逆浸透処理方法および逆浸透処理装置
【課題】逆浸透膜の劣化を効果的に抑制する。
【解決手段】逆浸透処理装置10は、海水用逆浸透装置14の透過水に還元剤として重亜硫酸ナトリウムを供給する第2還元剤供給装置15と、透過水にアルカリ剤として水酸化ナトリウムを供給するアルカリ剤供給装置17と、アルカリ剤が供給されてpHを10程度に設定された透過水にホスホン酸系のスケール防止剤を供給するスケール防止剤供給装置18と、ホスホン酸系のスケール防止剤が供給された透過水を、汽水用逆浸透膜を透過した透過水と、汽水用逆浸透膜を透過せずに濃縮された濃縮水とに分離濾過する第1汽水用逆浸透装置20とを備える。
【解決手段】逆浸透処理装置10は、海水用逆浸透装置14の透過水に還元剤として重亜硫酸ナトリウムを供給する第2還元剤供給装置15と、透過水にアルカリ剤として水酸化ナトリウムを供給するアルカリ剤供給装置17と、アルカリ剤が供給されてpHを10程度に設定された透過水にホスホン酸系のスケール防止剤を供給するスケール防止剤供給装置18と、ホスホン酸系のスケール防止剤が供給された透過水を、汽水用逆浸透膜を透過した透過水と、汽水用逆浸透膜を透過せずに濃縮された濃縮水とに分離濾過する第1汽水用逆浸透装置20とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、逆浸透処理方法および逆浸透処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば液体を第1段の逆浸透分離モジュールにて逆浸透処理し、得られた透過水を第2段の逆浸透分離モジュールにて更に逆浸透処理する多段式逆浸透処理において、第2段の逆浸透分離モジュールへ供給される透過水にキレート剤あるいはスケ−ル防止剤を添加することによって、透過水中に含まれる重金属または重金属イオンとキレート剤あるいはスケ−ル防止剤とが錯体を形成することによって、逆浸透膜の性能低下を防止する逆浸透処理方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−71252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係る逆浸透処理方法においては、透過水に添加されるキレート剤あるいはスケ−ル防止剤は特に限定されず、アルカリ性の溶液中に溶存する炭酸イオン(HCO3−)および亜硫酸水素ナトリウムと、鉄あるいはマンガンとが相互作用を起こすことによって逆浸透膜モジュールの全芳香族ポリアミドが分解されてしまうことを抑制するように設定されている。
しかしながら、重金属としての鉄およびマンガンをキレート剤あるいはスケ−ル防止剤によって捕捉するだけでは逆浸透膜の劣化を十分に抑制することができない虞があり、逆浸透膜の劣化を効果的に抑制することが望まれている。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、逆浸透膜の劣化を効果的に抑制することが可能な逆浸透処理方法および逆浸透処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ね、例えば海水を淡水化する逆浸透処理において劣化した逆浸透膜の表面の元素組成を分析した結果、塩素および臭素のハロゲンは検出されずに、炭素に対する酸素の比率が増大していることを検出し、更に、鉄に加えて、銅、ニッケル、マンガン、亜鉛などの遷移金属を検出した。
この検出結果から、殺菌用の塩素系殺菌剤に起因する遊離塩素を還元するために被処理液に添加されている還元剤が重金属イオンを触媒として反応して酸化性物質が生成されていると推定して、検出された各重金属イオンの寄与について試験を行なった結果、特に銅の触媒作用が鉄などの他の重金属イオンに比べて強いことを知見した。
【0007】
そして、還元剤が添加されると共に逆浸透膜でのホウ素の阻止率を増大させるためにアルカリ性とされた被処理液に銅イオンが含まれている状態において、特にホスホン酸系のスケール防止剤を被処理液に添加することによって、非ホスホン酸系のスケール防止剤あるいはNa4−EDTAなどのキレート剤を被処理液に添加する場合に比べて、より顕著に酸化性物質の生成を抑制することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の請求項1に係る逆浸透処理方法は、少なくとも銅イオンを含む重金属イオンと還元剤とを含有するアルカリ性領域の被処理液にホスホン酸系のスケール防止剤を添加した後に該被処理液を逆浸透膜に供給する。
【0009】
さらに、本発明の請求項2に係る逆浸透処理方法では、前記被処理液は、前記還元剤として亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有する。
【0010】
また、本発明の請求項3に係る逆浸透処理装置は、少なくとも銅イオンを含む重金属イオンと還元剤とを含有するアルカリ性領域の被処理液にホスホン酸系のスケール防止剤を添加するスケール防止剤添加手段(例えば、実施の形態でのスケール防止剤供給装置18)と、前記スケール防止剤添加手段によって前記スケール防止剤が添加された前記被処理液を逆浸透膜に供給する逆浸透膜処理手段(例えば、実施の形態での第1汽水用逆浸透装置20)と、を備える。
【0011】
さらに、本発明の請求項4に係る逆浸透処理装置は、前記還元剤として亜硫酸塩または重亜硫酸塩を前記被処理液に供給する還元剤供給手段(例えば、実施の形態での第2還元剤供給装置15)を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に係る逆浸透処理方法によれば、遊離塩素を還元する還元剤が添加されると共にアルカリ性とされた被処理液において、特に触媒作用が強い銅イオンを含む重金属イオンが含まれていると、還元剤が反応して酸化性物質が生成され易くなり、この酸化性物質による逆浸透膜の化学的な劣化が生じ易くなる。
これに対して、被処理液を逆浸透膜に供給するより前において、スケール防止剤として、特にホスホン酸系のスケール防止剤を被処理液に添加することによって、非ホスホン酸系のスケール防止剤あるいはNa4−EDTAなどのキレート剤を被処理液に添加する場合に比べて、より効果的に酸化性物質による逆浸透膜の劣化を抑制することができる。
【0013】
さらに、本発明の請求項2に係る逆浸透処理方法によれば、還元剤として亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有する被処理液では、特に触媒作用が強い銅イオンを含む重金属イオンが触媒となって、亜硫酸イオンが亜硫酸ラジカルとなり、更に酸化性の過硫酸ラジカル、硫酸ラジカルが生成される反応が生じ易くなる。
これに対して、被処理液を逆浸透膜に供給するより前において、スケール防止剤として、特にホスホン酸系のスケール防止剤を被処理液に添加することによって、非ホスホン酸系のスケール防止剤あるいはNa4−EDTAなどのキレート剤を被処理液に添加する場合に比べて、より効果的に酸化性物質による逆浸透膜の劣化を抑制することができる。
【0014】
また、本発明の請求項3に係る逆浸透処理装置によれば、遊離塩素を還元する還元剤が添加されると共にアルカリ性とされた被処理液において、特に触媒作用が強い銅イオンを含む重金属イオンが含まれていると、還元剤が反応して酸化性物質が生成され易くなり、この酸化性物質による逆浸透膜の化学的な劣化が生じ易くなる。
これに対して、被処理液を逆浸透膜に供給するより前において、スケール防止剤として、特にホスホン酸系のスケール防止剤を被処理液に添加することによって、非ホスホン酸系のスケール防止剤あるいはNa4−EDTAなどのキレート剤を被処理液に添加する場合に比べて、より効果的に酸化性物質による逆浸透膜の劣化を抑制することができる。
【0015】
さらに、本発明の請求項4に係る逆浸透処理装置によれば、還元剤として亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有する被処理液では、特に触媒作用が強い銅イオンを含む重金属イオンが触媒となって、亜硫酸イオンが亜硫酸ラジカルとなり、更に酸化性の過硫酸ラジカル、硫酸ラジカルが生成される反応が生じ易くなる。
これに対して、被処理液を逆浸透膜に供給するより前において、スケール防止剤として、特にホスホン酸系のスケール防止剤を被処理液に添加することによって、非ホスホン酸系のスケール防止剤あるいはNa4−EDTAなどのキレート剤を被処理液に添加する場合に比べて、より効果的に酸化性物質による逆浸透膜の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る逆浸透処理装置の構成図および逆浸透処理方法を示す図ある。
【図2】本発明の実施の形態に係る逆浸透処理方法に対して行なった試験結果での酸化還元電位と経過時間との関係を示すグラフ図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る逆浸透処理方法に対して行なった試験結果での酸化還元電位と経過時間との関係を示すグラフ図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る逆浸透処理方法に対して行なった試験結果での塩透過率と重亜硫酸ナトリウムの添加量との関係を示すグラフ図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る逆浸透処理方法に対して行なった試験結果での塩透過率と重亜硫酸ナトリウムおよびNa4−EDTAおよびホスホン酸系のスケール防止剤の添加量との関係を示すグラフ図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る逆浸透処理方法に対して行なった試験結果での塩透過率と重亜硫酸ナトリウムおよびNa4−EDTAおよびホスホン酸系のスケール防止剤の添加量との関係を示すグラフ図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る逆浸透処理方法に対して行なった試験結果での酸化還元電位と経過時間との関係を示すグラフ図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る逆浸透処理方法に対して行なった試験結果での酸化還元電位と経過時間との関係を示すグラフ図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る逆浸透処理方法に対して行なった試験結果での酸化還元電位と経過時間との関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る逆浸透処理方法および逆浸透処理装置について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による逆浸透処理方法を実現する逆浸透処理装置10は、例えば図1に示すように、海水を淡水化するものであって、前処理装置11と、第1還元剤供給装置12と、第1ポンプ13と、海水用逆浸透装置14と、第2還元剤供給装置15と、第1透過水混合部16と、アルカリ剤供給装置17と、スケール防止剤供給装置18と、第2ポンプ19と、第1汽水用逆浸透装置20と、第2汽水用逆浸透装置21と、第2透過水混合部22と、を備えて構成されている。
【0018】
前処理装置11は、原水である海水に対して、例えばろ過処理を行なって濁質成分などを除去すると共に、例えば殺菌用の塩素系殺菌剤などの薬品を注入して微生物などを除去する。
第1還元剤供給装置12は、前処理装置11により処理された海水に還元剤として重亜硫酸ナトリウム(SBS:sodium bisulfite)を供給して、塩素系殺菌剤などに起因する遊離塩素を還元する。
第1ポンプ13は、第1還元剤供給装置12により還元剤が供給されて塩素が中和された海水を加圧して、海水用逆浸透装置14へ供給する。
【0019】
海水用逆浸透装置(SWRO:Sea Water Reverse Osmosis)14は、例えばセルローストリアセテートを素材にした中空糸膜による海水用逆浸透膜を備え、第1ポンプ13から供給された海水を、海水用逆浸透膜を透過した透過水(SWRO透過水)と、海水用逆浸透膜を透過せずに濃縮された濃縮水(SWRO濃縮水)とに分離濾過する。
なお、海水用逆浸透装置14は、例えばセルローストリアセテートによる海水用逆浸透膜が耐塩素性を有することから、断続的に殺菌用の塩素系殺菌剤などの塩素の注入を行ない、微生物などの有機物による海水用逆浸透膜の汚染を除去する。
【0020】
第2還元剤供給装置15は、海水用逆浸透装置14のSWRO透過水に還元剤として重亜硫酸ナトリウムを供給して、塩素系殺菌剤などに起因する遊離塩素を還元する。
第1透過水混合部16は、第2還元剤供給装置15により還元剤が供給されて塩素が中和されたSWRO透過水と、後述する第2汽水用逆浸透装置21の後部(rear-end)から排出される透過水(第2BWRO透過水)とを混合する。
アルカリ剤供給装置17は、第1透過水混合部16により混合されて得られた透過水にアルカリ剤として水酸化ナトリウムを供給して、pHを10程度に設定する。これにより、後述する第1汽水用逆浸透装置20および第2汽水用逆浸透装置21での各汽水用逆浸透膜でのホウ素の阻止率を増大させる。
【0021】
スケール防止剤供給装置18は、アルカリ剤供給装置17によりアルカリ剤が供給されてpHを10程度に設定された透過水にホスホン酸系のスケール防止剤を供給する。
第2ポンプ19は、スケール防止剤供給装置18によりホスホン酸系のスケール防止剤が供給された透過水を加圧して、第1汽水用逆浸透装置20へ供給する。
【0022】
第1汽水用逆浸透装置(第1BWRO:Brackish Water Reverse Osmosis)20は、例えばポリアミド系のスパイラル型の汽水用逆浸透膜を備え、第2ポンプ19から供給された透過水を、汽水用逆浸透膜を透過した透過水(第1BWRO透過水)と、汽水用逆浸透膜を透過せずに濃縮された濃縮水とに分離濾過する。
【0023】
第2汽水用逆浸透装置(第2BWRO:Brackish Water Reverse Osmosis)21は、例えばポリアミド系のスパイラル型の汽水用逆浸透膜を備え、第1汽水用逆浸透装置20の濃縮水を、汽水用逆浸透膜を透過した透過水(第2BWRO透過水)と、汽水用逆浸透膜を透過せずに濃縮された濃縮水(BWRO濃縮水)とに分離濾過する。
なお、第2汽水用逆浸透装置21の後部(rear-end)から排出される第2BWRO透過水は第1透過水混合部16に供給され、前部(front-end)から排出される第2BWRO透過水は第2透過水混合部22に供給されている。
【0024】
第2透過水混合部22は、第1汽水用逆浸透装置20の第1BWRO透過水と、第2汽水用逆浸透装置21の前部から排出される第2BWRO透過水とを混合して、BWRO透過水として排出する。
【0025】
本実施の形態による逆浸透処理装置10は上記構成を備えており、次に、この逆浸透処理装置10による逆浸透処理方法、特に、海水用逆浸透装置14から排出された透過水(SWRO透過水)を第1汽水用逆浸透装置20に供給する処理について説明する。
先ず、海水用逆浸透装置14から排出された透過水に、還元剤として重亜硫酸ナトリウムを供給して、塩素系殺菌剤などに起因する遊離塩素を還元する。
次に、透過水にアルカリ剤として水酸化ナトリウムを供給して、pHを10程度に設定する。
次に、透過水にホスホン酸系のスケール防止剤を供給する。
次に、透過水を加圧して第1汽水用逆浸透装置20へ供給する。
【0026】
以下に、本実施の形態による逆浸透処理装置10および逆浸透処理方法に対して行なった各種の試験結果について説明する。
【0027】
先ず、第1の試験では、逆浸透処理装置10の運転に伴い劣化した汽水用逆浸透膜の表面の元素組成を、X線光電子分光(ESCA:Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)および誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)により分析した。
これらの結果、塩素および臭素のハロゲンは検出されずに、炭素に対する酸素の比率が劣化の無い汽水用逆浸透膜に比べて増大していることを検出し、更に、鉄に加えて、銅、ニッケル、マンガン、亜鉛などの遷移金属を検出した。
この検出結果から、透過水に添加されている還元剤である重亜硫酸ナトリウムが重金属イオンを触媒として反応して酸化性物質が生成されていることが推定された。
【0028】
次に、第2の試験では、第1汽水用逆浸透装置20に供給される透過水を模擬した模擬水において、酸化性物質の生成に対する重金属イオンの寄与を把握するために、酸化還元電位ORP(Oxidation Reduction Potential)の変化を測定した。
【0029】
模擬水を、1000mg/lの塩化ナトリウム(NaCl)と、60mg/lの炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)と、10mgの塩化カルシウム(CaCl2)と、30mg/lの塩化マグネシウム(MgCl2)と、10mg/lの重亜硫酸ナトリウムとを含む液体に対して、重金属イオンの添加量が異なる3種類の第1〜第3溶液とした。
第1溶液には重金属イオンを加えず、第2溶液には10mg/lの鉄イオン(Fe3+)を添加し、第3溶液には0.1mg/lの銅イオン(Cu2+)を添加した。
【0030】
そして、第1〜第3溶液の温度を35℃に維持した状態で水酸化ナトリウム(NaOH)を添加してpHを10程度に設定した以後における酸化還元電位ORPの変化を測定した。測定結果を図2に示した。
図2に示す測定結果によれば、重金属イオンを含まない第1溶液と、10mg/lの鉄イオン(Fe3+)を含む第2溶液とでは、酸化還元電位ORPがほぼ変化せずに一定になっていることに対して、鉄イオン(Fe3+)に比べて1/100の添加量である0.1mg/lの銅イオン(Cu2+)を含む第3溶液では、酸化還元電位ORPが急激に増大していることが認められた。
つまり、銅イオン(Cu2+)の存在によって酸化反応が誘発され、銅イオン(Cu2+)は鉄イオン(Fe3+)よりも強い触媒作用を有することが認められた。
【0031】
次に、第3の試験では、第1汽水用逆浸透装置20に供給される透過水を模擬した模擬水において、酸化性物質の生成に対する重亜硫酸ナトリウムおよびキレート剤の寄与を把握するために、酸化還元電位ORP(Oxidation Reduction Potential)の変化を測定した。
【0032】
模擬水を、1000mg/lの塩化ナトリウム(NaCl)と、60mg/lの炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)と、10mgの塩化カルシウム(CaCl2)と、30mg/lの塩化マグネシウム(MgCl2)と、0.1mg/lの銅イオン(Cu2+)とを含む液体に対して、重亜硫酸ナトリウムおよびキレート剤の添加量が異なる4種類の第1〜第4溶液とした。
第1溶液には10mg/lの重亜硫酸ナトリウムのみを添加し、第2溶液には重亜硫酸ナトリウムおよびキレート剤を加えず、第3溶液には10mg/lの重亜硫酸ナトリウムおよび1mg/lのNa4−EDTAを添加し、第4溶液には10mg/lの重亜硫酸ナトリウムおよび2mg/lのホスホン酸系のスケール防止剤を添加した。
【0033】
そして、第1〜第4溶液の温度を35℃に維持した状態で水酸化ナトリウム(NaOH)を添加してpHを10程度に設定した以後における酸化還元電位ORPの変化を測定した。測定結果を図3に示した。
図3に示す測定結果によれば、重亜硫酸ナトリウムおよびキレート剤を含まない第2溶液と、重亜硫酸ナトリウムおよびNa4−EDTAを含む第3溶液と、重亜硫酸ナトリウムおよびホスホン酸系のスケール防止剤を含む第4溶液とでは、酸化還元電位ORPがほぼ変化せずに一定になっていることに対して、重亜硫酸ナトリウムのみを含む第1溶液では、酸化還元電位ORPが急激に増大していることが認められた。
つまり、銅イオン(Cu2+)を含む状態での重亜硫酸ナトリウムの存在によって酸化反応が誘発されており、重亜硫酸ナトリウムに起因して、亜硫酸イオンが亜硫酸ラジカルとなり、更に酸化性の過硫酸ラジカル、硫酸ラジカルが、銅イオン(Cu2+)を触媒として生成されるという推定の妥当性が認められた。
【0034】
次に、第4の試験では、重亜硫酸ナトリウムに起因する酸化性物質による汽水用逆浸透膜の劣化に対する重亜硫酸ナトリウムの濃度の寄与を把握するために、予め表面上に銅を付着させた平膜状の汽水用逆浸透膜に第1汽水用逆浸透装置20に供給される透過水を模擬した模擬水を供給して逆浸透処理を実行した後に、汽水用逆浸透膜の塩透過率を測定した。
【0035】
平膜状の汽水用逆浸透膜を、予め、100mg/lの塩化ナトリウム(NaCl)と、60mg/lの炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)と、1mg/lの硝酸銅(Cu(NO3)2)とを含み、水酸化ナトリウム(NaOH)によってpHが10程度に設定された溶液中に4時間に亘って浸漬して、表面上に0.28mg/m2の銅を付着させた。
【0036】
また、模擬水を、1000mg/lの塩化ナトリウム(NaCl)と、60mg/lの炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)と、10mgの塩化カルシウム(CaCl2)と、30mg/lの塩化マグネシウム(MgCl2)と、0.02mg/lの硝酸銅(Cu(NO3)2)とを含む液体とし、35℃に維持して、水酸化ナトリウム(NaOH)によってpHを10程度に設定した。そして、キレート剤は添加せずに、重亜硫酸ナトリウムの添加量を0.75mg/lから75mg/lの間で変更しつつ、各添加量毎に模擬水を40ml/min程度の流量で3日間に亘って平膜状の汽水用逆浸透膜に供給した。
【0037】
そして、重亜硫酸ナトリウムの各添加量毎に模擬水を供給して逆浸透処理を実行した後の各汽水用逆浸透膜に対して、2000mg/lかつpHが8の塩化ナトリウム(NaCl)溶液を15.5barの圧力で供給して塩透過率を測定した。測定結果を図4に示した。
図4に示す測定結果によれば、重亜硫酸ナトリウムの添加量が7.5mg/lから50mg/lの範囲であると塩透過率が正常範囲を超えて増大すること、また、重亜硫酸ナトリウムの添加量が0.75mg/lに維持されていれば塩透過率が正常範囲内であって、汽水用逆浸透膜の劣化が抑制されることが認められた。
【0038】
次に、第5の試験では、重亜硫酸ナトリウムに起因する酸化性物質による汽水用逆浸透膜の劣化を抑制するキレート剤の寄与を把握するために、予め表面上に銅を付着させた平膜状の汽水用逆浸透膜に第1汽水用逆浸透装置20に供給される透過水を模擬した模擬水を供給して逆浸透処理を実行した後に、汽水用逆浸透膜の塩透過率を測定した。
【0039】
平膜状の第1の汽水用逆浸透膜を、予め、100mg/lの塩化ナトリウム(NaCl)と、60mg/lの炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)と、1mg/lの硝酸銅(Cu(NO3)2)とを含み、水酸化ナトリウム(NaOH)によってpHが10程度に設定された溶液中に4時間に亘って浸漬して、表面上に0.28mg/m2の銅を付着させた。
また、平膜状の第2の汽水用逆浸透膜を、予め、100mg/lの塩化ナトリウム(NaCl)と、60mg/lの炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)と、10mg/lの硝酸銅(Cu(NO3)2)とを含み、水酸化ナトリウム(NaOH)によってpHが10程度に設定された溶液中に4時間に亘って浸漬して、表面上に1.5mg/m2の銅を付着させた。
【0040】
また、模擬水を、1000mg/lの塩化ナトリウム(NaCl)と、60mg/lの炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)と、10mgの塩化カルシウム(CaCl2)と、30mg/lの塩化マグネシウム(MgCl2)と、0.02mg/lの硝酸銅(Cu(NO3)2)とを含む液体とし、35℃に維持して、水酸化ナトリウム(NaOH)によってpHを10程度に設定した。そして、重亜硫酸ナトリウムの添加量を20mg/lとし、キレート剤の添加量を変更しつつ、各添加量毎に模擬水を40ml/min程度の流量によって、第1の汽水用逆浸透膜には7日間に亘って供給し、第2の汽水用逆浸透膜には3日間に亘って供給して、逆浸透処理を実行した。
【0041】
そして、キレート剤の各添加量毎に模擬水を供給して逆浸透処理を実行した後の各汽水用逆浸透膜に対して、2000mg/lかつpHが8の塩化ナトリウム(NaCl)溶液を15.5barの圧力で供給して塩透過率を測定した。第1の汽水用逆浸透膜に対する測定結果を図5に示し、第2の汽水用逆浸透膜に対する測定結果を図6に示した。
図5,図6に示す測定結果によれば、キレート剤が添加されなかった場合には塩透過率が正常範囲を超えて増大することに対して、キレート剤が添加された場合には塩透過率の増大を抑制することができることが認められた。ただし、1mg/lのNa4−EDTAのみが添加された場合には塩透過率が正常範囲を超えてしまうことに対して、2mg/lのホスホン酸系のスケール防止剤が添加された場合と、2mg/lのホスホン酸系のスケール防止剤および1mg/lのNa4−EDTAが添加された場合とでは、塩透過率が正常範囲内になることが認められた。
つまり、重亜硫酸ナトリウムに起因する酸化性物質による汽水用逆浸透膜の劣化を抑制するためにキレート剤の添加が有効であることに加えて、ホスホン酸系のスケール防止剤はNa4−EDTAよりも強力に汽水用逆浸透膜の劣化を抑制することができることが認められた。
【0042】
次に、第6の試験では、第1汽水用逆浸透装置20に供給される透過水を模擬した模擬水において、酸化性物質の生成抑制に対するスケール防止剤の寄与を把握するために、スケール防止剤の種類および添加量を変化させた場合の酸化還元電位ORP(Oxidation Reduction Potential)の変化を測定した。
【0043】
模擬水を、1000mg/lの塩化ナトリウム(NaCl)と、60mg/lの炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)と、20mg/lの重亜硫酸ナトリウムと、0.1mg/lの銅イオン(Cu2+)とを含む液体(つまり、酸化還元電位ORPが増加する条件、酸化反応が発生する条件に調整された液体)に対して、スケール防止剤の添加有無とスケール防止剤の種類および添加量とが異なる複数(例えば、6〜8種類)の溶液とした。
【0044】
そして、スケール防止剤の添加量を、例えば1mg/lと2mg/lと3mg/lとのそれぞれに設定した3つの条件毎において、スケール防止剤の添加有無とスケール防止剤の種類とが異なる複数の溶液の温度を35℃に維持した状態で、水酸化ナトリウム(NaOH)を添加してpHを10程度に設定した以後における酸化還元電位ORPの変化を測定した。測定結果を図7〜図9に示した。
【0045】
なお、スケール防止剤の添加量を1mg/lあるいは2mg/lとした条件では、第1溶液にはスケール防止剤を添加せず、第2溶液および第6溶液には非ホスホン酸系のスケール防止剤A,Eを添加し、第3溶液および第4溶液および第5溶液および第7溶液にはホスホン酸系のスケール防止剤B,C,D,Fを添加し、第8溶液にはスケール防止剤と同じ添加量のNa4−EDTAを添加した。
また、スケール防止剤の添加量を3mg/lとした条件では、第1溶液および第5溶液には非ホスホン酸系のスケール防止剤A,Eを添加し、第2溶液および第3溶液および第4溶液および第6溶液にはホスホン酸系のスケール防止剤B,C,D,Fを添加した。
【0046】
図7〜図9に示す測定結果によれば、特に、ホスホン酸系のスケール防止剤B,C,D,Fを添加した各溶液において、スケール防止剤の添加量を2mg/l〜3mg/lに設定したことで、酸化還元電位ORPの上昇が抑制されること、つまり酸化性物質の生成が抑制されることが認められた。
【0047】
上述したように、本実施の形態による逆浸透処理装置10および逆浸透処理方法およびによれば、第1汽水用逆浸透装置20に供給される透過水に銅イオンが含まれる状態で還元剤として重亜硫酸ナトリウムが添加され、更に水酸化ナトリウムの添加によってアルカリ性とされた場合であっても、透過水が汽水用逆浸透膜に供給されるより前において、ホスホン酸系のスケール防止剤を添加することにより、汽水用逆浸透膜の劣化を効果的に抑制することができる。
しかも、ホスホン酸系のスケール防止剤は、非ホスホン酸系のスケール防止剤あるいはNa4−EDTAなどのキレート剤に比べて、より効果的に、重亜硫酸ナトリウムに起因する酸化性物質による汽水用逆浸透膜の劣化を抑制することができる。
【0048】
なお、上述した実施の形態においては、透過水に供給される還元剤を重亜硫酸ナトリウムとしたが、これに限定されず、還元剤を他の重亜硫酸塩や亜硫酸ナトリウムなどの亜硫酸塩としてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 逆浸透処理装置
11 前処理装置
12 第1還元剤供給装置
13 第1ポンプ
14 海水用逆浸透装置
15 第2還元剤供給装置(還元剤供給手段)
16 第1透過水混合部
17 アルカリ剤供給装置
18 スケール防止剤供給装置(スケール防止剤添加手段)
19 第2ポンプ
20 第1汽水用逆浸透装置(逆浸透膜処理手段)
21 第2汽水用逆浸透装置
22 第2透過水混合部
【技術分野】
【0001】
この発明は、逆浸透処理方法および逆浸透処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば液体を第1段の逆浸透分離モジュールにて逆浸透処理し、得られた透過水を第2段の逆浸透分離モジュールにて更に逆浸透処理する多段式逆浸透処理において、第2段の逆浸透分離モジュールへ供給される透過水にキレート剤あるいはスケ−ル防止剤を添加することによって、透過水中に含まれる重金属または重金属イオンとキレート剤あるいはスケ−ル防止剤とが錯体を形成することによって、逆浸透膜の性能低下を防止する逆浸透処理方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−71252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係る逆浸透処理方法においては、透過水に添加されるキレート剤あるいはスケ−ル防止剤は特に限定されず、アルカリ性の溶液中に溶存する炭酸イオン(HCO3−)および亜硫酸水素ナトリウムと、鉄あるいはマンガンとが相互作用を起こすことによって逆浸透膜モジュールの全芳香族ポリアミドが分解されてしまうことを抑制するように設定されている。
しかしながら、重金属としての鉄およびマンガンをキレート剤あるいはスケ−ル防止剤によって捕捉するだけでは逆浸透膜の劣化を十分に抑制することができない虞があり、逆浸透膜の劣化を効果的に抑制することが望まれている。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、逆浸透膜の劣化を効果的に抑制することが可能な逆浸透処理方法および逆浸透処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ね、例えば海水を淡水化する逆浸透処理において劣化した逆浸透膜の表面の元素組成を分析した結果、塩素および臭素のハロゲンは検出されずに、炭素に対する酸素の比率が増大していることを検出し、更に、鉄に加えて、銅、ニッケル、マンガン、亜鉛などの遷移金属を検出した。
この検出結果から、殺菌用の塩素系殺菌剤に起因する遊離塩素を還元するために被処理液に添加されている還元剤が重金属イオンを触媒として反応して酸化性物質が生成されていると推定して、検出された各重金属イオンの寄与について試験を行なった結果、特に銅の触媒作用が鉄などの他の重金属イオンに比べて強いことを知見した。
【0007】
そして、還元剤が添加されると共に逆浸透膜でのホウ素の阻止率を増大させるためにアルカリ性とされた被処理液に銅イオンが含まれている状態において、特にホスホン酸系のスケール防止剤を被処理液に添加することによって、非ホスホン酸系のスケール防止剤あるいはNa4−EDTAなどのキレート剤を被処理液に添加する場合に比べて、より顕著に酸化性物質の生成を抑制することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の請求項1に係る逆浸透処理方法は、少なくとも銅イオンを含む重金属イオンと還元剤とを含有するアルカリ性領域の被処理液にホスホン酸系のスケール防止剤を添加した後に該被処理液を逆浸透膜に供給する。
【0009】
さらに、本発明の請求項2に係る逆浸透処理方法では、前記被処理液は、前記還元剤として亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有する。
【0010】
また、本発明の請求項3に係る逆浸透処理装置は、少なくとも銅イオンを含む重金属イオンと還元剤とを含有するアルカリ性領域の被処理液にホスホン酸系のスケール防止剤を添加するスケール防止剤添加手段(例えば、実施の形態でのスケール防止剤供給装置18)と、前記スケール防止剤添加手段によって前記スケール防止剤が添加された前記被処理液を逆浸透膜に供給する逆浸透膜処理手段(例えば、実施の形態での第1汽水用逆浸透装置20)と、を備える。
【0011】
さらに、本発明の請求項4に係る逆浸透処理装置は、前記還元剤として亜硫酸塩または重亜硫酸塩を前記被処理液に供給する還元剤供給手段(例えば、実施の形態での第2還元剤供給装置15)を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に係る逆浸透処理方法によれば、遊離塩素を還元する還元剤が添加されると共にアルカリ性とされた被処理液において、特に触媒作用が強い銅イオンを含む重金属イオンが含まれていると、還元剤が反応して酸化性物質が生成され易くなり、この酸化性物質による逆浸透膜の化学的な劣化が生じ易くなる。
これに対して、被処理液を逆浸透膜に供給するより前において、スケール防止剤として、特にホスホン酸系のスケール防止剤を被処理液に添加することによって、非ホスホン酸系のスケール防止剤あるいはNa4−EDTAなどのキレート剤を被処理液に添加する場合に比べて、より効果的に酸化性物質による逆浸透膜の劣化を抑制することができる。
【0013】
さらに、本発明の請求項2に係る逆浸透処理方法によれば、還元剤として亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有する被処理液では、特に触媒作用が強い銅イオンを含む重金属イオンが触媒となって、亜硫酸イオンが亜硫酸ラジカルとなり、更に酸化性の過硫酸ラジカル、硫酸ラジカルが生成される反応が生じ易くなる。
これに対して、被処理液を逆浸透膜に供給するより前において、スケール防止剤として、特にホスホン酸系のスケール防止剤を被処理液に添加することによって、非ホスホン酸系のスケール防止剤あるいはNa4−EDTAなどのキレート剤を被処理液に添加する場合に比べて、より効果的に酸化性物質による逆浸透膜の劣化を抑制することができる。
【0014】
また、本発明の請求項3に係る逆浸透処理装置によれば、遊離塩素を還元する還元剤が添加されると共にアルカリ性とされた被処理液において、特に触媒作用が強い銅イオンを含む重金属イオンが含まれていると、還元剤が反応して酸化性物質が生成され易くなり、この酸化性物質による逆浸透膜の化学的な劣化が生じ易くなる。
これに対して、被処理液を逆浸透膜に供給するより前において、スケール防止剤として、特にホスホン酸系のスケール防止剤を被処理液に添加することによって、非ホスホン酸系のスケール防止剤あるいはNa4−EDTAなどのキレート剤を被処理液に添加する場合に比べて、より効果的に酸化性物質による逆浸透膜の劣化を抑制することができる。
【0015】
さらに、本発明の請求項4に係る逆浸透処理装置によれば、還元剤として亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有する被処理液では、特に触媒作用が強い銅イオンを含む重金属イオンが触媒となって、亜硫酸イオンが亜硫酸ラジカルとなり、更に酸化性の過硫酸ラジカル、硫酸ラジカルが生成される反応が生じ易くなる。
これに対して、被処理液を逆浸透膜に供給するより前において、スケール防止剤として、特にホスホン酸系のスケール防止剤を被処理液に添加することによって、非ホスホン酸系のスケール防止剤あるいはNa4−EDTAなどのキレート剤を被処理液に添加する場合に比べて、より効果的に酸化性物質による逆浸透膜の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る逆浸透処理装置の構成図および逆浸透処理方法を示す図ある。
【図2】本発明の実施の形態に係る逆浸透処理方法に対して行なった試験結果での酸化還元電位と経過時間との関係を示すグラフ図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る逆浸透処理方法に対して行なった試験結果での酸化還元電位と経過時間との関係を示すグラフ図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る逆浸透処理方法に対して行なった試験結果での塩透過率と重亜硫酸ナトリウムの添加量との関係を示すグラフ図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る逆浸透処理方法に対して行なった試験結果での塩透過率と重亜硫酸ナトリウムおよびNa4−EDTAおよびホスホン酸系のスケール防止剤の添加量との関係を示すグラフ図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る逆浸透処理方法に対して行なった試験結果での塩透過率と重亜硫酸ナトリウムおよびNa4−EDTAおよびホスホン酸系のスケール防止剤の添加量との関係を示すグラフ図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る逆浸透処理方法に対して行なった試験結果での酸化還元電位と経過時間との関係を示すグラフ図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る逆浸透処理方法に対して行なった試験結果での酸化還元電位と経過時間との関係を示すグラフ図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る逆浸透処理方法に対して行なった試験結果での酸化還元電位と経過時間との関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る逆浸透処理方法および逆浸透処理装置について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による逆浸透処理方法を実現する逆浸透処理装置10は、例えば図1に示すように、海水を淡水化するものであって、前処理装置11と、第1還元剤供給装置12と、第1ポンプ13と、海水用逆浸透装置14と、第2還元剤供給装置15と、第1透過水混合部16と、アルカリ剤供給装置17と、スケール防止剤供給装置18と、第2ポンプ19と、第1汽水用逆浸透装置20と、第2汽水用逆浸透装置21と、第2透過水混合部22と、を備えて構成されている。
【0018】
前処理装置11は、原水である海水に対して、例えばろ過処理を行なって濁質成分などを除去すると共に、例えば殺菌用の塩素系殺菌剤などの薬品を注入して微生物などを除去する。
第1還元剤供給装置12は、前処理装置11により処理された海水に還元剤として重亜硫酸ナトリウム(SBS:sodium bisulfite)を供給して、塩素系殺菌剤などに起因する遊離塩素を還元する。
第1ポンプ13は、第1還元剤供給装置12により還元剤が供給されて塩素が中和された海水を加圧して、海水用逆浸透装置14へ供給する。
【0019】
海水用逆浸透装置(SWRO:Sea Water Reverse Osmosis)14は、例えばセルローストリアセテートを素材にした中空糸膜による海水用逆浸透膜を備え、第1ポンプ13から供給された海水を、海水用逆浸透膜を透過した透過水(SWRO透過水)と、海水用逆浸透膜を透過せずに濃縮された濃縮水(SWRO濃縮水)とに分離濾過する。
なお、海水用逆浸透装置14は、例えばセルローストリアセテートによる海水用逆浸透膜が耐塩素性を有することから、断続的に殺菌用の塩素系殺菌剤などの塩素の注入を行ない、微生物などの有機物による海水用逆浸透膜の汚染を除去する。
【0020】
第2還元剤供給装置15は、海水用逆浸透装置14のSWRO透過水に還元剤として重亜硫酸ナトリウムを供給して、塩素系殺菌剤などに起因する遊離塩素を還元する。
第1透過水混合部16は、第2還元剤供給装置15により還元剤が供給されて塩素が中和されたSWRO透過水と、後述する第2汽水用逆浸透装置21の後部(rear-end)から排出される透過水(第2BWRO透過水)とを混合する。
アルカリ剤供給装置17は、第1透過水混合部16により混合されて得られた透過水にアルカリ剤として水酸化ナトリウムを供給して、pHを10程度に設定する。これにより、後述する第1汽水用逆浸透装置20および第2汽水用逆浸透装置21での各汽水用逆浸透膜でのホウ素の阻止率を増大させる。
【0021】
スケール防止剤供給装置18は、アルカリ剤供給装置17によりアルカリ剤が供給されてpHを10程度に設定された透過水にホスホン酸系のスケール防止剤を供給する。
第2ポンプ19は、スケール防止剤供給装置18によりホスホン酸系のスケール防止剤が供給された透過水を加圧して、第1汽水用逆浸透装置20へ供給する。
【0022】
第1汽水用逆浸透装置(第1BWRO:Brackish Water Reverse Osmosis)20は、例えばポリアミド系のスパイラル型の汽水用逆浸透膜を備え、第2ポンプ19から供給された透過水を、汽水用逆浸透膜を透過した透過水(第1BWRO透過水)と、汽水用逆浸透膜を透過せずに濃縮された濃縮水とに分離濾過する。
【0023】
第2汽水用逆浸透装置(第2BWRO:Brackish Water Reverse Osmosis)21は、例えばポリアミド系のスパイラル型の汽水用逆浸透膜を備え、第1汽水用逆浸透装置20の濃縮水を、汽水用逆浸透膜を透過した透過水(第2BWRO透過水)と、汽水用逆浸透膜を透過せずに濃縮された濃縮水(BWRO濃縮水)とに分離濾過する。
なお、第2汽水用逆浸透装置21の後部(rear-end)から排出される第2BWRO透過水は第1透過水混合部16に供給され、前部(front-end)から排出される第2BWRO透過水は第2透過水混合部22に供給されている。
【0024】
第2透過水混合部22は、第1汽水用逆浸透装置20の第1BWRO透過水と、第2汽水用逆浸透装置21の前部から排出される第2BWRO透過水とを混合して、BWRO透過水として排出する。
【0025】
本実施の形態による逆浸透処理装置10は上記構成を備えており、次に、この逆浸透処理装置10による逆浸透処理方法、特に、海水用逆浸透装置14から排出された透過水(SWRO透過水)を第1汽水用逆浸透装置20に供給する処理について説明する。
先ず、海水用逆浸透装置14から排出された透過水に、還元剤として重亜硫酸ナトリウムを供給して、塩素系殺菌剤などに起因する遊離塩素を還元する。
次に、透過水にアルカリ剤として水酸化ナトリウムを供給して、pHを10程度に設定する。
次に、透過水にホスホン酸系のスケール防止剤を供給する。
次に、透過水を加圧して第1汽水用逆浸透装置20へ供給する。
【0026】
以下に、本実施の形態による逆浸透処理装置10および逆浸透処理方法に対して行なった各種の試験結果について説明する。
【0027】
先ず、第1の試験では、逆浸透処理装置10の運転に伴い劣化した汽水用逆浸透膜の表面の元素組成を、X線光電子分光(ESCA:Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)および誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)により分析した。
これらの結果、塩素および臭素のハロゲンは検出されずに、炭素に対する酸素の比率が劣化の無い汽水用逆浸透膜に比べて増大していることを検出し、更に、鉄に加えて、銅、ニッケル、マンガン、亜鉛などの遷移金属を検出した。
この検出結果から、透過水に添加されている還元剤である重亜硫酸ナトリウムが重金属イオンを触媒として反応して酸化性物質が生成されていることが推定された。
【0028】
次に、第2の試験では、第1汽水用逆浸透装置20に供給される透過水を模擬した模擬水において、酸化性物質の生成に対する重金属イオンの寄与を把握するために、酸化還元電位ORP(Oxidation Reduction Potential)の変化を測定した。
【0029】
模擬水を、1000mg/lの塩化ナトリウム(NaCl)と、60mg/lの炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)と、10mgの塩化カルシウム(CaCl2)と、30mg/lの塩化マグネシウム(MgCl2)と、10mg/lの重亜硫酸ナトリウムとを含む液体に対して、重金属イオンの添加量が異なる3種類の第1〜第3溶液とした。
第1溶液には重金属イオンを加えず、第2溶液には10mg/lの鉄イオン(Fe3+)を添加し、第3溶液には0.1mg/lの銅イオン(Cu2+)を添加した。
【0030】
そして、第1〜第3溶液の温度を35℃に維持した状態で水酸化ナトリウム(NaOH)を添加してpHを10程度に設定した以後における酸化還元電位ORPの変化を測定した。測定結果を図2に示した。
図2に示す測定結果によれば、重金属イオンを含まない第1溶液と、10mg/lの鉄イオン(Fe3+)を含む第2溶液とでは、酸化還元電位ORPがほぼ変化せずに一定になっていることに対して、鉄イオン(Fe3+)に比べて1/100の添加量である0.1mg/lの銅イオン(Cu2+)を含む第3溶液では、酸化還元電位ORPが急激に増大していることが認められた。
つまり、銅イオン(Cu2+)の存在によって酸化反応が誘発され、銅イオン(Cu2+)は鉄イオン(Fe3+)よりも強い触媒作用を有することが認められた。
【0031】
次に、第3の試験では、第1汽水用逆浸透装置20に供給される透過水を模擬した模擬水において、酸化性物質の生成に対する重亜硫酸ナトリウムおよびキレート剤の寄与を把握するために、酸化還元電位ORP(Oxidation Reduction Potential)の変化を測定した。
【0032】
模擬水を、1000mg/lの塩化ナトリウム(NaCl)と、60mg/lの炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)と、10mgの塩化カルシウム(CaCl2)と、30mg/lの塩化マグネシウム(MgCl2)と、0.1mg/lの銅イオン(Cu2+)とを含む液体に対して、重亜硫酸ナトリウムおよびキレート剤の添加量が異なる4種類の第1〜第4溶液とした。
第1溶液には10mg/lの重亜硫酸ナトリウムのみを添加し、第2溶液には重亜硫酸ナトリウムおよびキレート剤を加えず、第3溶液には10mg/lの重亜硫酸ナトリウムおよび1mg/lのNa4−EDTAを添加し、第4溶液には10mg/lの重亜硫酸ナトリウムおよび2mg/lのホスホン酸系のスケール防止剤を添加した。
【0033】
そして、第1〜第4溶液の温度を35℃に維持した状態で水酸化ナトリウム(NaOH)を添加してpHを10程度に設定した以後における酸化還元電位ORPの変化を測定した。測定結果を図3に示した。
図3に示す測定結果によれば、重亜硫酸ナトリウムおよびキレート剤を含まない第2溶液と、重亜硫酸ナトリウムおよびNa4−EDTAを含む第3溶液と、重亜硫酸ナトリウムおよびホスホン酸系のスケール防止剤を含む第4溶液とでは、酸化還元電位ORPがほぼ変化せずに一定になっていることに対して、重亜硫酸ナトリウムのみを含む第1溶液では、酸化還元電位ORPが急激に増大していることが認められた。
つまり、銅イオン(Cu2+)を含む状態での重亜硫酸ナトリウムの存在によって酸化反応が誘発されており、重亜硫酸ナトリウムに起因して、亜硫酸イオンが亜硫酸ラジカルとなり、更に酸化性の過硫酸ラジカル、硫酸ラジカルが、銅イオン(Cu2+)を触媒として生成されるという推定の妥当性が認められた。
【0034】
次に、第4の試験では、重亜硫酸ナトリウムに起因する酸化性物質による汽水用逆浸透膜の劣化に対する重亜硫酸ナトリウムの濃度の寄与を把握するために、予め表面上に銅を付着させた平膜状の汽水用逆浸透膜に第1汽水用逆浸透装置20に供給される透過水を模擬した模擬水を供給して逆浸透処理を実行した後に、汽水用逆浸透膜の塩透過率を測定した。
【0035】
平膜状の汽水用逆浸透膜を、予め、100mg/lの塩化ナトリウム(NaCl)と、60mg/lの炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)と、1mg/lの硝酸銅(Cu(NO3)2)とを含み、水酸化ナトリウム(NaOH)によってpHが10程度に設定された溶液中に4時間に亘って浸漬して、表面上に0.28mg/m2の銅を付着させた。
【0036】
また、模擬水を、1000mg/lの塩化ナトリウム(NaCl)と、60mg/lの炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)と、10mgの塩化カルシウム(CaCl2)と、30mg/lの塩化マグネシウム(MgCl2)と、0.02mg/lの硝酸銅(Cu(NO3)2)とを含む液体とし、35℃に維持して、水酸化ナトリウム(NaOH)によってpHを10程度に設定した。そして、キレート剤は添加せずに、重亜硫酸ナトリウムの添加量を0.75mg/lから75mg/lの間で変更しつつ、各添加量毎に模擬水を40ml/min程度の流量で3日間に亘って平膜状の汽水用逆浸透膜に供給した。
【0037】
そして、重亜硫酸ナトリウムの各添加量毎に模擬水を供給して逆浸透処理を実行した後の各汽水用逆浸透膜に対して、2000mg/lかつpHが8の塩化ナトリウム(NaCl)溶液を15.5barの圧力で供給して塩透過率を測定した。測定結果を図4に示した。
図4に示す測定結果によれば、重亜硫酸ナトリウムの添加量が7.5mg/lから50mg/lの範囲であると塩透過率が正常範囲を超えて増大すること、また、重亜硫酸ナトリウムの添加量が0.75mg/lに維持されていれば塩透過率が正常範囲内であって、汽水用逆浸透膜の劣化が抑制されることが認められた。
【0038】
次に、第5の試験では、重亜硫酸ナトリウムに起因する酸化性物質による汽水用逆浸透膜の劣化を抑制するキレート剤の寄与を把握するために、予め表面上に銅を付着させた平膜状の汽水用逆浸透膜に第1汽水用逆浸透装置20に供給される透過水を模擬した模擬水を供給して逆浸透処理を実行した後に、汽水用逆浸透膜の塩透過率を測定した。
【0039】
平膜状の第1の汽水用逆浸透膜を、予め、100mg/lの塩化ナトリウム(NaCl)と、60mg/lの炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)と、1mg/lの硝酸銅(Cu(NO3)2)とを含み、水酸化ナトリウム(NaOH)によってpHが10程度に設定された溶液中に4時間に亘って浸漬して、表面上に0.28mg/m2の銅を付着させた。
また、平膜状の第2の汽水用逆浸透膜を、予め、100mg/lの塩化ナトリウム(NaCl)と、60mg/lの炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)と、10mg/lの硝酸銅(Cu(NO3)2)とを含み、水酸化ナトリウム(NaOH)によってpHが10程度に設定された溶液中に4時間に亘って浸漬して、表面上に1.5mg/m2の銅を付着させた。
【0040】
また、模擬水を、1000mg/lの塩化ナトリウム(NaCl)と、60mg/lの炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)と、10mgの塩化カルシウム(CaCl2)と、30mg/lの塩化マグネシウム(MgCl2)と、0.02mg/lの硝酸銅(Cu(NO3)2)とを含む液体とし、35℃に維持して、水酸化ナトリウム(NaOH)によってpHを10程度に設定した。そして、重亜硫酸ナトリウムの添加量を20mg/lとし、キレート剤の添加量を変更しつつ、各添加量毎に模擬水を40ml/min程度の流量によって、第1の汽水用逆浸透膜には7日間に亘って供給し、第2の汽水用逆浸透膜には3日間に亘って供給して、逆浸透処理を実行した。
【0041】
そして、キレート剤の各添加量毎に模擬水を供給して逆浸透処理を実行した後の各汽水用逆浸透膜に対して、2000mg/lかつpHが8の塩化ナトリウム(NaCl)溶液を15.5barの圧力で供給して塩透過率を測定した。第1の汽水用逆浸透膜に対する測定結果を図5に示し、第2の汽水用逆浸透膜に対する測定結果を図6に示した。
図5,図6に示す測定結果によれば、キレート剤が添加されなかった場合には塩透過率が正常範囲を超えて増大することに対して、キレート剤が添加された場合には塩透過率の増大を抑制することができることが認められた。ただし、1mg/lのNa4−EDTAのみが添加された場合には塩透過率が正常範囲を超えてしまうことに対して、2mg/lのホスホン酸系のスケール防止剤が添加された場合と、2mg/lのホスホン酸系のスケール防止剤および1mg/lのNa4−EDTAが添加された場合とでは、塩透過率が正常範囲内になることが認められた。
つまり、重亜硫酸ナトリウムに起因する酸化性物質による汽水用逆浸透膜の劣化を抑制するためにキレート剤の添加が有効であることに加えて、ホスホン酸系のスケール防止剤はNa4−EDTAよりも強力に汽水用逆浸透膜の劣化を抑制することができることが認められた。
【0042】
次に、第6の試験では、第1汽水用逆浸透装置20に供給される透過水を模擬した模擬水において、酸化性物質の生成抑制に対するスケール防止剤の寄与を把握するために、スケール防止剤の種類および添加量を変化させた場合の酸化還元電位ORP(Oxidation Reduction Potential)の変化を測定した。
【0043】
模擬水を、1000mg/lの塩化ナトリウム(NaCl)と、60mg/lの炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)と、20mg/lの重亜硫酸ナトリウムと、0.1mg/lの銅イオン(Cu2+)とを含む液体(つまり、酸化還元電位ORPが増加する条件、酸化反応が発生する条件に調整された液体)に対して、スケール防止剤の添加有無とスケール防止剤の種類および添加量とが異なる複数(例えば、6〜8種類)の溶液とした。
【0044】
そして、スケール防止剤の添加量を、例えば1mg/lと2mg/lと3mg/lとのそれぞれに設定した3つの条件毎において、スケール防止剤の添加有無とスケール防止剤の種類とが異なる複数の溶液の温度を35℃に維持した状態で、水酸化ナトリウム(NaOH)を添加してpHを10程度に設定した以後における酸化還元電位ORPの変化を測定した。測定結果を図7〜図9に示した。
【0045】
なお、スケール防止剤の添加量を1mg/lあるいは2mg/lとした条件では、第1溶液にはスケール防止剤を添加せず、第2溶液および第6溶液には非ホスホン酸系のスケール防止剤A,Eを添加し、第3溶液および第4溶液および第5溶液および第7溶液にはホスホン酸系のスケール防止剤B,C,D,Fを添加し、第8溶液にはスケール防止剤と同じ添加量のNa4−EDTAを添加した。
また、スケール防止剤の添加量を3mg/lとした条件では、第1溶液および第5溶液には非ホスホン酸系のスケール防止剤A,Eを添加し、第2溶液および第3溶液および第4溶液および第6溶液にはホスホン酸系のスケール防止剤B,C,D,Fを添加した。
【0046】
図7〜図9に示す測定結果によれば、特に、ホスホン酸系のスケール防止剤B,C,D,Fを添加した各溶液において、スケール防止剤の添加量を2mg/l〜3mg/lに設定したことで、酸化還元電位ORPの上昇が抑制されること、つまり酸化性物質の生成が抑制されることが認められた。
【0047】
上述したように、本実施の形態による逆浸透処理装置10および逆浸透処理方法およびによれば、第1汽水用逆浸透装置20に供給される透過水に銅イオンが含まれる状態で還元剤として重亜硫酸ナトリウムが添加され、更に水酸化ナトリウムの添加によってアルカリ性とされた場合であっても、透過水が汽水用逆浸透膜に供給されるより前において、ホスホン酸系のスケール防止剤を添加することにより、汽水用逆浸透膜の劣化を効果的に抑制することができる。
しかも、ホスホン酸系のスケール防止剤は、非ホスホン酸系のスケール防止剤あるいはNa4−EDTAなどのキレート剤に比べて、より効果的に、重亜硫酸ナトリウムに起因する酸化性物質による汽水用逆浸透膜の劣化を抑制することができる。
【0048】
なお、上述した実施の形態においては、透過水に供給される還元剤を重亜硫酸ナトリウムとしたが、これに限定されず、還元剤を他の重亜硫酸塩や亜硫酸ナトリウムなどの亜硫酸塩としてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 逆浸透処理装置
11 前処理装置
12 第1還元剤供給装置
13 第1ポンプ
14 海水用逆浸透装置
15 第2還元剤供給装置(還元剤供給手段)
16 第1透過水混合部
17 アルカリ剤供給装置
18 スケール防止剤供給装置(スケール防止剤添加手段)
19 第2ポンプ
20 第1汽水用逆浸透装置(逆浸透膜処理手段)
21 第2汽水用逆浸透装置
22 第2透過水混合部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも銅イオンを含む重金属イオンと還元剤とを含有するアルカリ性領域の被処理液にホスホン酸系のスケール防止剤を添加した後に該被処理液を逆浸透膜に供給することを特徴とする逆浸透処理方法。
【請求項2】
前記被処理液は、前記還元剤として亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有することを特徴とする請求項1に記載の逆浸透処理方法。
【請求項3】
少なくとも銅イオンを含む重金属イオンと還元剤とを含有するアルカリ性領域の被処理液にホスホン酸系のスケール防止剤を添加するスケール防止剤添加手段と、
前記スケール防止剤添加手段によって前記スケール防止剤が添加された前記被処理液を逆浸透膜に供給する逆浸透膜処理手段と、
を備えることを特徴とする逆浸透処理装置。
【請求項4】
前記還元剤として亜硫酸塩または重亜硫酸塩を前記被処理液に供給する還元剤供給手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の逆浸透処理装置。
【請求項1】
少なくとも銅イオンを含む重金属イオンと還元剤とを含有するアルカリ性領域の被処理液にホスホン酸系のスケール防止剤を添加した後に該被処理液を逆浸透膜に供給することを特徴とする逆浸透処理方法。
【請求項2】
前記被処理液は、前記還元剤として亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有することを特徴とする請求項1に記載の逆浸透処理方法。
【請求項3】
少なくとも銅イオンを含む重金属イオンと還元剤とを含有するアルカリ性領域の被処理液にホスホン酸系のスケール防止剤を添加するスケール防止剤添加手段と、
前記スケール防止剤添加手段によって前記スケール防止剤が添加された前記被処理液を逆浸透膜に供給する逆浸透膜処理手段と、
を備えることを特徴とする逆浸透処理装置。
【請求項4】
前記還元剤として亜硫酸塩または重亜硫酸塩を前記被処理液に供給する還元剤供給手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の逆浸透処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2013−52333(P2013−52333A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191529(P2011−191529)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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