説明

透析用途のためのインラインセンサ

透析、透析流体、および透析流体によって処理される体液の水質を監視するためのシステムを開示する。該システムは、投入水または透析流体の中、および調製された透析物の中の不純物を検出するための微小電気機械システム(MEMS)センサを使用する。これらのセンサはまた、治療されている患者の血液を監視およびチェックするために使用されてもよい。これらのセンサは、アンモニウムまたはカルシウム等のイオンのためのイオン選択センサを含み、また、塩素またはクロラミン、例えば、塩化物からのイオンに好適である、電流滴定アレイセンサも含む。これらのセンサは、水道用水の本管または井戸からの水供給の監視を補助する。該センサは、家庭または他の場所で使用するための水から透析物溶液を調製するためのシステムと併用されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景)
本特許は、概して、医療用流体送達システムおよび方法に関する。より具体的には、本特許は、腹膜透析流体、血液透析流体、および血液等の透析に関与する流体種を感知および測定するための微小電気機械システム(MEMS)センサ用のシステム、方法、および装置を開示する。
【背景技術】
【0002】
種々の原因によって、個人の腎臓系は機能しなくなり得る。腎不全は、いくつかの生理的障害および問題を引き起こす。水分、ミネラル、および毎日の代謝負荷の排出のバランスは、もはや起こらず、窒素代謝の毒性最終生成物(尿素、クレアチニン、尿酸等)は、血液および組織中に蓄積する可能性がある。
【0003】
腎不全および腎機能低下は、透析を用いて治療されている。透析は、正常に機能している腎臓によって、そうでなければ除去された老廃物、毒素、および過剰な水分を体から除去する。腎機能の代替としての透析治療は、該治療が命を救うため、多くの人々にとって非常に重要である。
【0004】
血液透析および腹膜透析は、腎機能の損失を治療するために一般に使用される2種類の透析療法である。血液透析(「HD」)治療は、患者からの老廃物、毒素、および過剰な水分を除去するために、患者の血液を利用する。患者は、血液透析機に接続され、患者の血液は、この機械を通じて送出される。血液が血液透析機に、および血液透析機から流動することができるように、カテーテルまたは針が患者の動脈および静脈、または人工移植片に挿入される。血液は、該機械のダイアライザを通過し、それは、血液からの老廃物、毒素、および過剰な水分を除去する。浄化された血液は、患者に戻される。大量の透析物、例えば、約120リットルが、単回の血液透析療法中、血液を透析するために消費される。血液透析治療は、数時間続き、概して、1週間に約3または4回治療センターにおいて実施される。
【0005】
血液を伴う腎不全治療の別の形態は、血液濾過(「HF」)であり、患者の血液からの毒素の対流輸送に依存する、別の腎代替療法である。この療法は、治療中、体外回路に置換液または補液を添加することによって達成される(典型的には、10〜90リットルのそのような流体)。該置換液、および治療と治療の間に患者によって蓄積される流体は、HF治療の間に限外濾過され、中分子および大分子の除去に特に有益である対流輸送機構を提供する。
【0006】
血液透析濾過(「HDF」)は、対流および拡散浄化を組み合わせる、別の血液治療様式である。HDFは、標準的な血液透析と同様に、ダイアライザ内を流動する透析物を使用し、拡散浄化を提供する。さらに、置換液が体外回路に直接提供され、対流浄化を提供する。
【0007】
腹膜透析は、透析物とも呼ばれる透析溶液を使用し、それは、カテーテルを介して患者の腹膜腔に注入される。透析物は、腹膜腔の腹膜に接触する。拡散および浸透によって、すなわち浸透勾配が膜にわたって生じるため、老廃物、毒素、および過剰な水は、患者の血流から腹膜を通って透析物に入る。使用済み透析物は、患者から排出され、患者から老廃物、毒素、および過剰な水分を除去する。このサイクルが繰り返される。
【0008】
持続的携帯型腹膜透析(「CAPD」)、自動腹膜透析(「APD」)、タイダルフローAPD、および連続流腹膜透析(「CFPD」)を含む、種々の種類の腹膜透析療法が存在する。CAPDは、手動の透析治療である。患者は、埋め込まれたカテーテルを排液管に手動で接続し、使用済み透析物流体が腹膜腔から排出されることを可能にする。次いで、患者は、カテーテルを新鮮な透析物のバッグに接続し、カテーテルを通じて新鮮な透析物を患者自身に注入する。患者は、新鮮な透析物バッグからカテーテルを外し、透析物が腹膜腔内に滞留することを可能にし、ここで、老廃物、毒素、および過剰な水分の輸送が生じる。滞留期間の後、患者は、例えば、1日当たり4回、手動の透析治療を繰り返し、各治療は約1時間続く。手動の腹膜透析は、患者からかなりの時間および努力を必要とし、改善のための十分な余地が残っている。
【0009】
自動腹膜透析(「APD」)は、該透析治療が排出、充填、および滞留サイクルを含む点においてCAPDと類似している。しかしながら、APD機械は、典型的には、患者が眠っている間に自動でサイクルを行う。APD機械によって、患者は、手動で治療サイクルを行う必要がなく、かつ日中に供給品を運ぶ必要がない。APD機械は、埋め込まれたカテーテル、新鮮な透析物源またはバッグ、および流体排液管に流体接続する。APD機械は、透析物源からカテーテルを通じて患者の腹膜腔に新鮮な透析物を送出し、透析物が腔内に滞留することを可能にし、老廃物、毒素および過剰な水分の輸送が生じることを可能にする。源は、複数の滅菌透析物溶液バッグであってもよい。
【0010】
APD機械は、使用済み透析物を腹膜腔からカテーテルを通じて排液管に送出する。手動プロセスと同様に、APD中にいくつかの排出、充填、および滞留サイクルが生じる。「最終充填」は、CAPDおよびAPDの最後に生じてもよく、次回の治療まで患者の腹膜腔内に残る。
【0011】
CAPDおよびAPDは両方とも、使用済み透析流体を排液管に送るバッチタイプシステムである。タイダルフローシステムは、改良されたバッチシステムである。タイダルフローを用いて、長い期間にわたって患者から流体を全て除去する代わりに、わずかな時間増分の後、流体の一部が除去および交換される。
【0012】
連続流またはCFPDシステムは、使用済み透析物を廃棄する代わりに、浄化または再生し得る。該システムは、ループを通じて流体を患者の内外に送出する。透析物は、1つのカテーテル管腔を通じて腹膜腔に流入し、別のカテーテル管腔に流出する。患者から退出する流体は、例えば、ウレアーゼを採用し、酵素的に尿素をアンモニアに変換する尿素除去カラムを介して、透析物から老廃物を除去する再構成デバイスを通過する。次いで、アンモニアは、腹膜腔への透析物の再導入の前に、吸着によって透析物から除去される。アンモニアの除去を監視するために、追加のセンサが採用される。CFPDシステムは、典型的には、バッチシステムよりも複雑である。
【0013】
上記の腎不全治療システムのそれぞれにおいて、透析流体を作製するために使用される水を含む、透析流体の組成を監視および制御することが重要である。電気を必要とし、それは、腹膜透析において患者の腹膜に注入するための透析流体を加熱するために使用される。流入水の純度は、明らかに重要である。家庭状況において、水道用水の本管または個人の井戸からの水の制御または監視は、典型的には存在しない。いったん透析流体が作製されると、少なくとも、適切な流体が使用されていることを確実にするために、その完全な組成を少なくともチェックすることが有用であり得る。現在のところ、試験および分析のために研究所に試料を持って行くことなく、これを行うことはできない。2つ以上の種類の流体が腹膜または他の透析治療のために使用されている場合、適切なコンテナが調達され、腹膜透析機に正しく接続されていることを確実にするために、各コンテナの組成をチェックすることが有用であり得る。
【0014】
透析流体は、2つ以上の通路内で使用されてもよく、すなわち、血液透析流体は、濾過または精製される前に2回以上ダイアライザを経由してもよく、腹膜透析流体はまた、多重通路療法で使用されてもよい。現在のところ、試料を採取し、それを分析のために研究所に送ることなく、第1の通路の前、または第1もしくは第2の通路の後に、流体の組成を監視するための容易な方法は存在しない。流体回路内の1つまたは複数の地点において複数の標準的なセンサを使用することは、非常に費用がかかり、また、在宅治療または施設における治療環境にかかわらず、患者の枕元では利用できない面積を取る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の多くの実施形態が存在し、透析流体および透析流体で使用するための水の中の対象となる分析物を感知および定量化するために、MEMSセンサが使用される。MEMSセンサは、腹膜透析および血液透析の両方を対象とした透析流体で有用である。
【0016】
本発明の第1の実施形態では、透析流体を調製するためのシステムが提供される。該システムは、水用の精製媒体を含む第1の精製容器と、水を送出または測定するための装置とを含む。該システムはまた、水を加熱するためのヒータと、該装置から水を受容するために、かつ水を濃縮物と混合し、新鮮な透析溶液を形成するために構成される、混合チャンバとを含む。新鮮な透析溶液を濾過するためのフィルタ、ならびに第1の精製容器、ヒータ、混合チャンバ、およびフィルタから選択される容器からの排出と流体連絡して配置される、微小電気機械システム(MEMS)センサが提供される。
【0017】
本発明の第2の実施形態では、透析流体を調製するためのシステムが提供される。該システムは、水用の精製媒体を含む第1の精製カートリッジを含み、また、第1の精製カートリッジから受容される水を加熱するためのヒータも含む。該システムはまた、第1および第2の濃縮物を送出し、測定するための第1および第2のポンプと、第1および第2のポンプから第1および第2の濃縮物を受容するように、かつ第1および第2の濃縮物を混合するように構成される、混合チャンバとを含む。混合チャンバは、水を第1および第2の濃縮物と混合し、新鮮な透析溶液を形成するために使用される。該システムはさらに、新鮮な透析溶液を濾過するためのフィルタと、第1の精製容器、ヒータ、混合チャンバ、およびフィルタから選択される容器の排出と流体連絡して配置される、微小電気機械システム(MEMS)センサとを含み、MEMSセンサは、第1の精製カートリッジからの水、新鮮な透析溶液、および濾過された透析溶液から成る群より選択される流れの中の少なくとも2つの物質を感知するために好適である。
【0018】
本発明の第3の実施形態では、透析溶液を調製するための方法が提供される。該方法は、水の供給を提供するステップと、精製媒体を通る少なくとも1つの通路の中で水を精製するステップとを含む。該方法はまた、水を加熱するステップと、透析溶液を形成するために、水を少なくとも1つの透析濃縮物に添加するステップとを含む。さらに、該方法は、透析溶液を濾過するステップと、微小電気機械システム(MEMS)センサを用いて、水の少なくとも2つの特性を感知するステップとを含む。
【0019】
本発明の第4の実施形態では、透析溶液を調製するための方法が開示される。本方法は、水および使用済み透析物の供給を提供するステップと、精製媒体を通る少なくとも1つの通路の中で水および使用済み透析物を精製するステップとを含む。精製媒体は、以下に記載するように1つの容器または2つ以上の容器内にあってもよい。該方法はまた、水を加熱するステップと、透析溶液を形成するために、水を少なくとも1つの透析濃縮物に添加するステップとを含む。さらに、該方法は、形成された透析溶液を濾過するステップと、微小電気機械システム(MEMS)センサを使用して、水、形成された透析溶液、および使用済み透析溶液から成る群より選択される流れの少なくとも2つの特性を感知するステップとを含む。
【0020】
第5の実施形態では、透析溶液を精製するための方法が開示される。該方法は、使用済み透析物の供給を提供するステップと、精製された透析物を形成するために、容器内の精製媒体を通る少なくとも1つの通路の中で使用済み透析物を精製するステップとを含む。該方法はまた、濾過された透析物を形成するために、使用済み透析物を濾過するステップと、使用済み透析物、精製された透析物、および濾過された透析物から成る群より選択される流れの少なくとも2つの特性を感知するステップとを含む。特性は、微小電気機械システム(MEMS)センサを用いて感知される。
【0021】
別の実施形態は、透析を実施するための方法である。該方法は、透析機および透析流体の供給を提供するステップを含み、また、MEMSセンサを用いて、透析流体の組成を感知および決定するステップも含む。MEMSセンサは、透析流体中の少なくとも2つのイオンを感知および検出するために好適である。該方法はまた、透析流体を使用して患者に透析を実施するステップと、MEMSセンサを使用して、透析を実施するステップの後の透析流体の組成を感知および決定するステップとを含む。さらに、該方法は、透析を実施するステップの後に、透析流体を精製するステップと、MEMSセンサを用いて、精製するステップの後の透析流体の組成を感知および決定するステップとを含む。該方法は、精製するステップの後の透析流体の組成が透析に好適な場合、透析流体を再利用するステップを含む。
【0022】
さらなる特徴および利点が本明細書に開示され、以下の詳細な説明および図面から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、血液透析前に、水または使用済み透析溶液を精製するための第1のシステムの概略図である。
【図2】図2は、血液透析前に、水または使用済み透析溶液を精製するための第2のシステムの概略図である。
【図3】図3は、より腹膜透析を対象とした、水を精製し、透析溶液を調製するための第3のシステムの概略図である。
【図4】図4は、特に腹膜透析を対象とした、水を精製し、透析溶液を調製するためのシステムの概略図である。
【図5】図5は、使用済み透析物を処理、精製、および再利用するためのシステムを有する血液透析機の斜視図である。
【図6】図6は、MEMSセンサを使用して、透析溶液を調製するためのシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(詳細な説明)
本発明の実施形態において、透析流体中の対象となる分析物を検出および定量化するために、MEMSセンサが使用される。MEMSセンサは、種々の液体中の多数の特徴および種を検出することが可能である。これらの流体は、水、透析流体、使用済み透析流体、および血液さえ含む。特徴は、pH、導電率、温度、酸化還元電位、および総硬度を含む。種は、アンモニアまたはアンモニウム、総溶解固形物(TDS)、炭酸塩、重炭酸塩、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、塩化物等を含む。
【0025】
MEMSセンサは、水性分析物の関連種を測定するように適合される、複数の電極センサ要素を有する基板を含む。センサ要素は、例えば、電極および選択膜を含む。これらの要素は、センサ要素を駆動するために必要とされる任意の支持回路とともに、完全なセンサを構成する。例えば、基板は、作用電極および対電極を含む、イオン選択膜および電流滴定センサによって被覆される、複数の電極を含むことができる。一用途において、センサ要素を含む基板は、水試料の殺菌指数等、1つまたは複数の望ましい特徴を計算することが可能なアナライザに接続される。随意に、基板は、さらなる種を測定するように構成される、さらなるセンサ要素を含む。これらの要素は、アンモニアセンサ、酸素センサ、または免疫センサもしくはDNAプローブ等の変異原種のためのセンサを含んでもよい。センサは、温度、電導率、および酸化還元電位等のさらなる物理的特徴を検出および定量化するために使用されてもよい。
【0026】
例示的なセンサは、シリコン基板上で製造することができる。あるいは、それらは、従来の加工技術を使用して、例えば、セラミック、ガラス、SiO、またはプラスチック等の他の種類の基板上で製造されてもよい。例示的なセンサはまた、相互に近接して位置するそのような基板の組み合わせを使用して製造することができる。例えば、いくつかのセンサ構成要素(例えば、感知要素)を有するシリコン基板を、セラミック、SiO、ガラス、プラスチック、または他のセンサ構成要素を有する他の種類の基板上に載置することができる。これらの他のセンサ構成要素は、感知要素、1つもしくは複数の参照電極、または両方を含んでもよい。そのような複合装置を製造および相互接続するために、従来の電子加工技術を使用することができる。これらの技術はまた、米国特許第4,743,954号および米国特許第5,102,526号に開示され、それらは、参照することによって本明細書に援用される。
【0027】
センサは、シリコンプラットフォーム上でマイクロアレイセンサチップ技術を利用することができる。例えば、イオン選択電極ベースのセンサ要素を、Brown、“Solid−state Liquid Chemical Sensors”(Miniaturized Analytical Devices Microsymposium,Chemistry Forum,1998,pp.120−126)によって記載されるようなシリコンベースの実施形態で実装することができ、その開示は、参照することによって本明細書に援用される。代替のシリコンベースのセンサ装置、およびそのような装置を製造することができる方法は、米国特許第4,743,954号(“Integrated Circuit for a Chemical−Selective Sensor with Voltage Output”)、米国特許第5,102,526号(“Solid State Ion Sensor with Silicone Membrane”)、および米国特許出願第09/768,950号(“Micromachined Device for Receiving and Retaining at Least One Liquid Droplet,Method of Making the Device and Method of Using the Device”)に記載され、それらの開示は、参照することによって本明細書に援用される。チッププラットフォームは、Brownら、Sensors and Actuators B,vol.64,June 2000,pp.8−14によって示されるよな、当該技術分野でよく知られている他の電気化学固体センサに基づくことができ、その開示は、参照することによって本明細書に援用される。シリコンチップは、一滴ほどの小さい試験試料に関する化学的プロファイリング情報を配信するために連携して動作する、化学的選択センサおよび物理的測定の組み合わせを組み込み、それらはまた、流体の連続オンライン感知および監視に好適である。
【0028】
参照することによって本明細書に援用される米国特許出願公開第2008/0109175号に記載されるように、既知のリソグラフィー技術、分配技術、およびスクリーン印刷技術を使用して、本明細書に開示するシステムで使用するためのセンサを製造することができる。これらは、従来のマイクロ電子加工技術を含む。これらの技術は、チップレベルで統合される超小型の特性を有する感知要素を有するセンサを提供することができ、ASIC(特定用途向け集積回路)等の低コストの電子機器と統合することができる。そのようなセンサおよび電子機器は、低コストで製造することができ、それによって、一般的な使用のためのそのようなセンサの広範な流通を可能にする。センサは、Sensicore,Inc.,Ann Arbor,Michigan,U.S.A.によって販売されるようなMEMSセンサであってもよい。これらのセンサは、微小電気機械システム(MEMS)技術、すなわち、非常に小型の構成要素を有する非常に小型の装置を使用する。これらのセンサは、米国特許第7,100,427号、第7,104,115号、第7,189,314号、および第7,249,000号を含む、Sensicoreからの多数の特許および特許公開に記載され、それらのそれぞれは、参照することによってその全体が本明細書に援用され、信頼される。これらのMEMSセンサはまた、米国特許出願公開第2005/0251366号、第2006/0020427号、第2006/0277977号、第2007/0050157号、第2007/0219728号、および第2008/0109175号を含む、多数の係属中の特許に記載され、それらのそれぞれは、参照することによってその全体が本明細書に援用され、信頼される。
【0029】
微小電気機械システム(MEMS)センサは、患者の安全性、快適性、経済性、および利便性、ならびに治療効果を確実にするために、透析流体の調製および処理の多くの側面において使用され得る。経済性および利便性は、以下に記載する実施形態、ならびに本明細書に記載されていないが、透析技術分野の当業者には明らかとなる多くの他の実施形態の家庭での使用から生じる。
【0030】
図1は、透析物の種々の特性を感知、測定、および報告するためのMEMSセンサを使用して、使用済み透析物から新鮮な透析溶液を調製するためのシステム10の第1の実施形態を示す。本システムにおいて、透析流体は、血液透析機の一部を形成する使用済み透析物ポンプからの廃液等、透析流体の源11から入る。図1は、システム10の周囲のいくつかの地点に位置する、複数のセンサ13を示す。目的は、センサが図示される全ての地点で必要とされることを示唆することではなく、むしろ、センサが有利に配置され得る複数の位置を説明することである。
【0031】
差し込み図に示される各センサ13は、バッテリ等の電源132、動作部分136を有する感知要素134、および随意に、該システムの制御装置等への遠隔通信のためのモジュール138を含む。電源は、血液透析機の制御装置から電気配線によって、または一連のMEMSセンサのための電気コンセントもしくはモジュール電力供給等の別の電源から提供されてもよい。
【0032】
センサ要素134は、MEMSセンサであり、動作部分136は、センサからの信号を処理し、それらを有用な情報に変換するために必要な回路を含む。これらの信号は、有線接続を介して、血液透析機の制御装置に送信されてもよく、またはMEMSセンサは、遠隔通信機能を含んでもよい。本実施形態では、信号処理回路およびワイヤレス送信器/無線138は、小型かつコンパクトであり、感知部位におけるセンサ筐体内に容易に配置される。1つの好適な遠隔通信モジュールは、ZigBee/IEEE 805.15.4基準に従ったワイヤレスモジュールである。この基準に従って作製されるモジュールは、Maxstream,Inc.,Lindon,UT,U.S.A.、Helicomm,Inc.,Carlsbad,CA,U.S.A.、およびANT,Cochrane,Alberta,Canadaから購入され得る。モジュールは、非常に小型であり、そのような遠隔用途に好適である。上述のように、センサ13は、随意に、電力供給を含み、感知要素からのアナログデータをデジタルデータに変換するためのADC変換器も含んでもよい。従って、デジタルデータは、血液透析機の制御装置または他の体外処理機の制御装置への伝送の前に、少なくともセンサによってフォーマットされる。
【0033】
MEMSセンサは、1つの容器と後続の容器との間で一列に配置されてもよいセンサを含み、処理容器もしくはカートリッジ、または貯蔵容器等の容器内に配置されてもよいセンサも含む。多くのMEMSセンサは、多くの種のイオンまたは汚染物質を検出することが可能であり、いくつかのセンサは、温度、pH(水素またはヒドロニウムイオン濃度にあるような)、導電率、総溶解固形物(TDS)等を感知および中継することも可能である。
【0034】
血液透析用途
図1に戻ると、システム10は、水または使用済み透析流体の源11を含み、MEMSセンサ13が、流入水または流体の特性を監視するために源に配置される。活性炭または木炭床等の第1の処理容器12が、源11の下流に配置される。活性炭または木炭床は、小粒子を含み、かつとりわけ、重金属、塩素、クロラミン、および有機物も含む、多くの汚染物質を除去するのに優れている。活性炭または木炭床は、除去される汚染物質の種類に比較的非選択的である。必要に応じて、第2の処理容器12または活性炭または木炭床が使用されてもよく、第2のセンサ13が第2の容器の下流に配置される。これは、例えば、第1の床に対するセンサが、廃液がクロラミン、β−ミクログロブリン、またはクレアチニン等の特定の汚染物質に対する許容限界を超えていることを示した後に、透析治療が必要とされる場合、ユーザに床を交換する時間を与える。
【0035】
1つまたは2つの活性炭または木炭床の後、水または使用済み透析物の精製のための別の容器14が使用されてもよく、第4のセンサが容器14の下流に配置される。この容器は、任意の望ましい精製物質を含んでもよく、単一の吸着剤または異なる吸着剤の2つ以上の層を含んでもよい。容器14は、尿素をアンモニウムイオンに変換し、次いで、リン酸アンモニウムを形成することによってアンモニウムを除去するためのウレアーゼおよびリン酸ジルコニウムの層を含んでもよい。あるいは、またはさらに、リン酸塩または硫酸塩を除去するための酸化ジルコニウムの層が存在してもよい。容器14はまた、廃棄物のイオンを、カルシウムまたはマグネシウムイオン、および重炭酸または酢酸イオン等、透析溶液中で望ましいイオンに交換するために好適である、イオン交換樹脂を含んでもよい。イオン交換樹脂は、樹脂自体の前もしくは後に、または前および後に、炭素または木炭の濾過床を含んでもよい。これらの補助床はまた、透析物を作製するための水、または患者への供給のためのリフレッシュされた透析物にかかわらず、最終生成物を精製するために役立つ。
【0036】
図1の実施形態では、いったん再生された透析流体が容器14を退出すると、血液透析のために使用されるダイアライザ16の透析物側に贈られる。ダイアライザは、透析物がシェル側にあり、患者の血液が透析流体に対して逆流のチューブ側を通過する、シェルアンドチューブ熱交換器に比較されてもよい。本実施形態では、透析流体は、入口ポート162から入り、透析流体出口ポート164から退出し、ここで、さらなるMEMSセンサが、退出する透析流体中の種々の種を感知および測定してもよい。いったん透析流体が出口ポート164から退出すると、廃棄されてもよく、または濾過および精製されるために、別の通路に再び送られてもよい。
【0037】
ダイアライザのもう一方の側は、患者の血液に接続される。血液は、入口ヘッダー166から入り、数百または数千の微小多孔管を通じて流動し、次いで、出口ヘッダー168から退出する。微小多孔管は、水、ならびにクレアチニンおよび尿素等の血液中の毒性物質が、血液側から透析溶液側に流動することを可能にする。さらに、電解液および重炭酸塩緩衝剤が、透析溶液側から血液側に流動してもよい。次いで、浄化された血液は、患者に戻される前に空気検出器または空気トラップに送られる。入口ヘッダー166の付近で、汚染物質または他の種に関して、流入する血液の組成をチェックするために、さらなるセンサ13が使用されてもよい。出口ヘッダー168の付近で、汚染物質または他の種に関してチェックするために、さらなるセンサ17が使用されてもよい。センサ17は、例えば、pH、リン酸塩、または尿素を測定する、センサ13とは異なる種に対して調整されてもよく、浄化された血液は、患者に戻されるため、その状態を決定することは非常に重要であり得る。
【0038】
流入水を精製するために、または再利用のために使用済み透析物流体を浄化するために、他の浄化および精製装置が使用されてもよいことが理解される。これらの代替手段は、細菌または内毒素汚染物質を除去するための、サブミクロンフィルタ等の小粒子フィルタおよび限外濾過装置等のフィルタを含む。MEMSセンサを有利に使用するシステム20の第2の実施形態を図2に示す。システム20は、第1および第2の精製容器22を含み、それらは、ガロンサイズの容器よりもむしろ小型カートリッジであってもよい。上記のようなMEMSセンサ23は、上記のように、望ましい汚染物質または種のレベルを感知および測定する。
【0039】
システム20において、5ミクロンフィルタ24、続いて、排出するための老廃物出口252を有する逆浸透フィルタ25も存在する。逆浸透フィルタ27は、逆浸透フィルタの適切な動作のために、温度センサを含むMEMSセンサ23が装備されてもよい。MEMSセンサはまた、アンモニアまたはアンモニウム、総溶解固形物(TDS)、Ca++、Mg++、Na、K、Cl等の特定のイオンまたは物質を監視する、1つ以上のセンサを含んでもよい。逆浸透の後、該システムは、紫外線光発生器26を含んでもよく、ここで、生成される光は、細菌および他の有害な微生物に対して殺菌性を有する。さらに、該光は、クロラミン分子中の窒素原子から塩化物イオンを解離し、したがって、水または透析流体からクロラミンを除去するために使用されてもよい。これらの用途のための紫外線光は、典型的には、約180〜290nmの波長を有するUV−Cである。約185nmまたは約254nmの波長を有するランプが好ましい。任意の特定の理論に束縛されることなく、紫外線光は、微生物の外側細胞壁に浸透し、細胞体を通過し、DNAに到達し、遺伝物質を変化させ、したがって微生物に対して殺菌性を有する。他の望ましい波長が使用されてもよい。
【0040】
限外濾過装置27は、紫外線光発生器の下流に配置され、ダイアライザが後に続く。ダイアライザ28は、透析流体入口282および透析流体出口284を有し、それらのそれぞれはまた、MEMSセンサ23が装備されてもよい。ダイアライザ28は、血液入口ヘッダー286、および入口ヘッダーの反対側の血液出口ヘッダー288を有する。出口における血液の組成は、上記のように、pH、リン酸塩、または尿素等、重要な血液の特定の成分または特徴に対して調整される、MEMSセンサ29によって感知および監視されてもよい。
【0041】
患者または介護者は、センサ29から、および透析流体出口284の最後のセンサ23からのセンサ測定値に特に留意し得る。血液の組成または状態の測定値は、透析治療が機能しているかどうか、および透析が現状のまま継続されるべきか、または透析流体、治療期間、もしくは治療頻度にかかわらず、患者の処方に対して何らかの修正が必要とされ得るかどうか等を判断するのに重要である。当然のことながら、患者の身体から退出する老廃物は、ダイアライザ内に留まるか、あるいは透析流体中に入らなければならないため、類似の結果が、使用済み透析流体の組成を分析することによっても達成され得る。したがって、使用済み透析流体の状態は、重要である。流体がある特定の高い範囲内で有毒成分を有する場合、流体の任意の部分を再利用しないこと、および代わりに、それを新鮮な透析流体と交換することが適切であり得る。該範囲がそれほど高くない場合、ユーザまたは介護者は、使用済み流体の少なくとも一部を排出するために送るよりもむしろ、それをリサイクルおよびリフレッシュすることを決定してもよい。使用済み透析物の組成はまた、患者の血液を監視することほど正確ではないが、透析療法の効果に関する情報も提供する。図2には図示しないが、ダイアライザ28、またはダイアライザ28の上流の処理容器もしくはカートリッジのいずれかへの、またはそこからの透析流体の流動を制御するために、1つまたは複数の測定ポンプまたは流量計が存在してもよいことが理解される。上記の技術の多くおよび装置の大部分は、血液透析および腹膜透析用途の両方に適用可能であり得ることを理解されたい。
【0042】
腹膜透析用途
腹膜透析のために設計されるシステム30を図3に示す。システム30は、給水栓または使用済み透析物を生成する患者からの出口等、源31からの水または使用済み透析物流体を受容する。該システムは、水または使用済み透析物を精製するための、少なくとも1つの容器32を含む。他のシステムに関する上記の方法と同様の方法で、第1の容器32は、活性炭もしくは木炭を含んでもよく、または水あるいは使用済み透析流体からの不純物または老廃物を選択的もしくは非選択的に吸収するための、2つ以上の層を含んでもよい。該システムは、上記のように、MEMSセンサ33を含む。本システムにおいて、使用済み透析流体または水は、透析流体調製システム34に送られ、その一実施形態を以下の図6に示す。
【0043】
一実施例では、透析流体調製システムは、単に、既知の組成の既知の量の濃縮物を有するコンテナであってもよい。例えば、システム34は、単一成分の透析溶液、例えば、透析乳酸溶液に対して既知の体積(液体)または既知の質量(固体)の既知の濃縮物を有する、可撓性コンテナであってもよい。透析乳酸溶液は、典型的には、電解液、乳酸塩、およびグルコースを含有する。水源31、および容器32の水源とインラインの制御弁等の必要な制御が、適切な量の水をシステム34に運ぶために使用され、そこで、成分は混合および溶解され、望ましい溶液を形成する。運ばれる水または使用済み透析物の量は、例えば、流体もしくは水のための容積式ポンプ、または流入物とインラインの精密容積式メータを監視することによって、測定されてもよい。あるいは、水もしくは流体の量は、運ばれる質量を計量することによって、例えば、計量器、質量セル、または他の装置上にコンテナ34を配置することによって、制御することができる。
【0044】
透析溶液の調製は、加熱もしくは加圧、または加熱および加圧の両方を含んでもよく、したがって、透析流体の調製において、少なくとも1つの温度センサまたは温度要素、および少なくとも1つの圧力センサまたは圧力要素が使用されてもよいことが理解される。得られる透析溶液は、MEMSセンサ35によって、その調製の後、少なくとも1回チェックされる。
【0045】
本実施形態では、新鮮な透析流体は、少なくとも1つのコンテナ36内に貯蔵され、その温度は、少なくとも1つの温度要素または温度センサによって感知および監視される。透析流体が必要とされる時に、それは、ポンプ37を介してフィルタ38に送出され、該フィルタは、不純物を廃液管に送り、精製された濾液を腹膜透析機39に送る。流体の内容物は、腹膜透析機への投入時に、さらなるMEMSセンサ35によってチェックされてもよい。腹膜透析技術分野の当業者によく知られているように、腹膜透析機は、滞留期間にわたって、または連続流動モードもしくは他のモードに対して、患者の腹膜に透析流体を送るために、1つまたは複数のモードで動作してもよい。透析流体は、示すように、二重管腔カテーテルの入口管腔391を通じて、患者Pに送られてもよい。滞留時間に達する時、または流動が連続的である場合、透析流体は、患者から二重管腔カテーテルの出口管腔392を通じて送られる。患者から戻される使用済み透析流体の補給は、上記のパラメータに関して、さらなるMEMSセンサ33によってチェックされてもよい。
【0046】
血液透析および腹膜透析用の溶液を含む、透析溶液の調製のために、MEMSセンサを有利に使用し得る、他の実施形態が存在する。腹膜透析をより対象とした別のシステムを図4に示す。システム40は、水源41を含み、それは、都市用水源もしくは他の水源であってもよく、または使用済み透析物の源であってもよい。第1のフィルタまたは治療容器42は、上記のような不純物を除去することを目的とし、該フィルタの後に、第1のMEMSセンサ43が続く。本実施形態では、次いで、精製された水または透析流体は、透析流体を生成するためのシステム44に送られ、その一実施形態を以下の図6に示す。上述のように、濃縮物からの透析流体の調製において、温度および圧力要素が有利に使用されてもよい。透析流体が1つまたは複数の貯蔵コンテナ45に送られる際に、得られる透析流体の組成は、第2のMEMSセンサ43において感知およびチェックされ、該コンテナにおいて、安全貯蔵を確実にするために、温度が1つまたは複数の温度要素によって監視されてもよい。
【0047】
透析流体が必要とされる時に、それは、ポンプ46によって腹膜透析機47に、次いで、投入管腔471および排出管腔472の2つの管腔を有するカテーテルによって、患者の内外に送出される。本実施形態では、使用済み透析物は、逆浸透フィルタ48に送られ、老廃物は、廃液管に送られる。本実施形態ではまた、上記のように、汚染物質を除去するために使用されてもよい、または汚染物質を除去し、望ましい成分を添加するためにイオン交換樹脂とともに使用されてもよい、第1および第2の容器またはフィルタ49a、49bも存在する。また、イオン性汚染物質を除去するために、電気脱イオン化プロセスユニットが使用されてもよい。溶液を濾過し、老廃物を廃液管に送るために、限外濾過装置49cが使用される。また、他の実施形態が使用されてもよい。透析物が患者から戻された後、または処理容器もしくはフィルタ、および限外濾過装置の後等、MEMSセンサ13、29が図のように使用されてもよい。MEMSセンサ13、29、および43は、同一であってもよく、または必要に応じて、かつ上記に説明するように調整されるか、もしくは異なる種、異なるイオン、または異なる物質を感知することが可能であってもよい。
【0048】
図5は、上記のように、水または透析物リサイクルシステム52を有する、家庭用血液透析システム50を示す。システム50は、水または透析物リサイクルシステム52への流入水道用水の給水栓51を含み、該リサイクルシステムは、排水のための廃液管59も含む。新鮮な透析流体は、チューブ53を通じて、ダイアライザ54を有する血液透析機Hに隣接する貯蔵コンテナSに送られる。透析技術分野の当業者によく知られているように、患者Pは、動脈針Aおよび静脈針Vのための血管アクセス部位55を有する。患者Pは、チューブ56を介して血液透析機Hに接続される。使用済み透析流体は、チューブ57を介してリサイクルシステム52に戻される。
【0049】
上記のMEMSセンサ13は、システム50のいくつかの地点で使用されてもよい。1つ以上のセンサ13は、例えば、源51からの流入水またはチューブ57からの戻された透析物をチェックするために、透析物リサイクルシステム52内に配備されてもよい。水または透析の品質に応じて、戻された透析物を廃液管59に送るか、または透析物を浄化、濾過、および補給することによって、透析物を再利用するかの決定を行う。透析流体貯蔵コンテナSに送られるか、またはそこに貯蔵される透析物の品質および組成を監視するために、第2のMEMSセンサが使用されてもよい。第3の実施例として、患者の血液中の戻された透析物または種の組成を監視するために、別のMEMSセンサ13が血液透析機H内に配備されてもよい。上記のように、このセンサは、患者または介護者が、透析プロセスが血液または透析流体の適切なパラメータを変化させているかどうかを決定することを補助することができ、したがって、該療法が要求されるほど効果的に機能しているかどうかの指標となる。
【0050】
補給水または浄化された透析流体を使用して、濃縮物から透析流体を調製するためのシステムを図6に示す。透析物を生成するための一システム60を図6に示す。システム60は、上記のように、水源61から水を受容し、水を1つまたは複数の精製容器61a、61bに送る。水が第1および第2の容器から流動する際に、水の不純物または他の成分を感知し、その感知された量を報告するために、MEMSセンサ13が使用される。水は、制御弁61cを通過し、必要に応じて、インラインヒータ61dを使用して加熱される。加熱された水は、ライン61e、61fを通じて、貯蔵器62a、63aから濃縮物をそれぞれ送出するためのAおよびB濃縮物ポンプ62、63に流動する。ポンプは、正確な量のAまたはB濃縮物を送出するためのギアポンプ、羽根ポンプ、またはピストンポンプ等の容積式ポンプである。一実施形態は、Fluid Metering,Inc.,Long Island,New York,U.S.A.から入手可能な小型セラミックピストンポンプを使用する。他のポンプが使用されてもよい。他の実施形態は、定量またはレシオメトリックポンプを使用し、そのAまたはB濃縮物の流動が設定されてもよく、その後、ポンプによって測定される水に比例した比でAまたはB濃縮物を送出する。
【0051】
体積比以外で、ポンプは、MEMS導電率モニタを含むフィードバックループによって制御されてもよい。濃縮物ポンプは、導電率センサ64eにおける導電率があまりに低い場合、加速され、該プローブにおける導電率があまりに高い場合、減速される。濃縮物ポンプの特性的な体積が既知であるため、安定した透析溶液を生成するために必要とされる循環量には限度がある。該システムのための制御装置は、送出される濃縮物の量を記録し、流入水および送出されるA濃縮物の量も記録し、したがって、釣り合いの取れた流量を正確に保持する。
【0052】
本実施形態では、A濃縮物ポンプ62が、ライン62aを通じてA濃縮物を混合容器64に送出する一方で、正確な比の水もまた、ライン61fを通じて該容器に流動し、該容器は、充填されておらず、その最上部で空気間隙を保持する。水およびA濃縮物が混合された後に、混合物は、精密定量ポンプ64a、ノズル64c、および空気トラップ64bを使用して噴霧することによって脱気される。ポンプ64aへの不足した取り込みを生成する単純な制限等の他の実施形態が、溶液から空気を除去するための噴霧器の代わりになってもよい。混合物は、温度センサ64dおよびMEMS導電率センサ64eによって監視される。容器64は、レベルセンサLを含む。次いで、脱気された酸混合物は、B混合チャンバ65に送られ、ここで、B濃縮物ポンプからライン63bを通過したB濃縮物が、この場合、インラインで添加される。
【0053】
B混合チャンバ65は、最終透析溶液の組成を監視するために、第2のMEMSセンサ66が装備されてもよい。このセンサは、最終溶液の導電率をチェックすることができ、溶液の他のパラメータまたは品質もチェックしてもよい。例えば、導電率、pH、温度、総溶解固形物(TDS、ナトリウムイオンに基づく)、カルシウム、マグネシウム、総硬度、炭酸塩アルカリ性、および他のパラメータを含む、いくつかのパラメータをチェックするために、Sensicore,Inc.からのWaterPoint(登録商標)870センサが使用されてもよい。これらのうちの多くは、これらの測定値が透析溶液の品質および補給に直接関連するため、透析溶液を調製する患者または介護者に非常に有用である。チェックとして、このMEMSセンサはまた、総および遊離アンモニア(透析物中の尿素に関連する)、塩素、ならびにクロラミンの濃度等の一般的な水質を感知および報告することができる。他の実施形態は、3つの濃縮物を使用してもよく、該システムは、濃縮物の各コンテナから適切な量を引き出すために、別個のポンプを使用するように変更されてもよい。したがって、これらのシステムのいずれも、各患者に専用の溶液または処方薬を調製し得る。これらの実施形態のいずれにおいても、プロセスならびに最終生成物を監視および制御するために、MEMSセンサが使用されてもよい。
【0054】
次いで、透析溶液は、150マイクロメートルよりも大きい粒子を除去するために、フィルタ67aを通じて、供給ポンプ67によって送出される。制御弁68は、システム60からの透析溶液の流動を制御する。正確な継続性レベルが達成されていない場合、新しく調製された透析溶液は、適切な混合および純度が達成されるまで、示すように、所望に応じて、フィルタおよび混合チャンバを通じてリサイクルされてもよい。次いで、透析溶液を、貯蔵コンテナに向かう途中で、または使用するために、最終フィルタの内毒素フィルタ69を通じて送出し、フィルタの後の最終MEMSセンサ13によってチェックすることができる。内毒素フィルタは、大腸菌および緑膿菌等の細菌、ならびに内毒素を除去することを目的とする。このフィルタは、Medica SRL,Mirandola,Italyによって作製されるような、またはNipro Corp.,Osaka,Japanからのような、限外濾過装置であってもよい。
【0055】
上記のプロセスは、透析溶液を調製するための一方法に過ぎない。少量のデキストロース、グルコース、ナトリウム、もしくはポリアクリル酸カリウム、またはこれらの混合物等の浸透圧剤、あるいは他の構成要素を必要とするものを含む、他の透析溶液が使用されてもよい。これらの溶液は、概して同様の方法で調製され、粉末を使用する実施形態もあれば、濃縮物を使用する実施形態もあれば、溶液を使用する実施形態もある。MEMSセンサを含む任意のそのような実施形態は、本発明の範囲内に入るよう意図される。粉末を使用する実施形態は、良好な混合を確実にするために、従来の撹拌槽容器、または撹拌器を使用して、もしくは流れ、多くの場合、乱流を使用して粉末を混合するために好適な容器を必要とし得る。家庭用の場合、これは、上記のMEMSセンサとともに使用される時に、滅菌性を維持および持続することが可能な任意の好適なミキサであってもよい。
【0056】
上記のMEMSセンサに加えて、他のMEMSセンサが現在開発および試験中である。これらは、有機材料を感知および定量化することができるMEMSセンサを含む。これらのセンサは、他のMEMSセンサと同じ方法で機能するが、アンモニウムまたは塩素等、無機イオンよりもむしろ有機物質と関連する分析物を検出することによって動作する。これらのMEMSセンサは、全有機体炭素(TOC)、および透析流体中の尿素、クレアチニン、β−ミクログロブリン、ヘパリン、およびグルコース、もしくは他の糖、または浸透圧剤を感知することが可能であるか、または可能になる。MEMSセンサはまた、水または使用済み透析流体中の細菌、内毒素、およびウイルスレベルを検出するために使用されてもよい。さらに、MEMSセンサは、アルブミン、遊離ヘモグロビン、およびヘマトクリットを含む、一般的にタンパク質等の、血液中の対象となる分析物を検出するために使用されてもよい。
【0057】
当業者には、本明細書に記載した本発明の好ましい実施形態に対する様々な変更および修正が明白であることを理解されたい。そのような変更および修正は、本発明の対象の主旨および範囲から逸脱することなく、またその意図する利点を損なうことなく、行うことが可能である。したがって、そのような変更および修正は、添付の特許請求の範囲に含まれることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析流体を調製するためのシステムであって、
水用の精製媒体を含む第1の精製容器と、
該水を送出または測定するための装置と、
該水を加熱するためのヒータと、
該装置から該水を受容することと、該水を濃縮物と混合し、新鮮な透析溶液を形成することとを行うように構成された混合チャンバと、
該新鮮な透析溶液を濾過するためのフィルタと、
該第1の精製容器、該装置、該ヒータ、該混合チャンバ、および該フィルタから成る群より選択される容器からの排出と流体連絡して配置される、微小電気機械システム(MEMS)センサと
を備えている、システム。
【請求項2】
前記MEMSセンサは、アンモニウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、炭酸塩、重炭酸塩、水素またはヒドロニウム、ヒドロキシル、クロラミン、および塩化物から成る群より選択されるイオンのうちの2つ以上を感知するために好適である、イオン選択センサを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記MEMSセンサは、pH、カルシウム、総硬度、二酸化炭素、およびアンモニアから成る群より選択される少なくとも2つのパラメータを感知するために好適である、イオン選択センサを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記MEMSセンサは、塩素およびクロラミンを感知するために好適である、電流滴定センサである、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記MEMSセンサはさらに、電源と、遠隔通信用の無線とを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記水は、新鮮な水または使用済み透析溶液を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の精製容器の下流に配置される、第2の精製容器をさらに備え、該第2の精製容器はさらに、非選択的精製媒体、選択的精製媒体、電気式脱イオンカートリッジ、およびイオン交換樹脂から成る群より選択される、精製媒体を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1の精製容器または前記ヒータと動作可能に連絡している、水ポンプをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記MEMSセンサは、水溶液または水性混合物中の複数の物質を測定するために好適である、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
透析流体を調製するシステムであって、
水用の精製媒体を備える第1の精製カートリッジと、
該第1の精製カートリッジから受容される該水を加熱するためのヒータと、
第1の濃縮物および第2の濃縮物を送出し、測定するための第1のポンプおよび第2のポンプと、
該第1のポンプおよび第2のポンプから該第1の濃縮物および第2の濃縮物を受容することと、該第1の濃縮物および第2の濃縮物を該水と混合して新鮮な透析溶液を形成することとを行うように構成される混合チャンバと、
該新鮮な透析溶液を濾過するためのフィルタと、
該第1の精製カートリッジ、該ヒータ、該混合チャンバ、および該フィルタから成る群より選択される容器の排出部と流体連絡して配置される、微小電気機械システム(MEMS)センサと
を備え、該MEMSセンサは、該第1の精製カートリッジからの水、該新鮮な透析溶液、および該濾過された新鮮な透析溶液から成る群より選択される流れの中の少なくとも2つの物質を感知するために好適である、システム。
【請求項11】
前記MEMSセンサはさらに、透析機の制御装置と連絡するための無線送信器を備える、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記水から、または前記透析溶液から、細菌および微生物を除去するための限外濾過装置をさらに備える、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記水または前記透析溶液を浄化するための逆浸透フィルタをさらに備える、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記水または透析溶液を照射するための紫外光源をさらに備え、該紫外光源は、前記フィルタの上流に配置される、請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記新鮮な透析溶液から空気を除去するための空気トラップをさらに備える、請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
前記水は、新鮮な水または使用済み透析溶液を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項17】
透析溶液を調製する方法であって、
水の供給を提供することと、
精製媒体を通る少なくとも1つの通路において該水を精製することと、
該水を加熱することと、
透析溶液を形成するために、該水を少なくとも1つの透析濃縮物に添加することと、
該透析溶液を濾過することと、
微小電気機械システム(MEMS)センサを用いて、該水の少なくとも2つの特性を感知することと
を含む、方法。
【請求項18】
前記MEMSセンサは、イオン選択膜または電流滴定セルを使用して感知する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
第2のMEMSセンサを用いて、前記透析溶液の特性を感知することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記精製媒体は、活性炭および木炭から成る群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
形成される前記透析溶液は、使用済み透析溶液に対する補給を含み、MEMSセンサを用いて、該使用済み透析溶液の少なくとも2つの特性を感知することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記水は、新鮮な水または精製された使用済み透析溶液を含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項23】
透析溶液を調製するための方法であって、
水および使用済み透析物の供給を提供することと、
精製媒体を通る少なくとも1つの通路において該水および該使用済み透析物を精製することであって、該精製媒体は、1つの容器または2つ以上の容器内に存在し得る、ことと、
該水を加熱することと、
透析溶液を形成するために、該水および少なくとも1つの透析濃縮物を添加することと、
該形成された透析溶液を濾過することと、
微小電気機械システム(MEMS)センサを用いて、該水、該形成された透析溶液、および該使用済み透析溶液から成る群より選択される流れの少なくとも2つの特性を感知することと
を含む、方法。
【請求項24】
前記MEMSセンサから遠隔制御装置に信号を送信することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
腹膜透析または血液透析を実施することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記形成された透析溶液から空気を除去することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
透析溶液を精製する方法であって、
使用済み透析物の供給を提供することと、
精製された透析物を形成するために、容器内の精製媒体を通る少なくとも1つの通路において該使用済み透析物を精製することと、
濾過された透析物を形成するために、該使用済み透析物を濾過することと、
微小電気機械システム(MEMS)センサを用いて、該使用済み透析物、該精製された透析物、および該濾過された透析物から成る群より選択される流れの少なくとも2つの特性を感知することと
を含む、方法。
【請求項28】
前記方法は、前記容器がカートリッジである携帯型透析システムを用いて達成され、該携帯型透析システムを装着している間に、透析を実施することをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記容器は、前記使用済み透析物が該容器を通過するときに、該使用済み透析物から不純物を吸収し、望ましいイオンを該使用済み透析物中に放出する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
水および濃縮物から新鮮な透析物を作製することと、該新鮮な透析物を前記濾過された透析物に添加することとをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
透析を実施する方法であって、
透析機と透析流体の供給とを提供することと、
該透析流体中の少なくとも2つのイオンを感知および検出するために好適なMEMSセンサを用いて、該透析流体の組成を感知および決定することと、
該透析流体を使用して、患者に透析を実施することと、
MEMSセンサを用いて透析を実施するステップの後に、該透析流体の組成を感知および決定することと、
透析を実施するステップの後に、該透析流体を精製することと、
MEMSセンサを用いて精製するステップの後に、該透析流体の組成を感知および決定することと、
精製するステップの後の該透析流体の該組成が透析に好適である場合、該透析流体を再利用することと
を含む、方法。
【請求項32】
感知および決定するステップは、アンモニウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、炭酸塩、重炭酸塩、水素またはヒドロニウム、ヒドロキシル、クロラミン、および塩化物から成る群より選択される2つのイオンを感知するために好適なイオン選択センサを備える、MEMSセンサを用いて実施される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記MEMSセンサは、pH、カルシウム、総硬度、二酸化炭素、およびアンモニアから成る群より選択される少なくとも2つのパラメータを感知するために好適なイオン選択センサを備える、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記MEMSセンサは、塩素またはクロラミンを感知するために好適な電流滴定センサである、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記組成を前記透析機の制御装置に送信することをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
透析を実施するステップは、腹膜透析または血液透析によって達成される、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記透析は、血液透析であり、MEMSセンサを用いて、患者の血液の組成を感知および決定することをさらに含む、請求項31に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2012−501216(P2012−501216A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525031(P2011−525031)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/047591
【国際公開番号】WO2010/024963
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】