説明

透明シート付タッチパネルセンサ

【課題】意匠性の良い保護カバー付タッチパネルセンサを提供する。
【解決手段】保護カバー12付タッチパネルセンサ30において、第1透明導電体40は、その厚みが22.7nm以下となっており、かつその光屈折率が、波長550nmの光に対して1.97+0.13/−0.3の範囲内となっており、波長400nmの光に対して2.12+0.13/−0.3の範囲内となっている。また、第1アンダーコート層71および第1低屈折率層73の光屈折率は、第1透明導電体40および第1高屈折率層72の光屈折率よりも小さくなっている。そして、タッチパネルセンサと保護カバー12との間に介在された第1接着層14は、その光屈折率が1.4〜1.8の範囲内となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明シート付タッチパネルセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、入力手段として、タッチパネル装置が広く用いられている。タッチパネル装置は、タッチパネルセンサ、タッチパネルセンサ上への接触位置を検出する制御回路、配線およびFPC(フレキシブルプリント基板)を含んでいる。タッチパネル装置は、多くの場合、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等の表示装置が組み込まれた種々の装置等(例えば、券売機、ATM装置、携帯電話、ゲーム機)に対する入力手段として、表示装置とともに用いられている。このような装置においては、タッチパネルセンサが表示装置の表示面上に配置されており、これによって、表示装置に対する極めて直接的な入力が可能になっている。タッチパネルセンサのうち表示装置の表示領域に対応する領域は透明になっており、タッチパネルセンサのこの透明な領域が、接触位置(接近位置)を検出し得るアクティブエリアを構成している。
【0003】
タッチパネル装置は、タッチパネルセンサ上への接触位置(接近位置)を検出する原理に基づいて、種々の形式に区別される。昨今では、光学的に明るいこと、意匠性があること、構造が容易であること、機能的にも優れていること等の理由から、容量結合方式のタッチパネル装置が注目されている。容量結合方式のタッチパネル装置においては、位置を検知されるべき外部導体(典型的には、指)が誘電体を介してタッチパネルセンサに接触(接近)する際、新たに奇生容量が発生する。この奇生容量に起因する静電容量の変化に基づいて、タッチパネルセンサ上における対象物の位置が検出される。容量結合方式には表面型と投影型とがあるが、マルチタッチの認識(多点認識)への対応に適していることから、投影型が注目を浴びている(例えば、特許文献1)。
【0004】
投影型容量結合方式のタッチパネルセンサは、誘電体と、誘電体の両側に異なるパターンでそれぞれ形成された第1センサ電極および第2センサ電極と、を有している。典型的には、第1センサ電極および第2センサ電極は、格子状に配列された透明導電体を有し、外部導体(典型的には、指)がタッチパネルセンサに接触または接近した際に生じる、電磁的な変化または静電容量の変化に基づき、透明導電体の位置を検出するようになっている。
【0005】
このような投影型容量結合方式のタッチパネルセンサは、一般に、第1透明基板に第1アンダーコート層を介して第1透明導電層が形成された第1フィルムと、第2透明基板に第2アンダーコート層を介して第2透明導電層が形成された第2フィルムとを粘着層により接合することで作製されている(例えば、特許文献2)。特許文献2において、各アンダーコート層は、低屈折率層と、低屈折率層よりも光屈折率が高い高屈折率層とを含む積層体から構成されている。
【0006】
投影型容量結合方式のタッチパネルセンサにおいて、一般に、透明導電体の光屈折率は比較的に大きく、このため、タッチパネルセンサのうち透明導電体が配列されている領域と透明導電体が配列されていない領域との間における光の透過率および反射率の差が大きくなる場合がある。このように領域間における光の透過率および反射率の差が大きい場合、透明導電体のパターンがタッチパネルセンサの使用者から視認されることになり、意匠上の観点から好ましくない。このような課題を解決するため、例えば特許文献2においては、粘着層として用いる材料の光屈折率を適宜調整することにより、領域間における光の反射率の差が低減されたタッチパネルセンサが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−292950号公報
【特許文献2】特開2008−98169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、昨今においては、タッチパネル装置およびタッチパネルセンサに対して、薄型化および光学特性の向上が要望されている。しかしながら、特許文献2に記載のタッチパネルセンサにおいては、二枚のフィルムセンサが貼り合わされるとともに、二枚のフィルムセンサ間に粘着層(OCA、Optical Clear Adhesive)が介在されているため、タッチパネルセンサの厚みが大きくなるだけでなく、透過光に対して光学的作用を及ぼし得る界面の数を増やしてしまう。この結果、表示装置からの映像光の透過率を低下させてしまうとともに、表示装置が表示する映像の画質を劣化させてしまう。また、粘着層を多く用いることにより製造コストも増大する。
【0009】
本発明は、このような課題を効果的に解決し得る透明シート付タッチパネルセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、タッチパネルセンサと、タッチパネルセンサの一側に接着層を介して接着された透明シートとからなる透明シート付タッチパネルセンサにおいて、前記タッチパネルセンサは、基材フィルムと、基材フィルムの一側の面上にパターニングされた第1透明導電体と、を備え、基材フィルムは、透明なフィルム本体と、フィルム本体の前記第1透明導電体側の面上に設けられた第1アンダーコート層と、第1アンダーコート層の前記第1透明導電体側の面上に設けられた第1高屈折率層と、第1高屈折率層の前記第1透明導電体側の面上に設けられた第1低屈折率層と、を有し、前記第1透明導電体は、その厚みが22.7nm以下となっており、かつその光屈折率が、波長550nmの光に対して1.97+0.13/−0.3の範囲内となっており、波長400nmの光に対して2.12+0.13/−0.3の範囲内となっており、前記第1アンダーコート層および前記第1低屈折率層の光屈折率は、前記第1透明導電体および前記第1高屈折率層の光屈折率よりも小さくなっており、前記タッチパネルセンサと前記透明シートとの間に介在された前記接着層は、その光屈折率が1.4〜1.8の範囲内となっていることを特徴とする透明シート付タッチパネルセンサである。
【0011】
本発明による透明シート付タッチパネルセンサにおいて、前記第1高屈折率層は、その厚みが3.4〜8.6nmの範囲内となっており、かつその光屈折率が、波長550nmの光に対して2.18+0.22/−0.27の範囲内となっており、波長400nmの光に対して2.36+0.22/−0.27の範囲内となっていてもよい。
【0012】
本発明による透明シート付タッチパネルセンサにおいて、前記第1高屈折率層は、その厚みが3.4〜8.6nmの範囲内となっており、かつその光屈折率が、(前記第1透明導電体の光屈折率−0.06)〜(前記第1透明導電体の光屈折率+0.47)の範囲内となっていてもよい。
【0013】
本発明による透明シート付タッチパネルセンサにおいて、好ましくは、前記第1低屈折率層は、その厚みが41〜91nmの範囲内となっており、かつその光屈折率が1.28〜1.86の範囲内となっている。
【0014】
本発明による透明シート付タッチパネルセンサにおいて、好ましくは、前記第1アンダーコート層は、その厚みが900〜10000nmの範囲内となっており、かつその光屈折率が1.35〜1.69の範囲内となっている。
【0015】
本発明は、タッチパネルセンサと、タッチパネルセンサの一側に接着層を介して接着された透明シートとからなる透明シート付タッチパネルセンサにおいて、前記タッチパネルセンサは、基材フィルムと、基材フィルムの一側の面上にパターニングされた第1透明導電体と、基材フィルムの他側の面上にパターニングされた第2透明導電体と、を備え、基材フィルムは、透明なフィルム本体と、フィルム本体の前記第1透明導電体側の面上に設けられた第1アンダーコート層と、第1アンダーコート層の前記第1透明導電体側の面上に設けられた第1高屈折率層と、第1高屈折率層の前記第1透明導電体側の面上に設けられた第1低屈折率層と、フィルム本体の前記第2透明導電体側の面上に設けられた第2アンダーコート層と、第2アンダーコート層の前記第2透明導電体側の面上に設けられた第2高屈折率層と、第2高屈折率層の前記第2透明導電体側の面上に設けられた第2低屈折率層と、を有し、前記第1透明導電体および前記第2透明導電体は、その厚みが22.7nm以下となっており、かつその光屈折率が、波長550nmの光に対して1.97+0.13/−0.3の範囲内となっており、波長400nmの光に対して2.12+0.13/−0.3の範囲内となっており、前記第1アンダーコート層および前記第1低屈折率層の光屈折率は、前記第1透明導電体および前記第1高屈折率層の光屈折率よりも小さくなっており、前記第2アンダーコート層および前記第2低屈折率層の光屈折率は、前記第2透明導電体および前記第2高屈折率層の光屈折率よりも小さくなっており、前記タッチパネルセンサと前記透明シートとの間に介在された前記接着層は、その光屈折率が1.4〜1.8の範囲内となっていることを特徴とする透明シート付タッチパネルセンサである。
【0016】
本発明による透明シート付タッチパネルセンサにおいて、前記第1高屈折率層および前記第2高屈折率層は、その厚みが3.4〜8.6nmの範囲内となっており、かつその光屈折率が、波長550nmの光に対して2.18+0.22/−0.27の範囲内となっており、波長400nmの光に対して2.36+0.22/−0.27の範囲内となっていてもよい。
【0017】
本発明による透明シート付タッチパネルセンサにおいて、前記第1高屈折率層は、その厚みが3.4〜8.6nmの範囲内となっており、かつその光屈折率が、(前記第1透明導電体の光屈折率−0.06)〜(前記第1透明導電体の光屈折率+0.47)の範囲内となっており、前記第2高屈折率層は、その厚みが3.4〜8.6nmの範囲内となっており、かつその光屈折率が、(前記第2透明導電体の光屈折率−0.06)〜(前記第2透明導電体の光屈折率+0.47)の範囲内となっていてもよい。
【0018】
本発明による透明シート付タッチパネルセンサにおいて、好ましくは、前記第1低屈折率層および前記第2低屈折率層は、その厚みが41〜91nmの範囲内となっており、かつその光屈折率が1.28〜1.86の範囲内となっている。
【0019】
本発明による透明シート付タッチパネルセンサにおいて、好ましくは、前記第1アンダーコート層および前記第2アンダーコート層は、その厚みが900〜10000nmの範囲内となっており、かつその光屈折率が1.35〜1.69の範囲内となっている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、透明シート付タッチパネルセンサは、タッチパネルセンサと、タッチパネルセンサの一側に接着層を介して接着された透明シートとからなっている。このうちタッチパネルセンサは、基材フィルムと、基材フィルムの一側の面上にパターニングされた第1透明導電体と、を備えている。また基材フィルムは、透明なフィルム本体と、フィルム本体の第1透明導電体側の面上に設けられた第1アンダーコート層と、第1アンダーコート層の第1透明導電体側の面上に設けられた第1高屈折率層と、第1高屈折率層の第1透明導電体側の面上に設けられた第1低屈折率層と、を有している。そして、第1透明導電体は、その厚みが22.7nm以下となっており、かつその光屈折率が、波長550nmの光に対して1.97+0.13/−0.3の範囲内となっており、波長400nmの光に対して2.12+0.13/−0.3の範囲内となっている。また、タッチパネルセンサと透明シートとの間に介在された接着層は、その光屈折率が1.4〜1.8の範囲内となっている。このように、大気の光屈折率と第1透明導電体の光屈折率との間の適切な範囲内に接着層の光屈折率を設定することにより、このような接着層が設けられていない場合に比べて、第1透明導電体において光が反射されるのを抑制することができる。また、第1アンダーコート層および第1低屈折率層の光屈折率は、第1透明導電体および第1高屈折率層の光屈折率よりも小さくなっている。このため、タッチパネルセンサのうち第1透明導電体がパターニングされている領域とパターニングされていない領域との間における光の透過率および反射率の差を小さくすることができる。このことにより、第1透明導電体のパターンが透明シート付タッチパネルセンサの外部から視認されるのを防ぐことができ、これによって、透明シート付タッチパネルセンサの意匠性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明による一実施の形態を説明するための図であって、タッチパネル装置を表示装置とともに概略的に示す透明シート付タッチパネルセンサ図である。
【図2】図2は、図1のタッチパネル装置のタッチパネルセンサを表示装置ともに示す断面図である。なお、図2に示された断面は、図1のII−II線に沿った断面に概ね対応している。
【図3A】図3Aは、タッチパネル装置のタッチパネルセンサを示す上面図である。
【図3B】図3Bは、図3AのIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図4(a)は、透明シート付タッチパネルセンサに含まれる基材フィルムの具体例を示す図であり、図4(b)は、基材フィルムの機能層により透過光のスペクトルが各波長域で平坦にされる様子を示す図である。
【図5】図5(a)(b)(c)(d)は、タッチパネルセンサを作製するために用いられる積層体を製造する方法を説明するための図である。
【図6】図6は、本発明による透明シート付タッチパネルセンサの各構成要素において、屈折率の波長依存性の一例を示す図である。
【図7A】図7Aは、実施例1において、透明導電体が設けられている領域における透過スペクトルを示す図である。
【図7B】図7Bは、実施例1において、透明導電体が設けられていない領域における透過スペクトルを示す図である。
【図7C】図7Cは、実施例1において、透明導電体が設けられている領域における反射スペクトルを示す図である。
【図7D】図7Dは、実施例1において、透明導電体が設けられていない領域における反射スペクトルを示す図である。
【図8A】図8Aは、実施例2において、接着層が設けられている場合の、透明導電体の膜厚と、ΔY(反射)、ΔY(透過)およびb*との関係を示す図である。
【図8B】図8Bは、実施例2において、接着層が設けられてない場合の、透明導電体の膜厚と、ΔY(反射)、ΔY(透過)およびb*との関係を示す図である。
【図9A】図9Aは、実施例3において、透明導電体が設けられている領域における透過スペクトルを示す図である。
【図9B】図9Bは、実施例3において、透明導電体が設けられていない領域における透過スペクトルを示す図である。
【図9C】図9Cは、実施例3において、透明導電体が設けられている領域における反射スペクトルを示す図である。
【図9D】図9Dは、実施例3において、透明導電体が設けられていない領域における反射スペクトルを示す図である。
【図9E】図9Eは、実施例3における透過率差を示す図である。
【図9F】図9Fは、実施例3における反射率差を示す図である。
【図9G】図9Gは、実施例3において、接着層の光屈折率と、ΔY(反射)、ΔY(透過)およびb*との関係を示す図である。
【図10】図10は、実施例4において、アンダーコート層の厚みと、ΔY(反射)、ΔY(透過)およびb*との関係を示す図である。
【図11A】図11Aは、実施例5における透過率差を示す図である。
【図11B】図11Bは、実施例5における反射率差を示す図である。
【図11C】図11Cは、実施例5において、アンダーコート層の光屈折率と、ΔY(反射)、ΔY(透過)およびb*との関係を示す図である。
【図12A】図12Aは、実施例6における透過率差を示す図である。
【図12B】図12Bは、実施例6における反射率差を示す図である。
【図12C】図12Cは、実施例6において、高屈折率層の膜厚と、ΔY(反射)、ΔY(透過)およびb*との関係を示す図である。
【図13A】図13Aは、実施例7における透過率差を示す図である。
【図13B】図13Bは、実施例7における反射率差を示す図である。
【図13C】図13Cは、実施例7において、高屈折率層の光屈折率の変位量と、ΔY(反射)、ΔY(透過)およびb*との関係を示す図である。
【図14A】図14Aは、実施例8における透過率差を示す図である。
【図14B】図14Bは、実施例8における反射率差を示す図である。
【図15A】図15Aは、実施例9における透過率差を示す図である。
【図15B】図15Bは、実施例9における反射率差を示す図である。
【図15C】図15Cは、実施例9において、高屈折率層の光屈折率の変位量(透明導電体の屈折率との差)と、ΔY(反射)、ΔY(透過)およびb*との関係を示す図である。
【図16A】図16Aは、実施例10における透過率差を示す図である。
【図16B】図16Bは、実施例10における反射率差を示す図である。
【図16C】図16Cは、実施例10において、低屈折率層の膜厚と、ΔY(反射)、ΔY(透過)およびb*との関係を示す図である。
【図17A】図17Aは、実施例11における透過率差を示す図である。
【図17B】図17Bは、実施例11における反射率差を示す図である。
【図17C】図17Cは、実施例11において、低屈折率層の光屈折率と、ΔY(反射)、ΔY(透過)およびb*との関係を示す図である。
【図18A】図18Aは、実施例12における透過率差を示す図である。
【図18B】図18Bは、実施例12における反射率差を示す図である。
【図18C】図18Cは、実施例12において、透明導電体の膜厚と、ΔY(反射)、ΔY(透過)およびb*との関係を示す図である。
【図19A】図19Aは、実施例13における透過率差を示す図である。
【図19B】図19Bは、実施例13における反射率差を示す図である。
【図19C】図19Cは、実施例13において、透明導電体の光屈折率の変位量と、ΔY(反射)、ΔY(透過)およびb*との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0023】
なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0024】
また、本件において、「シート」、「フィルム」、「板」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「シート」はフィルムや板等とも呼ばれ得るような部材や部分も含む概念である。
【0025】
タッチパネル装置
はじめに図1および図2を参照して、タッチパネルセンサ30を備えたタッチパネル装置20全体について説明する。図1および図2に示されたタッチパネル装置20は、投影型の静電容量結合方式として構成され、タッチパネル装置20への外部導体(例えば、人間の指)の接触位置を検出可能に構成されている。なお、静電容量結合方式のタッチパネル装置20の検出感度が優れている場合には、外部導体がタッチパネル装置に接近しただけで当該外部導体がタッチパネル装置のどの領域に接近しているかを検出することができる。従って、ここで用いる「接触位置」とは、実際には接触していないが位置を検出され得る接近位置を含む概念とする。
【0026】
図1および図2に示すように、タッチパネル装置20は、表示装置(例えば液晶表示装置)15と組み合わせて用いられることにより、入出力装置10を構成する。図示された表示装置15は、フラットパネルディスプレイとして構成されている。表示装置15は、表示面16aを有した表示パネル16と、表示パネル16に接続された表示制御部17と、を有している。表示パネル16は、映像を表示することができる表示領域A1と、表示領域A1を取り囲むようにして表示領域A1の外側に配置された非表示領域(額縁領域とも呼ばれる)A2と、を含んでいる。表示制御部17は、表示されるべき映像に関する情報を処理し、映像情報に基づいて表示パネル16を駆動する。表示パネル16は、表示制御部17の制御信号に基づいて、所定の映像を表示面16aに表示する。すなわち、表示装置15は、文字や図等の情報を映像として出力する出力装置としての役割を担っている。
【0027】
図1および図2に示すように、タッチパネル装置20は、表示装置15の表示面16a上配置されたタッチパネルセンサ30と、タッチパネルセンサ30の観察者側(一側)に第1接着層14を介して設けられた保護カバー(透明シート)12と、タッチパネルセンサ30に接続された検出制御部25と、を有している。このうちタッチパネルセンサ30は、図2に示すように、表示装置15の表示面16a上に第2接着層19を介して接着されている。上述したように、タッチパネル装置20は、投影型容量結合方式のタッチパネル装置として構成されており、情報を入力する入力装置としての役割を担っている。
【0028】
上述の保護カバー12は、誘電体として機能するとともに、透光性を有するものであり、この保護カバー12が、タッチパネル装置20への入力面(タッチ面、接触面)となる。つまり、保護カバー12に導体、例えば人間の指5を接触させることにより、タッチパネル装置20に対して外部から情報を入力することができるようになっている。また、保護カバー12は、入出力装置10の最観察者側面をなしており、入出力装置10において、タッチパネル装置20および表示装置15を外部から保護するカバーとしても機能する。
【0029】
この保護カバー12の厚みは、例えば約1mmとなっている。また、保護カバー12は、強化ガラスなどのガラスや、若しくは、PMMA(アクリル樹脂)、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのプラスチックから構成されている。プラスチックなどからなる柔軟性を有する保護カバー12がタッチパネルセンサ30に第1接着層14を介して取り付けられる場合、組立や取り扱いの容易さを確保しながら、タッチパネルセンサ30を外部から保護することが可能となる。
【0030】
また接着層14,19は、後述するように、タッチパネルセンサ30の透明導電体40,45において生じる光の反射を抑制し、これによって、表示装置15からの映像光の透過率を向上させるという機能も担っている。このような機能を果たすため、接着層14,19の光屈折率は、好ましくは1.4〜1.8(光波長550nm)の範囲内となっている。接着層14,19の厚みは、保護カバー12または表示装置15の構成などに応じて適宜設定されるが、例えば10〜100μmの範囲内となっている。例えば、25μmまたは50μmの厚みを有する接着層14,19が主に使用される。
【0031】
接着層14,19を構成する材料としては、透光性を有するとともに、上述の光屈折率を有する種々の接着材料を用いることができる。例えば、アクリル系粘着材やポリエーテル系粘着材を用いることができる。より具体的には、積水化学製の#5400Aシリーズ、日東電工製のLUCIACSなどが用いられる。また、本明細書において、「接着(層)」は粘着(層)をも含む概念として用いられる。
【0032】
上述の検出制御部25には、タッチパネルセンサ30の後述するセンサ電極からの信号が伝達されており、この検出制御部25により、保護カバー12を介して入力された情報が処理される。具体的には、検出制御部25は、保護カバー12へ導体(典型的には、人間の指)5が接触している際に、保護カバー12への導体5の接触位置を特定し得るように構成された回路(検出回路)を含んでいる。また、検出制御部25が、表示装置15の表示制御部17と連動していてもよい。この場合、検出制御部25は、処理した入力情報を表示制御部17へ送信することができる。この際、表示制御部17は、入力情報に基づいた映像情報を作成し、入力情報に対応した映像を表示パネル16に表示させることができる。これら検出制御部25および表示制御部17の具体的な構成や配置などが特に限られることはない。例えば、検出制御部25および表示制御部17は、表示装置15内に組み入れられる制御基板として構成されてもよく、または、表示装置15とは別体に設けられる制御基板として構成されてもよい。
【0033】
なお、「容量結合」方式および「投影型」の容量結合方式との用語は、タッチパネルの技術分野で用いられる際の意味と同様の意味を有するものとして、本件において用いられている。なお、「容量結合」方式は、タッチパネルの技術分野において「静電容量」方式や「静電容量結合」方式等とも呼ばれており、本件では、これらの「静電容量」方式や「静電容量結合」方式等と同義の用語として取り扱う。典型的な静電容量結合方式のタッチパネル装置は導電体層を含んでおり、外部の導体(典型的には人間の指)がタッチパネルに接触することにより、外部の導体とタッチパネル装置の導電体層との間でコンデンサ(静電容量)が形成される。そして、このコンデンサの形成にともなった電気的な状態の変化に基づき、タッチパネル上において外部導体が接触している位置の位置座標が特定される。また、「投影型」の容量結合方式は、タッチパネルの技術分野において「投影式」の容量結合方式等とも呼ばれており、本件では、この「投影式」の容量結合方式等と同義の用語として取り扱う。「投影型」の容量結合方式とは、典型的には、格子状に配列されたセンサ電極を用いて外部導体が接触している位置を検出する方式であり、膜状の電極を用いる「表面型」の容量結合方式と対比され得る。
【0034】
タッチパネルセンサ
次に図2乃至図3Bを参照して、タッチパネルセンサ30について詳述する。図2乃至図3Bに示すように、タッチパネルセンサ30は、基材フィルム32と、基材フィルム32の観察者側(一側)の面32a上に所定のパターンで設けられた第1透明導電体40と、基材フィルム32の表示装置15側(他側)の面32b上に所定のパターンで設けられた第2透明導電体45と、を有している。
【0035】
このうち基材フィルム32は、タッチパネルセンサ30において誘電体として機能するものである。図3Aに示すように、基材フィルム32は、タッチ位置を検出され得る領域に対応するアクティブエリアAa1と、アクティブエリアAa1に隣接する非アクティブエリアAa2と、を含んでいる。このうちアクティブエリアAa1は、図1に示すように、表示装置15の表示領域A1に対応する領域を占めており、一方、非アクティブエリアAa2は、矩形状のアクティブエリアAa1を四方から周状に取り囲むように、言い換えると、額縁状に形成されている。この非アクティブエリアAa2は、表示装置15の非表示領域A2に対応する領域に形成されている。
【0036】
前述のとおり、基材フィルム32には第1透明導電体40および第2透明導電体45が設けられており、このうち基材フィルム32のアクティブエリアAa1に設けられた第1透明導電体40および第2透明導電体45により、外部導体5との間で容量結合を形成し得る第1センサ電極36aおよび第2センサ電極37aがそれぞれ形成されている(図3A参照)。基材フィルム32、第1透明導電体40および第2透明導電体45はそれぞれ透光性を有しており、このため観察者は、これらを介して、表示装置15に表示された映像を観察することができる。
【0037】
一方、図3Aに示すように、基材フィルム32の非アクティブエリアAa2に設けられた第1透明導電体40および第2透明導電体45により、第1センサ電極36aおよび第2センサ電極37aとの電気的接続を有する第1取出配線36bおよび第2取出配線37bがそれぞれ形成されている。取出配線36b,37bは、その一端においてセンサ電極36a,37aに接続され、また、その他端において、外部導体5の表示面16aへの接触位置を検出するように構成された検出制御部25の検出回路に電気的に接続されている。
【0038】
なお図3Aおよび図3Bに示すように、第1取出配線36bは、第1透明導電体40の一部分上に設けられた第1取出導電体43を更に含んでいてもよい。同様に、第2取出配線37bは、第2透明導電体45の一部分上に設けられた第2取出導電体48(後に図5(d)にて示す)を更に含んでいてもよい。ここで、第1取出導電体43の比抵抗は第1透明導電体40の比抵抗よりも小さくなっており、また第2取出導電体48の比抵抗は第2透明導電体45の比抵抗よりも小さくなっている。このため、第1取出配線36bおよび第2取出配線37bが第1取出導電体43および第2取出導電体48を更に含むことにより、センサ電極36a,37aからの電気信号をより効率良く検出制御部25の検出回路に伝導させることができる。
【0039】
なお図3Bにおいては、第1取出導電体43が単層からなる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第1取出導電体43は、比抵抗の小さな金属層、耐酸化性、耐水性などを有する保護層、および、金属層と保護層の間の密着性を向上させる中間層など、複数の層を含んでいてもよい。同様に、第2取出導電体48も、金属層、保護層および中間層など、複数の層を含んでいてもよい。
【0040】
次に、タッチパネルセンサ30を構成する各要素についてさらに詳述する。
【0041】
透明導電体
はじめに、第1透明導電体40および第2透明導電体45について詳述する。第1透明導電体40および第2透明導電体45は、導電性を有した材料から形成されている。これら透明導電体40,45は、外部導体5の保護カバー12への接触位置を検出するように構成された検出制御部25の検出回路に電気的に接続されている。第1透明導電体40は、基材フィルム32のアクティブエリアAa1に配置された多数の第1センサ部(第1センサ導電体、センサ電極)41と、各第1センサ部41にそれぞれ接続され基材フィルム32の非アクティブエリアAa2に配置された多数の第1接続部(第1端子導電体)42と、を有している。同様に、第2透明導電体45は、基材フィルム32のアクティブエリアAa1に配置された多数の第2センサ部(第2センサ導電体、センサ電極)46と、各第2センサ部46にそれぞれ接続され基材フィルム32の非アクティブエリアAa2に配置された多数の第2接続部(第2端子導電体)47と、を有している。
【0042】
第1透明導電体40の第1センサ部41は、基材フィルム32の一側(観察者側)の面32a上に所定のパターンで配置されている。また、第2透明導電体45の第2センサ部46は、基材フィルム32の他側(表示装置15の側)の面32b上に、第1透明導電体40の第1センサ部41のパターンとは異なる所定のパターンで配置されている。より具体的には、図3Aに示すように、第1透明導電体40の第1センサ部41は、基材フィルム32のフィルム面に沿った一方向に並べて配列された線状導電体として構成されている。また、第2透明導電体45の第2センサ部46は、前記一方向と交差する基材フィルム32のフィルム面に沿った他方向に並べて配列された線状導電体として構成されている。図3Aに示すように、第1センサ部41の配列方向である一方向と、第2センサ部46の配列方向である他方向は、基材フィルム32のフィルム面上において直交している。
【0043】
図3Aに示すように、第1センサ部41をなす線状導電体の各々は、その配列方向(前記一方向)と交差する方向に線状に延びている。同様に、第2センサ部46をなす線状導電体の各々は、その配列方向(前記他方向)と交差する方向に線状に延びている。とりわけ図示する例において、第1センサ部41は、その配列方向(前記一方向)と直交する方向(前記他方向)に沿って直線状に延びており、第2センサ部46は、その配列方向(前記他方向)と直交する方向(前記一方向)に沿って直線状に延びている。
【0044】
本実施の形態において、各第1センサ部41は、直線状に延びるライン部41aと、ライン部41aから膨出した膨出部41bと、を有している。図示する例において、ライン部41aは、第1センサ部41の配列方向と交差する方向に沿って直線状に延びている。膨出部41bは、基材フィルム32のフィルム面に沿ってライン部41aから膨らみ出ている部分である。したがって、各第1センサ部41の幅は、膨出部41bが設けられている部分において太くなっている。図3Aに示すように、本実施の形態において、各第1センサ部41は、膨出部41bにおいて平面視略正方形形状の外輪郭を有するようになっている。
【0045】
第2透明導電体45に含まれる第2センサ部46も、第1透明導電体40に含まれる第1センサ部41と同様に構成されている。すなわち、第2透明導電体45に含まれる各第2センサ46は、直線状に延びるライン部46aと、ライン部46aから膨出した膨出部46bと、を有している。図示する例において、ライン部46aは、第2センサ部46の配列方向と交差する方向に沿って直線状に延びている。膨出部46bは、基材フィルム32のフィルム面に沿ってライン部46aから膨らみ出ている部分である。したがって、各第2センサ部46の幅は、膨出部46bが設けられている部分において太くなっている。図3Aに示すように、本実施の形態において、各第2センサ部46は、膨出部46bにおいて平面視略正方形形状の外輪郭を有するようになっている。
【0046】
なお、図3Aに示すように、基材フィルム32のフィルム面の法線方向から観察した場合(すなわち、平面視において)、第1透明導電体40に含まれる各第1センサ部41は、第2透明導電体45に含まれる多数の第2センサ部46と交差している。そして、図3Aに示すように、第1透明導電体40の膨出部41bは、第1センサ部41上において、隣り合う二つの第2センサ部46との交差点の間に配置されている。同様に、基材フィルム32のフィルム面の法線方向から観察した場合、第2透明導電体45に含まれる各第2センサ部46は、第1透明導電体40に含まれる多数の第1センサ部41と交差している。そして、第2透明導電体45の膨出部46bも、第2センサ部46上において、隣り合う二つの第1センサ部41との交差点の間に配置されている。さらに、本実施の形態において、第1透明導電体40に含まれる第1センサ部41の膨出部41bと、第2透明導電体45に含まれる第2センサ部46の膨出部46bとは、基材フィルム32のフィルム面の法線方向から観察した場合に重ならないように配置されている。つまり、基材フィルム32のフィルム面の法線方向から観察した場合、第1透明導電体40に含まれる第1センサ部41と第2透明導電体45に含まれる第2センサ部46とは、各センサ部41,46のライン部41a、46aのみにおいて交わっている。
【0047】
上述したように、第1透明導電体40は、このような第1センサ部41に接続された第1接続部42を有している。第1接続部42は、第1センサ部41の各々に対し、接触位置の検出方法に応じて一端または両端に設けられている。各第1接続部42は、対応する第1センサ部41の端部からそれぞれ線状に延び出している。同様に、第2透明導電体45は、第2センサ部46に接続された第2接続部47を有している。第2接続部47は、第2センサ部46の各々に対し、接触位置の検出方法に応じて一端または両端に設けられている。各第2接続部47は、対応する第2センサ部46の端部からそれぞれ線状に延び出している。図3Aに示すように、本実施の形態において、第1接続部42は第1センサ部41と同一の材料から一体的に形成され、第2接続部47は第1センサ部46と同一の材料から一体的に形成されている。
【0048】
第1透明導電体40および第2透明導電体45の材料としては、透明性および所要の導電性を有するものが用いられる。このような材料として、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化亜鉛、酸化インジウム、アンチモン添加酸化錫、フッ素添加酸化錫、アルミニウム添加酸化亜鉛、カリウム添加酸化亜鉛、シリコン添加酸化亜鉛や、酸化亜鉛−酸化錫系、酸化インジウム−酸化錫系、酸化亜鉛−酸化インジウム−酸化マグネシウム系などの金属酸化物を挙げることができ、また、これらの金属酸化物が2種以上複合されてもよい。第1透明導電体40および第2透明導電体45の形成方法は特には限定されず、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法、塗工法、印刷法などを用いることができる。本実施の形態においては、第1透明導電体40および第2透明導電体45が、スパッタリング法により形成されたITOからなる。
【0049】
なおITOからなる透明導電体40、45の光屈折率は、光波長550nm付近において例えば1.97となっており、光波長400nm付近において例えば2.12となっている。光屈折率の算出方法は特には限定されないが、例えばエリプソメーターを用いた測定から算出される。また後述する基材フィルム32の各層においても、当該各層の光屈折率が例えばエリプソメーターを用いた測定から算出される。
【0050】
ITOからなる透明導電体40、45の厚みは、好ましくは22.7nm以下となっている。膜厚が小さい場合、例えば40nm以下の場合、一般に、透明導電体40、45の厚みが小さいほど、透明導電体40、45に由来する光の反射率は小さくなり、吸収項の影響が小さいため透過率が高くなる。
【0051】
透明導電体40、45とフィルム本体33との間にインデックスマッチング層(後述)が介在されていない場合、一般に、透明導電体40、45における光の反射率が小さいほど、タッチパネルセンサ30のうち透明導電体40、45がパターニングされている領域と透明導電体40、45がパターニングされていない領域との間における光の反射率の差も小さくなる。このため、透明導電体40、45の厚みをより小さくすることにより、タッチパネルセンサ30のうち透明導電体40、45がパターニングされている領域と透明導電体40、45がパターニングされていない領域との間における光の反射率の差を小さくすることができ、これによって、透明導電体40、45のパターンがタッチパネルセンサ30の使用者から視認されるのを防ぐことができる。
【0052】
一方、透明導電体40、45とフィルム本体33との間にインデックスマッチング層を介在させると、タッチパネルセンサ30のうち透明導電体40、45がパターニングされている領域における反射率と、透明導電体40、45がパターニングされていない領域における反射率とが変化する。この際、インデックスマッチング層を適切に設計することにより、透明導電体40、45がパターニングされている領域における反射率、または、透明導電体40、45がパターニングされていない領域における反射率のうちどちらか一方をより大きく変化させることができる。
インデックスマッチング層が介在されていない場合、一般に、透明導電体40、45がパターニングされている領域における反射率は、透明導電体40、45がパターニングされていない領域における反射率よりも大きくなっている。ここで、インデックスマッチング層を介在させることにより、例えば、透明導電体40、45がパターニングされている領域における反射率と、透明導電体40、45がパターニングされていない領域における反射率とをともに低下させることができるが、この際、インデックスマッチング層を適切に設計することにより、透明導電体40、45がパターニングされている領域における反射率の低下の程度を、透明導電体40、45がパターニングされていない領域における反射率の低下の程度よりも大きくすることができる。これによって、タッチパネルセンサ30のうち透明導電体40、45がパターニングされている領域と透明導電体40、45がパターニングされていない領域との間における光の反射率の差を小さくすることができる。
ここでインデックスマッチング層とは、少なくとも一対の高屈折率層および低屈折率層を含む層のことである。このようなインデックスマッチング層が透明導電体40、45とフィルム本体33との間に介在されている場合、薄膜干渉の効果が生じ、これによって、タッチパネルセンサ30のうち透明導電体40、45がパターニングされている領域と透明導電体40、45がパターニングされていない領域との間における光の反射率および透過率の差を小さくすることができる。本実施の形態においては、後述する第1高屈折率層72および第1低屈折率層73により第1透明導電体40とフィルム本体33との間のインデックスマッチング層(後述する第1機能層70)が構成されており、また後述する第2高屈折率層77および第2低屈折率層78により第2透明導電体45とフィルム本体33との間のインデックスマッチング層(後述する第2機能層75)が構成されている。
【0053】
本実施の形態においては、透明導電体40、45とフィルム本体33との間にインデックスマッチング層を介在させることにより、タッチパネルセンサ30のうち透明導電体40、45がパターニングされている領域と透明導電体40、45がパターニングされていない領域との間における光の反射率および透過率の差を小さくすることを意図している。
【0054】
ところで、一般に、透明導電体40、45の厚みが小さいほど、透明導電体40、45の電気抵抗は大きくなる。透明導電体40、45の電気抵抗が大きくなると、透明導電体40、45からなるセンサ電極36a,37aから検出制御部25の検出回路に送られる電気信号が阻害されることが考えられる。このため、透明導電体40、45の厚みを従来よりも小さくする場合、透明導電体40、45の電気抵抗が過大にならないよう、透明導電体40、45の材料として従来よりも比抵抗の小さい材料を用いることが好ましい。例えば、透明導電体40、45の比抵抗は4×10−6Ωm(23℃、55%RH)以下であることが好ましい。
【0055】
なお、透明導電体40、45により電気信号を送るという観点からは、透明導電体40、45の厚みを可能な限り大きくし、これによって透明導電体40、45の面積抵抗率をより小さくすることが好ましい。従って、透明導電体40、45がパターニングされている領域と透明導電体40、45がパターニングされていない領域との間における光の反射率および透過率の差を十分に小さくした上で、透明導電体40、45の厚みを可能な限り大きくすることが望まれる。透明導電体40、45における好ましい面積抵抗率の値は、例えば300Ω/□以下となっている。
【0056】
取出導電体
次に、第1取出導電体43および第2取出導電体48について詳述する。上述したように、第1取出導電体43は、第1透明導電体40の一部分上に配置されており、第2取出導電体48は、第2透明導電体45の一部分上に配置されている。より具体的には、第1取出導電体43は、第1透明導電体40の第1接続部42の一部分上に配置されており、第2取出導電体48は、第2透明導電体45の第2接続部47の一部分上に配置されている。すなわち、第1取出導電体43は、基材フィルム32の一側の面32aにおいて、非アクティブエリアAa2に配置されており、第2取出導電体48は、基材フィルム32の他側の面32bにおいて、非アクティブエリアAa2に配置されている。
【0057】
図3Aに示すように、第1透明導電体40の第1接続部42および第2透明導電体45の第2接続部47は線状に形成されている。そして、第1取出導電体43は、線状に形成された第1接続部42のうちの第1センサ部41への接続箇所近傍の部分以外の部分上を、当該部分と同一のパターンで線状に延びている。同様に、第2取出導電体48は、線状に形成された第2接続部47のうちの第2センサ部46への接続箇所近傍以外の部分上を、当該部分と同一のパターンで線状に延びている。
【0058】
第1取出導電体43は、第1透明導電体40の第1センサ部41からなる第1センサ電極36aを検出制御部25へ接続させるための第1取出配線36bを、第1透明導電体40の第1接続部42とともに構成している。また、第2取出導電体48は、第2透明導電体45の第2センサ部46からなる第2センサ電極37aを検出制御部25へ接続させるための第2取出配線37bを、第2透明導電体45の第2接続部47とともに構成している。このような第1取出導電体43および第2取出導電体48は非アクティブエリアAa2に配置されていることから、透光性を有した材料から形成される必要はなく、高い導電性を有した金属などの材料から形成され得る。なお図3Aに示すように、第1接続部42と第1取出導電体43とを含む第1取出配線36bの幅は、第1センサ電極36aとの接続部分において第1センサ電極36aの幅よりも大きくなるよう形成されている。同様に、第2接続部47と第2取出導電体48とを含む第2取出配線37bは、第2センサ電極37aとの接続部分において、その幅が第2センサ電極37aの幅よりも大きくなるよう形成されている。また図3Aに示すように、取出配線36b,37bのうち検出制御部25との接続端子部36c,37cの幅は、取出配線36b,37bのその他の部分の幅よりも大きくなっている。
【0059】
このような構成からなるタッチパネルセンサ30においては、取出導電体43,48および透明導電体40,45の接続部42,47からなる取出配線36b,37bは、図示しない外部接続配線(例えばフレキシブルプリント基板)を介し、検出制御部25に接続されている。
【0060】
次に、第1取出導電体43および第2取出導電体48を形成する材料について詳述する。第1取出導電体43および第2取出導電体48は、第1透明導電体40および第2透明導電体45をなす材料よりも高い導電率(電気伝導率)を有する材料から形成されている。具体的には、遮光性を有するとともに、ITO等の透明導電体40,45よりも格段に高い導電率を有する、例えばアルミニウム、モリブデン、パラジウム、銀、クロム、銅等の金属、または、これらの金属を2種以上混合してなる合金、例えば銀合金を材料として形成されている。このうち銀合金は、一般に配線材料として用いられるクロムよりも比抵抗が小さく、第1取出導電体43および第2取出導電体48の材料として好ましい。このような銀合金の一例として、銀、パラジウム、銅を含んでなるAPC合金を挙げることができる。
【0061】
基材フィルム
次に図4(a)(b)を参照して、基材フィルム32について詳述する。本実施の形態において、基材フィルム32は、複数の層から構成されている。ここで、基材フィルム32の各層は、接着層を介しての接合を用いることなく、例えばスパッタリングにより一体に形成されている。なお、基材フィルム32の各層を形成する方法がスパッタリングに限られることはなく、各層の構成などに応じて、塗布などの方法を適宜用いることができる。
【0062】
図4(a)は、アクティブエリアAa1における基材フィルム32の断面を示す図である。図4(a)に示すように、基材フィルム32は、透明なフィルム本体33と、フィルム本体33の第1透明導電体40側(一側)の面33a上に設けられた第1アンダーコート層71と、第1アンダーコート層71の第1透明導電体40側(一側)の面71a上に設けられた第1高屈折率層72と、第1高屈折率層72の第1透明導電体40側(一側)の面72a上に設けられた第1低屈折率層73と、フィルム本体33の第2透明導電体45側(他側)の面33b上に設けられた第2アンダーコート層76と、第2アンダーコート層76の第2透明導電体45側(他側)の面76b上に設けられた第2高屈折率層77と、第2高屈折率層77の第2透明導電体45側(他側)の面77b上に設けられた第2低屈折率層78と、を有している。このうち、第1高屈折率層72と第1低屈折率層73とにより第1機能層70が構成され、第2高屈折率層77と第2低屈折率層78とにより第2機能層75が構成されている。
【0063】
以下、基材フィルム32を構成する各層について詳述する。はじめにフィルム本体33について詳述する。
【0064】
(フィルム本体)
フィルム本体33の材料としては、透明性の高い材料が好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、脂肪族環状ポリオレフィン、ノルボルネン系の熱可塑性透明樹脂などの可撓性フィルムを挙げることができる。本実施の形態においては、フィルム本体33が、約1.66(光波長550nm)の光屈折率を有するPETから形成されている。PETからなるフィルム本体33の厚みは特に限定されないが、例えば50〜200μmの範囲内となっている。
【0065】
(アンダーコート層)
次に第1アンダーコート層71および第2アンダーコート層76について詳述する。アンダーコート層71,76は、フィルム本体33中に発生する低分子重合体(オリゴマー)が高屈折率層72,77側に入り込むのを防ぐための層であり、例えばアクリル樹脂から形成されている。アクリル樹脂からなるアンダーコート層71,76の光屈折率は例えば約1.51(光波長550nm)となっており、その厚みは例えば3000nmとなっている。フィルム本体33のオリゴマーは、一般に、透明導電体40、45の形成工程において基材フィルム32を加熱する際に発生する。
【0066】
なお、オリゴマーが適切に防がれない場合、オリゴマーが析出し結晶化することにより、タッチパネルセンサ30の白濁化が起こることが考えられる(例えば特開2004−66790号公報参照)。また、高屈折率層72,77、低屈折率層73,78または透明導電体40,45の成膜時の予熱の際にオリゴマーが析出すると、白濁化だけでなく、高屈折率層72,77、低屈折率層73,78または透明導電体40,45にピンホールなどの欠陥が生じることが考えられる。本実施の形態においては、アンダーコート層71,76を設けることにより、これらの不利な現象が生じるのが抑制されている。
【0067】
(機能層)
次に第1機能層70および第2機能層75について詳述する。はじめに、第1機能層70および第2機能層75を設ける目的について説明する。
【0068】
(機能層の目的)
上述のように、フィルム本体33と透明導電体40,45との光屈折率には約0.3の差がある。このようにフィルム本体33と透明導電体40,45との光屈折率の差が大きい場合、一般に、基材フィルム32のうち透明導電体40,45が設けられている領域と設けられていない領域とにおいて、光の反射率、透過率が大きく異なることが考えられる。また、ITOからなる透明導電体40,45における光の吸収は、一般に、長波長側よりも、波長450nm以下の短波長側で大きくなっている。このため、基材フィルム32のうち透明導電体40,45が設けられている領域を透過した光のスペクトルが黄色くなることも考えられる。第1機能層70および第2機能層75はこのような課題に対応するために設けられる層である。
【0069】
(機能層の構成)
次に、第1機能層70および第2機能層75の構成について説明する。上述のように、機能層70,75は高屈折率層72,77と低屈折率層73,78とを含んでいる。このうち高屈折率層72,77の光屈折率は、透明導電体40,45の光屈折率よりも大きくなっており、また低屈折率層73,78の光屈折率は、透明導電体40,45の光屈折率よりも小さくなっている。このような構成からなる機能層70,75をフィルム本体33と透明導電体40,45との間に設けることにより、基材フィルム32のアクティブエリアAa1のうち透明導電体40,45が設けられている領域における光の反射率(図4(a)において矢印(1),(3)で示す領域における光の反射率)と、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の反射率(図4(a)において矢印(2),(4)で示す領域における光の反射率)と、の差を小さくすることができる。同様に、機能層70,75を設けることにより、透明導電体40,45が設けられている領域における光の透過率と、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の透過率と、の差を小さくすることもできる。
【0070】
また上述の構成を有する機能層70,75を設けることにより、基材フィルム32のうち透明導電体40,45が設けられている領域を透過した光のスペクトルを、各波長域で平坦なスペクトルに近づけることができる。図4(b)において左側に示すスペクトルは、機能層70,75が設けられていない場合の透過光のスペクトルであり、図4(b)において右側に示すスペクトルは、機能層70,75が設けられている場合の透過光のスペクトルである。図4(b)に示すように、フィルム本体33と透明導電体40,45との間に機能層70,75を設けることにより、各波長域で均一な透過率を実現することが可能となる。このようにして、透過光において黄色の成分のみが過大となるのを防ぐことができ、この場合、透過光をL*a*b*表色系で表したときのb*の絶対値は例えば1.5以下となっている。
【0071】
(機能層の設計方法)
次に上述の機能を有する機能層70,75を設計する方法について説明する。はじめに、タッチパネルセンサ30における光学特性の目標を決定する。例えば、基材フィルム32のアクティブエリアAa1のうち、透明導電体40,45が設けられている領域における光の反射率および透過率と、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の反射率および透過率と、の差がそれぞれ0.5%以下であって、基材フィルム32のうち透明導電体40,45が設けられている領域を透過した光のb*の絶対値が1.5以下であることを光学特性の目標とする。
【0072】
なお、L*a*b*表色系において、L*は明度を表し、a*,b*は色相と彩度を表す量である。a*およびb*に関しては、その絶対値が小さい値領域にて、無彩色に近い色相となる。b*が+1.5を超える領域では透過色が黄色味を帯びる様になり、また−1.5未満の領域では透過色が青味を帯びる様になる。これらの領域では、表示装置15のカラー表示に透明導体40、45の透過色が悪影響を与える。従って、b*の絶対値が1.5以下である無彩色の領域の値を示す必要がある。
【0073】
次に、基材フィルム32の各層の厚みおよび光屈折率と、透明導電体40,45の厚みおよび光屈折率とに基づいて、シミュレーションにより反射率、透過率およびb*の値を求める。そして、高屈折率層72,77および低屈折率層73,78の厚みと光屈折率とを可変のパラメータとして、上述の光学特性の目標を達成するパラメータを探索する。これによって、高屈折率層72,77および低屈折率層73,78の厚みおよび光屈折率の適切な範囲を算出し、このようにして、目標とする光学特性を得ることができる機能層70,75を設計する。なおシミュレーション用のツールとしては、例えばサイバネットシステムズ(株)製の薄膜設計ソフトウェア(OPTAS−FILM)を用いることができる。
【0074】
なお後に実施例において示すように、シミュレーションは、基材フィルム32の各層の厚みおよび光屈折率と、透明導電体40,45の厚みおよび光屈折率に加えて、透明導電体40,45上に設けられる接着層14,19の光屈折率も考慮して実施される。
【0075】
なお、本件発明者らが実験を重ねたところ、機能層70,75の設計において、高屈折率層72,77および低屈折率層73,78の光屈折率の波長依存性を考慮すること、とりわけ高屈折率層72,77の光屈折率の波長依存性を考慮することが重要であることが知見された。より具体的に言えば、後述する実施例での実験結果で支持されているように、光波長550nm近傍の波長領域において上述の光学特性の目標を達成するとともに、光波長400nm近傍の短波長領域においても上述の光学特性の目標を達成するよう、高屈折率層72,77の厚みおよび光屈折率の適切な範囲を算出するのが重要であることが知見された。例えば、上述の目標とする光学特性を得ることができる基材フィルム32、透明導電体40,45および接着層14,19は、以下の表1に示す構成となっている。
【表1】

【0076】
次に高屈折率層72,77および低屈折率層73,78の材料について詳述する。高屈折率層72,77の材料としては、目標とする光学特性を達成することのできる光屈折率を有する材料であれば特に限定されず、例えば波長400nmの光に対する光屈折率が2.36となり、波長550nmの光に対する光屈折率が2.18となっている五酸化ニオブ(Nb)が用いられる。また低屈折率層73,78の材料としても、目標とする光学特性を達成することのできる光屈折率を有する材料であれば特に限定されず、例えば1.46の光屈折率を有する二酸化珪素(SiO)が用いられる。
【0077】
次に、以上のような構成からなるタッチパネルセンサ30を製造する方法について説明する。
【0078】
はじめに、図5を参照して、タッチパネルセンサ30を作製するための元材としての積層体(ブランクスとも呼ばれる)50を形成する工程について説明する。
積層体の形成工程
【0079】
はじめに、フィルム本体33を準備し、次に、フィルム本体33の一側の面33aおよび他側の面33bにそれぞれ第1アンダーコート層71および第2アンダーコート層76を形成する(図5(a)参照)。アンダーコート層71,76は、例えばコーティングにより形成される。この場合、フィルム本体33とアンダーコート層71,76とが一体になっていてもよい。
【0080】
次に図5(b)に示すように、第1アンダーコート層71の一側の面71aに第1機能層70を形成し、第2アンダーコート層76の他側の面76bに第2機能層75を形成する。前述のように、第1機能層70は第1高屈折率層72と第1低屈折率層73とを含み、第2機能層75は第2高屈折率層77と第2低屈折率層78とを含んでいる。高屈折率層72,77および低屈折率層73,78は、それぞれスパッタリングにより形成される。このようにして、フィルム本体33と、アンダーコート層71,76と、高屈折率層72,77と、低屈折率層73,78とを有する基材フィルム32が形成される。
【0081】
次に図5(c)を参照して、基材フィルム32の一側の面32aに第1透明導電層52aを形成し、基材フィルム32の他側の面32bに第2透明導電層52bを形成する工程について説明する。ここで第1透明導電層52a、第2透明導電層52bはそれぞれ、パターニングされることにより第1透明導電体40および第2透明導電体45となる層である。第1透明導電層52a、第2透明導電層52bとしては、透光性および導電性を有する材料が用いられ、例えばITOが用いられる。ITOからなる透明導電層52a,52bは、例えばスパッタリングにより基材フィルム32上に形成される。これによって、図5(c)に示すように、基材フィルム32と透明導電層52a,52bとを含む中間積層体80が得られる。なお、好ましくは、透明導電層52a,52b(透明導電体40、45)は、錫を2〜4重量%含むITOからなる。このような組成のITOを用いることにより、ITOの結晶化をより促進することができ、これによって、透明導電層52a,52b(透明導電体40,45)の厚みをより小さくすることが可能となる。
【0082】
次に図5(d)に示すように、中間積層体80の一方の側の面80aに第1遮光導電層54aを形成し、透明導電層付フィルム80の他方の側の面80bに第2遮光導電層54bを形成する。ここで第1遮光導電層54a、第2遮光導電層54bはそれぞれ、パターニングされることにより第1取出導電体43および第2取出導電体48となる層である。このようにして、タッチパネルセンサ30を作製するために用いられる積層体50であって、基材フィルム32と透明導電層52a,52bと遮光導電層54a,54bとを含む積層体50が形成される。
【0083】
タッチパネルセンサの作製工程
その後、上述の工程により得られた積層体50に成膜やパターニング等の処理(加工)を行っていくことにより、タッチパネルセンサ30を作製する。例えばフォトリソグラフィー法を用いて第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bをパターニングすることにより、第1取出導電体43および第2取出導電体48が作製される。同様に、フォトリソグラフィー法を用いて第1透明導電層52aおよび第2透明導電層52bをパターニングすることにより、第1透明導電体40および第2透明導電体45が作製される。なお第1透明導電層52aおよび第2透明導電層52bをパターニングする際、第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bがマスクとして利用されてもよい。このようにして、図3Aおよび図4(a)に示すタッチパネルセンサ30が得られる。
【0084】
入出力装置の作製工程
その後、得られたタッチパネルセンサ30に、第1接着層14を介して保護カバー12を接合する。これによって、保護カバー(透明シート)12付タッチパネルセンサ30が得られる。また、保護カバー12付タッチパネルセンサ30を、第2接着層19を介して表示装置15に接合する。これによって、図1および図2に示す入出力装置10が得られる。次に、この入出力装置10を使用する際の作用について説明する。
【0085】
入出力装置の作用
まず、このような入出力装置10においては、表示装置15の表示パネル16によって映像を表示することによって、観察者は、保護カバー12およびタッチパネルセンサ30を介して映像を観察することができる。
【0086】
また、この入出力装置10において、タッチパネルセンサ30および保護カバー12がタッチパネル装置20の一部分を構成し、外部導体5、典型的には人間の指5が保護カバー12上に接触(接近)したこと検知することができるとともに、保護カバー12上における外部導体5が接触(接近)した位置を検出することができる。
【0087】
具体的には、まず、外部の導体(例えば、人間の指)5が保護カバー12に接触すると、当該外部導体5と、外部導体5による保護カバー12への接触位置の近傍に位置する透明導電体40,45の各センサ部41,46と、が電極として機能し、電界が形成される。この際、センサ電極36a,37aを構成する透明導電体40,45のセンサ部41,46と、外部導体5と、の間に位置する保護カバー12および基材フィルム32等は誘電体として機能する。すなわち、外部導体5が保護カバー12に接触することにより、センサ部41,46と外部導体5とを電極とするコンデンサが形成される。
【0088】
タッチパネル装置20の検出制御部25の検出回路は、各センサ部41,46に接続され、各センサ部41,46と外部導体5との間の静電容量を検出することができるようになっている。そして、検出制御部25が、各センサ部41,46と外部導体5との間の静電容量の変化を検出することによって、外部導体5がいずれの第1センサ部41に対面しているか、並びに、外部導体5がいずれの第2センサ部46に対面しているかを特定することができる。
【0089】
すなわち、検出制御部25の検出回路は、アクティブエリアAa1において前記一方向に並べて配列された第1透明導電体40に含まれる多数の第1センサ部41のうちの外部導体5と対面している第1センサ部(線状導電体)を特定することによって、前記一方向に延びる座標軸上における外部導体5の位置を特定することができる。同様に、検出制御部25の検出回路は、アクティブエリアAa1において前記他方向に並べて配列された第2透明導電体45に含まれる多数の第2センサ部46のうちの外部導体5と対面している第2センサ部(線状導電体)を特定することによって、前記他方向に延びる座標軸上における外部導体5の位置を特定することができる。このようにして、タッチパネル装置20(保護カバー12)への外部導体5の接触位置を二つの方向において検出することにより、外部導体5のタッチパネル装置20の表面への接触位置の位置座標を、タッチパネル装置20の表面上で精度良く特定することができる。なお、投影型容量結合方式のタッチパネルにおいて接触位置を検出する様々な方法(原理)が、種々の文献に開示されており、本明細書では、これ以上の説明を省略する。
【0090】
ここで本実施の形態によれば、保護カバー12付タッチパネルセンサ30は、タッチパネルセンサ30と、タッチパネルセンサ30の一側に第1接着層14を介して接着された保護カバー12とからなっている。このうちタッチパネルセンサ30は、基材フィルム32と、基材フィルム32の一側の面32a上にパターニングされた第1透明導電体40と、を備えている。また基材フィルム32は、透明なフィルム本体33と、フィルム本体33の第1透明導電体40側の面33a上に設けられた第1アンダーコート層71と、第1アンダーコート層71の第1透明導電体40側の面71a上に設けられた第1高屈折率層72と、第1高屈折率層72の第1透明導電体40側の面72a上に設けられた第1低屈折率層73と、フィルム本体33の第2透明導電体45側の面33b上に設けられた第2アンダーコート層76と、第2アンダーコート層76の第2透明導電体45側の面76b上に設けられた第2高屈折率層77と、第2高屈折率層77の第2透明導電体45側の面77b上に設けられた第2低屈折率層78と、を有している。そして、透明導電体40,45は、その厚みが22.7nm以下となっており、かつその光屈折率が、波長550nmの光に対して1.97+0.13/−0.3の範囲内となっており、波長400nmの光に対して2.12+0.13/−0.3の範囲内となっている。また、タッチパネルセンサ30と保護カバー12との間に介在された第1接着層14は、その光屈折率が1.4〜1.8の範囲内となっている。
このように、大気の光屈折率と第1透明導電体40の光屈折率との間の適切な範囲内に第1接着層14の光屈折率を設定することにより、このような第1接着層14が設けられていない場合に比べて、第1透明導電体40において光が反射されるのを抑制することができる。これによって、保護カバー12付タッチパネルセンサ30における光の透過率を向上させることができる。
【0091】
また本実施の形態によれば、アンダーコート層71,76および低屈折率層73,78の光屈折率は、透明導電体40,45および高屈折率層72,77の光屈折率よりも小さくなっている。従って、高屈折率層72,77と低屈折率層73,78とから構成される機能層70,75が、インデックスマッチング層として機能することができる。このような機能層70,75をフィルム本体33と透明導電体40,45との間に設けることにより、薄膜干渉の効果を生じさせることができる。このことにより、基材フィルム32のアクティブエリアAa1のうち透明導電体40,45が設けられている領域における光の反射率と、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の反射率と、の差を小さくすることができる。同様に、高屈折率層72,77と低屈折率層73,78とからなる機能層70,75をフィルム本体33と透明導電体40,45との間に設けることにより、透明導電体40,45が設けられている領域における光の透過率と、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の透過率と、の差を小さくすることもできる。このため、タッチパネルセンサ30のうち透明導電体40,45がパターニングされている領域とパターニングされていない領域との間における光の透過率および反射率の差を小さくすることができる。このことにより、透明導電体40,45のパターンが保護カバー12付タッチパネルセンサ30の外部から視認されるのを防ぐことができ、これによって、保護カバー12付タッチパネルセンサ30の意匠性を向上させることができる。
【0092】
さらに高屈折率層72,77と低屈折率層73,78とからなる機能層70,75をフィルム本体33と透明導電体40,45との間に設けることにより、基材フィルム32のうち透明導電体40,45が設けられている領域を透過した光のスペクトルを、各波長域で平坦なスペクトルとすることができ、例えば、透過光をL*a*b*表色系で表したときのb*の絶対値を1.5以下とすることができる。
【0093】
変形例
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、変形の一例について説明する。
【0094】
例えば、上述した実施の形態において、第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bを含む積層体50を準備するとともに、フォトリソグラフィー法を用いて第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bをパターニングすることにより、第1取出導電体43および第2取出導電体48が得られる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、スクリーン印刷法などを用いて基材フィルム32上に導電性ペーストを印刷することにより、第1取出導電体43および第2取出導電体48を形成してもよい。また、センサ電極36a,37aから接続端子部36c,37cまでの距離が十分に短い場合、透明導電体40,45のみによって取出配線36b,37bが構成されていてもよい。
【0095】
さらに、上述した実施の形態において、積層体(ブランクス)50において、基材フィルム32の両側に透明導電層52a,52bおよび被覆導電層54a,54bがそれぞれ設けられている例を示したが、これに限られない。基材フィルム32の一つの面上のみに透明導電層および被覆導電層が設けられているようにしてもよい。この場合、基材フィルム32の一つの面上に、上述した実施の形態のセンサ電極36a,37aおよび取出配線36b,37bが得られるようになる。
【0096】
さらに、上述した実施の形態において、第1透明導電体40の第1センサ部41はライン部41aと膨出部41bとを有し、第2透明導電体45の第2センサ部46はライン部46aと膨出部46bとを有している例を示した。また、上述した実施の形態において、膨出部41b,46bが平面視略正方形形状に形成されている例を示した。しかしながら、これに限られず、一例として、膨出部41b,46bが、平面視において、正方形以外の菱形等の四角形形状、さらには、多角形形状や円形状等であってもよい。また、センサ部41,46が、膨出部41b,46bを有さず、直線状の輪郭を有するようにしてもよい。
【0097】
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
【実施例】
【0098】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0099】
実施例1
本発明の一例による保護カバー12付タッチパネルセンサ30の基材フィルム32について、フィルム本体33、熱硬化型アクリル樹脂からなるアンダーコート層71,76、五酸化ニオブ(Nb)からなる高屈折率層72,77、および二酸化珪素(SiO)からなる低屈折率層73,78の光屈折率(実数部nおよび吸収項k)および厚みを測定した。また、本発明の一例による保護カバー12付タッチパネルセンサ30について、ITOからなる透明導電体40,45、および接着層14,19の光屈折率(実数部nおよび吸収項k)および厚みを測定した。結果を表2に示す。なお、光屈折率の測定は、光波長380nm〜780nmの範囲内で光波長を5nm刻みで変化させながら行った。なお、後述するシミュレーションにおいては、大気の光屈折率(実数部nおよび吸収項k)をn=1、k=0として扱った。
【表2】

【0100】
表2に示すように、光屈折率が高い層、すなわち高屈折率層72,77および透明導電体40,45においては、光波長によって光屈折率が大きく変化していた。光波長に対して、各層の光屈折率(実数部n)をプロットした結果を図6に示す。図6に示すように、光波長が400nmから550nmになると、透明導電体40,45において光屈折率が0.15だけ小さくなっており、高屈折率層72,77において光屈折率が0.18だけ小さくなっていた。また光波長が550nmから780nmになると、透明導電体40,45において光屈折率が0.12だけ小さくなっており、高屈折率層72,77において光屈折率が0.07だけ小さくなっていた。すなわち、400〜550nmでは透明導電体40,45の屈折率変化より高屈折率層72,77の屈折率変化が大きく、550〜780nmでは高屈折率層72,77の屈折率変化より透明導電体40,45の屈折率変化が大きかった。
【0101】
測定された保護カバー12付タッチパネルセンサ30の各構成要素の厚みおよび光屈折率に基づいて、シミュレーションにより、透明導電体40,45が設けられている領域における光の反射率および透過率の値と、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の反射率および透過率の値との差を求めた。またシミュレーションにより、透明導電体40,45が設けられている領域におけるb*を求めた。以下、詳細について説明する。
【0102】
(シミュレーション条件)
透明導電体40,45が設けられている領域に関しては、以下の層構成を仮定して、フィルム本体とアンダーコート層の界面〜透明導電体と接着層の界面の間に存在する各層による透過率、反射率を求めるシミュレーションを行った。
フィルム本体(出射側媒質)/アンダーコート層/高屈折率層/低屈折率層/透明導電体/接着層(入射側媒質)
この場合、後述する実施例においては、接着層の屈折率、アンダーコート層の屈折率および厚み、高屈折率層の屈折率および厚み、低屈折率層の屈折率および厚み、透明導電体の屈折率および厚みを適宜変化させながらシミュレーションを行った。なお表2に示すように、フィルム本体33および接着層14,19の厚みは、その他の構成要素の厚みに比べて非常に大きくなっている。従って、本実施例および後述する実施例においては、特に断らない限り、フィルム本体33および接着層14,19の厚みを無限大に設定してシミュレーションが行われている。またすべてのシミュレーションにおいて、光の入射角度を0度(垂直入射)に設定した。
【0103】
透明導電体40,45が設けられていない領域に関しては、以下の層構成を仮定して、フィルム本体とアンダーコート層の界面〜低屈折率層と接着層の界面の間に存在する各層による透過率、反射率を求めるシミュレーションを行った。
フィルム本体(出射側媒質)/アンダーコート層/高屈折率層/低屈折率層/接着層(入射側媒質)
この場合、後述する実施例においては、接着層の屈折率、アンダーコート層の屈折率および厚み、高屈折率層の屈折率および厚み、低屈折率層の屈折率および厚みを適宜変化させながらシミュレーションを行った。なお表2に示すように、フィルム本体33および接着層14,19の厚みは、その他の構成要素の厚みに比べて非常に大きくなっている。従って、本実施例および後述する実施例においては、特に断らない限り、フィルム本体33および接着層14,19の厚みを無限大に設定してシミュレーションが行われている。またすべてのシミュレーションにおいて、光の入射角度を0度(垂直入射)に設定した。
【0104】
(評価項目1 透過率)
透明導電体40,45が設けられている領域および透明導電体40,45が設けられていない領域における光の透過スペクトルをシミュレーションにより求めた。結果を図7Aに示す。図7Aに示すように、光波長380nm〜780nmの範囲内において、光の透過スペクトルの周期的な乱れ(ハンチング)が見られた。このようなハンチングの程度は、主にアンダーコート層71,76の厚みに依存していると考えられる。
【0105】
透明導電体40,45が設けられていない領域における光の透過スペクトルと、透明導電体40,45が設けられている領域における光の透過スペクトルとの差(透過率差)を図7Bに示す。ここで、透過率差=(透明導電体40,45が設けられていない領域における透過率)−(透明導電体40,45が設けられている領域における透過率)となっている(後述する実施例においても同様である)。図7Bに示すように、透過率差についても、光波長380nm〜780nmの範囲内においてハンチングが見られた。このハンチングは、図7Bに示すように、透過率差が0%となる線(図7Bにおいて符号81で示す点線)をほぼ中心線として生じていた。このようにハンチングが0%線81をほぼ中心として生じることは、透過率差が実質的にゼロに近いことを意味している。また、波長が短いほどハンチングの振幅が大きくなるのが確認された。
【0106】
シミュレーションにより求めた透過スペクトルから、XYZ表色系における等色関数を用いて、透明導電体40,45が設けられている領域および透明導電体40,45が設けられていない領域各々について、XYZ表色系におけるY値を求めた。具体的な算出方法はJIS Z8701に規定されており、ここでの詳細な説明は省略する。この際、色の表示に用いる標準の光の分光分布として、標準の光Cの分光分布を用いた。次に、透明導電体40,45が設けられている領域におけるY値と、透明導電体40,45が設けられていない領域におけるY値との差(以下、ΔY(透過)と称される。後述する実施例においても同様である。)を求めた。結果、ΔY(透過)が0.0557%となっていた。
【0107】
(評価項目2 反射率)
透明導電体40,45が設けられている領域および透明導電体40,45が設けられていない領域における光の反射スペクトルをシミュレーションにより求めた。結果を図7Cに示す。図7Cに示すように、光波長380nm〜780nmの範囲内において、光の透過スペクトルの場合と同様に、光の反射スペクトルのハンチングが見られた。
【0108】
透明導電体40,45が設けられていない領域における光の反射スペクトルと、透明導電体40,45が設けられている領域における光の反射スペクトルとの差(反射率差)を図7Dに示す。ここで、反射率差=(透明導電体40,45が設けられていない領域における反射率)−(透明導電体40,45が設けられている領域における反射率)となっている(後述する実施例においても同様である)。図7Dに示すように、反射率差についても、光波長380nm〜780nmの範囲内においてハンチングが見られた。このハンチングは、図7Dに示すように、0%線81をほぼ中心線として生じていた。このようにハンチングが0%線81をほぼ中心として生じることは、反射率差が実質的にゼロに近いことを意味している。また、波長が短いほどハンチングの振幅が大きくなるのが確認された。
【0109】
シミュレーションにより求めた反射スペクトルから、XYZ表色系(JIS Z8701参照)における等色関数を用いて、透明導電体40,45が設けられている領域および透明導電体40,45が設けられていない領域各々について、XYZ表色系におけるY値を求めた(JIS Z8701参照)。この際、色の表示に用いる標準の光の分光分布として、標準の光Cの分光分布を用いた。次に、透明導電体40,45が設けられている領域におけるY値と、透明導電体40,45が設けられていない領域におけるY値との差(以下、ΔY(反射)と称される。後述する実施例においても同様である。)を求めた。結果、ΔY(反射)は0.0308%となっていた。
【0110】
(評価項目3 b*)
透明導電体40,45が設けられている領域におけるXYZ表色系のX値、Y値およびZ値(JIS Z8701参照)を用いて、透明導電体40,45が設けられている領域について、L*a*b*表色系における色座標b*を求めた。具体的な算出方法はJIS Z8729に規定されており、ここでの詳細な説明は省略する。なお色座標b*の定義は、後述する実施例においても同様である。結果、b*は0.2139となっていた。
【0111】
本実施例によれば、保護カバー12付タッチパネルセンサ30は、上記の表2に示す光屈折率および厚みを有する各層からなる基材フィルム32と、基材フィルム32の面32a,32b上に所定のパターンで設けられた透明導電体40,45と、透明導電体40,45上に設けられた接着層14,19と、を含んでいる。このため、光波長380nm〜780nmの範囲内における、透過率差および反射率差のハンチングを、0%線81をほぼ中心線として生じさせることができた。これによって、上述のように、ΔY(透過)、ΔY(反射)およびb*の絶対値の値を十分に小さくすることができた。このことにより、透明導電体40,45のパターンが保護カバー12付タッチパネルセンサ30の使用者から視認されるのを防ぐことができた。
【0112】
実施例2
接着層14,19の作用効果を確認するため、接着層14,19が設けられている場合と接着層14,19が設けられていない場合のそれぞれについて、透過率および反射率をシミュレーションにより求めた。以下、詳細について説明する。
【0113】
(シミュレーション条件)
接着層14,19が設けられており、かつ透明導電体40,45が設けられている領域に関しては、以下の層構成を仮定してシミュレーションを行った。
フィルム本体(出射側媒質)/透明導電体/接着層(入射側媒質)
この場合、透明導電体の厚みを適宜変化させながらシミュレーションを行った。
【0114】
接着層14,19が設けられており、透明導電体40,45が設けられていない領域に関しては、以下の層構成を仮定してシミュレーションを行った。
フィルム本体(出射側媒質)/接着層(入射側媒質)
【0115】
接着層14,19が設けられておらず、かつ透明導電体40,45が設けられている領域に関しては、以下の層構成を仮定してシミュレーションを行った。
フィルム本体(出射側媒質)/透明導電体/大気(入射側媒質)
【0116】
接着層14,19が設けられておらず、透明導電体40,45が設けられていない領域に関しては、以下の層構成を仮定してシミュレーションを行った。
フィルム本体(出射側媒質)/大気(入射側媒質)
【0117】
ここで上述のとおり、シミュレーションにおいては、フィルム本体33および接着層14,19の厚みを無限大に設定した。また、フィルム本体33、透明導電体40,45および接着層14,19の光屈折率の値としては、表2に記載の値を用いた。
【0118】
(シミュレーション結果)
シミュレーションにより、接着層14,19が設けられている場合について、透明導電体40,45が設けられている領域における光の反射率および透過率の値と、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の反射率および透過率の値との差(ΔY(反射)およびΔY(透過))を求めた。またシミュレーションにより、透明導電体40,45が設けられている領域におけるb*を求めた。結果を図8Aに示す。
【0119】
図8Aに示すように、透明導電体40,45の厚みが13nm以下となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.5%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。
【0120】
さらに、シミュレーションにより、接着層14,19が設けられていない場合について、透明導電体40,45が設けられている領域における光の反射率および透過率の値と、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の反射率および透過率の値との差(ΔY(反射)およびΔY(透過))を求めた。またシミュレーションにより、透明導電体40,45が設けられている領域におけるb*を求めた。結果を図8Bに示す。
【0121】
図8Bに示すように、透明導電体40,45の厚みが8nm以下となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.5%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。
【0122】
図8Aと図8Bとの比較から明らかなように、透明導電体40,45と大気との間に接着層14,19を介在させることにより、ΔY(反射)およびΔY(透過)を0.5%以下とし、かつb*の絶対値を1.5以下とすることが可能な透明導電体40,45の厚みの範囲を13nmまで広げることができた。この原因の1つとしては、透明導電体40,45と大気の間の屈折率差に比べて、透明導電体40,45と接着層14,19の間の屈折率差が小さく、このため、接着層14,19を設けることによって透明導電体40,45における光の反射を抑制することができた点が考えられる。
【0123】
ところで上述のように、透明導電体40、45により電気信号を送るという観点からは、透明導電体40、45の厚みを可能な限り大きくし、これによって透明導電体40、45の面積抵抗率を300Ω/□以下とすることが好ましい。一方、透明導電体40、45の比抵抗が4×10−6Ωmであり、透明導電体40,45の厚みが13nmである場合、透明導電体40、45の面積抵抗率は308Ω/□となる。従って、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.5%以下であり、かつb*の絶対値が1.5以下であるという点を満たすことができる透明導電体40、45の厚みの範囲をより広げることが望まれる。
【0124】
以下の実施例においては、透明導電体40、45の面積抵抗率が十分に小さくなるとともに、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.5%以下であり、かつb*の絶対値が1.5以下となる条件を探索するため、実施例12を除いて、透明導電体40、45の厚みを17nm(表2参照)としてシミュレーションを行った。以下、接着層14,19を設ける場合における、接着層14,19の光屈折率の最適な範囲、基材フィルム32の各層の光屈折率および厚みの最適な範囲、および、透明導電体40,45の光屈折率および厚みの最適な範囲について、シミュレーションを用いて詳細に検討した結果について示す。
【0125】
実施例3
接着層14,19の光屈折率(実数部)を、光波長380nm〜780nmの全域にわたって一律に1.0、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7または1.8としたこと以外は、実施例1と同様にして、シミュレーションにより、透明導電体40,45が設けられている領域における光の反射率および透過率の値と、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の反射率および透過率の値を求めた。
【0126】
(評価項目1 透過率)
透明導電体40,45が設けられている領域および透明導電体40,45が設けられていない領域における光の透過スペクトルをシミュレーションにより求めた。透明導電体40,45が設けられている領域におけるシミュレーション結果を図9Aに示し、透明導電体40,45が設けられていない領域におけるシミュレーション結果を図9Bに示す。図9Aおよび図9Bに示すように、光波長380nm〜780nmの範囲内において、光の透過スペクトルの周期的な乱れ(ハンチング)が見られた。
【0127】
シミュレーションにより求められた透過スペクトルから、XYZ表色系における等色関数を用いて、透明導電体40,45が設けられている領域および透明導電体40,45が設けられていない領域各々について、XYZ表色系におけるY値を求めた。結果、接着層14,19の光屈折率が1.4〜1.8の範囲内となっている場合、透明導電体40,45が設けられている領域および透明導電体40,45が設けられていない領域各々において、Y値が99%以上になっていた。このように高いY値を実現できた理由としては、以下のことが考えられる。
【0128】
上述のシミュレーションにおいて、表2に示すように、透明導電体40,45の光屈折率は、1.85〜2.15の範囲内となっている。一方、大気の光屈折率は1に設定されている。このような状況下において、接着層14,19の光屈折率を透明導電体40,45の光屈折率の値と大気の光屈折率との間で適切に設定することにより、Y値を99%以上にすることができたと考えられる。
【0129】
(評価項目2 反射率)
透明導電体40,45が設けられている領域および透明導電体40,45が設けられていない領域における光の反射スペクトルをシミュレーションにより求めた。透明導電体40,45が設けられている領域におけるシミュレーション結果を図9Cに示し、透明導電体40,45が設けられていない領域におけるシミュレーション結果を図9Dに示す。図9Cおよび図9Dに示すように、光波長380nm〜780nmの範囲内において、光の反射スペクトルの周期的な乱れ(ハンチング)が見られた。
【0130】
(評価項目3 透過率差)
透明導電体40,45が設けられていない領域における光の透過スペクトルと、透明導電体40,45が設けられている領域における光の透過スペクトルとの差(透過率差)を求めた。結果を図9Eに示す。図9Eに示すように、接着層14,19の光屈折率を大きくするにつれて、ハンチングの振幅が小さくなるのが確認された。また、波長400nm以上の領域において、0%線81をほぼ中心線としてハンチングが生じるのが確認された。
【0131】
(評価項目4 反射率差)
透明導電体40,45が設けられていない領域における光の反射スペクトルと、透明導電体40,45が設けられている領域における光の反射スペクトルとの差(反射率差)を求めた。結果を図9Fに示す。図9Fに示すように、接着層14,19の光屈折率を大きくするにつれて、ハンチングの振幅が小さくなるのが確認された。また、波長400nm以上の領域において、0%線81をほぼ中心線としてハンチングが生じるのが確認された。
【0132】
(評価項目5 Y(反射)、ΔY(透過)およびb*)
上述のシミュレーション結果に基づいて、ΔY(反射)およびΔY(透過)を求めた。また、透明導電体40,45が設けられている領域におけるb*を求めた。結果を図9Gに示す。図9Gに示すように、接着層14,19の光屈折率が1.4〜1.8の範囲内となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.1%以下になるとともに、b*の絶対値が0.5以下となっていた。
また上述のように、接着層14,19の光屈折率が1.4〜1.8の範囲内となっている場合、透明導電体40,45が設けられている領域および透明導電体40,45が設けられていない領域各々において、Y値が99%以上となっていた。このように、大気と透明導電体40,45との間に、光屈折率が1.4〜1.8の範囲内となっている接着層14,19を介在させることにより、Y値を十分に大きくするとともに、ΔY(反射)、ΔY(透過)およびb*を十分に小さくすることができた。このことにより、透明導電体40,45のパターンが保護カバー12付タッチパネルセンサ30の使用者から視認されるのを防ぐことができるとともに、保護カバー12付タッチパネルセンサ30を透過する光の輝度を十分に大きくすることができる。
【0133】
実施例4
アンダーコート層71,76の厚みを、0、100、200、500、600、900、950、1000、2000、3000、4000、5000または10000nmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、シミュレーションにより、透明導電体40,45が設けられている領域における光の反射率および透過率の値と、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の反射率および透過率の値との差(ΔY(反射)およびΔY(透過))を求めた。またシミュレーションにより、透明導電体40,45が設けられている領域におけるb*を求めた。結果を図10に示す。
【0134】
図10に示すように、アンダーコート層71,76の厚みが900〜10000nmの範囲内となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.1%以下になるとともに、b*の絶対値が0.25以下となっていた。従って、本発明による保護カバー12付タッチパネルセンサ30において、好ましくは、アンダーコート層71,76の厚みが900〜10000nmの範囲内となっている。このことにより、透明導電体40,45のパターンが保護カバー12付タッチパネルセンサ30の使用者から視認されるのを防ぐことができる。
【0135】
実施例5
アンダーコート層71,76の光屈折率を、光波長380nm〜780nmの全域にわたって一律に1.3、1.35、1.4、1.44、1.47、1.49、1.5、1.51、1.52、1.53、1.59、1.6、1.69、1.7、1.8または2.0としたこと以外は、実施例1と同様にして、シミュレーションにより、透明導電体40,45が設けられている領域における光の透過率および反射率の値と、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の透過率および反射率の値との差(透過率差および反射率差)を求めた。結果の一部を図11Aおよび図11Bに示す。また、シミュレーション結果に基づいて、ΔY(反射)、ΔY(透過)および透明導電体40,45が設けられている領域におけるb*を求めた。結果を図11Cに示す。
なお表2から明らかなように、アクリル樹脂などからなるアンダーコート層71,76における光屈折率の波長依存性は、透明導電体40,45または高屈折率層72,77における光屈折率の波長依存性に比べて小さい。従って本実施例においては、上述のように、アンダーコート層71,76の光屈折率を、光波長380nm〜780nmの全域にわたって一律の値とした。
【0136】
図11Aに示すように、アンダーコート層71,76の光屈折率が1.4の場合、長波長領域(波長500nm以上)では0%線81よりも上でハンチングし、短波長領域(波長500nm以下)では0%線81よりも下でハンチングしていた。一方、光屈折率が2.0の場合、長波長領域(波長500nm以上)では0%線81よりも下でハンチングし、短波長領域(波長500nm以下)では0%線81よりも上でハンチングしていた。そして、光屈折率が1.6近傍の場合、波長によらず0%線81付近でハンチングしていた。また、光屈折率が1.6近傍の場合、ハンチングの振幅が、その他の光屈折率の場合に比べて小さくなっていた。
なお、本明細書において、「0%線81よりも上でハンチングする」とは、ハンチングの中心(振幅の中心)が0%線81よりも上にあることを意味している。同様に、「0%線81よりも下でハンチングする」とは、ハンチングの中心が0%線81よりも下にあることを意味している。また、「0%線81付近でハンチングする」とは、ハンチングの中心が0%線81近傍にあることを意味している。
【0137】
図11Bに示すように、反射率差に関しても、透過率差の場合と同様に、アンダーコート層71,76の光屈折率が1.6近傍の場合、波長によらず0%線81付近でハンチングし、かつハンチングの振幅も比較的小さくなっていた。
【0138】
図11Cに示すように、アンダーコート層71,76の光屈折率が1.35〜1.69の範囲内となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.5%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。また、アンダーコート層71,76の光屈折率が1.44〜1.59の範囲内となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.25%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。さらに、アンダーコート層71,76の光屈折率が1.50〜1.53の範囲内となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.1%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。従って、本発明による保護カバー12付タッチパネルセンサ30において、好ましくは、アンダーコート層71,76の光屈折率が1.35〜1.69の範囲内となっており、より好ましくは1.44〜1.59の範囲内となっており、さらに好ましくは1.50〜1.53の範囲内となっている。このことにより、透明導電体40,45のパターンが保護カバー12付タッチパネルセンサ30の使用者から視認されるのを防ぐことができる。
【0139】
実施例6
高屈折率層72,77の厚みを、0、1、2、3.4、4、5、5.4、5.8、6、6.3、6.4、7、7.2、8、8.6、10、11または12nmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、シミュレーションにより、透明導電体40,45が設けられている領域における光の透過率および反射率の値と、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の透過率および反射率の値との差(透過率差および反射率差)を求めた。結果の一部を図12Aおよび図12Bに示す。また、シミュレーション結果に基づいて、ΔY(反射)、ΔY(透過)および透明導電体40,45が設けられている領域におけるb*を求めた。結果を図12Cに示す。
【0140】
透過率差については、図12Aに示すように、高屈折率層72,77の厚みが6nmの場合、波長によらず0%線81付近でハンチングしていた。一方、高屈折率層72,77の厚みが6nmよりも小さくなるにつれて、0%線81よりも上でハンチングする傾向が見られた。また、高屈折率層72,77の厚みが6nmよりも大きくなるにつれて、0%線81よりも下でハンチングする傾向が見られた。
【0141】
反射率差については、図12Bに示すように、高屈折率層72,77の厚みが6nmの場合、波長によらず0%線81付近でハンチングしていた。一方、高屈折率層72,77の厚みが6nmよりも小さくなるにつれて、0%線81よりも下でハンチングする傾向が見られた。また、高屈折率層72,77の厚みが6nmよりも大きくなるにつれて、0%線81よりも上でハンチングする傾向が見られた。
【0142】
図12Cに示すように、高屈折率層72,77の厚みが3.4〜8.6nmの範囲内となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.5%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。また、高屈折率層72,77の厚みが5.0〜7.2nmの範囲内となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.25%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。さらに、高屈折率層72,77の厚みが5.8〜6.3nmの範囲内となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.1%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。従って、本発明による保護カバー12付タッチパネルセンサ30において、好ましくは、高屈折率層72,77の厚みが3.4〜8.6nmの範囲内となっており、より好ましくは5.0〜7.2nmの範囲内となっており、さらに好ましくは5.8〜6.3nmの範囲内となっている。このことにより、透明導電体40,45のパターンが保護カバー12付タッチパネルセンサ30の使用者から視認されるのを防ぐことができる。
【0143】
実施例7
高屈折率層72,77の光屈折率(実数部)を、表2に示す光屈折率から、光波長380nm〜780nmの全域にわたって一律に+0.3、+0.22、+0.2、+0.12、+0.1、+0.04、+0.03、0、−0.02、−0.07、−0.11、−0.14、−0.2、−0.27または−0.3としたこと以外は、実施例1と同様にして、シミュレーションにより、透明導電体40,45が設けられている領域における光の透過率および反射率の値と、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の透過率および反射率の値との差(透過率差および反射率差)を求めた。結果の一部を図13Aおよび図13Bに示す。また、シミュレーション結果に基づいて、ΔY(反射)、ΔY(透過)および透明導電体40,45が設けられている領域におけるb*を求めた。結果を図13Cに示す。
【0144】
透過率差については、図13Aに示すように、表2に示す高屈折率層72,77の光屈折率からの変位量が負の場合、0%線81よりも上でハンチングする傾向が見られた。一方、表2に示す高屈折率層72,77の光屈折率からの変位量が正の場合、0%線81よりも下でハンチングする傾向が見られた。
【0145】
反射率差については、図13Bに示すように、表2に示す高屈折率層72,77の光屈折率からの変位量が負の場合、0%線81よりも下でハンチングする傾向が見られた。一方、表2に示す高屈折率層72,77の光屈折率からの変位量が正の場合、0%線81よりも上でハンチングする傾向が見られた。
【0146】
図13Cに示すように、表2に示す高屈折率層72,77の光屈折率からの変位量が波長によらず一律で−0.27〜+0.22の範囲内となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.5%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。また、表2に示す高屈折率層72,77の光屈折率からの変位量が波長によらず一律で−0.11〜+0.12の範囲内となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.25%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。さらに、表2に示す高屈折率層72,77の光屈折率からの変位量が波長によらず一律で−0.02〜+0.03の範囲内となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.1%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。従って、本発明による保護カバー12付タッチパネルセンサ30において、好ましくは、波長550nmの光に対する高屈折率層72,77の光屈折率が2.18+0.22/−0.27の範囲内となっており、波長400nmの光に対する高屈折率層72,77の光屈折率が2.36+0.22/−0.27の範囲内となっている。より好ましくは、波長550nmの光に対する高屈折率層72,77の光屈折率が2.18+0.12/−0.11の範囲内となっており、波長400nmの光に対する高屈折率層72,77の光屈折率が2.36+0.12/−0.11の範囲内となっている。さらに好ましくは、波長550nmの光に対する高屈折率層72,77の光屈折率が2.18+0.03/−0.02の範囲内となっており、波長400nmの光に対する高屈折率層72,77の光屈折率が2.36+0.03/−0.02の範囲内となっている。このことにより、透明導電体40,45のパターンが保護カバー12付タッチパネルセンサ30の使用者から視認されるのを防ぐことができる。
【0147】
実施例8
表2に示すような光屈折率の波長依存性を有する高屈折率層72,77を用いることの作用効果を確認するため、高屈折率層72,77の光屈折率(実数部)を波長に依らず一律で2.18337とした場合の透過率差および反射率差をシミュレーションにより求めた。結果を図14Aおよび図14Bに示す。図14Aおよび図14Bには、比較のため、高屈折率層72,77の光屈折率(実数部)を、表2に示すような波長依存性を有する値とした場合のシミュレーション結果も併せて示されている。
【0148】
透過率差については、図14Aに示すように、高屈折率層72,77の光屈折率(実数部)を波長に依らず一律で2.18337とした場合、0%線81よりも上でハンチングする傾向が見られた。反射率差については、図14Bに示すように、高屈折率層72,77の光屈折率(実数部)を波長に依らず一律で2.18337とした場合、0%線81よりも下でハンチングする傾向が見られた。このことから、表2に示すような光屈折率の波長依存性を有する高屈折率層72,77を用いることにより、透過率差および反射率差のハンチングをより0%線81付近で生じさせることが可能になると考えられる。
【0149】
ここで図14Aに示す結果についてさらに詳細に検討する。波長500nm以下の領域においては、図14Aに示すように、高屈折率層72,77の光屈折率(実数部)を波長に依らず一律で2.18337とした場合、および、表2に示すような光屈折率の波長依存性を有する高屈折率層72,77を用いる場合のいずれにおいても、0%線81よりも上でハンチングする傾向が見られた。ここで上述のとおり、透過率差=(透明導電体40,45が設けられていない領域における透過率)−(透明導電体40,45が設けられている領域における透過率)となっている。従って、波長500nm以下の領域においては、高屈折率層72,77の光屈折率の波長依存性に依らず、透明導電体40,45が設けられていない領域における透過率が、透明導電体40,45が設けられている領域における透過率よりも高いと言える。すなわち、透明導電体40,45が設けられていない領域を透過した光は、透明導電体40,45が設けられている領域を透過した光に比べて、より多くの青色光成分を含んでいると言える。
ここで図14Aに示すように、表2に示すような光屈折率の波長依存性を有する高屈折率層72,77を用いる場合の透過率差のハンチングは、高屈折率層72,77の光屈折率(実数部)を波長に依らず一律で2.18337とした場合のハンチングに比べて、0%線81付近で生じている。このため、表2に示すような光屈折率の波長依存性を有する高屈折率層72,77を用いることにより、透明導電体40,45が設けられていない領域を透過した光と、透明導電体40,45が設けられている領域を透過した光との間での青色光成分の差を小さくすることができる。従って、表2に示すような光屈折率の波長依存性を有する高屈折率層72,77を用いることにより、透過率差を小さくするだけでなく、透明導電体40,45が設けられていない領域を透過した光と、透明導電体40,45が設けられている領域を透過した光との間での色相の差を小さくすることができる。すなわち、透過率の差(強度の差)と色相の差の両面において、透明導電体40,45のパターンが保護カバー12付タッチパネルセンサ30の使用者から視認されるのを防ぐことができる。
同様に、図14Bに示すように、表2に示すような光屈折率の波長依存性を有する高屈折率層72,77を用いる場合の反射率差のハンチングは、高屈折率層72,77の光屈折率(実数部)を波長に依らず一律で2.18337とした場合のハンチングに比べて、0%線81付近で生じている。このため、表2に示すような光屈折率の波長依存性を有する高屈折率層72,77を用いることにより、透明導電体40,45が設けられていない領域で反射した光と、透明導電体40,45が設けられている領域で反射した光との間での色相の差を小さくすることができる。すなわち、反射率の差(強度の差)と色相の差の両面において、透明導電体40,45のパターンが保護カバー12付タッチパネルセンサ30の使用者から視認されるのを防ぐことができる。
【0150】
このように本発明の高屈折率層72,77により、透過率差および反射率差のハンチングが0%線81をほぼ中心線として生じるようにすることが可能となることについては、例えば以下のような理由が考えられる。表2に示す様に、本発明による高屈折率層72,77および透明導電体40,45は、光波長が短波長域(光波長380nm)から長波長域(光波長780nm)となるにつれて光屈折率(実数部)が約0.3だけ小さくなっている。すなわち、高屈折率層72,77の光屈折率の波長依存性は、透明導電体40,45の光屈折率の波長依存性に類似している。従って、この様な屈折率の波長依存性を有する高屈折率層72,77を用いることにより、透明導電体40,45の屈折率の波長依存性に起因する透過率差および反射率差の波長依存性を適切に補正することが出来たと考えられる。
【0151】
実施例9
高屈折率層72,77の光屈折率(実数部)を、表2に示す透明導電体40,45の光屈折率から、光波長380nm〜780nmの全域にわたって一律に+0.6、+0.5、+0.47、+0.4、+0.33、+0.3、+0.25、+0.21、+0.2、+0.19、+0.15、+0.1、0、−0.06、−0.1または−0.2としたこと以外は、実施例1と同様にして、シミュレーションにより、透明導電体40,45が設けられている領域における光の透過率および反射率の値と、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の透過率および反射率の値との差(透過率差および反射率差)を求めた。結果の一部を図15Aおよび図15Bに示す。また、シミュレーション結果に基づいて、ΔY(反射)、ΔY(透過)および透明導電体40,45が設けられている領域におけるb*を求めた。結果を図15Cに示す。
【0152】
透過率差については、図15Aに示すように、表2に示す透明導電体40,45の光屈折率からの変位量が+0.2よりも小さい場合、0%線81よりも上でハンチングする傾向が見られた。一方、表2に示す透明導電体40,45の光屈折率からの変位量が+0.2よりも大きい場合、0%線81よりも下でハンチングする傾向が見られた。
【0153】
反射率差については、図15Bに示すように、表2に示す透明導電体40,45の光屈折率からの変位量が+0.2よりも小さい場合、0%線81よりも下でハンチングする傾向が見られた。一方、表2に示す透明導電体40,45の光屈折率からの変位量が+0.2よりも大きい場合、0%線81よりも上でハンチングする傾向が見られた。
【0154】
図15Cに示すように、高屈折率層72,77の光屈折率(実数部)が、表2に示す透明導電体40,45の光屈折率から波長によらず一律で−0.06〜+0.47の範囲内の値だけ変位した光屈折率となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.5%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。また、高屈折率層72,77の光屈折率(実数部)が、表2に示す透明導電体40,45の光屈折率から波長によらず一律で+0.1〜+0.33の範囲内の値だけ変位した光屈折率となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.25%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。さらに、高屈折率層72,77の光屈折率(実数部)が、表2に示す透明導電体40,45の光屈折率から波長によらず一律で+0.19〜+0.25の範囲内の値だけ変位した光屈折率なっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.1%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。従って、本発明による保護カバー12付タッチパネルセンサ30において、好ましくは、高屈折率層72,77の光屈折率は、表2に示す透明導電体40,45の光屈折率から−0.06〜+0.47の範囲内の値だけ変位した値となっており、より好ましくは表2に示す透明導電体40,45の光屈折率から+0.1〜+0.33の範囲内の値だけ変位した値となっており、さらに好ましくは表2に示す透明導電体40,45の光屈折率から+0.19〜+0.25の範囲内の値だけ変位した値となっている。このことにより、透明導電体40,45のパターンが保護カバー12付タッチパネルセンサ30の使用者から視認されるのを防ぐことができる。
このことから、透明導電体40,45と同様の光屈折率の波長依存性を有するとともに、透明導電体40,45の光屈折率から所定量だけずれた光屈折率を有する高屈折率層72,77を用いることにより、透明導電体40,45のパターンが保護カバー12付タッチパネルセンサ30の使用者から視認されるのを防ぐことができると言える。
【0155】
実施例10
低屈折率層73,78の厚みを、0、20、28、40、41、50、55、57、60、61、64、68、70、78、85、91または100nmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、シミュレーションにより、透明導電体40,45が設けられている領域における光の透過率および反射率の値と、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の透過率および反射率の値との差(透過率差および反射率差)を求めた。結果の一部を図16Aおよび図16Bに示す。また、シミュレーション結果に基づいて、ΔY(反射)、ΔY(透過)および透明導電体40,45が設けられている領域におけるb*を求めた。結果を図16Cに示す。
【0156】
透過率差については、図16Aに示すように、低屈折率層73,78の厚みが55nm近傍の場合、波長によらず0%線81付近でハンチングしていた。また、低屈折率層73,78の厚みが55nmからずれるにつれて、0%線81よりも上でハンチングする傾向が見られた。
【0157】
反射率差については、図16Bに示すように、低屈折率層73,78の厚みが55nm近傍の場合、波長によらず0%線81付近でハンチングしていた。また、低屈折率層73,78の厚みが55nmからずれるにつれて、0%線81よりも下でハンチングする傾向が見られた。
【0158】
図16Cに示すように、低屈折率層73,78の厚みが41〜91nmの範囲内となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.5%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。また、低屈折率層73,78の厚みが50〜85nmの範囲内となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.25%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。さらに、低屈折率層73,78の厚みが57〜78nmの範囲内となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.1%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。従って、本発明による保護カバー12付タッチパネルセンサ30において、好ましくは、低屈折率層73,78の厚みが41〜91nmの範囲内となっており、より好ましくは50〜85nmの範囲内となっており、さらに好ましくは57〜78nmの範囲内となっている。このことにより、透明導電体40,45のパターンが保護カバー12付タッチパネルセンサ30の使用者から視認されるのを防ぐことができる。
【0159】
実施例11
低屈折率層73,78の光屈折率を、光波長380nm〜780nmの全域にわたって一律に1.2、1.28、1.3、1.36、1.4、1.42、1.453、1.49、1.5、1.6、1.66、1.7、1.72、1.8、1.86または2.0としたこと以外は、実施例1と同様にして、シミュレーションにより、透明導電体40,45が設けられている領域における光の透過率および反射率の値と、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の透過率および反射率の値との差(透過率差および反射率差)を求めた。結果の一部を図17Aおよび図17Bに示す。また、シミュレーション結果に基づいて、ΔY(反射)、ΔY(透過)および透明導電体40,45が設けられている領域におけるb*を求めた。結果を図17Cに示す。
なお表2から明らかなように、二酸化珪素(SiO)などからなる低屈折率層73,78における光屈折率の波長依存性は、透明導電体40,45または高屈折率層72,77における光屈折率の波長依存性に比べて小さい。従って本実施例においては、上述のように、低屈折率層73,78の光屈折率を、光波長380nm〜780nmの全域にわたって一律の値とした。
【0160】
図17Aに示すように、低屈折率層73,78の光屈折率が1.2の場合、長波長領域(波長500nm以上)では0%線81よりも下でハンチングし、短波長領域(波長500nm以下)では0%線81よりも上でハンチングしていた。一方、光屈折率が1.8の場合、長波長領域(波長500nm以上)では0%線81よりも上でハンチングし、短波長領域(波長500nm以下)では0%線81よりも下でハンチングしていた。そして、光屈折率が1.4または1.6の場合、波長によらず0%線81付近でハンチングしていた。
【0161】
図17Bに示すように、反射率差に関しても、透過率差の場合と同様に、低屈折率層73,78の光屈折率が1.4または1.6の場合、波長によらず0%線81付近でハンチングしていた。
【0162】
図17Cに示すように、低屈折率層73,78の光屈折率が1.28〜1.86の範囲内となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.5%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。また、低屈折率層73,78の光屈折率が1.36〜1.80の範囲内となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.25%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。さらに、低屈折率層73,78の光屈折率が1.42〜1.49の範囲内となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.1%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。従って、本発明による保護カバー12付タッチパネルセンサ30において、好ましくは、低屈折率層73,78が1.28〜1.86の範囲内となっており、より好ましくは1.36〜1.80の範囲内となっており、さらに好ましくは1.42〜1.49の範囲内となっている。このことにより、透明導電体40,45のパターンが保護カバー12付タッチパネルセンサ30の使用者から視認されるのを防ぐことができる。
【0163】
実施例12
透明導電体40,45の厚みを、0、5、8、10、10.7、15、15.3、15.7、16、17、17.7、18、19.8、20、22.7または25nmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、シミュレーションにより、透明導電体40,45が設けられている領域における光の透過率および反射率の値と、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の透過率および反射率の値との差(透過率差および反射率差)を求めた。結果の一部を図18Aおよび図18Bに示す。また、シミュレーション結果に基づいて、ΔY(反射)、ΔY(透過)および透明導電体40,45が設けられている領域におけるb*を求めた。結果を図18Cに示す。
【0164】
透過率差については、図18Aに示すように、透明導電体40,45の厚みが15nm近傍の場合、波長によらず0%線81付近でハンチングしていた。一方、透明導電体40,45の厚みが15nmよりも小さくなるにつれて、0%線81よりも下でハンチングする傾向が見られた。また、透明導電体40,45の厚みが15nmよりも大きくなるにつれて、0%線81よりも上でハンチングする傾向が見られるとともに、ハンチングの振幅が大きくなった。
【0165】
反射率差については、図18Bに示すように、透明導電体40,45の厚みが15nm近傍の場合、波長によらず0%線81付近でハンチングしていた。一方、透明導電体40,45の厚みが15nmよりも小さくなるにつれて、0%線81よりも上でハンチングする傾向が見られた。また、透明導電体40,45の厚みが15nmよりも大きくなるにつれて、0%線81よりも下でハンチングする傾向が見られるとともに、ハンチングの振幅が大きくなった。
【0166】
図18Cに示すように、透明導電体40,45の厚みが22.7nm以下となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.5%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。また、透明導電体40,45の厚みが10.7〜19.8nmの範囲内となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.25%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。さらに、透明導電体40,45の厚みが15.7〜17.7nmの範囲内となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.1%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。従って、本発明による保護カバー12付タッチパネルセンサ30において、好ましくは、透明導電体40,45の厚みが22.7nm以下となっており、より好ましくは10.7〜19.8nmの範囲内となっており、さらに好ましくは15.7〜17.7nmの範囲内となっている。このことにより、透明導電体40,45のパターンが保護カバー12付タッチパネルセンサ30の使用者から視認されるのを防ぐことができる。
【0167】
実施例13
透明導電体40,45の光屈折率(実数部)を、表2に示す光屈折率から、光波長380nm〜780nmの全域にわたって一律に+0.3、+0.2、+0.13、+0.1、+0.06、+0.05、+0.01、0、−0.03、−0.1、−0.13、−0.2、−0.25または−0.3としたこと以外は、実施例1と同様にして、シミュレーションにより、透明導電体40,45が設けられている領域における光の透過率および反射率の値と、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の透過率および反射率の値との差(透過率差および反射率差)を求めた。結果の一部を図19Aおよび図19Bに示す。また、シミュレーション結果に基づいて、ΔY(反射)、ΔY(透過)および透明導電体40,45が設けられている領域におけるb*を求めた。結果を図19Cに示す。
【0168】
透過率差については、図19Aに示すように、表2に示す透明導電体40,45の光屈折率からの変位量が負の場合、0%線81よりも下でハンチングする傾向が見られた。一方、表2に示す透明導電体40,45の光屈折率からの変位量が正の場合、0%線81よりも上でハンチングする傾向が見られた。
【0169】
反射率差については、図19Bに示すように、表2に示す透明導電体40,45の光屈折率からの変位量が負の場合、0%線81よりも上でハンチングする傾向が見られた。一方、表2に示す透明導電体40,45の光屈折率からの変位量が正の場合、0%線81よりも下でハンチングする傾向が見られた。
【0170】
図19Cに示すように、表2に示す透明導電体40,45の光屈折率からの変位量が波長によらず一律で−0.3〜+0.13の範囲内となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.5%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。また、表2に示す透明導電体40,45の光屈折率からの変位量が波長によらず一律で−0.13〜+0.06の範囲内となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.25%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。さらに、表2に示す透明導電体40,45の光屈折率からの変位量が波長によらず一律で−0.03〜+0.01の範囲内となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.1%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。従って、本発明による保護カバー12付タッチパネルセンサ30において、好ましくは、波長550nmの光に対する透明導電体40,45の光屈折率が1.97+0.13/−0.3の範囲内となっており、波長400nmの光に対する透明導電体40,45の光屈折率が2.12+0.13/−0.3の範囲内となっている。より好ましくは、波長550nmの光に対する透明導電体40,45の光屈折率が1.97+0.06/−0.13の範囲内となっており、波長400nmの光に対する透明導電体40,45の光屈折率が2.12+0.06/−0.13の範囲内となっている。さらに好ましくは、波長550nmの光に対する透明導電体40,45の光屈折率が1.97+0.01/−0.03の範囲内となっており、波長400nmの光に対する透明導電体40,45の光屈折率が2.12+0.01/−0.03の範囲内となっている。このことにより、透明導電体40,45のパターンが保護カバー12付タッチパネルセンサ30の使用者から視認されるのを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0171】
10 入出力装置
12 保護カバー
14 第1接着層
15 表示装置
19 第2接着層
20 タッチパネル装置
30 タッチパネルセンサ
32 基材フィルム
32a 面(一側の面)
32b 面(他側の面)
33 フィルム本体
36a 第1センサ電極
36b 第1取出配線
36c 検出制御部との接続端子部
37a 第2センサ電極
37b 第2取出配線
37c 検出制御部との接続端子部
40 第1透明導電体
41 第1センサ部
41a ライン部
41b 膨出部
42 第1接続部
43 第1取出導電体
45 第2透明導電体
46 第2センサ部
46a ライン部
46b 膨出部
47 第2接続部
48 第2取出導電体
50 積層体(ブランクス)
52a 第1透明導電層
52b 第2透明導電層
54a 第1遮光導電層
54b 第2遮光導電層
70 第1機能層
71 第1アンダーコート層
71a 面(一側の面)
72 第1高屈折率層
72a 面(一側の面)
73 第1低屈折率層
75 第2機能層
76 第2アンダーコート層
76b 面(他側の面)
77 第2高屈折率層
77b 面(他側の面)
78 第2低屈折率層
80 中間積層体
81 0%線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネルセンサと、タッチパネルセンサの一側に接着層を介して接着された透明シートとからなる透明シート付タッチパネルセンサにおいて、
前記タッチパネルセンサは、基材フィルムと、基材フィルムの一側の面上にパターニングされた第1透明導電体と、を備え、
基材フィルムは、透明なフィルム本体と、フィルム本体の前記第1透明導電体側の面上に設けられた第1アンダーコート層と、第1アンダーコート層の前記第1透明導電体側の面上に設けられた第1高屈折率層と、第1高屈折率層の前記第1透明導電体側の面上に設けられた第1低屈折率層と、を有し、
前記第1透明導電体は、その厚みが22.7nm以下となっており、かつその光屈折率が、波長550nmの光に対して1.97+0.13/−0.3の範囲内となっており、波長400nmの光に対して2.12+0.13/−0.3の範囲内となっており、
前記第1アンダーコート層および前記第1低屈折率層の光屈折率は、前記第1透明導電体および前記第1高屈折率層の光屈折率よりも小さくなっており、
前記タッチパネルセンサと前記透明シートとの間に介在された前記接着層の光屈折率は、その光屈折率が1.4〜1.8の範囲内となっている
ことを特徴とする透明シート付タッチパネルセンサ。
【請求項2】
前記第1高屈折率層は、その厚みが3.4〜8.6nmの範囲内となっており、かつその光屈折率が、波長550nmの光に対して2.18+0.22/−0.27の範囲内となっており、波長400nmの光に対して2.36+0.22/−0.27の範囲内となっている
ことを特徴とする請求項1に記載の透明シート付タッチパネルセンサ。
【請求項3】
前記第1高屈折率層は、その厚みが3.4〜8.6nmの範囲内となっており、かつその光屈折率が、前記第1透明導電体の光屈折率−0.06〜前記第1透明導電体の光屈折率+0.47の範囲内となっている
ことを特徴とする請求項1に記載の透明シート付タッチパネルセンサ。
【請求項4】
前記第1低屈折率層は、その厚みが41〜91nmの範囲内となっており、かつその光屈折率が1.28〜1.86の範囲内となっている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の透明シート付タッチパネルセンサ。
【請求項5】
前記第1アンダーコート層は、その厚みが900〜10000nmの範囲内となっており、かつその光屈折率が1.35〜1.69の範囲内となっている
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の透明シート付タッチパネルセンサ。
【請求項6】
タッチパネルセンサと、タッチパネルセンサの一側に接着層を介して接着された透明シートとからなる透明シート付タッチパネルセンサにおいて、
前記タッチパネルセンサは、基材フィルムと、基材フィルムの一側の面上にパターニングされた第1透明導電体と、基材フィルムの他側の面上にパターニングされた第2透明導電体と、を備え、
基材フィルムは、透明なフィルム本体と、フィルム本体の前記第1透明導電体側の面上に設けられた第1アンダーコート層と、第1アンダーコート層の前記第1透明導電体側の面上に設けられた第1高屈折率層と、第1高屈折率層の前記第1透明導電体側の面上に設けられた第1低屈折率層と、フィルム本体の前記第2透明導電体側の面上に設けられた第2アンダーコート層と、第2アンダーコート層の前記第2透明導電体側の面上に設けられた第2高屈折率層と、第2高屈折率層の前記第2透明導電体側の面上に設けられた第2低屈折率層と、を有し、
前記第1透明導電体および前記第2透明導電体は、その厚みが22.7nm以下となっており、かつその光屈折率が、波長550nmの光に対して1.97+0.13/−0.3の範囲内となっており、波長400nmの光に対して2.12+0.13/−0.3の範囲内となっており、
前記第1アンダーコート層および前記第1低屈折率層の光屈折率は、前記第1透明導電体および前記第1高屈折率層の光屈折率よりも小さくなっており、
前記第2アンダーコート層および前記第2低屈折率層の光屈折率は、前記第2透明導電体および前記第2高屈折率層の光屈折率よりも小さくなっており、
前記タッチパネルセンサと前記透明シートとの間に介在された前記接着層は、その光屈折率が1.4〜1.8の範囲内となっている
ことを特徴とする透明シート付タッチパネルセンサ。
【請求項7】
前記第1高屈折率層および前記第2高屈折率層は、その厚みが3.4〜8.6nmの範囲内となっており、かつその光屈折率が、波長550nmの光に対して2.18+0.22/−0.27の範囲内となっており、波長400nmの光に対して2.36+0.22/−0.27の範囲内となっている
ことを特徴とする請求項6に記載の透明シート付タッチパネルセンサ。
【請求項8】
前記第1高屈折率層は、その厚みが3.4〜8.6nmの範囲内となっており、かつその光屈折率が、前記第1透明導電体の光屈折率−0.06〜前記第1透明導電体の光屈折率+0.47の範囲内となっており、
前記第2高屈折率層は、その厚みが3.4〜8.6nmの範囲内となっており、かつその光屈折率が、前記第2透明導電体の光屈折率−0.06〜前記第2透明導電体の光屈折率+0.47の範囲内となっている
ことを特徴とする請求項6に記載の透明シート付タッチパネルセンサ。
【請求項9】
前記第1低屈折率層および前記第2低屈折率層は、その厚みが41〜91nmの範囲内となっており、かつその光屈折率が1.28〜1.86の範囲内となっている
ことを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の透明シート付タッチパネルセンサ。
【請求項10】
前記第1アンダーコート層および前記第2アンダーコート層は、その厚みが900〜10000nmの範囲内となっており、かつその光屈折率が1.35〜1.69の範囲内となっている
ことを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載の透明シート付タッチパネルセンサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図7D】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図9C】
image rotate

【図9D】
image rotate

【図9E】
image rotate

【図9F】
image rotate

【図9G】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11A】
image rotate

【図11B】
image rotate

【図11C】
image rotate

【図12A】
image rotate

【図12B】
image rotate

【図12C】
image rotate

【図13A】
image rotate

【図13B】
image rotate

【図13C】
image rotate

【図14A】
image rotate

【図14B】
image rotate

【図15A】
image rotate

【図15B】
image rotate

【図15C】
image rotate

【図16A】
image rotate

【図16B】
image rotate

【図16C】
image rotate

【図17A】
image rotate

【図17B】
image rotate

【図17C】
image rotate

【図18A】
image rotate

【図18B】
image rotate

【図18C】
image rotate

【図19A】
image rotate

【図19B】
image rotate

【図19C】
image rotate


【公開番号】特開2012−118936(P2012−118936A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270670(P2010−270670)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】