説明

透明なフィルム、組成物、及びその製造方法

熱可塑性樹脂成分からなる熱可塑性樹脂成分と、熱可塑性樹脂成分の0.04以内の屈折率を有するガラスとの混合物を含んでなるフィルムであって、このフィルムは、約20%未満の曇り率、約70%より大きい全透過率、及び20〜70℃の温度範囲に渡って測定して約20〜約80μm/m/℃の熱膨張率を有する。このフィルムは光ディフューザー用フィルムのような光学用途に特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明なフィルム及び組成物、特に光学用途用の透明なフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート(PC)は優れた強靱性と透明性を有するエンジニアリング熱熱可塑性樹脂である。その優れた性能特性の故に、ポリカーボネートは、コンパクトディスク、眼科用レンズ、及びバックライト式ディスプレイ装置のディフューザー(拡散器)フィルムを始めとして、光学品質を要する多くの用途に使用されている。ポリカーボネートフィルムは、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)フィルムと比べて、より高い加熱撓み温度(HDT)、より高い引っ掻き耐性、及び厳しい環境条件下でのより良好な性能を始めとして幾つかの利点を提供する。
【0003】
ディフューザーフィルムの主要な性能要求の1つは寸法安定性である。一般に、ポリカーボネートフィルムをこの用途に使用する場合、フィルムの熱いランプに近い部分は膨張し得るが、ランプから遠いフィルムは膨張しないか又は同様な程度には膨張しない結果、フィルムのこれらの部分に反り又は皺が生じる。そのため、曝露後ディスプレイパネルを横切る輝度強度における正弦波振動により明白な光学波動効果が生じ得る。この問題は、フィルムの面積が増大するにつれて、また環境条件がより厳しくなると共に、次第に悪化し得る。液晶ディスプレイテレビ(LCD TV)の場合のようにより大きいディスプレイでは、より多くのより明るい蛍光ランプが要求され、従ってバックライトモジュール(BLM)及びディスプレイはより高い温度に曝露される。
【特許文献1】米国特許第3635895号
【特許文献2】米国特許第4001184号
【特許文献3】米国特許第4217438号
【特許文献4】米国特許第4238597号
【特許文献5】米国特許第4487896号
【特許文献6】米国特許第4600632号
【特許文献7】米国特許第4746701号
【特許文献8】米国特許第4788252号
【特許文献9】米国特許第5023297号
【特許文献10】米国特許第5109076号
【特許文献11】米国特許第5322882号
【特許文献12】米国特許第5380795号
【特許文献13】米国特許第5391603号
【特許文献14】米国特許第5451632号
【特許文献15】米国特許第5488086号
【特許文献16】米国特許第5510414号
【特許文献17】米国特許第5556673号
【特許文献18】米国特許第5608026号
【特許文献19】米国特許第5616674号
【特許文献20】米国特許第5783624号
【特許文献21】独国特許出願公開第4016417号
【特許文献22】欧州特許出願公開第0248308号
【特許文献23】欧州特許出願公開第0254054号
【特許文献24】欧州特許出願公開第0376052号
【特許文献25】欧州特許出願公開第0387570号
【特許文献26】欧州特許出願公開第0434848号
【特許文献27】欧州特許出願公開第0517927号
【特許文献28】欧州特許出願公開第0522753号
【特許文献29】欧州特許出願公開第0567655号
【特許文献30】欧州特許出願公開第0628600号
【特許文献31】米国特許第6001929号
【特許文献32】米国特許第6072011号
【特許文献33】米国特許第6103810号
【特許文献34】米国特許第6458913号
【特許文献35】米国特許第6465102号
【特許文献36】米国特許第6559270号
【特許文献37】米国特許出願公開第2002/0111428号
【特許文献38】米国特許出願公開第2003/0032725号
【特許文献39】米国特許出願公開第2003/0092837号
【特許文献40】米国特許出願公開第2003/0105226号
【特許文献41】米国特許出願公開第2003/0119986号
【特許文献42】米国特許出願公開第2004/0044105号
【特許文献43】欧州特許出願公開第0645422号
【特許文献44】国際公開第02/38675号
【特許文献45】特開平04−225062号公報
【特許文献46】特開平04−249537号公報
【特許文献47】特開平05−156170号公報
【特許文献48】特開平05−255583号公報
【特許文献49】特開平05−311075号公報
【特許文献50】特開平06−184424号公報
【特許文献51】特開平06−212070号公報
【特許文献52】特開平06−228424号公報
【特許文献53】特開平09−040856号公報
【非特許文献1】Nakao,T.,et al.”High Performance Plastic Substrate for Flat Displays” The 10th International Display Workshop,Fukuoka,Japan(Dec. 3−5,2003)621−624
【非特許文献2】Okamoto,Masaya”Relationship between the Composition of Polycarbonate Copolymers and the Refractive Index”,Journal of Applied Polymer Science,Vol.84,514−521(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、当技術分野では、広い温度範囲に渡って平らなままでいるフィルム、すなわち、寸法安定性であり、従って使用の際に波立たないフィルムに対するニーズが残されている。さらに、フィルムが低い曇り率、高い透過率(%T)、低い黄変、及び/又は改良された溶融安定性のような有利な物理的特性の組合せを維持するという利点もあろう。かかる組成物は、広い範囲の最終用途条件に渡って平坦さを保持するフィルムを作成するのに使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの実施形態において、ポリカーボネートを含む熱可塑性樹脂成分と、熱可塑性樹脂成分の0.04以内の屈折率を有するガラスとの混合物を含んでなる平らなフィルムが提供され、ここで、フィルム組成物は約20%未満の曇り率、約70%より大きい全透過率、及び20〜70℃の温度範囲に渡って測定して約20〜約70μm/m/℃の熱膨張率を有する。
【0006】
別の実施形態において、上記フィルムを含んでなる物品が提供される。
【0007】
別の実施形態において、改良された波立ち耐性を有する平らなフィルムを作成する方法は、ポリカーボネートを含む熱可塑性樹脂成分と、熱可塑性樹脂成分の0.04以内の屈折率を有するガラスとを含んでなるポリカーボネート組成物からフィルムを形成することを含んでなり、ここで、フィルム組成物は約20%未満の曇り率、約70%より大きい全透過率、及び20〜70℃の温度範囲に渡って測定して約20〜約70μm/m/℃の熱膨張率を有する。
【0008】
さらに別の実施形態において、ポリカーボネートを含む熱可塑性樹脂成分と、熱可塑性樹脂成分の0.04以内の屈折率を有するガラスとの混合物を含んでなるポリカーボネート組成物が提供され、ここで、ポリカーボネート組成物は約20%未満の曇り率、約70%より大きい全透過率、20〜70℃の温度範囲に渡って測定して約20〜約70μm/m/℃の熱膨張率、及びASTM D1238に従って300℃で測定して約0.5〜約30.0cm/10minの溶融粘度を有する。
【0009】
別の実施形態において、ポリカーボネートを含む熱可塑性樹脂成分を、熱可塑性樹脂成分の0.04以内の屈折率を有するガラスと合わせて混合することを含んでなるポリカーボネート組成物の製造方法が提供され、ここで、ポリカーボネート組成物は約20%未満の曇り率、約70%より大きい全透過率、20〜70℃の温度範囲に渡って測定して約20〜約70μm/m/℃の熱膨張率、及びASTM D1238に従って300℃で測定して約0.5〜約30.0cm/10minの溶融粘度を有する。
【0010】
さらに別の実施形態において、上記ポリカーボネート組成物を含んでなる物品が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明者は、予想外のことに、ポリカーボネートと、このポリカーボネートの屈折率とほぼ一致するガラスとを有する組成物が、その透明性を保持し、さらに約0〜約100℃、約0〜約80℃、及び他の場合には約20〜約70℃のような有用な温度範囲に渡って反り及び/又は皺がより少ないフィルムを提供することができるということを見出した。特に、このフィルムは低い熱膨張率(「CTE」)、低い黄変、低い曇り率、高い透過率、及び/又は高い曲げ弾性率を有し得る。かかるフィルムは、制約された幾何学で加熱されたときに、より高いCTEのフィルムより良好な平坦さ、すなわち、より少ない波立ちを示す。この屈折率が一致したガラスは、ポリカーボネートの高い透過率及び低い曇り率のような光学特性を保存する。
【0012】
さらに、ある種の場合には、屈折率が一致するガラスがポリカーボネートの溶融安定性に悪影響を及ぼし、その結果特性の損失及び/又はフィルム内の空隙(ボイド)又は泡の形成を起こし得ることが判明した。ガラスを不動態化することにより、フィルムを形成するための溶融加工処理中のポリカーボネート樹脂の劣化を防ぐことができる。特に、ガラスをシラン化合物で処理したときに、改良された溶融安定性を得ることができる。
【0013】
このポリカーボネート組成物は、光学品質の平坦なフィルムのようなフィルムを形成するのに使用することができる。特に有利な特徴において、これらの組成物から製造されたフィルムは、ガラスを含まないポリカーボネートと比較して、輝度の低下が殆ど又は全くなく、バックライト式ディスプレイのような用途で、大幅に低下した熱的歪み(波立ち)を有し得る。
【0014】
用語「ポリカーボネート」及び「ポリカーボネート樹脂」は、次式(1)の繰返し構造カーボネート単位を有する組成物を意味する。
【0015】
【化1】

式中、R基の総数の60パーセント以上は芳香族有機基であり、残りは脂肪族、脂環式、又は芳香族基である。1つの実施形態において、各Rは芳香族有機基であり、好ましくは次式(2)の基である。
【0016】
【化2】

式中、各々のAとAは単環式二価アリール基であり、YはAとAを隔てている1又は2個の原子を有する橋架け基である。代表的な実施形態においては、1個の原子がAとAを隔てている。このタイプの基の具体的な非限定例は、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(O)−、メチレン、シクロヘキシル−メチレン、2−[2.2.1]−ビシクロヘプチリデン、エチリデン、イソプロピリデン、ネオペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン、及びアダマンチリデンである。橋架け基Yはメチレン、シクロヘキシリデン、又はイソプロピリデンのような炭化水素基又は飽和炭化水素基であってもよい。
【0017】
ポリカーボネートは式HO−R−OHを有するジヒドロキシ化合物の界面反応によって製造することができ、そのような化合物としては次式(3)のジヒドロキシ化合物がある。
【0018】
【化3】

式中、Y、A及びAは上記の通りである。また、次の一般式(4)のビスフェノール化合物も包含される。
【0019】
【化4】

式中、RとRは各々がハロゲン原子又は一価炭化水素基を表し、同一でも異なっていてもよく、pとqは各々独立して0〜4の整数であり、Xは基の1つを表す。
【0020】
【化5】

式中、RとRは各々独立して水素原子又は一価線状若しくは環式炭化水素基を表し、Rは二価炭化水素基である。
【0021】
適切なジヒドロキシ化合物の幾つかの具体的な非限定例としては、名称又は式(一般又は個々の)により米国特許第4217438号に開示されているジヒドロキシ−置換炭化水素がある。適切なジヒドロキシ化合物の特定の例の包括的なリストには以下のものが包含される。レゾルシノール、4−ブロモレゾルシノール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルメタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、1,1−ビス(ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソブテン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、trans−2,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブテン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンチン、(α、α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トルエン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アセトニトリル、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−n−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1−ジブロモ−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1−ジクロロ−2,2−ビス(5−フェノキシ−4−ヒドロキシフェニル)エチレン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノン、1,6−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,6−ヘキサンジオン、エチレングリコールビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオリン、2,7−ジヒドロキシピレン、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチルスピロ(ビス)インダン(「スピロビインダンビスフェノール」)、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタリド、2,6−ジヒドロキシジベンゾ−p−ジオキシン、2,6−ジヒドロキシチアントレン、2,7−ジヒドロキシフェノキサチン、2,7−ジヒドロキシ−9,10−ジメチルフェナジン、3,6−ジヒドロキシジベンゾフラン、3,6−ジヒドロキシジベンゾチオフェン、及び2,7−ジヒドロキシカルバゾール、など、並びに以上のジヒドロキシ化合物を含む混合物。
【0022】
式(3)で表されるタイプのビスフェノール化合物の特定の例の包括的なリストには、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以後、「ビスフェノールA」又は「BPA」)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン、及び1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパンが包含される。以上のジヒドロキシ化合物を含む組合せも使用できる。
【0023】
枝分れポリカーボネート、及び線状ポリカーボネートと枝分れポリカーボネートのブレンドも有用である。枝分れポリカーボネートは、重合中に枝分れ剤を加えることによって製造することができる。これらの枝分れ剤としては、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボン酸無水物、ハロホルミル、及び以上の官能基を1種以上含む組合せから選択される官能基を3個以上含有する多官能性有機化合物がある。特定の例として、トリメリト酸、トリメリト酸無水物、トリメリト酸三塩化物、トリス−p−ヒドロキシフェニルエタン、イサチン−ビス−フェノール、トリス−フェノールTC(1,3,5−トリス((p−ヒドロキシフェニル)イソプロピル)ベンゼン)、トリス−フェノールPA(4(4(1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−エチル)α、α−ジメチルベンジル)フェノール)、4−クロロホルミルフタル酸無水物、トリメシン酸、及びベンゾフェノンテトラカルボン酸がある。枝分れ剤は、0.05〜2.0重量パーセント(wt%)のレベルで加える。枝分れポリカーボネートを作成するための枝分れ剤と手順は、米国特許第3635895号及び同第4001184号(援用により本明細書の内容の一部をなす)に記載されている。あらゆるタイプのポリカーボネート末端基が、ポリカーボネート組成物に有用であると考えられる。
【0024】
「ポリカーボネート」及び「ポリカーボネート樹脂」は、本明細書で使用する場合、さらにコポリマー、又はポリカーボネートとカーボネート連鎖単位を含む他のコポリマーとのブレンドを包含する。特定の適切なコポリマーは、コポリエステル−ポリカーボネートともいわれるポリエステルカーボネートである。かかるコポリマーはさらに、式(1)の繰返しカーボネート連鎖単位に加えて、次式(6)の繰返し単位を含有する。
【0025】
【化6】

式中、Dはジヒドロキシ化合物に由来する二価基であり、例えば、C2−10アルキレン基、C6−20脂環式基、C6−20芳香族基、又はアルキレン基が2〜6個の炭素原子、特定的には2、3、若しくは4個の炭素原子を含有するポリオキシアルキレン基でよく、Tはジカルボン酸に由来する二価基であり、例えば、C2−10アルキレン基、C6−20脂環式基、C6−20アルキル芳香族基、又はC6−20芳香族基である。
【0026】
1つの実施形態において、DはC2−6アルキレン基である。別の実施形態において、Dは次式(7)の芳香族ジヒドロキシ化合物に由来する。
【0027】
【化7】

式中、各Rは独立してハロゲン原子、C1−10炭化水素基、又はC1−10ハロゲン置換炭化水素基であり、nは0〜4である。1つの実施形態において、ハロゲンは臭素である。式(7)で表され得る化合物の例としては、レゾルシノール、置換レゾルシノール化合物、例えば5−メチルレゾルシノール、5−エチルレゾルシノール、5−プロピルレゾルシノール、5−ブチルレゾルシノール、5−t−ブチルレゾルシノール、5−フェニルレゾルシノール、5−クミルレゾルシノール、2,4,5,6−テトラフルオロレゾルシノール、2,4,5,6−テトラブロモレゾルシノール、など、カテコール、ヒドロキノン、置換ヒドロキノン、例えば2−メチルヒドロキノン、2−エチルヒドロキノン、2−プロピルヒドロキノン、2−ブチルヒドロキノン、2−t−ブチルヒドロキノン、2−フェニルヒドロキノン、2−クミルヒドロキノン、2,3,5,6−テトラメチルヒドロキノン、2,3,5,6−テトラ−t−ブチルヒドロキノン、2,3,5,6−テトラフルオロヒドロキノン、2,3,5,6−テトラブロモヒドロキノン、など、又は以上の化合物を1種以上含む組合せがある。
【0028】
ポリエステルを製造するのに使用できる芳香族ジカルボン酸の例としては、イソフタル酸若しくはテレフタル酸、1,2−ジ(p−カルボキシフェニル)エタン、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ビス安息香酸、及び以上の酸を1種以上含む組合せがある。1つの実施形態において、1,4−、1,5−、又は2,6−ナフタレンジカルボン酸の場合のような縮合環を含有する酸も存在することができる。ジカルボン酸は、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、又は以上のジカルボン酸を1種以上含む組合せでよい。別の実施形態において、ジカルボン酸は、テレフタル酸とイソフタル酸の重量比が10:1〜0.2:9.8であるイソフタル酸とテレフタル酸の混合物からなる。別の特定の実施形態においては、DがC2−6アルキレン基であり、Tがp−フェニレン、m−フェニレン、ナフタレン、二価環式脂肪族基、又は以上のものを1種以上含む組合せである。この部類のポリエステルには、ポリ(アルキレンテレフタレート)がある。
【0029】
別の有用なタイプのポリカーボネートは、次式(8)の繰返し構造単位を含むポリジオルガノシロキサンブロックを有するポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーである。
【0030】
【化8】

式中、各Rは同一又は異なり、C1−13一価有機基である。例えば、RはC〜C13アルキル基、C〜C13アルコキシ基、C〜C13アルケニル基、C〜C13アルケニルオキシ基、C〜Cシクロアルキル基、C〜Cシクロアルコキシ基、C〜C10アリール基、C〜C10アリールオキシ基、C〜C13アラルキル基、C〜C13アラルコキシ基、C〜C13アルカリール基、又はC〜C13アルカリールオキシ基でよい。以上のR基の組合せを同一のコポリマーに使用してもよい。
【0031】
式(8)中のDは、有効なレベルの透明性がポリカーボネート組成物に付与されるように選択される。従って、Dの値は、熱可塑性組成物中の各成分のタイプと相対量、組成物の目的とする特性、及び類似の要件に応じて広範に変化する。一般に、Dは2〜約1000、特定的には2〜約500、より特定的には約5〜約100の平均値を有し得る。1つの実施形態において、Dは約10〜約75の平均値を有し、さらに別の実施形態において、Dは約40〜約60の平均値を有する。Dが小さめの値、例えば、約40未満の場合、比較的多めの量のポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーを使用するのが望ましいであろう。逆に、Dが大きめの値、例えば、約40より大きい場合には、比較的少なめの量のポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーを使用する必要があろう。第1と第2(又はそれ以上)のポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーの組合せを使用してもよく、この場合第1のコポリマーのDの平均値は、第2のコポリマーのDの平均値より小さい。
【0032】
1つの実施形態において、ポリジオルガノシロキサンブロックは次式(9)の繰返し構造単位を含んでいる。
【0033】
【化9】

式中、各Rは同一又は異なり、C1−13一価有機基である。例えば、RはC〜C13アルキル基、C〜C13アルコキシ基、C〜C13アルケニル基、C〜C13アルケニルオキシ基、C〜Cシクロアルキル基、C〜Cシクロアルコキシ基、C〜C10アリール基、C〜C10アリールオキシ基、C〜C13アラルキル基、C〜C13アラルコキシ基、C〜C13アルカリール基、又はC〜C13アルカリールオキシ基でよい。以上のR基の組合せを同一のコポリマーに使用してもよい。式(9)中のRは二価C〜C脂肪族基である。式(9)中の各Mは同一でも異なっていてもよく、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C〜Cアルキルチオ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルケニル、C〜Cアルケニルオキシ基、C〜Cシクロアルキル、C〜Cシクロアルコキシ、C〜C10アリール、C〜C10アリールオキシ、C〜C12アラルキル、C〜C12アラルコキシ、C〜C12アルカリール、又はC〜C12アルカリールオキシでよく、式中の各nは独立して0、1、2、3、又は4である。
【0034】
1つの実施形態において、Mは独立してブロモ若しくはクロロ、メチル、エチル、若しくはプロピルのようなC〜Cアルキル基、メトキシ、エトキシ、若しくはプロポキシのようなC〜Cアルコキシ基、又はフェニル、クロロフェニル、若しくはトリルのようなC〜Cアリール基であり、Rはジメチレン、トリメチレン又はテトラメチレン基であり、RはC1−8アルキル、トリフルオロプロピルのようなハロアルキル、シアノアルキル、又はフェニル、クロロフェニル若しくはトリルのようなアリールである。別の実施形態において、Rはメチル、又はメチルとトリフルオロプロピルの混合物、又はメチルとフェニルの混合物である。さらに別の実施形態においては、Mがメトキシであり、nが1であり、Rが二価C〜C脂肪族基であり、Rがメチルである。
【0035】
一般に、ジヒドロキシポリジオルガノシロキサンの量は、ポリカーボネートブロックのモル数に対して約0.1〜約20モルパーセントのポリジオルガノシロキサンブロック、より特定的には、ポリカーボネートブロックのモル数に対して約0.5〜約12モルパーセントのポリジオルガノシロキサンブロックを含むコポリマーが生成するように選択される。ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーは好ましくは透明であり、(例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、超遠心、又は光散乱で測定して)約10000〜約200000、特定的には約20000〜約100000の重量平均分子量を有することができる。ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーは約15000〜約100000の重量平均分子量を有し得る。適切な透明なポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーはGE Plasticsから市販されている。
【0036】
幾つかのポリカーボネートは、各AとAがp−フェニレンであり、YがイソプロピリデンであるビスフェノールAに基づく。1つの実施形態において、ポリカーボネートの重量平均分子量は、ポリスチレン標準を用いてジクロロメタン中でゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより決定して約10000〜約100000、特定的には約20000〜約50000、より特定的には約25000〜約40000である。異なる分子量のポリカーボネートの組合せを使用してもよい。
【0037】
適切なポリカーボネートは界面重合及び溶融重合のようなプロセスによって製造することができる。界面重合の反応条件は変化し得るが、代表的なプロセスでは一般に、二価フェノール反応体を水性苛性ソーダ又はカリに溶解又は分散させ、得られた混合物を適切な水−不混和性溶媒媒質に加え、トリエチルアミン又は相間移動触媒のような適切な触媒の存在下、制御されたpH条件、例えばpH約8〜約10で反応体をカーボネート前駆体と接触させる。最も一般的に使用される水不混和性溶媒には、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエン、などがある。適切なカーボネート前駆体には、例えば、臭化カルボニル若しくは塩化カルボニルのようなハロゲン化カルボニル、又は二価フェノールのビスハロホルメート(例えば、ビスフェノールA、ヒドロキノン、などのビスクロロホルメート)若しくはグリコールのビスハロホルメート(例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、などのビスハロホルメート)のようなハロホルメートがある。以上のタイプのカーボネート前駆体を1種以上含む組合せも使用できる。
【0038】
使用できる好ましい相間移動触媒の中には、式(RXの触媒があり、式中、各々のRは同一又は異なり、C1−10アルキル基であり、Qは窒素又はリン原子であり、Xはハロゲン原子又はC1−8アルコキシ基若しくはC6−188アリールオキシ基である。適切な相間移動触媒としては、例えば、[CH(CHNX、[CH(CHPX、[CH(CHNX、[CH(CHNX、[CH(CHNX、CH[CH(CHNX、CH[CH(CHNXがあり、ここでXはCl、Br、又はC1−8アルコキシ基若しくはC6−188アリールオキシ基である。相間移動触媒の有効な量は、ホスゲン化混合物中のビスフェノールの重量を基準にして約0.1〜約10wt%でよい。別の実施形態において、相間移動触媒の有効な量は、ホスゲン化混合物中のビスフェノールの重量を基準にして約0.5〜約2wt%であり得る。
【0039】
或いは、溶融プロセスを使用してもよい。一般に、溶融重合プロセスでポリカーボネートを製造するには、エステル交換触媒の存在下、Banburyミキサー、二軸式押出機、などでジヒドロキシ反応体と炭酸ジフェニルのような炭酸ジアリールエステルとを溶融状態で同時に反応させて、均一な分散体を形成するとよい。揮発性の一価フェノールを蒸留により溶融反応体から除去し、ポリマーを溶融残渣として単離する。
【0040】
コポリエステル−ポリカーボネート樹脂も、当業者には周知の界面重合技術により製造される(例えば、米国特許第3169121号及び同第4487896号参照)。ジカルボン酸自体を利用するのではなく、この酸の対応する酸ハロゲン化物、特に酸二塩化物及び酸二臭化物のような反応性誘導体を使用することが可能であり、時には好ましいことさえある。すなわち、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、又はこれらの混合物を使用する代わりに、イソフタロイルジクロリド、テレフタロイルジクロリド、及びこれらの混合物を使用することが可能である。
【0041】
上記ポリカーボネートに加えて、ポリカーボネート樹脂と他の熱可塑性ポリマーの組合せ、例えばポリカーボネート及び/又はポリカーボネートコポリマーとポリエステルの組合せを使用することも可能である。但し、その組合せが、組成物の所望の特性、例えば組成物の透明性及び/又は溶融安定性を大幅に損なわないことを条件とする。1つの実施形態において、ポリカーボネートとその他の熱可塑性ポリマーの曇り率は約50%未満、より特定的には約25%未満、さらにより特定的には約10%未満である。本明細書で使用する場合、「組合せ」はあらゆる混合物、ブレンド、アロイ、などを含む。
【0042】
適切なポリエステルとしては、例えば、ポリ(アルキレンジカルボキシレート)、液晶ポリエステル、及びポリエステルコポリマーがある。また、枝分れ剤、例えば、3個以上のヒドロキシル基を有するグリコール、又は三官能性若しくは多官能性カルボン酸が組み込まれている枝分れポリエステルを使用することも可能である。また、組成物の最終的な使用目的に応じてポリエステル上に様々な濃度の酸及びヒドロキシル末端基を有するのが望ましいこともある。1つの実施形態において、適切なポリエステルの特定の例としては、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)(PBT)、(ポリプロピレンテレフタレート)(PPT)、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート(PCT)、ポリシクロヘキサンジメタノールシクロヘキサンジカルボキシレート(PCCD)、及び前記エステル結合を含有する以上のポリエステル又はコポリマーを1種以上含む組合せがある。また、上記ポリエステルと、少量、例えば約0.5〜約20重量パーセントの脂肪族二酸及び/又は脂肪族ポリオールに由来する単位とがコポリエステルを形成しているものも考えられる。
【0043】
1つの実施形態において、ポリエステルの重量平均分子量は約1000〜約100000、特定的には約2000〜約50000、より特定的には約25000未満である。より小さい分子量のポリエステルはより混和性であり、従ってより少ない曇り率を有する組合せが得られると考えられる。分子量は、ポリスチレン標準を用いてジクロロメタン中でゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより決定することができる。異なる分子量のポリエステルの組合せを使用してもよい。
【0044】
ポリカーボネートとポリエステルのブレンドは、約1〜約99wt%のポリカーボネートと、それに対応して約1〜約99wt%のポリエステル、特に環式脂肪族繰返し単位、特定的にはシクロヘキシル環を含有するポリエステルとからなり得る。1つの実施形態において、このブレンドは、約70〜約99wt%のポリカーボネートと、それに対応して約1〜約30wt%のPCT又はPCCDとからなる。以上の量はポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂の総重量を基準とする。ここでも、ポリエステルの量は低い曇り率の組成物が得られるように選択される。
【0045】
ポリカーボネート組成物は、さらに、組成物に強化及び寸法安定性を提供するためにガラスを含んでいる。1つの重要な特徴において、ガラスは、所望のバランスのとれた光学的及び物理的特性、特に低い熱膨張率及び高い曲げ弾性率と組み合わせて透明性(低い曇り率及び高い透過率に反映される)及び場合により低い黄色度を組成物に提供するように選択される。これらの特性を達成するために、ガラスの屈折率を、熱可塑性樹脂成分(ポリカーボネート及びその他あらゆる熱可塑性ポリマー)の屈折率と0.04以内で一致させる。すなわち、ガラスと熱可塑性樹脂成分の屈折率が有用な温度範囲にわたってお互いの0.04以内の値を有する。予想外のことに、かかる一致により、優れた組合せの光学的及び物理的特性、特に透明性及び寸法安定性を有する組成物が得られることが判明した。かかる組成物から作成されたフィルムは、より小さいCTEと改良された平坦さを有し、波立ちへの傾向がより少なく、一方それでも高い透明性と低い曇り率を保持している。
【0046】
1つの実施形態において、ガラスは、約0〜約80℃の温度範囲に渡って熱可塑性樹脂成分の屈折率と実質的に等価な屈折率を有する。実質的に等価な屈折率を有するガラスは、樹脂成分の屈折率より約0.001〜約0.04単位大きい又は小さい、特定的には熱可塑性樹脂成分の屈折率より約0.005〜約0.03単位大きい又は小さい屈折率を有する。ガラスの屈折率は、約0〜約100℃、特定的には約0〜約80℃、その他の場合には約20〜約70℃の温度範囲に渡って熱可塑性樹脂成分の屈折率と一致する。この屈折率及び/又は温度の所定の範囲を外れると、ポリカーボネート組成物は透明性を大きく損なうことがある。
【0047】
耐アルカリガラス、重バリウムクラウンガラス、電気抵抗性グレードガラス、及び以上のガラスを1種以上含む組合せのようないろいろなガラスを使用することができる。有用なガラスのその他の例は、「E−ガラス」、「D−ガラス」、「R−ガラス」、フッ素を含まない及び/又はホウ素を含まないE−ガラス誘導体、などとして特定されるものであるが、上記の通り樹脂成分との屈折率一致基準を満たすことを条件とする。幾つかの特定のガラスの様々な成分の量(重量パーセント)を次の表1に示す。
【0048】
【表1】

ガラスは、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、及びホウ酸からなる群から選択される1種以上の化合物を本質的に含まないホウケイ酸塩ガラスであり得る。1つの実施形態において、ガラスは、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、又はホウ酸のいずれかを約1wt%未満含有するホウケイ酸塩ガラスである。別の実施形態において、ガラスは、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、及びホウ酸のいずれか2種を約1wt%未満含有するホウケイ酸塩ガラスである。別の実施形態において、ガラスは、約1wt%未満の酸化アルミニウム、約1wt%未満の酸化ホウ素、及び約1wt%未満のホウ酸を含有するホウケイ酸塩ガラスである。特定のタイプのホウケイ酸塩ガラスにおいて、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、及びホウ酸の総重量はガラスの総重量の約1wt%未満である。
【0049】
別の実施形態において、ガラスは約10wt%以上の酸化ジルコニウム(「ジルコニア」)を含有する。高い割合のジルコニア、例えば約15wt%より多くのジルコニアを有するガラスは、屈折率の一致及びCTEの低下から望ましいことがある。このガラスは約10〜約25wt%のジルコニア、又は約18〜約45wt%のジルコニアを含み得る。1つの適切な酸化ジルコニウムガラスは、Nippon Electric Glassから商標名ARG繊維(GAP−50)としてミルドファイバーの形態で入手可能である。このガラスは、比重が2.72で、屈折率が587.56ナノメートル(nm)で1.594であり、引張強さが1.4GPa、最大伸び率が4〜2%であり、80℃の飽和セメント溶液中90時間のアルカリ耐性を示し、その際の重量損失が0.8%である。その組成は、61wt%のSiO、17.5wt%の(NaO+KO+LiO)、19.5wt%のZrO、及び2wt%の(TiO+Fe)からなると考えられる。アルミナ及びホウ素−含有成分は実質的に含まない。
【0050】
一般に使用できるガラスの量は、総充填材含有ポリカーボネート組成物(樹脂成分、ガラス、及びその他以下に記載する任意の添加剤)の合計重量を基準にして約0.05〜約50wt%、特定的には約1〜約30wt%、より特定的には約5〜約20wt%である。これらの範囲のガラスを外れると、ポリカーボネート組成物は高過ぎるCTEを有し得るか又は溶融加工処理するのが困難になり得る。一般に、ガラスは粒子状であり、ミルドファイバー、チョップトファイバー、粉末、フレーク、及び以上の形態を1種以上含む組合せの形態であり得る。屈折率の一致した物品の形状に特定の制限はなく、例えば、球状、円筒状、不規則、板状、又は繊維様でよい。
【0051】
ガラス物品の平均最大寸法は一般に、組成物の加工処理の間、すなわち、物品の形成に適切な形態に組成物を製造する間に起こり得るあらゆる破壊又はその他の大きさの低下を考慮して、充填材含有ポリカーボネート組成物に所望のバランスのとれた光学的及び物理的特性を提供するように選択される。例えば、繊維状形態の場合、ガラスは、加工処理後のアスペクト比(繊維の長さ対直径の平均比(L/d))が約60以下となるように選択される。この加工処理後の比はさらに約4〜約50、特定的には約10〜約40、より特定的には約20〜約30であり得る。繊維状形態の適切な平均直径は、約1〜約24マイクロメートル、特定的には約5〜約22マイクロメートル、より特定的には約10〜約13マイクロメートルであり得る。非円形繊維断面の使用が可能である。その他の粒子形状の場合、ガラスの加工処理後の平均最大直径は約1〜約20マイクロメートル、特定的には約3〜約15マイクロメートル、より特定的には約4〜約14マイクロメートルであり得る。二峰性又はそれ以上の粒径分布も使用できる。長めのアスペクト比は短めの繊維より良好な機械的特性を提供することが多いが、フィルムの望ましくない異方性も生じ得る。幾つかの場合には、ミルドグラスファイバーが良好なバランスの特性を提供する。ガラス形状の混合物、例えば繊維及びフレークの混合物も、有利に使用することができる。
【0052】
ガラスは、標準プロセス、例えば蒸気若しくは空気吹き付け、火炎吹き付け又は機械的引張によって製造することができる。ガラス繊維はハンマーミルにかけて様々な大きさのより小さい繊維にすることができる。ガラスフレークは幾つかのプロセス、例えばガラスの泡を粉砕することにより製造できる。ポリカーボネートの強化に使用するガラス繊維は、機械的引張によって作成されることが多い。1つの実施形態において、ガラス繊維は全電気式の溶融炉系で作成される。
【0053】
さらに、ガラスの表面の少なくとも一部分を不動態化すると、バックライト式ディフューザーフィルムのような用途に望まれるバランスのとれた特性に寄与することができるということが判明した。すなわち、不動態化されたガラスを使用すると、改良された溶融安定性を有しつつ、それでも上記物理的特性の独特な組合せを維持するポリカーボネート組成物が得られる。いかなるメカニズムにも限定されることはないが、不動態化剤が屈折率の一致したガラス内の部位と化学的に反応して、ポリカーボネートの劣化を生じる反応に対して不活性にすると考えられる。
【0054】
不動態化剤は、樹脂成分、特にポリカーボネートとの相溶性、及びガラス表面上の樹脂の分解に寄与し得る活性部位を不活性化する能力に関して選択される。これは、一般にガラスとマトリックスとの反応性を増大させて例えば接着を改良するために選択されている標準的なガラス処理と対照的である。この不動態化プロセスにより、改良された接着(例えば改良された浸潤に基づく)及び改良された溶融安定性が得られ得るが、それは不動態化の主要な目的ではない。さらに、不動態化剤のタイプと量は、充填材含有ポリカーボネート組成物の光学的特性及びCTEに大きな悪影響を及ぼすことがないように選択される。
【0055】
1つの実施形態において、不動態化剤はシラン、すなわちケイ素−水素結合を有する化合物である。適切な不動態化剤としては、例えば次の一般式(10)及び(11)のシラン化合物がある。
【0056】
【化10】

式中、mは1以上であり、mとnの合計は1〜約10000に等しく、m+pは3〜約1000であり、RとRは各々独立して水素、アルキル、アリール、アルキルアリール、アルコキシ、アリールオキシ、ハロアルキル、ハロアリール、及びハロアルキルアリールであり、RとRは各々独立してアルキル、アリール、アルキルアリール、アルコキシ、アリールオキシ、ハロアルキル、ハロアリール、及びハロアルキルアリールであり、Rはトリアルキルシリル、アリールアルキルシリル、トリアリールシリル、水素、アルキル、アリール、アルキルアリール、ハロアルキル、ハロアリール又はハロアルキルアリールである。
【0057】
式(10)の幾つかの場合、RとRは各々独立して水素、メチル、エチル、プロピル、トリフルオロプロピル、フェニル、エチルフェニル、メトキシ、エトキシ、及びフェノキシでよく、RとRは各々独立してメチル、エチル、プロピル、トリフルオロプロピル、フェニル、エチルフェニル、メトキシ、エトキシ、及びフェノキシであり、Rは水素、メチル、エチル、プロピル、トリフルオロプロピル、フェニル、若しくはエチルフェニルである。式(11)の幾つかの場合、Rは水素、メチル、エチル、プロピル、トリフルオロプロピル、フェニル、又はエチルフェニルでよく、RとRは各々独立してメチル、エチル、プロピル、トリフルオロプロピル、フェニル、エチルフェニル、メトキシ、エトキシ、及びフェノキシである。不動態化剤の混合物も使用できる。適切な不動態化剤は、商標名DF1040でGE Siliconesから入手可能なシリコーン流体であり、これは式10でRとRがメチルであり、Rがトリメチルシリルであり、n=0、m=約16であるトリメチルシリル末端停止メチル水素シリコーンである。
【0058】
式(10)と(11)で記述されるもののような水素化ケイ素不動態化剤の分子量と量を慎重に調節すると、改良された溶融安定性と優れた光学的及び物理的特性とを有する組成物が得られることが判明した。過度に高い分子量を有する不動態化剤を過度に多く使用すると、溶融安定性が増大し得るが曇り率も増大する。対照的に、不動態化剤の分子量を過度に下げると、その不動態化剤は揮発性になり過ぎることがあり、標準的な加工処理温度、例えば300℃で機械装置から漏洩する。1つの実施形態で、不動態化剤のタイプ、量、及び分子量は、曇り率が約20%未満でガラス転移温度(Tg)が約120℃より高い組成物が得られるように選択される。さらにまた、不動態化剤のタイプ、量、及び分子量は、組成物の所望の色を維持するように、すなわち、組成物の色を約10ΔE単位未満、特定的には5ΔE単位未満だけシフトするように選択することができる。
【0059】
これらの結果を達成するために、シラン化合物は一般に、分子量が約100〜約10000、特定的には約200〜約5000、より特定的には約200〜約1000絶対分子量である。1つの可能な実施形態において、式10と11でm+n=3〜約100で、m+p=3〜約50である化合物は、低めの揮発性を提供するのに望ましいがそれでも良好な光学特性を保持するのに十分な低い分子量を有し得る。シラン化合物は、分子量約500で充填材含有ポリカーボネート組成物の約0.001〜約5.0wt%の量で、特定的には分子量約500で充填材含有ポリカーボネート組成物の約0.001〜約1.0wt%の量で、より特定的には分子量約500で充填材含有ポリカーボネート組成物の約0.01〜約0.5wt%の量で使用することができる。シラン不動態化技術を使用する幾つかの場合、組成物は、約300℃で溶融加工処理後、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定して、その元の重量平均分子量(Mw)の約70%以上を保持する。
【0060】
ガラスを不動態化剤で処理する方法は様々であり、当業者には公知である。ガラスを処理する1つの特定の局面において、幾つかの物品、例えばフィラメントは、形成と同時に不動態化剤で処理し、次いで束にしていわゆるストランドにすることができる。また、このストランド自体を最初にフィラメントから形成した後に不動態化剤で処理してもよい。別の実施形態においては、以下に記載するように充填材含有ポリカーボネート組成物の加工処理中に不動態化剤を加える。多くの場合、殊にフレーク形態のミル加工した粉末で使用するとき、ガラスは、ポリカーボネート樹脂と共にメルトブレンドする前に不動態化剤と一緒にブレンドしてもよい。
【0061】
ポリカーボネート組成物は、当技術分野で普通に利用できる方法で製造することができ、例えば、1つの実施形態においては、粉末化されたポリカーボネート樹脂、ガラス、及びその他任意の成分(不動態化剤を含む)を最初に、例えばHenschel高速ミキサー若しくは塗料震盪機でブレンドする。手練り又はタンブルブレンドのような他の低剪断プロセスを使用することもできる。
【0062】
このブレンドはその後、ホッパーを介して押出機の喉部(供給口)に供給することができる。押出機は一般に、組成物を流動させるのに必要な温度より高い温度で作動させる。標準の溶融加工処理条件、例えば250〜350℃の温度、特定的には275〜300℃の温度で50〜400回転/分(rpm)、特定的には100〜300rpmのスクリュースピードを使用することができる。加工処理は単軸式若しくは二軸式押出機又は他の加工処理装置で行うことができる。真空脱気は、混合前の成分の乾燥と同様に有益であることが多い。不動態化剤はコンパウンディング中計量して混合装置中に導入するとよい。また、1種以上の成分を、喉部及び/又は下流で側部供給器を介して直接押出機に供給することによって組成物中に混入してもよい。添加剤(不動態化剤を含めて)はまた、ガラスと共にマスターバッチにコンパウンディングし、押出機中に供給してもよい。
【0063】
この押出物は、一般に水浴で即座にクエンチし、ペレット化する。このようにして押出物を切断したときに生成するペレットは、長さが約1/4インチ(6.35ミリメートル(mm))以下であり得、ブレンド組成物中に均一に分散した微細に分割したガラスを含有する。かかるペレットはその後の成形、賦形、又は造形に使用することができる。
【0064】
ガラスと樹脂成分(ポリカーボネート及び他の任意のポリマー)に加えて、ポリカーボネート組成物は、さらに、このタイプの樹脂組成物に通常混入される様々な成分及び他の添加剤、例えば衝撃改良剤、充填材、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、離型剤、潤滑剤、難燃剤、ドリップ抑制剤、など、及び様々なタイプの添加剤の組合せを含んでいてもよい。かかる成分及び添加剤のタイプと量は、以下により詳細に説明するように組成物の所望の特性、特に曇り率、透明性、及び熱膨張率に大きな悪影響を及ぼさないように選択されるものと了解されたい。
【0065】
適切な熱安定剤としては、例えば、ホスファイト、ホスホナイト、ホスファイト、ホスホナイトの混合物、ヒンダードフェノール系酸化防止剤及び以上の熱安定剤を1種以上含む組合せがある。熱安定剤は一般に樹脂成分の100重量部を基準にして約0.001〜約1.0重量部の量で存在する。
【0066】
適切な酸化防止剤としては、例えば、ホスホネート類、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリトリトールジホスファイトなどのような有機ホスファイト類、アルキル化モノフェノール若しくはポリフェノール類、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、などのようなポリフェノールとジエンのアルキル化反応生成物、パラ−クレゾール若しくはジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物、アルキル化ヒドロキノン類、ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル類、アルキリデン−ビスフェノール類、ベンジル化合物、β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオン酸と一価若しくは多価アルコールのエステル、β−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−プロピオン酸と一価若しくは多価アルコールのエステル、ジステアリルチオプロピオネート、ジラウリルチオプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリトリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどのようなチオアルキル若しくはチオアリール化合物のエステル、β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオン酸などのアミド、又は以上の酸化防止剤を1種以上含む組合せがある。酸化防止剤は一般に樹脂成分の100重量部を基準にして約0.001〜約1.0重量部の量で使用する。
【0067】
適切な光安定剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール及び2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンなどのようなベンゾトリアゾール類、又は以上の光安定剤を1種以上含む組合せがある。光安定剤は一般に樹脂成分の100重量部を基準にして約0.1〜約10.0重量部の量で使用する。
【0068】
適切な帯電防止剤としては、例えば、グリセロールモノステアレート、ステアリルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなど、又は以上の帯電防止剤の組合せがある。1つの例において、フッ素化アルキルスルホン酸のホスホニウム塩を使用できる。スルホン酸ホスホニウムはフッ素化スルホン酸ホスホニウムであり得、有機スルホン酸陰イオンと有機ホスホニウム陽イオンを含有するフルオロカーボンからなる。かかる有機スルホン酸陰イオンの例としては、ペルフルオロメタンスルホン酸、ペルフルオロブタンスルホン酸、ペルフルオロヘキサンスルホン酸、ペルフルオロヘプタンスルホン酸、及びペルフルオロオクタンスルホン酸がある。前記ホスホニウム陽イオンの例としては、テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、トリエチルメチルホスホニウム、トリブチルメチルホスホニウム、トリブチルエチルホスホニウム、トリオクチルメチルホスホニウム、トリメチルブチルホスホニウム トリメチルオクチルホスホニウム、トリメチルラウリルホスホニウム、トリメチルステアリルホスホニウム、トリエチルオクチルホスホニウムのような脂肪族ホスホニウム、及びテトラフェニルホスホニウム、トリフェニルメチルホスホニウム、トリフェニルベンジルホスホニウム、トリブチルベンジルホスホニウムのような芳香族ホスホニウムがある。帯電防止剤は一般に樹脂成分の100重量部を基準にして約0.1〜約10重量部の量で使用される。
【0069】
適切な離型剤としては、例えば、ステアリルステアレート、ペンタエリトリトールテトラステアレート、蜜蝋、モンタンワックス、パラフィンワックス、など、又は以上の離型剤を1種以上含む組合せがある。離型剤は一般に樹脂成分の100重量部を基準にして約0.01〜約5.0重量部の量で使用される。
【0070】
適切なUV吸収剤としては、例えば、ヒドロキシベンゾフェノン類、ヒドロキシベンゾトリアゾール類、ヒドロキシベンゾトリアジン類、シアノアクリレート類、オキサニリド類、ベンゾキサジノン類、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノール(CYASORB 5411)、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン(CYASORB 531)、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)−フェノール(CYASORB 1164)、2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンゾキサジン−4−オン)(CYASORB UV−3638)、1,3−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[[(2−シアノ−3、3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパン(UVINUL 3030)、2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンゾキサジン−4−オン)、1,3−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパン、粒径が約100ナノメートル未満の酸化チタン、酸化セリウム、及び酸化亜鉛のようなナノサイズの無機物質、など、又は以上のUV吸収剤を1種以上含む組合せがある。かかるナノ粒子はまた、ポリカーボネートブレンドに良好な溶融安定性を付与するために、本明細書に記載したように不動態化する必要があることがある。UV吸収剤は一般に樹脂成分の100重量部を基準にして約0.10〜約0.35重量部の量で使用される。
【0071】
適切な潤滑剤としては、例えば、アルキルステアリルエステル(例えば、ステアリン酸メチルなど)のような脂肪酸エステル、ステアリン酸メチルとポリエチレングリコールポリマー、ポリプロピレングリコールポリマー、及びこれらのコポリマーからなる親水性及び疎水性界面活性剤の混合物、例えば、適切な溶媒中のステアリン酸メチル及びポリエチレン−ポリプロピレングリコールコポリマー、又は以上の潤滑剤を1種以上含む組合せがある。潤滑剤は一般に樹脂成分の100重量部を基準にして約0.1〜約5.0重量部の量で使用される。
【0072】
適切な染料としては、例えば、クマリン460(青)、クマリン6(緑)、ナイルレッドなどのような有機染料、ランタニド錯体、炭化水素及び置換炭化水素染料、多環式芳香族炭化水素、シンチレーション染料(好ましくはオキサゾール類及びオキサジアゾール類)、アリール−若しくはヘテロアリール−置換ポリ(2−8オレフィン)、カルボシアニン染料、フタロシアニン染料及び顔料、オキサジン染料、カルボスチリル染料、ポルフィリン染料、アクリジン染料、アントラキノン染料、アリールメタン染料、アゾ染料、ジアゾニウム染料、ニトロ染料、キノンイミン染料、テトラゾリウム染料、チアゾール染料、ペリレン染料、ペリノン染料、ビス−ベンゾキサゾリルチオフェン(BBOT)、及びキサンテン染料、近赤外波長で吸収し可視波長で放出するアンチストークスシフト染料、などのようなフルオロフォア、発光染料、例えば5−アミノ−9−ジエチルイミノベンゾ(a)フェノキサゾニウムペルクロレート、7−アミノ−4−メチルカルボスチリル、7−アミノ−4−メチルクマリン、3−(2’−ベンズイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン、3−(2’−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−(4−ビフェニル)−6−フェニルベンゾキサゾール−1,3、2,5−ビス−(4−ビフェニリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス−(4−ビフェニリル)−オキサゾール、4,4’−ビス−(2−ブチルオクチルオキシ)−p−クォーターフェニル、p−ビス(o−メチルスチリル)−ベンゼン、5,9−ジアミノベンゾ(a)フェノキサゾニウムペルクロレート、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン、1,1’−ジエチル−2,2’−カルボシアニンヨージド、3,3’−ジエチル−4,4’,5,5’−ジベンゾチアトリカルボシアニンヨージド、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン、7−ジエチルアミノ−4−トリフルオロメチルクマリン、2,2’−ジメチル−p−クォーターフェニル、2,2−ジメチル−p−ターフェニル、7−エチルアミノ−6−メチル−4−トリフルオロメチルクマリン、7−エチルアミノ−4−トリフルオロメチルクマリン、ナイルレッド、ローダミン700、オキサジン750、ローダミン800、IR 125、IR 144、IR 140、IR 132、IR 26、IR5、ジフェニルヘキサトリエン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、ナフタレン、アントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン、ピレン、クリセン、ルブレン、コロネン、フェナントレンなど、又は以上の染料を1種以上含む組合せがある。染料は、樹脂成分の100重量部を基準にして約0.001〜約3.0重量部の量で使用し得る。
【0073】
紫外光を吸収し可視青色光として放出する実質的に無色の蛍光性有機化合物である蛍光増白剤も存在し得る。例としては、限定されることはないが、4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸の誘導体のようなスチルベン類、ビスベンゾキサゾリルチオフェン類、例えばCiba GeigyのUVITEX OB、2,5−ビス(5−tert−ブチル−2−ベンゾキサゾリル)チオフェン、ClairantのCARTAX CXDPのようなオキサジノン、4−メチル−7−ジエチルアミノクマリンのようなクマリン誘導体、1,4−ビス(O−シアノスチリル)ベンゾール、及び2−アミノ−4−メチルフェノールがある。蛍光増白剤は、樹脂成分の100重量部を基準にして約0.001〜約3.0重量部の量で使用し得る。
【0074】
適切な難燃剤は、ペルフルオロアルキル基、リン、臭素、及び/又は塩素を含む有機化合物であり得る。ある種の特定の用途では規制上の理由から非臭素化及び非塩素化難燃剤好ましいことがある。存在する場合、リン含有難燃剤は樹脂成分の100重量部を基準にして約1.0〜約20重量部の量で存在し得る。
【0075】
様々な塩、例えば、ペルフルオロブタンスルホン酸カリウム(Rimar塩)及びジフェニルスルホンスルホン酸カリウム、並びに米国特許第3775367号などに記載されているペルフルオロアルカンスルホン酸塩のようなスルホン酸塩、又は、NaCO、KCO、MgCO、CaCO、及びBaCO、LiAlF、BaSiF、KBF、KAlF、KAlF、KSiF、NaAlF、などのようなアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム及びバリウム)塩を難燃剤として使用し得る。存在する場合、かかる難燃剤塩は、樹脂成分の100重量部を基準にして約0.001〜約1.0重量部、より特定的には約0.1〜約0.5重量部の量で使用し得る。
【0076】
本発明のポリカーボネート組成物を含んでなる賦形、造形、又は成形した物品も提供される。ポリカーボネート組成物は、射出成形、押出、回転成形、ブロー成形及び熱成形のような各種の手段によって有用な賦形物品に成形して、例えば、モニターのハウジングのようなコンピューター及び事務機器ハウジング、携帯電話のハウジングのような手持ち式の電子装置ハウジング、電気コネクター、及び照明器具の部品、装飾品、家庭用電気製品、屋根、温室、サンルーム、スイミングプールエンクロージャ、などのような物品を形成することができる。また、ポリカーボネート組成物は、バックライト式ディスプレイ並びに有機発光ダイオード、広告用ディスプレイ、スコアボード、事務機器ディスプレイ、電子ゲームディスプレイ、医療用機器ディスプレイ、及び電話のようなその他の装置といった用途に使用できる。
【0077】
本ポリカーボネート組成物は一般に透明であり、すなわち、低い曇り率と高い透過率を有する。当技術分野で公知のように、多くの公知の添加剤は透明性に多大な悪影響を及ぼすので、透明な組成物を得ることは困難である。組成物の曇り率はASTM D 1003に従って測定し、次式(i)を用いて計算することができる。
曇り率%=100×全拡散透過/全透過 (i)
式(i)で、全透過は合計した透過であり、全拡散透過はフィルムにより散乱された光透過である。本ポリカーボネート組成物は約20%未満、特定的には約15%未満、より特定的には約10%の曇り率を有する。ここで、この割合は上記のように計算される。これらの曇り率範囲を外れると、ポリカーボネートは充分に透明であるとはいえない。
【0078】
加えて、ポリカーボネート組成物は約70%より大きく、特定的には約80%より大きく、より特定的には約88%より大きい全光透過率を有する。透過率(%T)は3.2mmの射出成形部品に対してASTM D1003に従って測定することができる。これらの曇り率と透過の範囲を外れると、ポリカーボネートは充分に透明とはいえなくなる。1つの実施形態において、有用な温度範囲、すなわち、一般に約0〜約100℃、特定的には約0〜約80℃、又は約20〜約70℃で約20%未満の曇り率及び約80%より大きい透過率を維持する。
【0079】
場合により、透明性に加えて、ポリカーボネート組成物は約10未満、特定的には約5未満の黄色度を有し得る。黄色度(YI)はASTM法D1925に従って3.2mmの射出成形したチップに対して測定することができる。
【0080】
熱膨張率(CTE)は、単位温度上昇に対する長さの増大する割合である。当技術分野で正確な定義は、精密な温度で規定するか(真の熱膨張率)又はある温度範囲に渡って規定するか(平均の熱膨張率)に応じて変動する。本発明では、平均の熱膨張率を使用する。平均熱膨張率のために使用した温度範囲は20〜70℃である。一般に、CTEは約20〜約70μm/m/℃で変化し得る。ある種の場合には、約15〜約40μm/m/℃であり得る。CTEはフィルム又は成形部品に対してASTM E831に記載されているように測定することができる。
【0081】
熱可塑性樹脂成分のCTEを調節すると平坦なフィルムの波立ちが低下すると考えられる。フィルム、特に光拡散フィルムを試験して、高温及び高レベルの相対湿度の条件に対するその堅牢性を評価することができる。例えば、140マイクロメートルの公称厚さを有するフィルムを製造し、15インチ(約38センチメートル)のバックライト式モジュールに使用するのに適切な幾つかの長方形の細片に切断する。こうして切断した2つのフィルムを各々、フィルムより大きい幅と長さを有するガラスプレートに載せる。ガラスプレート上のフィルムの端部の底の最大高さ(すなわち、平坦さからの偏り)を、1/100−インチ(0.254mm)のスケールを有する定規を用いて0.00インチとして測定した。次に、各フィルムを、3つの端部(2つの短い端部と1つの長い端部)でガラスプレートにテープで止める。これらのうちの1つ(セットA)を、温度が65℃に、相対湿度が95%に維持されたチャンバーに500時間入れる。残り(セットB)は、温度を85℃と−35℃(空気中の最小湿分含有量、例えば、相対湿度約60%以下)で変化させるチャンバーに入れ、一方の温度に1時間保った後20℃/分の速度でもう一方の温度に変化させる熱サイクル試験にかける。かかるサイクルを100回行う。
【0082】
各試験の完了後、セットをチャンバーから取り出し、22℃、50%相対湿度に14日間放置する。フィルムの端部からテープを取り、端部での平坦さからの最大の偏りを測定する。この試験で、本発明のフィルムは、ガラスプレート上に置いたとき端部で測定して平坦さからの最大偏りが約0.1インチ(約0.3センチメートル)以下、より特定的には約0.05インチ(約0.1センチメートル)以下、さらにより特定的には約0.02インチ(約0.05センチメートル)以下であることができる。ガラス充填材含有光拡散フィルムはまた、高熱、高湿又は上記の通りの熱サイクル試験後に測定して、0.1インチ(約0.3センチメートル)未満、より特定的には0.05インチ(約0.1センチメートル)未満、さらにより特定的には0.03インチ(約0.08センチメートル)未満の平坦さからの最大偏りを有することもできる。また、ガラス充填材含有光拡散フィルムは約0.2ミリメートル以下の平均欠陥大きさを有し、この平均欠陥は欠陥の大きい方の直径と欠陥の小さい方の直径の数平均である。
【0083】
以上の優れた光学的特性と改良された平坦さの組合せに加えて、本ポリカーボネート組成物はさらに良好な物理的及び機械的特性を有し得る。
【0084】
1つの特に有利な性質は溶融安定性であり、これは本明細書で使用する場合重量平均分子量に反映されるポリマーの分子量低下に対する耐性である。上記の通り低い熱膨張率に加えて、ポリカーボネート組成物は高温、例えば約250〜約350℃で改良された溶融安定性を有し得る。溶融安定性は、300℃で18分間(cm/10min)に渡る溶融粘度を同一条件で6分間に渡り測定した溶融粘度と比較するASTM D1238に従って溶融粘度指数を用いて決定することができる。初期の6分の溶融粘度値の約70%以上を300℃で18分後に保持するのが好ましい。ポリカーボネート組成物は300℃での溶融粘度指数が一般に約0.5〜約30cm/10min、又は約1.0〜約20.0cm/10min、又はさらに約5.0〜約15.0cm/10minであり得る。これらの溶融安定性の範囲を外れると、ポリカーボネートはフィルムに加工するのが困難になったり、又は機械的特性が悪くなったりする。秀でた溶融安定性を有するポリカーボネート組成物は300℃に約18分加熱した後その初期溶融粘度の約70%以上を保持する。また、充分な溶融安定性を有する組成物は300℃で18分間熱加工処理後ポリカーボネートの初期重量平均分子量の約30%未満、特定的には約25%未満、より特定的には約15%未満の分子量低下を示し得る。
【0085】
加えて、ポリカーボネート組成物はASTM D1238に従って300℃で測定して約0.5〜約30、より特定的には約1.0〜約20cm/10分のメルトボリュームレイショ(MVR)を有し得る。
【0086】
本ポリカーボネート組成物はさらにASTM D 648に従って3.2mmのバーに対して0.45Mpaで測定して約120〜約170℃、又は約130〜約150℃の加熱撓み温度(HDT)を有し得る。
【0087】
ポリカーボネート組成物はさらにASTM D256に従って3.2mmのバーを用いて23℃で測定して約50〜約200ジュール/メートル(J/m)、特定的には約100〜約150J/mのノッチ付きアイゾット衝撃(NII)を有し得る。
【0088】
ポリカーボネート組成物の曲げ弾性率は一般にASTM D790に従って3.2mmのバーを用いて23℃で測定して約2500〜約10000MPaであり得る。充填材含有ポリカーボネート組成物はフィルム、特定的には光学品質のフィルム、より特定的には光学品質の平坦なフィルムを形成するのに使用できる。かかるフィルムはディフューザーフィルムとして有用である。
【0089】
フィルムは、フィルム及びシート押出、射出成形、ガスアシスト射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、及び以上のプロセスを1種以上含む組合せのようなプロセスによって形成することができる。フィルム及びシート押出プロセスとしては、限定されることはないが、溶融キャスティング、ブローフィルム押出及びカレンダリングを挙げることができる。共押出及び積層プロセスを使用して組成物を多層フィルム又はシートに形成することもできる。さらに、単層又は多層の基材に単層又は多層のコーティングを設けて引っ掻き耐性、紫外光耐性、審美的アピール、などのような追加の特性を付与することができる。コーティングはロール塗り、スプレイ、浸漬、ブラシ塗り、流し塗り、又は以上の塗装技術を1種以上含む組合せのような標準的な施工技術によって施すことができる。本発明のフィルム及びシートはまた、適切な溶媒中の組成物の溶液又は懸濁液を基材、ベルト又はロール上にキャストした後溶媒を除去することによっても製造できる。
【0090】
配向ガラス充填材含有PCフィルムは、ブローフィルム押出によるか、又は標準的な延伸技術を用いてキャスト若しくはカレンダーフィルムを熱変形温度の付近で延伸することによって製造することができる。例えば、多軸同時延伸にはラジアル延伸パンタグラフを使用することができ、x−y方向延伸パンタグラフを用いて平面x−y方向に同時若しくは逐次延伸することができる。逐次一軸延伸セクションを有する装置、例えば、機械方向に延伸するための差動スピードロールのセクションと、横断方向に延伸するためのテンターフレームセクションとを備えた機械を用いて一軸及び二軸延伸を達成することもできる。
【0091】
1つの実施形態において、薄いフィルムは約0.01〜約3.0ミリメートル(mm)、特定的には約0.1〜約1.0mm、より特定的には0.1〜0.5mmの厚さを有し得る。この薄いフィルムは、バックライト式モジュールディスプレイ、より特定的には波立ちの量が低減したバックライト式モジュールディスプレイに使用することができる。ポリカーボネートフィルムの低減した波立ちは熱膨張率の低下によって得られる。1つの実施形態において、充填材含有ポリカーボネートフィルムの熱膨張率はガラスを含まないフィルムと比べて約70%以下に低下する。充填材含有ポリカーボネート組成物を使用できるその他の装置としては、例えば、液晶TVスクリーン及びコンピューターディスプレイ並びに有機発光ダイオード用の可撓性基板がある。
【0092】
また、充填材含有ポリカーボネート組成物は以下のような多層シートを形成するのにも使用できる。すなわち、この多層シートは、第1の面と第2の面を有する第1のシートを含んでおり、この第1のシートは熱可塑性ポリマーからなり、第1のシートの第1の面が複数のリブの第1の面上に配置され、また多層シートは、第1の面と第2の面を有する第2のシートを含んでおり、この第2のシートは熱可塑性ポリマーからなり、第2のシートの第1の面は前記複数のリブの第2の面上に配置されており、前記複数のリブの第1の面は前記複数のリブの第2の面と対向している。この多層シートは、物品の所望の物理的特性を妨げないように構成される。
【0093】
上記フィルム及びシートを、限定されることはないが熱成形、真空造形、圧力造形、射出成形及び圧縮成形を始めとする造形及び成形プロセスによってさらに熱可塑的に加工処理して賦形された物品にする。多層賦形物品は、熱可塑性樹脂を単層または多層フィルムまたはシート基材上に射出成形することにより形成することができる。すなわち、まず最初に、場合により例えばスクリーン印刷または転写染料を用いて表面上に1以上の色を有していてもよい単層または多層の熱可塑性基材を準備し、例えば基材を三次元形状に形成しトリミングすることによりその基材を金型の形状に合わせ、その基材の三次元形状と一致する表面を有する金型内に基材を嵌め込み、その後金型キャビティー中のその基材の背後に熱熱可塑性樹脂を射出して、(i)一体となった永久に結合した三次元製品を製造するか、又は、(ii)パターン又は審美的効果を印刷された基材から射出された樹脂に転写し、その印刷された基材を取り出し、こうして審美的効果を成形された樹脂に付与する。
【0094】
当業者には分かるように、上記物品に対してさらに、限定されることはないがヒートセット、テクスチャー化、エンボス加工、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理及び蒸着を始めとする通常の硬化及び表面処理プロセスを施して、表面外観を変えたり、追加の機能性を物品に付与することもできる。
【0095】
屈折率の一致したガラスを含まないポリカーボネートと比べて、上記充填材含有ポリカーボネート組成物を使用することの幾つかの追加の利点は、充填材含有ポリカーボネート組成物がUV光に対して不透明であるのでUV耐性が改良されること、及び/又は、このガラスが熱可塑性樹脂成分のモジュラス、加熱撓み温度、難燃性、耐薬品性、及び/又は引っ掻き耐性を増大することであろう。
【実施例】
【0096】
以下の実施例は単なる例示であり、いかなる意味でも本発明の範囲を限定するものではない。
【0097】
典型的なプロセスは、ポリカーボネート樹脂、あらゆる添加剤、及びガラスをドライブレンドし、これを二軸式押出機でコンパウンディングし、ペレット化した後、そのペレットをフィルム押出することからなる。表2に、ドライブレンドの一般的な配合を示す。使用したポリカーボネート粉末は、Mwが約30000、300℃でのMVRが約7.0cm/10minであるGeneral ElectricのLEXAN(登録商標)105である。
【0098】
【表2】

以下の実施例で使用したガラスを表3に示す。表3で、「ARG」はホウ素化合物でアルミナを含まないミル加工したガラス、グレードARG、Nippon Electric Glass(NEG)Co.であり、「ECR」は耐食性ガラス繊維、Fiberex Co.であり、「DBC」は重バリウムクラウンガラス、Pilkington Co.であり、「Eガラス」はホウケイ酸塩ガラス繊維、PPG Co.若しくはNEG、又はミル加工したホウケイ酸塩ガラス、Owens Corning(OC)Co.である。
【0099】
【表3】

試料は、アスペクト比、長さ/直径を29としたW−P 30mm(1.18インチ)二軸式押出機を用いて調製した。バレル温度は480〜550°F(249〜288℃)で、ダイ温度は550°F(288℃)であった。スクリュースピードは30rpm、スクリュートルクは80%に設定した。
【0100】
コンパウンディングしペレット化した後試料を、Mega Machineryカレンダーライン(単軸式押出機、フィルムダイ、及びカレンダーロールスタック)を有するKillion単軸式押出機を用いてフィルムに押し出して、樹脂バッチを艶消し/艶出し又は艶出し/艶出しテクスチャーを有するフィルムに押し出した。作動条件は、バレルゾーン温度が480〜590°F(249〜310℃)、ダイゾーン温度が580〜590°F(304〜310℃)、スクリュースピードが30rpm、ダイ幅が16インチ(406mm)であった。艶消し/艶出しテクスチャーの製造には、カレンダーロール構成を以下のようにした。ロール位置1は、厚さ0.375インチ(9.525mm)のテクスチャー化(40マイクロインチ(0.04ミル)Ra公称)シリコーンゴムを用い、或いはロール位置2に、クロムメッキロール温度が210〜284°F(100〜140℃)で、ゴムロール温度が120〜140°F(49〜60℃)の艶出しクロムメッキスチールロールを用い、フィルム厚さを0.005〜0.012インチ(0.127〜0.305mm)とした。或いは、艶出しクロムスチールロールをロール1とロール2の位置の両方に用いて艶出し/艶出しテクスチャーを製造した。
【0101】
試料を分析したところ、ガラスを使用すると熱膨張率が小さくなることが分かった。5wt%以上及びアスペクト比4以上のガラスを充填すると、熱膨張率が大きく低下し、その結果、純粋なポリカーボネート作成された現在のフィルムと比較して、バックライト式モジュール構成のフィルムの波立ち性が大幅に改良されることが判明した。
【0102】
図1に、様々なガラスをポリカーボネートに添加したときのガラス充填率による熱膨張率の低下を示す。熱膨張率の低下は、図2に示されているように、14−インチ(355.6mm)のノート型バックライト式モジュール構成における組成物フィルムの波立ち性の改良につながる。図2で、14−インチのバックライト式モジュール(光導波パイプ)の上に直接ディフューザーフィルムによって形成された波の数は、ミル加工及びチョップトガラスファイバーの両方でガラスの充填率が増大すると共に低下する。表4に、表3に記載したガラスの幾つかを用いて、トップディフューザーフィルムにより形成され15−インチ(381mm)のノート型ディスプレイのLCDパネルを通して目に見える波の数を示す。
【0103】
【表4】

表4は、アスペクト比4以上のガラスを5wt%以上充填した試料が最良の改良を与えることを示しており、LCDパネルを通して目に見える波立ちはない。
【0104】
図3と4に、厚さ12ミル(305マイクロメートル)の艶出し/艶出しフィルムに対する曇り率と全透過率を示す。押し出したフィルムを、Greenerd Hydrolair Model CPA−50プレスにて2000psi(13.8MPa)の圧力、525°F(274℃)の温度で圧縮した。押し出したフィルムを1分間0psiで予熱した後、1分間2000psi(13.8MPa)で圧縮成形し、1分間2000psi(13.8MPa)で冷却した。
【0105】
測定は、BYK−GardnerのBYK Gardner Haze−Gard Plus器具を用いて行った。曇り率値は、ポリカーボネートとガラスの屈折率の差が0.01未満になると(503−K−275、DBC589及びGAP−50)大幅に低下する。最良の結果はGAP−50ガラスで得られ、この場合曇り率は20%もの高い充填率でも5%未満に留まる。予測される測定曇り率は、前記のように計算される。ここで、全透過は合計した透過であり、拡散透過はASTM D 1003に定義されているようにフィルムにより散乱した光透過である。
【0106】
表5に挙げるディフューザーフィルムは各々が異なる屈折率を有する3つのタイプのガラスで強化されている。すなわち、Eチョップトファイバー(n=1.550)、ECRチョップトファイバー(n=1.576)、及びDBC粉末(n=1.589)である。ECRチョップトファイバーは、ガラスなしのポリカーボネートと比較したとき、20wt%の充填率でも輝度の低下を示さない。ECRチョップトファイバーとEチョップトファイバーとを比較すると、高い輝度を維持する上での屈折率の重要性が示される。DBC粉末は例外である。すなわち、このガラスを含有する試料は、ポリカーボネートの分解に伴う変色を示した(DBC粉末20wt%充填でポリカーボネートの分子量が35%低下)。これはまた、このガラスに対する図4において透過率でも低下を生じた。
【0107】
表5に、様々な充填材含有ポリカーボネートフィルムの輝度と、ガラスを含有しない市販されているポリカーボネートフィルムの輝度との比を示す。
【0108】
【表5】

ECRチョップトファイバーは、ガラスなしのポリカーボネートと比較したとき20wt%の充填率でも輝度の低下を示さない。DBC粉末試料は、ポリカーボネートの分解に伴う変色を示した(DBC粉末20wt%の充填率でポリカーボネートの分子量が35%低下)。これはまた、このガラスに対する図4において透過率にも低下を生じた。
【0109】
耐アルカリガラスを含有するポリカーボネート組成物で作成したフィルムを、商業用液晶ディスプレイ(モデルLP121X04(A2)、LG Philips製)で事前のトップディフューザーフィルムの代わりに配置することによって、そのトップディフューザーとしての使用に対する適性を評価した。Eldim EZ Contrast 160D器具を用いて、ゼロ度の視角(すなわち、軸上)で輝度を測定した(液晶パネルは除いた)ところ、商業用トップディフューザー、DL4248、GE Structured Products製、米国特許出願第10/787158号に記載、を用いて得られる値の100.7%であることが判明した。従って、輝度は、商業用トップディフューザーで測定される値の90%以上であった。
【0110】
耐アルカリガラスを使用するとペレット中、及びその充填材含有ポリカーボネート組成物で作成したフィルムに空隙及び/又は泡が生じ得ることが観測された。General Electric Companyから入手可能なDF1040、すなわちヒドロキシル末端停止ポリジメチル水素シロキサンでガラスを処理することによって、空隙及び/又は泡の生成が防止された。下記表6に、ガラス−保護ポリカーボネート上の小量のDF1040不動態化で示された分子量とメルトボリュームレートの結果を示す。表6に示されているように、非不動態化ガラス充填材含有PC(実施例2−7)に対する6min及び18minにおけるMVRの値(それぞれ15.8及び15.4cm/10min)は、DF1040不動態化により調製した他の全てのバッチより高い。6分の加熱期間中でもかなりの分解が起こっていた。DF581は水素化ケイ素基をもたないヒドロキシル末端停止ポリジメチルシロキサンである。
【0111】
【表6】

上記データから、DF581は単独で使用すると(実施例2−5)DF1040程には有効でないことが分かる。実施例2−5では、DF1040を単独で用いたバッチ(例えば、実施例2−1)より比較的高いMVR値(11.9cm/10分)が得られた。
【0112】
表7に、不動態化ガラス充填材含有ポリカーボネートフィルム試料(ポリカーボネート中9wt%ガラス)の曇り率と透過率の値を、非不動態化ガラスと比較して、ガラス上のDF1040の割合の関数として示す。
【0113】
【表7】

DF1040を2wt%以上の量で使用したときに透明性の損失が認められ、不動態化ガラスを含有するコンパウンディングしたペレットは白色で不透明色であった。しかし、表7に示したように、より少ない量のDF1040を例えば1〜0.125wt%使用したときは、曇り率と透過率の変化がずっと少なかった。良好な曇り率と透過率は0.125wt%のDF1040で得られた。この濃度での不動態化は非不動態化ガラスと比較して曇り率が0.5%増大し、透過率が0.27%変化しただけだった。これらの結果は、耐アルカリガラスのDF1040による不動態化が、フィルムの透明性を損なうことなくポリカーボネートの溶融分解を防ぐのに、少なめの濃度(ガラス表面上0.25wt%以下)で極めて有効であることを示している。
【0114】
現在の商業用トップディフューザーフィルムと比較してガラス充填材含有フィルムの性能を評価するために、ガラス充填材含有フィルムがBYK Gardner機の光源に面するように充填材含有フィルムを商業用フィルムの背後に配置することによって、ポリカーボネートフィルムの曇り率と透過率を測定した。また、表8に示すように比較のために、耐アルカリガラス充填材含有ポリカーボネートフィルムを単層フィルムとして曇り率と透過率を測定した。屈折率が一致する液体を用いて、フィルム間の空気間隙に起因する測定誤差を防いだ。表8に、単層及び二層フィルム形状としての耐アルカリガラス充填材含有ポリカーボネートフィルムの透過率(T)と曇り率(H)をGEトップディフューザーフィルムと比較して示す。
【0115】
【表8】

表8に挙げた結果は、ARGガラスが透過率と曇り率の値に大きく影響しなかったことを示している。トップ光−拡散フィルム、すなわち、液晶ディスプレイに最も近い光−拡散フィルムは、一般に85%以下の曇り率の値、特に50%以下の曇り率の値を有することに注意されたい。従って、曇り率と透過率の変化はLCD用途におけるフィルムの光学特性を変化させないように十分に小さい。
【0116】
樹脂の分子量(メルトフローレート)、従ってフィルムの加工処理条件は、フィルムの最終特性に対してある役割を有することに注意されたい。例えば、表8に示されているように、実験番号5は耐アルカリガラスを含有する(ポリカーボネート中5wt%ガラス)最も曇り率の低いフィルムである(曇り率の値5.7%、熱膨張率62ppm μm/m/℃)。これの製造には、高い流動性(小さめの分子量でメルトフローインデックスが17.5cm/10min)のポリカーボネート樹脂を用い、低いダイ温度(480°F、249℃)、クロムロール温度280°F(138℃)で、スクリュー速度20.0rpm、溶融体圧力950psiとした。同様に、実験番号10は標準のポリカーボネート樹脂(メルトフローインデックス7.5cm/10min)であり、480°F(249℃)のダイ温度、低めのロール温度210°F(99℃)、及び大きめのスクリュー速度60rpmで製造した。実験番号10で製造したフィルムは低めの熱膨張率をもっていたが、実験番号5より比較的高めの曇り率をもっていた(CTE:48μm/m/℃、単一フィルム曇り率14.6%)。
【0117】
単数形態は、前後関係から明らかに他の意味を示さない限り、複数形態も含む。同一の量、性質、又は特性に関する全ての範囲はその終点を含んでおり、また独立して組合せ可能である。引用した文献は全て援用により本明細書の内容の一部をなす。
【0118】
代表的な実施形態に関連して本発明の組成物を説明して来たが、当業者には了解されるように、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更をなすことができ、またその要素を等価なもので置換することができる。加えて、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるために、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく多くの修正を施すことができる。 従って、本発明は、本発明を実施する上で考えられる最良の形態として開示した特定の実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲に入る全ての実施形態を包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】図1は、ガラスの充填量が増大するときのインフロー熱膨張率の変化を示すグラフである。
【図2】図2は、ガラスの充填量が増大するときの、LCDパネルのないバックライト式モジュール上に直接ディフューザーフィルムにより形成された波の数を示すグラフである。
【図3】図3は、ガラスの充填量が増大するときの、各種のフィルムにおける曇り率の光学的特性決定の結果を示すグラフである。
【図4】図4は、ガラスの充填量が増大するときの、各種のフィルムにおける透過率の光学的特性決定の結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネートを含む熱可塑性樹脂成分と、
熱可塑性樹脂成分の0.04以内の屈折率を有するガラスと
の混合物を含んでなるフィルムであって、フィルム組成物が、約20%未満の曇り率、約70%より大きい全透過率、及び20〜70℃の温度範囲に渡って測定して約20〜約70μm/m/℃の熱膨張率を有する、前記フィルム。
【請求項2】
フィルムが約0.01〜約3.0mmの厚さを有する、請求項1記載のフィルム。
【請求項3】
ポリカーボネート組成物が約10未満の黄色度を有する、請求項1記載のフィルム。
【請求項4】
約2500MPa以上の曲げ弾性率を有する、請求項1記載のフィルム。
【請求項5】
ガラスが、アルミニウム酸化物、ホウ素酸化物、ホウ酸及び以上のものを1種以上含む組合せからなる群から選択される化合物を本質的に含まない、請求項1記載のフィルム。
【請求項6】
ガラスが約10wt%より多くのジルコニアを含有する、請求項1記載のフィルム。
【請求項7】
ガラスが、アルミニウム酸化物、ホウ素酸化物、ホウ酸及び以上のものを1種以上含む組合せからなる群から選択される化合物を本質的に含まず、さらに、ガラスが約10wt%より多くのジルコニアを含有する、請求項1記載のフィルム。
【請求項8】
ガラスが耐アルカリガラス、重バリウムクラウンガラス、電気抵抗性グレードガラス、又は以上のガラスを1種以上含む組合せである、請求項1記載のフィルム。
【請求項9】
ガラスが耐アルカリガラスである、請求項1記載のフィルム。
【請求項10】
ガラスがミルドファイバー、チョップトファイバー、粉末、フレーク又は以上の形態を1種以上含む組合せの形態である、請求項1記載のフィルム。
【請求項11】
ガラスが、約4より大きく約60未満のアスペクト比を有する、請求項1記載のフィルム。
【請求項12】
フィルムの総重量を基準にして約50〜約99.5wt%の熱熱可塑性樹脂及び約0.05〜50wt%のガラスを含む、請求項1記載のフィルム。
【請求項13】
ガラスが不動態化されている、請求項1記載のフィルム。
【請求項14】
不動態化剤が水素化ケイ素官能基を含有する、請求項13記載のフィルム。
【請求項15】
水素化ケイ素官能基を含有する不動態化剤がフィルムの0.001〜約1.0wt%で存在する、請求項15記載のフィルム。
【請求項16】
不動態化剤が次式(10)又は(11)のものである、請求項14記載のフィルム。
【化1】

式中、mは1以上であり、m及びnの合計は1〜10000に等しく、m+pは3〜約1000であり、R及びRは各々独立して水素、アルキル、アリール、アルキルアリール、アルコキシ、アリールオキシ、ハロアルキル、ハロアリール、及びハロアルキルアリールであり、R及びRは各々独立してアルキル、アリール、アルキルアリール、アルコキシ、アリールオキシ、ハロアルキル、ハロアリール、及びハロアルキルアリールであり、Rはトリアルキルシリル、アリールアルキルシリル、トリアリールシリル、水素、アルキル、アリール、アルキルアリール、ハロアルキル、ハロアリール又はハロアルキルアリールである。
【請求項17】
ヒドリド官能基を有するシリコーンが次式(10)又は(11)のものである、請求項14記載のフィルム。
【化2】

式中、m+n=3〜約100であり、m+p=3〜約50である。
【請求項18】
請求項1記載のフィルムを含んでなる物品。
【請求項19】
請求項1記載のフィルムを含んでなるバックライト式モジュール。
【請求項20】
ポリカーボネートを含む熱可塑性樹脂成分と、
熱可塑性樹脂成分の0.04以内の屈折率を有するガラスと
の混合物を含んでなるポリカーボネート組成物であって、約20%未満の曇り率、約70%より大きい全透過率、20〜70℃の温度範囲に渡って測定して約20〜約70μm/m/℃の熱膨張率、及びASTM D1238に従って300℃で測定して約0.5〜約30.0cm/10minの溶融粘度を有する、前記ポリカーボネート組成物。
【請求項21】
ガラスが不動態化されている、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
不動態化剤が水素化ケイ素官能基を含有する、請求項20記載の組成物。
【請求項23】
水素化ケイ素官能基を含有する不動態化剤が組成物の0.001〜約1.0wt%で存在する、請求項20記載の組成物。
【請求項24】
不動態化剤が次式(10)又は(11)のものである、請求項20記載の組成物。
【化3】

式中、mは1以上であり、m及びnの合計は1〜約10000に等しく、m+pは3〜約1000であり、R及びRは各々独立して水素、アルキル、アリール、アルキルアリール、アルコキシ、アリールオキシ、ハロアルキル、ハロアリール、及びハロアルキルアリールであり、R及びRは各々独立してアルキル、アリール、アルキルアリール、アルコキシ、アリールオキシ、ハロアルキル、ハロアリール、及びハロアルキルアリールであり、Rはトリアルキルシリル、アリールアルキルシリル、トリアリールシリル、水素、アルキル、アリール、アルキルアリール、ハロアルキル、ハロアリール又はハロアルキルアリールである。
【請求項25】
ヒドリド官能基を有するシリコーンが次式(10)又は(11)のものである、請求項20記載の組成物。
【化4】

式中、m+n=3〜100であり、m+p=3〜50である。
【請求項26】
300℃で18分の熱加工処理後の分子量低下が、ポリカーボネートの初期重量平均分子量の約30パーセント未満である、請求項20記載のポリカーボネート組成物。
【請求項27】
ASTM D1238に従って300℃で測定して約1.0〜約20.0cm/10minのメルトボリュームレイショを有する、請求項20記載のポリカーボネート組成物。
【請求項28】
ASTM D648に従って3.2mmのバーを用いて0.45MPa、23℃で測定して約120〜約170℃の加熱撓み温度を有する、請求項20記載のポリカーボネート組成物。
【請求項29】
ASTM D256に従って3.2mmのバーを用いて23℃で測定して約50〜約200ジュール/メートル(J/m)のノッチ付きアイゾット衝撃を有する、請求項20記載のポリカーボネート組成物。
【請求項30】
ASTM D790に従って23℃で3.2mmのバーを用いて測定して約2500〜約10000MPaの曲げ弾性率を有する、請求項20記載のポリカーボネート組成物。
【請求項31】
請求項20記載のポリカーボネート組成物を含んでなる物品。
【請求項32】
ヒドリド官能基を有するシリコーンでガラスを不動態化し、
不動態化したガラスを、ポリカーボネートを含む熱可塑性樹脂組成物と合わせて混合する
ことを含んでなる、ポリカーボネート組成物の製造方法であって、ガラスが熱可塑性樹脂組成物の0.04以内の屈折率を有する、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−507615(P2008−507615A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522776(P2007−522776)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/025964
【国際公開番号】WO2006/012466
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】