説明

透光性防音板

【課題】透明膜状材料を使用した透光性吸音材の吸音性の変動を防止し、あわせて透光性、透視性が大きくかつ吸音性、遮音性を備えた防音板を提供する。
【解決手段】透光性の膜状材料と透光性の多孔板を積層した透光性吸音材と、透明遮音材とを空間を隔ててパネル枠材に取り付けた透光性防音板において、前記透光性吸音材が、1枚の膜状材料21を2枚の多孔板11、12で挟んだ3層の構成からなり、その多孔板11、12に対する膜状材料21の縦寸法と横寸法のそれぞれの、またはいずれか一方の弛み代を0.1〜1%として積層されたものとした。また、多孔板11、12の四周端と膜状材料の四周端が接着固定されたものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路鉄道などの騒音対策に用いられる透光性、透視性があり、かつ吸音性を有する防音板の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防音壁に用いられる防音板としては、グラスウール等の多孔質吸音材を金属等の枠に入れて音源側を吸音性とし反対側を遮音性板で構成した吸音性の遮音板やポリカーボネートなどの透明プラスチックを用いた透光性の遮音板が用いられているが、吸音性遮音板は吸音性や遮音性は有するが、透光性、透視性がないので日照や視界を妨げる問題があり、透光性遮音板は透光性、透視性、遮音性はあるが吸音性がないため音源側での音の反射により騒音レベルが上昇するという問題があった。
【0003】
上記問題を解決するため、透明の樹脂製フィルムと、アルミニウム製エキスパンドメタル等の多孔板とを積層した透光性吸音材(特許文献1を参照)やこれと透光性遮音材を組み合わせた防音パネル(特許文献2を参照)を本発明出願人がすでに提案している。
【0004】
ところが、このような透明の樹脂製フィルムを使用した透光性吸音材の吸音機構は、膜状材料(フィルム)の自体の振動と、膜状材料と多孔板との間の摩擦によって音のエネルギを吸収するという吸音材であるため、膜状材料の張り方、特に弛みの程度によって吸音特性が変動することが分かってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−186397号公報、特許請求の範囲。
【特許文献2】特開2000−303412号公報、特許請求の範囲。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の現象に鑑みて、透明膜状材料を使用した透光性吸音材の吸音性の変動を防止し、好ましい吸音特性が得られる透光性吸音材を提供するものであり、あわせて透光性、透視性が大きくかつ吸音性、遮音性を備えた防音板を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の問題は、透光性の膜状材料と透光性の多孔板を積層した透光性吸音材と、透明遮音材とを空間を隔ててパネル枠材に取り付けた透光性防音板において、前記透光性吸音材が、1枚の膜状材料を2枚の多孔板で挟んだ3層の構成からなり、その多孔板に対する膜状材料の縦寸法と横寸法のそれぞれの、またはいずれか一方の弛み代を0.1〜1%として積層されたものとし、また前記多孔板の四周端部と膜状材料の四周端部を固定したことを特徴とする透光性防音板によって、解決することができる。
なお、本明細書において、弛み代がプラスの場合は、膜状材料が弛んだ状態に積層されたことを意味し、マイナスの場合は引張状態に積層されたことを意味する。
【0008】
また、上記の問題は、透光性の膜状材料と透光性の多孔板を積層した透光性吸音材と、透明遮音材とを空間を隔ててパネル枠材に取り付けた透光性防音板において、前記透光性吸音材が、1枚の第1膜状材料を2枚の多孔板で挟み、その片面に1枚の第2膜状材料を配した4層の構成からなり、その多孔板に対する第1膜状材料の縦寸法と横寸法のそれぞれの、またはいずれか一方の弛み代を0.1〜3%とし、第2膜状材料の縦寸法と横寸法のそれぞれの、またはいずれか一方の弛み代を0.1〜1%とし、また前記多孔板の四周端部と膜状材料の四周端部を固定したことを特徴とする本発明の透光性防音板によって、解決することができる。
【0009】
更には、透光性吸音材の防音板の表側(音源側)に位置する第1多孔板を網状材料からなる多孔板、防音板の内側に位置する第2多孔板を透明材料の孔明き板で構成した形態に本発明の透光性防音板は好ましく具現化される。
【発明の効果】
【0010】
透光性吸音材が膜状材料1枚と多孔板2枚の3層構造の場合は、膜状材料をプラスの所定の弛み代をとって積層したので、後記の実施例に示すように、入射音波による膜状材料の膜振動や膜状材料と多孔板との摩擦を適性に行わせることによって、それぞれの吸音効果が発揮されると共に、相乗効果によって、高い吸音特性が得られる。また、多孔板と膜状材料の四周端部を固定したので、端部からの音漏れを防止して吸音特性をより高めている。
【0011】
また、透光性吸音材が膜状材料2枚の4層構造の場合は、より高い吸音特性が得られる。
【0012】
また、透光性防音板に取り付け後に表側になる透明吸音材の多孔板を網や網状材料、内側の多孔板を透明材料の孔明き板にすれば、網状材料は開口率が比較的大きく網の巾寸法も小さいので、自動車排ガスの汚れが網状材料の開口縁(表面や内側)に付着しても吸音材全体の透視性や光線透過率は変化しないので、表側の網状材料(多孔板)の汚れが吸音材全体の透光性に影響を及ぼすことが無い。この構成の場合、初期の透光性は透明孔明き板を2層使用した構成の透明吸音材よりも低いが、汚れの影響が小さいので長期的には透明孔明き板を2層使用した透明吸音材よりも透光性を高く維持させることが期待できる。
【0013】
かくして、本発明の透光性防音板は、透明膜状材料を使用した透光性吸音材の変動を防止し、好ましい吸音特性が得られる透光性吸音材が得られるとともに、あわせて透光性、透視性が大きくかつ吸音性、遮音性を備えた防音板を提供でき、自動車道路用防音壁に利用した場合は、運転者などの安全性、快適性の向上にも寄与できるという優れた効果がある。よって本発明は、従来の問題点を解消した透光性防音板として、技術的価値はきわめて大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(A)は本発明の3層構造(多孔板2枚、膜状材料1枚)の透光性吸音材を説明するための構成部材の分解斜視図、(B)はその他の3層構造の分解斜視図である。
【図2】(A)は本発明の4層構造の透光性吸音材を説明するための構成部材の分解斜視図、(B)はその他の4層構造の分解斜視図である。
【図3】(A)は本発明の透光性防音板の概要を示す正面図、(B)は側断面図である。
【図4】本発明の透光性防音板を示す要部側断面図である。
【図5】その他の透光性防音板を示す要部側断面図である。
【図6】本発明が適用できる防音壁を示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の透光性防音板に係る実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明の透光性防音板1は、図3に例示するような、透光性吸音材10と透明遮音材4とを空間を隔ててパネル枠材3に取り付けた透光性防音板であって、その透光性吸音材10は、構成部材から区分すると、図1(A)に示す3層構造=〔多孔板11+第1膜状材料21+多孔板12〕、図2(A)に示す4層構造=〔多孔板11+第1膜状材料21+多孔板12+第2膜状材料22〕の2種類があるが、その構成部材は共通するので、以下にまとめて説明する。
【0016】
(透光性吸音材を構成する膜状材料)
両側または片側に多孔板を配し積層される透光性、透視性の膜状材料21、22であって、入射した音波をこの膜状材料の振動エネルギとして、さらに膜状材料21、22と多孔板11、12との摩擦エネルギとして吸収するものである。この膜状材料としては、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化エチレン等のフッ素樹脂系フィルムやポリエステル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチエン、酢酸ビニル、ポリビニリデンなどの合成樹脂フィルムであって、厚さは6μm〜500μmが好ましい。なお、膜状材料が厚すぎると膜振動が生じにくくなり吸音率が低下し、薄すぎると破損し易くなる。
【0017】
(透光性吸音材を構成する多孔板)
多孔板としては、透明や非透明のポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂等の板材に貫通孔明け加工した孔明きタイプの多孔板11、12の他、図1(B)11a、12a、図2(B)11a、12aに示される合成樹脂、ガラス、セラミックやアルミニウム、鉄など金属材料やからなる網やエキスパンドメタルのような網状の多孔板11a、12aも利用できるのであって、特に材料の限定はない。網や網状の多孔板は無色透明や有色透明、無色非透明や有色非透明のものから選択して使用する。
【0018】
多孔板の開口率は透明材料であれば20〜40%、非透明材料であれば40%以上が吸音性確保と透光性、透視性確保のため好ましい。また、一つの開口(孔)の大きさ(直径)は3〜50mmが好ましい。透視性の点からは孔が大きい方が好ましいが、膜状材料の膜振動や多孔板との摩擦が不十分となり、吸音率も低下するので、前記範囲が適当である。
【0019】
さらに、透視性の改良のため透明材料の孔明きタイプの多孔板に有機高分子材料などの有色透明板が利用される。そしてその色は、黒、灰、青、緑、茶、ブロンズ系などの使用個所の環境に調和する色調や、ときには鳥類の衝突防止の観点などからその種類や濃淡を選択することができる。
このような有色透明多孔板によって透視性が改善される理由は、透視性低下の原因である多孔板表面や開口孔の周囲角部(孔のエッジ)における光の乱反射による眩惑を視覚的に軽減するためと思われる。
【0020】
この着色の濃度は、周囲を透視できるだけの多孔板の光透過性を確保できる淡色濃度に止めるのが好ましい。全光線透過率を指標とすると、色調によって若干の差があるものの、使用した多孔板と膜状材料の合計で少なくとも60%を維持することが好ましい。また、吸音材を構成する多孔板の全てを有色板とする必要はなく、防音板の音源側に最も近く位置する多孔板を有色透明とし、他の多孔板を無色透明とするのがよい。
なお、網や網状の多孔板と孔明きタイプの多孔板を組み合わせる場合は、網や網状の多孔板は灰色、黒色などの濃い色に着色したものを(有色非透明)、孔明きタイプの多孔板は無色透明の材料の孔明き板を用いることが好ましい。網や網状の多孔板を灰色や黒色などの濃い色にすることにより、背後の景色の視認性が向上する。さらに、網状の多孔板を音源側(道路側)に向けて透光性防音板に取り付けておけば、自動車排ガスなどによる多孔板の汚れが透明吸音材全体の透光性に影響することを防止できる。
【0021】
(膜状材料と多孔板の組み合わせ)
膜状材料と多孔板の組み合わせは、1層の膜状材料に対して両側に多孔板を配置して3層構成(図1)にするか、更に第2膜状材料を多孔板の表面に配置して4層構成(図2)にして積層する。本発明において、これら膜状材料21、22と多孔板11、12との積層とは、膜状材料の振動により両者間に摩擦が生ずる近接状態に構成されていることを意味する(以下同様)。この場合、積層パネルとして形状を保持するため、外周部分や必要に応じ中間部分などおいて部分的にビスなどで固定するものとする。
【0022】
(3層構造の場合)
膜状材料21と多孔板11、12、11a、12bの大きさの関係は、3層構造の場合は2枚の多孔板の間に挟む膜状材料に際立った皺ができないように、また、4層構造の場合は膜状材料のそれぞれ、またはいずれか一方に際立った皺ができないように、膜状材料の縦寸法、横寸法を多孔板のそれぞれの寸法に対して、100.1〜101%の寸法、すなわち弛み代をプラスの0.1〜1%として、積層するのである。
なお、弛み代がマイナスの場合、即ち、引張状態に積層した場合も所定範囲内の弛み代であれば吸音効果が得られることを確認しているが、組立作業の容易性などを考慮して本発明では弛み代がプラスのものだけを対象としている。
【0023】
例えば、膜状材料を多孔板の寸法に対して0.1〜1%の大きさの寸法に切断しておき、膜状材料の四辺を多孔板の四辺側端に合わせて固定して積層することによって製作できる。具体的には、この場合、多孔板四辺側端部分に両面テープなどの接着部分を設けた後、膜状材料を貼り合わせるなどの方法が好ましい。
【0024】
本発明では、このような構成によって、弛み代をある範囲に設定したので、吸音性の変動が抑制され、かつ幅広い周波数にわたって高い吸音性(後記の実施例を参照)が得られるのである。なお、膜状材料の弛み代が過大であると、膜状材料の皺が大きくなり膜振動が不均一になることや、それにより膜状材料と多孔板との摩擦が不十分となることによって吸音する周波数帯域が狭くなり、吸音性が低下する。さらに、皺が多くなると美観が低下したり、光線の乱反射などによって見通し性が低下する。
【0025】
また、膜状材料を張り過ぎると、膜状材料に大きい張力が作用するため、膜状材料の振動が起こり難くなって膜振動による吸音性が低下する上に、膜状材料と多孔板との摩擦も不十分となって幅広い周波数にわたって高い吸音性が得られ難くなる。さらに、膜状材料を過大に変形(伸び)させたものは膜状材料自体の強度低下や屋外の過酷条件下での安定性に欠けるきらいがある。
【0026】
(4層構造の場合)
この場合は、2枚の多孔板11、12、11a、12bの間に挟む第1膜状材料21にはある程度、弛み代を大きく設定する。第1膜状材料21の縦寸法、横寸法の弛み代のそれぞれを、またはいずれかを0.1〜3%とするとともに、第2膜状材料は、その弛み代をそれぞれ0.1〜1%として積層するのである。この場合、第2膜状材料の弛み代をマイナス側、第1膜状材料をプラス側というように差を設けておくか、第2膜状材料の弛み代を第1膜状材料よりも小さくすることもできる。
【0027】
かくして、2枚の多孔板の間に挟む第1膜状材料21の弛みを大きく設けることによって、低、中周波側の吸音率を向上させると同時に、片面に配置する第2膜状材料22は弛みを少なめから張り気味にすることによって高周波側の吸音率が高くなり、全体として広い周波数にわたって高い吸音率が得られるようになる利点が得られる。
なお、第1膜状材料の弛み代が過大若しくは過小の場合や、第2膜状材料の弛み代が過大若しくは張り過ぎた場合は、吸音性能が低下する。外観や見通し性、強度低下をきたすことについても前述と同様である。
【0028】
本発明の透光性防音板1を構成する透光性吸音材10、透明遮音材4およびパネル枠材3などについて説明する。
(パネル枠材)
パネル枠材3としては、アルミニウム、鉄などの金属や塩化ビニルなどの合成樹脂、セラミック、セメントなどの無機材料からなるものが用いられ得るが、アルミ合金またはスティール型材から組み立てられる四周辺からなる枠材が最も好ましい。
【0029】
(透光性遮音板)
透光性防音板1の背面板として設けられる透光性遮音板4は、ポリカーボネート、塩化ビニル、メタクリル樹脂、スチロール樹脂、ABS樹脂、フッ化エチレン樹脂、アクリル樹脂などの合成樹脂質やゴム質であって透光性、透視性を有するものや透明、半透明のガラスなどの透光性、透視性を有するものを単独または複層にして用いる。大きさは防音板の大きさにより決まる。その厚さは、必要とする遮音力(音響透過損失)から設定されるが、道路防音壁に用いる場合でプラスチック板の場合は3〜10mmが好ましい。
【0030】
(内部吸音材)
透光性防音板1の内部には、図5のように、パネル枠材3の四周枠内側に、および中間枠材31に沿って内部吸音材51、52が装着されるのが好ましいが、本発明では図4のような内部吸音材51、52が装着されない構成も含むものである。この内部吸音材51、52は、連通孔または非連通孔を有する多孔質吸音材であり、例えば、グラスウール、ロックウール等の無機繊維集合材、アルミ繊維などの金属繊維集合材、アルミの発泡体、アルミ粒子の焼結体、陶磁器粒子の焼結体、ウレタン、メラミン樹脂などの発泡体、セラミック発泡体、軽量骨材の焼結体または接着多孔体、セメント発泡体、珪酸カルシウム発泡体などが用いられる。
【0031】
内部吸音材の気孔率、流れ抵抗、通気率、嵩比重、大きさ、厚さ、取り付け時の背後空気層有無、内部吸音材自身の吸音特性などは、適宜に選択可能であって、特に制限されるものではない。また、透光性防音板1の内部への配置は、パネル枠材3の側面内側に沿って入れたり、縦または横方向にスリット状に入れたり、格子状、丸孔状等形状はどのような形状に配置してもよいが、透視できる開口が防音板全体の面積の30%以上とするように配置することが好ましい。透視できる開口が30%を下回ると透光性、透視性が劣り、透光性防音板として実用性が失われる。
【0032】
(透光性防音板のパネル化)
防音板1は、透光性吸音材10とパネル枠材3と内部に配置する吸音材51、52と透光性遮音板4とからなる。これら部材は、リベット、ビス、接着剤などを用いてパネルに組み立てられる。そして、透光性吸音材10と遮音板4の間には空気層を設けて構成し、透光性防音板1全体の厚さは音源の周波数に対応させて設定すればよいが、厚さを薄くすると高周波領域の吸音率が向上し、厚くすると低周波領域の吸音率が向上する。一般的には50〜200mmの厚さが適当である。
【0033】
なお、透光性吸音材10をパネル枠材3に組み付ける際に吸音材のいずれの面を表側にするかについては、例えば2層構造の透光性吸音材の多孔板側を表側(多孔板が音源側、膜状材料がパネルの内側)にしても、膜状材料側を表側(膜状材料が音源側、多孔板がパネルの内側)にしてもいずれでも良く、使用条件や用途によって使い分ける。
【0034】
例えば、多孔板が表側の場合は、多孔板が膜状材料の保護を兼ねるが、表側に自動車排ガスなどの汚れ防止処理を施そうとすると、多孔板と膜状材料の双方に処理が必要となるが、膜状材料が表側に場合は、膜状材料の表面保護はないが、汚れ防止処理は膜状材料のみで済むので処理コストの軽減や、多孔板の開口縁への汚れの堆積などの問題はなくなる。
【0035】
また、汚れに対する影響を小さくするには、透光性防音板に取り付けたときに表側(道路側)になる透明吸音材の多孔板を網や網状材料(有色非透明)、内側の多孔板を透明材料の孔明きタイプの多孔板とし、間に挟む膜状材料を光触媒などで汚れ防止処理すれば、網状材料は開口率が比較的大きく網の巾寸法も小さいので自動車排ガスの汚れが網状材料(多孔板)の開口縁(表面や内側)に付着しても、もともと網自身は非透明であるため透視性や光線透過率への影響はほとんどなく、膜状材料も汚れが付着し難いので長期間に渡って一定の透光性が確保できる。
膜状材料に汚れ防止処理をしない場合は、フッ素樹脂フィルムなどの汚れの付着しにくいものを選択しておけばよい。また、降雨や水洗によっても汚れを除去することができる。
【0036】
また、膜状材料の膜振動と多孔板との摩擦による吸音の点から双方を密接に積層することが好ましいが、密接させる方法として積層した透光性吸音材をパネル枠に組み付ける際に、湾曲させてパネル枠に組み付けてもよい。例えば、多孔板の膜状材料側の面が凸面となるように湾曲させるのがよい。
【0037】
また、本発明の透光性防音板1は、曲面加工したものでもよいのは言うまでもない。
また、透光性遮音板4には、紫外線等に対する耐候性処理や表面硬さ向上のための処理や網などによる補強を施したものを用いてもよい。また、透光性吸音材10には、紫外線などに対する耐候性処理を施しても良い。
さらに、透光性防音板1の表面、裏面、内部に汚れ防止や窒素酸化物浄化のため二酸化チタン等の光触媒を塗布等によって付着させてもよい。
【0038】
また、本発明の透光性防音板1を、図6に例示するように、騒音源である高速道路などに沿って設けられたコンクリート基礎6に立設したH形鋼材61、61に嵌め、積み上げて壁面を形成することにより防音壁が構成される。この場合、透光性防音板1の上端及び下端には、防音板を積み上げて設置するときのはめ込み部32a、32bや両端部に落下防止用のワイヤーロープを通す孔(図示せず)を設けてもよい。
【0039】
なお、本発明の透光性防音板1を両面吸音性の防音板に構成する場合には、この透光性防音板の断面部材構成を透光性吸音材+空気層+透光性遮音板+空気層+透光性吸音材のように、両面に透光性吸音材を配置する。
【0040】
図6に示すように、本発明の透光性防音板を段積みして、防音壁として自動車用道路に沿って設置する場合、前記した有色透明な多孔板を用いた透光性防音板を通行車輌の高さ以下の個所に配置するのが適当である。このためには、実質的には高架道路の場合道路面から高さ2m〜3m以下、平面道路の場合3m〜5m以下の部分を有色透明な多孔板を用いた透光性防音板を配置すればよい。
【0041】
かくして、道路通行中の運転者にとっては、透視性(視認性)が確保できるとともに、防音壁の上部に配置した無色透明の多孔板を部材とした防音板からは、採光や日照は十分に確保できるので、通行の安全性、快適性を向上でき、沿道利用の利便性が増加するのである。
【実施例】
【0042】
次に、実施例に基づいて、本発明を詳細に説明する。
多孔板として、孔明け加工を施した透明ポリカーボネート樹脂板、アルミ製のエキスパンドメタルを用い、膜状材料として、表1及び表2に示すように、フッ素樹脂フィルムなどを用いて重ね合わせて積層した本発明の実施例である透光性吸音材(A、E、G、K〜M、O)を作成した。また、表1及び表2には、比較例の透光性吸音材(a〜l)、及び、参考例として膜状材料の弛み代が、−2〜−0.1%とマイナスの所定範囲内にある透光性吸音材(B〜D、F、H〜J、N、P〜T)を示す。
なお、積層に際しては、多孔板の四周端とフィルムの四周端を両面テープで固定し、積層の吸音材は四辺を透明テープで固定した。透光性吸音材の縦横寸法は約900mm×1900mmとした。なお、積層順は、第1多孔板、第1膜状材料、第2多孔板、第2膜状材料とした。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
準備した本発明の透光性吸音材、比較例の透光性吸音材、参考例の透光性吸音材と透光性遮音材をパネル枠材に組み付けて、縦横サイズが1000mm×2000mmで厚さが約130mmの透光性防音板を作成した。なお、透光性吸音材は表1に示す第1多孔板、または第1膜状材料側を音源側(防音板の表面側)になるように取り付けた。なお、透光性遮音板は厚さが5mmで透明のポリカーボネート板を、パネル枠材は、厚さ2mmのアルミニウム材を用いた。透光性吸音材の止め付けには押さえ板を当ててリベットでパネル枠に固定した。透光性吸音材と遮音板の間隔は90mmとした。
【0046】
以上の通り製作した透光性防音板について、残響室法吸音率を測定し、その結果を表3に示した。この表3の結果によれば、本発明の透光性防音板の吸音率は、本発明の範囲外である比較例よりも格段に優れた特性を有することが判る。
【0047】
【表3】

【0048】
また、有色透明多孔板を用いた場合の透視性の向上効果について、表4、表5に示す。
なお、表には特性として平均吸音率(残響室法吸音率(JIS A 1409)の250Hz、500Hz、1000Hz、2000Hzの平均値)、音響透過損失(JIS A 1416)、全光線透過率(JIS K 7361-1)、人が眺めたときの背後の景色の見通し性を掲載した。
この表4、表5の結果によれば、本発明の実施例のうち、有色透明多孔板を用いたNo33〜No36の場合は、正面から見た見通し性、斜め45度方向から見た見通し性ともに優れていることが分かる。そして、この場合でも、吸音性や音響透過損失は全く変わることがなく、光透過率が若干下がる程度でこの点で実用性には何ら問題が生じることもないのである。
【0049】
【表4】

【0050】
【表5】

【符号の説明】
【0051】
1 透光性防音板
3 パネル枠材
4 透明遮音材
10 透光性吸音材
11 多孔板
11a 網状多孔板
12 多孔板
12a 網状多孔板
21 第1膜状材料
22 第2膜状材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性の膜状材料と透光性の多孔板を積層した透光性吸音材と、透明遮音材とを空間を隔ててパネル枠材に取り付けた透光性防音板において、前記透光性吸音材が、1枚の膜状材料を2枚の多孔板で挟んだ3層の構成からなり、その多孔板に対する膜状材料の縦寸法と横寸法のそれぞれの、またはいずれか一方の弛み代を0.1〜1%として積層されたものとし、また前記多孔板の四周端部と膜状材料の四周端部を固定したことを特徴とする透光性防音板。
【請求項2】
透光性の膜状材料と透光性の多孔板を積層した透光性吸音材と、透明遮音材とを空間を隔ててパネル枠材に取り付けた透光性防音板において、前記透光性吸音材が、1枚の第1膜状材料を2枚の多孔板で挟み、その片面に1枚の第2膜状材料を配した4層の構成からなり、その多孔板に対する第1膜状材料の縦寸法と横寸法のそれぞれの、またはいずれか一方の弛み代を0.1〜3%とし、第2膜状材料の縦寸法と横寸法のそれぞれの、またはいずれか一方の弛み代を0.1〜1%とし、また前記多孔板の四周端部と膜状材料の四周端部を固定したことを特徴とする透光性防音板。
【請求項3】
透光性吸音材の防音板の表側(音源側)に位置する第1多孔板を網状材料からなる多孔板、防音板の内側に位置する第2多孔板を透明材料の孔明き板で構成した請求項1または2に記載の透光性防音板。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−99319(P2011−99319A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9668(P2011−9668)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【分割の表示】特願2005−360359(P2005−360359)の分割
【原出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】