説明

逆止弁

【課題】管体のメータ側端部に設けられ、弁体の移動に伴うケージへの衝撃によるケージの破損を防止する。
【解決手段】弁孔11の周囲に形成される弁座12に接離する弁体13は、弁孔11を閉塞する頭部18から弁軸19が下流側へ延びたものであり、弁軸19が弁孔11の下流側に固定されたケージ14によって支持される。ケージ14は、合成樹脂製であり、弁座12の外側に嵌合した環状部25から下流側へ延びる3本の柱部26の下流端部の内側に円環状のボス部27が設けられたものである。ケージ14に対する金属製の補強部材32を備え、補強部材32は、ケージ14のボス部27に固定されるリング部34と、リング部34の外縁部から放射状に延び、ケージ14の各柱部26の外面に沿うアーム部33と、各アーム部33の上流側端に設けられる径方向外向きの係合片35とからなる。ケージ14の射出成形時に補強部材32がインサートされて、一体成形され、補強部材32がケージ14のボス部27に確実に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ビル、集合住宅、戸建てなどの建物の水道配管や給水管などの管体に取り付けるメータや止水栓等と組み合わせて使用され、その管体内の水がメータや止水栓等へ逆流することを防止する逆止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ビル、集合住宅、戸建てなどの建物の水道配管や給水管などの管体に取り付けるメータや止水栓等と組み合わせて、その管体内の水の逆流を防止する逆止弁が利用されている(特許文献1参照)。
【0003】
この逆止弁40は、例えば、図7(a)に示すように、メータ50の下流側に接続される管体P内に設けられている。メータ50の上流側には、通常、止水栓(図示省略)が接続され、メータ50の交換時での止水に使用される。
【0004】
その管体Pのメータ50側の開口端には、図7(b)に示すように、フランジを有する円環状の弁座シート41が嵌め合わされている。この弁座シート41を備えた弁座に弁体42が接離可能に設けられており、弁体42は、弁座シート41の弁座周縁部に嵌め合わせた円筒状のケージ43によって接離方向に移動可能に保持されている。
【0005】
上記ケージ43内の弁体42は、弁座シート41の弁座に接離する頭部44と、この頭部44から下流側に延びる弁軸45を有する。そのケージ43は、その側面に長さ方向のスリットを複数有し、そのスリットを水が通過するようになっている。
【0006】
ケージ43の底面から弁座に向かって立ち上がるように形成した円筒状のガイド部46に弁軸45を通し、そのガイド部46の外側に弁体42を閉弁方向に付勢するコイルばね47が取り付けられる。この弁体42はケージ43内で接離方向に移動可能に保持され、コイルばね47の付勢力により、閉弁方向に付勢されている。
【0007】
このケージ43は、図8(a)に示すように、その上流側端部の内周部に設けた係止爪48と、弁座シート41の弁座の外周部に設けた係止爪49とを相互に係合させることにより、弁座シート41に連結される。
【0008】
この連結構造であれば、弁体42を挿入したケージ43を弁座シート41に係合させることで、逆止弁40を容易に組み立てることができる。また、管体Pに逆止弁40を嵌め込んだ状態で止水栓に対して袋ナットを回せば、逆止弁40が管体Pの開口端に固定されるため、逆止弁40の施工性が良い。
【0009】
逆止弁40は、上記止水栓を開くと、水流により弁体42がコイルばね47の付勢力に抗して下流方向に移動し、開弁状態となり、水がケージ43のスリットを通過して管体P内を流れる(図7(b)一点鎖線参照)。
【0010】
一方、止水栓を閉じると、弁体42がコイルばね47の付勢力で、弁座シート41の弁座に押し付けられて閉弁状態となり、管体P内の水の逆流を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平9−72442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記逆止弁40は、経年によるケージ43の劣化や、止水栓の開閉操作に伴う弁体42の移動によるケージ43への衝撃により、図8(b)に示すように、弁座シート41とケージ43の係止爪48、49による係合が外れて、ケージ43が弁座シート41から脱落するおそれがあった。
【0013】
ケージ43の脱落を防止するために、弁座シート41とケージ43との係止爪48、49による係合を強固なものとすることが考えられるが、この場合、弁体42の移動に伴うケージ43への衝撃によりケージ43が破損して、逆止弁40の機能が損なわれるおそれがあった。
【0014】
そこで、この発明の課題は、流体の圧力損失に影響を及ぼすことなく、弁体42の移動に伴うケージ43への衝撃によるケージの破損を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するために、この発明は、弁孔周囲に形成された弁座と、その弁座に接離可能な弁体と、その弁体を上流側に向かって付勢する弾性部材とを備え、前記弁体は、流体圧によって下流側に移動することにより前記弁座から離れて前記弁孔を開放し、前記弾性部材の付勢力によって上流側に移動することにより前記弁座に接して前記弁孔を閉塞する逆止弁において、前記弁体は、前記弁孔を閉塞する頭部と、その頭部から下流側に向かって延びる弁軸とを備え、前記弁軸は前記弁孔の下流側に固定されたケージによって支持されており、そのケージは、前記弁座の外側から下流側に向かって延びる柱部と、前記柱部の下流側端に前記弁軸を前記接離方向に移動可能に支持するボス部とを有し、前記ケージに対する金属製の補強部材を備え、その補強部材は、前記ケージの外側部の外側に沿うアーム部と、そのアーム部の下流側端に設けられ、前記ボス部に固定されるリング部とを有する構成を採用することができる。
【0016】
このようにすると、弁体の弁軸を支持するケージは、柱部が補強部材のアーム部に、ボス部が補強部材のリング部によってそれぞれ補強される。このため、例えば、止水栓等の開閉操作に伴う弁体の移動によるケージへの衝撃を金属製の補強部材で受けることが可能となり、ケージの破損を防止することができる。
【0017】
また、補強部材は、ケージの外側部に沿うアーム部を備えているため、ケージの隣り合う柱部間を流れる流体の流れを阻害することがなく、その流体の圧力損失に影響を及ぼさない。
【0018】
前記ケージが合成樹脂製であり、前記補強部材と一体成形されることにより、射出成形することが可能となり、補強部材を備えたケージを容易に製作することができる。また、ケージを成形する従来の金型をそのまま使用することができ、経済的である。
【0019】
また、逆止弁が取り付けられる管体の端面にケージおよび補強部材を確実に係合するために、前記ケージの柱部および前記補強部材のアーム部の上流側端に、径方向外向きの係合部が形成され、前記柱部の係合部が、前記アーム部の係合部と前記弁座に形成された径方向のフランジとに挟まれる状態に設けられた構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明は、弁体を保持するケージに補強部材を備えているので、弁体の移動に伴うケージへの衝撃によるケージの破損を防止することができる。また、補強部材は、そのアーム部がケージの外側部に沿うように設けられているので、ケージの隣り合う柱部間を流れる流体の流れを阻害することがなく、その流体の圧力損失に影響を及ぼさない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1の逆止弁を示す断面図
【図2】(a)同上の逆止弁の閉弁状態を示す断面図、(b)同上の逆止弁の開弁状態を示す断面図
【図3】(a)同上の逆止弁の上流側を示す一部切り欠き断面図、(b)同上の逆止弁の弁座とケージとの係合を示す拡大断面図、(c)図3(a)のX−X線における断面図
【図4】同上の逆止弁を上流側から見た斜視図
【図5】同上の逆止弁を下流側から見た斜視図
【図6】同上の逆止弁の補強部材を示す斜視図
【図7】従来の逆止弁の断面正面図
【図8】同上の弁体とケージとの連結部を示す断面正面図
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0022】
以下、この発明に係る逆止弁の実施例1を図1〜図6に示す。この実施例1での逆止弁10は、図1に示すように、メータ1の下流側に給水管や配管等の管体Pが接続され、その管体Pのメータ1側の開口端の内部に取り付けられている。
【0023】
この逆止弁10は、弁孔11の周囲に形成された円環状の弁座12と、その弁座12に接離可能な弁体13と、弁体13を前記接離方向に移動可能に保持するケージ14と、弁体13を上流側に向かって付勢する弾性部材としてのコイルばね15を備えている。
【0024】
弁座12は、図2(a)に示すように、上流側端部に径方向外向きのフランジ16が全周にわたって形成され、下流側端部に弁体13が接離する弾性を有するシールリング17を備えている。また、弁座12のフランジ16側の外周部に係合凹部12aが全周に形成されている(図3(a)から(c)参照)。
【0025】
ケージ14に保持される弁体13は、弁座12のシールリング17に接離する頭部18と、頭部18から下流側に向かって延びる弁軸19とを備えている。頭部18は、上流側に向かう膨出部20の外周に、シールリング17に接離する当接部21が形成されたものである。なお、弁体13の頭部18は、ゴムパッキン(ガスケット30)から飛び出さない高さとすることが好ましい。
【0026】
膨出部20は上流側を向く球状面を有しており、膨出部20の下流側を向く面には弁軸19が一体に形成され、弁軸19は下流側に向かって延びる一対2本の軸状体から形成される。
【0027】
弁体13は弁座12の下流側に固定されたケージ14により保持されている。ケージ14は、合成樹脂製であり、図4、図5に示すように、弁座12の外側に嵌め合わされる環状部25と、この環状部25から下流側に向かって延びる3本の柱部26と、各柱部26の下流端部の内側に設けられた円環状のボス部27とからなる。ケージ14は合成樹脂製であるので、射出成形により形成することが可能である。
【0028】
ケージ14の環状部25には、図3(a)から(c)に示すように、その内周部の上流側に係合リブ25aが周方向の3箇所に間隔をおいて形成されている。各係合リブ25aは、弁座12の係合凹部12aに係合可能であり、周方向中央の位置が、柱部26の周方向中央と一致している。このため、係合リブ25aが弁座12の係合凹部12aに係合可能となり、弁座12をケージ14の内周部に容易に嵌め合わせることができる。なお、係合リブ25aは、逆止弁10の規格に基づく弁座12の係合凹部12aの仕様に応じて、設置箇所や、周方向長さを適宜変更することができる。
【0029】
この係合構造によれば、逆止弁10が閉弁し、下流側が逆圧状態となった場合、流体により弁体13が押し付けられる弁座12を、ケージ14の係合リブ25aで受けることができる。このため、弁座12とフランジ16との境界部分における応力集中が発生しにくくなり、その境界部分の変形、破損を防止することが可能となる。
【0030】
また、ケージ14に保持された弁体13を弁座12に取り付けて、コイルばね15の弾性により弁体13が弁座12に押し付けられた場合でも、その弁座12をケージ14の係合リブ25aで受けることができる。その結果、後述するガスケット30は、弁座12のフランジ16と、ケージ14の係合部29との間にすき間が生じることなく、その見映えが悪くなることを防止できる。
【0031】
ケージ14の環状部25の内周部の下流側(柱部26側)には、径方向内向きに段部25bが形成され、この段部25bと弁座12の下流側端部との間でシールリング17が保持されている。さらに、環状部25の上流側端部には、径方向外向きのフランジ状の係合部29が全周にわたって形成されている。
【0032】
各柱部26は、環状部25の下流側端の周方向に等配され、環状部25とボス部27とが離間するように、その下流側端部の内側にボス部27が固定される(図5参照)。この構造により、環状部25とボス部27との間において、隣り合う柱部26の間に流体を通過させることができる。
【0033】
ボス部27は、中央の孔の周縁から上流側に突き出す円筒状のガイド体28が形成されている。このガイド体28により、弁体13の弁軸19が弁座12のシールリング17に対して接離方向に移動可能に案内される。
【0034】
ボス部27のガイド体28の外側にコイルばね15が装着され、ボス部27と弁体13の頭部18との間で保持される。コイルばね15により、弁体13は、上流側に移動するように付勢され、その頭部18の当接部21が弁座12のシールリング17に接して弁孔11を閉塞する(図2(a)参照)。また、流体の圧力(流体圧)により、コイルばね15の付勢力に抗して、弁体13が下流側に移動し、弁座12から離れて弁孔11を開放する(図2(b)参照)。
【0035】
ケージ14に備えた補強部材32は、図6に示すように、所定の形状の金属板を折り曲げ加工したものであり、ケージ14のボス部27に固定されるリング部34と、リング部34の外縁部から放射状に延び、ケージ14の各柱部26の外面に沿うアーム部33と、各アーム部33の上流側端に設けられる径方向外向きの係合片35(係合部)とからなる(図5参照)。
【0036】
補強部材32のリング部34は、ケージ14のボス部27に固定され、弁体13の弁軸19が挿通可能とされる。ケージ14は合成樹脂製であるので、射出成形することが可能となり、その成形時に、補強部材32をケージ14にインサートして一体成形することができる。
【0037】
一体成形することにより、補強部材32がケージ14のボス部27に確実に固定され、補強効果が向上する。なお、ボス部27に対するリング部34の固定強度を高めるために、リング部34に孔34aを設けて、その孔にケージ14の射出された樹脂を入り込ませるようにしてもよい。
【0038】
補強部材32の各アーム部33は、長さ方向に間隔をおいて2個の孔33aを有しており、上流側端に径方向外向きの係合片35が形成されている。各係合片35は、周方向に所要長さを有するものである。また、係合片35の両側には孔35aが設けられ、ケージ14の係合部29に沿うように配置されている。このため、係合部29が補強部材32の係合片35と弁座12のフランジ16とに挟まれた状態で、円環状のゴムパッキンに覆われてガスケット30が形成される(図5参照)。
【0039】
また、ケージ14に補強部材32をインサートして射出成形されると、図5に示すように、これらの孔33a、35aにケージ14への射出された樹脂が入り込む。その結果、補強部材32のアーム部33および係合片35が、ケージ14の柱部26および係合部29に確実に固定され、補強効果が向上する。
【0040】
また、ガスケット30は、メータ1の下流側端部と管体Pの端部との間で挟まれるので、ケージ14に補強部材32が弁座12のフランジ16とともに確実に固定され、補強効果が向上する。
【0041】
以上のように構成された逆止弁10は、図1に示すように、ガスケット30がメータ1の下流側開口端と、管体Pの一端側端とに挟まれた状態で、袋ナット2の締め付けにより固定される。また、袋ナット2の締め付けにより、ガスケット30のゴムパッキンが弾性変形しメータ1と管体Pとの間を密封する。
【0042】
メータ1の上流側に接続された図示しない止水栓が開弁されると、水などの流体がその流体圧によって、弁体13の頭部18を下流側に押し付け、弁体13が弁座12から離れ、弁孔11が開放される。これにより、管体P内に流体が流れる。一方、止水栓が閉弁されると、逆止弁10の上流側が下流側よりも水圧が低くなり、コイルばね15の付勢力により弁体13の頭部18が上流側に移動して弁孔11を閉塞する。
【0043】
弁孔11の開閉に伴って移動する弁体13は、ケージ14に保持されており、さらに、ケージ14が補強部材32により補強されているため、弁体13の移動に伴うケージ14への衝撃を受けても、ケージ14の柱部26の破損が防止される。
【0044】
また、ケージ14の係合部29および補強部材32の係合片35が、弁座12のフランジ16とともに、ゴムパッキンに覆われてガスケット30を形成しているため、ケージ14の脱落を防止することができる。
【0045】
さらに、補強部材32は、ケージ14の外側部の外側に沿うアーム部33を備えているため、ケージ14の隣り合う柱部26間を流れる流体の流れを阻害することがなく、その流体の圧力損失に影響を及ぼさない。
【符号の説明】
【0046】
1 メータ
2 袋ナット
10 逆止弁
11 弁孔
12 弁座
12a 係合凹部
13 弁体
14 ケージ
15 コイルばね
16 フランジ
17 シールリング
18 頭部
19 弁軸
20 膨出部
21 当接部
25 環状部
25a 係合リブ
25b 段部
26 柱部
27 ボス部
28 ガイド体
29 係合部
30 ガスケット(ゴムパッキン)
32 補強部材
33 アーム部
33a 孔
34 リング部
34a 孔
35 係合片
35a 孔
40 逆止弁
41 弁座シート
42 弁体
43 ケージ
44 頭部
45 弁軸
46 ガイド部
47 コイルばね
48 係止爪
49 係止爪
50 メータ
P 管体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁孔周囲に形成された弁座と、その弁座に接離可能な弁体と、その弁体を上流側に向かって付勢する弾性部材とを備え、前記弁体は、流体圧によって下流側に移動することにより前記弁座から離れて前記弁孔を開放し、前記弾性部材の付勢力によって上流側に移動することにより前記弁座に接して前記弁孔を閉塞する逆止弁において、
前記弁体は、前記弁孔を閉塞する頭部と、その頭部から下流側に向かって延びる弁軸とを備え、前記弁軸は前記弁孔の下流側に固定されたケージによって支持されており、そのケージは、前記弁座の外側から下流側に向かって延びる柱部と、前記柱部の下流側端に前記弁軸を前記接離方向に移動可能に支持するボス部とを有し、前記ケージに対する金属製の補強部材を備え、その補強部材は、前記ケージの外側部の外側に沿うアーム部と、そのアーム部の下流側端に設けられ、前記ボス部に固定されるリング部とを有することを特徴とする逆止弁。
【請求項2】
前記ケージは合成樹脂製であり、前記補強部材と一体成形されたことを特徴とする請求項1に記載の逆止弁。
【請求項3】
前記ケージの柱部および前記補強部材のアーム部の上流側端に、径方向外向きの係合部が形成され、前記柱部の係合部が、前記アーム部の係合部と前記弁座に形成された径方向のフランジとに挟まれる状態に設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の逆止弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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