説明

透明導電膜付き基板、塗布液及びその製造方法

【課題】金属網目を有する基板が提供する透明性・導電性に加え、金属網目と透明基板との密着性向上および/または金属網目の強度向上し、かつ、金属網目から電極や接地が容易に取れる透明導電膜付き基板、該透明導電膜付き基板用塗布液、及び該透明導電膜付き基板の製造方法を提供する。
【解決手段】透明基板上に網目状の金属層を有し、全光線透過率が40%以上である透明導電膜付き基板であって、その開口部に透明膜状物質を有し、且つ、該透明膜状物質が該金属層上には存在しないことを特徴とする透明導電膜付き基板、及び、金属成分及び全光線透過率が40%以上である透明膜状物質を形成可能な化合物を含むエマルションからなり、連続相に金属成分を含み、不連続相に該透明膜状物質を形成可能な化合物を含むことを特徴とする透明導電膜付き基板形成用塗布液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電膜付き基板、透明導電膜付き基板用塗布液及びその製造方法に関する。より詳しくは、金属網目状構造を有する透明導電膜付き基板、透明導電膜付き基板用塗布液及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透明導電膜は、プラズマディスプレイパネル(PDP)や液晶ディスプレイ(LCD)パネルなどの表示装置の電磁波遮蔽体、LCD、タッチパネル等の透明電極、自動車のデフロスター等の面状発熱体等として用いられ、近年特に需要が増加して来ている。
従来、透明導電膜は酸化インジウム等の透明導電性酸化物をスパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法といった物理的プロセスによる製膜方法で作成されたものが一般的であるが、透明導電性酸化物が導電層を形成しているために透明性には優れているものの導電性には限界があり、そのためPDP用電磁波遮蔽用途などの極めて高い電磁波シールド特性が要求される用途には適用できない場合もある。また、より導電性に優れた金属膜を前記方法により作成したものにおいては、導電性は充分であるものの透明性の点で適用できない問題点が存在する。また、前記物理的手法による透明導電膜の形成方法では真空下での成膜を必要とするため、結果として成膜コストが高く、さらに大面積での成膜が困難であるという欠点もある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
さらに、高透明性・高導電性の両立が成されておりPDP用電磁波遮蔽用途に用いられている銅メッシュに至っては、銅箔貼り合せ、フォトレジストエッチング処理等の煩雑で高度な微細加工技術により作成されておりコストが高いという問題がある。
一方、成膜コストを低くする目的で、金属微粒子や酸化物微粒子を含む塗布液を基板上にスピンコート、ディップコート、バーコート、ロールコート、ダイコート、スプレーコート等の手段で塗布する方法が検討されているが(例えば特許文献2)、特に、金属微粒子を用いた場合は透明性に、また、酸化物微粒子を用いた場合は導電性に課題が残り、充分な透明性と導電性は両立されていない。
【0004】
前記塗布方法の問題を解決する方法として、基板上に金属の網目構造を自発的に形成する方法及び該方法により得られる透明導電膜が提案されている(特許文献3)。該透明導電膜は、基板上に金属網目を有し、該金属網目が導電性を、網目の開口部が透明性を提供するものであるが、この場合、油相に金属粉および/または金属微粒子を分散させ、水を混合することにより、不連続相が水、連続相が金属粉および/または金属微粒子を含む油であるエマルション塗布液を形成し、これを基板上に塗布・乾燥することで金属粉および/または金属微粒子から成る網目状構造が形成される。しかしながら、我々の検討によれば、特許文献3に記載の透明導電膜は、金属網目の開口部の空間には何も充填されておらず、このようにして得られる膜は、基板に対する金属網目の密着性或いは強度に問題があることが判明した。
【0005】
一方、PDPの光学フィルターや液晶ディスプレイパネルにおいては、各種機能部材が組み合わされて構成されている。例えばPDPの光学フィルターの場合、支持基板であるガラス、電磁波遮蔽フィルム、近赤外遮蔽フィルム、色調調整フィルム、反射防止フィルムが組み合わされて構成されている。この場合、必要部材数が多くさらに各部材毎に貼り合せるというプロセス的に煩雑な工程が必要とされ、光学フィルターの製造コストが高くなるという重要な課題がある。
【0006】
かかる課題に対し、前記の自発的に形成された金属網目を有する基板の上に各種機能部
材を塗布して透明導電性以外の機能を付与し、多機能フィルムさらには光学フィルターとする方法もありえるが、多数回の塗布を必要とするため、結果として多機能フィルム、光学フィルターとしての製膜コストが高くなるため、本質的な解決とならない。更に、このように、金属網目を有する基板の上に各種機能部材を塗布すると、金属網目の開口部とともに金属網目も他の機能部材により覆われてしまうため、金属網目から電極や接地が取り難いという重要な課題が付随する。
【特許文献1】特許第3464590号
【特許文献2】特開平11-80618号公報
【特許文献3】PCT WO 03/106573 A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来技術におけるこれらの問題点に鑑みてなされたものであって、その解決のための具体的な課題は、金属網目を有する基板が提供する透明性・導電性に加え、金属網目と透明基板との密着性向上および/または金属網目の強度向上をなし、かつ、金属網目から電極や接地が容易に取れる透明導電膜付き基板を提供することにある。さらに本発明の別の課題は、部材の貼り合せ、ないしは、逐次的な塗布を用いることなく上記透明導電膜付き基板を製造するための製造方法ならびにそれにかかわる塗布液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、従来技術の問題点に鑑みて、鋭意検討を重ねた結果、連続相に金属層を形成する金属成分を含み、不連続相に膜状態で付いた透明基板の全光線透過率を損ねることのない透明膜状物質を形成する化合物を含むエマルションを透明基板上に塗布することにより自発的に金属成分からなる網目構造が形成され、同時に網目構造の開口部に透明膜状物質が充填されることで該金属網目構造と該透明基板との密着性が向上するおよび/または該金属網目構造の強度が向上し、得られる透明導電膜付き基板が導電性と透明性を兼ね備え、かつ金属網目構造の密着性および/又は強度が良好であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明の第1の要旨は、透明基板上に網目状の金属層を有し、全光線透過率が40%以上である透明導電膜付き基板であって、その開口部に透明膜状物質を有し、且つ、該透明膜状物質が該金属層上には存在しないことを特徴とする透明導電膜付き基板に存する。
また本発明の第2の要旨は、上記透明導電膜付き基板における該網目状の金属層が不規則な網目状の金属層であることに存する。
【0010】
また本発明の第3の要旨は、上記透明導電膜付き基板における該透明膜状物質が可視域における特定波長域の光を吸収する光吸収性化合物を1種類以上および/または近赤外域の特定波長域の光を吸収する光吸収性化合物を1種類以上含有し、該光吸収性化合物を含有する該透明膜状物質が該金属層上に存在しない透明導電膜付き基板に存する。
また本発明の第4の要旨は、上記透明導電膜付き基板における金属層がAu、Ag、Cu、Pt、Al、Pdから選ばれる一種類以上の元素からなることに存する。
【0011】
また本発明の第5の要旨は、金属成分及び全光線透過率が40%以上である透明膜状物質を形成可能な化合物を含むエマルションからなり、連続相に金属成分を含み、不連続相に該透明膜状物質を形成可能な化合物を含むことを特徴とする透明導電膜付き基板形成用塗布液に存する。
また本発明の第6の要旨は、透明導電膜付き基板形成用塗布液において、不連続相に可視波長域の光を吸収する光吸収性化合物の1種類以上および/または近赤外波長域の光を
吸収する光吸収性化合物の1種類以上を含有することに存する。
【0012】
また本発明の第7の要旨は、上記透明導電膜付き基板形成用塗布液を透明基板上に塗布することを特徴とする透明導電膜付き基板の製造方法に存する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の透明導電膜付き基板は、金属網目状構造を有することにより導電性を有し、かつ網目の開口部に該金属網目状構造が形成された該透明基板としての全光線透過率が40%以上となる透明膜状物質を有することにより該金属網目状構造と透明基板との密着性および/または該金属網目状構造の強度が向上し、しかも透明性に優れ、金属網目構造上に該透明膜状物質を有しないため、金属網目から電極や接地が容易に取れ、光学フィルター等の透明導電薄膜として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の態様の一例を詳細に説明するが、本発明は以下の態様に限定され
るものではない。
本発明の透明導電膜付き基板は、後述の如き透明基板上に網目状の金属層を有し、全光線透過率が40%以上である透明導電膜付き基板である。全光線透過率は、好ましくは50%以上、更に好ましくは60%以上である。全光線透過率が小さすぎると、透明性が劣るため、実用上問題がある。また、本発明の透明導電膜付き基板は、その開口部に後述の如き透明膜状物質を有する。該透明膜状物質を有しない場合、金属網目状構造と透明基板との密着性および/または該金属網目状構造の強度が不十分で好ましくない。又、本発明の透明導電膜付き基板は該透明膜状物質が該金属層上には存在しない。該透明膜状物質が該金属層上に存在する場合には、金属網目から電極や接地を取る場合に制限があり好ましくない。
【0015】
本発明に用いる透明基板としては、実質的に透明であって、吸収、散乱が大きくない基板であれば良く、特に制限はない。その具体的な例としては、ガラス、ポリオレフィン系樹脂、非晶質ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂等のアクリレート樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂等を挙げることができる。これらの中では、特にノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン重合体からなる非晶質ポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース等のセルロース樹脂等が、良好な透明性及び/又は耐熱性の観点で好ましい。また、係る透明基板は、単一の材料で構成されていても良く、また、複数の材料が混合されることで構成されていても良い。
【0016】
上記の樹脂には、一般に公知である添加剤、例えばフェノール系、燐系などの酸化防止剤、ハロゲン系、燐酸系等の難燃剤、耐熱老化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤等を配合することができる。また上記樹脂は、公知の射出成形、Tダイ成形、カレンダー成形、圧縮成形等の方法や、有機溶剤に溶解させてキャスティングする方法などを用い、フィルムまたはシート(板)に成形される。その厚みとしては、目的に応じて10μm〜5mmの範囲が望ましい。かかる透明基板を構成する基材は、未延伸でも延伸されていても良い。また、他の基材と積層されていても良い。
【0017】
さらに、該透明基板は、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理、薬品処理等の従来公知の方法による表面処理や、アンカーコート剤やプライマー等のコーティングを施し、表面の疎水性、親水性の度合いを調節しても良い。
本発明の透明導電膜付き基板において、透明性と導電性は、上記の透明基板上に形成された網目状の金属層によって提供される。ここで、網目状の金属層とは、主に金属で形成された、太さ及び高さを有する不定形の線状部分および、係る線状部分によって囲われた不定形のセル状構造(以下、開口部という)が多数連結したものである。係る線状部分が導電性を担い、一方、開口部が透明性を担う。なお、開口部のサイズは、個々の開口部サイズを平均したものである。また、該金属で形成された線状部分は、電極や接地を取ることを容易とするため、実質的に、他の材料によって被覆されていないことが好ましい。なお、本発明の透明導電膜付き基板の利用にあたっては、電極や接地のために必要な部分を除き、それ以外の部分が他のフィルム、粘着剤、接着剤等によって貼合、別途被覆されても良い。
【0018】
該網目状金属層を形成する金属は、形成された網目状金属層において実質的に高導電性を示すものであれば特に限定されないが、例えばAu、Ag、Cu、Pt、Al、Pd、Ni、Fe、In、Sn、Zn、Cr、Co、Ru、Rh、Sb、Ti、Ta、Pb、Os、Irなどから選ばれる一種類以上の元素からなる金属、またはこれらの混合物などが挙げられる。特にAu、Ag、Cu、Pt、Al、Pdから選ばれる一種類以上の元素からなる金属が好ましい。二種類以上からなる金属の場合は、二種元素の固溶状態、または共晶状態であっても良く、または二種以上の元素が中心と外側に分かれているコアシェル型構造を元にするものでも良い。
該金属で形成された線状部分の幅は0.1μm〜50μmの範囲が好ましく、0.5μm〜30μmの範囲がより好ましく、1μm〜20μmの範囲がさらに好ましい。該金属で形成された線状部分の厚みは、0.1μm〜100μmの範囲が好ましく、0.5μm〜50μmの範囲がより好ましく、
1μm〜10μmの範囲がさらに好ましい。該網目状の開口部における開口部のサイズは、10μm〜1000μmの範囲が好ましく、30μm〜500μmの範囲がより好ましく、50μm〜300μmの範囲がさらに好ましい。かかる幅、厚み及び開口部サイズが首記範囲より逸脱すると、導電性と透明性を両立することができず好ましくない。
本発明において、上記開口部に存在する透明膜状物質は、上記開口部に膜状態で存在し、上記網目状金属層とその透明膜状物質が付いた透明導電膜付き基板としての全光線透過率が40%以上となれば特に限定されず、その全光線透過率が50%以上となるものが好ましい。そのため、該透明膜状物質自体の全光線透過率が40%以上が好ましく、50%以上となるものがより好ましい。
【0019】
該透明膜状物質の上記開口部における膜状態での厚みは、通常0.01μm〜50μm、好ましくは0.05μm〜20μm、更に好ましくは0.1μm〜10μmである。薄すぎると上記網目状金属層と上記透明基板との密着性、および上記網目状金属層の強度を充分に強くし難く、厚すぎると上記網目状金属層に対し電極や接地をとり難くなる。
本発明において、該透明膜状物質を形成する化合物は、上記開口部に膜状形態を形成し、前述した特性を満たすものであれば良く、特に制限はない。その具体的な例としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化樹脂等、公知の樹脂から適宜選択される。該樹脂の例としては、ポリビニルブチラール樹脂、フェノキシ系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリエチルアクリレート樹脂等のアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、ポリビニルアルコール、ポリスチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、AS樹脂、ポリエステル樹脂、塩酢ビ樹脂、フェノール系樹脂、ポリスルフォン、ナイロン、セルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、などが挙げられる。なお、樹脂の他、ゾル−ゲル法で形成される無機酸化物を単独もしくは樹脂と混合して利用してもよい。
【0020】
本発明において、該透明膜状物質は、該網目状金属層と該透明膜状物質が付いた該透明基板としての全光線透過率が上記を満足する限り、任意の添加剤を含有しても良い。かかる添加剤として、可視波長域の光を吸収する光吸収性化合物および/または近赤外波長域の光を吸収する光吸収性化合物が挙げられ、かかる光吸収性化合物を含有することで、導
電性と光吸収性を併せ持つ透明導電膜付き基板とすることができるので好ましい。かかる光吸収性色素は、該透明膜状物質中に分子状に分散していても、及び/又は、粒子状に分散していてもよい。該透明膜状物質中、該化合物が占める割合は0.001重量%〜95重量%
が好ましく、さらに好ましくは0.01重量%〜70重量%である。
【0021】
該透明膜状物質に含有される可視波長域の光を吸収する光吸収性化合物は380nm近辺か
ら780nm近辺の可視域において使用目的に適合した特定波長域の光を実質的に吸収する化
合物であれば良く、特に制限はない。使用目的としては例えばプラズマディスプレイパネルやフィールドエミッションディスプレイパネル、液晶ディスプレイなどの表示パネルにおける色再現性の向上や色調調整などが挙げられる。その具体的な例としては、ポリ(ジアルキルフルオレン)、ポリ(3−アルキルチオフェン)、ジアルキルフルオレン−ジチオフェン共重合体、可溶性ポリパラフェニレンビニレンなどの可溶性導電性高分子、テトラアザポルフィリン系化合物、スクアリリウム系化合物、ジピラゾリルスクアリリウム系化合物、アントラキノン系化合物、ジフェニルスクリリウム系化合物、メチン系化合物、ピラゾール系化合物、ジピラゾリルメチン系化合物、フタロシアニン系化合物、アゾ系化合物、インジゴ系化合物、またはInP、GaPなどのIII-V族化合物半導体微粒子、ZnO、CdSeなどのII-VI族化合物半導体微粒子に代表される無機微粒子等が挙げられる。これらのな
かで、例えばプラズマディスプレイパネルにおけるネオンオレンジ光カットの目的のためにはテトラアザポルフィリン系化合物、スクアリリウム系化合物が好ましい。
【0022】
該透明膜状物質に含有される近赤外波長域の光を吸収する光吸収性化合物は780nm近辺
から3000nm近辺の近赤外域において使用目的に適合した特定波長域の光を実質的に吸収する化合物であれば良く、特に制限はない。使用目的としては例えばプラズマディスプレイパネルなどの表示パネルにおける近赤外遮蔽などが挙げられる。その具体的な例としては、ジインモニウム系化合物、インドアニリン金属錯体系化合物、ジチオレート金属錯体系化合物、含フッ素フタロシアニン系化合物、縮合ベンゾピラン系化合物、縮合キノリン系化合物、インモニウム系化合物、アミニウム塩系化合物、ナフタロシアニン化合物、フタロシアニン化合物、ジオキサジナフトペンタセン系化合物、スクアリリウム系金属錯体化合物、ジチオール金属錯体系化合物、アミノチオフェノレート系金属錯体、金属−芳香族化合物複合体の塩類、ビス(エチレン−1、2−ジチオラト)金属錯体、ポリスチレンスルホン酸ドープ−ポリ(3、4エチレンジオキシチオフェン)、高濃度ドープされたポリアニリン等が挙げられる。高濃度ドープされたポリアニリンやポリスチレンスルホン酸ドープ−ポリ(3、4エチレンジオキシチオフェン)などにおける近赤外域の吸収は、いわゆる色素系化合物とは異なり高濃度ドープされ電気伝導度の高い金属的な性質を持つ導電性高分子の自由電子によるものであるが問題は無い。または、可視域で透明であり、近赤外域に自由電子に由来する吸収を有する酸化物微粒子、例えばスズドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)等でも良い。さらにこれら微粒子または上記導電性高分子は導電性を有するため、結果として網目状金属層と開口部を等電位にすることも可能である。これらのなかで、例えばプラズマディスプレイパネルにおける近赤外遮蔽の目的のためにはジインモニウム系化合物、インドアニリン金属錯体系化合物、ジチオレート金属錯体系化合物、ジチオール金属錯体系化合物が好ましい。
【0023】
該可視域における特定波長域の光を吸収する光吸収性化合物あるいは該近赤外域における特定波長域の光を吸収する光吸収性化合物は必要に応じてそれぞれ1種類以上を用いても良く、また必要に応じて、該可視域における特定波長域の光を吸収する光吸収性化合物を1種類以上と該近赤外域における特定波長域の光を吸収する光吸収性化合物を1種類以上共存させて用いても良い。また、該透明膜状物質が充填された、または、該可視域における特定波長域の光を吸収する光吸収性化合物及び/又は該近赤外域における特定波長域の光を吸収する光吸収性化合物が添加された該透明膜状物質が充填された金属網目の開口
部は、公知の添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱老化防止剤、紫外線吸収剤などを含有していてもよい。
【0024】
本発明の透明導電膜付き基板は、以下に述べる塗布液を上記の透明基板の上に塗布することにより製造される。
本発明の塗布液は、溶媒1に金属微粒子が分散した金属微粒子分散液と、かかる溶媒1に難溶な溶媒2を用いて上記の透明膜状物質を形成可能な化合物を溶解させた化合物溶液、場合によりかかる化合物溶液に光吸収性化合物等の添加剤を溶解及び/又は分散させた化合物溶液を、必要に応じて界面活性剤の存在のもと混合して得られるエマルションである。なお、溶媒1及び溶媒2は、夫々、単独の溶媒であっても混合溶媒であっても良い。かかるエマルションにおいて、該金属微粒子分散液は連続相を形成し、一方、該化合物溶液は分散相(不連続相)を形成する(図1参照)。溶媒1が水を主体とした溶媒である場合、溶媒2はかかる溶媒に難溶な溶媒から構成され、かかるエマルションは、O/W(oil in water)エマルションとなる。一方、溶媒2が水を主体とした溶媒である場合、溶媒1はかかる溶媒に難溶な溶媒から構成され、かかるエマルションは、W/O(water in oil)エマルションとなる。なお、首記の難溶とは、必要に応じて適切な界面活性剤の選択により、エマルションを形成できる溶媒の組み合わせを指す。
【0025】
O/Wエマルション、W/Oエマルションの選択は任意であり、塗布液の主要成分である該透明膜状物質を形成する化合物の溶解性、場合により該光吸収性化合物等の添加剤の溶解性及び/又は分散性、及び該金属微粒子の分散性を考慮して適宜選択される。
本発明の塗布液を構成する該金属微粒子分散液における該金属微粒子は、本発明の透明導電膜付き基板において導電性を提供する金属網目を形成するためのものであり、金属網目を形成する金属として前述の金属が挙げられる。これらの金属微粒子は、還元法、気相法、粉砕法等の公知の方法により製造される。
【0026】
該金属微粒子の平均粒径(直径)は、0.005μm〜1μm、好ましくは0.01μm〜0.5μ
m、より好ましくは0.01μm〜0.2μmの範囲である。かかる範囲より小さなものは、接
触抵抗が増大し良好な導電性が得られない傾向がある。一方、かかる範囲よりも大きなものは分散不良を起こしやすくなり、また、良好な導電性が得られない傾向がある。なお、金属微粒子の形状は、球状、鱗片状、針状、樹枝状、鎖状など任意の形状のものを用いることができる。また用いる金属微粒子の粒径が、大きい粒子と小さい粒子との混合系であっても構わない。また導電性を向上させる目的で、添加剤として、金属塩化合物、金属錯体化合物、金属酸化物等を加えてもよい。
【0027】
該金属微粒子分散液に含有される金属粒子の濃度は、該金属微粒子分散液中の重量濃度として、0.1〜80重量%、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは3〜30重量%の範囲で
ある。かかる範囲の下限よりも少なくなると、導電性が低下する傾向にあるため好ましくない。一方、かかる範囲の上限よりも多くなると、得られる金属網目構造の開口部面積が減少し、透明性が低下する傾向にあり、また、塗布液の安定性が低下するため好ましくない。
【0028】
該金属微粒子分散液には、更に、金属微粒子の分散安定性を高めるための添加剤や得られる金属網目の強度や透明基板との接着性を更に高めるための樹脂成分を適宜添加してもよい。このような添加成分の例としては、溶媒1が水系の場合、クエン酸等の多価カルボン酸類、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリエチレングリコール系樹脂、セルロース系樹脂等が例示され、これらは単独でも、または混合して用いてもよい。一方、溶媒1が水と実質的に非混和な溶媒の場合、ポリビニルブチラール系樹脂、フェノキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂等のアクリレート系樹脂、ポリカーボ
ネート樹脂、ポリスチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、AS樹脂、塩酢ビ樹脂などが挙げられる。これらは単独でも、または混合して用いてもよい。
【0029】
通常、該金属微粒子分散液中の添加剤の濃度は、該金属微粒子分散液中の重量濃度として、30重量%以下が好ましい。これを越えると、導電性が悪化するため好ましくない。
該金属微粒子分散液は、必要に応じて分散処理して製造される。かかる分散処理に使用する分散機としては、これに限定されるものではないが、ボールミル、サンドミル、コロイドミル、アトライター、パールミル、コボールミル、ホモミキサー、ホモジナイザー、マグネティックスターラー、ペイントシェーカー、超音波ホモジナイザー等の公知の方法を用いることができる。分散機としてメディアを使うものには、例えば、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ等を用いることができる。
なお、該金属微粒子分散液には、本発明の効果を損なわない範囲において、通常、微粒子分散液に添加される各種添加剤、例えば、酸化防止剤、表面張力調整剤、粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤、キレート剤、消泡剤等が必要に応じて含まれていても良い。
【0030】
本発明の塗布液を構成する化合物溶液に含まれる透明膜状物質を形成する化合物は、本発明の透明導電膜付き基板において金属網目と透明基板との密着性および/または金属網目の強度を向上させるものである。該透明膜状物質を形成する化合物は、前述のとおりであるが、さらに塗布後に重合させる場合であれば、熱硬化性樹脂モノマーや紫外線硬化樹脂モノマー等、公知のモノマーから適宜選択して使用することができる。該透明膜状物質を形成する化合物の濃度は、該化合物溶液中の重量濃度として、0.01重量%〜50重量%の範囲が好ましい。0.01重量%を下回ると、得られる金属網目と透明基板との密着性向上および/または金属網目の強度向上が不十分となる傾向がある。一方、50重量%を越えると、化合物溶液の粘度が上昇したり、透明導電膜が形成不良を起こす怖れがある。
【0031】
該化合物溶液に光吸収性化合物を含有する場合の濃度は、該光吸収性化合物の吸光度及び透明導電膜付き基板に要求される特定波長の光の吸収性によって定まるため、一概にその値を規定することはできないが、通常、該化合物溶液中の重量濃度として、0.0001重量%〜50重量%の範囲が好ましい。0.0001重量%を下回ると、得られる透明導電膜付き基板の特定の光吸収性が十分に発現しないこととなる。一方、50重量%を越えると、該光吸収性化合物の溶解不良や分散不良が起き易くなる傾向にある。
【0032】
該化合物溶液における該光吸収性化合物は、上記溶媒2中において、分子状に溶解していても良く、また、会合体を形成して溶解していても良い。更に、粒子状に分散している状態でもよい。かかる粒子状に分散する場合には、透明導電膜付き基板を作製した際に、該粒子に起因する可視光散乱による濁りが発生しやすくなるため、これを抑制するために、通常、0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.15μm以下の粒径に分散することが望ましい。
【0033】
該化合物溶液の調製方法は、公知の方法をもってなされ、特に限定されるものではないが、マグネティックスターラーや、通常の羽翼を備えた撹拌機による撹拌の他、高速の分散機、超音波分散機、ホモジナイザー等でおこなうことができる。また、該光吸収性化合物を該化合物溶液に分散する場合は、適宜、公知の分散剤を併用し、公知の分散処理、例えば、ボールミル、サンドミル、コロイドミル、アトライター、パールミル、コボールミル、ホモミキサー、ホモジナイザー、マグネティックスターラー、ペイントシェーカー、超音波ホモジナイザー等の方法を用いて調製することができる。分散機としてメディアを使うものには、例えば、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ等を用いることができる。
【0034】
なお、該化合物溶液には、本発明の効果を損なわない範囲において、各種添加剤、例え
ば、酸化防止剤、表面張力調整剤、粘度調製剤、pH調整剤、防腐剤、キレート剤、消泡剤等が必要に応じて含まれていても良い。
本発明の塗布液は、上記の金属微粒子分散液と化合物溶液を界面活性剤の存在のもと機械的に混合して得られるエマルションである。かかる化合物溶液に含まれる該透明膜状物質を形成する化合物が水もしくは水を主体とした溶媒に溶解する場合、さらに場合によっては、かかる化合物溶液に含まれても良い該光吸収性化合物が水もしくは水を主体とした溶媒に溶解及び/もしくは分散する場合、溶媒2として水もしくは水を主体とした溶媒を用いた該化合物溶液が、適切な界面活性剤の選択のもと分散相をなすW/Oエマルションを
なすように、金属微粒子分散液の溶媒1を選択する。溶媒2として水もしくは水を主体とした溶媒を用いた場合、溶媒1は、金属微粒子の分散性に応じて選択されることが好ましい。一方、かかる化合物溶液に含まれる該透明膜状物質を形成する化合物が水に難溶な溶媒に溶解する場合、さらに場合によっては、かかる化合物溶液に含まれても良い該光吸収性化合物が、水に難溶な溶媒に溶解及び/もしくは分散する場合、溶媒2としてかかる溶媒を用いた該化合物溶液が、適切な界面活性剤の選択のもと分散相をなすO/Wエマルショ
ンをなすように、金属微粒子分散液の溶媒1を水もしくは水を主体とした溶媒とする。溶媒1として水もしくは水を主体とした溶媒を用いた場合、溶媒2としては、該透明膜状物質を形成する化合物の溶解性、さらに場合によっては光吸収性化合物の溶解性及び/又は分散性に応じて選択されることが好ましい。
【0035】
かかる溶媒の組み合わせとしては、金属微粒子の分散性、透明膜状物質を形成する化合物の溶解性、及び場合により含有される光吸収性化合物の溶解性及び/又は分散性に応じて選択されるため、特に限定されるわけではないが、溶媒1(あるいは溶媒2)を水もしくは水を主体とした溶媒とした場合、溶媒2(あるいは溶媒1)としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、石油ベンジン、テレピン油等で例示される炭化水素系溶媒、クロロホルム、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレン、1,1,2−トリクロロエタン等で例示されるハロゲン系溶媒、エチル−n−ブチルケトン、ジイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ジ−n−プロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルシクロヘキサノン、メチル−n−ブチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、イソホロン等で例示されるケトン系溶媒、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸シクロヘキシル、酢酸sブチル、酢酸ベンジル、酢酸メチルシクロヘキシル等で例示されるエステ
ル系溶媒などが例示される。なお、これらの溶媒は単独で用いても、あるいは2種以上混合して用いても良い。
【0036】
なお、光吸収性化合物は、通常、水に対する溶解性が低いことから、水に難溶な溶媒に溶解させた化合物溶液を用い、連続相として水系の金属微粒子分散液を用いるO/Wエマル
ションか、もしくは、水に光吸収性化合物を分散させた化合物溶液を用い、水に難溶な溶媒を用いた金属微粒子分散液を用いるW/Oエマルションが好ましい。あるいは、光吸収性
化合物に化学修飾を施し、水に対する溶解性を高めることによって、W/Oエマルションと
することもできる。
【0037】
エマルションにおいて連続相をなす金属微粒子分散液Cと分散相をなす化合物溶液Dの比率は、重量にてD/C=1/20〜20/1である。本発明の網目構造を良好に形成させるためには、D/C=1/15〜10/1が好ましく、より好ましくは1/10〜5/1、とりわけ1/5〜3/1の範囲が好適である。分散相の比率がかかる上限を越えると、エマルションの形成に難があり、また、エマルションの分散性が悪化する傾向にある。一方、分散相の比率が下限を下回ると、得られる透明導電膜付き基板の透明性が悪化する傾向にある。
【0038】
かかるエマルションを形成するための界面活性剤としては、特に限定されるものではなく、公知のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の各種界面活性剤を用いることができる。
そのアニオン性界面活性剤としては、具体的には、例えば、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩類、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩類、オクチルアルコール硫酸エステルナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルアンモニウム等の高級アルコール硫酸エステル塩類、アセチルアルコール硫酸エステルナトリウム等の脂肪族アルコール硫酸エステル塩類、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、セチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ステアリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オレイルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩類、イソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩類、ラウリル燐酸ナトリウム、ステアリル燐酸ナトリウム等のアルキル燐酸エステル塩類、ラウリルエーテル硫酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物、ラウリルエーテル硫酸アンモニウムのポリエチレンオキサイド付加物、ラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミンのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルエーテル硫酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、ノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルフェニルエーテル硫酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、ラウリルエーテル燐酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルエーテル燐酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、ノニルフェニルエーテル燐酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルフェニルエーテル燐酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類等を挙げることができる。
【0039】
又、カチオン性界面活性剤としては、具体的には、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ラノリン誘導第4級アンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩類、ラウリルピリジニウムクロライド、ラウリルピリジニウムブロマイド、セチルピリジニウムクロライド等のピリジニウム塩類、2−ステアリル−ヒドロキシエチル−2−イミダゾリン誘導体等のイミダゾリニウム塩類、N,N−ジエチル−ステアロアミド−メチルアミン塩酸塩、ポリオキシエチレンステアリルアミン等のアミン塩類等を挙げることができる。
【0040】
又、ノニオン性界面活性剤としては、具体的には、例えば、ポリエチレングリコールセチルエーテル、ポリエチレングリコールステアリルエーテル、ポリエチレングリコールオレイルエーテル、ポリエチレングリコールベヘニルエーテル等のポリエチレングリコールアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールセチルエーテル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールデシルテトラデシルエーテル等のポリエチレングリコールポリプロピレングリコールアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル等のポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル類、モノステアリン酸エチレングリコール、ジステアリン酸エチレングリコール、ステアリン酸ジエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、モノミリスチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、ジオレイン酸グリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル類、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン
酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類、モノステアリン酸グリセリルのポリエチレンオキサイド付加物、モノオレイン酸グリセリルのポリエチレンオキサイド付加物等のグリセリン脂肪酸エステルのポリエチレンオキサイド付加物類、モノパルミチン酸ソルビタンのポリエチレンオキサイド付加物、モノステアリン酸ソルビタンのポリエチレンオキサイド付加物、トリステアリン酸ソルビタンのポリエチレンオキサイド付加物、モノオレイン酸ソルビタンのポリエチレンオキサイド付加物、トリオレイン酸ソルビタンのポリエチレンオキサイド付加物等のソルビタン脂肪酸エステルのポリエチレンオキサイド付加物類、モノラウリン酸ソルビットのポリエチレンオキサイド付加物、テトラステアリン酸ソルビットのポリエチレンオキサイド付加物、ヘキサステアリン酸ソルビットのポリエチレンオキサイド付加物、テトラオレイン酸ソルビットのポリエチレンオキサイド付加物等のソルビット脂肪酸エステルのポリエチレンオキサイド付加物類、ヒマシ油のポリエチレンオキサイド付加物類等を挙げることができる。
【0041】
また、両性界面活性剤としては、例えば、2−ウンデシル−N,N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシルメチル)−2−イミダゾリンナトリウム等のイミダゾリン系両性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、スルホベタイン、アミドベタイン、等のベタイン系界面活性剤等を挙げることができる。
また、界面活性能を有する樹脂成分を添加しても良く、例えば、ポリビニルアルコール、(メタ)アクリル酸/(メタ)アルキルアクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸/スチレン共重合体等の親水性モノマー及び疎水性モノマー共重合体、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールからなるブロック共重合体等が挙げられる。
【0042】
これらの界面活性剤は、1種又は2種以上組み合わせて用いることができ、例えば、HLBの低いものと高いものを2種以上組み合わせて安定したエマルションとすることができる。
界面活性剤の添加量は、金属微粒子分散液及び化合物溶液を合わせた液重量に対し、0 〜 20重量%、好ましくは0.001 〜 10重量%、より好ましくは0.01 〜 5重量%である。
添加量が下限を下回るとエマルションが形成されなかったり、安定なエマルションが得られないため好ましくないが、該金属微粒子分散液および該化合物溶液のみでエマルションが得られる場合は、必ずしも界面活性剤を添加しなくてもよい。また、添加量が上限を上回ると、得られる金属網目の導電性の悪化、塗布膜強度の低下等の悪影響があるため好ましくない。
【0043】
本発明のエマルションは、以上の金属微粒子分散液ならびに化合物溶液を混合し、公知の乳化方法によって調製することができる。この際、上記の界面活性剤は、適宜、金属微粒子分散液もしくは/及び化合物溶液に添加される。乳化の方法は特に限定されることはないが、例えば、羽翼を備えた撹拌機による撹拌、ホモミキサー、オムニミキサー、バブルホモジナイザー、ピストンホモジナイザー、超音波乳化器、マイクロ流動化装置(例えば、マイクロフルーディックス社製「マイクロフルーダイザー」)等の剪断混合装置によって均一に混合し、乳化される。
【0044】
本発明の透明導電膜付き基板は、透明基板上に上記塗布液を塗布し、乾燥を経るものであれば限定はなく、公知の塗布方法、例えば、ディッピング法、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、スプレー法、ロールコーター法などを用いることができる。なお、塗布液が塗布される透明基板と塗布液との濡れ性が不良な場合には、かかる濡れ性を向上させるために、本発明の効果を損なわない範囲において、透明基板の表面を処理することが好ましい。かかる表面処理については、公知の方法を選択すれば良く、例えば、コロナ放電
処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理、薬品処理等の方法による表面処理や、アンカーコート剤やプライマー等のコーティングを施し、表面の疎水性、親水性の度合いを調節しても良い。また、本発明の効果を損なわない範囲において、塗布液への粘度調製剤の添加を併用してもよい。
かかる塗布、乾燥された透明導電膜付き基板に対し、導電性を向上させる目的で別途熱処理を施してもよい。熱処理温度は、透明基板の耐熱温度以下であれば特に限定されない。
【0045】
本発明の、透明導電付き基板の金属網状構造は、透明基板上に上記塗布液を塗布、乾燥、必要により熱処理を行うという単純な方法で、印刷法等の特殊な手法を用いることなく自発的に形成可能であり、その開口部に透明膜状物質を有し、金属層上には透明膜状物質が存在しないこととなる。
【実施例】
【0046】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
透明導電膜付き基板形成用塗布液の調製
(1)水相
銀微粒子水分散液(触媒化成工業製)をエバポレーターにて減圧濃縮し、濃度13.8重量%に調製した。該銀微粒子水分散液5.45mlに、ポリエチレングリコールモノステアラート(オキシエチレンユニット=40)0.0163gとポリビニルアルコール0.0110g(クラレ株式会社製PVA505)を加え、さらにセルロースヒドロキシエチルエーテル(ポリサイエンス社製)0.0218gを加え、撹拌し、水相を調製した。
(2)油相
1,2,4-トリメチルベンゼン19.2mlにポリスチレン0.01921gを加え、撹拌し、油相を調
製した。
(3)O/Wエマルションの調製
(1)で調製した水相1mlをマグネチックスターラーで攪拌させながら、(2)で調製した油相1mlを徐々に添加し、30分間攪拌を続け、O/Wエマルションを調製した。透明導電膜付き基板の形成
(3)で調製したO/Wエマルションを、ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製PET フィルム、厚み100μm )上にギャップ60μmのアプ
リケーターを用いて塗布した。塗布後、室温乾燥しさらに60℃乾燥を行った。またその後、空気中で90℃ 5分間加熱を行い透明導電膜付き基板を得た。
透明導電膜付き基板の評価
得られた透明導電膜付き基板の光学顕微鏡観察結果(Nikon社製偏光顕微鏡OPTIPHOT2−POL、透過モード)を図2示す。写真に示されるように、自発的不規則銀網目構造の形成
が観察され、その不規則銀網目構造の平均開口径は約40μm、平均線幅は約5.0μmであっ
た。
【0047】
四探針法(探針間距離1mm、 ADVANTEST社製 R6144 PROGRAMMABLE DC VOLTAGE/CURRENT GENERATOR, Keithley社製2000 MULTIMETER)による表面抵抗測定より、表面抵抗値は約80Ω/□であった。また、開口部に対してFT−IR−顕微ATR法(Nicolet社製NEXUS670, Nic-Plan社製)によるIR吸収測定を行った。得られたIR吸収スペクトルを図3に示す。比較の
ため、PETフィルムのみ、ポリスチレンフィルムのみに対するスペクトルも示した。開口
部に対するスペクトルが示すように、754cm-1付近および700cm-1付近にポリスチレンにおける一置換ベンゼン環のCH面外変角に由来する吸収スペクトルが観測され、開口部にポリスチレンが充填されていることが確認された。また、得られた透明導電膜付き基板の全光線透過率をヘーズメーター(島津製作所製 HZ-2)により測定したところ、60%であった。
従って、開口部の透明膜状物質の全光線透過率は少なくとも60%であることは明らかである。
(比較例1)
透明導電膜付き基板形成用塗布液の調製
(1)水相
銀微粒子水分散液(触媒化成工業製)をエバポレーターにて減圧濃縮し、濃度13.8重量%に調製した。該銀微粒子水分散液5.45mlに、ポリエチレングリコールモノステアラート(オキシエチレンユニット=40)0.0163gとポリビニルアルコール0.0110g(クラレ株式会社製PVA505)を加え、さらにセルロースヒドロキシエチルエーテル(ポリサイエンス社製)0.0218gを加え、撹拌し、水相を調製した。
(2)O/Wエマルションの調製
1,2,4-トリメチルベンゼン1mlをマグネチックスターラーで攪拌させながら、(1)で調製した水相1mlを徐々に添加し、30分間攪拌を続け、O/Wエマルションを調製した。
透明導電膜付き基板の形成
(2)で調製したO/Wエマルションを、ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製PET フィルム、厚み100μm )上にギャップ60μmのアプ
リケーターを用いて塗布した。塗布後、室温乾燥しさらに60℃乾燥を行った。またその後、空気中で90℃ 5分間加熱を行い透明導電膜付き基板を得た。
透明導電膜付き基板の評価
得られた透明導電膜付き基板に対し実施例1と同様に光学顕微鏡観察、四探針法による表面抵抗測定を行ったところ、自発的不規則銀網目構造における平均開口径は約42μm、
平均線幅は約5.3μmであり、表面抵抗値は約80Ω/□であった。
実施例1および比較例1で示されたように、ポリスチレンが開口部に充填された透明導電膜付き基板の表面抵抗値とポリスチレンが開口部に明らかに充填されていない透明導電膜付き基板の表面抵抗値が同じであることから、実施例1においてはポリスチレンは不規則銀網目構造の銀層を覆ってはいない、すなわち銀層上にポリスチレンが存在しないことが示された。
(実施例2、3及び比較例2)
透明導電膜付き基板形成用塗布液の調製
(1)水相
銀微粒子水分散液(触媒化成工業製)をエバポレーターにて減圧濃縮し、濃度14.1重量%に調製した。該銀微粒子水分散液1mlに、ポリエチレングリコールモノステアラート(
オキシエチレンユニット=40)0.00301gとポリビニルアルコール0.00193g(クラレ株式会社製PVA505)を加え、さらにセルロースヒドロキシエチルエーテル(ポリサイエンス社製)0.00406gを加えて撹拌し、水相を調製した。
(2)油相
1,2,4-トリメチルベンゼン1mlに対してポリスチレンをそれぞれ0mg、0.0200g、0.0513g加えて撹拌して溶解し、ポリスチレン0、2、5重量%の油相を調製した。
(3)O/Wエマルションの調製
(2)で調製した油相1mlをマグネチックスターラーで攪拌させながら、(1)で調製した水相1mlを徐々に添加し、30分程度攪拌を続け、O/Wエマルションを調製した。
透明導電膜付き基板の形成
(3)で調製したO/Wエマルションを、ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製PET フィルム、厚み100μm)に、アプリケーターを用いて塗布した。この時のアプリケーターのギャップは、60μmであった。塗布後、室温乾燥しさらに60℃乾燥を行った。またその後、空気中で90℃ 5分間加熱を行い透明導電膜付き基板を得た。
透明導電膜の膜強度評価
光学顕微鏡観察の結果、ポリスチレン0、2、5重量%の全ての油相における透明導電膜
付き基板の自発的不規則銀網目構造の平均開口径は約40μm、平均線幅は約5.0μmであっ
た。これら自発的不規則銀網目のPET基板との密着性および強度を綿棒引っかき試験によ
り評価した。評価結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

実施例及び比較例から、得られる開口部に透明膜状物質を有することにより不規則銀網目のPET基板との密着性および強度が向上することが示された。
(実施例4)
透明導電膜付き基板形成用塗布液の調製
(1)水相
銀微粒子水分散液(触媒化成工業製)をエバポレーターにて減圧濃縮し、濃度14.6重
量%に調製した。該銀微粒子水分散液2mlに、ポリエチレングリコールモノステアラート(オキシエチレンユニット=40)0.0062gとポリビニルアルコール0.00407g(クラレ株式
会社製PVA505)を加え、さらにセルロースヒドロキシエチルエーテル(ポリサイエンス社
製)0.0083gを加えて撹拌し、水相を調製した。
(2)油相
1,2,4-トリメチルベンゼン1mlに対してポリスチレンをそれぞれ0.0200gと光吸収化合物であるポリジオクチルフルオレン(トスコ社製:Poly(9,9-dioctylfluoren-2,7-diyl)を0.0103g加えて撹拌して溶解させ、油相を調製した。この場合、ポリスチレンの含有量は、2重量%である。
(3)O/Wエマルションの調製
(2)で調製した油相1mlをマグネチックスターラーで攪拌させながら、(1)で調製した水相2mlを徐々に添加し、30分程度攪拌を続け、O/Wエマルションを調製した。
透明導電膜付き基板の形成
(3)で調製したO/Wエマルションを、ポリビニルアルコール(クラレ社製:PVA117)をコートしたポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製PET フィルム)に、アプリケーターを用いて塗布した。この時のアプリケーターのギャップは、40μmであった。塗布後、室温で乾燥を行った。
多機能化透明導電膜付き基板の評価
上記により得られた透明導電膜付き基板の吸収スペクトル測定(ヒューレッドパッカード社製(現Agilent technologies):8453紫外可視分光高度計)を実施した結果、400nm近傍にポリジオクチルフルオレンに由来する吸収ピークが確認された。この基板の全光線透過率は40%以上である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の塗布液(エマルション)を模式的に示す図である。
【図2】実施例1の透明導電膜付き基板の光学顕微鏡写真である。
【図3】実施例1の透明導電膜付き基板の開口部、及び、比較としてのポリスチレンフィルム、PETフィルムのIR吸収スペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に網目状の金属層を有し、全光線透過率が40%以上である透明導電膜付き基板であって、その開口部に透明膜状物質を有し、且つ、該透明膜状物質が該金属層上には存在しないことを特徴とする透明導電膜付き基板。
【請求項2】
該網目状の金属層が不規則な網目状の金属層であることを特徴とする請求項1記載の透明導電膜付き基板。
【請求項3】
該透明膜状物質が、可視波長域の光を吸収する光吸収性化合物を1種類以上および/または近赤外波長域の光を吸収する光吸収性化合物を1種類以上含有することを特徴とする請求項1又は2記載の透明導電膜付き基板。
【請求項4】
該金属層がAu、Ag、Cu、Pt、Al、Pdから選ばれる一種類以上の元素からなることを特徴とする請求項1〜3記載の透明導電膜付き基板。
【請求項5】
金属成分及び全光線透過率が40%以上である透明膜状物質を形成可能な化合物を含むエマルションからなり、連続相に金属成分を含み、不連続相に該透明膜状物質を形成可能な化合物を含むことを特徴とする透明導電膜付き基板形成用塗布液。
【請求項6】
不連続相に可視波長域の光を吸収する光吸収性化合物の1種類以上および/または近赤外波長域の光を吸収する光吸収性化合物の1種類以上を含有することを特徴とする請求項5記載の透明導電膜付き基板形成用塗布液。
【請求項7】
請求項5又は6記載の透明導電膜付き基板形成用塗布液を透明基板上に塗布することを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜付き基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−127929(P2006−127929A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−315216(P2004−315216)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】