説明

透水性あるいは排水性機能を有する舗装体に親水性を付与する方法

【課題】透水あるいは排水機能を有する舗装体の表面は、定期的に高圧水あるいは機械的な方法によってクリーニングが必要であるが、装置・設備また時間がかかり、コストアップになるので、可能な限り頻度は減らしたい。前記舗装体のクリーニングおよびアスファルトの張替え工事の頻度を減少させ、目詰まりを防止する方法の提供。
【解決手段】透水性あるいは排水性機能を有する舗装体に、界面活性能を有する物質と親水性高分子の混合物を、水を媒体として散布することによって課題を解決できる。前記界面活性能を有する物質は、HLB(疎水性親水性バランス)8〜15の界面活性剤、あるいは高分子界面活性物質であることが好ましい。また前記親水性高分子が、水溶性あるいは水分散性高分子であることが好ましく、特にポリアクリルアミドあるいはN−ビニルホルムアミド重合物であることであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透水性あるいは排水性機能を有する舗装体に親水性を付与する方法に関し、詳しくは界面活性能を有する物質と親水性高分子の混合物を、水を媒体として散布することを特徴とする透水性あるいは排水性機能を有する舗装体に親水性を付与する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透水性あるいは排水性を有した舗装とは、降雨水が透過することができる多数の透水孔を表層に形成した舗装をいい、基本的には雨天時の車輛走行の安全性確保のためにハイドロプレニング現象やスモーキング現象の抑止効果を有すると同時に、タイヤ等から発生する騒音の低減効果をもち、また降雨水の地下還元機能を付与することを目的とするものであるが、他に地下水のかん養、河川や下水道に流入する雨水の流量の抑制あるいは歩行性の向上等も目的とされている。
したがって、前記透水孔は、常時、その機能を維持することができる状態、すなわち透水性を有していなければならないところ、歩行、車輛走行あるいは風等の影響によって土砂あるいは塵俟等が前記透水孔に詰まり、経年的にその機能の低下あるいは喪失を招来することは大きな現実として問題となっている。
【0003】
そのため、定期的に透水性を有した舗装の前記透水性あるいは排水性機能を回復させなければならないことになるが、例えば舗装の再施工は、費用及び作業性の点から問題があるため、圧力水を前記舗装面に噴出させ、詰まった土砂等を透水孔から洗掘しようとする技術などが開発されている(特許文献1参照)。
また表面が濡れた状態の透水性あるいは排水性を有する舗装表面に振動を加え、透水孔内に詰まった土砂または塵埃を浮き出させ、これらを吸引装置により回収することにより、舗装表面をクリーニングする方法も提案されている(特許文献2参照)。
これらは皆水力あるいは機械的作用により、クリーニングする方法であるが、薬剤を応用してクリーニングする方法に関しては、分散剤、界面活性剤および消泡剤からなる組成物を舗装体に噴射して洗浄する方法が提案されているが、分散剤としてイオン性の縮合物あるいはイオン性の重合物を使用している(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−080804号公報
【特許文献2】特開平06−173216号公報
【特許文献3】特開2002−256297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、透水性あるいは排水性機能を有する舗装体は、定期的に高圧水あるいは機械的な方法によってクリーニングは必要であるが、装置・設備また時間が係り、可能な限り頻度は減らしたい。
このクリーニング頻度を減少させるにはどのような処理が透水性機能を有する舗装体に実施すれば透水性あるいは排水性機能が持続し、あるいはクリーニング頻度が減少するかを検討し、その処理方法を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明者等は鋭意検討をした結果、以下に述べる方法により透水性あるいは排水性機能が持続し、あるいはクリーニング頻度が減少することが分かり本発明に至った。
すなわち本発明の請求項1の発明は、界面活性能を有する物質と親水性高分子の混合物を、水を媒体として散布することを特徴とする透水性あるいは排水性機能を有する舗装体に親水性を付与させる方法である。
【0007】
本発明の請求項2の発明は、請求項1に記載の方法において、前記界面活性能を有する物質が、HLB(疎水性親水性バランス)8〜15の界面活性剤であることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の請求項3の発明は、請求項1あるいは請求項2に記載の方法において、前記界面活性剤が非イオン性であり、下記一般式(1)で表わされることを特徴とするものである。
【0009】
【化1】

(前記一般式(1)において、PはCOOあるいはOを示し、mは炭素数8〜17の脂肪族アルキル基を示し、nはエチレンオキサイド平均付加モル数を示し、5〜20の数である。)
【0010】
本発明の請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の方法において、前記界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエ−テル、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム(C2037NaOS)及びグリセリンの混合物からなるものであることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項5の発明は、請求項1に記載の方法において、前記界面活性能を有する物質が、高分子界面活性物質であることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項6の発明は、請求項1に記載の方法において、親水性高分子が、下記の非イオン性の水溶性あるいは水分散性高分子(イ)から(ニ)より選択される一種以上であることを特徴とするものである。
(イ)アクリルアミド構成単位を主体として含有する(共)重合物
(ロ)酢酸ビニル構成単位を主体として含有する(共)重合物
(ハ)ビニルアルコール構成単位を主体として含有する(共)重合物
(ニ)N−ビニルカルボン酸アミド構成単位を主体として含有する(共)重合物
【0013】
本発明の請求項7の発明は、請求項1に記載の方法において、前記透水性あるいは排水性機能を有する舗装体が完成した直後あるいは舗装体の透水性機能が低下し始めた時点で散布することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の透水性あるいは排水性機能を有する舗装体に親水性を付与させる方法は、施工後、舗装体が完成した後、透水性仕様である舗装体表面にHLB(疎水性親水性バランス)が8〜15の界面活性剤を透水性保持剤として散布することを特徴とする。
あるいは、舗装体の透水機能が低下し始めた時点において散布しても効果が発揮でき、透水性を一定程度回復することができる。
【0015】
ここで舗装体の完成直後、散布する場合と舗装体を使用している場合、透水性あるいは排水性機能が低下してきた場合とに分けて考えてみる。
舗装体の完成直後においては、舗装体の透水性あるいは排水性細孔は、微細な土砂に由来する無機粉体、タイヤなどに由来する有機粉体などは存在せず、細孔は閉塞されていない。
しかし使用を開始すると徐々に細孔は閉塞していき、透水性あるいは排水性機能は低下していく。
この場合、舗装体の完成直後、本発明に係る親水性高分子と界面活性能を有する物質からなる混合物を舗装体の使用前に散布し、上記物質を舗装体の細孔に吸着させておけば、細孔の親水性が低下せず水は舗装体に浸透していき、透水あるいは排水機能は持続する。
【0016】
次に一定期間使用した後の舗装体の表面はアスファルト、あるいは微細な土砂に由来する無機粉体、タイヤなどに由来する有機粉体などが前記舗装体細孔に吸着して予想外に疎水的である。
従って路面が一旦乾燥すると、雨水など水分は表面から路面内部に浸透し難くい。まして微細な砂や土、あるいはその他塗料やタイヤ由来の微細物が路面の透水細孔を塞ぐとほぼ水分は浸透しない。
この時、本発明に係る界面活性能を有する物質と親水性高分子の混合物を、水を媒体として散布すると、界面活性能を有する物質と親水性高分子の混合物が舗装体の細孔に吸着し、それらが保存され微細物が舗装体の透水細孔を塞いでも水分は浸透していく。
その結果、高圧水あるいは機械的な方法によるクリーニングの頻度、また現在4〜5年で張り替えているアスファルト舗装の張り替え頻度を減少させることが期待できる。
またこの散布は、舗装体が乾燥している場合のほうが効果は高く、可能なら散布後、乾燥させることにより路面の透水細孔に確実に吸着し、効果が持続する期間が長くなる。
【0017】
前記界面活性物質は、HLB(疎水性親水性バランス)8〜15の界面活性剤であることが好ましい。
この界面活性剤は非イオン性であり、前記一般式(1)で表わされる界面活性剤であることが好ましく、またポリオキシエチレンアルキルエ−テル、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム(C2037NaOS)及びグリセリンの混合物からなるものであることが好ましい。
【0018】
さらに前記界面活性能を有する物質は、高分子界面活性物質も使用することができる。
本発明に係る高分子活性物質は、疎水性単量体とカチオン性基を有する単量体、アニオン性基を有する単量体、または分子中にポリオキシエチレン鎖を有する単量体との共重合によって製造することができる。
また前記親水性高分子は、下記(イ)〜(ニ)から選択される一種以上の水溶性あるいは水分散性高分子であることが好ましく、特にポリアクリルアミドあるいはN−ビニルホルムアミド重合物であることが好ましい。
(イ)アクリルアミド構成単位を主体として含有する(共)重合物
(ロ)酢酸ビニル構成単位を主体として含含有する(共)重合物
(ハ)ビニルアルコール構成単位を主体として含有する(共)重合物
(ニ)N−ビニルカルボン酸アミド構成単位を主体として含有する(共)重合物
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に本発明の実施の態様を詳細に説明する。
本発明に係る界面活性剤は、HLB(疎水性親水性バランス)8〜15の非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤あるいは両性界面活性剤が使用可能である。
非イオン性界面活性剤の例としては、ラウリルアルコールポリオキシエチレンエーテルなどの高級アルコールエチレンオキシド付加物、ステアリン酸ソルビタンジエステル、オレイン酸ソルビタンモノエステルなどの高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフエニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、オレイン酸ソルビタンエステルエチレンオキシド付加物などの脂肪酸ソルビタンエステルエチレンオキシド付加物などが挙げられる。
これらのうち好ましいものは高級アルコールエチレンオキシド付加物である。
【0020】
アニオン性界面活性剤の例としては、オレイン酸石けんなどのカルボン酸塩型、高級アルコール硫酸エステル塩などの硫酸エステル塩型、スルホコハク酸ジエステルなどのスルホン酸塩型、高級アルコールリン酸エステル塩などのリン酸エステル塩型が挙げられる。
カチオン性界面活性剤の例としては、脂肪族アミンエチレンオキシド付加物または、高級脂肪族アミンの塩などのアミン塩型、高級アルキルアミンアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩型が挙げられる。
両性界面活性剤の例としては、高級アルキルアミノカルボン酸塩などのアミノ酸型;高級アルキルジメチルベタインなどのベタイン型が挙げられる。
【0021】
上記界面活性剤の中で特に非イオン性界面活性剤が好ましい。
これら非イオン性界面活性剤は、アルキル基の炭素数は8〜17の脂肪族が好ましく、またエチレンオキサイド平均付加モル数は、5〜20の数であることが好ましい。
またHLB(疎水性親水性バランス)で表わすと、その値は好ましくは8〜15、更に好ましくは10〜15である親水性界面活性剤である。
そのような界面活性剤としては、ここでポリオキシエチレン鎖をPOEで表わせば、例えばPOEソルビタンモノステアレート等のPOEソルビタン脂肪酸エステル類、POEソルビットモノオレエート等のPOEソルビット脂肪酸エステル、POEグリセリンモノイソステアレート等のPOEグリセリン脂肪酸エステル類、POEステアリルエーテル、POEコレスタノールエーテル等のPOEアルキルエーテル、POEノニルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル、プルロニック等のプルアロニック型類、またポリオキシプロピレン鎖をPOPで表せば、POE・POPセチルエーテル等のPOE・POPアルキルエーテル、テトロニック等のテトラPOE・テトラPOPエチレンジアミン縮合体、POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等のPOEヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体、POEミツロウ・ラノリン誘導体、アルカノールアミド、POEプロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられるが、上記の界面活性剤に限定されるものではない。
またこれらの界面活性剤の一種または二種以上を組み合わせて適宜に配合することができる。最も好ましい界面活性剤は、前記一般式で表される非イオン性界面活性剤である。
【0022】
上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルあるいはポリオキシエチレンアルキルエステルの中では、ポリオキシエチレン(EO重合度、以下同様n=15)ステアリル(C=17)エーテル、ポリオキシエチレン(n=15)ラウリルC=12(ドデシル)エーテル、ポリオキシエチレン(n=10)ノニルC=9エーテル、ポリオキシエチレン(n=10)デカニルエーテル(C=10)、ポリオキシエチレン(n=15)ラウリル(ドデシル)エステル(C=12)
ポリオキシエチレン(n=8)オクチル(C=8)エーテルなどがあげられるが、炭素数がこの範囲ならば上記に限らない。
【0023】
更に本発明で使用する非イオン性界面活性剤は、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム(C2037NaOS)及びグリセリンを含有していることが好ましい。
これら物質の含有量としては、上記非イオン性界面活性剤に対しスルホコハク酸ジオクチルナトリウムは、1〜20質量%が好ましく、特に3〜10質量%であることが好ましい。
またグリセリンは、上記非イオン性界面活性剤に対し1〜20質量%が好ましく、特に3〜10質量%であることが好ましい。グリセリンは親水性を向上させる機能を有し、その結果、透水性機能を有する舗装体に親水性を付与させる機能を高める。
【0024】
本発明に係る親水性高分子は、下記の水溶性あるいは水分散性高分子(イ)から(ニ)より選択される一種以上である。
(イ)アクリルアミド構成単位を主体として含有する(共)重合物
(ロ)酢酸ビニル構成単位を主体として含含有する(共)重合物
(ハ)ビニルアルコール構成単位を主体として含有する(共)重合物
(ニ)N−ビニルカルボン酸アミド構成単位を主体として含有する(共)重合物
【0025】
アクリルアミド構成単位を主体として含有する(共)重合物は、以下に例示する単量体を使用し重合した非イオン性、カチオン性、アニオン性あるいは両性水溶性あるいは水分散性高分子である。
非イオン性の水溶性あるいは水分散性高分子は、アクリルアミドを主体として重合する。
アクリルアミド以外の非イオン性単量体は、N,N−ジメチルアクリルアミド、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、アクリロイルモルホリンなどがあげられるが、非イオン性であることが好ましい。
【0026】
カチオン性の水溶性あるいは水分散性高分子は、以下に例示するカチオン性単量体の重合体あるいは共重合体である。
カチオン性単量体の例として、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリル酸エステルあるいはN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリル酸アミド、及びハロゲン化低級アルキルやハロゲン化ベンジルによる四級化物である。
すなわち(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルあるいはジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどである。
四級化物としては、(メタ)アクリロイルオキシアルキル4級アンモニウム塩、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムメチルサルフェートなどである。
【0027】
アニオン性の水溶性あるいは水分散性高分子は、アクリルアミドを主体とし、
以下に例示するアニオン性単量体との共重合体である。アニオン性単量体の例は、ビニルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸あるいは2−アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸あるいはp−カルボキシスチレンなどである。
【0028】
両性の水溶性あるいは水分散性高分子は、アクリルアミドを主体とし、上記のカチオン性単量体およびアニオン性単量体を共重合して製造することができる。
【0029】
これら水溶性高分子あるいは水分散性高分子におけるアクリルアミドの共重合比は、好ましくは50モル%以上、100以下であり、カチオン性単量体あるいはアニオン性単量体の共重合比は0〜50モル%以下である。
また更に好ましくはアクリルアミドの共重合比は、70モル%以上、100以下であり、カチオン性単量体あるいはアニオン性単量体の共重合比は、0〜50モル%以下であり、更に好ましくは0〜30モル%以下である。
また分子量は光散乱法による重量平均分子量で1000〜10万であり、好ましくは1000〜5万である。
【0030】
N−ビニルカルボン酸アミド構成単位を主体として含有する(共)重合物は、N−ビニルホルムアミド重合物、あるいはN−ビニルホルムアミドと共重合し得る他の単量体との共重合物である。
すなわち上記に述べたカチオン性単量体、アニオン性単量体、非イオン性単量体と共重合することによって製造することができる。
これら水溶性高分子あるいは水分散性高分子におけるN−ビニルホルムアミドの共重合比は、好ましくは50モル%以上、100以下であり、カチオン性単量体、非イオン性単量体、あるいはアニオン性単量体の共重合比は0〜50モル%以下である。
また更に好ましくはN−ビニルホルムアミドの共重合比は、70モル%以上、100以下であり、カチオン性単量体、非イオン性単量体あるいはアニオン性単量体の共重合比は0〜50モル%以下であり、更に好ましくは0〜30モル%以下である。
最も好ましいものは、N−ビニルホルムアミド重合物である。分子量は光散乱法による重量平均分子量で1000〜10万であり、好ましくは1000〜5万である。
【0031】
酢酸ビニル構成単位を主体として含有する(共)重合物は、酢酸ビニル重合物、あるいは酢酸ビニルと共重合し得る他の単量体との共重合物である。
すなわち上記に述べたカチオン性単量体、アニオン性単量体、非イオン性単量体と共重合することによって製造することができる。
これら水溶性高分子あるいは水分散性高分子における酢酸ビニルの共重合比は、好ましくは50モル%以上、100以下であり、カチオン性単量体、非イオン性単量体、あるいはアニオン性単量体の共重合比は0〜50モル%以下である。
また更に好ましくは酢酸ビニルの共重合比は、70モル%以上、100以下であり、カチオン性単量体、非イオン性単量体あるいはアニオン性単量体の共重合比は0〜50モル%以下であり、更に好ましくは0〜30モル%以下である。
分子量は光散乱法による重量平均分子量で1000〜10万であり、好ましくは1000〜5万である。
【0032】
ビニルアルコール構成単位を主体として含有する(共)重合物は、カルボン酸ビニルエステルの重合物、あるいは共重合し得る他の単量体との共重合物をアルカリ性下で加水分解して製造することができる。
カルボン酸ビニルエスとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル等が例示され、入手の容易さの観点から、酢酸ビニルが好ましい。
また共重合し得る他の単量体は、上記に述べたカチオン性単量体、アニオン性単量体、非イオン性単量体と共重合し、アルカリ性下で加水分解して製造することができる。
これら水溶性高分子あるいは水分散性高分子におけるビニルアルコール構造単位の共重合比は、好ましくは50モル%以上、100以下であり、カチオン性単量体、非イオン性単量体、あるいはアニオン性単量体の共重合比は0〜50モル%以下である。
また更に好ましくはビニルアルコール構造単位の共重合比は、70モル%以上、100以下であり、カチオン性単量体、非イオン性単量体あるいはアニオン性単量体の共重合比は0〜50モル%以下であり、更に好ましくは0〜30モル%以下である。
分子量は光散乱法による重量平均分子量で1000〜10万であり、好ましくは1000〜5万である。
【0033】
これら水溶性あるいは水分散性高分子(イ)から(ニ)より選択される一種以上のうち、好ましいのはアクリルアミド系水溶性高分子、あるいはN−ビニルホルムアミド系水溶性高分子であり、最も好ましいのはポリアクリルアミドあるいはN−ビニルホルムアミド重合物である。
【0034】
本発明に係る高分子活性物質は、以下に述べるような疎水性単量体とカチオン性基を有する単量体、アニオン性基を有する単量体、または分子中にポリオキシエチレン鎖を有する単量体との共重合によって製造することができる。
疎水性単量体は、スチレンやα−メチルスチレンなど芳香環やアルキル基の付加した芳香環を有する単量体やα−オレフィンなど炭素数6〜20の芳香環あるいは脂肪族ビニル化合物である。また炭素数4〜18のアルキル基を持つアルキル(メタ)アクリレートも使用することができる。
【0035】
アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては以下のものがある。すなわちアクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリルなどである。
【0036】
カチオン性基を有する単量体は、ジアルキルアミノアルキルアクリルアミドあるいはジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートなどである。ジアルキルアミノアルキルアクリルアミドの具体例としては、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジエチルアミノプロピルアクリルアミドなどである。
またジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレートなどがあげられる。
【0037】
アニオン性基を有する単量体の例としては、メタクリル酸あるいはアクリル酸である。また分子中にポリオキシエチレン鎖を有する単量体の例としては、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレートであり、ポリオキシエチレンの重合度として3〜20である。
【0038】
これら疎水性単量体とカチオン性基を有する単量体、アニオン性基を有する単量体、あるいは分子中にポリオキシエチレン鎖を有する単量体との共重合の組み合わせのうち、最も好ましいのは疎水性単量体としてアクリル酸2−エチルヘキシルあるいはアクリル酸ラウリル、カチオン性単量体としてジメチルアミノエチルメタクリレート、アニオン性基を有する単量体としてメタクリル酸あるいはアクリル酸、ポリオキシエチレン鎖を有する単量体としてポリオキシエチレン(メタ)アクリレートであり、ポリオキシエチレンの重合度として4〜10であると最も好ましい。
【0039】
高分子活性物質の疎水性単量体のモル比は、好ましくは50〜95モル%であり、更に好ましくは60〜95モル%である。一方カチオン性基を有する単量体、アニオン性基を有する単量体、ポリオキシエチレン鎖を有する単量体のモル比は、好ましくは5〜50モル%であり、更に好ましくは5〜40モル%である。
また光散乱法による重量平均分子量は、1000〜5万であり、好ましくは5000〜2万である。
【0040】
高分子活性物質は前記単量体混合物を調整後、通常の重合法によって行なうことが出来る。重合法としては溶液重合、塊状重合、懸濁重合などがあげられる。
好ましい方法は重合操作、取り扱いが容易な溶液重合である。溶液重合の場合、単量体濃度は質量%で20〜80%、好ましくは40〜60%で重合する。その場合の重合溶媒は非極性の有機溶媒が好ましい。
すなわち芳香族や脂肪族炭化水素であり、特に好ましいのは油中水型エマルジョン重合に分散媒として使用する沸点190°Cないし230°Cのパラフィンあるいはイソパラフィンが好ましい。
【0041】
これら界面活性能を有する物質と親水性高分子の混合割合は、以下のようになる。
すなわち界面活性剤と親水性高分子の場合は、界面活性剤:親水性高分子=99:1〜60:40であり、好ましくは99:1〜80:20である。
また高分子活性物質と親水性高分子の場合は、界面活性剤:高分子活性物質=99:1〜60:40であり、好ましくは99:1〜70:30である。
界面活性能を有する物質の機能は、疎水的であるアスファルト舗装体への濡れ性の向上であるが、併用することができる親水性高分子の機能としては、以下のような働きがある。
すなわち散布時、舗装体に親水性を付与させる成分の溶解液の粘性を一定程度高め、舗装体への浸透時間を調節することにより界面活性物質の舗装体への浸透性を調節し、結果として舗装体への吸着率を高めることになる。
その結果、透水性あるいは排水性機能を有する舗装体に親水性を付与させる処理の持続力を高めることが期待できる。
【0042】
本発明の透水性あるいは排水性機能を有する舗装体に親水性を付与させる方法は、施工後、舗装体が完成した後、透水性仕様である舗装体表面にHLB(疎水性親水性バランス)が8〜15の界面活性剤を透水性保持剤として散布することを特徴とする。
あるいはまた舗装体の透水性あるいは排水性機能が低下し始めた時点において散布しても効果が発揮でき、透水性を一定程度回復することができる。
【0043】
本発明の透水性あるいは排水性機能を有する舗装体に親水性を付与させる方法は、舗装体の完成直後、散布する場合と舗装体を使用している場合、あるいは透水性あるいは排水性機能が低下してきた場合に処理することができる。
舗装体の完成直後においては、舗装体の透水性あるいは排水性細孔は、微細な土砂に由来する無機粉体、タイヤなどに由来する有機粉体などは存在せず、細孔は閉塞されていない。
しかし使用を開始すると徐々に細孔は閉塞していき、透水性機能は低下していく。この場合、舗装体の完成直後、本発明に係る親水性高分子と界面活性能を有する物質からなる混合物を舗装体の使用前に散布し、上記物質を舗装体の細孔に吸着させておけば、細孔の親水性が低下せず水は舗装体に浸透していき、透水機能は持続する。
【0044】
あるいは舗装体を一定期間使用した後においては、舗装体の表面はアスファルト、あるいは微細な土砂に由来する無機粉体、タイヤなどに由来する有機粉体などが前記舗装体細孔に吸着して予想外に疎水的である。
従って路面が一旦乾燥すると、雨水など水分は表面から路面内部に浸透し難くい。まして微細な砂や土、あるいはその他塗料やタイヤ由来の微細物が路面の透水細孔を塞ぐとほぼ水分は浸透しない。
この時、本発明に係る界面活性能を有する物質と親水性高分子の混合物を、水を媒体として散布し、界面活性能を有する物質と親水性高分子の混合物が舗装体の細孔に吸着し、それらが保存され微細物が舗装体の透水細孔を塞いでも水分は浸透していく。
その結果、高圧水あるいは機械的な方法によるクリーニングの頻度、また現在4〜5年で張り替えているアスファルト舗装の張り替え頻度を減少させることが期待できる。
またこの散布は、舗装体が乾燥している場合のほうが効果は高く、可能なら散布後、乾燥させることにより路面の透水細孔に確実に吸着し、効果が持続する期間が長くなる。
【0045】
これら舗装体に親水性を付与させる処理剤の適用方法としては、散水車による散水、散布、車上よりの散布や噴霧など状況に応じ適宜行うことができる。舗装体表面に本発明の舗装体に親水性を付与させる処理剤を適用する場合、有効成分としてすなわち親水性高分子と界面活性剤の合計濃度が0.001〜0.3質量%が好ましく、より好ましくは0.005〜0.1質量%である。
【0046】
本発明の施工時に透水性仕様である舗装体に親水性を付与させる方法は、アスファルトによる表面仕上げや微細な砂や土、あるいはその他塗料やタイヤ由来の微細物が路面の透水細孔を塞ぐ問題に対応した処方である。
またアスファルトの疎水性も界面活性剤物質によって水がはじく程度が下がり透水性を維持・促進する。
従って本発明の透水性あるいは排水性機能を有する舗装体に親水性を付与させる方法は、舗装体の透水細孔に親水性界面活性剤を吸着させておくことによって舗装体表面および透水細孔を一定程度親水性に保ち、水の通りを向上させておくことにある。
これによって舗装体表面アスファルトの張替え工事頻度を減少させることができる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明する。
(舗装体の親水剤処理剤の調製)
表1に記載される各薬剤を表1のような比率により配合し、処理剤試作−1〜処理剤試作−14を調製した。
界面活性剤−1は、(ポリオキシエチレン(重合度n=18)ステアリル(C=17)エーテル)、
界面活性剤−2は、(ポリオキシエチレン(重合度n=12)ドデシル(C=12)エーテル)、およびスルホコハク酸ジオクチル、グリセリン、および親水性高分子
界面活性剤−3(ポリオキシエチレン(重合度n=10)オクチル(C=8)エーテル)、およびスルホコハク酸ジオクチル、グリセリン、および親水性高分子
界面活性剤−4は、(ポリオキシエチレン(重合度n=15)ステアリル(C=17)エステル)およびスルホコハク酸ジオクチル、グリセリン、および親水性高分子、
界面活性剤−15は、(ポリオキシエチレン(重合度n=15)ステアリル(C=17)エステル)およびスルホコハク酸ジオクチル、およびグリセリン、
高分子界面活性物質−1は、(ジメチルアミノエチルメタクリレート15モル%、ラウリルアクリレート85モル%からなる共重合物酢酸塩25質量%水溶液、光散乱法による重量平均分子量11,000)、
高分子界面活性物質−2は、(メタアクリル酸5モル%、ポリオキシエチレン(重合度n=6)メタアクリレート8モル%、アクリル酸2−エチルヘキシル87モル%からなる共重合物アンモニウム塩20質量%水溶液、光散乱法による重量平均分子量8,600)である。
含有量は何れも界面活性物質(スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、グリセリンを含む)と親水性高分子の合計濃度を100%とした場合の各成分の濃度を表わす。
【0048】
【表1】

PVAc;酢酸ビニル構造単位を有する水分散性高分子、PAAM;アクリルアミド構造単位を有する水溶性高分子、PNVF;N−ビニルホルムアミド構造単位を有する水溶性高分子、PVAL;ビニルアルコール構造単位を有する水溶性高分子
【0049】
(実施例1)
砕石6号を76質量%、砕石7号を5質量%、砂を13.5質量%、石粉を5.5%、およびアスファルトを4.8質量%からなる排水性舗装用アスファルト混合物を調製し一辺が20cm、厚さ5cmの正方形の試験用アスファルト板を作成した。
これを用い表1で配合した試作処理剤1〜14のアスファルトへの浸透性テストを実施した。
各試作処理剤を0.05質量%に希釈し、試験用アスファルト板に10mLを滴下し、全量がしみ込むまでの時間を測定し、浸透性の目安とした。
結果を表2に示す。
【0050】
(比較例1)
また親水性高分子を添加しない試作−15、処理剤を添加しない水に関しても実施した。結果を表2に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
(実施例2)
表1の試作−3、7、8、9、10、13の各々を0.05質量%に希釈し、乾燥した透水性あるいは排水性仕様、施工6月後の舗装路表面に散水車によって100m当たり150Lの割合で、舗装路1Kmに亘って散布した。
散布6月後、降雨量10mm/時間の雨天の日、透水性の観測を実施した。
結果を表3に示す。
【0053】
(比較例2)
表1の試作−15および薬剤無添加水に関して、実施例2と同様な試験を実施した。結果を表3に示す。
【0054】
結果として本発明に係る処理剤を散布した各区画は、路面上に雨水が留まることなく透水性は、保持されている状態であった。これに対し、試作−15および薬剤無添加水を散布した区画は、同日の観察によると路面上に水が薄く張り、透水性が低下していることが観測された。
【0055】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性能を有する物質と親水性高分子の混合物を、水を媒体として散布することを特徴とする透水性あるいは排水性機能を有する舗装体に親水性を付与させる方法。
【請求項2】
前記界面活性能を有する物質が、HLB(疎水性親水性バランス)8〜15の界面活性剤であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記界面活性剤が非イオン性であり、下記一般式(1)で表わされることを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の方法。
【化1】

(前記一般式(1)において、PはCOOあるいはOを示し、mは炭素数8〜17の脂肪族アルキル基を示し、nはエチレンオキサイド平均付加モル数を示し、5〜20の数である。)
【請求項4】
前記界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエ−テル、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム(C2037NaOS)及びグリセリンの混合物からなるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記界面活性能を有する物質が、高分子界面活性物質であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
親水性高分子が、下記の非イオン性の水溶性あるいは水分散性高分子(イ)から(ニ)より選択される一種以上であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
(イ)アクリルアミド構成単位を主体として含有する(共)重合物
(ロ)酢酸ビニル構成単位を主体として含含有する(共)重合物
(ハ)ビニルアルコール構成単位を主体として含有する(共)重合物
(ニ)N−ビニルカルボン酸アミド構成単位を主体として含有する(共)重合物
【請求項7】
前記透水性あるいは排水性機能を有する舗装体が完成した直後あるいは舗装体の透水性機能が低下し始めた時点で散布することを特徴とする請求項1に記載の方法。

【公開番号】特開2011−196149(P2011−196149A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66485(P2010−66485)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(506111402)株式会社エコボンド (6)
【出願人】(000142148)ハイモ株式会社 (151)
【Fターム(参考)】