説明

透光材を用いた防音パネル

【課題】透光材が割れにくく、割れた場合にも大きな破片が落下する恐れを少なくすることができる透光材を用いた防音パネルを提供する。
【解決手段】外枠フレームにおける枠内側内枠フレーム3が嵌合配置され、内枠フレーム3に透光材4の周縁部が弾性シール材33を介して支承されるように取り付けられ、内枠フレーム3の一辺が外枠フレームの一辺にピン固定され、内枠フレーム3の他辺は、ピン固定された一辺側よりも低強度の接合手段により外枠フレームの他辺に接合された防音パネル1とされ、内側パネル5の正面側から衝撃力が作用した場合に、その衝撃力により低強度接合された部分で外枠フレームに対して内枠フレーム3の他辺側を背面側に分離させて、内枠フレーム3をピン固定された一辺側を中心として背面側に回動させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、一般道路や高速道路の側辺に立設することで、防音、景観の改善等のために用いられる塀等のパネルに関し、詳しくは透光材の周縁部を内枠フレームに取り付けて、外枠フレームに対して内枠フレームの一辺側を固定して回動させるように分離させる内枠分離式の防音パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パネルにおける透光材取り付け構造として、一つの透光材取付フレームにポリカーボネート板等からなる撓みやすい弾性材料製の透光材の周辺のうち、一辺をその透光材に貫通する取付具を介して透光材取付フレームに固定するとともに、残りの辺を押さえ材によって、透光材取付フレームと押さえ材とにより挾持するようにした透光材の取付構造が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
防音パネルの透光材が、ガラス板あるいはアクリル板等の撓みにくい材料の透光材である場合には、衝撃力が作用した場合に、透光材が枠形フレームに完全固定されていると、パネルの一部に衝撃力が集中するために透光材が割れやすく、大きな破片を落下させることがある。また、衝撃力により透光材が枠形フレームから抜けることによって、透光材のエッジ部がむき出しになり、エッジ部が割れやすいガラスのような材料の場合、エッジ部より破片が落下することがある。
【0004】
そのため、透光材を弾性材料製のシール材を介在させて弾性的に支持する構造がある。例えば、図17〜図19に示すように、断面溝形の側部補強金物45をリベットにより接合することで側部が補強された断面L形の中空の縦枠材46を、間隔をおいて対向するように配置すると共に、折り曲げ加工された一対の板状部材を接合した断面L形の中空の横枠材47を、間隔をおいて対向するように配置し、隅部を接合して、背面側に縦支承壁部48と横支承壁部52を有する矩形枠材49を構成し、前記各支承壁部48,52と、合わせガラス等のガラスからなる透光材4の周縁部との間に背面側の発泡ポリエチレン製のバックアップ材32及び弾性材料製のシール材33を介在させて透光材4を配置し、透光材4の周縁部とその前面側に配置してボルト53により固定される押し縁50との間に、発泡ポリエチレン製のバックアップ材32及び弾性材料製のシール材33を介在させて、透光材4を取り付けるようにした防音パネル51も知られている。
【0005】
また、防音パネルの取付構造ではないが、防音壁の上端に設けられる取り付け部材を介して防音装置の下端側の取り付け構造として、取り付け部材における壁厚方向の前面側に差し込み溝を設け、防音装置に上下方向に配置のボルトにより固定された金属製板に差し込み片を設けて前記差し込み溝に差し込むと共に、金属製板における壁厚方向の背面側の縦板部分下端を、前記取り付け部材に水平方向に配置のボルトにより固定し、防音装置に前面側からの衝撃荷重が作用した場合に、前記差し込み部を離脱させると共に縦板部分下端の接合部を中心として縦板部分を反時計方向に曲げ変形させて、防音装置の落下を防止する防音装置の取り付け構造も知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平04−302608号公報
【特許文献2】特開2001−193026号公報
【特許文献3】特開2000−192428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記の弾性材料製の樹脂板を使用する場合は、弾性材料製の樹脂板であるために、穴開け加工も容易である利点があるものの、紫外線等による劣化により黄ばむ等の透光材としての性能低下等の問題がある。
合わせガラス等の脆性材料からなる透光材を使用する場合には、穴開け加工が困難であり、弾性材料製のシール材を介して支承する必要があることから、前記のような取り付け構造を採用することができない。
また、図17〜図19に示すような構造の場合には、衝撃力が作用した場合には、弾性材料製のシール材33による緩衝作用の負担が大きくなり、シール材33が破断した場合に透光材4周縁部のエッジ部から生じた破片が枠外へ飛散する恐れがあるため、より弾性材料製のシール材33の負担が小さくなるような構造が望まれる。
本発明は、合わせガラス等の脆性材料からなる透光材を採用した場合でも、透光材が割れにくく、割れた場合にも大きな破片が落下する恐れを少なくすることができる透光材を用いた防音パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を有利に解決するために、第1発明の透光材を用いた防音パネルにおいては、板状の透光材の四辺を内枠フレームにより囲んで固定する内側パネルを、さらに外側から外枠フレームで囲んで保持することで構成される防音パネルであって、前記内枠フレームに透光材の周縁部が弾性シール材を介して支承されるように取り付けられ、前記内枠フレームの一辺が前記外枠フレームの一辺にピン固定され、前記内枠フレームの他辺は、前記ピン固定された一辺側よりも低強度の接合手段によって外枠フレームの他辺に接合され、車両の走行する道路側である正面側から前記内側パネルへ衝撃力が作用した場合に、その衝撃力により前記外枠フレームに対して低強度接合された前記内枠フレームの他辺側を前記外枠フレームから背面側に分離させて、前記外枠フレームにピン固定された内枠フレームの一辺側を中心として背面側に内側パネルを回動させるようにしたことを特徴とする。
第2発明では、第1発明の透光材を用いた防音パネルにおいて、前記外枠フレームにピン固定される前記内枠フレームの一辺側は、内枠フレームの上辺又は下辺或いは片側辺のいずれかの一辺であることを特徴とする。
第3発明では、第1発明又は第2発明の透光材を用いた防音パネルにおいて、前記外枠フレームに低強度接合される前記内枠フレームの他辺側は、外枠フレーム又は内枠フレームのいずれか一方にスリット、他方に孔が設けられて、前記スリットと孔とに渡ってリベットにより接合されていることを特徴とする。
第4発明では、第3発明の透光材を用いた防音パネルにおいて、スリットの開口幅寸法が、リベットの軸部直径よりも小さくされて低強度接合強度を調整していることを特徴とする。
第5発明では、第1発明又は第2発明の透光材を用いた防音パネルにおいて、前記外枠フレームに低強度接合される前記内枠フレームの他辺側は、外枠フレーム又は内枠フレームのいずれか一方に凹部、他方に凸部が設けられて、前記凹部と他方の凸部とが嵌合係止されていることを特徴とする。
第6発明では、第1発明又は第2発明の透光材を用いた防音パネルにおいて、前記外枠フレームに低強度接合される前記内枠フレームの他辺側は、外枠フレーム及び内枠フレームの両方に凹部が設けられて、前記両凹部に嵌合する脚部を備えた接合金物により接合されていることを特徴とする。
第7発明では、第1発明又は第2発明の透光材を用いた防音パネルにおいて、低強度接合部におけるリベットの孔から内枠フレームの背面板巾方向先端までの巾寸法がリベット軸部の直径よりも小さくされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、合わせガラス等の脆性材料からなる透光材を使用しても、衝撃力が作用した場合に、透光材を支持している内側フレームの他辺側が分離して、固定された一辺側を中心として緩衝しながら回動して衝撃力を受け流す構造とされているので、透光材が損傷した場合に、その最大破片の重量が小さく及び大きい破片の量が少なくなる等の効果が得られる。
また、第1及び第2発明によると、板状の透光材の四辺を内枠フレームにより囲んで固定する内側パネルを、さらに外側から外枠フレームで囲んで保持することで構成される防音パネルであって、前記内枠フレームに透光材の周縁部が弾性シール材を介して支承されるように取り付けられ、前記内枠フレームの一辺が前記外枠フレームの一辺にピン固定され、前記内枠フレームの他辺は、前記ピン固定された一辺側よりも低強度の接合手段によって外枠フレームの他辺に接合され、車両の走行する道路側である正面側から前記内側パネルへ衝撃力が作用した場合に、その衝撃力により前記外枠フレームに対して低強度接合された前記内枠フレームの他辺側を前記外枠フレームから背面側に分離させて、前記外枠フレームにピン固定された内枠フレームの一辺側を中心として背面側に内側パネルを回動させるようにしたので、衝撃力が作用した場合に、弾性シール材の負担が小さくなるから、弾性シール材の厚みが大きく伸びきったり、厚さが大きく変化することなく、安定した状態で、確実に透光材の周縁部を弾性的に保持することができるので、透光材周縁部のエッジ部から生じた破片が枠外に飛散することを防ぐ等の効果が得られる。
第3発明によると、第1発明又は第2発明の透光材を用いた防音パネルにおいて、前記外枠フレームに低強度接合される前記内枠フレームの他辺側は、外枠フレーム又は内枠フレームのいずれか一方にスリット、他方に孔が設けられて、前記スリットと孔とに渡ってリベットにより接合されているので、スリットと孔とリベットによる簡単な構造で、低強度接合とすることができる等の効果が得られる。
第4発明によると、第3発明の透光材を用いた防音パネルにおいて、スリットの開口幅寸法が、リベットの軸部直径よりも小さくされて低強度接合部の抵抗を調整しているので、リベットの軸部直径より小さいスリットの開口幅寸法とすることで、衝撃力が作用した場合に、低強度接合部の抵抗の大きさを調整することができる等の効果が得られる。
第5発明によると、第1発明又は第2発明の透光材を用いた防音パネルにおいて、前記外枠フレームに低強度接合される前記内枠フレームの他辺側は、外枠フレーム又は内枠フレームのいずれか一方に凹部、他方に凸部が設けられて、前記凹部と他方の凸部とが嵌合係止されているので、リベットを用いなくても、機械式の凹凸嵌合により低強度接合部を形成することができる等の効果が得られる。
第6発明によると、第1発明又は第2発明の透光材を用いた防音パネルにおいて、前記外枠フレームに低強度接合される前記内枠フレームの他辺側は、外枠フレーム及び内枠フレームの両方に凹部が設けられて、前記両凹部に嵌合する脚部を備えた接合金物により接合されているので、リベットを用いなくても、衝撃力が作用した場合に、容易に分離可能な低強度接合部を形成することができる等の効果が得られる。
第7発明によると、第1発明又は第2発明の透光材を用いた防音パネルにおいて、低強度接合部におけるリベットの孔から内枠フレームの背面板巾方向先端までの巾寸法がリベット軸部の直径よりも小さくされているので、リベットの孔から内枠フレームの背面板巾方向先端までの巾寸法をリベット軸部の直径よりも小さくすることで、低強度接合部を形成することができる等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態の透光材を用いた防音パネルを示す背面図である。
【図2】図1の一側部を拡大して示す一部切り欠き背面図である。
【図3】図1の上部横枠材付近と下部横枠材付近とを拡大して示す一部切り欠き背面図である。
【図4】図1の縦断側面図である。
【図5】図1の一端側の横断平面図である。
【図6】図1に示す本発明の一実施形態の透光材を用いた防音パネルを示す正面図である。
【図7】図1に示す透光材を用いた防音パネルに衝撃力が作用した場合に内枠フレームが下辺側の接合部を中心として分離した状態を示す縦断側面図である。
【図8】図7に示す片側の横断平面図である。
【図9】本発明の他の実施形態の透光材を用いた防音パネルを示す背面図である。
【図10】図9の上部横枠材付近と下部横枠材付近とを拡大して示す一部切り欠き背面図である。
【図11】図9の縦断側面図である。
【図12】図9に示す透光材を用いた防音パネルに衝撃力が作用した場合に内枠フレームが上辺側の接合部を中心として分離した状態を示す縦断側面図である。
【図13】(a)〜(d)は、低強度接合部の形態例を示す縦断側面図である。
【図14】(a)〜(c)は、リベット軸部に対するスリットの開口巾を変化させた場合の形態例を示す部分図である。
【図15】(e)〜(g)は、低強度接合部の他の形態例を示す縦断側面図である。
【図16】(a)(b)は、低強度接合部の他の形態例を示す縦断側面図と背面図である。
【図17】従来の透光材を用いた防音パネルを示す正面図である。
【図18】図17の防音パネルの縦断側面図である。
【図19】図17の防音パネルの横断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1〜図8には、本発明の一実施形態の透光材を用いた防音パネル1が示されている。前記の防音パネル1は、外枠フレーム2とその内側に設置される内枠フレーム3に透光材4を設けた内側パネル5とを備えている。
【0013】
先ず、前記の外枠フレーム2について説明する。
【0014】
図1〜図5に示すように、外枠フレーム2は、上部及び下部の外横枠材6と、左右に間隔をおいて対向するように配置された左右の外縦枠材7とが、隅角部でリベット8により接合されて構成されている。
【0015】
図4に示すように、前記の上部及び下部の外横枠材6は、前面側に枠内側に突出するように設けられた横支承壁部9を備え、枠内側に配置された段付き横溝形部材10と、その段付き横溝形部材10を外側から嵌合されてリベット8により接合された横溝形部材11とを備えた中空断面の部材とされている。
【0016】
各段付き横溝形部材10における段部により前記の横支承壁部9が形成され、横支承壁部9に接続する背面側の面板は、背面側に向かって離反するように傾斜する傾斜面板13とされている。
【0017】
図5に左右方向の一端側を示すように、前記の左右の各外縦枠材7は、前面側に枠内側に突出するように設けられた縦支承壁部14を備え、枠内側に配置された段付き縦溝形部材15と、その段付き縦溝形部材15の溝を閉鎖するように嵌合されてリベット8により接合された縦溝形部材16を備えた中空断面の部材とされている。
【0018】
各段付き縦溝形部材15及び各段付き横溝形部材10における段部により、全体として矩形状の支承壁部12が形成されている。
各段付き横溝形部材10における横支承壁部9に接続して背面側へ続く面板は、背面側に向かって離反するように傾斜する傾斜面板13とされて、内側パネル5が背面側へ回動する場合の干渉を防止している。
また、各段付き縦溝形部材15における支承壁部12に接続して背面側へ続く面板は、背面側に向かって平行な面板17(図5参照)とされている。
【0019】
次に、内枠フレーム3について説明する。
【0020】
外枠フレーム2における枠内側に突出するように設けられた支承壁部12の背面側に嵌合配置されている内枠フレーム3は、上部及び下部の内横枠材20と、左右に間隔をおいて対向するように配置された左右の内縦枠材21とが、隅角部で接合用L形金物22を介してボルト18により接合されている。
【0021】
前記の上部及び下部の内横枠材20は、前面側に部材長手方向に連続する横溝23を備えた断面凹状部24と、その断面凹状部24の背面側と、横背面板25とを接続する接続板26を備えている。横背面板25と前記の断面凹状部24とは、断面凹状部24の底板27に接続するように嵌合配置された断面溝形の補強部材28が嵌合されて、リベット8により横背面板25に接合されて補強されている。前記の補強部材28の底板と断面凹状部24の底板の外面は、傾斜面板13の傾斜面に近接又は接触するような傾斜面とされている。
【0022】
図5に一端側を示すように、左右の内縦枠材21は、前面側に縦溝29を備えた断面凹状部24と、前記断面凹状部24の背面側と、縦背面板35とを接続する接続板31を備えている。
前記の各断面凹状部24は、その溝の部分で、透光材4の周縁部を嵌合し、バックアップ材32及び弾性材料製のシール材33を介して保持するための部分であり、図4に示すように下部の内横枠材20の溝底部には、高さ位置決め用のセッティングブロック34を設置している。
【0023】
図3及び図4に示すように、内枠フレーム3の上部側の内横枠材20の横背面板25には、横方向に間隔をおいて前記横背面板25の上端側に開口する複数(図示の場合は、3か所)のスリット37が設けられ、外枠フレーム2における上部の外横枠材6には横方向に間隔をおいて孔が設けられて、複数のリベット8により接合されている。
同様に、図2に示すように、内枠フレーム3の左右の内縦枠材21の縦背面板35には、上下方向に間隔をおいて縦背面板35の側端側に開口する複数(図示の場合は、2か所)のスリット37が設けられ、外枠フレーム2における左右の外縦枠材7には上下方向に間隔をおいて孔が設けられて、複数のリベット8により接合されている。
【0024】
また、内枠フレーム3の下部側(一辺側)の横背面板25には、横方向に間隔をおいて孔が設けられ、これに対応するように、外枠フレーム2における下部の外横枠材6には横方向に間隔をおいて孔が設けられて、複数のリベット8により接合されている。
前記の内枠フレーム3と透光材4等により内側パネル5が構成されている。
【0025】
内枠フレーム3の下部側(下辺側、一辺側)の横背面板25の孔と外枠フレーム2における下部(下辺側)の外横枠材6の孔とをリベット8により接合した場合の接合強度よりも、内枠フレーム3側の上部側(上辺側、他辺側)及び側部側(側辺側、他辺側)のスリット37と、外枠フレーム2の上部側(上辺側、他辺側)又は側部(側辺側、他辺側)の孔とを、リベット8により接合した場合の接合強度が小さくされ、スリット37を設けてリベット8により接合した辺側(他辺側)の接合は、孔同士のリベット接合の辺側(一辺側)よりも低強度接合とされている。
【0026】
図5に2点鎖線で示すように、例えば、道路側部に沿って間隔をおいて立設されて隣り合う支柱19のフランジ19a間に形成された溝間に落し込み等により設置され、屈曲した板材による押え金具36により弾性的に保持されて、がたつきがない状態で設置される防音パネル1とされ、そのような防音パネル1に対して、矢印で示す方向から(前記内側パネル5の正面側から)、風荷重等の設計荷重を超える自動車衝突事故等による衝撃力が作用した場合に、その衝撃力により低強度接合された各辺側部分で外枠フレーム2に対して内枠フレーム3の他辺側を背面側に抜け出させて分離可能にされている。
【0027】
また、内枠フレーム3の下部側(下辺側、一辺側)の横背面板25の孔と外枠フレーム2における下部(下辺側)の外横枠材6の孔とをリベット8により接合した辺側(一辺側)では、間隔をおいてリベット8による接合部を結ぶ軸線X(図3参照)を中心として横背面板25が曲げ変形することで設計上回動する固定構造(設計上、ピン固定構造)となっていることから、内枠フレーム3を備えた内側パネル5が反時計方向の背面側に傾倒することで、下部側(下辺側、一辺側)の横背面板25が屈曲するように塑性変形して、衝撃力を受け流すようにして緩和することができ、合わせガラス等からなる透光材4が損傷しにくくなると共に、合わせガラス等からなる透光材4が損傷した場合に、その最大破片の重量が小さく及び大きい破片の量が少なくなる等の効果がある。
【0028】
また、合わせガラス等からなる透光材4は、その周縁部のエッジ部は内枠フレーム3に囲まれていることから、シール材33が破断を防止して透光材4周縁部のエッジ部から生じた破片が枠外へ飛散する恐れがなく、エッジ部の破片の落下も防止することができる。
また、内枠フレーム3は、押し出し材等を利用してリベット接合可能な枠材であり、内枠フレーム3及び透光材4を備えた内側パネル5の構造も簡単であるため、その制作が容易である。
【0029】
この実施形態では、前記下部辺側の一辺が固定され、他辺側を反時計方向に分離可能にしていることから、透光材4の一部が損傷しても、内枠フレーム3の下部が外枠フレーム2と連結していることから、下側を分離する場合に比べて、透光材4の破片を受け止めやすい構造になっている。
【0030】
図8〜図14は、本発明の他の実施形態の透光材を用いた防音パネル1が示されている。前記実施形態と相違している部分は、内枠フレーム3の上部の内横枠材20の横背面板25側を前記と同様に設計上ピン固定構造とし、内枠フレーム3の他の辺(下部辺又は側部辺)の背面板25及び縦背面板35にスリット37を設けて、内枠フレーム3の他の辺を、外枠フレーム2との低強度接合部とした形態である点が相違している。
このような形態でも、前記実施形態と同様な効果を得ることができる。内枠フレーム3の下側が外枠フレーム2と分離しない形態の前記図7に示す形態のほうが、ガラス等の透光材4がより落下しにくい点では、有利である。
その他の構造は、前記実施形態と同様であるので、同様な部分には同様な符号を付して、説明を省略する。
【0031】
前記各実施形態の場合は、内枠フレーム3の上部辺又は下部辺を一辺側として、その他の辺を他辺として、一辺側をリベットにより固定する固定部を結ぶ軸線Xを中心として、正面側からの衝撃荷重に対して、内枠フレーム3を含む内側パネル5を反時計方向(又は時計方向)に背面側に回動させて、衝撃荷重の多くを受け流すように機能させることで透光材4を割れにくくし、しかも弾性材料製のシール材33により、透光材4周縁部が弾性的に支承されていることから、一層、透光材4を割れにくくしている。
【0032】
前記各実施形態の変形形態として、内枠フレーム3における左右の内縦枠材21のいずれか一方の縦背面板35と、外枠フレーム2とを、孔と孔とに渡るリベット接合としたピン固定側の一辺とし、残りの辺を他辺として、孔とスリットとに渡るリベット接合とした低強度接合部としてもよい。
前記各実施形態の場合に、リベット接合する時に、内枠フレーム3の背面板25,35を外枠フレーム2に圧着力を作用させて接合するようにしてもよく、いずれの場合も、背面板25,35先端がリベットから抜け出す時の弾性及び塑性変形により抵抗する。
【0033】
また、前記各実施形態において、内枠フレーム3における上部の内横枠材20又は下部の内横枠材20の一辺をピン固定側とし、他辺を低強度接合側の辺とし、しかも内枠フレーム3における、左右の内縦枠材21については、外枠フレーム2に分離可能に固定しない状態としてもよい。左右の一方の内縦枠材21を一辺としてピン固定側とする場合にも、上部又は下部の内横枠材20を分離可能に固定しない形態としてもよい。
一辺側のピン固定側の接合強度と、それよりも接合強度の小さい分離可能な低強度接合部側の接合強度とは、設計により設定される。
【0034】
(低強度接合部の他の形態について)
低強度接合部は、複数のリベット接合部により形成される場合が多いが、リベット接合部一箇所の構造について特に説明する。
外横枠材6(又は外縦枠材7)を一本物の型材とし、また、補強部材28を省略して1本もの型材とした内横枠材20(又は内縦枠材21)とした代表形態を図13(a)に示す。その他の構造は、前記した実施形態と同様である。
図13(a)に示す形態以外にも、図13(b)に示すように、外枠フレーム2側に支承壁部12を設けないで、傾斜面板13を外枠フレーム2の前面側〜背面側までの巾いっぱいの傾斜面板13とし、また、背面板25,35を省略して、内枠フレーム3側の上部の内横枠材20及び下部の内横枠材20を、前面側中空枠材部38と背面側中空枠材部39とを接続板部40により一体に接続した構造の部材とし、前面側中空枠材部38と背面側中空枠材部39と接続板部40とにより形成される溝部分に、透光材4の周縁部を配置して弾性的に支持するようにし、前面側中空枠材部38の底板と外枠フレームの傾斜面板13とをリベット8により接合し、前面側中空枠材部38の底板のスリット37に接続するように、前面側中空枠材部38の前面板41にスリット37aを交差するように設け、リベット8の頭部をスリット部分で通過又は抵抗させて通過させる形態としても、同様な低強度接合部とすることができる。前面側中空枠材部38には、リベット8を装着するための孔又は開口部43を設ける。
この場合には、スリットに代えて円形孔とされると、ピン固定側の形態となる。いずれの場合も矢印で示す方向の前面側からの衝撃荷重が作用する場合である。
【0035】
また、図13(c)に示すように、内枠フレーム3側の横又は縦の背面板25,35を省略して、内枠フレーム3における各枠材の前面側に、外枠フレーム2の各枠材内面に沿う、前部内側板44を断面凹状部24の前面側に接続するように設けて、前部内側板44の前面側に開口するスリット37を設け、外枠フレーム2側の枠材とリベット8により接合するようにしても、前記実施形態と同様に低強度接合部とすることができる。
【0036】
また、図13(d)に示すように、内枠フレーム3の断面凹状部24の底板にスリット37を設けると共に、そのスリット37に接続するように、前面板54にスリット37aを設けて、断面L形のスリット37とし、内枠フレーム3の底板と外枠フレーム2とを、リベット8により接合するようにしてもよい。
【0037】
(さらに他の低強度接合部の他の形態について)
図14(a)〜(c)に示すように、前記のように内枠フレーム3側と、外枠フレーム2側(外横枠材6又は外縦枠材7)とを、スリット37と孔とにリベット8の軸部を挿通する形態の場合に、スリット37の開放出口側の巾寸法dを、(a)のようにリベット8の軸部直径寸法と同じ寸法としてもよく、(b)に示すようにリベット8の軸部直径寸法の1/2、(c)に示すようにリベット8の軸部直径寸法の1/4等、リベット8の軸部直径寸法よりも小さくすることで、低強度接合側の接合強度(又は分離させる場合の抵抗の度合い)を調整するようにしてもよい。
スリット37の出口側の寸法を、例えば、リベット8軸部の直径と同じ寸法、又は直径の3/4,1/2或は1/4の巾寸法に設定することにより、背面板35をリベット8から抜け出しにくくすることができ、低強度接合部を分離させる場合の抵抗の大きさを調整することもできる。
【0038】
(さらに他の形態の低強度接合部について)
図15(e)に示すように、外枠フレーム2の他辺となる側の枠材の内隅部に凹部41を設け、内枠フレーム3側の枠材の断面凹状部24の基端側に外フレームに向って突出する凸部42を設け、凹凸の嵌合による低強度接合部としてもよく、矢印方向の衝撃荷重が作用した場合に、凹凸の嵌合部が離脱する時に塑性変形して抵抗する低強度接合部としてもよい。
また、図15(f)に示すように、内枠フレーム3における他辺の枠材における断面凹状部24の前面板に凹部41を設け、外枠フレーム2の他辺の枠材に凹部41aを設け、断面U字状金物55の脚部を前記各凹部41,41aに嵌合させ、矢印で示す方向の衝撃荷重が作用した場合に、前記U字状金物55を破断又は各脚部が接続部を中心として開くように塑性変形させることで、内枠フレーム3を外枠フレーム2に対して分離させることができる。前記U字状金物55としては、金属線材又は鋼製の断面U字状の板状部材を用いるようにしてもよい。
【0039】
また、図15(g)に示すように、内枠フレーム3の他辺側の枠材と、外枠フレーム2の他辺側の枠材との間に、部材長手方向に連続して又は間隔をおいて断続して、粘着材又は接着剤56による低強度接合部を設けるようにしてもよい。前記の粘着材又は接着剤としては、公知の粘着材又は接着剤を用いるようにしてもよい。
【0040】
また、前記実施形態以外にも、例えば、図16(a)(b)に示すように、内枠フレーム3側の横背面板25又は縦背面板35をリベット8により接合する場合に、リベット8の孔から縁部までの距離Yを、リベット8の軸径の1/2〜1/10(例えば、1/2,1/3,1/4等)に短くして、横背面板25又は縦背面板35の縁部近傍で、リベット8による接合とすることで、矢印方向の衝撃力が作用した場合に、縦背面板35の縁部をリベット軸部により破断又は塑性変形させるような、低強度接合としてもよい。
このような形態では、リベット軸部から背面板の縁部までの距離を小さくすることで、矢印で示すような衝撃荷重が作用した場合に、外枠フレームから内枠フレームを分離させる場合の抵抗を小さく調整することができる。
【0041】
本発明を実施する場合、前記のリベットとしては、ブラインドリベットを用いるのが望ましい。また、ワンサイドボルトを用いて接合することも可能であるが、ブラインドリベットのほうが安価でよい。
【0042】
なお、各段付き横溝形部材10における傾斜面板13は、必ずしも背面側に向かって互に離反するように傾斜している必要はなく、背面側に向かって平行な面板であってもよい。
また、各段付き縦溝形部材15における面板17は、必ずしも背面側に向かって平行な面板である必要はなく、背面側に向かって互に離反するように傾斜している傾斜面板であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 防音パネル
2 外枠フレーム
3 内枠フレーム
4 透光材
5 内側パネル
6 外横枠材
7 外縦枠材
8 リベット
9 横支承壁部
10 段付き横溝形部材
11 横溝形部材
12 支承壁部
13 傾斜面板
14 縦支承壁部
15 溝付き縦溝形部材
16 縦溝形部材
17 面板
18 ボルト
19 支柱
19a フランジ
20 内横枠材
21 内縦枠材
22 L形金物
23 横溝
24 断面凹状部
25 横背面板
26 接続板
27 底板
28 補強部材
29 縦溝
31 接続板
32 バックアップ材
33 シール材
34 セッティングブロック
35 縦背面板
36 押さえ金具
37 スリット
38 前面側中空枠材部
39 背面側中空枠材部
40 接続板部
41 凹部
42 凸部
43 孔又は開口部
44 前部内側板
45 側部補強金物
46 縦枠材
47 横枠材
48 縦支承壁部
49 矩形枠材
50 押し縁
51 防音パネル
52 横支承壁部
53 ボルト
54 前面板
55 U字状金物
56 粘着材又は接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の透光材の四辺を内枠フレームにより囲んで固定する内側パネルを、さらに外側から外枠フレームで囲んで保持することで構成される防音パネルであって、
前記内枠フレームに透光材の周縁部が弾性シール材を介して支承されるように取り付けられ、前記内枠フレームの一辺が前記外枠フレームの一辺にピン固定され、前記内枠フレームの他辺は、前記ピン固定された一辺側よりも低強度の接合手段によって前記外枠フレームの他辺に接合され、
車両の走行する道路側である正面側から前記内側パネルへ衝撃力が作用した場合に、その衝撃力により前記外枠フレームに対して低強度接合された前記内枠フレームの他辺側を前記外枠フレームから背面側に分離させて、前記外枠フレームにピン固定された内枠フレームの一辺側を中心として背面側に前記内側パネルを回動させるようにしたことを特徴とする透光材を用いた防音パネル。
【請求項2】
前記外枠フレームにピン固定される前記内枠フレームの一辺側は、内枠フレームの上辺又は下辺或いは片側辺のいずれかの一辺であることを特徴とする請求項1に記載の透光材を用いた防音パネル。
【請求項3】
前記外枠フレームに低強度接合される前記内枠フレームの他辺側は、外枠フレーム又は内枠フレームのいずれか一方にスリット、他方に孔が設けられて、前記スリットと孔とに渡ってリベットにより接合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の透光材を用いた防音パネル。
【請求項4】
スリットの開口幅寸法が、リベットの軸部直径よりも小さくされて低強度接合強度を調整していることを特徴とする請求項3に記載の透光材を用いた防音パネル。
【請求項5】
前記外枠フレームに低強度接合される前記内枠フレームの他辺側は、外枠フレーム又は内枠フレームのいずれか一方に凹部、他方に凸部が設けられて、前記凹部と他方の凸部とが嵌合係止されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の透光材を用いた防音パネル。
【請求項6】
前記外枠フレームに低強度接合される前記内枠フレームの他辺側は、外枠フレーム及び内枠フレームの両方に凹部が設けられて、前記両凹部に嵌合する脚部を備えた接合金物により接合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の透光材を用いた防音パネル。
【請求項7】
低強度接合部におけるリベットの孔から内枠フレームの背面板巾方向先端までの巾寸法がリベット軸部の直径よりも小さくされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の透光材を用いた防音パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−211434(P2012−211434A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76293(P2011−76293)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【Fターム(参考)】