番電圧を印加することで供給口Li1、Li2から第1、第2の液体を吸引し、送液し、合流部L3で合流させ、混合流路L4で混合して液体出口Loから吐出することができる。
【0117】
このマイクロチップMTの製造工程について図11を参照しながら説明する。図11は図10(C)のα−α線に沿う切断端面の部分の製法を代表的に示している。
図11(A)に示すように、シリコン基板SiSを準備する。シリコン基板SiSとしては、例えば厚さ200μmのシリコンウエハーを用いる。次に、図11(B)に示すように、シリコン基板SiSの上下面に、シリコン酸化膜SiO2 を形成する。酸化膜は、例えば、それぞれの厚さが1.7μmとなるように、熱酸化により形成する。次に、上面にレジストを塗布して所定パターンのマスクを形成し、該マスクパターンで露光し、次いで現像して酸化膜をエッチングする。そして、上面のレジストを剥離した後、再びレジストを塗布し、露光、現像、エッチングを行う。これにより、図11(C)に示すように、酸化膜を完全に除去した部分aと、厚さ方向に途中まで除去した部分bを形成する。
【0118】
レジスト塗布には、例えば東京応化社製OFPR800等のレジストを用いスピンコ一ターで回転塗布し、レジスト膜の厚さは、例えば1μmとする。露光はアライナ一により行い、現像はデベロッパーにより行う。酸化膜のエッチングには、例えば反応性イオンエッチング法(RIE)を用いる。レジストの剥離には、剥離液、例えば硫酸過水を用いる。
【0119】
次に、図11(D)に示すように上面についてシリコンエッチングを途中まで行った後に、bの部分の酸化膜をエッチングにより完全に除去し、再びシリコンエッチングを行い、図11(E)に示すようにシリコン基板SiSを170μmエッチングした部分a’と、25μmエッチングした部分a”とを形成する。シリコンエッチングには、例えば、ICP(高周波誘導結合型プラズマ、Ind uctively Coupled Plasma )によるエッチング法を用いる。さらに、図11(E)に示すように酸化膜を、例えばBHFを用いて完全に除去する。
【0120】
次に、図11(F)に示すように、シリコン基板の下面に電極膜e(例えばITO膜)を成膜する。そして、図11(G)に示したように、シリコン基板の上面にガラス板GLを貼り付ける。この貼り付けは、例えば、1200V、400℃で、陽極接合により行う。最後に、図11(H)に示すように、ポンプ室PCの振動板の部分に圧電素子を接着する。
以上説明した製法に準ずる製法により、本発明に係る送液装置、液体混合装置、マイクロポンプユニット等における多数のマイクロポンプや液流路をバラツキ少なく、均一な性能のものに製作できる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の送液方法及び装置、液体混合方法及び装置は、燃料電池装置における液体燃料とその希釈用液の送液、混合希釈に利用できるほか、生化学検査、免疫検査、遺伝子検査等の医療分野や、環境分析、化学合成や新薬創製など、様々な分野で利用できる。
また、本発明に係る燃料電池装置は例えば携帯機器等に搭載する電源としての利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明に係る送液方法を実施できる送液装置の1例を利用した液体混合装置の1例を示す図である。
【図2】図1に示す液体混合装置におけるマイクロポンプの駆動波形の1例を示す図である。
【図3】図3(A)は図1に示す液体混合装置の変形例を示す図であり、図3(B)は図1に示す液体混合装置の他の変形例を示す図である。
【図4】マイクロポンプの駆動波形の他の例を示す図である。
【図5】マイクロポンプの駆動波形のさらに他の例を示す図である。
【図6】液体混合装置のさらに他の例を示す図である。
【図7】図6の液体混合装置を利用した燃料電池装置の1例を示すもので、図7(A)はその平面図、図7(B)はその側面図、図7(C)はその底面図である。
【図8】図8(A)は図7(B)のA−A線断面図、図8(B)は図7(B)のB−B線断面図、図8(C)は図7(B)のC−C線断面図、図8(D)は図7(B)のD−D線断面図である。
【図9】マイクロポンプの1例の基本構造及び動作を示すもので、図9(A)は液体吐出動作を示す図、図9(B)は液体吸引動作を示す図、図9(C)はかかる液体の吐出動作、吸引動作のための圧電素子への印加電圧波形を示す図である。図9(D)は図9(A)とは反対方向への液体吐出動作を示す図、図9(E)は図9(B)とは反対方向の液体吸引動作を示す図、図9(F)はかかる反対動作のための圧電素子への印加電圧波形を示す図である。
【図10】液体混合装置等の製法例を説明するための参考的なマイクロチップを示すもので、図10(A)はその平面図、図(B)はその側面図、図10(C)は図10(B)のX−X線断面図である。
【図11】マイクロチップの製造工程例を示す図である。
【図12】燃料として液体燃料が使用される燃料電池が採用され、該液体燃料を希釈用液で希釈して希釈液体燃料を該燃料電池へ供給する燃料電池装置の考えられる例を示す図である。
【符号の説明】
【0123】
100、100’、100a 液体混合装置
P1〜P11 マイクロポンプ f1 液体吸引用第1絞り流路 f2 液体吐出用第2絞り流路 PC ポンプ室 DF ポンプ室の可撓性壁(ダイアフラム) PZT 圧電素子 11 第1液体供給口 12、13 第1液体の流路 14 第2液体供給口 15、151、16、161、 17、171、18、181 第2液体の流路 19 合流部 20、200 混合流路 21 混合液吐出口 100” 液体混合装置 141 液体流路 142 第2液体の供給口 C1 燃料電池装置
1 第1ポンプユニット
11A、12A ポンプユニット部材
143 流路
144 希釈用液受入部
121、122 希釈液体燃料通路
123 貫通孔
124 ガス抜き孔
125 貫通孔
GD ガス流通部
2 第2ポンプユニット
21A、22A ポンプユニット部材
211、212 液体(水)の通路
213 貫通孔
214 空気取り入り孔
215 貫通孔
PX マイクロポンプ
221 液体回収路
222 液体受入れ部
223 液体排出部
3燃料電池
31 電解質膜
32 燃料極
33 空気極
34 液通路
MT マイクロチップ
Pa、Pb マイクロポンプ
PZTa、PZTb 圧電素子
L1、L2 液体供給路
L3 合流部
L4 混合流路
Li1、Li2 液体供給口
Lo 液体出口
SiS シリコン基板

C 燃料電池
L 負荷
t1 燃料タンク
t2 回収タンク
MX ミキサー(混合タンク)
PM1〜PM3 ポンプ
CONT コントローラ
DS 濃度検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上の液体を所定の送液割合で送る送液方法であり、
該2種以上の液体のそれぞれに対して1又は2以上の送液用マイクロポンプを設け、且つ、該2種以上の液体のうち少なくとも1種の液体については複数個の送液用マイクロポンプを設け、いずれの送液用マイクロポンプも同性能のポンプとし、
一つのマイクロポンプを設けた液については該一つのマイクロポンプを運転するとともに、2以上のマイクロポンプを設けた各液については該2以上のマイクロポンプのうちから、前記送液割合に応じて、運転するマイクロポンプ数を決定して該数のマイクロポンプを運転することで、該2種以上の液体を所定の送液割合で送ることを特徴とする送液方法。
【請求項2】
前記2種以上の液体のそれぞれについて複数個の前記送液用マイクロポンプを設け、各液について、該液に対して設けた複数個のマイクロポンプのうちから、前記送液割合に応じて、運転するマイクロポンプ数を決定して該数のマイクロポンプを運転することで、該2種以上の液体を所定の送液割合で送る請求項1記載の送液方法。
【請求項3】
2種以上の液体を所定の送液割合で送って混合する液体混合方法であり、
該2種以上の液体のそれぞれに対して1又は2以上の送液用マイクロポンプを設け、且つ、該2種以上の液体のうち少なくとも1種の液体については複数個の送液用マイクロポンプを設けるとともに、該2種以上の液体のそれぞれに対して設けられた送液用マイクロポンプのそれぞれに連通する共通の混合流路を設け、いずれの送液用マイクロポンプも同性能のポンプとし、
一つのマイクロポンプを設けた液については該一つのマイクロポンプを運転するとともに、2以上のマイクロポンプを設けた各液については該2以上のマイクロポンプのうちから、前記送液割合に応じて、運転するマイクロポンプ数を決定して該数のマイクロポンプを運転することで、該2種以上の液体を所定の送液割合で前記混合流路へ送って合流させ混合することを特徴とする液体混合方法。
【請求項4】
前記2種以上の液体のそれぞれについて複数個の前記送液用マイクロポンプを設け、各液について、該液に対して設けた複数個のマイクロポンプのうちから、前記送液割合に応じて、運転するマイクロポンプ数を決定して該数のマイクロポンプを運転することで、該2種以上の液体を所定の送液割合で前記混合流路へ送って合流させ混合する請求項3記載の液体混合方法。
【請求項5】
2種以上の液体を所定の送液割合で送るための送液装置であり、
該2種以上の液体のそれぞれに対して1又は2以上の送液用マイクロポンプが設けられており、且つ、該2種以上の液体のうち少なくとも1種の液体については複数個の送液用マイクロポンプが設けられており、いずれの送液用マイクロポンプも同性能のポンプであることを特徴とする送液装置。
【請求項6】
前記2種以上の液体のそれぞれについて複数個の前記送液用マイクロポンプが設けられている請求項5記載の送液装置。
【請求項7】
前記各マイクロポンプは液体を吸引するための第1絞り流路、液体を吐出するための第2絞り流路、該第1、第2の絞り流路間のポンプ室、該ポンプ室の可撓性壁に設置された圧電素子を含んでおり、該圧電素子で該ポンプ室壁を振動させることでポンプ室を収縮膨張させて該第1絞り流路からポンプ室内へ液体を吸引し、該第2絞り流路からポンプ室内液体を吐出するポンプである請求項5又は6記載の送液装置。
【請求項8】
前記マイクロポンプの圧電素子に交番電圧を印加して該ポンプを駆動するためのポンプ駆動部を備えており、該ポンプ駆動部は20kHz以上の周波数の交番電圧を圧電素子に印加するものである請求項7記載の送液装置。
【請求項9】
2種以上の液体を所定の送液割合で送って混合する液体混合装置であり、
該2種以上の液体のそれぞれに対して1又は2以上の送液用マイクロポンプが設けられており、且つ、該2種以上の液体のうち少なくとも1種の液体については複数個の送液用マイクロポンプが設けられているとともに、該2種以上の液体のそれぞれに対して設けられた送液用マイクロポンプのそれぞれに連通する共通の混合流路が設けられており、いずれの送液用マイクロポンプも同性能のポンプであることを特徴とする液体混合装置。
【請求項10】
前記2種以上の液体のそれぞれについて複数個の前記送液用マイクロポンプが設けられている請求項9記載の液体混合装置。
【請求項11】
前記混合流路は蛇行している請求項9又は10記載の液体混合装置。
【請求項12】
前記各マイクロポンプは液体を吸引するための第1絞り流路、液体を吐出するための第2絞り流路、該第1、第2の絞り流路間のポンプ室、該ポンプ室の可撓性壁に設置された圧電素子を含んでおり、該圧電素子で該ポンプ室壁を振動させることでポンプ室を収縮膨張させて該第1絞り流路からポンプ室内へ液体を吸引し、該第2絞り流路からポンプ室内液体を吐出するポンプである請求項9、10又は11記載の液体混合装置。
【請求項13】
前記マイクロポンプの圧電素子に交番電圧を印加して該ポンプを駆動するためのポンプ駆動部を備えており、該ポンプ駆動部は20kHz以上の周波数の交番電圧を圧電素子に印加するものである請求項12記載の液体混合装置。
【請求項14】
燃料として液体燃料が使用される燃料電池が採用され、該液体燃料と希釈用液を所定の送液割合で供給して混合することで該液体燃料を希釈し、希釈液体燃料を該燃料電池へ供給する燃料電池装置であり、該燃料電池に第1ポンプユニットが積層されており、該第1ポンプユニットは、該液体燃料及び希釈用液のそれぞれに対して1又は2以上の送液用マイクロポンプを有しており、且つ、該液体燃料及び希釈用液のうち少なくとも一方に対しては複数個の送液用マイクロポンプを有しているとともに、該液体燃料及び希釈用液のそれぞれに対して設けられた送液用マイクロポンプのそれぞれに連通する共通の混合流路を有しており、該混合流路から希釈液体燃料を前記燃料電池へ供給するものであり、いずれの送液用マイクロポンプも同性能のポンプであることを特徴とする燃料電池装置。
【請求項15】
前記燃料電池の前記第1ポンプユニットを積層した面とは反対側の面に第2ポンプユニットが積層されており、該第2ポンプユニットは少なくとも該燃料電池における電気化学反応により生成される液体を回収するものである請求項14記載の燃料電池装置。
【請求項16】
前記第2ポンプユニットは回収した液体を希釈用液として前記燃料電池、第1ポンプユニット及び第2ポンプユニットの積層体中に形成された希釈用液循環路を介して前記第1ポンプユニットへ供給する請求項15記載の燃料電池装置。
【請求項17】
前記第2ポンプユニットは回収した液体を希釈用液として回収容器へ送り、前記第1ポンプユニットは該回収容器から希釈用液を供給される請求項15記載の燃料電池装置。
【請求項18】
前記第2ポンプユニットは前記燃料電池に、その空気極に隣り合わせて積層されており、前記空気極に対向する面に回収すべき液体の通路を有しており、該空気極に対向する面とは反対側部分に該液体を回収する液回収用マイクロポンプを含む液体回収路を有しており、さらに該空気極に対向する液体通路から該液体回収路へ通じる通路を有しているとともに、該空気極へ該液体通路を介して外部から空気を供給するための空気取り入れ孔を有している請求項15、16又は17記載の燃料電池装置。
【請求項19】
前記第1ポンプユニットは前記燃料電池に、その燃料極に隣り合わせて積層されており、前記燃料極に対向する面に前記希釈液体燃料を該燃料極へ供給するための希釈液体燃料通路を有しており、該燃料極に対向する面とは反対側部分に液体燃料を供給する前記送液用マイクロポンプを含む液体燃料供給路、希釈用液を供給する前記送液用マイクロポンプを含む希釈用液供給路及び該液体燃料供給路と希釈用液供給路の双方に連通するとともに前記希釈液体燃料通路に連通する前記混合流路を有しており、さらに該燃料極で発生するガスを前記希釈液体燃料通路を介して放出するためのガス抜き孔を有している請求項14から18のいずれかに記載の燃料電池装置。
【請求項20】
前記第1ポンプユニットの混合流路は蛇行している請求項14から19のいずれかに記載の燃料電池装置。
【請求項21】
前記各マイクロポンプは液体を吸引するための第1絞り流路、液体を吐出するための第2絞り流路、該第1、第2の絞り流路間のポンプ室、該ポンプ室の可撓性壁に設置された圧電素子を含んでおり、該圧電素子で該ポンプ室壁を振動させることでポンプ室を収縮膨張させて該第1絞り流路からポンプ室内へ液体を吸引し、該第2絞り流路からポンプ室内液体を吐出するポンプである請求項14から20のいずれかに記載の燃料電池装置。
【請求項22】
前記マイクロポンプの圧電素子に交番電圧を印加して該ポンプを駆動するためのポンプ駆動部を備えており、該ポンプ駆動部は20kHz以上の周波数の交番電圧を圧電素子に印加するものである請求項21記載の燃料電池装置。
【請求項23】
前記燃料電池は直接メタノール形燃料電池であり、前記液体燃料はメタノール含有液体であり、前記希釈用液は水を含む液体である請求項14から22のいずれかに記載の燃料電池装置。
【請求項24】
前記直接メタノール形燃料電池は膜・電極接合体(MEA)構造のものである請求項23記載の燃料電池装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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