説明

透明導電膜及びそれを含むディスプレイフィルタ

【課題】可視光線透過率が高く、近赤外線遮蔽性に優れ、内部応力が小さいため高温・多湿な環境下でも変形しない透明導電膜及びそれを含むディスプレイフィルタを提供する。
【解決手段】本発明による透明導電膜は、透明基板上に第1屈折透明薄膜と金属薄膜とが繰り返し積層され、且つ第1屈折透明薄膜と金属薄膜との間に第1屈折透明薄膜よりも屈折率が低い第2屈折透明薄膜が積層されてなる透明導電膜であって、ここで、第2屈折透明薄膜は、その厚さが第1屈折透明薄膜の厚さに対して10%以上、65%以下で形成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電膜及びそれを含むディスプレイフィルタに係り、特に、可視光線透過率が高く、近赤外線遮蔽性に優れ、且つ内部応力が小さいため高温・多湿な環境下でも変形しない透明導電膜及びそれを含むディスプレイフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、透明導電膜は、酸化物透明薄膜と金属薄膜とが繰り返し積層されてなる多層薄膜構造を有し、プラズマディスプレイパネルの電磁波遮蔽材、自動車用防風ガラス、電磁波遮蔽窓ガラス、ディスプレイデバイスの透明電極などに広く利用されている。
【0003】
透明導電膜は、その活用範囲が徐々に拡大されるに伴い、可視光領域における高い透過性と高い電気伝導性の他、耐湿、高温などの環境下においても欠点や特性の低下が生じない、高耐久性特性が要求されてきている。
【0004】
しかしながら、透明導電膜に対し、抵抗値を下げるために積層数を上げると、薄膜の内部応力の増大により導電膜が破断して抵抗値が高くなり、また、湿度の高い環境下では銀(Ag)の凝集現象による白色の欠点が発生するという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような背景に鑑みて提案されたものであって、その目的は、可視光線透過率が高く、近赤外線遮蔽性に優れ、内部応力が小さいため高温・多湿な環境下でも変形しない透明導電膜及びそれを含むディスプレイフィルタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の一様相に係る透明導電膜は、透明基板上に第1屈折透明薄膜と金属薄膜とが繰り返し積層され、且つ第1屈折透明薄膜と金属薄膜との間に第1屈折透明薄膜よりも屈折率が低い第2屈折透明薄膜が積層されてなる透明導電膜であって、
ここで、第2屈折透明薄膜は、その厚さが第1屈折透明薄膜の厚さに対して10%以上、65%以下で形成されることを特徴とする。
【0007】
また、第1屈折透明薄膜は、2.2以上の屈折率を有する金属酸化物から形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成された本発明に係る透明導電膜及びそれを含むディスプレイフィルタでは、相対的に低屈折率を有する第2屈折透明薄膜の厚さが、第1屈折透明薄膜の厚さに対して10%以上、65%以下で形成されるため、導電膜内の金属薄膜が結晶性を示すことで電気伝導性が向上し、可視光線透過率が正常範囲(80%以上)を満足するという有用な効果がある。また、優れた近赤外線遮蔽性能を有するという効果がある。
【0009】
さらには、金属薄膜が結晶性を示すことで水分による凝集を抑えることにより、高温・多湿な環境下でも欠点の発生が抑えられることで優れた外観特性を保つことができ、また、金属薄膜の耐久性、特に耐湿性を向上させることができるという有用な効果がある。
【0010】
また、金属薄膜が結晶性を示すことで薄膜の積層数を増やさなくても優れた電気伝導性を有し、赤外線反射金属薄膜の凝集力を軽減することで高温・多湿な環境下に露出しても強い耐久性を有するという有用な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る透明導電膜を説明するための例示図である。
【図2】本発明の一実施例に係る透明導電膜の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付した図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。なお、かかる実施例は、当業者が本発明を容易に理解し再現できるようにするための例示的な説明であるに過ぎず、本発明がかかる実施例により限定されるものではない。
【0013】
図1は、本発明に係る透明導電膜を説明するための例示図である。
同図に示すように、本発明に係る透明導電膜10は、透明基板11上に第1屈折透明薄膜12−1、12−2、12−3、12−4と、第2屈折透明薄膜13−1、13−2、13−3、13−4と、金属薄膜14−1、14−2が積層され、好ましくは、第1屈折透明薄膜12−1、12−2、12−3、12−4と金属薄膜14−1、14−2との間に第2屈折透明薄膜13−1、13−2、13−3、13−4が積層されてなる多層薄膜構造15、16、17、18から形成される。
【0014】
透明基板11は、光透過率に優れ且つ機械的物性に優れたものであれば特に制限されない。例えば、透明基板11は、熱硬化またはUV硬化が可能な有機フィルムであればよく、主に、ポリマー系の物質、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル、ポリカーボネート(PC)、ウレタンアクリレート、ポリエステル、エポキシアクリレート、ポリ塩化ビニル(PVC)からなるものであればよい。また、透明基板11は、化学強化ガラスとしてソーダ石灰ガラス硝子やアルミノシリケートガラス(SiO−AlO−NaO)からなるものであってもよく、この成分としてのNaやFeの量は、用途に応じて低く調整すればよい。
【0015】
第1屈折透明薄膜12−1、12−2、12−3、12−4は、2.2以上の屈折率を有し、圧縮応力が0.1GPa以上、0.2GPa以下の金属酸化物からなるものであればよい。その金属酸化物の一例として、五酸化ニオブ(Nb)が挙げられる。また、一例として、第1屈折透明薄膜12−1、12−2、12−3、12−4の厚さは、22nm以上、38nm以下であればよい。
【0016】
第2屈折透明薄膜13−1、13−2、13−3、13−4は、金属薄膜14が結晶性を示すようにし、また可視光線領域の光透過率を正常範囲、例えば、80%以上に保たせる役割を果たす。好ましくは、第2屈折透明薄膜13−1、13−2、13−3、13−4は、その厚さが第1屈折透明薄膜12−1、12−2、12−3、12−4の厚さに対して10%以上、65%以下を有するように形成されていてよい。一例として、第2屈折透明薄膜13−1、13−2、13−3、13−4は、2.0以下の屈折率を有する金属酸化物から形成されていてよい。また、好ましくは、第2屈折透明薄膜13−1、13−2、13−3、13−4は、アルミニウム(Al)またはチタニウム(Ti)が総重量に対して2wt%以上、10wt%以下にドープされた酸化亜鉛(ZnO)から形成されるものであればよい。
【0017】
金属薄膜14は、可視光線領域(380nm〜780nm)では光透過率が高く、赤外線領域では光反射率が高い物質から形成されていてよい。その物質の一例として、銀(Ag)または銀(Ag)を主成分とする合金が挙げられる。
【0018】
図2は、本発明の一実施例に係る透明導電膜の断面図である。
本実施例に係る透明導電膜20は、ソーダ石灰ガラス21上に五酸化ニオブ(Nb)とチタニウムがドープされた酸化亜鉛(TiZO)と銀(Ag)とが繰り返し積層されてなる多層薄膜構造22、23、24、25を有する。ここで、チタニウムがドープされた酸化亜鉛(TiZO)は、五酸化ニオブ(Nb)と銀(Ag)との間に積層される。
【0019】
以下、図2に示す透明導電膜の薄膜の厚さによる銀(Ag)の結晶性、光透過率、耐湿性を測定した結果を、下表1に表す。
【0020】
【表1】

【0021】
ここで、チタニウムがドープされた酸化亜鉛(TiZO)の厚さの割合は、TiZO薄膜の厚さ÷五酸化ニオブ(Nb)薄膜の厚さ×100(%)にて計算した。また、銀(Ag)の結晶性は、X線回折パターン(XRD)の測定によるAgピークの相対的な強度から測定し、光透過率は、Lambda−950 spectrophotometerを使用して測定した。可視光線領域の全波長にわたって高い透過率を要求する透明伝導性積層体の特性に合わせて全波長領域での平均透過率と450nm波長での透過率、620nm波長での透過率を一緒に比較した。耐湿性は、透明導電膜の一定の面積、例えば、29.5cm×21cm面積当たり白色欠点のサイズが0.5mm未満で、サイズ0.5mm未満の白色欠点の数が5個未満である場合にPass、白色欠点のサイズが0.5mm以上で、サイズ0.5mm以上の白色欠点の数が5個以上である場合にfailと評価した。
【0022】
実施例1、2及び比較例1、2では、超音波にて洗浄した厚さ0.5mmの透明基板の上に、アルゴン(Ar)ガスと酸素(O)ガスとを混合してスパッタリングチャンバ内に導入し、5mTorrの圧力下、電力密度2W/cmでDCスパッタを五酸化ニオブ(Nb)ターゲットに施して、それぞれ厚さ33nm、24nm、35nm、20nmの五酸化ニオブ(Nb)薄膜を形成した。
【0023】
また、実施例1、2及び比較例1、2では、五酸化ニオブ(Nb)薄膜上に、アルゴン(Ar)ガスと酸素(O)ガスとを混合して導入し、5mTorrの圧力下、電力密度2W/cmでDCスパッタをチタニウムが10%ドープされた酸化亜鉛(TiZO)ターゲットに施して、それぞれ厚さ5nm、15nm、2nm、20nmのチタニウムがドープされた酸化亜鉛(TiZO)薄膜を形成した。
【0024】
さらに、実施例1、2及び比較例1、2では、チタニウムがドープされた酸化亜鉛(TiZO)薄膜を積層した層の上に、アルゴン(Ar)ガスを導入し、5mTorrの圧力下、電力密度1W/cmでDCスパッタを銀(Ag)金属ターゲットに施して、それぞれ厚さ17nmの銀(Ag)金属薄膜を形成した。
【0025】
また、実施例1、2及び比較例1、2では、銀(Ag)金属薄膜の上に、さらに、アルゴン(Ar)ガスと酸素(O)ガスとを混合して導入し、5mTorrの圧力下、電力密度2W/cmの同一条件でDCスパッタをチタニウム金属が10%ドープされた酸化亜鉛(TiZO)ターゲットに施して、それぞれ厚さ5nm、15nm、2nm、20nmのチタニウムがドープされた酸化亜鉛(TiZO)薄膜を形成した。
【0026】
実施例1、2及び比較例1、2では、チタニウムがドープされた酸化亜鉛(TiZO)薄膜の上に、アルゴン(Ar)ガスと酸素(O)ガスとを混合して導入し、5mTorrの圧力下、電力密度2W/cmでDCスパッタを五酸化ニオブ(Nb)ターゲットに施して、それぞれ厚さ33nm、24nm、35nm、20nmの五酸化ニオブ(Nb)薄膜を形成した。
【0027】
比較例1のように、チタニウムがドープされた酸化亜鉛(TiZO)薄膜の厚さの比が、五酸化ニオブ(Nb2O)薄膜に対して10%未満である場合、銀(Ag)金属薄膜が結晶性を示さない非晶質薄膜となることで、高温・多湿な環境下に露出した際、銀(Ag)結集による白色欠点が発生するという問題が生じ、銀(Ag)金属薄膜の不安定性により薄膜が不均一になり、また反射率が高く可視光線透過率が低くなった。
【0028】
比較例2のように、チタニウムがドープされた酸化亜鉛(TiZO)薄膜の厚さの比を、五酸化ニオブ(Nb)薄膜に対して65%を超えるように増大させると、銀(Ag)結晶性は増加するものの、薄膜の応力増加により破断面が発生して、銀(Ag)が結集することで現われる百点欠陥が著しくなり、また、酸化亜鉛膜の短波長吸収特性によって450nm以下の領域での透過率が低くなる。
【0029】
一方、実施例1、2のように、チタニウムがドープされた酸化亜鉛(TiZO)薄膜の厚さの比が五酸化ニオブ(Nb)薄膜に対して10%以上、65%以下である場合、酸化亜鉛層の厚さが増加すると、銀(Ag)金属薄膜の結晶性が高くなることで水分による銀(Ag)の凝集を抑え、高温・多湿な環境下においても優れた外観特性を保つことができる。さらには、可視光線の全領域にわたって80%以上の高い透過率が得られた。
【0030】
以上、本明細書では、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を容易に理解し再現できるように図面に図示した実施例を参考して説明したが、これは例示的なものに過ぎず、当該技術分野における通常の知識を有する者ならば、本発明の実施例から種々の変形及び均等な他の実施例が可能であることが理解できるであろう。したがって、本発明の真正な技術的保護範囲は、特許請求の範囲によってのみ決められるべきである。
【符号の説明】
【0031】
10、20:透明導電膜
11、21:透明基板
12−1、12−2、12−3、12−4:第1屈折透明薄膜
13−1、13−2、13−3、13−4:第2屈折透明薄膜
14−1、14−2:金属薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に第1屈折透明薄膜と金属薄膜とが繰り返し積層され、且つ第1屈折透明薄膜と金属薄膜との間に前記第1屈折透明薄膜よりも屈折率が低い第2屈折透明薄膜が積層されてなる透明導電膜であって、
前記第2屈折透明薄膜は、その厚さが前記第1屈折透明薄膜の厚さに対して10%以上、65%以下で形成されることを特徴とする透明導電膜。
【請求項2】
前記第1屈折透明薄膜は、2.2以上の屈折率を有する金属酸化物から形成されることを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜。
【請求項3】
前記第1屈折透明薄膜は、五酸化ニオブ(Nb)から形成されることを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜。
【請求項4】
前記第2屈折透明薄膜は、アルミニウム(Al)またはチタニウム(Ti)がドープされた酸化亜鉛(ZnO)から形成されることを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜。
【請求項5】
前記第2屈折透明薄膜は、アルミニウム(Al)またはチタニウム(Ti)が総重量に対して2wt%以上、10wt%以下にドープされてなることを特徴とする請求項4に記載の透明導電膜。
【請求項6】
前記金属薄膜は、銀(Ag)または銀(Ag)を主成分とする合金から形成されることを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の透明導電膜を含むことを特徴とするディスプレイフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−138135(P2011−138135A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−88(P2011−88)
【出願日】平成23年1月4日(2011.1.4)
【出願人】(502411241)サムスンコーニング精密素材株式会社 (80)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Corning Precision Materials Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】644−1 Jinpyeong−dong, Gumi−si,Gyeongsangbuk−do 730−360,Korea
【Fターム(参考)】