説明

透明導電性部材の製造方法、及び透明導電性部材

【課題】優れた透明性及び導電性を兼ね備える透明導電性部材を生産性良く製造することができる透明導電性部材の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る透明導電性部材1の製造方法は、金属箔2上にグラフェン層3を蒸着法により形成するステップ、前記グラフェン層3の前記金属箔2とは反対側の面を透明な基材4に接合するステップ、及び前記金属箔2にパターニング処理を施すことで第一の導体層5を形成するステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性と導電性とを兼ね備える透明導電性部材の製造方法、及びこの方法により製造される透明導電性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
透明性と導電性とを兼ね備える部材は、透明電極、タッチパネル用部品等に適用されており、用途の拡大も期待されている。このような部材としては、例えばガラス基材等の透明な基材にITOを堆積させることで構成される部材が代表例として挙げられる。
【0003】
しかし、ITOの主成分であるインジウムは稀少な金属であることから、コスト面並びに資源枯渇に関する問題がある。
【0004】
一方、近年、高い透明性と導電性とを兼ね備える材料としてグラフェンシートが注目されつつある。グラフェンシートはsp結合により炭素原子が平面状に六角格子構造で配置されることで構成される1原子分の厚さのシートであって、その室温での電気抵抗値が銅の2/3、その電流密度耐性が銅の100倍以上であるという、導電性、耐久性に共に優れる材料である。
【0005】
特許文献1では、グラフェンの製造方法に関し、ベース部材と、前記ベース部材上に形成された親水性の酸化層と、前記酸化層上に形成された疎水性の金属触媒層と、前記金属触媒層上に形成されたグラフェン層とを含むグラフェン部材を準備し、前記グラフェン部材に水を提供し、前記酸化層から前記金属触媒層を分離し、エッチング法を用いて前記金属触媒層を除去することが、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−63506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に開示されている方法では金属触媒層を形成してからこれを除去するという工程が必要であり、これが工程数の増大という不利益を招いてしまうという問題がある。
【0008】
本発明は上記事由に鑑みてなされたものであり、優れた透明性及び導電性を兼ね備える透明導電性部材を生産性良く製造することができる透明導電性部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る透明導電性部材の製造方法は、
金属箔上にグラフェン層を蒸着法により形成するステップ、
前記グラフェン層の前記金属箔とは反対側の面を透明な基材に接合するステップ、及び
前記金属箔にパターニング処理を施すことで第一の導体層を形成するステップを含む。
【0010】
本発明に係る透明導電性部材の製造方法において、前記パターニング処理により前記第一の導体層を網目状に形成してもよい。
【0011】
本発明に係る透明導電性部材の製造方法は、前記グラフェン層にパターニング処理を施すことで第二の導体層を形成するステップを更に含んでもよい。
【0012】
本発明に係る透明導電性部材は、透明な基材と、この基材上に積層しているグラフェン層と、このグラフェン層の前記基材とは反対側の表面上に積層している第一の導体層とを備え、
前記第一の導体層が、金属箔にパターニング処理が施されることで形成されたものであり、
前記グラフェン層が、前記金属箔上に蒸着法により形成されたものである。
【0013】
本発明に係る透明導電性部材において、前記第一の導体層が網目状の形状を有してもよい。
【0014】
本発明に係る透明導電性部材は、透明な基材と、この基材上に積層している第二の導体層と、この第二の導体層の前記基材とは反対側の表面上に部分的に積層している第一の導体層とを備え、
前記第一の導体層が、金属箔にパターニング処理が施されることで形成されたものであり、
前記第二の導体層が、前記金属箔上に蒸着法により形成されたグラフェン層にパターニング処理が施されることで形成されたものであり、
前記第二の導体層における前記第一の導体層が重ねられていない部分によって、第一の電極が構成され、
前記第一の導体層と前記第二の導体層における前記第一の導体層が重ねられている部分とによって、前記第一の電極に接続する第二の電極が構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、グラフェンを形成するために必要な金属箔を、第一の導体層を形成するために積極的に利用することができ、これにより金属箔を使用することが工程数の増大には繋がらなくなり、このため、優れた透明性及び導電性を兼ね備える透明導電性部材を生産性良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)乃至(d)は、本発明の実施形態における透明導電性部材の製造方法の第一の態様を示す断面図である。
【図2】透明導電性部材の一例を示す平面図である。
【図3】(a)乃至(e)は、本発明の実施形態における透明導電性部材の製造方法の第二の態様を示す断面図である。
【図4】透明導電性部材の他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態による透明導電性部材1の製造方法は、金属箔2を準備するステップと、金属箔2上にグラフェン層3を蒸着法により形成するステップと、グラフェン層3の金属箔2とは反対側の面を透明な基材4に接合するステップと、金属箔2にパターニング処理を施すことで第一の導体層5を形成するステップとを含む。
【0018】
図1に、本実施形態に係る透明導電性部材1の製造方法の第一の態様を示す。
【0019】
本態様では、まず、図1(a)に示されるように金属箔2が準備される。金属箔2は、グラフェンを形成するための触媒として機能する金属から構成される。このような金属としては、ニッケル、銅、アルミニウム、鉄、コバルト、タングステン等が挙げられる。
【0020】
金属箔2の厚みは、金属箔2から形成される第一の導体層5に要求される厚みなどに応じて適宜設定されるが、1〜100μmの範囲であることが好ましい。
【0021】
この金属箔2上に、図1(b)に示されるようにグラフェン層3が形成される。グラフェン層3はグラフェンシートから構成される。グラフェンシートは、例えば熱CVD法やプラズマCVD法などの蒸着法により形成される。この場合、例えばチャンバー内に金属箔2を配置し、このチャンバー内に気相状態の炭素源を供給し、この炭素源をチャンバー内で加熱したりプラズマ処理したりする。これにより、炭素源が分解すると共に炭素原子が互いに結合して六角形の平面構造を形成し、これにより金属箔2上にグラフェンシートが形成される。
【0022】
グラフェンシートを形成するための炭素源としては、特に制限されないが、一酸化炭素、メタン、エタン、エチレン、エタノール、アセチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、ブタジエン、ペンタン、ペンテン、シクロペンタジエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。
【0023】
熱CVD法によりグラフェン層3が形成される場合、チャンバー内の温度、チャンバー内の炭素源の圧力等は適宜調整される。チャンバー内の温度は例えば300〜2000℃の範囲に調整される。またチャンバー内の炭素源の圧力は例えば1.3×10−4〜1.0×10Paの範囲で調整され、好ましくは1.3×10−1〜1.4×10Paの範囲で調整される。
【0024】
熱CVD法によりグラフェン層3が形成される場合には、チャンバー内に炭素源と共に水素が供給されることも好ましい。この場合の水素の量は、チャンバー全体の体積の5体積%以上40体積%以下であることが好ましく、10体積%以上30体積%以下であれば更に好ましく、15体積%以上25体積%以下であれば特に好ましい。
【0025】
グラフェン層3は単層のグラフェンシートから構成されてもよいが、複数層のグラフェンシートから構成されてもよい。グラフェン層3は1層以上300層以下のグラフェンシートからなることが好ましく、1層以上15層以下のグラフェンシートからなることが特に好ましい。
【0026】
次に、図1(c)に示されるように、グラフェン層3と透明な基材4とが接合される。基材4の材質としては、特に制限されないが、例えばソーダライムガラス、無アルカリガラスなどの透明ガラス;ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂、セルロース樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等から構成される透明なプラスチックなどが挙げられる。基材4の形状はフィルム状でも板状でもよい。
【0027】
基材4がポリエステルフィルムから形成される場合には、ポリエステルとして、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール等のグリコール成分とが反応することで生成する芳香族ポリエステルが好ましく、特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタリンジカルボキシレートなどが好ましい。またポリエステルは、前記例示した複数の成分等の共重合ポリエステルであってもよい。
【0028】
基材4は有機または無機の粒子を含有してもよい。この場合、基材4の巻き取り性、搬送性等が向上する。このような粒子として、炭酸カルシウム粒子、酸化カルシウム粒子、酸化アルミニウム粒子、カオリン、酸化珪素粒子、酸化亜鉛粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、尿素樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子等が挙げられる。基材4は、着色剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、潤滑剤、触媒、他の樹脂等も、透明性を損なわない範囲で含有してもよい。
【0029】
基材4のヘイズは3%以下であることが好ましく、この場合、透明導電性部材1を通した映像等の視認性が向上し、光学的用途のフィルムとして特に適したものとなる。ヘイズが1.5%以下であれば更に好ましい。
【0030】
基材4の厚みは特に制限されないが、基材4がフィルム状である場合にはその厚みは25μm以上200μm以下の範囲であることが好ましい。特に基材4の厚みが25μm以上100μm以下であると、透明導電性部材1の薄型化、軽量化が可能となり、また透明導電性部材1の表裏における干渉の発生が抑制され、更に基材4が加熱される際の熱収縮が抑制されて基材4の熱収縮による加工性の悪化等の不具合が抑制される。
【0031】
基材4は多層構造を有してもよい。例えば基材4は、上記のような透明なガラス又はプラスチックからなる板状又はシート状の基部と、この基部上に積層されている一層又は複数層の樹脂層とを備えてもよい。
【0032】
樹脂層は、反応性硬化型樹脂組成物から形成されることが好ましく、例えば熱硬化型樹脂組成物と活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の少なくとも一方から形成されることが好ましい。
【0033】
熱硬化型樹脂組成物は、例えばフェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等の熱硬化性樹脂を含有する。熱硬化性樹脂と共に、必要に応じて架橋剤、重合開始剤、硬化剤、硬化促進剤、溶剤等が使用されてもよい。このような熱硬化型樹脂組成物が塗布され、続いてこの熱硬化型樹脂組成物が加熱されて熱硬化することで、樹脂層が形成され得る。
【0034】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、アクリレート系の官能基を有する樹脂を含むことが好ましい。アクリレート系の官能基を有する樹脂としては、例えば比較的低分子量の多官能化合物の(メタ)アクリレート等のオリゴマー、プレポリマーなどが挙げられる。前記の多官能化合物としては、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等が挙げられる。活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は更に反応性希釈剤を含有することも好ましい。反応性希釈剤としては、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー、並びにトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートの多官能モノマーが挙げられる。
【0035】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が紫外線硬化型樹脂組成物などの光硬化型樹脂組成物である場合には、光硬化型樹脂組成物が光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としてはアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、α−アミロキシムエステル、チオキサントン類などが挙げられる。光硬化型樹脂組成物が光重合開始剤に加えて、或いは光重合開始剤に代えて、光増感剤を含有してもよい。光増感剤としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、チオキサントンなどが挙げられる。このような光硬化型樹脂組成物が塗布され、続いてこの光硬化型樹脂組成物に紫外線などの光が照射されて光硬化することで、樹脂層が形成され得る。
【0036】
樹脂層の屈折率は、樹脂層を形成するための樹脂組成物の組成によって容易に調整され得る。また、樹脂層が屈折率調整用の粒子を含有すると共にその割合が調整されることで、樹脂層の屈折率が調整されることも好ましい。
【0037】
屈折率調整用の粒子の粒径は十分に小さいこと、すなわち屈折率調整用の粒子がいわゆる超微粒子であるが好ましく、この場合、樹脂層の光透過性が十分に維持されるようになる。屈折率調整用の粒子の粒径は特に、0.5nm〜200nmの範囲であることが好ましい。この屈折率調整用の粒子の粒径とは、粒子の電子顕微鏡写真画像から算出される投影面積と同一の面積を有する円(面積相当円)の径のことである。
【0038】
屈折率調整用の粒子は、比較的屈折率の高い粒子であることが好ましく、特に屈折率が1.6以上の粒子であることが好ましい。この粒子は、金属や金属酸化物の粒子であることが好ましい。
【0039】
樹脂層中の屈折率調整用の粒子の含有量は、樹脂層の屈折率が適切な値となるように適宜調整される。特に樹脂層中の屈折率調整用の粒子の割合が5〜70体積%となるように調整されることが好ましい。
【0040】
屈折率調整用の粒子の具体例としては、チタン、アルミニウム、セリウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、アンチモンから選ばれる一種あるいは二種以上の酸化物を含有する粒子が挙げられる。酸化物の具体例としては、ZnO(屈折率1.90)、TiO2(屈折率2.3〜2.7)、CeO2(屈折率1.95)、Sb2O5(屈折率1.71)、SnO2、ITO(屈折率1.95)、Y2O3(屈折率1.87)、La2O3(屈折率1.95)、ZrO2(屈折率2.05)、Al2O3(屈折率1.63)等が挙げられる。
【0041】
樹脂層は、次に示すようなバインダー材料及び必要に応じて使用される屈折率調整用の粒子を含有する組成物から形成されてもよい。バインダー材料と屈折率調整用の粒子とが併用される場合、両者の組み合わせ、配合比等により樹脂層の屈折率が適宜調整される。この樹脂層は、組成物にバインダー材料の性状に応じて加熱、加湿、紫外線照射、電子線照射等の処理が施されることで組成物が硬化することにより、形成され得る。
【0042】
バインダー材料としては、シリコンアルコキシド系樹脂、飽和炭化水素及びポリエーテルの少なくともいずれかを主鎖とするポリマー(例えばUV硬化型樹脂組成物、熱硬化型樹脂組成物等)、ポリマー鎖中にフッ素原子を含む単位を含む樹脂などが挙げられる。
【0043】
シリコンアルコキシド系樹脂としては、RmSi(OR´)nで表されるシリコンアルコキシド(R、R´は炭素数1〜10のアルキル基、m+n=4、m及びnはそれぞれ整数。)の部分加水分解縮合物であるオリゴマー及びポリマーが、挙げられる。シリコンアルコキシドとしては、具体的にはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラペンタエトキシシラン、テトラペンタ−iso−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−ブトキシシラン、テトラペンタ−sec−ブトキシシラン、テトラペンタ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルプロポキシシラン、ジメチルブトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等が例示される。
【0044】
バインダー材料として、熱又は活性エネルギー線によって反応架橋する複数の基(重合性二重結合基等)を有する反応性有機珪素化合物が用いられてもよい。この有機珪素化合物の分子量は5000以下であることが好ましい。このような反応性有機珪素化合物としては、片末端ビニル官能性ポリシラン、両末端ビニル官能性ポリシラン、片末端ビニル官能ポリシロキサン、両末端ビニル官能性ポリシロキサン、並びにこれらの化合物を反応させて得られるビニル官能性ポリシラン及びビニル官能性ポリシロキサン等が挙げられる。これら以外にも、反応性有機珪素化合物としては、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシシラン化合物が挙げられる。
【0045】
屈折率調整用の粒子としては、比較的低屈折率の粒子が使用されることが好ましい。屈折率調整用の粒子の材質としては、シリカ、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム等が挙げられる。屈折率調整用の粒子が中空粒子を含むことが好ましい。中空粒子とは外殻によって包囲された空洞を有する粒子である。中空粒子の屈折率は1.20〜1.45であることが好ましい。
【0046】
屈折率調整用の粒子には、必要に応じて、バインダー材料との濡れ性を向上するための表面処理が施されていることが好ましい。
【0047】
屈折率調整用の粒子の粒径は十分に小さいこと、すなわち屈折率調整用の粒子がいわゆる超微粒子であることが好ましく、この場合、低屈折率層の光透過性が十分に維持されるようになる。屈折率調整用の粒子の粒径は特に、0.5nm〜200nmの範囲であることが好ましい。この屈折率調整用の粒子の粒径とは、粒子の電子顕微鏡写真画像から算出される投影面積と同一の面積を有する円(面積相当円)の径のことである。
【0048】
樹脂層中の屈折率調整用の粒子の含有量は、樹脂層の屈折率の値が適切な値となるように適宜調整されるが、特に樹脂層中の屈折率調整用の粒子の割合が20〜99体積%となるように調整されることが好ましい。
【0049】
組成物は、更に撥水、撥油性材料を含有してもよい。撥水、撥油性材料としては、一般的なワックス系の材料等が使用され得る。
【0050】
グラフェン層3の金属箔2とは反対側の面を透明な基材4に接合するにあたっては、適宜の手法が採用され得る。例えば基材4の少なくとも表層が加熱されることで溶融する材質から形成される場合には、グラフェン層3と基材4とを熱融着することができる。
【0051】
また、基材4が多層構造を有する場合には、基材4の最外層に配置される樹脂層が未硬化状態又は半硬化状態であるうちに、この樹脂層にグラフェン層3を重ね、この状態で樹脂層を硬化させ、これによりグラフェン層3の金属箔2とは反対側の面を透明な基材4に接合してもよい。この場合、未硬化状態又は半硬化状態にある樹脂層は、この樹脂層を構成する組成物の組成に応じ、例えば加熱、加湿、紫外線照射、電子線照射等の処理が施されることで硬化される。
【0052】
このようにグラフェン層3と基材4とが接合された後、金属箔2にパターニング処理が施されることで、図1(d)に示すように金属箔2の残存する部分からなる第一の導体層5が形成される。金属箔2のパターニング処理にあたっては、公知の適宜の手法が採用される。例えば金属箔2上に適宜の感光性樹脂組成物を塗布し、これをガラスマスクなどを使用するフォトリソグラフィプロセスにより露光・現像してエッチングレジストを形成し、続いて金属箔2に対してウエットエッチング処理を施すことで、金属箔2にパターニング処理を施すことができる。
【0053】
このようにして、透明な基材4と、この基材4上に積層しているグラフェン層3と、このグラフェン層3の基材4とは反対側の表面上に積層している第一の導体層5とを備える、透明導電性部材1が得られる。このようにして透明導電性部材1が製造されると、グラフェン層3を蒸着法により形成するために用いられる金属箔2を、透明導電性部材1を構成する部材である第一の導体層5を形成するために適用することができる。このため、金属箔2を無駄にすることがなくなる。また、パターニング処理により金属箔2の一部を除去する工程が、そのまま第一の導体層5を形成するための工程となるため、工程数の増大という不利益を招くこともない。
【0054】
このようにして得られる透明導電性部材1は、高い透明性と高い導電性とを兼ね備え、このため透明電極、タッチパネル用部品、ディスプレイ用部品等の、種々の用途への適用が期待される。
【0055】
例えば金属箔2に対するパターニング処理により網目状の形状を有する第一の導体層5が形成される場合には、透明導電性部材1をディスプレイ等における電磁波シールド部材に適用することができる。図2に、透明導電性部材1からなる電磁波シールド部材の例を示す。この電磁波シールド部材は、基材4と、この基材4の厚み方向の一面上に全体に亘って形成されているグラフェン層3と、このグラフェン層3の基材4とは反対側の表面上に形成されている網目状の第一の導体層5とを、備える。この電磁波シールでは、従来の電磁波シールド部材(例えばITO膜と網目状の導体とが重ねられた構造を有する電磁波シールド部材)と比べて、周波数依存性の少なくなる。すなわち、広い波長領域において高いシールド性能を発揮する電磁波シールド部材が得られる。このような透明導電性部材1から構成される電磁波シールド部材における第一の導体層5の線幅は5〜20μmの範囲、線間隔は50〜500μmの範囲であることが好ましい。
【0056】
本実施形態による透明導電性部材1の製造方法は、更にグラフェン層3にパターニング処理を施すことで第二の導体層6を形成するステップを含んでもよい。すなわち、金属箔2にパターニング処理を施すことで第一の導体層5を形成してから、グラフェン層3にパターニング処理を施すことで第二の導体層6を形成してもよい。
【0057】
図3に、本実施形態に係る透明導電性部材1の製造方法の第二の態様を示す。本態様では、透明導電性部材1の製造方法は、第二の導体層6を形成するステップを含む。
【0058】
本態様では、まず第一の態様の場合と同様に、図3(a)に示すように金属箔2が準備され、続いて図3(b)に示すように金属箔2上にグラフェン層3が形成され、続いて図3(c)に示すようにグラフェン層3の金属箔2とは反対側の面を透明な基材4が接合され、続いて図3(d)に示すように金属箔2にパターニング処理が施されることで第一の導体層5が形成される。
【0059】
続いて、図3(e)に示すように、グラフェン層3にパターニング処理が施されることで、第二の導体層6が形成される。グラフェン層3のパターニング処理にあたっては、公知の適宜の手法が採用される。例えばグラフェン層3に対して部分的に電子線の照射、レーザービームの照射、O2プラズマ処理を施すなどといった、ドライエッチング処理を施すことにより、グラフェン層3を部分的に除去し、これにより第二の導体層6を形成することができる。
【0060】
これにより、透明な基材4と、この基材4上に積層している第二の導体層6と、この第二の導体層6の前記基材4とは反対側の表面上に部分的に積層している第一の導体層5とを備える透明導電性部材1が得られる。この場合、図3(e)に示すように、第二の導体層6における第一の導体層5が重ねられていない部分によって構成される第一の電極7と、第一の導体層5と第二の導体層6における第一の導体層5が重ねられている部分とによって構成される第二の電極8とが形成され得る。更にこの場合、第一の電極7と第二の電極8とが導通するように形成され得る。このような透明導電性部材1には、より多様な機能が付与され得る。例えば、透明導電性部材1における高い透明性が要求される部位には第一の電極7を形成し、高い導通信頼性が要求される部位には第二の電極8を形成することができる。
【0061】
このような透明導電性部材1の用途の例として、タッチパネル用部品への適用が挙げられる。図4に、透明導電性部材1からなるタッチパネル用部品の例を示す。このタッチパネル用部品では、透明な基材4における、画像が表示される領域に、第一の電極7からなる感知用の電極が格子状に形成されている。更にこの基材4における、画像が表示される領域の外側には、第一の電極7に接続される第二の電極8からなる引き出し線が形成されている。このようなタッチパネル用部品では、第一の電極7によって非常に透明性の高い感知用の電極が形成され、また第二の電極8によって、銀ペースト等から形成されるよりも信頼性の高い引き出し線が形成され得る。
【0062】
尚、本発明に係る透明導電性部材は、上記第一の態様及び第二の態様に制限されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更がなされることが可能である。例えば、透明導電性部材が、第一の態様におけるような網目状に形成されている第一の導体層と、第二の態様におけるような第二の導体層とを、共に備えていてもよい。
【実施例】
【0063】
[実施例1]
厚み10μmの銅箔を準備し、この銅箔上に熱CVD法によりグラフェン層を形成した。このとき、銅箔をチャンバー内に配置し、このチャンバー内にアセチレンガスを200sccm(3.38×10−2Pa・m/sec)の一定速度で投入しつつ、銅箔を400℃で20分間熱処理することにより、銅箔上にグラフェンを生成した。続いて、銅箔を自然冷却することにより、グラフェンを均一に配列した状態で成長させた。冷却速度は600℃/分であった。これにより、銅箔上にグラフェン層を形成した。
【0064】
この銅箔上のグラフェン層にPETフィルム(東洋紡績株式会社製、品番A4300、厚み100μm)を重ね、これらを平板プレスで、加圧力0.5MPa、加熱温度120℃、処理時間30minの条件で加熱加圧することで、グラフェン層とPETフィルムとを接合した。
【0065】
続いて、金属箔上にフォトリソグラフィプロセスによりエッチングレジストを形成し、続いて金属箔に対して塩化第二鉄水溶液を用いて室温でウエットエッチング処理を施し、続いてエッチングレジストを除去した。これにより、線幅10μm、線間隔300μmの網目状のパターンを有する第一の導体層を形成した。
【0066】
これにより、電磁波シールド部材として適用され得る透明導電性部材を得た。この透明導電性部材の可視光の透過率は88%、ヘイズは2.5%、電磁波シールド性は60dB(KEC法、1GHz)であった。
【0067】
[実施例2]
厚み10μmの銅箔を準備し、この銅箔上に熱CVD法によりグラフェン層を形成した。このとき、銅箔をチャンバー内に配置し、このチャンバー内にアセチレンガスを200sccm(3.38×10−2Pa・m/sec)の一定速度で投入しつつ、銅箔を400℃で20分間熱処理することにより、銅箔上にグラフェンを生成した。続いて、銅箔を自然冷却することにより、グラフェンを均一に配列した状態で成長させた。冷却速度は600℃/分であった。これにより、銅箔上にグラフェン層を形成した。
【0068】
この銅箔上のグラフェン層にPETフィルム(東洋紡績株式会社製、品番A4300、厚み100μm)を重ね、これらを平板プレスで、加圧力0.5MPa、加熱温度120℃、処理時間30minの条件で加熱加圧することで、グラフェン層とPETフィルムとを接合した。
【0069】
続いて、金属箔上にフォトリソグラフィプロセスによりエッチングレジストを形成し、続いて金属箔に対して塩化第二鉄水溶液を用いて室温でウエットエッチング処理を施し、続いてエッチングレジストを除去することで、第一の導体層を形成した。続いて、グラフェン層に対して、100W、1分間の条件でOプラズマ処理を施すことでドライエッチング処理を施し、これにより第二の導体層を形成した。これにより、第二の導体層における第一の導体層が重ねられていない部分によって構成される第一の電極と、第一の導体層と第二の導体層における第一の導体層が重ねられている部分とによって構成される第二の電極とを形成した。
【0070】
第一の電極は、平面視1.4mm×1.4mmの寸法を有する複数のパッド状の電極と、縦方向に隣合うパッド状の電極間のみを接続する細線とからなる感知用の電極であり、第二の電極は感知用の電極に接続する線幅50μmの引き出し線である。
【0071】
これにより、タッチパネル用部品として適用され得る透明導電性部材を得た。
【符号の説明】
【0072】
1 透明導電性部材
2 金属箔
3 グラフェン層
4 基材
5 第一の導体層
6 第二の導体層
7 第一の電極
8 第二の電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔上にグラフェン層を蒸着法により形成するステップ、
前記グラフェン層の前記金属箔とは反対側の面を透明な基材に接合するステップ、及び
前記金属箔にパターニング処理を施すことで第一の導体層を形成するステップを含む透明導電性部材の製造方法。
【請求項2】
前記パターニング処理により前記第一の導体層を網目状に形成する請求項1に記載の透明導電性部材の製造方法。
【請求項3】
前記グラフェン層にパターニング処理を施すことで第二の導体層を形成するステップを更に含む請求項1又は2に記載の透明導電性部材の製造方法。
【請求項4】
透明な基材と、この基材上に積層しているグラフェン層と、このグラフェン層の前記基材とは反対側の表面上に積層している第一の導体層とを備え、
前記第一の導体層が、金属箔にパターニング処理が施されることで形成されたものであり、
前記グラフェン層が、前記金属箔上に蒸着法により形成されたものである、透明導電性部材。
【請求項5】
前記第一の導体層が網目状の形状を有する請求項4に記載の透明導電性部材。
【請求項6】
透明な基材と、この基材上に積層している第二の導体層と、この第二の導体層の前記基材とは反対側の表面上に部分的に積層している第一の導体層とを備え、
前記第一の導体層が、金属箔にパターニング処理が施されることで形成されたものであり、
前記第二の導体層が、前記金属箔上に蒸着法により形成されたグラフェン層にパターニング処理が施されることで形成されたものであり、
前記第二の導体層における前記第一の導体層が重ねられていない部分によって、第一の電極が構成され、
前記第一の導体層と前記第二の導体層における前記第一の導体層が重ねられている部分とによって、前記第一の電極に接続する第二の電極が構成されている透明導電性部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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