説明

透明石鹸組成物の製造方法及び透明石鹸の製造方法

【課題】 二軸混練押出し機を用いた機械練り法で、工程が複雑になることなく、透明度が高く、しかもバラツキなく安定した透明度で、透明石鹸を製造することができる透明石鹸組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】 二軸混練押出し機1のバレル2に、脂肪酸石鹸3を押出し方向の基部側の位置において、透明化剤4を押出し方向の先部側の位置において、それぞれ個別に連続的に供給しながら、脂肪酸石鹸3と透明化剤4をバレル2内の二軸の混練スクリュー5で混練して押出す。脂肪酸石鹸3と透明化剤4が分離するようなことなく均一な状態で混練することができ、透明度が高く、しかもバラツキなく安定した透明度で透明石鹸組成物を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械練り法による透明石鹸組成物の製造方法及び透明石鹸の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
透明石鹸は、脂肪酸石鹸を基材とし、またショ糖、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコールあるいはその他のポリオールなどを透明化剤として用い、脂肪酸石鹸に透明化剤を混合して透明石鹸組成物を調製し、この透明石鹸組成物を成形することによって製造されている。そして透明石鹸を製造する方法としては、一般に枠練り法と機械練り法の二通りの製造法が知られている。
【0003】
枠練り法は、脂肪酸石鹸と透明化剤をエタノール等の低級アルコールと水の混合溶液など溶媒に加熱溶解した後、冷却固化し、1〜3ヶ月間熟成乾燥した後に、所定形状に型打ちすることによって製品を得る方法である(例えば、特許文献1等参照)。この枠練り法で製造された透明石鹸は、透明性は優れているものの、製造に長時間を要するために生産効率が悪く、また長期間熟成放置するために広い場所が必要となる等の問題があり、さらに品質面において、高温多湿雰囲気では透明石鹸が溶け崩れたり、あるいは寒冷下では透明石鹸に亀裂が生じたりするなどの問題がある。
【0004】
一方、機械練り法は、脂肪酸石鹸と透明化剤を混練するにあたって、低級アルコールと水の混合溶液などの溶媒を用いず、脂肪酸石鹸に透明化剤を加えた後に、機械的な力で脂肪酸石鹸の結晶を微細化して透明性を出すようにしたものであり、生産効率が高く、熟成放置を行なうことも不要になるという利点がある。このような機械練り法では、結晶を微細化して脂肪酸石鹸と透明化剤とを混練することが必要であるので、特殊なキャビティ構造を持った一軸混練押出し機を用いる方法(特許文献2参照)や、二軸混練押出し機を用いる方法(特許文献3参照)が、提案されている。
【特許文献1】特公昭45−18984号公報
【特許文献2】特開昭58−208399号公報
【特許文献3】特開昭64−200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、機械練り法では、枠練り法によるものと比較すると、透明度が悪く、商品価値の低い透明石鹸しか得ることができないのが現状であり、またロット内あるいはロット間での石鹸の透明度に大きなバラツキが生じるという問題があった。
【0006】
機械練り法では、脂肪酸石鹸と透明化剤とを一旦混合し、この混合物を混練押出し機に投入して混練を行なうようにしているが、機械練り法による上記の問題の原因は、この方法自身にあると考えられる。
【0007】
すなわち、脂肪酸石鹸は径が3〜8mm、長さが15〜25mmの粒状であるものが一般的であり、一方、透明化剤はその殆どが液状であり、両者を混合すると、脂肪酸石鹸の表面が透明化剤でベタベタして取り扱い難い配合物となり、混練押出し機に投入することが困難になる。このため、脂肪酸石鹸に対する透明化剤の添加量が自ずと制限され、目的とする透明性を確保することができなくなるのである。また多量の透明化剤を配合する場合、取り扱いがより困難になるだけでなく、脂肪酸石鹸と透明化剤が固液分離し易く、均一な混練が困難になって均一な組成の透明石鹸組成物を得ることができなくなり、ロット内あるいはロット間の透明石鹸の透明性にバラツキが生じることになるものである。
【0008】
このような問題に対処するために、脂肪酸石鹸と透明化剤との混合物を加熱溶融してニートソープ化した後、あるいは三本ロールなどを用いて機械的に均一混合した後、混練押出し機に投入する方法が提案されているが、これらの方法は工程が複雑になると共に、コストアップに直接繋がるので、実用的であるとはいえない。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、二軸混練押出し機を用いた機械練り法で、工程が複雑になることなく、透明度が高く、しかもバラツキなく安定した透明度で、透明石鹸を製造することができる透明石鹸組成物の製造方法及び透明石鹸の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係る透明石鹸組成物の製造方法は、二軸混練押出し機1のバレル2に、脂肪酸石鹸3を押出し方向の基部側の位置において、透明化剤4を押出し方向の先部側の位置において、それぞれ個別に連続的に供給しながら、脂肪酸石鹸3と透明化剤4をバレル2内の二軸の混練スクリュー5で混練して押出すことを特徴とするものである。
【0011】
この発明によれば、押出し方向の基部側の位置においてバレル2に投入される脂肪酸石鹸3の固形粒子を二軸の混練スクリュー5で潰しながら、押出し方向の先部側の位置においてバレル2に投入される液状の透明化剤4を混合することができ、脂肪酸石鹸3と透明化剤4を個別に取り扱い性の良い状態で二軸混練押出し機1に投入することができると共に、脂肪酸石鹸3と透明化剤4が分離するようなことなく均一な状態で混練することができるものであり、脂肪酸石鹸3に対して必要量の透明化剤4を均一に混練することができ、透明度が高く、しかもバラツキなく安定した透明度で透明石鹸組成物を得ることができるものである。
【0012】
また請求項2の発明は、請求項1において、二軸混練押出し機1のバレル2から混練して押出された上記の混練物8を押出し方向の基部側の位置において、透明化剤4を押出し方向の先部側の位置において、それぞれ個別に二軸押出し機1のバレル2に連続的に供給しながら、混練物8と透明化剤4をバレル2内の二軸の混練スクリュー5で混練して押出すことを特徴とするものである。
【0013】
この発明によれば、上記のように二軸押出し機1で混練して押出した脂肪酸石鹸3と透明化剤4の混練物8を、脂肪酸石鹸3の代りにバレル2に投入して、二軸混練押出し機1で透明化剤4と再度混練することによって、より均一に透明化剤4を混合することが可能になり、透明性を一層高めることができるものである。
【0014】
また請求項3の発明は、請求項1又は2において、香料、保湿剤、着色剤、キレート剤から一種以上選ばれる添加剤7を二軸混練押出し機1のバレル2に連続的に供給しながら、上記の混練・押出しを行なうことを特徴とするものである。
【0015】
この発明によれば、二軸の混練スクリュー5で混練を行ないながら、各種の添加剤7を均一に混合することができるものである。
【0016】
本発明の請求項4に係る透明石鹸の製造方法は、請求項1乃至3のいずれかの方法で二軸混練押出し機1から押出された透明石鹸組成物6を、所定形状に成形することを特徴とするものである。
【0017】
この発明によれば、上記のようにして、透明度が高く、しかもバラツキなく安定した透明度で調製した透明石鹸組成物6から、透明度が高く且つ安定した透明度の透明石鹸を得ることができるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、押出し方向の基部側の位置においてバレル2に投入される脂肪酸石鹸3の固形粒子を二軸の混練スクリュー5で潰しながら、押出し方向の先部側の位置においてバレル2に投入される液状の透明化剤4を混合することができ、脂肪酸石鹸3と透明化剤4を個別に取り扱い性の良い状態で二軸混練押出し機1に投入することができると共に、脂肪酸石鹸3と透明化剤4が分離するようなことなく均一な状態で混練することができるものであり、脂肪酸石鹸3に対して必要量の透明化剤4を均一に混練することができ、透明度が高く、しかもバラツキなく安定した透明度で透明石鹸組成物を得ることができるものである。
【0019】
従って、機械的な剪断力を加えて結晶を微細化することによって透明性を出す、二軸混練押出し機を用いた機械練り法で、脂肪酸石鹸と透明化剤を事前に加熱溶融したり機械混合したりするような煩わしく複雑な工程を必要とすることなく、透明度が高く且つ安定した透明度の透明石鹸を製造することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0021】
図1は本発明に用いる装置の一例を示すものであり、二軸混練押出し機1はバレル2内に平行な二軸の混練スクリュー5を配置することによって形成されるものであって、二軸の混練スクリュー5は後端の電動機など駆動装置11で同期回転駆動されるようになっている。本発明では、二軸混練押出し機1として、二軸の混練スクリュー5が図2のように完全に噛み合って同方向に回転する噛合い型同方向回転二軸押出し機を用いるのが好ましい。二軸の混練スクリュー5としては、図2に図示するような螺旋スクリューの他に、ニーディングディスクやロータセグメントなどを設け、混練効果を高めるようにしたものを用いることができる。
【0022】
バレル2の上面には、押出し方向に対する基部側の端部の位置においてホッパー12が設けてあり、このホッパー12より押出し方向での先部側の位置において液注入口13が設けてある。またバレル2の上面には、この液注入口13よりさらに押出し方向での先部側の位置において第二注入口14が設けてあり、この第二注入口14よりさらに押出し方向での先部側の位置において真空ベント15が設けてある。真空ベント15には真空ポンプなど真空装置16が接続してある。そしてバレル2の先端には押出し口17が設けてある。
【0023】
ここで、バレル2のうち、ホッパー12の位置(バレル2へのホッパー12の開口中心位置)から混練スクリュー5の先端までの間の範囲が混練・押出し部19となるが、液注入口13は、この混練・押出し部19の始点19aと終点19bの中間点よりホッパー12の側の位置に設置するのが好ましく、始点19aから始点19aと終点19bとの間の距離の1/3以内に設置するのがより好ましい。
【0024】
そして本発明において、脂肪酸石鹸としては特に限定されるものではないが、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、牛脂脂肪酸など動植物由来の炭素数が8〜22の直鎖又は分岐の脂肪酸から構成される脂肪酸塩を用いることができる。塩を形成するためのアルカリとしては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アルカノールアミン、塩基性アミノ酸やこれらの混合物を用いることができる。
【0025】
また透明化剤についても、特に制限されることなく用いることができるが、例えば、水、ショ糖、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコールあるいはその他のポリオールなど、従来から使用されている各種の化合物を、単独であるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0026】
しかして、この脂肪酸石鹸3と透明化剤4を用いて、上記の二軸混練押出し機1で透明石鹸組成物を調製するにあたっては、二軸の混練スクリュー5を所定の速度で回転させながら、脂肪酸石鹸3をホッパー12から、透明化剤4を液注入口13から、それぞれバレル2に供給する。ここで、脂肪酸石鹸3は通常、直径3〜8mm、長さ15〜25mmの円柱状の粒状物(チップ状物)であるので、スクリュー式フィーダーなどの定量供給機21を用いて、時間当たり所定の一定量で連続的にホッパー12に投入するようにしてあり、また透明化剤4は通常、液状であるので、定量供給ポンプ22を用いて、時間当たり所定の一定量で液注入口13に供給するようにしてある。脂肪酸石鹸3と透明化剤4は同期してバレル2に供給されるものであるが、脂肪酸石鹸3と透明化剤4のそれぞれの供給量は、脂肪酸石鹸3が100質量部に対して、透明化剤4が5〜40質量部の範囲、より望ましくは10〜35質量部の範囲になるように設定するのが好ましい。
【0027】
このように脂肪酸石鹸3を二軸押出し機1のバレル2に供給するにあたって、脂肪酸石鹸3は透明化剤4と混合されていずベタベタした状態ではなく、流動し易い粒状であるので、ホッパー12からバレル2内に脂肪酸石鹸3をスムーズに投入して供給することができるものである。またホッパー12はバレル2の基部の側に位置しているので、ホッパー12からバレル2内に供給された脂肪酸石鹸3は、まず単独で、二軸の混練スクリュー5による剪断作用を受けてすり潰される。そして液注入口13はホッパー12より押出し方向の先部側に位置しているので、このようにすり潰された状態で送られてきた脂肪酸石鹸3に液状の透明化剤4が練り合わされるように混合されることになり、脂肪酸石鹸3に透明化剤4を均一に混合することができるものである。
【0028】
このようにしてバレル2内で混合された脂肪酸石鹸3と透明化剤4は、混練されながらバレル2内を押出し口17の方向に送られるが、二軸の混練スクリュー5によって脂肪酸石鹸3と透明化剤4の混合物に機械的な剪断力を掛けて、結晶を微細化することができるものであり、透明性に優れた混練物を得ることができるものである。そしてこの混練物をバレル2の先端の押出し口17から押出すことによって、透明性が高く、しかも透明化剤4が均一に混合されていて透明性にバラツキのない透明石鹸組成物6を得ることができるものである。
【0029】
上記のように脂肪酸石鹸3と透明化剤4を個別にバレル2に定量的に供給して二軸混練押出し機1で混練する際に、さらに必要に応じて、これらの脂肪酸石鹸3と透明化剤4とは別に添加剤7を第二注入口14から供給することによって、添加剤7を配合した透明石鹸組成物6を得ることができる。このようにバレル2内で脂肪酸石鹸3と透明化剤4を混練しながら添加剤7を添加することによって、微量成分の添加剤7を透明石鹸組成物6に均一に混合することができるものである。添加剤7としては、例えば、香料、保湿剤、着色剤、キレート剤から選ばれる一種以上のものを用いることができる。またこの他に、固形石鹸に通常用いられる成分、例えば、過脂剤、動植物抽出エキス類、体質顔料、紫外線吸収剤、殺菌剤、抗炎症剤などを併用することもできる。
【0030】
上記のようにして、バレル2の先端の押出し口17から棒状に押出される透明石鹸組成物6を型打ち機24に通して、所定の寸法・形状に型打ちして成形することによって、固形の透明石鹸Aを得ることができるものである。ここで、上記のように二軸混練押出し機1のバレル2には真空ベント15が設けてあり、バレル2内を減圧して混練物中に含まれる空気を脱気することによって、締まりの良い、気泡を含有しない、より高品位の透明石鹸Aを得ることができるものである。
【0031】
尚、二軸混練押出し機1で混練して棒状に押出した透明石鹸組成物6を、上記のようにそのまま型打ち成形することによって透明石鹸Aを製造することができるが、二軸混練押出し機1から押出された透明石鹸組成物6を粗砕し、これを化粧石鹸製造用に使用される通常の押出し機に投入して棒状に押出し、これを型打ち成形して透明石鹸Aを製造するようにしてもよい。
【0032】
図3は本発明の他の実施の形態を示すものである。上記のように、脂肪酸石鹸3と透明化剤4を二軸混練押出し機1で混練押出しすることによって、脂肪酸石鹸3と透明化剤4及び必要に応じて配合される添加剤7の混練物8を得ることができるものであり、上記図1の実施の形態ではこの混練物8を透明石鹸組成物6として、透明石鹸Aの成形に用いるようにしたが、図3の実施の形態では、この混練物8を再度、二軸混練押出し機1に通して、透明化剤4と混合しながらさらに混練することによって、より透明性の高い透明石鹸組成物6を調製することができるようにしたものである。この場合、二軸混練押出し機1の押出し口17から上記のように押出された混練物8は粒状にして、二軸混練押出し機1に供給されるものであり、二軸混練押出し機1の押出し口17から混練物8を押出した後に粗砕して粒状にするようにしてもよく、あるいは押出し口17に孔明きのブレーカープレートを設け、混練物8をヌードル状に押出してカットすることによって粒状にするようにしてもよい。
【0033】
そして脂肪酸石鹸3の代りに粒状の混練物8を定量供給機21で、時間当たり所定の一定量で連続的にホッパー12に投入すると共に、透明化剤4を定量供給ポンプ22で、時間当たり所定の一定量で液注入口13に供給する。このように混練物8と透明化剤4を二軸混練押出し機1に供給することによって、図1の実施の形態の場合と同様にして、バレル2内で混練物8に透明化剤4を均一に混合することができると共に二軸の混練スクリュー5によって混練物8と透明化剤4を混練することができるものである。このとき必要に応じて上記と同様に、添加剤7をさらに添加することもできる。
【0034】
このように脂肪酸石鹸3と透明化剤4との混練物8を二軸混練押出し機1に再度通し、透明化剤4を混合しながら混練することによって、透明性がより高くなる理由は明確ではないが、次のように推察される。すなわち、脂肪酸石鹸3に剪断を加えて結晶を微細化することによって透明化するためには、一定量の透明化剤4が共存することが必要であるが、透明性を得るには透明化剤4は共存するだけでなく、脂肪酸石鹸3の分子間に均一に透明化剤4が入り込む必要がある。そして一般に透明化剤4は脂肪酸石鹸3と相溶性のあるものが多いが、機械的な混練では脂肪酸石鹸3の分子間隙にまで均一に入り込むことは難しい。これに対して、脂肪酸石鹸3と透明化剤4を二軸混練押出し機1で混練した後、この混練物8にさらに透明化剤4を混合して二軸混練押出し機1で混練するようにすると、一度目の混練によって透明化剤4で脂肪酸石鹸3を膨潤させて脂肪酸石鹸3の分子間隙を広げ、二度目以降に添加された透明化剤4が脂肪酸石鹸3の分子間隙に取り込まれ易くなり、この結果、透明化剤4が脂肪酸石鹸3の分子間隙にまで均一に入り込み、透明性がより高くなるものと推察されるものである。
【0035】
二軸混練押出し機1から押出された混練物8を、上記のように二軸混練押出し機1に再度通して混練することによって、透明石鹸組成物6を得ることができるものであり、バレル2の先端の押出し口17から棒状に押出される透明石鹸組成物6を型打ち機24に通して、所定の寸法・形状に型打ちして成形することによって、固形の透明石鹸Aを得ることができるものである。ここで、混練物8を二軸混練押出し機1に通す回数は、一回であってもよいが、複数回通すようにしてもよい。二軸混練押出し機1に通す回数を多くすることによって、得られる透明石鹸組成物6の透明性をより高めることができるものである。またこのように混練物8を二軸混練押出し機1に通して透明石鹸組成物6を調製する場合、二軸混練押出し機1への透明化剤4の供給量は複数回に分けて行なわれることになるので、脂肪酸石鹸3に対する透明化剤4の配合総量を多くすることができ、透明化剤4の増量によっても透明性を高めることができるものである。
【実施例】
【0036】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0037】
(実施例1)
二軸混練押出し機1として、神戸製鋼株式会社製「HYPERKTX 85XHT−SS」(混練スクリュー5…形式:完全噛合い、回転方向:同方向、呼称径:85mm、噛合率:1.62、構成方式:セグメント方式、長径比(L/D):43.2)を用いた。
【0038】
そしてこの二軸混練押出し機1の混練スクリュー5を60rpmで回転駆動しながら、パーム油・パーム核油脂肪酸石鹸3を定量供給機21から二軸混練押出し機1のホッパー12に、1時間当たり150kgの量で定量且つ連続的に投入し、またこの供給と同期させて、グリセリン15質量%、ソルビトール19質量%、水51質量%、オレイン酸15質量%の組成の透明化剤4を定量供給ポンプ22から二軸押出し機1の液注入口13に、1時間当たり29.5kgの量で定量且つ連続的に投入した。
【0039】
脂肪酸石鹸3が二軸混練押出し機1に投入されてから押出し口17から押出されるまでのバレル2内での滞留時間は2分30秒であり、60℃に温度設定した押出し口17から押出されてきた棒状の透明石鹸組成物6を型打ちして成形することによって、縦35mm×横65mm×厚さ15mmの透明石鹸Aを得た(図1参照)。
【0040】
(実施例2)
実施例1において、脂肪酸石鹸3と透明化剤4の投入に同期させて、香料と保湿剤(アロエベラエキス)を1時間当たり1.5kgと0.15kgの量で定量且つ連続的に投入するようにした。その他は実施例1と同様にして、縦35mm×横65mm×厚さ15mmの透明石鹸Aを得た(図1参照)。
【0041】
(実施例3)
実施例1において二軸混練押出し機1の押出し口17から押出されてきた棒状の組成物を8mm×8mm×20mmのチップ状に粗砕して混練物8とした。そして、二軸混練押出し機1の混練スクリュー5を70rpmで回転駆動しながら、この混練物8を定量供給機21から二軸混練押出し機1のホッパー12に、1時間当たり200kgの量で定量且つ連続的に投入し、またこの供給と同期させて、グリセリン18質量%、ソルビトール22質量%、水60質量%の組成の透明化剤4を定量供給ポンプ22から二軸押出し機1の液注入口13に、1時間当たり16.67kgの量で定量且つ連続的に投入した。
【0042】
混練物8が二軸混練押出し機1に投入されてから押出し口17から押出されるまでのバレル2内での滞留時間は2分20秒であり、55℃に温度設定した押出し口17から押出されてきた棒状の透明石鹸組成物6を型打ちして成形することによって、縦35mm×横65mm×厚さ15mmの透明石鹸Aを得た(図3参照)。
【0043】
(実施例4)
実施例3において、二軸混練押出し機1の押出し口17にブレーカープレートを取り付け、混練物8と透明化剤4の投入に同期させて、香料と保湿剤(アロエベラエキス)を1時間当たり2.0kgと0.2kgの量で定量且つ連続的に投入するようにした。
【0044】
混練物8が二軸混練押出し機1に投入されてから押出し口17から押出されるまでのバレル2内での滞留時間は2分20秒であり、55℃に温度設定した押出し口17のブレーカープレートからヌードル状に押出されてきた透明石鹸組成物6をカットして、直径6mm、長さ20mmにチップ化した。そしてこのチップ状の透明石鹸組成物6を、化粧石鹸の製造に使用される通常の一軸混練押出し機に投入して、温度45℃の押出し口から棒状に押出し、これを型打ちして成形することによって、縦35mm×横65mm×厚さ15mmの透明石鹸Aを得た(図3参照)。
【0045】
(比較例1)
パドルミキサーに実施例1と同様な脂肪酸石鹸3を150kg量り込み、これに実施例1と同様な組成の透明化剤4を29.5kg加えて攪拌混合した。
【0046】
そしてこの脂肪酸石鹸3と透明化剤4の混合物を二軸混練押出し機1のホッパー12に定量供給機21から1時間当たり150kgの量で定量且つ連続的に投入した。しかし、ホッパー12内で混合物がブリッジ現象を起こして、二軸混練押出し機1のバレル2内に混合物を定量且つ連続的に送り込むことができず、60℃に温度設定した押出し口17から非定量、非連続に透明石鹸組成物6が押出された。押出された棒状の透明石鹸組成物6を型打ちして成形することによって、縦35mm×横65mm×厚さ15mmの透明石鹸Aを得た。
【0047】
(比較例2)
牛脂とヤシ油が8:2の質量比の脂肪酸石鹸ニートソープ100kgと、グリセリン3.8kg、ソルビトール4.7kg、パルミチン酸1.7kgからなる透明化剤を、110℃で溶融混合した後、真空乾燥機で乾燥してチップ状の透明石鹸組成物を得た。次にこの透明石鹸組成物を三本ロールで三回混練した後、化粧石鹸の製造に使用される通常の一軸混練押出し機に投入して、温度55℃の押出し口から棒状に押出し、これを型打ちして成形することによって、縦35mm×横65mm×厚さ15mmの透明石鹸Aを得た。
【0048】
上記の実施例1〜3及び比較例1〜2で得た透明石鹸について、透明性試験と、溶け崩れ試験を行なった。これらの結果を表1に示す。
【0049】
透明性試験は、各実施例及び各比較例で成形した透明石鹸を30個ずつ無作為に抜き取り、分光色差計(ミノルタ株式会社製「CM−3600d」)を用いて、ハンターLab値を透過法(測定方向:透明石鹸の厚み方向)で測定することによって行ない、透明度をL値(数値が高いほど透明度が高い)で評価した。L値は、30個の試料の平均値で示し、またその標準偏差を示した。
【0050】
溶け崩れ試験は、各実施例及び各比較例で得た縦35mm×横65mm×厚さ15mmの透明石鹸を、85℃〜90℃に加温した蒸し器で2時間蒸し、透明石鹸の溶け崩れの度合い目視観察することによって行なった。そして、溶け崩れのないものを「◎」、殆ど溶け崩れのないものを「○」、少し溶け崩れのあるものを「△」、殆ど溶け崩れてしまったものを「×」と評価した。
【0051】
【表1】

【0052】
表1にみられるように、各実施例のものは、L値が高くて透明度が高く、またL値の標準偏差が小さく、バラツキのない安定した透明度を示すものであった。特に、混練物を二軸混練押出し機に再度通すようにした実施例3,4のものは、透明度が一層向上するものであった。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す概略図である。
【図2】二軸混練押出し機の型式を説明する一部の平面断面図である。
【図3】本発明の他の実施の形態の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0054】
1 二軸混練押出し機
2 バレル
3 脂肪酸石鹸
4 透明化剤
5 混練スクリュー
6 透明石鹸組成物
7 添加剤
8 混練物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸混練押出し機のバレルに、脂肪酸石鹸を押出し方向の基部側の位置において、透明化剤を押出し方向の先部側の位置において、それぞれ個別に連続的に供給しながら、脂肪酸石鹸と透明化剤をバレル内の二軸の混練スクリューで混練して押出すことを特徴とする透明石鹸組成物の製造方法。
【請求項2】
二軸混練押出し機のバレルから混練して押出された上記の混練物を押出し方向の基部側の位置において、透明化剤を押出し方向の先部側の位置において、それぞれ個別に二軸押出し機のバレルに連続的に供給しながら、混練物と透明化剤をバレル内の二軸の混練スクリューで混練して押出すことを特徴とする請求項1に記載の透明石鹸組成物の製造方法。
【請求項3】
香料、保湿剤、着色剤、キレート剤から一種以上選ばれる添加剤を二軸混練押出し機のバレルに連続的に供給しながら、上記の混練・押出しを行なうことを特徴とする請求項1又は2に記載の透明石鹸組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかの方法で二軸混練押出し機から押出された透明石鹸組成物を、所定形状に成形することを特徴とする透明石鹸の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−28239(P2006−28239A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−205678(P2004−205678)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(390029654)株式会社マックス (7)
【Fターム(参考)】