説明

透明難燃性組成物

【課題】本発明は、ポリオレフィン系樹脂にリン酸系化合物を含有する際、ブリードアウトすることなく、難燃性、機械的物性、各成形加工性等を高基準で備えかつ高い透明性を有する透明難燃性組成物を提供することにある。
【解決手段】(a)ポリオレフィン系樹脂と(b)環式有機化合物および(c)リン酸系化合物と、(d)それ以外の1種以上の添加剤とを組成中に含有する透明難燃性組成物である。
【効果】多くのオレフィン系樹脂において効果が高く、添加したリン酸化合物が良好に分散・混合され、そのブリードアウトが少なく、かつ高い透明性を有するという目的が効果的に達成され、UL94 VTM−O規格に合格する難燃性が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリオレフィン系樹脂に対して相溶性のないリン酸系化合物をブリードアウトすることなく、難燃性、機械的物性、各成形加工性等を高基準で備えかつ高い透明性を有する透明難燃性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リン酸系化合物を難燃剤として、ポリオレフィン系樹脂に含有させ難燃効果を得るには比較的少量の添加でも十分にその効果が得られる。しかしながら、リン酸系化合物は、その極性のためにポリオレフィン系樹脂との相溶性が非常に悪く、ごく少量の添加でもブリードアウトしてしまい、添加それ自体ができなかった。このブリードアウトが原因となり、各成形加工性を行う際に高率良く生産を行うことはできなかった。
【0003】
以上の理由から、従来、ポリオレフィン系樹脂に対しては、リン酸系化合物の難燃剤としての使用は不適当であるとされていた。
【0004】
一般にポリオレフィン系樹脂に使用されているメラミン系化合物を難燃剤として含有させると難燃効果は得られるものの透明性を期待することはできなかった。
【0005】
さらにポリオレフィン系樹脂に使用されているメラミン系化合物を難燃剤として含有させ難燃効果を得るためには、比較的多量に添加しなければならず良好な分散効果を得ることが難しい場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−001469号公報
【特許文献2】特開2001−131353号公報
【特許文献3】特開2001−270230号公報
【特許文献4】特開2001−322208号公報
【特許文献5】特開2002−201361号公報
【特許文献6】特開2002−337284号公報
【特許文献7】特開2004−306301号公報
【特許文献8】特開2005−238850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ポリオレフィン系樹脂に、リン酸系化合物を難燃剤としてブリードアウトを生じさせることなく含有し、かつ高い透明性を有する透明難燃性組成物を提供することにある。
【0008】
本発明者は、長期多岐にわたる研究を行った結果、リン酸系化合物には、環式有機化合物が相溶性を高める点で効果的であることに着目してきた。一般的に分子構造の類似している化合物に対しては、概して相溶性は向上することが知られている。リン酸系化合物には環式有機化合物が相溶性を高める点で効果的であることに着目し、この特性を利用して、リン酸系化合物をポリオレフィン系樹脂と含有する際に環式有機化合物を、ポリオレフィン系樹脂中に添加することによりポリオレフィン系樹脂との相溶性を改善し、ブリードアウトを防止できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、ポリオレフィン系樹脂に、リン酸系化合物を含有する際、環式有機化合物をポリオレフィン系樹脂中に添加することにより成ることを特徴とする難燃性樹脂組成物が提供される。以下、本発明について詳述する。本発明においては、環式有機化合物を、ポリオレフィン系樹脂中に添加することによりリン酸系化合物とポリオレフィン系樹脂との相溶性を改善し、ポリオレフィン系樹脂中に分散させることにより、ポリオレフィン系樹脂とリン酸系化合物の相溶性を改善する。
【0010】
本発明において使用する環式有機化合物としては、リン酸系化合物に相溶性を改善し、ブリードアウトを防止し且つ均一に分散するうえで環式有機化合物が好ましい。具体例としては、単環化合物であるシクロヘキサン、ベンゼン、縮合環化合物であるナフタレン、さらに架橋化合物、炭素間化合物、複素環化合物、N員環化合物、大環状化合物トなどの環式有機化合物等が挙げられる。中でも、ベンゼン環、シクロ環など環状構を1部に持つ有機化合物、も同様に好ましい。
【0011】
ただし使用する環式有機化合物等は、できるだけリン酸系化合物ならびにポリオレフィン系樹脂との双方の相溶性が高いことが好ましい。これは、本発明の目的がリン酸系化合物のブリードアウトを防止しポリオレフィン系樹脂に均一に分散させ、透明難燃性組成物を提供することにある。したがって、リン酸系化合物との相溶性だけを優先させるとポリオレフィン系樹脂と環式有機化合物等の相溶性が影響を受け、白く濁る可能性が高くなるからである。
【0012】
本発明は、透明難燃性組成物に関するものであるから、使用するポリオレフィン系樹脂、リン酸系化合物、環式有機化合物等物、さらに含有する添加剤は見た目の透明さを損なわないものを使用することが好ましい。
【0013】
本発明の透明難燃性組成物で使用される(a)ポリオレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン類の単独重合体若しくは共重合体またはこれらオレフィンと共重合可能な成分との共重合体であり、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体およびプロピレン−ブテン共重合体、エチレン−アクリレート共重合体、エチレン・エチル−アクリレートコポリマー等が挙げられる。中でもエチレン−アクリレート共重合体、エチレン・エチル−アクリレートコポリマーが望ましい。これらは一種又は二種以上を組み合わせて使用することができ、また、所望により他の樹脂を少量成分としてブレンドしてもよい。
【0014】
本発明の透明難燃性組成物で使用される(b)環式有機化合物としては、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、ポリアミド、ケトン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂などが挙げられる。中でも、シクロオレフィン系樹脂が好ましい。なかでもシクロオレフィン系樹脂が望ましい。またこれらは一種又は二種以上を組み合わせて使用することができ、所望により他の樹脂を少量成分としてブレンドしてもよい。
【0015】
本発明の透明難燃性組成物で使用される(c)リン酸系化合物は、例えばトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリジルジフェニルホスフェート、2−ナフチルジフェニルホスフェート、クレジルジ2,6−トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、キシレニルホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、ジブチルヒドロオキシメチルホスホネート、芳香族結合リン酸エステル等が挙げられる。中でも芳香族結合リン酸エステルが望ましい。またこれらは一種又は二種以上を組み合わせて使用することができ、所望により他の樹脂を少量成分としてブレンドしてもよい。
【0016】
本発明の透明難燃性組成物で使用される(d)は、成形加工時の熱安定性、分散性、長期の酸化防止、耐候(光)性などを考慮し、金属石鹸類(例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウムなど)、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノール系、ヒンダードアミン系などの光安定剤等の添加剤を慣用量添加することが好ましい。またこれらは一種又は二種以上を組み合わせて使用することができ、所望により他の樹脂を少量成分としてブレンドしてもよい。
【0017】
次に、本発明を実施例、比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されず、幅広い応用範囲を持つものである。なお、実施例、比較例における%表示は、すべて重量基準である。
【0018】
実施例1〜6
表1−1に記載した成分および配合割合で、タンブラーにより混合した後、30mmφの単軸ベント式押出機で溶融混練後ペレット化し、この時の生産性、ペレット外観、分散性を評価した。生産性はサージング、ベントアップの有無、ブリードアウト等,連続生産性を総合的に判断、ペレット外観はサージングや肌あれによる外観不良があるかどうかを目視により判断した。また難燃性はUL−94VTMの試験に準じた試験を行い判定した。その結果は表2−1に併記された通りである。
【0019】
比較例1〜19
表2−1に記載した成分および配合割合で、タンブラーにより混合した後、30mmφの単軸ベント式押出機で溶融混練後ペレット化し、この時の生産性、ペレット外観、分散性を評価した。生産性はサージング、ベントアップの有無、ブリードアウト等,連続生産性を総合的に判断、ペレット外観はサージングや肌あれによる外観不良があるかどうかを目視により判断した。また難燃性はUL−94VTMの試験に準じた試験を行い判定した。その結果は表2−2に併記された通りである。なお比較例6から19までは試験に使用するサンプルを得ることができなかった。
【0020】
【表1−1】

【0021】
【表1−2】

【0022】
【表2−1】

【0023】
【表2−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリオレフィン系樹脂に(b)環式有機化合物を1種類以上含有することを特徴とした透明難燃性組成物
【請求項2】
(c)リン酸系化合物を1種類以上含有することを特徴とした請求項1記載の透明難燃性組成物
【請求項3】
(a)ポリオレフィン系樹脂40〜90重量部、(b)環式有機化合物5〜20重量部、(c)リン酸化合物5〜20重量部および(d)その他添加剤0.1〜20重量部からなることを特徴とする1,2記載の透明難燃性組成物(但し(a),(b),(c)および(d)は合計で100重量部とする)

【公開番号】特開2011−241368(P2011−241368A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127281(P2010−127281)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(305050373)有限会社カンポテクニコ (8)
【出願人】(510154637)株式会社アライズ (2)
【Fターム(参考)】