説明

透明な無定形のパターンを有する人造大理石

本発明の透明な無定形のパターンを有する人造大理石は、母材部分とパターン部分とからなる人造大理石であって、パターン部分の透明性に優れ、パターン部分の比重が1.60以上であり、前記パターン部分は、ハロゲン化ウレタンアクリレート、ハロゲン化エポキシアクリレートおよびこれらの混合物よりなる群から選択したバインダーとアクリル系重合性モノマーとを含む樹脂組成物を硬化させて形成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明な無定形のパターンを有する人造大理石に関する。より具体的には、本発明はパターン部分の透明性に優れ、比重が1.6〜2.0であることを特徴とする無定形のパターンを有する人造大理石に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人造大理石は建築内装材として用いられており、ベース樹脂(Base resin)によって大きくアクリル系人造大理石と不飽和ポリエステル系人造大理石の2種に区分される。このうち、アクリル系人造大理石は、樹脂自体の淡い透明性、高級な質感、優れた耐候性などの長所によって様々な用途で用いられており、その需要が増え続けている。例えば、シンク(sink)の上板、洗面化粧台の上板、銀行、一般売場などの各種受付カウンターの上板、内壁材、各種インテリア造形物等の素材としてその使用が拡がっている。
【0003】
無定形のパターンを有する人造大理石の製造方法として、異なる色相の合成樹脂材料を混合して、液状樹脂を成形セルに注入する方法が多数知られている。しかし、当該技術により製造された人造大理石は、その全てが、パターンを形成する部分が不透明であり、2次元の平面的なイメージのみを具現化したものである。
【0004】
パターンを形成する部分を透明にするため、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、またはカーボネート系樹脂のような透明性を有する一般的な樹脂を用いると、硬化過程において、パターン部分の樹脂がフィラーを多量含んだ母材部分の樹脂よりも収縮する現象が発生してパターン部分と母材部分の境界面が割れる、いわゆるコンケーブ現象が発生するようになる。また、人造大理石のパターン部分と母材部分との過度な比重差により、硬化過程においてパターン部分が上部に移動することもある。しかし、一般的には、硬化後に下部面を加工して人造大理石の製品の表面に用いる点を考慮すると、当該パターン部分の上部への移動は好ましくないことである。
【0005】
パターンを形成する部分の比重を母材の水準に高めるため、アルミニウムトリハイドレート、硫酸バリウム、シリカ等の無機充填剤を添加する場合には、透明性が著しく劣るという問題点がある。また、この場合、無機フィラーの屈折率を調節する方法を試みても、一般的に用いられる人造大理石用の無機フィラーの寸法効果によって十分な透明性を確保しにくいという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、自然で3次元の立体的なパターンを有する、透明な無定形のパターンを有する人造大理石を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、パターン部分が表面より低くなる現象を起こすことなく平滑性が同一である、透明な無定形のパターンを有する人造大理石を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、パターン部分と母材部分との境界面が割れるコンケーブ現象がない、透明な無定形のパターンを有する人造大理石を提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、自然で3次元の立体的なパターンを有する、透明な無定形のパターンを有する人造大理石の製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の上記および他の目的は下記で詳細に説明される本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記技術的課題を解決するため、本発明は、母材部分とパターン部分とからなる人造大理石であって、パターン部分の透明性が70%以上であり、パターン部分の比重が1.6〜2.0であることを特徴とする無定形のパターンを有する人造大理石を提供する。
【0012】
本発明の一形態において、前記パターン部分は、バインダーとアクリル系重合性モノマーとを含む樹脂組成物を硬化させて形成され、前記バインダーは、ハロゲン化ウレタンアクリレート、ハロゲン化エポキシアクリレート、およびこれらの混合物よりなる群から選択される。
【0013】
本発明の他の形態において、前記樹脂組成物は、バインダーを50〜90質量部、アクリル系重合性モノマーを10〜50質量部含む。
【0014】
本発明の他の形態において、前記樹脂組成物は、アクリル系重合性モノマー100質量部に対して、反応性モノマーとして1〜100質量部のスチレン系モノマーをさらに含む。
【0015】
本発明の他の形態において、前記樹脂組成物は、0.1〜20質量部の無機充填剤をさらに含む。
【0016】
本発明の他の形態において、前記無機充填剤は水酸化アルミニウムであることを特徴とする。
【0017】
上記他の技術的課題を果たすために、本発明は、ハロゲン化ウレタンアクリレート、ハロゲン化エポキシアクリレート、およびこれらの混合物よりなる群から選択されるバインダーに、アクリル系重合性モノマーを混合してパターン形成用樹脂組成物(A)を製造する段階;溶解されたポリアクリレートおよびアクリル系モノマーを混合して母材を形成する人造大理石スラリー(B)を製造する段階;それぞれ用意されたパターン形成用樹脂組成物(A)および母材を形成する人造大理石スラリー(B)を成形セルに不規則に供給して硬化させる段階を含むことを特徴とする、無定形のパターンを有する人造大理石の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る透明な無定形のパターンを有する人造大理石は、パターン部分が表面より低くなる現象を起こすことなく平滑性が同一であり、パターン部分と母材部分との境界面が割れるコンケーブ現象がなく、より自然で3次元の立体的なパターンを有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、パターン部分が不透明な既存の無定形のパターンを有する人造大理石の表面の写真である。
【図2】図2は、実施例1において製造した人造大理石の表面の写真である。
【図3】図3は、実施例2において製造した人造大理石の表面の写真である。
【図4】図4は、実施例3において製造した人造大理石の表面の写真である。
【図5】図5は、比較例1において製造した人造大理石の表面の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0021】
本発明は、母材部分とパターン部分とからなる人造大理石であって、パターン部分の透明性が70%以上であり、パターン部分の比重が1.6〜2.0であることを特徴とする無定形のパターンを有する人造大理石を提供する。
【0022】
一実施形態において、前記パターン部分はバインダーとアクリル系重合性モノマーとを含む樹脂組成物(A)を硬化させて形成され、人造大理石の母材部分は溶解されたポリアクリレートおよびアクリル系モノマーを混合した人造大理石スラリー(B)を硬化させて形成される。
【0023】
(A)パターン部分を形成する樹脂組成物
パターン部分を形成する樹脂組成物はバインダーとアクリル系重合性モノマーを含むことを特徴とするが、一実施形態において、前記パターン部分を形成する樹脂組成物は、バインダーを50〜90質量部、アクリル系重合性モノマーを10〜50質量部含みうる。バインダーの含量が50質量部未満の場合、高比重化の効果および収縮率の減少の効果が低く、90質量部を超過して用いる場合、粘度が高くなって作業性が劣る。
【0024】
前記バインダーは、ハロゲン化ウレタンアクリレート、ハロゲン化エポキシアクリレート、およびこれらの混合物よりなる群から選択されうる。前記ハロゲン化エポキシアクリレート樹脂バインダーの数平均分子量は1,000〜4,000であることが好ましい。
【0025】
パターンを形成する部分を透明にするために、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、またはカーボネート系樹脂のような透明性を有する一般的な樹脂を用いると、硬化過程においてパターン部分の樹脂がより多く収縮して前記したコンケーブ現象が発生するようになる。また、母材より比重が低い場合、硬化過程においてパターン部分が上部に移動するようになる。これに対し、本発明者らはハロゲン化ウレタンアクリレート、ハロゲン化エポキシアクリレートのような高比重のハロゲン化化合物をアクリル系重合性モノマーと組み合わせてパターンを形成する部分に適用すると、パターン部分の比重が高くなって硬化過程においてパターン部分が浮かばなくなることが分かった。さらに、本発明者らはハロゲン化ウレタンアクリレート、ハロゲン化エポキシアクリレートのような高比重のハロゲン化化合物を混合して硬化させると、硬化過程において他の樹脂よりも収縮が少なく、その収縮率は母材部分と類似することも分かった。母材部分との境界が割れるコンケーブ現象は、母材部分とパターン部分の親和度が低い場合にも発生しうるが、パターン部分および母材部分が同一系統の樹脂の場合には、母材部分とパターン部分の親和度よりも硬化過程における収縮率の差異がコンケーブ現状の根本的な原因となる。
【0026】
本発明が目的とする自然で3次元の立体的なパターンを形成し、前記コンケーブ現象の発生を阻止するためには、前記パターン、すなわち透明なパターン部分の比重は1.6〜2.0であることが好ましい。
【0027】
上記のように、ハロゲン化ウレタンアクリレート、ハロゲン化エポキシアクリレートのような高比重のハロゲン化化合物を混合して硬化させると、母材部分と収縮率が類似となる点を本発明者らが見出した結果、パターン部分を形成する樹脂組成物と母材部分を形成する樹脂組成物とを一緒に供給し同時に硬化させて、本発明の透明な無定形のパターンを有する人造大理石を製造することが可能になったのである。
【0028】
前記アクリル系重合性モノマーは樹脂組成物の架橋度を高める役割を有し、これにより樹脂組成物に優れた強度を付与することができる。前記アクリル系重合性モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、オキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、クロロフェニル(メタ)アクリレート、メトキシフェニル(メタ)アクリレート、ブロモフェニル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコール(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコール(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、グリシジルメタクリル酸のエポキシアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、メチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、およびこれらの混合物よりなる群から選択されうる。
【0029】
パターン部分を形成する樹脂組成物(A)は、相溶性等を改質するために反応性モノマーをさらに含んでいてもよい。前記反応性モノマーとしてはスチレン系モノマーを含むことが好ましく、スチレンモノマーを含むことが最も好ましい。前記スチレンモノマーは最も代表的な反応性モノマーであり、樹脂組成物の相溶性および溶解性を改善させる効果を有する。前記スチレンモノマーの以外にも、前記バインダー樹脂の種類によってはハロゲン化スチレンモノマー等が用いられうる。例えば、本発明の実施例のように、バインダー樹脂として臭素化ウレタンアクリレートを使用する場合には、反応性モノマーとしてブロモスチレンを用いると、相溶性および溶解性等の改善効果が優れる。
【0030】
前記アクリル系重合性モノマーが反応性モノマーをさらに含む場合、前記反応性モノマーは、アクリル系重合性モノマー100質量部に対して、1〜100質量部で含まれることが好ましい。
【0031】
一実施形態において、前記パターン部分を形成する樹脂組成物は、0〜100質量部、好ましくは0.1〜50質量部の無機充填剤をさらに含んでいてもよい。前記無機充填剤をさらに添加すると、パターン部分の比重を高めて母材と類似させ、硬化時の収縮率を減少させるのに有用である。しかし、透明性を害さない程度の最小量で添加する必要がある。無機充填剤を前記バインダーおよび前記アクリル系重合性モノマー混合物100質量部に対して、30質量部より多く添加すると、十分な透明性を確保することができないことがある。前記無機充填剤としては、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、水酸化マグネシウムのように当該分野で通常的に用いられる無機粉末をいずれも用いることができ、1〜100μmの大きさを有することが好ましい。前記無機粉末のなかでも、特に水酸化アルミニウムは、透明で美麗な外見を有する人造大理石を製造することができるという観点から好ましい。
【0032】
他の実施形態において、前記パターン部分を形成する樹脂組成物は、さらに添加剤を含んでいてもよい。前記添加剤としては、色相付与剤、消泡剤、カップリング剤、紫外線吸収剤、光拡散剤、重合抑制剤、帯電防止剤、難燃剤、熱安定剤等が用いられうる。前記添加剤のうち、色相付与剤を用いる場合には、色相を帯びる透明なパターンを具現することができるため、自然で3次元の立体的なパターンを有しながらも、より多様なカラーの人造大理石の製造ができるという長所がある。
【0033】
(B)母材を形成する人造大理石スラリー
本発明で用いられる母材を形成する人造大理石スラリーとしては、アクリル系モノマーとこれらの重合物であるポリアクリレートが溶解されている樹脂シロップを用いることができる。
【0034】
前記アクリル系モノマーとしては、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等がある。
【0035】
本発明のアクリル樹脂シロップは、アクリルモノマーの含有量が65質量%以上であり、ポリアクリレートの含有量が35質量%以下であることが好ましい。
【0036】
さらに、母材を形成する人造大理石スラリーは、多様な大きさのマーブルチップ、無機充填剤、架橋剤、色相付与剤、消泡剤、カップリング剤、紫外線吸収剤、光拡散剤、重合抑制剤、帯電防止剤、難燃剤、熱安定剤等の添加剤を最終製品の目的に応じて適宜選択して含んでいてもよい。
【0037】
また、本発明は、ハロゲン化ウレタンアクリレート、ハロゲン化エポキシアクリレート、およびこれらの混合物よりなる群から選択されるバインダーに、アクリル系重合性モノマーを混合してパターン形成用樹脂組成物(A)を製造する段階;溶解されたポリアクリレ−トおよびアクリル系モノマーを混合して母材を形成する人造大理石スラリー(B)を製造する段階;それぞれ用意されたパターン形成用樹脂組成物(A)および母材を形成する人造大理石スラリー(B)を成形セルに不規則に供給して硬化させる段階;を含むことを特徴とする無定形のパターンを有する人造大理石の製造方法を提供する。
【0038】
一実施形態において、前記パターン形成用樹脂組成物(A)は、前記バインダーを50〜90質量部、前記アクリル系重合性モノマーを10〜50質量部含み、0.1〜50質量部の無機充填剤をさらに含みうる。前記無機充填剤としては当該分野で通常的に用いられる無機粉末がいずれも用いられうる。なかでも、透明性および美麗な外見の観点から水酸化アルミニウムを用いることが好ましい。
【0039】
本発明は下記の実施例により理解されることができ、下記の実施例は本発明の例示目的のためであって、添付された特許請求の範囲により限定される保護範囲を制限しようとするものではない。
【実施例】
【0040】
実施例1
臭化エポキシアクリレート85質量部とメチルメタクリレート15質量部とからなる樹脂組成物100質量部に、n−ドデシルメルカプタン0.2質量部、水酸化アルミニウム5質量部を混合してパターン(柄)形成用組成物(A)を用意した。また、ポリメチルメタクリレートをメチルメタクリレートに溶解して作ったシロップ100質量部に、水酸化アルミニウム140質量部、人造大理石を破鎖して多様な大きさで製造した人造大理石チップ混合物60質量部、トリメチルプロパントリアクリレート1.5質量部、n−ドデシルメルカプタン0.2質量部、水酸化カルシウム1.0質量部を混合して母材を形成する人造大理石スラリー(B)を用意した。
【0041】
用意したパターン形成用組成物(A)と母材を形成する人造大理石スラリー(B)を20:80の割合でそれぞれの移送管を通じて移送した。その後、それぞれの移送管と連結されたラインミキサーを用いてそれぞれの組成物(A、B)100質量部にターシャリブチルパーオキシマレート0.5質量部を混合して予め用意した成形セル(エンドレススチールベルト)に不規則に供給することで、無定形のパターンが形成されるようにし、常温で硬化して人造大理石を製造した。製造した人造大理石の写真を図2に示す。
【0042】
実施例2
臭化ウレタンアクリレート85質量部、ブロモスチレン5質量部、およびメチルメタクリレート10質量部からなる樹脂組成物100質量部に、n−ドデシルメルカプタン0.2質量部、水酸化アルミニウム10質量部を混合してパターン形成用組成物(A)を用意したことを除いては、実施例1と同様に行った。製造した人造大理石の写真を図3に示す。
【0043】
実施例3
臭化エポキシアクリレート80質量部、スチレン5質量部、およびメチルメタクリレート15質量部からなる樹脂組成物100質量部に、n−ドデシルメルカプタン0.2質量部、水酸化アルミニウム15質量部を混合してパターン形成用組成物(A)を用意したことを除いては、実施例1と同様に行った。製造した人造大理石の写真を図4に示す。
【0044】
比較例1
ポリメチルメタクリレートをメチルメタクリレートに溶解して作ったシロップ100質量部に、水酸化アルミニウム140質量部、トリメチルプロパントリアクリレート1.5質量部、n−ドデシルメルカプタン0.2質量部、水酸化カルシウム1.0質量部を混合してパターン形成用組成物(A)を用意したことを除いては、実施例1と同様に行った。製造した人造大理石の写真を図5に示す。
【0045】
比較例2
ポリメチルメタクリレートをメチルメタクリレートに溶解して作ったシロップ100質量部に、トリメチルプロパントリアクリレート1.5質量部、n−ドデシルメルカプタン0.2質量部、水酸化カルシウム1.0質量部を混合してパターン形成用組成物(A)を用意したことを除いては、実施例1と同様に行った。
【0046】
比較例3
不飽和ポリエステル樹脂(大韓民国の愛敬化学株式会社製のTP−145(商品名))36質量部とスチレン64質量部とを混合して製造した樹脂組成物100質量部に、n−ドデシルメルカプタン0.5質量部、水酸化アルミニウム130質量部を混合してパターン形成用組成物(A)を用意したことを除いては、実施例1と同様に行った。
【0047】
なお、比較例3において、水酸化アルミニウムを除き、不飽和ポリエステル樹脂(大韓民国の愛敬化学株式会社製のTP−145(商品名))36質量部とスチレン64質量部とを混合して製造した樹脂組成物100質量部に、n−ドデシルメルカプタン0.5質量部を混合して製造された組成物に、ターシャリブチルパーオキシマレート0.5質量部を混合して単独で硬化した硬化物の屈折率は、1.57であり、水酸化アルミニウムの屈折率と類似するものであった。
【0048】
比較例4
エポキシアクリレートオリゴマー60質量部、スチレンモノマー40質量部で製造されたビニルエステル樹脂(大韓民国の愛敬化学株式会社製のDION−9120(商品名))100質量部に、n−ドデシルメルカプタン0.2質量部を混合してパターン形成用組成物(A)を用意したことを除いては、実施例1と同様に行った。
【0049】
実施例1〜3および比較例1〜4に対して、パターン部分の比重、透明性およびコンケーブの発生可否を調査して、その結果を下記の表1に整理した。
【0050】
パターン部分の比重:実施例1〜3および比較例1〜4で製造した人造大理石からパターン部分を切断してASTM D792に準拠して測定した。
【0051】
パターンの透明性:実施例1〜3および比較例1〜4で製造した人造大理石からパターン部分を切断して1±0.3mmの厚さでサンディングし、両方の表面にミネラルオイルを塗布した後、試片の両方にスライドグラスを密着させた。サンディング表面の凹凸による透明性の低下を防止する条件下でASTM D1003に準拠して全光線透過率を測定した。
【0052】
コンケーブ発生の可否:製造した人造大理石の表面を#600grit以上のサンドペーパーで加工した後、パターン部分と母材との境界面の割れの有無、パターン部分の表面を母材の表面と対比した場合の陥没の有無等を肉眼で評価した。
【0053】
【表1】

【0054】
前記の表の結果から、無機充填剤を過量で用いた比較例1の場合、比重の増加およびコンケーブ現象の防止は達成することができたが、パターン部分の透明性が不良であることが分かる。無機充填剤を少量で用い、かつ、本発明のバインダーを含まない比較例2は、パターン部分が軽くて浮き上がり、硬化の際に母材より多く収縮されて、コンケーブ現象が発生した。比較例3は、比重を重くするために過量の無機充填剤を用いて、無機充填剤の屈折率をベース樹脂と類似に調節する方法を用いても、無機充填剤の大きさの効果により優れた透明性を確保することができないことを示している。比較例4も高比重のハロゲン化化合物を含まない場合に好適な比重の確保およびコンケーブ現象の防止が不可能であるのを表している。一方、実施例1〜3は全てがパターン部分の透明性が70%以上、比重が1.60以上であり、かつ、コンケーブ現象も発生しない優れた結果を示した。
【0055】
本発明の単純な変形や変更は当業者によって容易に実施することができ、このような変形や変更はすべて本発明の技術的範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材部分とパターン部分とからなる人造大理石であって、前記パターン部分の比重が1.6〜2.0であり、無定形のパターンを有する人造大理石。
【請求項2】
前記パターン部分の透明性が70%以上である、請求項1に記載の人造大理石。
【請求項3】
前記パターン部分が、バインダーとアクリル系重合性モノマーとを含む樹脂組成物を硬化させて形成され、
前記バインダーが、ハロゲン化ウレタンアクリレート、ハロゲン化エポキシアクリレート、およびこれらの混合物よりなる群から選択される一つ以上である、請求項1に記載の人造大理石。
【請求項4】
前記樹脂組成物が、バインダーを50〜90質量部、アクリル系重合性モノマーを10〜50質量部含む、請求項3に記載の人造大理石。
【請求項5】
前記アクリル系重合性モノマー100質量部に対して、反応性モノマーとして1〜100質量部のスチレン系モノマーをさらに含む、請求項3に記載の人造大理石。
【請求項6】
前記アクリル系重合性モノマーが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、オキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、クロロフェニル(メタ)アクリレート、メトキシフェニル(メタ)アクリレート、ブロモフェニル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコール(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコール(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、 ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、グリシジルメタクリル酸のエポキシアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、メチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、およびこれらの混合物よりなる群から選択される一つ以上である、請求項3に記載の人造大理石。
【請求項7】
前記樹脂組成物が、前記バインダーおよび前記アクリル系重合性モノマー100質量部に対して、0.1〜50質量部の無機充填剤をさらに含む、請求項3に記載の人造大理石。
【請求項8】
前記樹脂組成物が、色相付与剤、消泡剤、カップリング剤、紫外線吸収剤、光拡散剤、重合抑制剤、帯電防止剤、難燃剤、熱安定剤、およびこれらの混合物よりなる群から選択される一つ以上の添加剤をさらに含む、請求項3に記載の人造大理石。
【請求項9】
ハロゲン化ウレタンアクリレート、ハロゲン化エポキシアクリレート、およびこれらの混合物よりなる群から選択される一つ以上のバインダーに、アクリル系重合性モノマーを混合してパターン形成用樹脂組成物(A)を製造する段階;
溶解されたポリアクリレ−トおよびアクリル系モノマーを混合して母材を形成する人造大理石スラリー(B)を製造する段階;および
それぞれ用意したパターン形成用樹脂組成物(A)および母材を形成する人造大理石スラリー(B)を成形セルに不規則に供給して硬化させる段階;
を含む、無定形のパターンを有する人造大理石の製造方法。
【請求項10】
前記パターン形成用樹脂組成物(A)が、前記バインダーを50〜90質量部、前記アクリル系重合性モノマーを10〜50質量部含む、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記パターン形成用樹脂組成物(A)が、前記アクリル系重合性モノマー100質量部に対して、反応性モノマーとして1〜100質量部のスチレン系モノマーをさらに含む、請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
前記パターン形成用樹脂組成物(A)が、前記バインダーおよび前記アクリル系重合性モノマー100質量部に対して、0.1〜50質量部の無機充填剤をさらに含む、請求項9に記載の無定形のパターンを有する人造大理石の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2013−515812(P2013−515812A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545836(P2012−545836)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【国際出願番号】PCT/KR2010/007801
【国際公開番号】WO2011/078476
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】