説明

透明性樹脂組成物の製造方法

【課題】 従来から樹脂の混合方法として知られている溶融混練法等の混合方法に比べ、加熱溶融、剪断発熱等の熱履歴を抑えることが可能となり、品質、生産性に優れた透明性樹脂組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】 数平均分子量が1×10以上5×10以下であるN−フェニル置換マレイミド・オレフィン共重合体35〜55重量%とアクリロニトリル・スチレン共重合体65〜45重量%とからなる樹脂分を極性有機溶媒に溶解してなる透明性樹脂組成物溶液を横型密閉式連続式混錬機に供給し、極性有機溶媒を揮発分離する透明性樹脂組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−フェニル置換マレイミド・オレフィン共重合体及びアクロニトリル・スチレン共重合体からなる透明性樹脂組成物の製造方法に関するものであり、特に横型密閉式連続式混練機を用いることにより、N−フェニル置換マレイミド・オレフィン共重合体及びアクリロニトリル・スチレン共重合体からなる透明性樹脂組成物溶液、場合によっては未反応単量体、揮発性の副生成物、不純物等の揮発性成分をも含む透明性樹脂組成物溶液、から揮発性成分を除去し、効率よく品質に優れる透明性樹脂組成物を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より光学材料としては無機ガラスが使用されてきた。近年、成形性、軽量性に優れる透明樹脂が無機ガラスに代わる光学材料として使用されている。光学部品の樹脂化は、近年の光を利用した情報関連技術の発展を反映して、例えばLCDなどのフラットパネルディスプレイ用フィルム及びシート、バックライトの導光板、光ディスク、光ファイバー、光導波路などの分野で盛んに検討されている。また、光学以外の分野、例えば電気・電子分野、自動車分野、医療分野、食品包装分野、建設資材分野などでも透明樹脂は広く使用されている。
【0003】
このような透明樹脂として、N−置換マレイミド・オレフィン共重合体が透明性、耐熱性、表面硬度などに優れる樹脂として提案されている(例えば特許文献1参照。)。更に、N−置換マレイミド・オレフィン共重合体及びアクリロニトリル・スチレン共重合体からなる樹脂組成物が提案されており、力学的に混和性であることが開示されている(例えば特許文献2参照。)。また、揮発成分を含む流動状の重合体組成物をスクリュー式脱揮押出機に供給し、揮発分を除去し、重合体を回収する方法が提案されている(例えば特許文献3参照。)。
【0004】
【特許文献1】特許第3168466号公報
【特許文献2】特開昭62−100544号公報
【特許文献3】特開昭58−147332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、N−フェニル置換マレイミド・オレフィン共重合体及びアクリロニトリル・スチレン共重合体からなる透明性樹脂組成物を製造する際に、極性有機溶剤を含んでなる透明性樹脂組成物溶液から、安定的に生産効率よくN−フェニル置換マレイミド・オレフィン共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体からなる透明性樹脂組成物を製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、N−フェニル置換マレイミド・オレフィン共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含んでなる透明性樹脂組成物溶液から透明性樹脂組成物を得る際に、特定の機器を用いることにより、効率的に透明性樹脂組成物を製造することが可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は、下記一般式(I)で表されるN−フェニル置換マレイミド残基単位と下記一般式(II)で示されるα−オレフィン残基単位からなり、数平均分子量が1×10以上5×10以下であるN−フェニル置換マレイミド・オレフィン共重合体35〜55重量%とアクリロニトリル・スチレン共重合体65〜45重量%とからなる樹脂分を極性有機溶媒に溶解してなる透明性樹脂組成物溶液を横型密閉式連続式混錬機に供給し、極性有機溶媒を揮発分離することを特徴とする透明性樹脂組成物の製造方法に関するものである。
【0008】
【化1】

(I)
(ここで、R1、R2はそれぞれ独立して水素又は炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状アルキル基であり、R3、R4、R5、R6、R7はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、または炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状アルキル基である。)
【0009】
【化2】

(II)
(ここで、R8、R9、R10はそれぞれ独立して水素または炭素数1〜6のアルキル基である。)
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
本発明に用いられるN−フェニル置換マレイミド・オレフィン共重合体としては、上記一般式(I)で示されるN−フェニル置換マレイミド残基単位及び上記一般式(II)で示されるα−オレフィン残基単位からなる共重合体である。
【0011】
該N−フェニル置換マレイミド・オレフィン共重合体の数平均分子量は1×10以上5×10以下であり、数平均分子量が1×10未満である場合、得られる透明性樹脂組成物の成形加工が困難となると共に、透明性樹脂組成物は脆いものとなる。一方、数平均分子量5×10を越える場合、得られる透明性樹脂組成物の成形加工が困難となる。ここで、数平均分子量は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した溶出曲線より、標準ポリスチレン換算値として求めることができる。
【0012】
N−フェニル置換マレイミド・オレフィン共重合体を構成する式(I)で示されるN−フェニル置換マレイミド残基単位におけるR1、R2はそれぞれ独立して水素又は炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状アルキル基であり、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、n−ヘプチル基、2−ヘプチル基、3−ヘプチル基、n−オクチル基、2−オクチル基、3−オクチル基等を挙げることができる。また、R3、R4、R5、R6、R7はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、または炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状アルキル基であり、ハロゲンとしては、例えばフッ素、臭素、塩素、ヨウ素などを挙げることができ、カルボン酸エステル基としては、例えばメチルカルボン酸エステル、エチルカルボン酸エステルなどを挙げることができ、炭素数1〜8の直鎖状若くは分岐状アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、n−ヘプチル基、2−ヘプチル基、3−ヘプチル基、n−オクチル基、2−オクチル基、3−オクチル基などを挙げることができる。ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7が炭素数8を越えるアルキル基の場合、共重合体のガラス転移温度が著しく低下する、共重合体が結晶性となり透明性を損なうなどの問題がある。
【0013】
そして、一般式(I)で示されるN−フェニル置換マレイミド残基単位を誘導する化合物としては、例えばマレイミド化合物のN置換基として無置換フェニル基または置換フェニル基を導入したマレイミド化合物を挙げることができ、具体的にはN−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(2−エチルフェニル)マレイミド、N−(2−n−プロピルフェニル)マレイミド、N−(2−イソプロピルフェニル)マレイミド、N−(2−n−ブチルフェニル)マレイミド、N−(2−s−ブチルフェニル)マレイミド、N−(2−t−ブチルフェニル)マレイミド、N−(2−n−ペンチルフェニル)マレイミド、N−(2−t−ペンチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジメチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジ−n−プロピルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)マレイミド、N−(2−メチル−6−エチルフェニル)マレイミド、N−(2−メチル−6−イソプロピルフェニル)マレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−(2−ブロモフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジクロロフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジブロモフェニル)マレイミド、N−2−ビフェニルマレイミド、N−2−ジフェニルエーテルマレイミド、N−(2−シアノフェニル)マレイミド、N−(2−ニトロフェニル)マレイミド、N−(2,4−ジメチルフェニル)マレイミド、N−(2,4,6−トリメチルフェニル)マレイミド、N−パーブロモフェニルマレイミド、N−(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジエチル−4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、などを挙げることができ、その中でもN−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(2−エチルフェニル)マレイミド、N−(2−n−プロピルフェニル)マレイミド、N−(2−イソプロピルフェニル)マレイミド、N−(2−n−ブチルフェニル)マレイミド、N−(2−s−ブチルフェニル)マレイミド、N−(2−t−ブチルフェニル)マレイミド、N−(2−n−ペンチルフェニル)マレイミド、N−(2−t−ペンチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジメチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジ−n−プロピルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)マレイミド、N−(2−メチル−6−エチルフェニル)マレイミド、N−(2−メチル−6−イソプロピルフェニル)マレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−(2−ブロモフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジクロロフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジブロモフェニル)マレイミド、N−2−ビフェニルマレイミド、N−2−ジフェニルエーテルマレイミド、N−(2−シアノフェニル)マレイミド、N−(2−ニトロフェニル)マレイミドが好ましく、特に耐熱性、透明性、力学特性に優れる共重合体が得られることからN−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミドであることが好ましい。また、N−フェニル置換マレイミド残基単位は1種または2種以上組み合わされたものでもよく、その比率はとくに制限はない。
【0014】
N−フェニル置換マレイミド・オレフィン共重合体を構成する上記一般式(II)で示されるα−オレフィン残基単位におけるR8、R9、R10はそれぞれ独立して水素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、炭素数1〜6のアルキル基としては例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基等を挙げることができる。ここで、R8、R9、R10が炭素数6を越えるアルキル置換基である場合、共重合体のガラス転移温度が著しく低下する、共重合体が結晶性となり透明性を損なうなどの問題がある。そして、一般式(II)で示されるα−オレフィン残基単位を誘導する具体的な化合物としては、例えばイソブテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ヘキセン、2−メチル−1−ヘプテン、1−イソオクテン、2−メチル−1−オクテン、2−エチル−1−ペンテン、2−メチル−2−ペンテン、2−メチル−2−ヘキセン、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンなどが挙げられ、その中でも1,2−ジ置換オレフィン類に属するα−オレフィンが好ましく、特に耐熱性、透明性、力学特性に優れる共重合体が得られることからイソブテンであることが好ましい。また、α−オレフィン残基単位は1種または2種以上組み合わされたものでもよく、その比率は特に制限はない。
【0015】
N−フェニル置換マレイミド・オレフィン共重合体は、上記一般式(I)で示されるN−フェニル置換マレイミド残基単位を誘導する化合物および上記一般式(II)で示されるα−オレフィン残基単位を誘導する化合物を公知の重合法を利用することにより得ることができる。公知の重合法としては、例えば塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などを挙げることができ、その中でも透明性、色調に優れる透明性樹脂組成物が得られることから溶液重合法により得られるものであることが好ましい。
【0016】
重合反応の際に用いる重合開始剤としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−ブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等のアゾ系開始剤等が挙げられる。
【0017】
溶液重合法、沈殿重合法において用いられる溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール系溶媒;シクロヘキサン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、酢酸イソプロピル、芳香族系溶媒とアルコール系溶媒の混合溶媒などが挙げられる。重合温度は、重合開始剤の分解温度に応じて適宜設定することができ、一般的には40〜150℃の範囲で行うことが好ましい。
【0018】
また、別法として、上記一般式(II)で示されるα−オレフィン残基単位を誘導する化合物と無水マレイン酸とを共重合することにより得られた共重合体に、さらに例えばアニリン、2〜6位に置換基を導入したアニリンを反応し、脱水閉環イミド化反応を行うことにより得ることもできる。
【0019】
N−フェニル置換マレイミド・オレフィン共重合体としては、上記一般式(I)で示されるN−フェニル置換マレイミド残基単位および上記一般式(II)で示されるα−オレフィン残基単位からなる共重合体であり、例えばN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体、N−フェニルマレイミド・エチレン共重合体、N−フェニルマレイミド・2−メチル−1−ブテン共重合体、N−(2−メチルフェニル)マレイミド・イソブテン共重合体、N−(2−メチルフェニル)マレイミド・エチレン共重合体、N−(2−メチルフェニル)マレイミド・2−メチル−1−ブテン共重合体、N−(2−エチルフェニル)マレイミド・イソブテン共重合体、N−(2−エチルフェニル)マレイミド・エチレン共重合体、N−(2−エチルフェニル)マレイミド・2−メチル−1−ブテン共重合体などが挙げられ、その中でも特に耐熱性、透明性、力学特性にも優れるものとなることから、N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体、N−(2−メチルフェニル)マレイミド・イソブテン共重合体が好ましい。
【0020】
本発明に用いられるアクリロニトリル・スチレン共重合体は、力学特性、成形加工性に優れた透明性樹脂組成物が得られることから重量平均分子量が5×10以上5×10以下であることが好ましく、その際の重量平均分子量はゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(GPC)による共重合体の溶出曲線を標準ポリスチレン換算値として測定することができる。また、本発明に用いられるアクリロニトリル・スチレン共重合体としてはスチレン残基単位の一部または全部をα−メチルスチレン残基単位としたアクリロニトリル・スチレン系共重合体を用いることもできる。
【0021】
本発明に用いられるアクリロニトリル・スチレン共重合体の合成方法としては、公知の重合法が利用でき、例えば塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などにより製造することが可能である。また、市販品として入手したものであってもよい。
【0022】
本発明の透明性樹脂組成物の製造方法においては、透明性樹脂組成物溶液を構成する樹脂分はN−フェニル置換マレイミド・オレフィン共重合体35〜55重量%及びアクリロニトリル・スチレン共重合体65〜45重量%からなるものである。ここで、N−フェニル置換マレイミド・オレフィン共重合体が35重量%未満である場合、得られる透明性樹脂組成物は耐熱性に劣るものとなる。一方、55重量%を越える場合、得られる透明性樹脂組成物は、成形加工性に劣るものとなる。
【0023】
本発明に用いられる極性有機溶媒としては、N−フェニル置換マレイミド・オレフィン共重合体及びアクリロニトリル・スチレン共重合体を溶解する溶媒であれば如何なるものでもよく、例えばクロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系溶媒;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒;アセトン、エチルメチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;プロピオノニトリル、ジメチルスルフォキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の溶媒が挙げられる。
【0024】
また、透明性樹脂組成物溶液としては、N−フェニル置換マレイミド・オレフィン共重合体及びアクリロニトリル・スチレン共重合体からなる透明性樹脂組成物を極性有機溶媒に溶かした溶液のみならず、N−フェニル置換マレイミド・オレフィン共重合体の製造時に得られる重合溶液にアクリロニトリル・スチレン共重合体を溶解させた透明性樹脂組成物溶液等も挙げることができ、該溶液は例えば未反応単量体、揮発性の副生物または不純物、等をも含むものであってもよい。
【0025】
本発明の透明性樹脂組成物の製造方法においては、透明性樹脂組成物溶液とすることにより、より効率的にN−フェニル置換マレイミド・オレフィン共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体の混合を行うことが可能となるとともに、溶融混練法等の混合方法に比べ、加熱、剪断発熱等の熱履歴を抑えることが可能となり、その結果より品質に優れた透明性樹脂組成物を製造することができる。
【0026】
本発明の透明性樹脂組成物の製造方法は、効率的に品質に優れる透明性樹脂組成物を製造するために、該透明性樹脂組成物溶液を横型密閉式連続式混練機に供し、極性有機溶媒を揮発分離するものである。
【0027】
図1に本発明の実施に適した横型密閉式連続式混錬機の一例を示す。ここで、1は横型密閉式連続式混錬機、2は供給口、3はベント口、4は排出口、5は熱媒出口、6はパドル駆動部、7は溶液貯蔵タンク、8は熱媒入口、9a〜9dはシリンダー、10はジャケット熱媒バイパスラインを示す。該横型密閉式連続式混錬機は、シリンダーが複数のエリアから構成されており、それぞれのエリアがジャケットに熱媒を流通させることで個別に温度制御することが可能となっており、これによりN−フェニル置換マレイミド・オレフィン共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体からなる透明性樹脂組成物製造時の細かな制御が可能となるものである。なお、このような横型密閉式連続式混錬機としては、例えば二軸同方向かみ合型混錬機(栗本鐵工所製、商品名S5KRCニーダ)等を挙げることができる。
【0028】
本発明の製造方法においては、極性有機溶媒を揮発除去した透明性樹脂組成物がベント口に吸い込まれることにより製造効率を低下させることがなく、安定的に透明性樹脂組成物を製造することが可能となることから、混錬物の流れに対し供給口よりも上流にベント口を有する横型密閉式連続式混錬機を用いることが好ましい。また、透明性樹脂組成物溶液の供給の際の効率、溶媒の揮発効果に優れ、生産効率に優れる透明性樹脂組成物の製造方法となることから、該横型密閉式連続式混錬機の供給口を大気圧又は減圧下に維持することが好ましく、更にベント口は300〜760mmHgの圧力とすることが好ましく、特に400mmHg以下とすることが好ましい。そして、供給口に透明性樹脂溶液を供給する際には、供給口における極性有機溶媒の揮発により混練機へのかみこみが悪化し、生産効率が低下することを防止するために、供給口を極性有機溶媒の沸点±50℃の範囲に維持することが好ましい。
【0029】
また、本発明の製造方法においては、特に透明性樹脂組成物溶液を供給する際の効率、溶媒の揮発効果に優れ、生産効率よく透明性樹脂組成物を製造することが可能となることから、樹脂(透明性樹脂組成物)分濃度が10〜50重量%の透明性樹脂組成物溶液を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明の透明性樹脂組成物の製造方法は、透明性樹脂組成物溶液とすることにより、より効率的にN−フェニル置換マレイミド・オレフィン共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体の混合を行うことが可能となる。また、従来から樹脂の混合方法として知られている溶融混練法等の混合方法は、加熱溶融、剪断発熱等の熱履歴により樹脂の劣化が発生しやすく、その傾向は本発明の目的であるN−フェニル置換マレイミド・オレフィン共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体のような溶融温度、分解温度が著しく異なる樹脂同士の混練において顕著であり、本発明は加熱溶融、剪断発熱等の熱履歴を抑えることが可能となることから品質に優れた透明性樹脂組成物を製造することができる。
【実施例】
【0031】
以下に、本発明を実施例にて具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0032】
〜数平均分子量及び重量平均分子量の測定〜
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)社製、商品名HLC−802A)を用いて測定した溶出曲線により、標準ポリスチレン換算値として数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定した。
【0033】
〜ガラス転移温度の測定〜
示差走査型熱量計(セイコー電子工業(株)製、商品名DSC220)を用いて、10℃/分の昇温速度にて測定した。
【0034】
実施例1
撹拌機、窒素導入管、温度計及び脱気管の付いたオートクレーブにN−フェニルマレイミド3600gに対し、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシピバレート9.2g、重合溶媒としてエチルメチルケトン22500gを仕込み、窒素で数回パージした後、液化イソブテン2084mlを仕込み、60℃で8時間反応を行った。
【0035】
重合溶液の一部よりポリマーを回収し、N−フェニルマレイミド残基単位/イソブテン残基単位=60/40(モル比)を有するN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体であることを確認した。また、該N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の数平均分子量(Mn)は15×10であり、ガラス転移温度は220℃であった。
【0036】
そして、重合反応終了後のN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体/エチルメチルケトン溶液に、さらにアクリロニトリル・スチレン共重合体(ダイセルポリマー製、商品名セビアンAS080)5826gを溶解し、樹脂分濃度32重量%の透明性樹脂組成物溶液(N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体/アクリロニトリル・スチレン共重合体=45/55(重量%))を調製した。
【0037】
該透明性樹脂組成物溶液を横型密閉式連続式混錬機である二軸同方向かみ合型混錬機(栗本鐵工所製、商品名S5KRCニーダ42号機;スクリュー径(D)125mm、シリンダー長さ(L)1250mm、L/D=10、ベント数1)に毎時20kgの割合で供給し、極性有機溶媒であるエチルメチルケトン等の揮発成分をベント口より揮発分離することにより、N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体及びアクリロニトリル・スチレン共重合体からなる透明性樹脂組成物を得た。その際の二軸同方向かみ合型混練機の運転条件は、スクリュー回転数54rpm、内部温度を200℃、供給口圧力675Torr、供給口温度35℃、ベント口圧力350Torrであった。
【0038】
透明性樹脂組成物中に10mm以上の巨大粒子は観察されず、安定的に生産効率よく製造することが可能であった。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】;横型密閉式連続式混錬機の概略図である。
【符号の説明】
【0040】
1;横型密閉式連続式混錬機
2;供給口
3;ベント口
4;排出口
5;熱媒出口
6;パドル駆動部
7;溶液貯蔵タンク
8;熱媒入口
9a〜9d;シリンダー
10;ジャケット熱媒バイパスライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるN−フェニル置換マレイミド残基単位と下記一般式(II)で示されるα−オレフィン残基単位からなり、数平均分子量が1×10以上5×10以下であるN−フェニル置換マレイミド・オレフィン共重合体35〜55重量%とアクリロニトリル・スチレン共重合体65〜45重量%とからなる樹脂分を極性有機溶媒に溶解してなる透明性樹脂組成物溶液を横型密閉式連続式混錬機に供給し、極性有機溶媒を揮発分離することを特徴とする透明性樹脂組成物の製造方法。
【化1】

(I)
(ここで、R1、R2はそれぞれ独立して水素又は炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状アルキル基であり、R3、R4、R5、R6、R7はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、または炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状アルキル基である。)
【化2】

(II)
(ここで、R8、R9、R10はそれぞれ独立して水素または炭素数1〜6のアルキル基である。)
【請求項2】
樹脂分濃度が10〜50重量%の透明性樹脂組成物溶液であることを特徴とする請求項1に記載の透明性樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
大気圧又は減圧下に維持された供給口を有し、かつ混錬物の流れに対し、該供給口よりも上流にベント口を有する横型密閉式連続式混錬機を用いることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の透明性樹脂組成物の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−16183(P2007−16183A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−201196(P2005−201196)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】