説明

透明性および難燃性に優れたポリカーボネート樹脂フィルム

【構成】ポリカーボネート樹脂(A)100重量部、パーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ(土類)金属塩化合物(B)0.10〜0.18重量部および主鎖が分岐構造の特定のシリコーン化合物(C)0.05〜0.35重量部からなる樹脂組成物を成形してなるポリカーボネート樹脂フィルムであって、前記フィルムは、(1)平均厚みが200〜500μmであり、(2)JIS K7105の条件にて測定された、曇り度が5%以下であり、かつ(3)UL94試験にて測定された、厚み300μmにおける難燃性能がVTM−1またはVTM−0である、ことを特徴とする透明性および難燃性に優れたポリカーボネート樹脂フィルム。
【効果】本発明のポリカーボネート樹脂フィルムは、ハロゲンやリンからなる難燃剤を使用することなく、優れた難燃性を示し、燃焼時にハロゲンを含むガスの発生等の懸念もなく、環境調和性の面からも極めて優れる。また、高度な透明性を併せ持つことから、電気絶縁用フィルムとして利用した場合に組付け作業の時間短縮等の効率化に寄与できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明性および難燃性に優れたポリカーボネート樹脂フィルムに関する。より詳細には、ポリカーボネート樹脂に対し、パーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ(土類)金属塩化合物および特定構造のシリコーン化合物を特定量配合することにより高度な透明性および難燃性を示すポリカーボネート樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性、耐熱性等に優れた熱可塑性樹脂であり、電気・電子・ITE、機械、自動車、建材等の分野で広く使用されている。ポリカーボネート樹脂は自己消火性を備えた難燃性の高いプラスチック材料ではあるが、電気・電子・OA分野にて使用される電気絶縁フィルム等の用途においては、高い透明性のみならず安全上の要求を満たすためUL94VTM−1やVTM−0相当の一層高い難燃性を有するポリカーボネート樹脂フィルムが求められている。
【0003】
ポリカーボネート樹脂フィルムの難燃性を向上するために、従来、難燃剤としてハロゲン系化合物やリン系化合物を配合する方法が採用されている。これらの中で特に臭素や塩素系化合物については、環境面からこれらを含有しない難燃剤の使用が市場より望まれている。
【0004】
ハロゲン系化合物やリン系化合物からなる難燃剤の代替として、主鎖が分岐構造の特殊なシリコーン化合物を用いた難燃性ポリカーボネート樹脂フィルムが提案されている。(特許文献1および2)しかし、従来のハロゲン化合物及びリン系化合物からなる難燃剤を配合した難燃性ポリカーボネート樹脂フィルムと比較して透明性が劣るという問題点があった。また、透明性の改善のためにアルコキシ基、ビニル基およびフェニル基を有する有機シロキサンとパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩とを使用した難燃性ポリカーボネート樹脂組成物(特許文献3)が提案されているが、透明性は改善されているものの難燃性能が1/16インチ(1.6mm)厚みにおいてV−0を示すに過ぎず、フィルム用途での厳しい難燃性を確保するには至っていない。更に、特許文献4においては、主鎖が分岐構造の特殊なシリコーン化合物と種々の有機金属塩化合物からなる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物が提案されているが、これも1.6mm厚みにおいてV−0を示すに過ぎず、平均厚み200〜500μmのフィルム用途にて高度な透明性を具備しつつ優れた難燃性を示すことを開示していない。
【0005】
【特許文献1】特開2007−2075号公報
【特許文献2】特開2006−316149号公報
【特許文献3】特開平06−306265号公報
【特許文献4】特開平11−217494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高度な透明性と難燃性を併せ持ったポリカーボネート樹脂フィルムを臭素や塩素化合物及びリン系化合物を含有させることなく提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ポリカーボネート樹脂に対し、パーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ(土類)金属塩化合物および特定構造のシリコーン化合物を特定量配合することで、臭素や塩素系化合物またはリン系化合物からなる難燃剤を使用することなく、高度な透明性と難燃性の両者を併せ持ったポリカーボネート樹脂フィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部、パーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ(土類)金属塩化合物(B)0.10〜0.18重量部および主鎖が分岐構造でかつ含有する有機官能基が芳香族基からなるか、または芳香族基と炭化水素基(芳香族基を除く)とからなるシリコーン化合物(C)0.05〜0.35重量部からなる樹脂組成物を成形してなるポリカーボネート樹脂フィルムであって、
前記フィルムは、
(1)平均厚みが200〜500μmであり、かつ
(2)JIS K7105の条件にて測定された、曇り度が5%以下であり、かつ
(3)アンダーライターズ・ラボラトリ−ズ(UL)の定めるUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼性試験)にて測定された、厚み300μmにおける難燃性能がVTM−1またはVTM−0である、
ことを特徴とする透明性および難燃性に優れたポリカーボネート樹脂フィルム、を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリカーボネート樹脂フィルムは、ハロゲンやリンからなる難燃剤を使用することなく、優れた難燃性を示し、燃焼時にハロゲンを含むガスの発生等の懸念もなく、環境調和性の面からも極めて優れる。また、高度な透明性を併せ持つことから、電気絶縁用フィルムとして利用した場合に組付け作業の時間短縮等の効率化に寄与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂(A)とは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、又はジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0011】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。
【0012】
これらは、単独又は2種類以上混合して使用される。これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0013】
さらに、上記のジヒドロキシアリール化合物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用してもよい。
3価以上のフェノールとしてはフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン及び2,2−ビス−[4,4−(4,4′−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル]−プロパンなどが挙げられる。
【0014】
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、通常10000〜100000、好ましくは15000〜35000、さらに好ましくは17000〜28000である。かかるポリカーボネート樹脂(A)を製造するに際し、分子量調節剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
【0015】
本発明にて使用されるパーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ(土類)金属塩化合物(B)としては、パーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩があげられる。好適には、パーフルオロブタンスルホン酸のカリウム塩が使用できる。
【0016】
パーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ(土類)金属塩化合物(B)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対し、0.10〜0.18重量部である。さらに好ましくは0.13〜0.16重量部の範囲である。配合量が0.10重量部未満では、シリコーン化合物(C)との併用効果が認められず、そのため難燃性が低下するので好ましくない。また、0.18重量部を超えると、透明性が低下するので好ましくない。
【0017】
本発明にて使用されるシリコーン化合物(C)は、主鎖が分岐構造でかつ有機官能基が芳香族基からなるか、または芳香族基と炭化水素基(芳香族基を除く)とからなり、下記一般式(1)にて示される。
一般式(1)
【0018】
【化1】

【0019】
ここで、R1、R2およびR3は主鎖の有機官能基を、Xは末端の官能基を表わす。
すなわち、分岐単位としてT単位(RSiO1.5)および/またはQ単位(SiO2.0)を持つことを特徴とする。これらは全体のシロキサン単位(R3〜0SiO2〜0.5)の20モル%以上含有することが好ましい。(Rは有機官能基をあらわす。)また、シリコーン化合物(C)は、含有される有機官能基のうち芳香族基が20モル%以上であることが好ましい。
【0020】
この含有される芳香族基としては、フェニル、ビフェニル、ナフタレンまたはこれらの誘導体であるが、フェニル基が好適に使用できる。
【0021】
シリコーン化合物(C)中の有機官能基で、主鎖や分岐した側鎖に付いたもののうち芳香族基以外の有機基としては、炭素数4以下の炭化水素基が好ましく、メチル基が好適に使用できる。さらに、末端基はメチル基、フェニル基、水酸基の内から選ばれた1種またはこれらの2種から3種までの混合物であることが好ましい。
【0022】
シリコーン化合物(C)の平均分子量(重量平均)は、好ましくは3000〜500000であり、更に好ましくは5000〜270000である。
【0023】
シリコーン化合物(C)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.05〜0.35重量部である。配合量が0.05重量部未満では、パーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ(土類)金属塩化合物(B)と併用した場合に十分な透明性が得られず、また、0.35重量部を超えると難燃性の相乗効果が得られないため好ましくない。より好ましくは0.10〜0.30重量部、更に好ましくは0.15〜0.25重量部の範囲である。
【0024】
ポリカーボネート樹脂(A)に対し、上記のパーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ(土類)金属塩化合物(B)、シリコーン化合物(C)をそれぞれ単独で配合するのみでは十分な透明性、難燃性を示さない。すなわち、ポリカーボネート樹脂(A)に対し、パーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ(土類)金属塩化合物(B)とシリコーン化合物(C)を配合することにより相乗的効果が得られ、ドリッピングを生じない自己消火性で、かつ高度な透明性を有するポリカーボネート樹脂フィルムを得られる。さらに環境面への影響にも十分配慮した透明性および難燃性に優れたポリカーボネート樹脂フィルムが提供できるのである。
【0025】
さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、各種の熱安定剤、酸化防止剤(リン系やフェノール系酸化防止剤)、紫外線吸収剤、着色剤、蛍光増白剤、離型剤、軟化材、帯電防止剤、展着剤(エポキシ大豆油、流動パラフィン等)等の添加剤、衝撃性改良材、他のポリマーを配合してもよい。熱安定剤としては、例えば硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、硫酸水素リチウム等の硫酸水素金属塩及び硫酸アルミニウム等の硫酸金属塩等が挙げられる。
【0026】
本発明のポリカーボネート樹脂フィルムに使用される各種配合成分の混合順番や混合方法には特に制限はなく、公知の混合機、例えばタンブラー、リボンブレンダー等による混合が可能であって、その混合物を通常の一軸または二軸押出機により容易に溶融混練することができる。
【0027】
本発明のポリカーボネート樹脂フィルムを成形する方法としては、特に制限はなく、公知のTダイ押出成形法、カレンダー成形法等を用いることができる。また、本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂フィルムの平均厚みは、200〜500μmである。平均厚みが200μm未満の場合には、難燃性が劣り好ましくない。また、500μmを超えると透明性が劣り好ましくない。より好ましくは、300〜400μmの範囲である。尚、当該厚みのシートであっても本発明のポリカーボネート樹脂フィルムの範疇に含まれる。
【実施例】
【0028】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はそれら実施例に制限されるものではない。尚、特に断りの無い限り、「部」は重量基準に基づく。
【0029】
表2〜3に示す配合成分、配合量に基づき、タンブラーを用いて各種配合成分を混合し、30mm径の二軸押出機(日本製鋼所社製 TEX−30α)を用いて、シリンダー温度280℃にて溶融混練し、各種樹脂組成物のペレットを得た。
【0030】
使用した配合成分は、それぞれ以下のとおりである。
ポリカーボネート樹脂:
住友ダウ社製カリバー200−3
(粘度平均分子量28000、以下「PC」と略記)
パーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ(土類)金属塩化合物:
バイエル社製バイオウエットC−4
(パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩、以下「PFBS塩」と略記)
【0031】
シリコーン化合物:(以下「シリコーン化合物」と略記)
シリコーン化合物は、一般的な製造方法に従って製造した。すなわち、適量のジオルガノジクロロシラン、モノオルガノトリクロロシランおよびテトラクロロシラン、あるいはそれらの部分加水分解縮合物を有機溶剤中に溶解し、水を添加して加水分解して、部分的に縮合したシリコーン化合物を形成し、さらにトリオルガノクロロシランを添加して反応させることによって重合を終了させ、その後、溶媒を蒸留等で分離した。上記方法で合成したシリコーン化合物の構造特性は、以下のとおり:
・主鎖構造のD/T/Q単位の比率:40/60/0(モル比)
・全有機官能基中のフェニル基の比率(*):60モル%
・末端基:メチル基のみ
・重量平均分子量(**):15000
*:フェニル基は、T単位を含むシリコーン中ではT単位にまず含まれ、残った場合がD単位に含まれる。D単位にフェニル基が付く場合、1個付くものが優先し、さらにフェニル基が残余する場合に2個付く。末端基を除き、有機官能基は、フェニル基以外は全てメチル基である。
**:重量平均分子量は、有効数字2桁。
【0032】
得られた各種樹脂組成物のペレットを、Tダイ押出機(田辺プラスチック製単軸40mm押出機)を用いて、溶融温度320℃の条件にてフィルム(幅300mm、平均厚み300μm)を作成した。得られたフィルムを用いて、透明性および難燃性の評価を行った。
【0033】
評価方法は、それぞれ下記のとおりである。
(透明性)
JIS K7105に準拠して、曇り度を測定した。曇り度が5%以下を合格とした。
【0034】
(難燃性)
前述のフィルム(厚み300μm)を幅50mm、長さ200mm、に切断し、温度23℃、湿度50%の恒温室の中で72時間放置し、アンダーライターズ・ラボラトリーズが定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼性試験)に準拠した難燃性の評価を行った。UL94VTM−0とは、鉛直に保持した所定の大きさの試験片にバーナーの炎を3秒間接炎した後の残炎時間やドリップ性から難燃性を評価する方法であり、以下のクラスに分けられる。
【0035】
【表1】

【0036】
表1に示す残炎時間とは、着火源を遠ざけた後の試験片が、有炎燃焼を続ける時間の長さであり、ドリップによる綿の着火とは、試験片の下端から約300mm下にある標識用の綿が、試験片からの滴下(ドリップ)物によって着火されるかどうかによって決定される。
評価の基準は、平均厚み300μmのフィルムにおいてVTM−1以上(すなわち、VTM−1またはVTM−0)を合格とした。
【0037】
曇り度および難燃性の評価結果をそれぞれ表2〜3に示した。
【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
実施例1〜7に示すように、本発明の構成要件を具備したものについては、フィルムの透明性および難燃性に優れていた。
【0041】
一方、比較例1〜7に示すように、本発明の構成要件を満たさない場合においては、何れも何らかの欠点を有していた。
比較例1では、金属塩化合物とシリコーン化合物が含まれていないため、難燃性が不合格となった。
比較例2は、シリコーン化合物が含まれていないため、透明性と難燃性が不合格となった。
比較例3は、シリコーン化合物の配合量が規定範囲より少ないため、透明性が不合格となった。
比較例4は、シリコーン化合物の配合量が規定範囲を超えているため難燃性が不合格となった。
比較例5は、金属塩化合物が含まれていないため、難燃性が不合格となった。
比較例6は、金属塩化合物の配合量が規定範囲の下限より少ないため、難燃性が不合格となった。
比較例7は、金属塩化合物の配合量が規定範囲を超えているため、透明性が不合格となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂(A)100重量部、パーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ(土類)金属塩化合物(B)0.10〜0.18重量部および主鎖が分岐構造でかつ含有する有機官能基が芳香族基からなるか、または芳香族基と炭化水素基(芳香族基を除く)とからなるシリコーン化合物(C)0.05〜0.35重量部からなる樹脂組成物を成形してなるポリカーボネート樹脂フィルムであって、
前記フィルムは、
(1)平均厚みが200〜500μmであり、かつ
(2)JIS K7105の条件にて測定された、曇り度が5%以下であり、かつ
(3)アンダーライターズ・ラボラトリ−ズ(UL)の定めるUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼性試験)にて測定された、厚み300μmにおける難燃性能がVTM−1またはVTM−0である、
ことを特徴とする透明性および難燃性に優れたポリカーボネート樹脂フィルム。
【請求項2】
パーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ(土類)金属塩化合物(B)がパーフルオロブタンスルホン酸のアルカリ金属塩であることを特徴とする請求項1記載の透明性および難燃性に優れたポリカーボネート樹脂フィルム。
【請求項3】
パーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ(土類)金属塩化合物(B)の配合量が、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部あたり0.13〜0.16重量部であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の透明性および難燃性に優れたポリカーボネート樹脂フィルム。
【請求項4】
主鎖が分岐構造でかつ含有する有機官能基が芳香族基からなるか、または芳香族基と炭化水素基(芳香族基を除く)とからなるシリコーン化合物(C)の配合量が、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部あたり0.10〜0.30重量部であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の透明性および難燃性に優れたポリカーボネート樹脂フィルム。
【請求項5】
主鎖が分岐構造でかつ含有する有機官能基が芳香族基からなるか、または芳香族基と炭化水素基(芳香族基を除く)とからなるシリコーン化合物(C)の配合量が、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部あたり0.15〜0.25重量部であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の透明性および難燃性に優れたポリカーボネート樹脂フィルム。

【公表番号】特表2010−529211(P2010−529211A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526422(P2009−526422)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【国際出願番号】PCT/JP2007/062466
【国際公開番号】WO2008/152741
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(396001175)住友ダウ株式会社 (215)
【Fターム(参考)】