説明

透水性土嚢

【課題】土や砂などの土粉粒を原料として、環境汚染の防止に有用な透水性土嚢を製造すること。多量の降水や流水に対して団粒物及び団塊物が壊れないようにすること。
【解決手段】土粉粒にセメントを加えて攪拌して混合物Aを得、混合物Aを攪拌しながらビースターの希釈液Xを加えて攪拌して混合物Bを得、混合物Bの含水比を確認した後に、混合物Bを養生することにより団粒物を製造し、団粒物を網の袋に詰めて団粒物の土嚢2b〜2dとする。また混合物Bを締め固め、締め固めたものを14〜28日間養生した後に破砕し、破砕後の固形物10を円筒形のドラム11に入れてドラム11を回転させて角を除去し、さらにセメントとビースターの希釈液Xを加えてドラム11を回転させることにより団塊物を製造し、団塊物を網の袋に詰めて団塊物の土嚢2a〜7aとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
粘性土、シルト、砂、レキ及び岩石を砕いた粒子(以下単に「土粒子」という。)、使用後の鋳物砂や壁土などをばらして得た廃棄された砂や土、土粒子を主たる原料とする陶磁器やコンクリートなどの廃棄物を砕いた粒子、以上をまとめて土粉粒という。
本発明は土粉粒をセメントで固めることにより団粒物又は団塊物を製造する方法、及び前記団粒物又は団塊物を網の袋に入れてなる透水性を有する土嚢に関する。
【背景技術】
【0002】
土質改良剤としてはクエン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどを含有する無機系土質改良剤が知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。また入手可能な土質改良剤としては「ジオビースター(登録商標、以下単に「ビースター」という。)」という名称で株式会社田口技術研究所(住所 大阪府堺市草部1199)から販売されている土質改良剤がある。
我が国には赤土などと呼ばれる粘土質の土壌を有する地域が多くある。粘土質の土壌を構成する粘性土は雨滴が当たると容易に分散して水に溶けて泥水になり流出してしまう。粘土質の土壌であっても木や草が生えている場所では、草や木により雨滴が直接土壌に当たる衝撃が緩和されるので、粘性土が流出することを防止する効果はある。
しかし木や草で全面が覆われていた粘土質の土壌の山林の傾斜面などを開墾して耕作地として使用すると、粘土質の多くの地面が露出して裸地となるため直接雨滴を受けることになり、地表部の粘性土が水に溶けて泥水が流れ出て河川の流域や海洋を汚染する原因となっている。
特に沖縄県では粘性土の流出により、河川流域が汚染されて藻類、水中昆虫類などが減少する問題が発生したり、海岸の珊瑚礁や干潟に粘性土が堆積して海を汚染し、漁業や観光産業への影響が大きくなったことから、沖縄県赤土等流出防止条例を制定して対策を行っているが、依然として粘性土の流出による環境汚染は続いている。
【特許文献1】特開昭61−133141号公報
【特許文献2】特開2001−303056号公報
【0003】
そこで試行錯誤の実験を繰り返した結果、土質改良剤を利用して粘性土をセメントで固めて1〜10mm程度の粒体(以下単に「団粒物」という。)にする製造方法及び粘性土をセメントで固めて10〜100mm程度の塊体(以下単に「団塊物」という。)を製造する方法を発明することができた。
実験の結果、本発明による団粒物及び団塊物は水に溶けず、透水性と泥水に含まれる粘性土などの微粒子を濾過する機能を有することが判明した。
そこで団粒物や団塊物を層状にして箱の中に積み、多量の水を降水させたり流したりして濾過実験を行ったところ、水滴の落下する力や水の流れる力により団粒物や団塊物が動き、団粒物同士や団塊物同士が衝突して壊れてしまった。団粒物及び団塊物はこのような使用に耐える程十分な強度を持っていなかったことが原因と思われる。
続いて団粒物を網の袋に詰めてなる土嚢(以下単に「団粒物の土嚢」という。)及び団塊物を網の袋の中に詰めてなる土嚢(以下単に「団塊物の土嚢」という。)を造り、団粒物の土嚢や団塊物の土嚢を並べて、多量の水を降水させたり流したりして濾過実験を行ったところ、団粒物も団塊物も壊れることがなかった。
以上の実験結果により、透水性を有する団粒物の土嚢及び団塊物の土嚢(以下両者をまとめて「透水性土嚢」という。)が耕作地や傾斜地などから土が流れ出ることを防いだり、泥流から浮遊物を濾過するために有用であることがわかった。
また、荒れ地や耕作地などにある粘性土、シルト、砂、レキ及び岩石を砕いた粒子などの使用価値の低い土粒子や、使用後の鋳物砂、使用後の壁土、陶磁器やコンクリートを砕いた粒子などの廃棄物を材料として、本発明により透水性土嚢を製造することができることも確かめた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、利用価値の小さな土粉粒又は廃棄物たる土粉粒を原料として、水に溶けず透水性と濾過機能を有する団粒物や団塊物を製造し、これを網の袋に詰めることにより環境汚染の防止に有用な透水性土嚢を得ることにある。
また他の目的は、団粒物及び団塊物をそのまま積層して泥水の浄化層として使用する場合に生じる、雨水の落下する力や水の流れる力により団粒物同士や団塊物同士が衝突して壊れてしまう問題を解決して、多量に雨水を降らせても水を流しても団粒物や団塊物が壊れないようにすることにある。
さらに他の目的は、耕作地や荒れ地などから粘性土などの土が流れ出すことを防止すると共に、流れ出た泥水の浮遊物を濾過してきれいな水だけを下流に流すことにより、河川の流域や海洋の汚染を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
土粉粒にセメントを加えて攪拌して混合物Aを得る工程と、混合物Aを攪拌しながら土質改良剤と水を加えて混合することにより混合物Bを得る工程と、混合物Bの含水比を確認する工程と、混合物Bを養生して団粒物を製造する工程と、団粒物を篩にかけてサイズ毎に分ける工程と、サイズ毎に団粒物を網の袋に詰める工程とからなる製造方法により団粒物の土嚢を得る。
また混合物Bを締め固める工程と、締め固めたものを14〜28日間養生する工程と、養生後の締め固めたものを破砕して固形物を得る工程と、破砕後の固形物の角を除去する工程と、角を除去した固形物の外面にセメントと土質改良剤を付着させて団塊物を製造する工程と、団塊物を網の袋に詰める工程とからなる製造方法により団塊物の土嚢を得る。
【発明の効果】
【0006】
本発明により利用価値の小さな土粉粒を原料として、環境汚染の防止に有用な団粒物及び団塊物を製造することができた。
また団粒物及び団塊物をそのまま積層して泥水の浄化層として使用すると、団粒物同士や団塊物同士が衝突して壊れてしまう問題を解決して、多量の雨が降っても水が流れても団粒物や団塊物が壊れない透水性土嚢を得ることができた。
さらに透水性土嚢を利用することにより、耕作地や荒れ地などから粘性土などの土が流れ出すことを防止するだけでなく、耕作地や荒れ地などから流れ出た泥水から浮遊物を濾過してきれいな水だけを下流に流す構成にすることが可能になり、河川の流域や海洋の汚染を防止することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
土粉粒にセメントを加えて攪拌し混合物Aを得た後に、混合物Aに土質改良剤を加えて攪拌し混合物Bを得る、さらに混合物Bを養生することにより土粉粒をセメントで固めて得た団粒物を製造し、団粒物を網の袋に詰めてなる団粒物の土嚢とする。
粘性土やシルトが多くの水分を含んでいる場合があるが、水分の多いものを原料とするときは予め天日や風に当てて乾燥させておくことが好ましい。土粉粒のサイズはどんなに細かくても構わないが、大きな固まりは3mm以下に砕いた粒子にして使用する。
土粉粒にセメントを加えて攪拌する工程においては、セメントが土粉粒に混ざって見えなくなったときに混合物Aが得られる。
土質改良剤を供給するときには土質改良剤を適量の水で希釈して供給することが好ましい。土質改良剤としてビースターを使用する場合は、容積1立方メートルの土粉粒(以下単に「単位粉粒」という。)に対して800〜1000gのビースターを用意し、ビースターの重量の10倍の水である8〜10kgの水を加えてビースターの希釈液Xを作っておく。
そしてビースターの希釈液Xを供給しながら攪拌を続け、希釈液Xが全体に均一に混ざり合ったときに混合物Bが得られる。
網の材質については特にこだわるものではないがナイロン、ポリエステル、ビニロンなどの合成繊維及び麻、木綿、木材パルプ、竹、バナナ、月桃、ケナフなどの植物性繊維さらには鉄やステンレスなどの金属からなる網が好ましい。網目の開きは袋の中に詰める団粒物や団塊物が外にこぼれ出ないサイズであればよいが、実験の結果では袋の中に詰める団粒物や団塊物の最小サイズの1/4〜1/2とすることが好ましい。
【0008】
土粉粒にセメントを加えて攪拌し混合物Aを得た後に、混合物Aに土質改良剤を加えて攪拌し混合物Bを得る、続いて混合物Bの含水比を確認し、含水比が不足する場合は水を加えて混合物Bを攪拌する。含水比が適正な混合物Bを養生することにより土粉粒をセメントで固めて得た団粒物を製造し、団粒物を網の袋に詰めてなる団粒物の土嚢とする。
本発明は上記した発明に対して、含水比を確認して含水比が不足する場合に水を加えて混合物Bを攪拌する工程を追加した発明である。重複した記載を避けて含水比についてのみ記載する。
含水比は(混合物Bに含まれる水の重量×100/混合物Bの全重量)で計算され、適正な含水比は60〜70%であるが、おおよその目安として、混合物Bを手で握ったときに団子状の固まりになれば適正な含水比と判断して構わない、一方混合物Bを手で握ったときにバラバラと崩れる場合は水の量が不足していると判断することができる。
上記したいずれかに記載した団粒物の土嚢であって、混合物Aを得る工程において、単位粉粒あたり50〜120kgのセメントを加えて混合物Aを得たことを特徴とする団粒物の土嚢とする。
試行錯誤の実験を繰り返した結果、単位粉粒あたり50〜120kgのセメントを加えることが好ましかったからである。
【0009】
上記したいずれかに記載した団粒物の土嚢であって、混合物Bを得る工程おいて、土質改良剤の希釈液を霧状に噴霧することにより混合物Aに土質改良剤を加えて混合物Bを得たことを特徴とする団粒物の土嚢とする。
試行錯誤の実験を繰り返した結果、土質改良剤の希釈液を霧状に噴霧しながら2〜10分程度の時間をかけて混合物Aに土質改良剤を加える方法が好ましかったからである。
上記したいずれかに記載した団粒物の土嚢であって、混合物Bを24〜36時間養生することにより得た団粒物の土嚢とする。
試行錯誤の実験を繰り返した結果、混合物Bを24〜36時間養生することが好ましかったからである。
上記したいずれかに記載した団粒物の土嚢であって、土粉粒をセメントで固めて得た団粒物を篩にかけてサイズ毎に分け、サイズ毎に網の袋に詰めてなる団粒物の土嚢とする。もちろん、各サイズを混合した団粒物の土嚢も有用である。
団粒物のサイズの小さな透水性土嚢は耕作地や田の排水口などに使用することに適しており、団粒物のサイズの大きな透水性土嚢は道路、線路及び造成地などの盛り土や法面などに使用することに適している。また、各サイズを混合した団粒物の土嚢は河川の浄化に適している。 透水性土嚢を使用する場所や目的に応じて適切に使用するためには、団粒物のサイズ毎に分けた透水性土嚢や各サイズの団粒物を混合した透水性土嚢を製造することが好ましいからである。
篩い分けたときに1mm以下の粒子のものが発生するが、1mm以下の粒子は土粉粒として次に団粒物又は団塊物を製造するときの原料に混ぜて使用することが好ましい。
【0010】
上記したいずれかに記載した養生前の混合物Bを締め固め、締め固めたものを14〜28日間養生する、続いて養生後の締め固めたものを破砕して固形物とし、破砕後の固形物の角を除去した後に、角を除去した固形物の外面にセメントと土質改良剤を付着させることにより、土粉粒をセメントで固めて得た団塊物を製造し、団塊物を網の袋に詰めてなる団塊物の土嚢とする。
混合物Bを締め固めるときには平面に混合物Bをおいて、土木工事において道路の舗装を転圧するときに使用するローラーを使用して、混合物Bをローラーで転圧して層状に締め固めることが好ましい。
締め固めたものを14〜28日間養生するのは試行錯誤の実験を繰り返した結果、この期間の間養生することが好ましかったからである。養生後の締め固めたものを破砕して100mm程度以下の固形物にすることが好ましい。この程度のサイズは取り扱いが容易だからである。
破砕後の固形物の角を除去するのは、角の部分は崩れやすい部分なのでこの部分を取り除くことにより、容易に崩れない団塊物を得るためである。固形物の外面にセメントと土質改良剤を付着させるのは、固形物の表面においてセメントを結晶化させて表面の硬い団塊物を得るためである。
土質改良剤を供給するときには土質改良剤を適量の水で希釈して供給することが好ましい。土質改良剤としてビースターを使用する場合は、単位粉粒に対して800〜1000gのビースターを用意し、ビースターの重量の10倍の水である8〜10kgの水を加えてビースターの希釈液Xを作って供給する。
網の袋の材質については上記した通り合成繊維、植物性繊維及び金属材料からなる網を使用し、網目の開きについても上記した通り、団塊物の最小サイズの1/4〜1/2とすることが好ましい。
【0011】
上記した団塊物の土嚢であって、破砕後の固形物を円筒形のドラムに入れてドラムを回転させることにより固形物の角を除去し、続いてセメントと土質改良剤を加えてドラムを回転させることにより固形物の外面にセメントと土質改良剤を付着させて得た団塊物の土嚢とする。
破砕後の固形物を円筒形のドラムに入れてドラムを回転させるのは、固形物の角を取り除く方法として適しているからである。容易に壊れることのない団塊物を得るため、目視により固形物の角が取れたか否かを判断する。
さらにセメントと土質改良剤を加えてドラムを回転させたのは、固形物の角を取り除くための装置を利用することが可能であり、塊の表面にセメントと土質改良剤を付着させてセメントを結晶化させるために適しているからである。
上記した団塊物の土嚢であって、セメントと土質改良剤を加えてドラムを回転させる工程において、単位粉粒あたり50〜120kgのセメントを加えて得た団塊物の土嚢とする。
試行錯誤の実験を繰り返した結果、単位粉粒あたり50〜120kgのセメントを加えることが好ましかったからである。
上記した団塊物の土嚢であって、セメントと土質改良剤を加えてドラムを回転させる工程において、土質改良剤の希釈液を霧状に噴霧することにより土質改良剤を加えて得た団塊物の土嚢とする。
試行錯誤の実験を繰り返した結果、土質改良剤の希釈液を霧状に噴霧しながら2〜10分程度の時間をかけて土質改良剤を加える方法が好ましかったからである。
【実施例1】
【0012】
以下本発明の実施例1を図1に示し説明する。実施例1は容積1立方メートルの土粉粒
から団粒物を製造する実施例である。粘性土やシルトを原料とするときは予め天日に干したり送風するなどして乾燥させて使用する。岩、陶磁器及びコンクリートブロックなどは粉砕して2mm程度以下にして使用する。
まず単位粉粒あたり100kgのセメントを加えて攪拌し混合物Aを得る。概略両者が混ざり合うとセメントが見えなくなるのでこの状態になるまで攪拌する。
混合物Aを得る工程と並行して土質改良剤の希釈液を作る。実施例1では土質改良剤としてビースターを使用し、単位粉粒あたり900gのビースターに9kgの水を加えて希釈することにより希釈液Xを作る。
続いて混合物Aを攪拌しながら希釈液Xを霧状に噴霧する。希釈液Xの吹き付けは2〜10分の間に全量を供給する。希釈液Xの吹き付けが終了した後もさらに攪拌を続け、希釈液Xが充分混ざったときに混合物Bを得ることができる。
続いて混合物Bの含水比を確認する。混合物Bを手で握ったときに団子状の固まりになる場合は適正な含水比と判断し、混合物Bを手で握ったときにバラバラと崩れるときは水の量が不足していると判断する。
水の量が不足している場合はさらに水を加えて攪拌し、混合物Bを手で握ったときに団子状の固まりになるまで水の追加と攪拌を繰り返す。
適正な含水比の混合物Bを24〜36時間養生することにより土粉粒をセメントで固めて得た団粒物を製造することができる。
【0013】
続いて団粒物を篩にかけて1mm以下、1〜3mm、3〜5mm、5〜10mmのサイズに分ける。1mm以下のものは土粉粒として次に団粒物を製造するときの原料として使用する。他のサイズのものはサイズ毎に網の袋に詰めて団粒物の土嚢を製造する。
実施例1では麻の網を使用し、1〜3mmの団粒物は開き目0.4mmの網、3〜5mmの団粒物は開き目1.2mmの網、5〜10mmの団粒物は開き目2mmの網をそれぞれ使用した。
また、実施例1では土嚢の重量が10kg、20kg、50kg、100kg、300kg及び1000kgの各種類の土嚢を製造した。
実施例1の団粒物の土嚢の内、10kgや20kgのものは耕作地や荒れ地などの裸地になるところに置いて、雨滴が直接土壌に当たらないようにすることにより粘性土が分散して水に溶けて泥水になることを防いだり、田の排水口に置いて粘性土が流出することを防止する目的で使用することができる。
また50〜300kgの団粒物の土嚢は道路、線路、造成地などの盛り土として使用することができる。団粒物の土嚢は透水性があるため盛り土にしみこんだ雨水を排出して、盛り土が流動化したり崩れることを防止する効果がある。
さらに道路、線路、造成地などの法面に使用することができる。盛り土の土が雨水と共に流出することを防止する効果が得られるからである。さらに団粒物の土嚢には草や木が生えるので、自然と一体化した法面を得る効果が得られるからである。
なお1000kgの団粒物の土嚢2b、2c、2dは実施例3で使用する。
【実施例2】
【0014】
実施例2を図1、図2に示し説明する。実施例2は実施例1で製造した養生前の混合物Bを材料として団塊物を製造する。
混合物Bを水平面において、道路の舗装工事に使用するローラーを使用して、混合物Bをローラーで転圧して層状に締め固める。続いて締め固めたものを14〜28日間養生した後に破砕する。実施例2では破砕機としてクラッシャーを使用して、破砕後の固形物の大きさが100mm程度以下になるようにする。
続いて破砕後の固形物10を円筒形のドラム11に入れて、駆動ローラー11aを回転させることにより矢印11b方向にドラム11を回転させる。このようにすると固形物10はドラム11の中で自転しながら持ち上げられて落下しながら互いに衝突し、固形物10の角は取り除かれて角が丸くなった固形物10を得ることができる。このとき目視により固形物10の角が取れたか否か判断する。
予め単位粉粒に対して900gのビースターを用意し、ビースターの重量の10倍の水である9kgの水を加えてビースターの希釈液Xを作っておく。
固形物10の角が取れた後に、単位粉粒あたり85kgのセメントを加え、ビースターの希釈液Xを霧状に噴霧しながら2〜10分程度の時間をかけて加えつつ、ドラム11を回転させる。
このようにすることにより、回転するドラム11の中で固形物10は自転しつつセメントやビースターの希釈液と接触して、固形物10の表面にセメントとビースターの希釈液が付着して、セメントは固形物10の表面で結晶化して表面が硬くて強い団塊物を得ることができるからである。
以上により製造した団塊物を網の袋に詰めて、重さ50kgの団塊物の土嚢7a、100kgの団塊物の土嚢6a、200kgの団塊物の土嚢5a、300kgの団塊物の土嚢4a、500の団塊物の土嚢3a、1000kgの団塊物の土嚢2aを製造する。
【実施例3】
【0015】
実施例3を図3に示し説明する。実施例3は透水性土嚢を使って急斜面1bから土砂が崩れないようにすると共に、流れ出た泥水から浮遊物を濾過してきれいな水だけを下流に流すようにすることにより、河川の流域や海洋の汚染を防止する目的で透水性土嚢を使用する発明である。
なだらかな斜面1aと急斜面1bとからなる荒れ地において、なだらかな斜面1aにいずれも1000kgの重さを有する団塊物の土嚢2a及び団粒物の土嚢2b〜2dを置いた。急斜面1bから土嚢や土砂などが落下しようとする力に耐えるために重量の重い土嚢を並べて置いたものである。
このとき急斜面1bに近い位置に団塊物の土嚢2aを置き、続いて5〜10mmサイズの団粒物の土嚢2b、3〜5mmサイズの団粒物の土嚢2c、1〜3mmサイズの団粒物の土嚢2dの順で置いた。上流では荒く濾過し段々下流に向うに従い細かい浮遊物を濾過する構成にしたものである。
急斜面1bにはいずれも団塊物の土嚢を置いた。このときなだらかな斜面1aに近い方から500kgの団塊物の土嚢3a、300kgの団塊物の土嚢4a、200kgの団塊物の土嚢5a、100kgの団塊物の土嚢6a、50kgの団塊物の土嚢7aの順で置いた。土嚢の落下を防ぐため上方に向かうにつれ重量の軽い土嚢を置くようにしたものである。
このように透水性土嚢を置くと、透水性土嚢があるため雨滴が直接土壌に当たることがなく、土壌が流出することを防止する効果が得られる。また地表部を流れる雨水については、団粒物や団塊物が泥水に含まれる粘性土などの微粒子を濾過してきれいな水だけを下流に流すので、河川の流域や海洋の汚染を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は粘性土からなる山や傾斜地の保全を行う行政機関や行政機関の発注する仕事を請け負う土木産業、耕作地や荒れ地の改良サービスを提供する産業、透水性土嚢を製造販売する産業及び農産業などで利用される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】団粒物の土嚢及び団塊物の土嚢を製造する工程を表した工程図である。
【図2】破砕後の固形物をドラムに入れて、ドラムを回転させる状態を表した正面図である。
【図3】なだらかな斜面から急斜面にかけて透水性土嚢を置いた状態を表した断面図である。
【符号の説明】
【0018】
1a:なだらかな斜面 1b:急斜面 2a:団塊物の土嚢
2b:団粒物の土嚢 2c:団粒物の土嚢 2d:団粒物の土嚢
3a:団塊物の土嚢 4a:団塊物の土嚢 5a:団塊物の土嚢
6a:団塊物の土嚢 7a:団塊物の土嚢 10 :固形物
11 :ドラム 11a:駆動ローラ 11b:矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性土、シルト、砂、レキ及び岩石を砕いた粒子(以下単に「土粒子」という。)、使用後の鋳物砂や壁土など廃棄された砂や土、土粒子を主たる原料とする陶磁器やコンクリートなどの廃棄物を砕いた粒子、以上をまとめて土粉粒といい、
前記土粉粒にセメントを加えて攪拌し混合物Aを得た後に、前記混合物Aに土質改良剤を加えて攪拌し混合物Bを得る、さらに前記混合物Bを養生することにより土粉粒をセメントで固めて得た団粒物を製造し、前記団粒物を網の袋に詰めてなることを特徴とする土嚢(以下単に「団粒物の土嚢」という。)。
【請求項2】
土粉粒にセメントを加えて攪拌し混合物Aを得た後に、前記混合物Aに土質改良剤を加えて攪拌し混合物Bを得る、続いて前記混合物Bの含水比を確認し、含水比が不足する場合は水を加えて前記混合物Bを攪拌し、さらに含水比が適正な前記混合物Bを養生することにより土粉粒をセメントで固めて得た団粒物を製造し、前記団粒物を網の袋に詰めてなることを特徴とする団粒物の土嚢。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載した団粒物の土嚢であって、混合物Aを得る工程において、容積1立方メートルの土粉粒(以下単に「単位粉粒」という。)あたり50〜120kgのセメントを加えて混合物Aを得たことを特徴とする団粒物の土嚢。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載した団粒物の土嚢であって、混合物Bを得る工程おいて、土質改良剤の希釈液を霧状に噴霧することにより混合物Aに土質改良剤を加えて混合物Bを得たことを特徴とする団粒物の土嚢。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載した団粒物の土嚢であって、混合物Bを24〜36時間養生して得たことを特徴とする団粒物の土嚢。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載した団粒物の土嚢であって、土粉粒をセメントで固めて得た団粒物を篩にかけてサイズ毎に分け、サイズ毎に網の袋に詰めてなることを特徴とする団粒物の土嚢。
【請求項7】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載した養生前の混合物Bを締め固め、前記締め固めたものを14〜28日間養生する、続いて養生後の前記締め固めたものを破砕して固形物とし、破砕後の前記固形物の角を除去した後に、角を除去した前記固形物の外面にセメントと土質改良剤を付着させることにより、土粉粒をセメントで固めて得た団塊物を製造し、前記団塊物を網の袋に詰めてなることを特徴とする土嚢(以下単に「団塊物の土嚢」という。)。
【請求項8】
請求項7に記載した団塊物の土嚢であって、破砕後の固形物を円筒形のドラムに入れて前記ドラムを回転させることにより前記固形物の角を除去し、続いてセメントと土質改良剤を加えて前記ドラムを回転させることにより前記固形物の外面にセメントと土質改良剤を付着させて得たことを特徴とする団塊物の土嚢。
【請求項9】
請求項8に記載した団塊物の土嚢であって、セメントと土質改良剤を加えてドラムを回転させる工程において、単位粉粒あたり50〜120kgのセメントを加えて得たことを特徴とする団塊物の土嚢。
【請求項10】
請求項9に記載した団塊物の土嚢であって、セメントと土質改良剤を加えてドラムを回転させる工程において、土質改良剤の希釈液を霧状に噴霧することにより土質改良剤を加えて得たことを特徴とする団塊物の土嚢。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−138461(P2008−138461A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−326586(P2006−326586)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【出願人】(506383168)
【出願人】(506383353)
【出願人】(506383043)
【出願人】(506403053)
【Fターム(参考)】