説明

送液装置、分級装置及び分級方法

【課題】置換流による粒子の沈降が抑制された送液装置を提供すること。分級精度が高い分級装置及び分級方法を提供すること。
【解決手段】微小流路と、前記微小流路に輸送液を供給する輸送液供給口と、前記微小流路内に流体の流れ方向に形成され、微小流路を上下に隔て、かつ、開口を有する隔壁と、前記隔壁に対して上側に位置する第1の分割流路と、前記隔壁の下側に位置する第2の分割流路と、前記第1の分割流路の幅方向中央部に粒子分散液を供給する粒子分散液供給口と、前記第1の分割流路及び第2の分割流路の下流から流体を排出する少なくとも1つの排出口と、を有し、前記微小流路の内壁又は隔壁には、前記微小流路の断面の中央部において鉛直方向に対して上向きの流れを発生させるパターンが形成されていることを特徴とする送液装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送液装置、分級装置及び分級方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロオーダーを代表とする微細流路を用いた、化学工学単位操作が注目されている。微細流路を用いる場合、流体は層流となり、乱れがないため、粒子の堆積や流路閉塞を避ける一般的な方法としては、分散媒体を粒子の密度と同じものを使用することが挙げられる。この方法を用いれば、粒子は沈降することはないので、堆積、閉塞を防ぐことが可能となる。
特許文献1にあるように、重力方向に分散媒体を送液する方法が提案されている。また、略水平方向に送液する方法としては、特許文献2において、粒子を含まない流体を別途送液する方法が提案されている。
特許文献3では、湾曲形状の流路を持つマイクロチャネル装置により遠心力を発生させ、粒子を分離することが提案されている。粒子は遠心力により湾曲の外側に移動するが、同時に遠心力はディーン渦という渦を発生させ、微粉はそのディーン渦に運ばれ湾曲内部に移動するが、粗粉はそのまま湾曲外部にとどまるため分離が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−319409号公報
【特許文献2】特開2006−116520号公報
【特許文献3】特開2004−330008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、置換流による粒子の沈降が抑制された送液装置を提供することである。
また、本発明が解決しようとするもう1つの課題は、分級精度が高い分級装置及び分級方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は、以下の<1>、<5>及び<6>に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>〜<4>とともに以下に記載する。
<1>微小流路と、前記微小流路に輸送液を供給する輸送液供給口と、前記微小流路内に流体の流れ方向に形成され、微小流路を上下に隔て、かつ、開口を有する隔壁と、前記隔壁に対して上側に位置する第1の分割流路と、前記隔壁の下側に位置する第2の分割流路と、前記第1の分割流路の幅方向中央部に粒子分散液を供給する粒子分散液供給口と、前記第1の分割流路及び第2の分割流路の下流から流体を排出する少なくとも1つの排出口と、を有し、前記微小流路の内壁又は隔壁には、前記微小流路の断面の中央部において鉛直方向に対して上向きの流れを発生させるパターンが形成されていることを特徴とする送液装置、
<2>前記パターンが、前記隔壁に形成されたパターンであり、流体の流れ方向に沿って微小流路側壁から微小流路中央に向かうV字型の開口部が複数個連なった開口パターンである、<1>に記載の送液装置、
<3>前記パターンが、前記第1の分割流路の両側壁に形成されたパターンであり、流体の流れ方向に沿って前記第1の分割流路上面から下方に向かって、流体の流れ方向に対して斜めに形成された凸部又は凹部が複数連なったパターンである、<1>又は<2>に記載の送液装置、
<4>前記パターンが、前記微小流路の上面内壁に形成されたパターンであり、流体の流れ方向に沿って前記上面内壁の中央から微小流路側壁に向かうV字型の凸部又は凹部が複数連なったパターンである、<1>〜<3>いずれか1つに記載の送液装置、
<5><1>〜<4>いずれか1つに記載の送液装置を含むことを特徴とする、分級装置、
<6><5>に記載の分級装置の粒子分散液供給口に粒子分散液を送流する供給工程、及び、前記微小流路において粒子を分級する分級工程を含むことを特徴とする分級方法。
【発明の効果】
【0006】
上記<1>に記載の発明によれば、本構成を有していない場合に比して、置換流による粒子の沈降が抑制された、送液装置が提供される。
上記<2>に記載の発明によれば、本構成を有していない場合に比して、より粒子の沈降が抑制された、送液装置が提供される。
上記<3>に記載の発明によれば、本構成を有していない場合に比して、より粒子の沈降が抑制された、送液装置が提供される。
上記<4>に記載の発明によれば、本構成を有していない場合に比して、より粒子の沈降が抑制された、送液装置が提供される。
上記<5>に記載の発明によれば、本構成を有していない場合に比して、分級精度の高い、分級装置が提供される。
上記<6>に記載の発明によれば、本構成を有していない場合に比して、分級精度の高い、分級方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】粒径の異なる粒子の沈降の様子を示す模式図である。
【図2】粒子の挙動の一例を示す模式図である。
【図3】置換流及び上昇流を示す模式図である。
【図4】第1の実施形態の送液装置の斜視図である。
【図5】第1の実施形態における上昇流の発生を示す概念図である。
【図6】第1の実施形態における上昇流の模式図である。
【図7】第1の実施形態の送液装置の各部位の形状等を説明する模式図である。
【図8】本実施形態に好適に使用できる送液装置の製造方法の一実施態様を示す製造工程図である。
【図9】第1の実施形態の送液装置を形成する薄膜パターン部材の概念説明図である。
【図10】第2の実施形態の送液装置の斜視図である。
【図11】第2の実施形態における上昇流の模式図である。
【図12】第2の実施形態の送液装置の各部位の形状等を説明する模式図である。
【図13】第2の実施形態の送液装置を形成する薄膜パターン部材の概念説明図である。
【図14】第3の実施形態の送液装置の斜視図である。
【図15】第3の実施形態における上昇流の発生を示す概念図である。
【図16】第3の実施形態における下降流及び上昇流の模式図である。
【図17】第3の実施形態の送液装置の各部位の形状等を説明する模式図である。
【図18】第3の実施形態の送液装置を形成する薄膜パターン部材の概念説明図である。
【図19】本実施形態の分級装置及び分級方法の概念説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施形態の送液装置は、微小流路と、前記微小流路に輸送液を供給する輸送液供給口と、前記微小流路内に流体の流れ方向に形成され、微小流路を上下に隔て、かつ、開口を有する隔壁と、前記隔壁に対して上側に位置する第1の分割流路と、前記隔壁の下側に位置する第2の分割流路と、前記第1の分割流路の幅方向中央部に粒子分散液を供給する粒子分散液供給口と、前記第1の分割流路及び第2の分割流路の下流から流体を排出する少なくとも1つの排出口と、を有し、前記微小流路の内壁又は隔壁には、前記微小流路の断面の中央部において鉛直方向に対して上向きの流れを発生させるパターンが形成されていることを特徴とする。
なお、本実施形態において、粒子を含む粒子分散液は、粒子の比重が、該粒子分散液の分散媒の比重よりも大きく、粒子分散液中で粒子が沈降する。以下、適宜図面を参照しながら、本実施形態の送液装置について詳述する。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、同一の符号は同一の対象を表す。また、以下の説明において、数値範囲を表す「A〜B」の記載は、特に断りのない限り「A以上B以下」を意味し、端点であるA及びBを含む数値範囲を意味する。
【0009】
流体中を沈降する粒子の終末速度(重力と抵抗力が釣合った時の速度)は、下記のようなストークスの式で表される。
【0010】
【数1】

(vs:粒子の終末速度、Dp:粒子径、ρp:粒子の密度、ρf:流体の密度、g:重力加速度、η:流体の粘度)
【0011】
図1に示すように、水平方向に流体を速度VHで流しながら粒子を沈降させれば、粒径の異なる粒子は、終末速度V1、V2に応じた距離h1、h2だけ垂直方向に分離される。しかしながら、粒子の沈降に伴い二次流(置換流)が発生する。これは上記ストークスの式に依存する分級に対して外乱となり、分級の精度が落ちたり、分級効率が低下したりする。
【0012】
粒子が重力により沈降すると、それまで粒子が存在した体積を埋めるために、流体が移動する。この粒子の沈降による流体の移動を置換流と呼ぶ。粒子濃度が十分に薄い場合には、粒子の隙間から流体が移動するため、その影響はほとんどない。一方、粒子の濃度が高くなると、粒子間の距離が近くなるため、粒子濃度が十分に薄い場合ほど流体は粒子の間を移動することができず、粒子がある程度密集した状態で沈降するため置換流が発生する。その結果、ストークスの式から算出される終末沈降速度以上の流速で粒子の沈降が生じるものと考えられる。
【0013】
置換流の影響は、粒子が側壁から離れている場合と、側壁近傍まで存在する場合とでは、その挙動が異なる。
図2(A)に示すように、粒子が側壁から離れており流路幅の中央部に存在する場合、粒子が下方へ沈降すると、図2(B)に示すように、流体は粒子が存在した体積を埋めるように粒子の横側から流れ込み、中央付近では沈降方向、側壁近傍では沈降方向の逆向きに置換流が発生し、渦が形成される。すなわち、置換流は流路中央を下方へ、流路側壁近傍を上方へ流れる。その結果、粒子には置換流による下方への力がかかる。ストークスの式では、粒子に下向きに働く重力と、上向きの力を及ぼす抵抗力及び浮力との釣り合いによって終末速度が決定されるが、粒子に下向きに置換流の影響が及ぶため、終末速度以上の速度での沈降が認められる。
【0014】
本実施形態の送液装置は、隔壁又は流路内壁に置換流を抑制するための開口又は溝を有し、置換流を打ち消す方向の渦を発生させる。すなわち、図2(B)及び図3(A)に示すような置換流に対して、図3(B)に示すような置換流と逆向きとなる流れを発生させることにより置換流を打ち消す。これにより上記置換流は低減するので、安定した沈降速度が得られる。
また、本実施形態の送液装置は、二重底構造を採用しており、閉塞の原因となる粗粉は最下段の流路に落ちるため、上段の流路では閉塞が発生しにくく、また不要な粗粉により流れが乱されることがない。置換流が抑制された流路の出口に複数の取り出し口(排出口)を設け、粒径の違いに応じた粒子を取り出すことにより、分級精度や分級効率が改善された分級装置を提供できる。
【0015】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の送液装置を例に、本実施形態の送液装置について説明する。
第1の実施形態の送液装置は、微小流路と、前記微小流路に輸送液を供給する輸送液供給口と、前記微小流路内に流体の流れ方向に形成され、微小流路を上下に隔て、かつ、開口を有する隔壁と、前記隔壁に対して上側に位置する第1の分割流路と、前記隔壁の下側に位置する第2の分割流路と、前記第1の分割流路の幅方向中央部に粒子分散液を供給する粒子分散液供給口と、前記第1の分割流路及び第2の分割流路の下流から流体を排出する少なくとも1つの排出口と、を有し、前記微小流路の内壁又は隔壁には、前記微小流路の断面の中央部において鉛直方向に対して上向きの流れを発生させるパターンが形成されていることを特徴とする送液装置において、前記パターンが、前記隔壁に形成されたパターンであり、流体の流れ方向に沿って微小流路側壁から微小流路中央に向かうV字型の開口部が複数個連なった開口パターンである送液装置である。
【0016】
図4は第1の実施形態の送液装置の斜視図である。
第1の分割流路2と第2の分割流路3との間をV字型の開口を有する隔壁4が仕切っている。輸送液Bは微小流路1全体に送液されるが、主に第1の分割流路2から矢印のように導入される。
図5は上昇流の発生を示す概念図である。第1の分割流路2に導入された輸送液Bのうち隔壁4近傍の輸送液Bは、図5中の曲線状の矢印のように、V字型の隔壁の側面に衝突し、その傾斜のため微小流路の側壁側から内側方向に向きを変える。その結果、両側壁側から中央部に集まってきた流体は行き場を失い、第1の分割流路2の中央部において上昇流Cを引き起こす。
この上昇流Cは、図6のように微小流路1の天井部分に衝突し、左右に分かれ、さらに微小流路1の両側壁近傍においては下降流となる。これら上昇流と下降流とは、図2(B)に示すような微小流路中央部付近に粒子を供給した場合に生じる前記置換流と全く逆方向であるため、構造や流速等の送液条件を適切に設計すれば、置換流と上昇流とで相殺することが可能となる。
【0017】
(微小流路)
本実施形態の送液装置は、微小流路(以下、「チャネル」ともいう。)を有する。
本実施形態において、前記微小流路はマイクロ流路であることが好ましい。マイクロスケールの流路は寸法及び流速がいずれも小さい。
【0018】
本実施形態において、微小流路内におけるレイノルズ数は2,300以下であることが好ましい。すなわち、本実施形態の送液装置内においては、通常の送液のような乱流支配ではなく、層流支配であることが好ましい。
ここで、レイノルズ数(Re)は、下記式で表されるものであり、2,300以下のとき層流支配となる。
Re=uL/ν (u:流速、L:代表長さ、ν:動粘性係数)
本実施形態において、レイノルズ数は500以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。レイノルズ数が500以下であると、粒子の沈降速度の制御が容易であるため好ましい。
【0019】
層流支配の場合、粒子分散液中の粒子が分散媒体である媒体液体より重い場合、粒子は媒体液体中を沈降する。その際の沈降速度は粒子の比重、粒径によって異なる。本実施形態においては、この沈降速度差を利用して粒子を分級してもよい。特に粒子の粒径が異なる場合、沈降速度が粒径の2乗に比例し、粒径が大きい粒子ほど急速に沈降するため、粒径が異なる粒子の分級に適している。
一方、微小流路の流路径が大きく、粒子分散液が乱流となる場合は、粒子の沈降位置が変化してしまうため、基本的に分級はできない。ここで、輸送液が同時に送液される場合には、粒子分散液及び輸送液の双方が層流にて送液路を送液されることが好ましい。
【0020】
微小流路を流体の流れ方向に対して垂直に切断した場合の微小流路の断面形状は正方形及び長方形を含む矩形が好ましい。
また、微小流路の流体の送液方向の形状は、直線状であることが好ましく、湾曲や屈折する部分を含まないことが好ましい。
【0021】
第1の実施形態の送液装置における各部位の好ましい形状等について図7を参照して説明する。図7は第1の実施形態の送液装置の各部位の形状等を説明する模式図である。ここで、図7(A)は微小流路及び隔壁を上面から見た平面図、図7(B)は微小流路のA−A’断面図を示す。
微小流路の幅W1は、0.01〜30mmが好ましく、0.1〜10mmがより好ましく、0.2〜1mmがさらに好ましい。上記の数値の範囲内であると、層流が形成されやすく、粒子の沈降の制御が容易であるため好ましい。
微小流路の高さについては、第1の分割流路の高さh1、隔壁の厚さd1、第2の分割流路の高さh1’の合計により確定し、それぞれの好ましい範囲については、後述する。
粒子分散液供給口から排出口までの流路長さL1は、5〜200mmが好ましく、10〜100mmがより好ましく、20〜30mmがさらに好ましい。上記の数値の範囲内であると、高い分級効率が得られるため好ましい。
【0022】
(輸送液供給口)
本実施形態の送液装置は、微小流路に輸送液を供給する輸送液供給口を有する。
輸送液供給口は微小流路に輸送液を供給するものであり、少なくとも第1の分割流路に輸送液を供給すればよいが、微小流路全体に輸送液を供給するものが好ましい。特に第1の実施形態においては、隔壁の側面に輸送液が衝突して上昇流を発生させるため、微小流路全体に輸送液を供給し、隔壁の側面に輸送液を衝突させることが好ましい。また、第2の分割流路に蓄積した粗粉により、流路の詰まりが生じた場合に、第2の分割流路のみを洗浄するための洗浄液供給口を第2の分割流路に設けてもよい。輸送液は分級目的の粒子を含まない液体であり、後述する粒子分散液の媒体液体と輸送液とが同じ液体であることが好ましい。
【0023】
(隔壁)
本実施形態の送液装置は、前記微小流路内に流体の流れ方向に形成され、微小流路を上下に隔て、かつ、開口を有する隔壁を有する。微小流路を上下に隔てるとは、鉛直方向の上下に隔てるという意味である。隔壁は前記微小流路内に流体の流れ方向に形成されており、具体的には微小流路の上面と隔壁の上面とが平行に形成されていることが好ましい。
また、隔壁には開口が形成されている。隔壁に開口を形成することにより、粒子分散液に含まれる沈降速度の速い粗粉を通過させ、第2の分割流路に粗粉を分離することができる。このことにより微小流路全体の詰まりを防止することができる。
図7(B)における隔壁の厚さd1は、第1の分割流路の高さh1との比d1/h1において0.1〜0.5が好ましく、0.2〜0.3がより好ましい。上記の数値の範囲内であると、上昇流を効率よく生成できるため好ましい。
なお、第1の実施形態においては、図4〜図6に示すように、隔壁4に形成された開口自体が、上昇流を発生させるパターンとなっている。
【0024】
(分割流路)
本実施形態の送液装置は、隔壁に対して上側に位置する第1の分割流路と、前記隔壁の下側に位置する第2の分割流路とを有する。図7を参照して各分割流路の好ましい寸法について説明する。
前記第1の分割流路及び第2の分割流路の幅は、微小流路の幅W1と同一であり、好ましい範囲も同様である。
第1の分割流路の高さh1は、微小流路の幅との比h1/W1において、0.1〜10が好ましく、0.5〜2.0がより好ましい。上記の数値の範囲内であると、十分な沈降長を確保できるためであるため好ましい。
第2の分割流路の高さh1’は、隔壁の厚さd1との比h1’/d1において、0.5〜3.0が好ましく、0.75〜1.5がより好ましい。上記の数値の範囲内であると、想定される粗粉を効率よく分離できるため好ましい。
【0025】
(パターン)
本実施形態において、微小流路の内壁又は隔壁には、前記微小流路の断面の中央部において鉛直方向に対して上向きの流れ(上昇流)を発生させるパターンが形成されている。
例えば、比重1.2、粒径10μmの粒子の水中での沈降速度はストークスの式から1×10-5m/s程度である(20℃)。高濃度の粒子分散液の場合、粒子の沈降に対して、その粒子の存在した体積を埋めるように流体が移動する置換流の効果により、実際には上記の流速よりも速い速度で沈降する。したがって、置換流に応じた上昇流の速度の設定が必要となる。特定のパターンにおいて、上昇流の流速は、輸送液の流速に応じて変化するため、輸送液の流速を調整することにより上昇流の速度が調整される。
【0026】
第1の実施形態においては、前記上昇流を発生させるパターンが隔壁に形成されている。パターンは、流体の流れ方向に沿って微小流路側壁から微小流路中央に向かうV字型の開口部が複数個連なった開口パターンとなっている。ここで、図7を参照して、第1の実施形態におけるパターンについて説明する。
V字の中央部の角度θ1は、80〜140度が好ましく、100〜120度がより好ましい。上記の数値の範囲内であると、上昇流を効率よく生成できるため好ましい。
V字の流れ方向の幅l1は、隔壁の厚さd1との比l1/d1において、0.5〜2が好ましく、0.75〜1.5がより好ましい。
V字間のピッチp1は、V字の流れ方向の幅l1との比p1/l1において2〜10が好ましく、2〜3がより好ましい。上記の数値の範囲内であると、上昇流を効率よく生成できるため好ましい。
これらのパラメータは、液体の種類と流速、粒子の種類と大きさ等により適切に設定される。
【0027】
(粒子分散液供給口)
本実施形態の送液装置は、前記第1の分割流路の幅方向中央部に粒子分散液を供給するための粒子分散液供給口を有する。粒子分散液供給口の大きさ、形状は粒子分散液を供給できるものであればよく、特に限定されない。粒子分散液供給口の位置は、上昇流が発生している箇所に粒子を供給する必要があることから、上昇流を発生させるパターンの最上流側よりも下流側であることが好ましい。
【0028】
次に、粒子分散液について説明する。本実施形態の分級装置及び分級方法は、粒子の沈降を利用したものであることから、粒子分散液中の粒子の比重は、粒子分散液の分散媒体である媒体液体及び輸送液の比重よりも大きい。
粒子の体積平均粒子径は、0.1〜1,000μmであることが好ましく、0.1〜500μmであることがより好ましく、0.1〜200μmであることがさらに好ましく、0.1〜50μmであることが特に好ましい。上記の数値の範囲内であると、流路詰まりが生じにくく、沈降速度が適当であり、流路底面への堆積、流路の閉塞が抑制される。また、流路内壁面との相互作用が生じにくく、付着が生じにくい。
【0029】
粒子の形状は特に限定されないが、針状で、特に長軸が流路幅の1/4より大きくなると詰まりの可能性が高くなる場合がある。このような観点から、粒子の長軸長と短軸長との比(長軸長/短軸長)は、1〜50の範囲が好ましく、1〜20の範囲がより好ましい。なお、粒径、粒子形状に合わせて、適宜流路幅を選択することが好ましい。
【0030】
粒子の種類としては、高分子粒子、顔料のごとき有機物の結晶あるいは凝集体、無機物の結晶あるいは凝集体、金属粒子、あるいは金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物のごとき金属化合物の粒子などである。
【0031】
前記高分子粒子としては、具体的には、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、スチレン−メタクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂等の粒子が挙げられる。
【0032】
また、前記金属あるいは金属化合物の粒子としては、カーボンブラック、亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、クロム、チタニウム等の金属、あるいはその合金、TiO2、SnO2、Sb23、In23、ZnO、MgO、酸化鉄等の金属酸化物やこれらの化合物、窒化ケイ素などの金属窒化物などやそれらを組み合わせた粒子が挙げられる。
【0033】
これら粒子の製法は多岐に渉るが、合成により媒体液体中で粒子を作製し、そのまま粒子の分級を行う場合が多い。塊状物を機械的に解砕して作製した粒子を媒体液体中に分散し分級する場合もある。この場合は、媒体液体中で解砕することが多く、この場合はそのまま分級される。
【0034】
一方、乾式で作製された粉体(粒子)を分級する場合には、予め、媒体液体に分散しておく必要がある。媒体液体中に乾燥粉体を分散させる方法としては、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ボールミル、ダイノーミル、高圧ホモジナイザー、超音波分散機、コボールミル、ロールミル等が挙げられるが、この際、分散によって1次粒子が粉砕されない条件で行なうことが好ましい。
【0035】
前記粒子の比重から前記媒体液体の比重を引いた差が0.01〜20であることが好ましく、0.05〜11であることがより好ましく、0.05〜4であることがさらに好ましい。前記粒子の比重から前記媒体液体の比重を引いた差が0.01以上であると、粒子沈降が良好であるので好ましい。一方、20以下であると、粒子の搬送が容易であるので好ましい。
【0036】
媒体液体としては、上述のように、前記粒子の比重から前記媒体液体の比重を引いた差が0.01〜20のものであれば好ましく用いることができ、例えば、水、あるいは水系媒体、有機溶剤系媒体などが挙げられる。
【0037】
前記水としては、イオン交換水、蒸留水、電解イオン水などが挙げられる。また、前記有機溶剤系媒体としては、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン、キシレンなど、及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0038】
好ましい媒体液体は前記粒子の種類によって異なる。前記粒子の種類別の好ましい前記媒体液体としては、高分子粒子(一般的に比重が1.05〜1.6程度である。)と組み合わされる媒体液体として、粒子を溶解させない水系、アルコール類、キシレンなどの有機溶媒、酸あるいはアルカリ水などが好ましく挙げられる。
また、金属あるいは金属化合物の粒子(一般的に比重が2〜10程度である。)と組み合わされる媒体液体としては、金属などを酸化、還元などで侵さない水、アルコール類、キシレンなどの有機溶媒、あるいは油類が好ましく挙げられる。
【0039】
より好ましい粒子と媒体液体との組み合わせとしては、高分子粒子と水系媒体との組み合わせ、金属あるいは金属化合物と低粘度油性媒体との組み合わせが挙げられ、この中でも高分子粒子と水系媒体との組み合わせが特に好ましい。
好ましい粒子と媒体液体との組み合わせとしては、スチレン−アクリル樹脂系粒子と水系媒体、スチレン−メタクリル樹脂系粒子と水系媒体、ポリエステル樹脂系粒子と水系媒体が挙げられる。
【0040】
また、前記粒子分散液における粒子の含有率は、0.1〜40体積%であることが好ましく、1〜25体積%であることがより好ましい。上記の数値の範囲内であると、効率よく精度の高い分級が可能であるため好ましい。また、粒子の回収が容易であり、流路詰まりが抑制される。特に本実施形態においては、従来送液が困難であった比較的粒子濃度の高い粒子分散液を使用した場合であっても、沈降による粒子の堆積が抑制される。
【0041】
粒子の体積平均粒径は、下記粒径(5μm以下)の場合を除き、コールターマルチサイザーII型(ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定した値である。この場合、粒子の粒径レベルにより、最適なアパーチャーを用いて測定する。
粒子の粒径が5μm以下の場合は、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(LA−920、(株)堀場製作所製)を用いて測定する。
また、前記粒子の比重は、気相置換法(ピクノメータ法)により、湯浅アイオニクス(株)製ウルトラピクノメータ1000を用いて測定される。
さらに、前記媒体液体の比重は、エーアンドディー社の比重測定キットAD−1653を用いて測定される。
【0042】
(排出口)
本実施形態の送液装置は、前記第1の分割流路及び第2の分割流路の下流から流体を排出する少なくとも1つの排出口を有する。
第1の分割流路には少なくとも1つの排出口が形成されており、分級を目的とする粒子の種類により複数設けてもよい。
第2の分割流路にも少なくとも1つの排出口が形成されており、隔壁の開口を通過した粗粉を回収する。
【0043】
(送液装置の製造方法)
本実施態様の送液装置に用いられる材質としては、強度が高く、腐食防止性があり、粒子分散液の流動性を高くするものであることが好ましい。例えば、金属(鉄、アルミ、ステンレス鋼、チタン、その他の各種金属)、樹脂(フッ素樹脂、アクリル樹脂等)、セラミックス(シリコン等)、ガラス(石英等)など一般的に用いられているものが使用可能であり、送液する媒体液体等により、適宜選択することが好ましい。また、プラズマCVD方などの表面改質処理を行って、SiN4、SiN2、Al23などの皮膜を分級装置の構成材料の表面に形成して、耐食性、流動性を向上させることもできる。
【0044】
分級装置を製作するには、微細加工技術が適用される。適用可能な微細加工技術としては、例えば、X線リソグラフィを用いるLIGA(Roentgen−Lithographie Galvanik Abformung)技術、EPON SU−8(商品名)を用いた高アスペクト比フォトリソグラフィ法、マイクロ放電加工法(μ−EDM(Micro Electro Discharge Machining))、Deep RIE(Reactive Ion Etching)によるシリコンの高アスペクト比加工法、Hot Emboss加工法、光造形法、レーザ加工法、イオンビーム加工法、及びダイヤモンドのような硬い材料で作られたマイクロ工具を用いる機械的マイクロ切削加工法等がある。これらの技術を単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。好ましい微細加工技術は、X線リソグラフィを用いるLIGA技術、EPON SU−8を用いた高アスペクト比フォトリソグラフィ法、マイクロ放電加工法(μ−EDM)、及び機械的マイクロ切削加工法である。一般的に、マイクロデバイス(微小流路装置)としては、SUS(ステンレス鋼)製の部材を微細放電加工して微細流路を形成することが多いが、使用する材質に応じた加工方法で加工することが好ましい。
【0045】
部材間の接合方法は、高温加熱による材料の変質や変形による流路等の破壊を伴わず、寸法精度を保った精密な方法が望ましく、製作材料との関係から固相接合(例えば圧接接合や拡散接合等)や液相接合(例えば、溶接、共晶接合、はんだ付け、接着等)を選択することが好ましい。例えば、材料にシリコンを使用する場合にシリコン同士を接合するシリコン直接接合や、ガラス同士を接合する融接、シリコンとガラスを接合する陽極接合、金属同士を接合する拡散接合等が挙げられる。セラミックスの接合については、金属のようなメカニカルなシール技術以外の接合技術が必要であり、アルミナに対してglass solderなる接合剤をスクリーン印刷で、80μm程度の膜厚に印刷し、圧力をかけずに440〜500℃で熱処理する方法がある。また、新しい技術として、表面活性化接合、水素結合を用いた直接接合、HF(フッ化水素)水溶液を用いた接合等がある。
【0046】
本実施形態の送液装置を製造する際、接合技術を用いることができる。通常の接合技術は大きく固相接合と液相接合に分けられ、一般的に用いられている接合方法としては、固相接合として圧接や拡散接合、液相接合として溶接、共晶接合、はんだ付け、接着等が代表的な接合方法として挙げられる。
【0047】
さらに、接合に際しては高温加熱による材料の変質や変形による流路等の微小構造体の破壊を伴わない寸法精度を保った高度に精密な接合方法が望ましく、その技術としてはシリコン直接接合、陽極接合、表面活性化接合、水素結合を用いた直接接合、HF水溶液を用いた接合、Au−Si共晶接合、ボイドフリー接合、拡散接合などが挙げられる。
【0048】
送液装置の製造方法としては、パターン部材(薄膜パターン部材)を積層して形成する製造方法が好ましい。なお、パターン部材の厚さは特に限定されないが、5〜500μmであることが好ましく、10〜300μmであることがより好ましい。
本実施形態の分級装置は、所定の二次元パターンが形成されたパターン部材が積層されて形成された送液装置であることが好ましく、パターン部材の面同士が直接接触して接合された状態で積層されていることがより好ましい。
送液装置の水平方向、又は、鉛直方向の各断面形状に対応した複数のパターン部材を積層することにより、簡便に送液装置を形成することができるので好ましい。
【0049】
本実施形態の送液装置の好ましい製造方法としては、(i)第1の基板上に目的とする送液装置の各断面形状に対応した複数のパターン部材を形成する工程(ドナー基板作製工程)、及び、(ii)前記複数のパターン部材が形成された前記第1の基板と第2の基板との接合及び離間を繰り返すことにより前記第1の基板上の前記複数のパターン部材を前記第2の基板上に転写する工程(接合工程)を含む製造方法が例示でき、例えば、特開2006−187684号公報に記載の製造方法を参照できる。第1の実施形態の送液装置の製造方法についてさらに詳述する。
【0050】
〔ドナー基板作製工程〕
本実施形態において、ドナー基板は電鋳法を用いて作製することが好ましい。ここで、ドナー基板とは、第1の基板上に目的とする分級装置の各断面形状に対応した複数のパターン部材が形成された基板である。第1の基板は、金属、セラミックス又はシリコンから形成されていることが好ましく、ニッケル等の金属が好適に使用できる。
まず、第1の基板500としてステンレス基板を準備し、第1の基板500上に厚膜フォトレジストを塗布し、作製する送液装置の各断面形状に対応したフォトマスクにより露光し、フォトレジストを現像して各断面形状のポジネガ反転したレジストパターンを形成する。次に、このレジストパターンを有する基板をめっき浴に浸漬し、フォトレジストに覆われていない金属基板の表面に例えばニッケルめっきを成長させる。パターン部材は電鋳法を用いて、金、銅、又はニッケルにより形成されていることが好ましい。
次に、レジストパターンを除去することにより、第1の基板上に送液装置の各断面形状に対応したパターン部材を形成する。
【0051】
〔接合工程〕
接合工程とは、複数のパターン部材が形成された前記第1の基板(ドナー基板)と第2の基板(ターゲット基板)との接合及び離間を繰り返すことにより前記ドナー基板上の前記複数のパターン部材を前記ターゲット基板上に転写する工程である。接合は、常温接合又は表面活性化接合により行われることが好ましい。
図8(a)から(f)は、本実施形態に好適に使用できる送液装置の製造方法の一実施態様を示す製造工程図である。
図8(a)に示すように、ドナー基板505には、第1の基板である金属基板500上に、目的とする送液装置の各断面形状に対応した複数のパターン部材(501)が形成されている。上記ドナー基板505を真空槽内の図示しない下部ステージ上に配置し、ターゲット基板510を真空層内の図示しない上部ステージ上に配置する。続いて、真空槽内を排気して高真空状態あるいは超高真空状態にする。次に、下部ステージを上部ステージに対して相対的に移動させてターゲット基板510の直下にドナー基板505の1層目のパターン部材501Aを位置させる。次に、ターゲット基板510の表面、及び1層目のパターン部材501Aの表面にアルゴン原子ビームを照射して清浄化する。
【0052】
次に、図8(b)に示すように、上部ステージを下降させ、所定の応力(例えば、10kgf/cm2)でターゲット基板510とドナー基板505とを所定の時間(例えば、5分間)押圧し、ターゲット基板510と1層目のパターン部材501Aとを常温接合(表面活性化接合)する。本実施の形態では、パターン部材501A、501B・・・の順に積層する。
【0053】
次に、図8(c)に示すように、上部ステージを上昇させて、ドナー基板505とターゲット基板510を離間させると、1層目のパターン部材501Aが金属基板(第1の基板)500から剥離し、ターゲット基板510側に転写される。これは、1層目のパターン部材501Aとターゲット基板510との密着力が1層目のパターン部材501Aと金属基板(第1の基板)500との密着力よりも大きいからである。
【0054】
次に、図8(d)に示すように、下部ステージを移動させ、ターゲット基板510の直下にドナー基板505上の2層目のパターン部材501Bを位置させる。次に、ターゲット基板510側に転写された1層目のパターン部材501Aの表面(金属基板500に接触していた面)、及び2層目のパターン部材501Bの表面を前述したように清浄化する。
【0055】
次に、図8(e)に示すように、上部ステージを下降させ、1層目のパターン部材501Aと2層目のパターン部材501Bを接合させ、図8(f)に示すように、上部ステージを上昇させると、2層目のパターン部材501Bが金属基板(第1の基板)500から剥離し、ターゲット基板510側に転写される。
【0056】
他のパターン部材も同様に、ドナー基板505とターゲット基板510との位置決め、接合及び離間を繰り返すことにより、送液装置の各断面形状に対応した複数のパターン部材がターゲット基板上に転写される。ターゲット基板510上に転写された積層体を上部ステージから取り外し、ターゲット基板510を除去すると、第1の実施形態の送液装置が得られる。
【0057】
上記の実施形態では、ドナー基板を電鋳法を用いて作製したが、半導体プロセスを用いて作製してもよい。例えば、Siウエハからなる基板を準備し、この基板上にポリイミドからなる離型層をスピンコーティング法により着膜し、この離型層の表面に送液装置の構成材料となるAl薄膜をスパッタ法により着膜し、Al薄膜をフォトリソグラフィ法によりパターニングすることにより、ドナー基板を作製することもできる。
【0058】
図9は、第1の実施形態の送液装置を形成するための薄膜パターン部材の概念説明図である。第1の実施形態の送液装置が、図9(a)〜図9(f)の計6パターンの薄膜パターン部材を組み合わせた積層により形成されていることを示す。ニッケルの電鋳により、上記(a)から(f)のパターン部材をステンレス基板上(ドナー基板)に一括形成する。ターゲット基板にまず(a)のパターン部材を常温接合技術により接合転写する。次に(a)のパターン部材の上に、同様な方法により(b)及び(c)のパターン部材を接合転写する。第2の分割流路の高さを調整したい場合には(b)のパターン部材の接合転写を複数回行う。引き続き(c)を接合転写することにより、隔壁を形成する。その後、(d)又は(e)のパターン部材を組み合わせて接合転写することにより、第1の分割流路の高さ排出口の位置(高さ)及び数を調整することができる。最後に(f)のパターン部材を接合転写することにより、粒子分散液供給口を形成する。以上の工程により、第1の実施形態の送液装置が作製される。
【0059】
(実施形態2)
第2の実施形態の送液装置について説明する。
第2の実施形態の送液装置は、微小流路と、前記微小流路に輸送液を供給する輸送液供給口と、前記微小流路内に流体の流れ方向に形成され、微小流路を上下に隔て、かつ、開口を有する隔壁と、前記隔壁に対して上側に位置する第1の分割流路と、前記隔壁の下側に位置する第2の分割流路と、前記第1の分割流路の幅方向中央部に粒子分散液を供給する粒子分散液供給口と、前記第1の分割流路及び第2の分割流路の下流から流体を排出する少なくとも1つの排出口と、を有し、前記微小流路の内壁又は隔壁には、前記微小流路の断面の中央部において鉛直方向に対して上向きの流れを発生させるパターンが形成されていることを特徴とする送液装置において、前記パターンが、前記第1の分割流路の両側壁に形成されたパターンであり、流体の流れ方向に沿って前記第1の分割流路上面から下方に向かって、流体の流れ方向に対して斜めに形成された凸部又は凹部が複数連なったパターンを有する。
【0060】
図10は第2の実施形態の送液装置の斜視図である。
本実施形態においては、第1の分割流路2と第2の分割流路3とは、流体の送液方向に沿って開口を有する隔壁4により仕切られている。
図11は下降流及び上昇流の発生を示す概念図である。第1の分割流路に導入された側壁近傍の輸送液は、前記第1の分割流路の両側壁に形成されたパターンに衝突する。前記パターンは、流体の流れ方向に沿って前記第1の分割流路上面から下方に向かって、流体の流れ方向に対して斜めに形成された凸部又は凹部が複数連なったパターンである。衝突した輸送液は、パターンの傾斜のため上方から下方に向きを変えて下降流となる。隔壁に衝突して側壁側から中央部に向きを変えて集まってきた下降流は行き場を失い、第1の分割流路の中央部において上昇流Cとなる。これら上昇流Cと下降流とは、前記置換流と逆方向であるため、送液条件を適切に調整すれば置換流と上昇流とで相殺することが可能となる。
【0061】
第2の実施形態における微小流路、輸送液供給口、分割流路、粒子分散液、輸送液、粒子分散液供給口及び排出口等については、第1の実施形態におけるものと同様であり、好ましい範囲についても同様である。
【0062】
(隔壁)
第2の実施形態における隔壁について、図12を参照して説明する。図12は、第2の実施形態の送液装置の各部位の形状等を説明する模式図である。図12(A)は隔壁を上方から見た断面図であり、図12(B)におけるB−B’断面を表す。図12(B)は送液装置の断面図であり、図12(A)におけるA−A’断面を表す。
第2の実施形態における隔壁は、前記微小流路内に流体の流れ方向に形成され、微小流路を上下に隔て、かつ、開口を有する隔壁であるが、上昇流又は下降流を生じるパターンが形成されていない点で第1の実施形態における隔壁とは異なる。
第2の実施形態における隔壁に形成された開口は、主に粗粉を隔壁下部に隔離することを目的として形成される。従って、開口の形状は特に限定されないが、図12(A)に示すように、流体の流れ方向に沿ったストライプ状の格子状に形成された開口であることが、流体の流れを乱すことがないため好ましい。微小流路における隔壁の設置位置、厚み等については第1の実施形態における隔壁と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0063】
図12(A)において、隔壁の厚さd2は第1の実施形態における隔壁の厚さd1と同様であり、好ましい範囲についても同様である。
隔壁に形成された格子の幅l2’は、隔壁の厚さd2との比l2’/d2において、0.5〜2が好ましく、0.75〜1.5がより好ましい。上記の数値の範囲内であると、粗粉を効率よく分離できるため好ましい。
格子間のピッチp2’は、格子の幅l2’との比p2/l2’において1〜10が好ましく、2〜3がより好ましい。上記の数値の範囲内であると、粗粉を効率よく分離できる。
【0064】
(パターン)
第2の実施形態においては、上昇流を発生させるパターンが、前記第1の分割流路の両側壁に形成されたパターンであり、流体の流れ方向に沿って前記第1の分割流路上面から下方に向かって、流体の流れ方向に対して斜めに形成された凸部又は凹部が複数連なったパターンとなっている。図12を参照して、第2の実施形態におけるパターンについて説明する。
斜めに形成された凸部(又は凹部)と隔壁とが形成する角度θ2は、10度以上80度未満が好ましく、20〜70度がより好ましく、30〜60度がさらに好ましい。上記の数値の範囲内であると、効率よく下降流を生成でき、また圧損が少ないため好ましい。
斜めに形成された凸部(又は凹部)の厚みd2’’は、隔壁の厚さd2と同様であり,好ましい範囲についても同様である。
斜めに形成された凸部(又は凹部)の流れ方向の幅l2は、d2’’との比l2/d2’’において、0.5〜2が好ましく、0.75〜1.5がより好ましい。上記の数値の範囲内であると、効率よく下降流を生成できるため好ましい。
斜めに形成された凸部(又は凹部)のピッチp2は、斜めに形成された凸部(又は凹部)の流れ方向の幅l2との比p2/l2において2〜10が好ましく、2〜3がより好ましい。上記の数値の範囲内であると、効率よく下降流を生成でき、また圧損が少ないため好ましい。
また、第1の分割流路の両側壁に形成されたパターンは左右対称に形成されていることが好ましい。
これらのパラメータは、液体の種類と流速、粒子の種類と大きさ等により適切に設定される。
【0065】
(送液装置の製造方法)
図13は、第1の実施形態の送液装置を形成するための薄膜パターン部材の概念説明図である。第1の実施形態の送液装置が、図13(a)〜図13(f)の計6パターンの薄膜パターン部材を組み合わせにより形成されていることを示す。ニッケルの電鋳により、上記(a)から(f)のパターン部材をステンレス基板上(ドナー基板)に一括形成する。ターゲット基板にまず(a)のパターン部材を常温接合技術により接合転写する。次に(a)のパターン部材の上に、同様な方法により(b)のパターン部材を接合転写する。
引き続き(c)と(d)とを交互に接合転写することにより隔壁を形成する。粒子分散液供給口を形成する際には、(c)及び(d)の代わりに、(e)及び(f)を用いて隔壁を形成する。隔壁の開口の幅、ピッチ、微小流路の流路幅等の調整は、(c)及び(d)、又は、(e)及び(f)の組合せを複数回繰り返すことにより行う。
その後、(c)を接合転写した後に(b)を接合転写し、最後に(a)を接合転写することにより第2の実施形態の送液装置が完成する。
【0066】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の送液装置について説明する。
第3の実施形態の送液装置は、微小流路と、前記微小流路に輸送液を供給する輸送液供給口と、前記微小流路内に流体の流れ方向に形成され、微小流路を上下に隔て、かつ、開口を有する隔壁と、前記隔壁に対して上側に位置する第1の分割流路と、前記隔壁の下側に位置する第2の分割流路と、前記第1の分割流路の幅方向中央部に粒子分散液を供給する粒子分散液供給口と、前記第1の分割流路及び第2の分割流路の下流から流体を排出する少なくとも1つの排出口と、を有し、前記微小流路の内壁又は隔壁には、前記微小流路の断面の中央部において鉛直方向に対して上向きの流れを発生させるパターンが形成されていることを特徴とする送液装置において、前記パターンが、前記微小流路の上面内壁に形成されたパターンであり、流体の流れ方向に沿って前記上面内壁の中央から微小流路側壁に向かうV字型の凸部又は凹部が複数連なったパターンを有する。
【0067】
図14は第3の実施形態の送液装置の斜視図である。
本実施形態においては、第1の分割流路2と第2の分割流路3との間を流体の送液方向に沿って開口を有する隔壁4が仕切っている。
図15は第3の実施形態における上昇流の発生を示す概念図である。第1の分割流路に導入された側壁近傍の輸送液は、前記第1の分割流路の両側壁に形成されたパターンであり、流体の流れ方向に沿って前記第1の分割流路上面から下方に向かって、V字型のパターンに衝突し、その傾斜のため中央からから側壁側に向きを変える。側壁に衝突した流体は行き場を失い、側壁付近で下降流となり、図16に示すように、隔壁に衝突した後に第1の分割流路の中央部において上昇流Cを引き起こす。これら上昇流と下降流とは、前記置換流と全く逆方向であるため、構造や流通条件を適切に設計すれば相殺することが可能となる。
【0068】
第3の実施形態における微小流路、輸送液供給口、隔壁、分割流路、粒子分散液、輸送液、粒子分散液供給口及び排出口等については、第2の実施形態におけるものと同様であり、好ましい範囲についても同様である。
【0069】
(パターン)
第3の実施形態においては、前記下降流及び上昇流を発生させるパターンが、前記微小流路の上面内壁に形成されたパターンであり、流体の流れ方向に沿って前記上面内壁の中央から微小流路側壁に向かうV字型の凸部又は凹部が複数連なったパターンとなっている。図17(A)及び図17(B)を参照して、第3の実施形態におけるパターンについて説明する。
V字の中央部の角度θ3は、80〜140度が好ましく、100〜120度がより好ましい。上記の数値の範囲内であると、効率よく下降流を形成できるため好ましい。
V字の流れ方向の幅l3は、パターンの鉛直方向の厚みd3’’との比l3/d3’’において、0.5〜2が好ましく、0.75〜1.5がより好ましい。
V字間のピッチp3は、V字の流れ方向の幅l3との比p3/l3において2〜10が好ましく、2〜3がより好ましい。上記の数値の範囲内であると、上記の数値の範囲内であると、上昇流を効率よく生成できるため好ましい。
これらのパラメータは、液体の種類と流速、粒子の種類と大きさ等により適切に設定される。
パターンの鉛直方向の厚みd3’’は、第1の分割流路の高さh3との比d3’’/h3において0.1〜0.5が好ましく、0.2〜0.3がより好ましい。上記の数値の範囲内であると、上昇流を効率よく生成できるため好ましい。
【0070】
(送液装置の製造方法)
図18は、第3の実施形態の送液装置を形成するための薄膜パターン部材の概念説明図である。第1の実施形態の送液装置が、図18(a)〜図18(f)の計6パターンの薄膜パターン部材の組み合わせにより形成されていることを示す。ニッケルの電鋳により、上記(a)から(f)のパターン部材をステンレス基板上(ドナー基板)に一括形成する。ターゲット基板にまず(a)のパターン部材を常温接合技術により接合転写する。次に(a)のパターン部材の上に、同様な方法により(b)を接合転写した後に(c)の隔壁を接合転写する。第2の分割流路の高さを調整したい場合には(b)のパターン部材の接合転写を複数回行う。その後、(b)又は(d)のパターン部材を組み合わせて複数回接合転写することにより、第1の分割流路の高さ、排出口の位置(高さ)及び数を調整することができる。最後に(e)及び(f)のパターン部材を接合転写することにより、粒子分散液供給口を形成する。以上の工程により、第3の実施形態の送液装置が作製される。
【0071】
以上、第1の実施形態から第3の実施形態における上昇流を発生させるパターンについて説明したが、例えば第1の実施形態におけるパターンが形成された隔壁を第2の実施形態又は第3の実施形態において適用するなど、各実施形態を組み合わせた送液装置も本実施形態の送液装置に含まれるものとする。
【0072】
II.分級装置及び分級方法
次に、本実施形態の送液装置を利用した分級装置及び分級方法について説明する。
本実施形態の分級装置は、本実施形態の送液装置を含むことを特徴とする。
また、本実施形態の分級方法は、本実施形態の分級装置の粒子分散液供給口に粒子分散液を送流する供給工程、及び、前記微小流路において粒子を分級する分級工程を含むことを特徴とする。
【0073】
本実施形態の送液方法を利用した分級方法では、送液路における粒子の沈降速度が、ストークスの式に基づく粒子の沈降速度により近く、理論的な沈降速度差による粒子の分級に近い形で沈降速度を利用した粒子の分級が行われる。具体的には、置換流を打ち消す程度の上昇流を発生させるように流速を選択することで、粒径の異なる粒子の沈降速度差を利用した分級が行われる。
【0074】
図19は、本実施形態の分級装置に輸送液及び粒子分散液を送流した場合の概念図である。微小流路に輸送液を送流すると、微小流路の内壁又は隔壁に形成されたパターンにより、微小流路の断面の中央部において鉛直方向に対して上向きの流れを発生させる。
一方、第1の分割流路の幅方向中央部に粒子分散液を供給する粒子分散液供給口から供給された粒子分散液により、置換流が発生する。前記パターンにより発生した流れと前記置換流とは逆方向の流れとなるため、互いに打ち消しあい、供給された粒子はストークスの式に従って沈降する。粒子分散液に含まれる粒子のうち、粒子径の小さいものは第1の分割流路の下流に形成された上側の排出口から回収される。また、第2の排出口から回収される粒子よりも粒子径の大きいものはより沈降しており、第1の分割流路の下流に形成された下側の排出口から回収される。また、粒子分散液に含まれる粒子のうち、粒子径の大きい粗粉は隔壁に形成された開口を通過し、第2の分割流路まで沈降し、下流の第2の分割流路に形成された排出口から排出される。
【実施例】
【0075】
以下に実施例及び比較例を示して本実施形態について詳述するが、本実施形態は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0076】
(実施例1)
前記第1の実施形態の分級装置を作製した。図7における分級装置の寸法は下記の通りである。
微小流路幅W1:1mm
微小流路長さL1:25mm
第1の分割流路高さh1:1mm
隔壁厚さd1:0.25mm
第2の分割流路高さh1’:0.25mm
V字型のパターンの先端の角度θ1:110度
V字型のパターンの流路方向の幅l1:0.25mm
V字型のパターンのピッチp1:0.75mm
第1の分割流路の下流に形成された上部排出口と下部排出口とを分ける仕切りを第1の分割流路末端のほぼ中間位置に設けた。仕切りの厚みd1’は0.25mmとした。
【0077】
(上昇流の発生の確認)
比重1.0のカラービーズを10重量%含む樹脂粒子分散液を輸送液供給口から送液し、第1の分割流路において上昇流が発生しているか否かを観察した。評価結果を表1に示した。
【0078】
(分級の評価)
下記の平均粒子径を有する単分散ポリエステル真球粒子(密度1,200kg/m3)を純水に分散させ(微量の界面活性剤を含む。)、10重量%濃度の粒子分散液(粒子分散液(1))を作製した。
・平均粒子径(小粒子径)6μm 5部
・平均粒子径(大粒子径)15μm 5部
・水 90部
【0079】
粒子分散液(1)及び輸送液(水)の送液はシリンジポンプを用いた。各送液速度は、粒子分散液(1)を粒子分散液供給口から2〜20ml/h、輸送液を輸送液供給口から10〜100ml/hにて送液した。
第1の分割流路上部の排出口から回収した回収液を回収液(1)、第1の分割流路下部の排出口から回収した回収液を回収液(2)、第2の分割流路上部の排出口から回収した回収液を回収液(3)とした。
【0080】
各回収液に含まれる粒子の数平均粒子径や数平均粒度分布指標を評価した。
粒子の数平均粒子径や数平均粒度分布指標は、コールターマルチサイザーII型(ベックマン・コールター(株)製)で測定した。粒度分布を基にして分割された大小各単分散ポリエステル粒子の割合を、出口ごとにカウントした。評価結果を表1に示した。
【0081】
(実施例2)
前記第2の実施形態の分級装置を作製した。図12における分級装置の寸法は下記の通りである。
微小流路幅W2:1mm
微小流路長さL2:20mm
第1の分割流路高さh2:1mm
隔壁厚さd2:0.1mm
隔壁に形成された格子の幅l2’:0.1mm
格子間のピッチp2’:0.2mm
第2の分割流路高さh2’:0.2mm
斜めに形成された凸部の角度θ2:60度
斜めに形成された凸部の流路方向の幅l2:0.1mm
斜めに形成された凸部のピッチp2:0.3mm
斜めに形成された凸部の厚みd2’’:0.1mm
第1の分割流路の下流に形成された上部排出口と下部排出口とを分ける仕切りを第1の分割流路末端のほぼ中間位置に設けた。仕切りの厚みd2’は0.1mmとした。実施例1と同様にして上昇流の発生の確認及び分級の評価を行った。結果を表1に示した。
【0082】
(実施例3)
前記第1の実施形態の分級装置を作製した。図17における分級装置の寸法は下記の通りである。
微小流路幅W3:1mm
微小流路長さL3:30mm
第1の分割流路高さh3:1mm
隔壁厚さd3:0.1mm
第2の分割流路高さh3’:0.3mm
V字型のパターンの先端の角度θ3:110度
V字型のパターンの流路方向の幅l3:0.25mm
V字型のパターンのピッチp3:0.75mm
V字型のパターンの厚さd3’’:0.1mm
第1の分割流路の下流に形成された上部排出口と下部排出口とを分ける仕切りを第1の分割流路末端のほぼ中間位置に設けた。仕切りの厚みd3’は0.1mmとした。
実施例1と同様にして上昇流の発生の確認及び分級の評価を行った。結果を表1に示した。
【0083】
(比較例)
実施例1で使用した分級装置の隔壁のかわりに、実施例2で使用した隔壁を使用して分級装置を作製した。実施例1と同様にして上昇流の発生の確認及び分級の評価を行った。結果を表1に示した。
【0084】
【表1】

【符号の説明】
【0085】
B 輸送液
C 上昇流
1 微小流路
2 第1の分割流路
3 第2の分割流路
4 隔壁
5 パターン
6 輸送液供給口
7 粒子分散液供給口
8 排出口
10 送液装置
500 金属基板(第1の基板)
501A 1層目のパターン部材
501B 2層目のパターン部材
505 ドナー基板
510 ターゲット基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小流路と、
前記微小流路に輸送液を供給する輸送液供給口と、
前記微小流路内に流体の流れ方向に形成され、微小流路を上下に隔て、かつ、開口を有する隔壁と、
前記隔壁に対して上側に位置する第1の分割流路と、
前記隔壁の下側に位置する第2の分割流路と、
前記第1の分割流路の幅方向中央部に粒子分散液を供給する粒子分散液供給口と、
前記第1の分割流路及び第2の分割流路の下流から流体を排出する少なくとも1つの排出口と、を有し、
前記微小流路の内壁又は隔壁には、前記微小流路の断面の中央部において鉛直方向に対して上向きの流れを発生させるパターンが形成されていることを特徴とする
送液装置。
【請求項2】
前記パターンが、前記隔壁に形成されたパターンであり、流体の流れ方向に沿って微小流路側壁から微小流路中央に向かうV字型の開口部が複数個連なった開口パターンである、請求項1に記載の送液装置。
【請求項3】
前記パターンが、前記第1の分割流路の両側壁に形成されたパターンであり、流体の流れ方向に沿って前記第1の分割流路上面から下方に向かって、流体の流れ方向に対して斜めに形成された凸部又は凹部が複数連なったパターンである、請求項1又は2に記載の送液装置。
【請求項4】
前記パターンが、前記微小流路の上面内壁に形成されたパターンであり、流体の流れ方向に沿って前記上面内壁の中央から微小流路側壁に向かうV字型の凸部又は凹部が複数連なったパターンである、請求項1〜3いずれか1つに記載の送液装置。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1つに記載の送液装置を含むことを特徴とする、分級装置。
【請求項6】
請求項5に記載の分級装置の粒子分散液供給口に粒子分散液を送流する供給工程、及び、
前記微小流路において粒子を分級する分級工程を含むことを特徴とする
分級方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−67785(P2011−67785A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222182(P2009−222182)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】