説明

透明ポリカーボネートブレンドを含有する情報記録媒体

【課題】光学製品での使用に適したポリマーの透明ブレンドを提供すること。
【解決手段】本発明のポリマーは、BBD及びその誘導体の残基を含んでおり、高密度光情報記録媒体での使用に特に適した性質を有している。本発明のポリマーはさらに、α−メチルポリスチレンやポリスチレン誘導体のような他のポリマー、ビスフェノールAのようなビスフェノール類、PCCDやその誘導体のような脂環式ポリエステル樹脂、又は各々のある種の組合せの残基を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学製品に使用するのに適した透明な混和性ポリマーブレンドに関する。本発明は、さらに、光学製品及び透明ブレンドから光学製品を製造する方法に関する。
【0002】
光学製品としての用途に加え、本発明のブレンドは良好な性質を有する透明製品の製造にも有用である。かかる性質には、良好な耐食品化学性及び溶融加工性がある。これらのブレンドは、透明な成形品、繊維、フィルム及びシートの製造に特に有用である。
【背景技術】
【0003】
ポリカーボネートその他のポリマー材料は、コンパクトディスクなどの光情報記録媒体に利用されている。光情報記録媒体では、ポリカーボネート樹脂が透明性、低い親水性、良好な加工性、良好な耐熱性及び低い複屈折などの良好な性能特性を有することが極めて重要である。高い複屈折は、高密度光情報記録媒体では特に望ましくない。
【0004】
情報記録密度の向上を始めとする光情報記録媒体の改良は極めて望ましく、かかる改良が達成されると、読取専用ディスク、追記型ディスク、書換型ディスク、デジタルバーサタイルディスク及び光磁気(MO)ディスクのような既存の最新コンピューター技術が改良されると期待される。
【0005】
CD−ROM技術の場合、読取られる情報はビスフェノールA(BPA)ポリカーボネートのような成形可能な透明プラスチック材料に直接刻まれる。情報はポリマー表面にエンボス加工した浅いピットの形態で記録される。表面は反射性金属膜でスパッタされ、ピットの位置と長さで表されたデジタル情報は低出力(5mW)集束レーザービームで光学的に読取られる。
【0006】
追記型(WORM)ドライブの動作原理は、集束レーザービーム(20〜40mW)を用いてディスクの薄膜に恒久的な跡を付けることである。情報は、例えば反射率や吸光度のようなディスクの光学的性質の変化として読取られる。
【0007】
CD−ROM及びWORMフォーマットは成功裡に開発され、特定の用途には十分適しているが、コンピューター産業では消去可能な光記録媒体(EOD)に関心が集中している。EODには、相変化型(PC)と光磁気型(MO)の2つのタイプがある。MO記録では、1ビットの情報は、上下いずれかの方向に磁化された直径約1μmの磁区として記録される。情報は、磁気膜表面から反射された光の偏光面の回転をモニターすることで読取りできる。この回転は、磁気光学カー効果(MOKE)と呼ばれ、通例0.5度未満である。MO記録用の材料は一般に希土類及び遷移金属の非晶質合金である。
【0008】
非晶質材料は、「グレインノイズ」(つまり、多結晶質薄膜内の結晶粒のランダムな配向に起因する反射光の偏光面の疑似バラツキ)がないので、MO記録で極めて有利である。ビットの書込みは磁場の存在下でキュリー点Tc以上に加熱・冷却することで行われ、このプロセスは熱磁気書込みとして知られる。相変化材料では、情報は通例非晶質と結晶質の相状態の異なる領域に記録される。これらの薄膜は普通テルルの合金又は化合物であり、溶融と急冷とで非晶質状態にクエンチできる。薄膜は当初、結晶化温度以上に加熱して結晶化されている。大半の材料では、結晶化温度はガラス転移温度に近い。薄膜を短い高出力集束レーザーパルスで加熱すると、薄膜を溶融して非晶質状態にクエンチすることができる。非晶質スポットはデジタル「1」すなわち1ビットの情報を表すことができる。情報の読取りは、同じレーザーを低出力に設定してスキャンし、反射率をモニターすることによって行われる。
【0009】
WORM及びEOD技術の場合、記録層は透明な非干渉性シールド層で環境から隔てられる。かかる「リードスルー」光情報記録用途に選択される材料は、成形性、延性、一般の使用に適した丈夫さ、高温又は高湿度暴露時の変形耐性など個々の物性又はその組合せに卓越していなければならない。かかる材料は、記録デバイスから情報を取り出したり追加したりする際に媒体を通過するレーザー光との干渉が最小限であるべきである。
【0010】
デジタルバーサタイルディスク(DVD)、記録・書換可能なデジタルバーサタイルディスク(DVD−R及びDVD−RW)、高密度デジタルバーサタイルディスク(HD−DVD)、デジタルビデオレコーダー(DVR)、短期又は長期情報保管用の高密度データディスクのような新技術に適合すべく光情報記録媒体における情報記録密度が増大するのに伴って、光情報記録デバイスの透明プラスチック成分に対する設計要件は次第に厳しくなっている。こうした多くの用途では、従前使用されていたBPAポリカーボネート材料のようなポリカーボネート材料は適していない。次第に短波長化しつつある現在及び将来の「読取・書込」波長で低い複屈折を示す材料が、光情報記録デバイス分野での多大な研究の対象とされている。
【0011】
低い複屈折だけで光情報記録媒体用の材料の設計要件のすべてが満たされるわけではなく、高い透明性、耐熱性、低い吸水率、延性、高純度、及び不均質性や微粒子が少ないことも必要とされる。現在使われている材料はこれらの特性の1以上に欠けることが分かっており、光情報記録媒体で情報記録密度を高めるには新しい材料が必要である。また、光学的性質の改良された新材料は、レンズ、回折格子、ビームスプリッターなどの他の光学製品の生産にも広い有用性をもつと期待される。
【0012】
高い記録密度が必要とされる用途では、光学製品の製造に用いたポリマー材料の低複屈折及び低吸水率という性質が一段と重要性を増す。高情報記録密度化を達成するには、コンパクトディスクのような光学製品をレーザービームが通過するときの干渉が最小限となるように低い複屈折が必要とされる。
【0013】
高情報記録密度用途に必要とされる別の重要な特性はディスクの平坦度である。ディスクの平坦度は、射出成形プロセス直後のポリカーボネート基板の平坦度のみならず、高湿度環境暴露時の基板の寸法安定性に依存する。吸湿性が高すぎるとディスクが歪み、転じて信頼性の低下につながることが知られている。ディスクの大部分はポリマー材料からなるので、ディスクの平坦度はポリマー材料の水溶解性の低さ及びポリマー材料中への水の拡散速度の低さに依存する。さらに、射出成形での高品質ディスクの生産には、ポリマーが容易に加工できなければならない。
【0014】
良好な光学的性質と良好な加工性を有し、高密度光記録媒体での使用に適した組成物に対するニーズが存在する。ビスフェノールAのような上述の芳香族ジヒドロキシ化合物と6,6′−ジヒドロキシ−3,3,3′,3′−テトラメチルスピロビインダン(SBI)のような他のモノマーとの共重合で製造したポリカーボネートでは、妥当な複屈折を得ることができるが、ガラス転移温度(T)及び溶融粘度が高すぎて加工特性に劣ることが多い。そのため、得られる成形品は耐衝撃性及びピット複製性が低い。さらに、かかるポリカーボネートの吸水性は高密度用途には向かない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平1−197545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明はこれらの問題を解決し、予想外の有利な性質を有する記録媒体用組成物を提供する。本発明の上記その他の目的は、以下の説明及び特許請求の範囲の記載から一段と明瞭に理解できよう。
【0017】
一つの態様では、本発明は透明な混和性ブレンド組成物を製造するためのポリマーのブレンド技術に関する。別の態様において、本出願人は、本発明の透明混和性ブレンド組成物が光学製品、特に光情報記録媒体での使用に適した性質をもつという意外な知見を得た。
【0018】
本発明は光学製品での使用に適した透明ポリマーブレンドに関する。当該ポリマーはBCC及びその誘導体の残基を含んでおり、高密度光情報記録媒体用に特に適した性質を有する。ポリマーはさらに、α−メチルポリスチレン及びポリスチレン誘導体、ビスフェノールAのようなビスフェノール類、PCCD及びその誘導体のような脂環式ポリエステル樹脂又はこれら各成分の若干の組合せのような他のポリマーの残基も含んでいる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の好ましい実施形態及び実施例に関する以下の詳しい説明を参照することで本発明の理解を深めることができよう。
【0020】
本発明に係る組成物及び方法を開示するに当たり、本発明は特定の合成法や特定の組成自体に限定されるものではなく、当然ながら種々異なる形態をとり得ることを理解されたい。また、本明細書中で用いる用語は特定の実施形態を説明するためのものにすぎず、限定のためのものでないことも理解されたい。
【0021】
本明細書及び特許請求の範囲では多くの用語を用いるが、以下の意味をもつものと定義される。
【0022】
単数形で記載したものであっても、前後関係から明らかでない限り、複数の場合も含めて意味する。
【0023】
「混和性」という用語は、分子レベルでポリマー同士の親密な相互作用が達成される混合物であるブレンドをいう。
【0024】
本明細書中「透明」という用語は、目視検査で曇り、かすみ又は濁りが存在しないことと定義される。透明度は、ガードナー比色計を用いて透過率、曇り及び黄色度(YI)を測定することによって決定した。
【0025】
「任意」又は「任意には」という用語は、その用語に続いて記載された事象又は状況が起きても起きなくてもよいことを意味しており、かかる記載はその事象又は状況が起こる場合と起こらない場合とを包含する。
【0026】
本明細書中「BCC」は、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサンと定義される。
【0027】
本明細書中「BisAP」は、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルフェニルメタンと定義される。
【0028】
本明細書中「AMPS」は、α−メチルポリスチレンと定義される。
【0029】
本明細書中「PS」は、ポリスチレンと定義される。
【0030】
本明細書中「PCCD」は、ポリ(シクロヘキサン−1,4−ジメチレンシクロヘキサン−1,4−ジカルボキシレート)と定義される。
【0031】
本明細書中で用いる「ポリカーボネート」という用語には、コポリカーボネート、ホモポリカーボネート及び(コ)ポリエステルカーボネートが包含される。
【0032】
「C」は、Brewster(10−13cm/dyn)単位で測定したガラス状態のポリマー材料の応力光学係数である。
【0033】
「IBR」は、ナノメートル単位で測定した成形品の面内複屈折である。
【0034】
「VBR」は、ナノメートル毎ミリメートル(nm/mm)単位で測定した成形品の垂直複屈折である。
【0035】
本明細書中「光学製品」という用語には、光ディスク及び光情報記録媒体が包含される。例えばコンパクトディスク(CDオーディオ又はCD−ROM)、DVD(ROM、RAM、書換型)としても知られるデジタルバーサタイルディスク、追記型デジタルバーサタイルディスク(DVD−R)、デジタルビデオレコーディング(DVR)、光磁気(MO)ディスクなど、光学レンズ、例えばコンタクトレンズ、眼鏡用レンズ、望遠鏡用レンズ及びプリズム、光ファイバー、情報記録媒体、情報転送媒体、高密度情報記録媒体、ビデオカメラ用ディスク、スチルカメラ用ディスクなど、並びに光学記録材料が貼り付けられた基板が包含される。光学製品の製造材料としての用途の他に、本発明のブレンドはフィルムやシートの原料としても使用できる。
【0036】
本発明の「光情報記録媒体」はどんなタイプのものでもよいが、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、DVD−RW、HD−DVD、DVD−R、DVR及び光磁気ディスク(MO)が最も好ましい。デバイスは記録・書換可能な光情報記録媒体を含んでいてもよい。一実施形態のデバイスでは、透明な混和性ブレンドを含む基板に、アルミニウム、金、銀又はこれらの合金からなる反射金属層を直接貼り付ける。
【0037】
本明細書中でポリカーボネートの組成に関して「モル%」というときは、特記しない限り、ポリカーボネートの繰返し単位100モル%を基準とする。例えば、「90モル%のBCCを含むポリマー」とは、繰返し単位の90モル%がBCCジフェノール又はその誘導体に由来する残基であるポリカーボネートをいう。誘導体としては、特に限定されないが、ジフェノールのオリゴマー、ジフェノールのエステル及びそのオリゴマー、並びにジフェノールのクロロホルメート及びそのオリゴマーが挙げられる。
【0038】
ポリマーの構成成分について用いる「残基」という用語と「構造単位」という用語は、本明細書全体を通して同義である。
【0039】
本明細書中で文献を引用した場合、その開示内容はすべて、本発明の属する技術分野の技術水準を十分に説明するため、援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【0040】
一つの態様では、本発明は、以下の(A)〜(C)からなる群から選択される2種類のポリマーを含んでなる透明混和性ブレンド組成物に関する。
(A)は次の構造(I)の構造単位を含むポリカーボネートである。
【0041】
【化1】

【0042】
(式中、R又はRの少なくとも1つが3又は3′位にあることを条件として、R及びRは独立にC〜Cアルキル基からなり、XはCHからなり、mは4〜7の整数であり、nは1〜4の整数であり、pは1〜4の整数である。)
(B)は次の構造(II)の構造単位を含むポリマーである。
【0043】
【化2】

【0044】
(式中、RはC〜Cアルキル、水素、シアノ又はメトキシからなる。)
(C)は次の構造(III)の構造単位を含むポリマーである。
【0045】
【化3】

【0046】
(式中、R、R及びRは独立にC〜Cアルキルからなる。)
【0047】
別の態様では、本発明は、以下のポリマー(A)及び(D)を含んでなる透明混和性ブレンド組成物に関する。
(A)は次の構造(I)の構造単位を含むポリカーボネートである。
【0048】
【化4】

【0049】
(式中、R又はRの少なくとも1つが3又は3′位にあることを条件として、R及びRは独立にC〜Cアルキル基からなり、XはCHからなり、mは4〜7の整数であり、nは1〜4の整数であり、pは1〜4の整数である。)
(D)は次の構造(IV)の構造単位を含む脂環式ポリエステル樹脂である。
【0050】
【化5】

【0051】
(式中、R又はRの少なくとも1つが脂環式であることを条件として、Rは炭素原子数6〜20のアリール又はアルカン又はシクロアルカン含有ジオールの残基からなり、Rは炭素原子数6〜20のアリール又は脂肪族又はシクロアルカン含有二酸の脱カルボキシル残基からなる。)
【0052】
さらに別の態様では、本発明は、以下のポリマーA、B及びCを含む透明混和性ブレンド組成物に関する。
(A)は次の構造(I)の構造単位を含むポリカーボネートである。
【0053】
【化6】

【0054】
(式中、R又はRの少なくとも1つが3又は3′位にあることを条件として、R及びRは独立にC〜Cアルキル基からなり、XはCHからなり、mは4〜7の整数であり、nは1〜4の整数であり、pは1〜4の整数である。)
(B)は次の構造(II)の構造単位を含むポリマーである。
【0055】
【化7】

【0056】
(式中、RはC〜Cアルキル、水素、シアノ又はメトキシからなる。)
(C)は次の構造(III)の構造単位を含むポリマーである。
【0057】
【化8】

【0058】
(式中、R、R及びRは独立にC〜Cアルキルからなる。)
【0059】
さらに別の態様では、本発明は、以下のポリマー(A)、(B)及び(E)を含んでなる透明混和性ブレンド組成物に関する。
(A)は次の構造(I)の構造単位を含むポリカーボネートである。
【0060】
【化9】

【0061】
(式中、R又はRの少なくとも1つが3又は3′位にあることを条件として、R及びRは独立にC〜Cアルキル基からなり、XはCHからなり、mは4〜7の整数であり、nは1〜4の整数であり、pは1〜4の整数である。)
(B)は次の構造(II)の構造単位を含むポリマーである。
【0062】
【化10】

【0063】
(式中、RはC〜Cアルキル、水素、シアノ又はメトキシからなる。)
(E)は次の構造(V)の構造単位を含むポリマーである。
【0064】
【化11】

【0065】
(式中、RはC〜Cアルキル、水素、シアノ又はメトキシからなる。)
【0066】
さらにまた別の態様では、本発明は、以下のポリマー(B)、(C)及び(E)を含む透明混和性ブレンド組成物に関する。
(B)は次の構造(II)の構造単位を含むポリマーである。
【0067】
【化12】

【0068】
(式中、RはC〜Cアルキル、水素、シアノ又はメトキシからなる。)
(C)は次の構造(III)の構造単位を含むポリマーである。
【0069】
【化13】

【0070】
(式中、R、R及びR各々独立にC〜Cアルキルからなる。)
(E)は次の構造(V)の構造単位を含むポリマーである。
【0071】
【化14】

【0072】
(式中、RはC〜Cアルキル、水素、シアノ又はメトキシからなる。)
【0073】
ポリマーの透明な混和性ブレンドは稀である。混和性ブレンドは透明であり、半透明でも不透明でもない。2種類以上の成分からなる混和性ブレンドでは、示差走査熱量測定で単一のガラス転移温度(T)しか検出されない。さらに、走査電子顕微鏡で非混和相の指標となるコントラストは検出されない。
【0074】
ポリマー材料から成形した製品の複屈折は成分ポリマー鎖の配向及び変形に関連している。複屈折には、ポリマー材料の構造及び物性、ポリマー材料の分子配向の程度、及び加工ポリマー材料の熱応力を始めとする幾つかの原因がある。例えば、成形光学製品の複屈折は、そのポリマー成分の分子構造と、熱応力及びポリマー鎖の配向を生じる可能性のある製造時の加工条件(例えば金型充填及び冷却時に加わる力)とによってある程度定まる。
【0075】
そこで、ディスクで観察される複屈折は、固有の複屈折を左右する分子構造と、熱応力及びポリマー鎖の配向を生じる可能性のある加工条件とで決まる。具体的には、観察される複屈折は典型的には固有の複屈折に加えて光ディスクなどの製品の成形時に導入された複屈折の関数である。光ディスクで観察される複屈折は、通例、以下で詳しく説明する「面内複屈折」又はIBRと呼ばれる測定値を用いて定量化される。
【0076】
成形光ディスクでは、IBRは次の通り定義される。
【0077】
IBR=(n−nθ)d=Δnθd (3)
式中、n及びnθはディスクの円柱座標軸r及びθに沿った屈折率であり、nは半径方向に偏光した光ビームで観察される屈折率であり、nθはディスクの平面に対してアジマス方向に偏光した光の屈折率であり、dはディスクの厚さである。IBRはデフォーカスマージンを支配しており、IBRの低減は機械的補正の不可能な諸問題の軽減につながる。IBRは正式には「リターデーション」と呼ばれ、最終光ディスクの特性の一つであり、ナノメートルの単位を有する。
【0078】
成形光情報記録ディスクのような成形光学製品用の材料の適性に関する二つの有用な判断基準は、その材料の溶融状態での応力光学係数(C)と、ガラス状態での応力光学係数(C)である。C、C及び複屈折の関係は以下の通り表すことができる。
【0079】
Δn=C×Δσ (1)
Δn=C×Δσ (2)
式中、Δnは複屈折の測定値であり、Δσ及びΔσはそれぞれ溶融状態及びガラス状態で加えた応力である。応力光学係数C及びCは、材料について、金型充填時の配向と変形及び成形品冷却時の応力による複屈折の起こり易さの尺度である。
【0080】
応力光学係数C及びCは一般的な材料選別手段として有用であり、成形品の垂直複屈折(VBR)の予想にも用いることができる。垂直複屈折(VBR)はある材料を成形光学製品に旨く使用できるか否かにとって極めて重要な量である。成形光ディスクでは、VBRは次の通り定義される。
【0081】
VBR=(n−n)=Δnrz (3)
式中、n及びnはディスクの円柱座標軸r及びzに沿った屈折率であり、nは半径方向に偏光した光ビームで観察される屈折率であり、nはディスク平面に垂直に偏光した光に対する屈折率である。VBRはデフォーカスマージンを支配しており、VBRの低減は、機械的補正の不可能な諸問題の軽減につながる。
【0082】
光学製品用の改良材料の探索に当たっては、C及びCが特に有用である。VBRの測定はかなり大量の材料を必要とし、成形条件によって左右されるのに対して、C及びCは必要とされる材料の量が最小限ですみ、制御不能な測定パラメーター又はサンプル調製法による影響が少ないからである。一般に、C及びCの低い材料はC及びCの高い材料に比べて光情報記録用途におけるVBRなどの性能特性が向上することが判明している。したがって、改善された光学品質の開発を目指した研究では、かかる用途に対する候補を評価するとともに既に発見されている材料と比較するためにC及びCの測定が広く用いられている。
【0083】
ブレンド法は、共重合法とは対照的に、数々の利点をもたらす。ブレンド法の利点として、共重合法では費用がかかりすぎたり達成不可能な組成物の製造がブレンド法では可能となることが挙げられる。
【0084】
さらに、本ブレンド組成物は理想的な光学的性質及び適当なガラス転移温度(T)を有し、光学製品での使用に適したポリカーボネートブレンドを与える。適当なガラス転移温度は、理想的な成形性のような適切な加工性を与えるのに必須である。
【0085】
本出願人は、本明細書に規定する透明混和性ポリマーブレンドが情報記録密度の高い光媒体での使用にも適することを見出した。特に、本発明のブレンドは良好な透明性、低い吸水率、良好な加工性、良好な熱安定性及び低い複屈折を有する。
【0086】
さらに別の態様では、本発明は、データ記録層と隣接透明被覆層とを有する情報記録媒体であって、データ記録層が透明被覆層に入射したエネルギー場をデータ層に入射する前に反射することができる情報記録媒体に関する。具体的には、本発明のこの態様は、上記透明混和性ブレンド組成物の薄い透明被覆層(約100ミクロン〜約0.6mm)を有する情報記録媒体に関する。上述の通り、情報記録媒体の一実施形態はDVDである。DVDは通例2枚の基板を有しており、各々半径約120mmで厚さ約0.6mmである。これらの基板を貼り合わせて両面型光媒体を作る。情報記録媒体の別の実施形態はDVRであり、DVRは通例厚さ約1.1mmのポリカーボネート基板(データ層)と厚さ約100ミクロンの被覆層を有しており、この二層を接着剤で貼り合わせる。
【0087】
上述の通り、本発明の透明ブレンド組成物は、光学媒体での使用、特に光情報記録用途に適した性質を有する。本発明の透明混和性ブレンドは、約100〜約185℃、さらに好ましくは約125〜約165℃、さらに一段と好ましくは約130〜約150℃のガラス転移温度を有する。当該透明混和性ブレンドの吸水率は、平衡状態で好ましくは約0.33%未満であり、さらに好ましくは約0.2%未満である。当該透明混和性ブレンドから成形したディスクのIBR値は、約−100〜約100ナノメートル、好ましくは約−50〜約50ナノメートル、さらに好ましくは約−40〜約40ナノメートルである。
【0088】
2種類のポリマーからなる透明混和性ブレンド組成物の場合、第一のポリマー及び第二のポリマーの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーでポリスチレンを標準として測定して、好ましくは約10000〜約100000g/mol、さらに好ましくは約10000〜約50000g/mol、さらに一段と好ましくは約12000〜約40000g/molである。2種類のポリマーからなる透明混和性ブレンド組成物は、好ましくは約85%以上、さらに好ましくは約90%以上の光透過率を有する。
【0089】
3種類のポリマーからなる透明混和性ブレンド組成物の場合、第一のポリマー、第二のポリマー及び第三のポリマーの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーでポリスチレンを標準として測定して、
好ましくは約10000〜約100000g/mol、さらに好ましくは約10000〜約50000g/mol、さらに一段と好ましくは約12000〜約40000g/molである。3種類のポリマーからなる透明混和性ブレンド組成物は、好ましくは約85%以上、さらに好ましくは約90%以上の光透過率を有する。
【0090】
個々のブレンドの組成は、適当な特性プロフィルを達成すべく所定範囲内で変化させることができる。本発明のブレンドはその組成の全域で混和性である。
【0091】
2種類のポリマーからなるブレンド組成物の場合、ポリマーの割合は、第一のポリマー約1〜約99重量%と第二のポリマー約1〜約99重量%であり、第一成分と第二成分の合計重量百分率は好ましくは100重量%に等しい。
【0092】
第一成分としてポリマーA及び第二成分としてポリマーBとポリマーDのいずれかを含む2種類のポリマーからなるブレンドの実施形態では、成分ポリマーAが主成分であり、ブレンドの約1〜約99重量%、好ましくは約10〜約99重量%、さらに好ましくは約30〜約99重量%、さらに一段と好ましくは約60〜約99重量%をなす。別の実施形態では、成分ポリマーAはブレンドの約90〜約99重量%をなす。ポリマーBとポリマーDのいずれかからなる第二成分はブレンドの約1〜約40重量%、好ましくは約5〜約30重量%、さらに好ましくは約10〜約30重量%をなし、第一成分と第二成分の合計重量百分率は好ましくは100重量%に等しい。
【0093】
第一成分としてポリマーC及び第二成分としてポリマーBを含む2種類のポリマーからなるブレンドの実施形態では、成分ポリマーCが主成分であり、ブレンドの約1〜約99重量%、好ましくは約10〜約99重量%、さらに好ましくは約30〜約99重量%、さらに一段と好ましくは約60〜約99重量%をなす。別の実施形態では、ポリマーCはブレンドの約90〜約99重量%をなす。第二成分のポリマーBはブレンドの約1〜約40重量%、さらに好ましくは約5〜約30重量%、さらに一段と好ましくは約10〜約30重量%をなす。
【0094】
第一成分としてポリマーA及び第二成分としてポリマーCを含む2種類のポリマーからなるブレンドの実施形態では、いずれの成分が主成分であってもよい。別の実施形態では、ポリマーAとポリマーBの割合は等しくてもよい。
【0095】
個々のブレンドの組成は、ブレンドの最終用途及び所望特性を始めとする数々の要因に応じて調節できる。ブレンドの組成は成分比に基づいて調節される。例えば、ブレンドである成分の割合を増やすと、低い吸水性及び良好な複屈折を保つのに役立つ。
【0096】
構造(I)の単位の具体例としては、特に限定されないが、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン(BCC)、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘプタン及びその混合物の残基が挙げられる。BCCの残基が構造単位(I)として最も好ましい。
【0097】
本発明の一実施形態では、ブレンドは次の構造(VI)のBCC残基を約90〜約100モル%含む。BCCは、シクロヘキサノンとo−クレゾールから簡単に合成できる。
【0098】
【化15】

【0099】
BCC由来の構造単位100モル%からなるポリカーボネートは、本明細書中では「BCCホモポリカーボネート」という。
【0100】
本発明によれば、構造(I)の構造単位は3又は3′位がR又はRの少なくとも1つで置換されていることが重要である。nとpが1で、RとRがそれぞれ3及び3′位に存在するのが好ましい。R及びRは、好ましくはC〜Cアルキル基、さらに好ましくはC〜Cアルキル基、さらに一段と好ましくはCHである。
【0101】
この十年来、ポリカーボネートとポリスチレンのブレンドに多大な関心が寄せられている。例えば、ポリスチレンとブレンドすることでポリカーボネートの吸水性を低下させ、モジュラスを高め、応力光学係数を低下させることができれば望ましい。しかし、BPAポリカーボネートとポリスチレンは非混和性である。したがって、構造(I)を有するポリマーが構造(II)を有するポリマーと混和性であったこと、並びに得られたブレンドが光学製品、特に光情報記録媒体での使用に適しているという知見が得られたのは驚くべきことであった。
【0102】
構造(II)単位の具体例は、α−メチルポリスチレンであり、フェニル環は置換されていてもいなくてもよい。一実施形態では、ブレンドの第二のポリマーはα−メチルポリスチレン残基約100モル%からなる。α−メチルポリスチレンは文献に記載されているようにα−メチルスチレンのラジカル重合、アニオン重合又はカチオン重合で得ることができる。
【0103】
構造(III)単位の具体例は、BisAPの残基であり、フェニル環は置換されていてもいなくてもよい。一実施形態では、ブレンドの第二のポリマーはBisAP残基約100モル%からなる。BisAPは酸触媒によるアセトフェノンとフェノールの縮合によって得ることができる。
【0104】
脂環式ポリエステル樹脂は次の構造(IV)の繰返し単位を有するポリエステルからなる。
【0105】
【化16】

【0106】
式中、R又はRの少なくとも一方はシクロアルキル含有基である。
【0107】
ポリエステルは縮合生成物であり、Rは炭素原子数6〜20のアリールもしくはアルカンもしくはシクロアルカン含有ジオール又はその化学的等価物の残基であり、Rは炭素原子数6〜20のアリールもしくは脂肪族もしくはシクロアルカン含有二酸又はその化学的等価物から誘導される脱カルボキシル残基であるが、RとRの少なくとも一方が脂環式基であることを条件とする。本発明の好ましいポリエステルはR及びR共に脂環式である。
【0108】
この脂環式ポリエステルは、脂肪族二酸又はその化学的等価物と脂肪族ジオール又はその化学的等価物との縮合生成物である。この脂環式ポリエステルは脂肪族二酸と脂肪族ジオールの混合物から合成し得るが、50モル%以上の環状二酸及び/又は環状ジオール成分を含んでいなければならず、その残部があるとすれば線状脂肪族二酸及び/又はジオールである。環状成分はポリエステルに良好な剛性を付与するとともに、ポリカーボネート樹脂との好ましい相互作用により透明ブレンドを形成するのに必要である。
【0109】
ポリエステル樹脂は通例ジオール又はジオール等価成分と二酸又は二酸等価成分との縮合又はエステル交換重合によって得られる。
【0110】
及びRは好ましくは以下の式から独立に選択されるシクロアルキル基である。
【0111】
【化17】

【0112】
好ましい脂環式基Rは1,4−シクロへキシル二酸から誘導され、最も好ましくはその70モル%超がトランス異性体である。最も好ましい脂環式基Rは1,4−シクロへキシルジメタノールのような1,4−シクロへキシル第一ジオールから誘導され、最も好ましくはその70モル%超がトランス異性体である。
【0113】
本発明のポリエステル樹脂の製造に有用なその他のジオールは直鎖、枝分れ又は脂環式アルカンジオールであり、その炭素原子数は2〜12とし得る。かかるジオールの具体例には、エチレングリコール、プロピレングリコール(すなわち1,2−プロピレングリコール及び1,3−プロピレングリコール)、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル,2−メチル,1,3−プロパンジオール、1,3−ペンタンジオール及び1,5−ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジメタノールデカリン、ジメタノールビシクロオクタン、1,4−シクロヘキサンジメタノール(特にそのシス異性体及びトランス異性体)、トリエチレングリコール、1,10−デカンジオール、並びにこれらいずれかの混合物があるが、これらに限定されない。好ましくは、脂環式ジオール又はその化学的等価物、特に1,4−シクロヘキサンジメタノール又はその化学的等価物がジオール成分として用いられる。
【0114】
ジオールの化学的等価物には、ジアルキルエステルやジアリールエステルなどのエステルがある。
【0115】
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂の製造に有用な二酸は、好ましくは脂環式二酸である。これは各々飽和炭素に結合した2つのカルボキシル基を有するカルボン酸を包含して意味する。好ましい二酸はシクロ又はビシクロ脂肪族酸、例えばデカヒドロナフタレンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロオクタンジカルボン酸、1,4−シクロへキサンジカルボン酸又はそれらの化学的等価物であり、最も好ましいものはtrans−1,4−シクロへキサンジカルボン酸又はその化学的等価物である。アジピン酸、アゼライン酸、ジカルボキシルドデカン酸及びコハク酸のような線状ジカルボン酸も有用である。
【0116】
シクロへキサンジカルボン酸及びその化学的等価物は、例えば、適当な触媒(ロジウムを炭素やアルミナのような適当な担体に担持したものなど)を用いて、水や酢酸のような適当な溶媒中で、イソフタル酸やテレフタル酸やナフタレン酸のような環状芳香族二酸及びその誘導体を水添することによって調製できる。Friefelder他,Journal of Organic Chemistry,31,3438(1966);米国特許第2675390号及び同第4754064号を参照されたい。また、反応条件下でフタル酸が少なくとも部分的に可溶性であるような不活性液体媒質と、炭素やシリカに担持したパラジウム又はルテニウム触媒とを用いて製造することもできる。米国特許第2888484号及び同第3444237号を参照されたい。
【0117】
水添では、通例、カルボン酸基がシス位又はトランス位にあるような2種類の異性体が得られる。シス異性体とトランス異性体は結晶化又は蒸留で分離することができ、結晶化に際してはn−へプタンのような溶剤を使用してもよいし、使用しなくてもよい。シス異性体の方がブレンドし易いが、トランス異性体の方が高い溶融温度及び結晶化温度を有しているので好ましい。シス/トランス異性体混合物も本発明で有用である。
【0118】
異性体混合物又は2種類以上の二酸もしくはジオールを使用すると、コポリエステル又は2種類のポリエステルの混合物を本発明の脂環式ポリエステル樹脂として使用することができる。
【0119】
これらの二酸の化学的等価物には、エステル、ジアルキルエステルのようなアルキルエステル、ジアリールエステル、無水物、塩、酸クロライド、酸ブロマイドなどがある。好ましい化学的等価物には、脂環式二酸のジアルキルエステルがあり、最も好ましい化学的等価物には、酸のジメチルエステル、特に1,4−シクロへキサン−ジカルボン酸ジメチルがある。
【0120】
好ましい脂環式ポリエステルは、ポリ(1,4−シクロへキサン−ジメタノール−1,4−ジカルボキシレート)(PCCD)とも呼ばれるポリ(シクロへキサン−1,4−ジメチレンシクロへキサン−1,4−ジカルボキシレート)であり、次の式IIの繰返し単位を有する。
【0121】
【化18】

【0122】
前述の一般式を参照すると、PCCDでは、Rは1,4−シクロへキサンジメタノールから誘導され、Rはシクロへキサンジカルボキシレート又はその化学的等価物から誘導されるシクロへキサン環である。好ましいPCCDはシス/トランス体を有する。
【0123】
ポリエステル重合反応は、一般に、適量(通例、最終生成物を基準にして約50〜200ppmのチタン)のテトラキス(2−エチルへキシル)チタネートのような適当な触媒の存在下で溶融状態で実施される。
【0124】
本発明の透明成形用組成物に用いられる好ましい脂肪族ポリエステルは、50℃を上回るガラス転移温度(T)を有し、さらに好ましくは約80℃を上回るガラス転移温度、最も好ましくは100℃を超えるガラス転移温度を有する。
【0125】
その他本発明で考えられるものには、上記のポリエステルで、高分子脂肪族酸及び/又は高分子脂肪族ポリオールから誘導される単位を約1〜約50重量%有していてコポリエステルを形成しているものがある。脂肪族ポリオールにはポリ(エチレングリコール)やポリ(ブチレングリコール)のようなグリコール類がある。
【0126】
3種類のポリマーをブレンドして透明混和性ブレンドを製造する本発明の実施形態では、第一のポリマー(B)は構造(II)の構造単位を含むポリマーである。第二のポリマー及び第三のポリマーは(A)、(C)及び(E)からなる群から選択される。ただし、(A)は構造(I)の構造単位を含むポリマーであり、(C)は構造(III)の構造単位を含むポリマーであり、(E)は構造(V)の構造単位を含むポリマーである。
【0127】
本発明の一実施形態では、ポリマーB、A及びCを含む透明混和性ブレンドは、第一のポリマー(B)約1〜約50重量%、第二のポリマー(A)約1〜約80重量%、第三のポリマー(C)約1〜約80重量%からなる。さらに好ましくは、このブレンドは第一のポリマー(B)約5〜約25重量%、第二のポリマー(A)約3〜約70重量%及び第三のポリマー(C)約20〜約75重量%からなる。
【0128】
本発明の一実施形態では、ポリマーB、A及びEを含む透明混和性ブレンドは、第一のポリマー(B)約1〜約30重量%、第二のポリマー(A)約50〜約98重量%、第三のポリマー(E)約1〜約20重量%である。さらに好ましくは、このブレンドは第一のポリマー(B)約5〜約20重量%、第二のポリマー(A)約70〜約90重量%及び第三のポリマー(E)約5〜約10重量%からなる。
【0129】
本発明の一実施形態では、ポリマーB、C及びEを含む透明混和性ブレンドは、第一のポリマー(B)約1〜約30重量%、第二のポリマー(C)約50〜約98重量%、第三のポリマー(E)約1〜約20重量%である。さらに好ましくは、このブレンドは第一のポリマー(B)約5〜約20重量%、第二のポリマー(C)約70〜約90重量%及び第三のポリマー(E)約5〜約10重量%からなる。
【0130】
構造(V)単位の具体例はスチレンの残基であり、フェニル環は置換されていてもいなくてもよい。一実施形態では、ブレンドの第三のポリマーは約100重量%ポリスチレン残基からなる。
【0131】
本発明のブレンドは、任意には、曇りを生じない量の他の添加剤、例えば特に限定されないが、ビスフェノールA(BPA)ポリカーボネート、或いは2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、6,6′−ジヒドロキシ−3,3,3′,3′−テトラメチルスピロビインダン(SBI)、ジメチル−BPA(DMBPA)、テトラメチル−BPA(TMBPA)及びジメチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルフェニルメタン(DMBisAP)のような混和性ポリマーとブレンドしてもよい。
【0132】
本発明の透明混和性ブレンドは、光学製品の成形に当たり、任意には、光学用途での慣用添加剤、例えば特に限定されないが、染料、UV安定剤、酸化防止剤、熱安定剤及び離型剤などとブレンドしてもよい。特に、所望の光学製品を成形するためのブレンドの加工に役立つ添加剤とのブレンドを形成するのが好ましい。ブレンドは、任意には、所望の添加剤を0.0001〜10重量%、好ましくは0.0001〜1.0重量%含有し得る。
【0133】
本発明のポリマーに添加し得る物質又は添加剤には、特に限定されないが、耐熱安定剤、UV吸収剤、離型剤、帯電防止剤、スリップ剤、粘着防止剤、滑剤、曇り防止剤、着色剤、蛍光染料及び顔料、天然油、合成油、ワックス、有機充填材、無機充填材、他の混和性ポリマー及びこれらの混合物がある。適当な帯電防止剤には、ジステアリルヒドロキシルアミン、トリフェニルアミン、トリ−n−オクチルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシド、ピリジンN−オキシド、エトキシル化ソルビタンモノラウレート及びポリ(アルキレングリコール)化合物がある。
【0134】
上述の耐熱安定剤の例には、特に限定されないが、フェノール系安定剤、有機チオエーテル系安定剤、有機ホスフィド系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤、エポキシ系安定剤及びこれらの混合物がある。耐熱安定剤は固体又は液体の形態で添加し得る。
【0135】
UV吸収剤の例には、特に限定されないが、サリチル酸系UV吸収剤、ベンゾフェノン系UV吸収剤、ベンゾトリアゾール系UV吸収剤、シアノアクリレート系UV吸収剤及びこれらの混合物がある。
【0136】
離型剤の例には、特に限定されないが、天然及び合成パラフィン、ポリエチレンワックス、フルオロカーボンその他の炭化水素系離型剤、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸その他の高級脂肪酸、ヒドロキシ脂肪酸その他の脂肪酸系離型剤、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアロアミドその他の脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミドその他の脂肪酸アミド系離型剤、ステアリルアルコール、セチルアルコールその他の脂肪族アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、ポリグリセロールその他のアルコール系離型剤、ステアリン酸ブチル、ペンタエリトリトールテトラステアレートその他の脂肪酸の低級アルコールエステル、脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸のポリグリコールエステルその他の脂肪酸エステル系離型剤、シリコーンオイルその他のシリコーン系離型剤、及びこれらの任意の混合物がある。
【0137】
着色剤は顔料でも染料でもよい。本発明では、無機着色剤と有機着色剤を別々又は組合わせて使用できる。
【0138】
任意には、適当なカーボネート再分配触媒をブレンドに導入してもよい。適当な再分配触媒には各種の塩基及びルイス酸がある。具体例としては、アミン、特に1,3−ジメチルアミノプロパン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール及びベンゾトリアゾール、並びにその他の有機塩基、例えば通常は五水和物である水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化ジエチルジメチルアンモニウム及び水酸化テトラエチルアンモニウムのような水酸化テトラアルキルアンモニウム、通常は一水和物であるテトラメチルアンモニウムフェノキシドのようなテトラアルキルアンモニウムフェノキシド、酢酸テトラメチルアンモニウムのような酢酸テトラアルキルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸テトラメチルアンモニウムのようなテトラフェニルホウ酸テトラアルキルアンモニウム、及びステアリン酸リチウム、ビスフェノールAのリチウム塩、ビスフェノールAのテトラエチルアンモニウム塩、ナトリウムフェノキシドなどがある。その他の適当な有機塩基としては、ホスフィン、例えばトリフェニルホスフィンがある。各種の有機金属化合物、例えば、ジ(n−ブチル)スズオキシド、ジ(n−オクチル)スズオキシド、ジ(n−ブチル)スズジブトキシド、ジ(n−ブチル)スズジオクトエート、ジブチルスズ、テトラブチルスズ、トリブチルスズトリフルオロアセテート、トリブチルスズクロロフェノキシド、ビス[(ジブチル)(フェノキシ)スズ]オキシド及びトリブチルスズヒドリドのような有機スズ化合物、並びにチタンテトラ(イソプロポキシド)、チタンテトラ(5−メチルヘプトキシド)及びチタンテトラ(ブトキシド)のような有機チタン化合物、並びにジルコニウムテトラ(イソプロポキシド)、アルミニウムトリ(エトキシド)、アルミニウムトリ(フェノキシド)、酢酸第二水銀、酢酸鉛、(ジフェニル)水銀、(テトラフェニル)鉛及び(テトラフェニル)シランも適当な触媒である。また、各種水素化物、例えば水素化ナトリウム、水素化リチウム、水素化アルミニウム、三水素化ホウ素、水素化タンタル、水素化ニオブ、水素化リチウムアルミニウム、ホウ水素化リチウム、ホウ水素化ナトリウム、ホウ水素化テトラメチルアンモニウム、ホウ水素化テトラ(n−ブチルアンモニウム)、水素化リチウムトリ(t−ブトキシ)アルミニウム及びジフェニルシラン、並びに簡単な無機化合物、例えば水酸化リチウム、ケイ酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、シリカ、フッ化リチウム、塩化リチウム、炭酸リチウム及び酸化亜鉛も適している。
【0139】
所望の光学製品は、透明混和性ブレンドを射出成形、圧縮成形、押出法及び溶液キャスト法で成形することで得られる。射出成形がさらに好ましい製品成形方法である。
【0140】
本発明のブレンドは低い吸水率、良好な加工性及び低い複屈折のような有利な特性を有しているので、光学製品の製造に好適に利用できる。本発明のブレンドの光学製品としての最終用途には、デジタルオーディオディスク、デジタルバーサタイルディスク、光記録ディスク、コンパクトディスク、DVR及びMO媒体など、光学レンズ、例えばコンタクトレンズ、眼鏡用レンズ、望遠鏡用レンズ及びプリズム、光ファイバー、光磁気ディスク、情報記録媒体、情報転送媒体、ビデオカメラ用ディスク、スチルカメラ用ディスクなどがある。
【0141】
本ブレンドは情報記録媒体として機能し得る。すなわち、ポリマー上又はその内部に情報を固定できる。本ブレンドは、情報記録媒体を貼り付ける基板としても機能し得る。さらに、単一のデバイスに両機能を組合せて用いることもできる。
【0142】
光学製品としての用途の他に、本発明のブレンドは良好な性質を有する透明製品の製造にも有用である。かかる性質には良好な耐食品化学性及び溶融加工性がある。本発明のブレンドは、成形品、繊維、フィルム及びシートの製造に特に有用である。
【0143】
本発明のブレンドは、ポリマーを約240℃を上回る温度、好ましくは約240〜約300℃の温度で透明ブレンド組成物の形成に十分な時間ブレンディングする段階を含む方法で製造することができる。ブレンドの形成に適した方法には、特に限定されないが、溶融法、溶液調製法、ドライブレンディング法及び押出法がある。
【0144】
上記の組成に加えて、本発明のブレンドは1種類以上の他の改質用ポリマーを含んでいてもよい。適当な改質用ポリマーは、第一及び第二のポリカーボネートと共に混和性ブレンドを生成するものである。考えられる改質用ポリマーには、上記以外のポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアリーレート、液晶ポリマー、ビニルポリマーなど及びこれらの混合物がある。適当な改質用ポリマーの決定は、可能な改質用ポリマーについて従来の混和性試験を実施することで当業者がなし得る事項である。
【実施例】
【0145】
以下の実施例は、特許請求の範囲に記載した組成物及び方法をいかに実施し評価するかを当業者に示すために記載するものであり、本発明者らが発明として把握している範囲を限定するものではない。数値(例えば量、温度など)に関しては正確を期したが、若干の誤差や偏差はあるであろう。特記しない限り、部は重量部であり、温度は摂氏温度(℃)又は室温であり、圧力は大気圧又はその付近である。
【0146】
以下に示す結果を得るのに用いた材料及び試験法は、以下の通りである。
【0147】
吸水率(%HO)は、ASTM D570に類似しているが、実施例に記載の部材の厚さの変化が考慮されるように修正した以下の方法で測定した。プラスチック部材又はディスクを減圧下で1週間以上乾燥した。試料を定期的に取出して秤量し、乾燥したか否か(減量が止まったか否か)を判定した。試料をオーブンから取出し、デシケーター内で室温に平衡させ、乾燥重量を記録した。試料を23℃の水浴中に浸した。試料を定期的に浴から取出し、表面をふき取って乾かし、重量を記録した。試料を繰返し浸漬し、試料が実質的に飽和するまで重量を測定した。(ASTM法D−570−98のセクション7.4に記載の通り)2週間での平均増量が全増量の1%未満となったときに、試料は実質的に飽和つまり「平衡」に達したとみなした。
【0148】
ガラス転移温度(T)の値は、PERKIN ELMER DSC7を用いた示差走査熱量測定で求めた。Tは、20℃/分の昇温速度を用いた1/2Cp法に基づいて算出した。
【0149】
透過率測定値は、HP8453 UV−vis分光光度計を用いて630nmで求めた。値は、部材表面での反射又は部材の厚さを通しての光散乱に関する補正を行っていない。可視光での透過率、YI及び曇りの測定はGardner比色計を用いて行った。
【0150】
値は以下のようにして求めた。ポリマー(7.0グラム)を寸法5.0×0.5インチの加熱金型に装填し、そのガラス転移温度を上回る120℃で、標準的な圧縮成形装置を用いて最初は0ポンドから最終的には2000ポンドの圧力を加えて圧縮成形した。この条件で所要時間経過後、金型を放冷し、棒状成形試験片をCarverプレスを用いて取り出した。成形試験片を次いで偏光顕微鏡で検査し、試験片の観察領域を決めた。観察領域の選択は、複屈折が観察されないこと及び棒状試験片の両端又は両側から十分な距離があることを基準にした。次いで、既知量の力が試験片に垂直に加わるように設計された装置に試料を取付け、試験片の観察領域を適切に偏光した光で照射した。次いで試験片に6レベルの応力を加え、各レベルでバビネ補償板を用いて複屈折を測定した。複屈折を応力に対してプロットすると直線が得られ、その傾きが応力光学係数Cに等しい。
【0151】
面内複屈折(IBR)及び垂直複屈折(VBR)値は、Dr.Schenk社製Prometeus MT136E光ディスクテスターで測定した。CDディスクを成形し、非メタライズCD基板(1.2mmディスク)で複屈折測定を行った。
【0152】
バレル温度は金型注入時のポリマーが装置内部でどの位熱いかを示し、金型温度はポリマーが注入される金型キャビティーの温度である。バレル温度は例えば350℃とすればよく、金型温度は例えば100℃とすればよい。
【0153】
実施例1〜35
表1に、本発明の何種類かのブレンドで実験により得たガラス転移温度(T)を示す。実施例1〜35のTは溶剤キャストフィルムで得た。フィルムは以下の通り調製した。各ポリマーについて濃度4重量%の溶液を調製した。溶液同士を混合して適切な混合物とした。例えば、BCCとAMPSの90/10混合物(実施例1)では、9gのBCC溶液を1gのAMPSと混合した。混合溶液を次にガラススライド上に流延し、溶剤を一晩蒸発させた。得られたフィルムを100℃の真空オーブンで3日間乾燥した。乾燥したら、乾燥フィルムの透明度を調べ、Tを測定した。表1のフィルムはすべて透明で曇りがなく、ブレンドのT(Tgblend)に関する次の混合式から予測された単一の明確なガラス転移を有していた。
【0154】
1/Tgblend=w/Tg1+w/Tg2
ただし、w及びwは重量分率であり、Tg1及びTg2は二成分系ブレンドの個々のポリマーのKelvin単位でのガラス転移温度である。
【0155】
実施例1〜5は、BCCとAMPSを混合すると単一のTの透明ブレンドを形成できることを示している。ブレンドのTは、それぞれ例C1及びC2に示すBCC及びAMPSポリマーのTが与えらればT混合式で明確に定まる。単一のTの透明ブレンドは、実施例6〜10のBCC/BisAPブレンド、実施例11〜15のBCC/PCCDブレンド及び実施例16〜21のBisAP/AMPSブレンドにも示してある。表1には、BisAPとPCCDのTもそれぞれ例C3及びC4として示してある。
【0156】
【表1】

【0157】
実施例22〜35には、3成分からなる単一Tの透明ブレンドも示してある。3種類のポリマーをブレンドする場合、Tgblendは次の混合則を用いて各ポリマーの重量分率w、w、w及び各ポリマーのT、すなわちTg1、Tg2及びTg3から予測される。
【0158】
1/Tgblend=w/Tg1+w/Tg2+w/Tg3
実施例22〜31は、BCCとAMPSとBisAPのブレンドも3成分混合則に従う明確なTを有していることを示している。BCC/AMPS/PSブレンドの実施例32及び33並びにBisAP/AMPS/PSブレンドの実施例34及び35は、AMPSも混合物に配合すればポリカーボネートとポリスチレンを混合して透明ブレンドを形成できることを示している。
【0159】
実施例36〜43
特定の実施例の透明ポリマーブレンド(表2に示す)を光学製品に成形してT、C、光透過率%及び平衡吸水率を測定した。630nmでの透過率はHP UV−可視光分光光度計を用いて測定した。ブレンドは、約75%以上、さらに好ましくは約80%以上の透過率、及び約60Brewster未満、さらに好ましくは55Brewster未満、さらに一段と好ましくは50Brewster未満のCを有するべきである。ブレンドは各ポリマー成分のドライ粉末をHenschel強力ミキサーで混合して調製し、光学製品へと成形した。C棒状試験片は圧縮成形するか(実施例39及び43)或いは温度250〜320℃で射出成形して「ドッグボーン」形(ゲージ断面厚さ0.125インチ、幅0.500インチ)の棒状引張試験片とした(実施例36〜38及び40〜42)。
【0160】
実施例36及び37(BCC/AMPSブレンド)は、AMPSを添加すると、高い光透過率を保持したままブレンドのC(49Brewster)がBCCホモポリマー(52Brewster)に比べ低下することを示している。同様に、実施例38は、BCC/PCCDブレンドも高い光透過率及びBCCに比べ若干低いCを有していることを示している。BCC/BisAPブレンドに関する実施例39及び40も、BisAPの添加によってBCCよりもCは増すものの、単一のTと高い透過率(実施例40)を示す。最後に、3成分系ブレンドも単一のTと高い透過率をもつことが実施例41〜43に示されている。BCC/AMPS/BisAPブレンドに関する実施例42はCが40Brewsterであり、BCC及びBPA−PCよりも大幅に低下している。BisAPを大量(>約80%)に含有するものは明らかに除外されるものの、大半のブレンドでは平衡吸水率がBPA−PCよりも低い。低い吸水率は、光ディスクが低い傾きと反り及び高いデータ信頼性を維持する上で望ましいと考えられる。
【0161】
【表2】

【0162】
実施例44〜51
表3に示す実施例は、各ポリマー成分のドライ粉末をHenschel強力ミキサーで混合して調製し、穏和なスクリュー設計を備えた28mmWP押出機に供給した。押出はバレル温度約260〜約280℃、スクリュー速度300rpm、押出量約10〜20ポンド/時で行った。得られたペレットを次いでEngel社製275トン射出成形機を用いて、表3に示す通りバレル温度550〜580°F、金型温度171〜208°Fでコンパクトディスクに射出成形した。630nmでの光透過率はすべてのディスクで88%を上回った。さらに、Gardner比色計で黄色度(YI)及びヘイズを測定したところそれぞれ5及び15未満であり、CD基板の許容範囲内であった。これらの実施例の高い透過率と低いヘイズは、これらのポリマーブレンドが混和性であるという結論を支持している。
【0163】
実施例44〜51のブレンドはすべてBPA−PC(例C8)よりも格段に低いC、IBR及びVBRの値を有しており、大半はBCC(例C9)よりも低い複屈折を有している。面内複屈折(IBR)はこれらのCDの内径付近で最大となり、外径付近で最小となるので、IBRの範囲は表3に示す通り30mmでの最大IBRと50mmでの最小IBRで示す。この最大値と最小値の差がIBRの範囲(ΔIBR)を与える。最大IBRは100nm未満であるのが好ましく、さらに好ましくは50nm未満、さらに一段と好ましくは30nm未満である。同様に、最小IBRは−100nmよりも大きいのが好ましく、さらに好ましくは−50nmよりも大きく、さらに一段と好ましくは−30nmよりも大きい。表3には、30mm及び50mmでの垂直複屈折(VBR)の値の算術平均をとって計算したVBR平均値も示してある。
【0164】
【表3】

【0165】
実施例44及び45(BCC/AMPSブレンド)はC値がそれぞれ約44及び36Brewsterであり、BCC(50Brewster)及びBPA−PC(80)よりもはるかに低い。また、Tの低下によって成形時の溶融粘度が下がり、Cの低下によって成形CDの複屈折が低くなる。実施例45ではIBRが3〜13nmであり、平均VBRは260である。さらに、T及び溶融粘度が低下することで、CD並びに特に高密度DVDやDVD−追記型及び書換可能なフォーマットのようなピット及びグルーブ構造の深い最新型光媒体での複製性が向上するものと期待される。
【0166】
実施例46(BisAP/AMPS)も、BPA−PC及びBCCに比べVBRが大幅に低下している(約255)。IBRも、実施例45ほど低くはないが、それでも±36nm以内である。実施例47〜49(BCC/PCCD)はIBRの値が±15nmの範囲内であり、VBR平均値は約420〜475であり、BCC(538)よりもはるかに低いが、BCC/AMPSブレンドほど優れてはいない。BCC/BisAPブレンド(実施例50)は同様のVBR平均値を有しているが、IBR範囲は高い(±40nm)。最後に、BCC/BisAP/AMPS3成分系ブレンドはIBR範囲が±35nm以内であり、VBR平均値は285であり、BPA−PC及びBCCよりもはるかに低い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造(II)の構造単位を含むポリマーである第一のポリマーB、以下の構造(III)の構造単位を含むポリマーである第二のポリマーC、及び、光学用途に用いられる任意成分の添加剤を含む、100〜185℃のガラス転移温度を有する混和性ポリマーブレンド。
【化1】

(式中、RはC〜Cアルキル、水素、シアノ又はメトキシである。)
【化2】

(式中、R、R及びRは独立にC〜Cアルキルからなる。)
【請求項2】
(B)が構造(II)のビニルポリマー構造単位であるように選択され、構造(II)のビニルポリマー構造単位がα−メチルポリスチレン(AMPS)の残基から選択される、請求項1記載の混和性ポリマーブレンド。
【請求項3】
(C)が構造(III)のカーボネート構造単位であるように選択され、構造(III)のカーボネート構造単位が1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルフェニルメタン(BisAP)の残基から選択される、請求項1記載の混和性ポリマーブレンド。
【請求項4】
第一のポリマー(B)が当該ブレンドの1〜40重量%をなし、第二のポリマー(C)が当該ブレンドの60〜99重量%をなす、請求項1記載の混和性ポリマーブレンド。
【請求項5】
当該ポリマーブレンドが透明である、請求項1記載の混和性ポリマーブレンド。
【請求項6】
請求項1記載の混和性ポリマーブレンドを含んでなる製品。
【請求項7】
製品が光学製品である、請求項6記載の製品。
【請求項8】
製品が光情報記録媒体である、請求項6記載の製品。
【請求項9】
光情報記録媒体がデータ層とそれに隣接した透明被覆層とを含んでおり、透明被覆層の厚さが0.6mm以下である、請求項6記載の製品。
【請求項10】
光情報記録媒体がデータ層とそれに隣接した透明被覆層とを含んでおり、データ層の厚さが1.1mm以下であり、透明被覆層の厚さが100ミクロン以下である、請求項6記載の製品。
【請求項11】
光学用途に用いる添加剤が当該ブレンドの0.0001〜10重量%である、請求項1記載の混和性ポリマーブレンド。
【請求項12】
以下の構造(II)の構造単位を含むポリマーである第一のポリマーB、以下の構造(III)の構造単位を含むポリマーである第二のポリマーC、以下の構造(V)の構造単位を含むポリマーである第三のポリマーE、及び光学用途に用いられる任意成分の添加剤を含み、100〜185℃のガラス転移温度を有する混和性ポリマーブレンド。
【化3】

(式中、RはC〜Cアルキル、水素、シアノ又はメトキシである。)
【化4】

(式中、R、R及びRは独立にC〜Cアルキルからなる。)
【化5】

(式中、RはC〜Cアルキル、水素、シアノ又はメトキシである。)
【請求項13】
(B)が構造(II)のビニルポリマー構造単位であるように選択され、構造(II)のビニルポリマー構造単位がα−メチルポリスチレン(AMPS)の残基から選択される、請求項12記載の混和性ポリマーブレンド。
【請求項14】
(C)が構造(III)のカーボネート構造単位であるように選択され、構造(III)のカーボネート構造単位が1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルフェニルメタン(BisAP)の残基から選択される、請求項12記載の混和性ポリマーブレンド。
【請求項15】
(E)が構造(V)のビニルポリマー構造単位であるように選択され、構造(V)のビニルポリマー構造単位がポリスチレン(PS)の残基から選択される、請求項12記載の混和性ポリマーブレンド。
【請求項16】
第一のポリマー(B)が当該ブレンドの1〜30重量%をなし、第二のポリマー(C)が当該ブレンドの50〜98重量%をなし、第三のポリマー(E)が当該ブレンドの1〜20重量%をなす、請求項12記載の混和性ポリマーブレンド。
【請求項17】
ポリマーブレンドが透明である、請求項12記載の混和性ポリマーブレンド。
【請求項18】
請求項12記載の混和性ポリマーブレンドを含んでなる製品。
【請求項19】
製品が光学製品である、請求項18記載の製品。
【請求項20】
製品が光情報記録媒体である、請求項18記載の製品。
【請求項21】
光情報記録媒体がデータ層とそれに隣接した透明被覆層とを含んでおり、透明被覆層の厚さが0.6mm以下である、請求項18記載の製品。
【請求項22】
光情報記録媒体がデータ層とそれに隣接した透明被覆層とを含んでおり、データ層の厚さが1.1mm以下であり、透明被覆層の厚さが100ミクロン以下である、請求項18記載の製品。
【請求項23】
光学用途に用いられる任意成分の添加剤がブレンドの0.0001〜10重量%である、請求項12記載の混和性ポリマーブレンド。

【公開番号】特開2011−219772(P2011−219772A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164220(P2011−164220)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【分割の表示】特願2002−500617(P2002−500617)の分割
【原出願日】平成13年5月29日(2001.5.29)
【出願人】(508171804)サビック・イノベーティブ・プラスチックス・アイピー・ベスローテン・フェンノートシャップ (86)
【Fターム(参考)】