説明

逆止弁付きチューブ

【課題】生産性と経済性に優れたコンプレッション成形法を用いて逆止弁付きチューブを一体成型することを課題とする。
【解決手段】内容物を注出するためのバルブと、該バルブを保持する保持リングとからなる逆止弁であって、該逆止弁とチューブの口部材とを、コンプレッション成型により一体に成型することを特徴とする、逆止弁付きチューブである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒部材の開口に成型樹脂からなる口部材をコンプレッション成型により一体成型するチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬品、化粧品、食品などに用いられる、プラスチックを主体とする積層材料を筒状に成型したチューブ本体の開口に、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂を成型してなる口部材を一体に成型したチューブが知られている。
【0003】
他方、内容物を一方向にだけ注出可能とする逆止弁を前記チューブの口部材に形成した、逆止弁付きチューブが知られており、ペースト状の内容物を少量づつ使用するエンドユースの容器として広く用いられている(例えば、特許文献1)。
【0004】
このような逆止弁付きチューブは、チューブから絞り出した内容物の逆流を防ぐとともに、内容物を絞り出した際に、口部材から逆流した空気がチューブ内に入り込み内容物を変質したり、次に内容物を絞り出したときに空気のみが最初に出たりするエアバック現象を防ぐことが可能である。
【0005】
また、チューブから内容物を絞り出した後の液切れがよく、液ダレ等により口部材を汚してしまうようなことがない。このため、内容物がハチミツやケチャップなどの粘度の高い内容物の場合に効果的であり、他方、化粧水などの粘度の低い内容物であっても、チューブ本体を押す力で、注出量を適宜加減することが可能である。
【0006】
【特許文献1】特開平10−53259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような逆止弁付きのチューブは、例えば、図10に示すように、別成型品からなる逆止弁7を、チューブの口部材3へと嵌合する構成であり、製造に手間が掛かるとともにコストアップの要因となっていた。このため、生産性と経済性に優れたコンプレッション成形法を用いて、前記逆止弁7を前記口部材3へと一体に成型可能な逆止弁付きチューブを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、上記課題を解決すべく、本発明の請求項1記載の発明は、筒状のチューブ本体の開口部分に、成型樹脂からなる口部材を取り付けてなるチューブにおいて、前記口部材の内部へと、内容物を注出する開閉自在なバルブと、該バルブを保持するための成型樹脂からなる保持リングと、からなる逆止弁を、コンプレッション成型により一体成型したことを特徴とする、逆止弁付きチューブである。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、上部マンドレルと下部マンドレルとの間に前記逆止弁を配置するとともに、外方から熱可塑性樹脂を充填して口部材をコンプレッション成型することにより、前記口部材の内部へと逆止弁を一体成型することを特徴とする、逆止弁付きチューブである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1は、筒状のチューブ本体の開口部分に、成型樹脂からなる口部材を取り付けてなるチューブにおいて、前記口部材の内部へと、内容物を注出する開閉自在なバルブと、該バルブを保持するための成型樹脂からなる保持リングと、からなる逆止弁を、コンプレッション成型により一体成型したことを特徴とするから、生産性と経済性に優れたコンプレッション成形法を用いて、逆止弁付きチューブを一体成型により形成することが可能である。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、上部マンドレルと下部マンドレルとの間に前記逆止弁を配置するとともに、外方から熱可塑性樹脂を充填して口部材をコンプレッション成型することにより、前記口部材の内部へと逆止弁を一体成型する簡単な方法により、逆止弁付きチューブを一体成型することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る逆止弁付きチューブ10(以下、チューブ10)の一例としては、図1に示すように、内容物を収容する筒状部材からなるチューブ本体2と、該チューブ本体2の開口部分に一体に成型された口部材3とからなり、該口部材3へとキャップ4を取り付けてもよい。特に、前記口部材3の内部には図示しない逆止弁7がコンプレッション成型により、一体に成型されている。
【0013】
このような逆止弁付きチューブ10は、前記チューブ本体2の開口部分に、図示しない逆止弁7を内部に有する口部材3を、射出成形法あるいは圧縮成形法によって取り付けてなり、さらに前記口部材3は、別部材からなる逆止弁7をコンプレッション成型により一体成型してなる。
【0014】
以下に、本発明の逆止弁付きチューブ10の構成および製造方法について説明する。
【0015】
まず、前記逆止弁7の一例としては、図2に示すように、曲げ弾性率の低い、十字状のスリットWを有するバルブ6と、該バルブ6を保持する樹脂成型品からなる保持リング8とからなる逆止弁7であって、後述する、チューブ本体2の口部材3の内側へとコンプレッション成型により一体成型することにより、本発明の逆止弁付きチューブ10を形成するものである。
【0016】
前記逆止弁7の前記保持リング8は、前記口部材3に用いる材質とともに一体成型できるものであれば、その材質は限定されるものではない。また、前記逆止弁7の前記バルブ6は、柔軟な材質が望ましく、例えばシリコン、エラストマー、合成ゴム等を適宜使用可能である。
【0017】
また、逆止弁7の前記バルブ6の形状は、上記例に限らず、Y形状や*形状などのスリットを有する、任意の形状からなるバルブ6であってもよい。また、内容物を絞りだすときの逆止弁7は、内容物の圧力で上方へと押し上げられ、他方、絞り出しを停止したときの逆止弁7は、元の位置にもどる復元力が働くため、内容物の液切れがよく、さらには、バルブが元の位置に戻ることにより、チューブ内への空気の逆流を防ぐことが可能である。特に、内容物がハチミツやケチャップなどの粘度の高い内容物の場合に効果的であり、一方、化粧水などの粘度の低い内容物であっても、チューブ本体を押す力で、注出量を適宜加減することが可能である。
【0018】
次に、前記チューブ本体2の一例としては、積層体からなる筒状体であって、積層シートを胴貼りして筒状体としても、あるいは多層押出し成形によって筒状体としてもよく、チューブ本体の一例としては、フィルムを筒状にして形成したラミネートチューブや、樹脂を押出し成型により形成した押出しチューブなど、を適宜用いることが可能である。
【0019】
また、チューブ本体2の最内層の素材には、一般の内容物に対してはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が使用され、さらに特殊な薬効成分、芳香成分、高揮発成分等を含む医薬品、医薬部外品、化粧品、工業用品等には、かかる成分の選択的吸着、選択的透過の少ない非吸着性樹脂、例えばポリアクリロニトリル系共重合体(PAN)あるいはエチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)等を好適に使用することができる。チューブ本体2の前記最内層以外の素材の一例としては、最外層には肌触り、風合いの点および経済性の面から、ポリオレフィン系樹脂を使用することが好ましい。また前記口部材3は、前記チューブ本体2と良好に接合するように、前記チューブ本体2の最内層と同一の樹脂が使用されることが望ましい。
【0020】
次に、前記口部材3と前記逆止弁7とをコンプレッション成型により一体成型する方法の一例を以下に説明する。
【0021】
まず、図3に示すように、胴部マンドレルA(下部マンドレルA)に前記チューブ本体2を装着するとともに、胴部マンドレルA上方の凸部分Pに、別部材からなる前記逆止弁7の保持リング8部分を装着する。
【0022】
そして、図4に示すように、口部材マンドレルB(上部マンドレルB)を、前記逆止弁7の上方へと配置して、逆止弁7を前記上部マンドレルBおよび下部マンドレルAとにより挟み込む。
【0023】
次に、図5に示すように、口部材3をコンプレッション成型するためのリング状の溶融熱可塑性樹脂Mを前記胴部マンドレルAの肩部分へと充填する。
【0024】
最後に、図6に示すように、左右のキャビティE,Fにより、前記リング状の熱可塑性樹脂Mを挟み込み、熱可塑性樹脂Mを型閉めして、圧縮、冷却することにより、図7に示すように、逆止弁7と口部材3とを一体成型するとともに、口部材3とチューブ本体2とを熱溶着させるものである。
【0025】
そして、チューブ本体2の底部Dから図示しない内容物を充填後、チューブ本体2の底部Dを閉じることにより、図8に示すように、本発明の逆止弁付きチューブ10を形成するものである。
【0026】
以上のように、本発明の逆止弁付きチューブ10は、前記口部材3の内部へと、内容物を注出する開閉自在なバルブ6と、該バルブ6を保持するための成型樹脂からなる保持リング8と、からなる逆止弁7を、コンプレッション成型により一体成型する簡単な構成により、生産性と経済性に優れたコンプレッション成形法を用いて、逆止弁付きチューブ10を形成することが可能である。
【0027】
特に、上部マンドレルBと下部マンドレルAとの間に前記逆止弁7を配置するとともに、外方から熱可塑性樹脂Mを充填して口部材3をコンプレッション成型する簡単な方法により、前記口部材3の内部へと前記逆止弁7を一体成型した逆止弁付きチューブ10を形成することが可能である。
【0028】
また、本発明の逆止弁付きチューブチューブ10は、図9(a)(b)に示すように、射出成形で作製され、その側壁内周面には、前記口部材3の外周面に設けられたネジ山に螺合するネジ溝が設けられたキャップ4を螺着してもよく、さらには、前記口部材3の天面部分に、未開封の証左や、パッキング効果及びバリア効果とを兼ねて、例えば、外側から二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、アルミニウム箔、ポリプロピレン系樹脂のシーラント層を、順に積層したような構成のシール材Hを熱接着してもよい。
【0029】
前記口部材3をコンプレッション成型するための前記熱可塑性樹脂M(混合樹脂M)としては、特に限定はされないが、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L・LDPE)、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)のいずれも使用することができる。
【0030】
また、前記混合樹脂のポリプロピレンにブレンドするポリエチレンは、コンプレッション成形における成形性および耐熱性などの点で高密度ポリエチレンが特に好ましく、その含有量は7〜25重量%の範囲が好ましい。前記高密度ポリエチレンの含有量が7重量%未満の場合は、コンプレッション成形における成形適性の向上効果を十分に得られず、また、25重量%を超える場合は、胴部材との熱接着性が低下するため好ましくない。
【0031】
前記チューブ本体2は、ポリプロピレンを単独で筒状に成形したチューブ本体2を用いることもできるが、例えば、中間層にアルミニウム箔や、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物層、ポリアクリロニトリル層、或いは、シリカまたはアルミナまたはアルミニウムなどの蒸着層を設けた二軸延伸ポリエステルフィルムまたは二軸延伸ポリアミドフィルムなどを積層し、最内層と最外層にポリプロピレン層を積層した多層積層シートを筒状に熱接着した胴部材を用いることが、耐熱性と共にガスバリヤー性などを向上できる点で好ましい。
【0032】
また、ガスバリヤー性を必要としない場合でも、中間層に二軸延伸ポリエステルフィルムや二軸延伸ポリアミドフィルムなどを積層することにより胴部材の強靱性、屈曲性などの機械的強度を向上させることができる。また、前記チューブ本体2に用いるポリプロピレンは、レトルト殺菌処理に耐える耐熱性を有してもよく、ポリプロピレンのホモポリマーのほか、プロピレンとエチレンなどの共重合体や、前記口部材の成形樹脂と同様、ポリプロピレンにポリエチレンをブレンドした混合樹脂などを使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の逆止弁付きチューブを示す図である。 (a)キャップ開封前を示す図である。 (b)キャップ開封後を示す図である。
【図2】逆止弁を示す図である。 (a)正面視断面図 (b)一部切断斜視図
【図3】本発明の逆止弁付きチューブの成型工程を示す説明図である。 (a)正面視断面図 (b)一部切断斜視図
【図4】本発明の逆止弁付きチューブの成型工程を示す説明図である。 (a)正面視断面図 (b)一部切断斜視図
【図5】本発明の逆止弁付きチューブの成型工程を示す説明図である。 (a)正面視断面図 (b)一部切断斜視図
【図6】本発明の逆止弁付きチューブの成型工程を示す説明図である。 (a)正面視断面図 (b)一部切断斜視図
【図7】本発明の逆止弁付きチューブの成型工程を示す説明図である。 (a)正面視断面図 (b)一部切断斜視図
【図8】本発明の逆止弁付きチューブを示す一部切断説明図である。
【図9】(a)(b)本発明の逆止弁付きチューブの別の例を示す説明図である。
【図10】(a)(b)従来の逆止弁付きキャップを示す説明図である。
【符号の説明】
【0034】
2 チューブ本体
3 口部材
4 キャップ
8 保持リング
6 バルブ
7 逆止弁
10 逆止弁付きチューブ(チューブ)
A 下部マンドレル
B 上部マンドレル
M 熱可塑性樹脂
E,F 左右のキャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のチューブ本体の開口部分に、成型樹脂からなる口部材を取り付けてなるチューブにおいて、前記口部材の内部へと、内容物を注出する開閉自在なバルブと、該バルブを保持するための成型樹脂からなる保持リングと、からなる逆止弁を、コンプレッション成型により一体成型したことを特徴とする、逆止弁付きチューブ。
【請求項2】
上部マンドレルと下部マンドレルとの間に前記逆止弁を配置するとともに、外方から熱可塑性樹脂を充填して口部材をコンプレッション成型することにより、前記口部材の内部へと逆止弁を一体成型することを特徴とする、請求項1記載の逆止弁付きチューブ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−120426(P2008−120426A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−307498(P2006−307498)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】