説明

透水構造

【課題】 浸透管の洗浄を容易に行えるようにする
【解決手段】雨水等の水の流出抑制施設を備えた排水システムで用いる集水桝10の底部を貫通して地中に配置するための浸透管20であって、浸透管20は、集水桝10に取り付けたとき、集水桝10の底から所定距離を隔てた雨水を取り入れるための開口をその一端部に有する共に、その他端側は底蓋30で閉塞し、その周面に浸透孔24aを複数備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水の流出抑制施設を備えた排水システムで用いる集水桝と、浸透管と、地盤中の浸透管の周囲に設けた導水層とからなる透水構造に関し、とくに浸透管のメンテナンスのための洗浄が容易でかつ透水効率のよい透水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、雨水を地中に戻し排水と植物の涵養などの目的のため、排水溝、集水桝と浸透管とを組み合わせた排水システムが知られている(特許文献1参照)。
この排水システムでは、浸透管は地中に埋設された状態でその上部が集水桝に取り付けら、集水桝で集めた水を上端開口から取り入れ、取り入れた水を管壁などに設けた浸透孔から地下に浸透させる。
このような排水システムにおいて使用される浸透管として、その下端に底部位置決め部材を備えた底蓋が取り付けられたものが知られている(特許文献2参照)。
【0003】
図6は上記浸透管20の下端部(底部)を示し、図6Aは浸透管に底蓋を取り付けた状態を示す縦断面図、図6Bは底蓋の平面図である。底蓋30は、図示のように中央に円形の透水孔32を備えた例えば鉄系材料できた円盤状部材である。
なお、この例では、リブ状の底部位置決め部材34、透水シート20a巻きした浸透管20の下端に取り付けられるための一対の支持片36が示されている。
【0004】
浸透管20は、地中に推進させてケーシング内においてその底蓋30の透水孔32を基礎地盤上に置いて直立配置され、その状態で前記浸透管20とケーシングとの間に砂を投入した後、ケーシングに正逆回転を与えて引き抜くことで、地中に埋設される。
【0005】
埋設された浸透管20に流入した水は浸透孔や底部の底蓋30の透水孔32から地中に浸透又は透水されるが、使用しているうちに雨水と一緒に流入した土砂などが浸透管20内部及び周りの擁壁を構成する砂層内に堆積し、浸透又は透水効果が低減する。この浸透管20中の堆積物は粘土に近い性状を有するため、これを除去するのは容易ではなく、そのため、従来は、定期的に高圧水による洗浄が行われている。即ち、高圧水を浸透管20中に注入すると共に排水ポンプで浸透管20から排水を行い、浸透管20や砂層中に堆積した堆積物を排水と一緒に排出して原状回復を図っている。
【0006】
ところが、従来の浸透管20の底部の底蓋30には透水用の孔32が空けてあるか、又はそもそも底蓋30のないもの(図7参照:浸透管20の底部にはリブ状の底部位置決め部材34のみが設けられている。図7はその底面図である)もあるため、洗浄時の高圧水が浸透管20の底部基礎地盤に直接侵入し、基礎地盤を攪乱し、その高圧水で基礎地盤を破壊するだけではなく、そこから土砂を吸い上げてしまうため、浸透管20が沈下することが起こり得る。
【0007】
浸透管20は、既に述べたように集水桝に取り付けられ、集水桝は下水溝(側溝)に取り付けられており、下水溝は落差を利用して一方に流れるようにその勾配が設定されている。その勾配は微妙であり、浸透管20の高さもミリ単位の精度が要求される。したがって、浸透管20が沈下してその高さが変わると、それに固定された集水桝及び排水溝も沈下して排水溝の傾斜が変わり、設定した落差が保持できなくなるため、正常な排水が出来なくなる。そのため、高圧水を用いた洗浄では、基礎地盤を破壊しないように慎重に行わざるを得ない。またそれだけではなく、仮に慎重に行っても、排水を行うときに基礎地盤の土砂を吸い上げて浸透管20の沈下を招くことがある。
また、従来の浸透管20では通常の使用時にその底部から浸透又は透水する水で基礎地盤が締まって体積が収縮することがあり、それに伴って浸透管20が沈下する虞もある。
【0008】
また、浸透管20の底が開放していると、浸透管20からの水の浸透又は透水が行われる場合には、浸透管20上部の浸透孔を通って地中に浸透する機会が減少し、浸透管20全体の浸透面積が減少し、却って浸透又は透水効率が低下することもある。つまり、浸透管中の水位が早期に低下するため浸透管上部からの浸透が行われず、また、浸透管下部では作用する水圧も低下するため浸透速度(透水係数)が低下する。このように、浸透管20の下端(底面)に孔を設けることで却って浸透管20中の排水に時間が掛かる場合が生じることも分かった。
【特許文献1】特開2006−118265号公報
【特許文献2】特開2007―177488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願発明は、上記従来の浸透管の問題を解決するためになされたものであって、その第1の目的は、浸透管を清掃する際に、従来のようにその基板地盤を損傷して浸透管の沈下が生じる虞れがなく、安全かつ確実に清掃作業が行える浸透管を提供することである。
また、その第2の目的は、浸透管中の水位が早期に低下することを防止して浸透又は透水効率の向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は透水構造であって、雨水の流出抑制施設を備えた排水システムで用いる集水桝と、上端部に雨水を取り入れるための開口を有し、周面に雨水浸透孔を備えた浸透管と、地盤中の浸透管の周囲に設けた導水層と、を備え、前記浸透管は底部が閉塞されていると共に、その上部を前記集水桝の底面から集水桝内に突出させたことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載された透水構造において、前記浸透管は底部が蓋体で閉塞されており、前記蓋体は浸透管の径以上で、導水層の径以下に形成されていることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載された透水構造において、前記蓋体の周縁に上方及び/又は下方に所定の高さの起立縁が形成されていることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載された透水構造において、前記導水層が粒状体によって形成されたものであることを特徴とする。
請求項5の発明は透水構造であって、雨水の流出抑制施設を備えた排水システムで用いる集水桝と、透水構造の中空管と、上端部に雨水を取り入れるための開口を有し前記中空管の上端部に取り付けた不透水構造の導水管で構成された浸透管と、を備え、前記中空管は底部が閉塞されていると共に、前記導水管の上部を前記集水桝の底面から集水桝内に突出させたことを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項5に記載された透水構造において、 前記中空管は多孔性部材で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、浸透管の洗浄を行う場合に、高圧の洗浄水が浸透管の底部(底面)から基礎地盤に侵入することがないから、従来のように高圧洗浄の際に、浸透管が沈下することがない。
また、浸透水は浸透管の周面のみから地中に浸透するので、従来のように浸透管底面からも透水するものに比して、浸透管中の水位が早期に低下する現象が抑止され、浸透管の周壁に設けたより広い浸透面を有効活用できるため、雨水の効率的な浸透が行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の透水構造の第1の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態の透水構造に用いる浸透管及びそれに取り付ける底蓋を示し、図1Aはその縦断面図であり、また、図1Bは底蓋の平面図である。
浸透管20は基本的には従来のものと同じ構成であり、その周りに透水シート20aが巻き締められている。浸透管20は、地中に埋設したときの上端側がフィルター21を備えた開口となっており、この開口に続く所定長さの不透水構造部分22と、この不透水構造部分22に続く周面に多数の浸透孔24aを備えた地下浸透部分24と、底蓋30で閉塞された他端部(底部)とから成っている。
ここで、本実施形態に係る浸透管20は、上記底蓋30で地中側端部(底部)が閉塞されている点で従来の浸透管20と相違している。
【0013】
即ち、従来の浸透管20では、雨水の地中への浸透を促進するために底蓋30の中央部等に開口が設けられているが、本実施形態では図1Bに示すように開口は一切設けられておらず、その径は浸透管の径以上でかつ導水層の径以下に形成されている。その他の構成は基本的に従来の底蓋と同様であり、図1A中、36は浸透管20の下端を挿入してボルト止めするための一対の支持片であって、図1Bに示すように90°間隔に設けられている(なお、浸透管20と底蓋30との取付構造はこれに限らず他の周知の取付手段を適用することができる)。また、図示していないが、底蓋30の周りに従来と同様に、例えば各90°毎にリブ状の底部位置決め部材が設けられる。
【0014】
図2は、浸透管20を配置した集水桝10の部分を拡大して模式的に示した断面図であり、例えば、道路に沿って設けた集水桝10に浸透管20を配置した構造を示している。ここでは、側溝12を通して集水桝10に集めた雨水を、集水桝10に設置した浸透管20を通して地中に浸透させている。
【0015】
集水桝10は、コンクリートでできた略矩形の桝状をなし、側溝12と図示しない任意の手段、例えばボルトで連結されるとともに、そのほぼ中央部分には、浸透管20がその底面から所定の高さHだけ残して地中に埋設されて配置されており、かつその上部は集水蓋(グレーチング)14で覆い、雨水が前記側溝12と共に集水蓋14に設けた複数の開口14aからも流入するよう構成されている。
【0016】
浸透管20は、集水桝10に取り付けたとき、その上端部の開口には、雨水と一緒に集水桝10に流入するゴミを分離するためのフィルター21を取り付け、集水桝10の底面に設けた開口10aを通して集水桝10中に不透水構造部分22の所定の長さHを残して下部は地中に埋設する。これにより、集水桝10中の深さHまでは砂などを沈殿させ、浸透管20には取り込まないようにしている。
【0017】
また、浸透管20は、底部に投入した砕石などで構成された基礎地盤G上に配置され、かつ周囲は浸透管20から浸透した水を地盤中に導く導水層、即ち投入された粒状体である砂壁又は砂層Sで支持されて地中に埋設又は立設されている。
この構造において、集水蓋14の開口14a或いは側溝12から流入した雨水は、集水桝10に集められてその中に溜まる。雨水が集水桝10中でその底面から所定の深さHに達すると、その位置に設置された浸透管20のフィルター21を通って上部開口から浸透管20内に流入し始める。つまり、集水桝10に集められた雨水のうち、初期雨水流入分は集水桝10にそのまま貯留し、それ以上の流入分の上澄みのみを浸透管20を介して地中に浸透させる。
【0018】
ここで、本浸透管20は底部(底面)側が閉鎖されているため、従来の浸透管のように底部(底面)からの浸透又は透水は行われない。そのため、浸透管20から溢れるような雨水が流入する場合は別として、通常の雨水の流入であれば、浸透管20の底部が底蓋30で閉塞されているため雨水が底部で堰き止められ、従来の底部に開口がある浸透管20よりも内部の水位が上がる。
従来の浸透管20では、底部からも雨水が地中へ浸透(又は透水)するため、その浸透効率が一見高いようにみえるが、後記する実験の結果から明らかなように、逆に浸透し難くなることが分かった。つまり、浸透管内において一時貯水して浸透圧力を上げ、かつ浸透管20のより広い浸透面積を利用した方がむしろ全体としての浸透効率が上昇することが分かった。
本実施形態に係る浸透管20は、上述のように雨水が底部で堰き止められて管内の水位が上がるため、管内で一時貯水が行われ、浸透管下部における浸透圧力が増大することに加え、浸透管20のより広い浸透面積を利用できる点で有利である。
【0019】
また、洗浄の際には、高圧の水流を浸透管20内に噴射しても、底蓋30で遮断されるので、従来のように高圧の噴流が直接基礎地盤内に侵入することはなく、洗浄水の圧力を上げても基礎地盤を破壊することがない。また、上記水流の噴射に合わせて浸透管内から排水ポンプで排水を行うが、排水能力を上げても、浸透管20の基礎地盤から土砂を吸い上げる虞はない。そのため、浸透管20内だけではなく、浸透管20から流れ出てその周りの砂層からなる擁壁部分(導水層)に堆積された堆積物も容易に吸引排出することができ、効率よく洗浄を行うことができる。
【0020】
図3A〜図3Cは、いずれも浸透管20の底部を閉塞する底蓋の縦断面図であって、以上で説明した第1の実施例に係る底蓋30と異なる実施例を示す。
即ち、図3Aは、底蓋の周縁部に上方へ延在した周壁が形成された第2の実施例、図3Bは、底蓋の周縁部に下方へ延在した周壁が形成された第3の実施例、更に、図3Cは上記底蓋の周縁に上下方向へ延在した周壁部が形成された第4の実施例のそれぞれ縦断面図を示している。
【0021】
図3Aに示す第2の実施例の底蓋30では、その周縁から周壁33が上方に起立して起立縁として延在しているため、上述のように浸透管20の周囲に投入した砂で擁壁を構成している場合、底蓋30の径を浸透管20のそれよりも大きくすることで、擁壁底部における砂を側面と底面の両面から支えて上記擁壁を補強する利点が得られる。
【0022】
図3Bに示す第3の実施例に係る底蓋30では、その周縁から周壁35が下方に起立した起立縁として延在している。このように周壁35を下方に延在させたことにより、浸透管20の周面から浸透した水が地盤内に回り込むのを防止できる。即ち、浸透管20の周縁から下降した浸透水が基礎地盤の例えば土砂内に回り込んで侵入すると、土砂を締め固め基礎地盤の体積を縮小させるため、浸透管20が沈下することがあるが、底蓋30の周縁部に下方に延在した周壁35を設けることにより、そのような現象を防止することができる。
【0023】
図3Cに示す第4の実施例に係る底蓋30では、その周縁から周壁37が上下方向に起立した起立縁として延在している。この構成では、上記第2及び第3の実施形態の利点を同時に得ることができる。
上記各実施例に係る底蓋30は、浸透管20を埋設する場合の擁壁や地盤を考慮して適宜選択することができる。
【0024】
次に、本発明の第2の実施形態に係る透水構造について説明する。
図4は図2と同様であり、第2の浸透管(ここでは、単に浸透管という)40を配置した集水桝10の部分を拡大して模式的に示した断面図であり、例えば、道路に沿って設けた集水桝10を中心に浸透管40の配置した構造を示している。
側溝12を通して集水桝10に集めた雨水は、集水桝10に設置した浸透管40を通して地中に浸透される。
【0025】
集水桝10や側溝12は、既に述べたものと同じであり、ここでは第1の実施形態と同じ部分には同じ番号を付して説明を省略する。集水桝10のほぼ中央部分には、浸透管40の先端部分(後述の導水管46)をその底面から所定の高さHだけ残してその透水構造の本体は地中に埋設されて配置されている。
【0026】
浸透管40は、図示のように、中心に孔42を有する砂又は砂利などの材料を適宜固めて製造するか又はポーラスコンクリートでできた、つまり透水構造からなる中空管としての円筒管44(なお、その形状はこれに限らず、例えば角形管であってもよい)と、その上端部に挿入固定された不透水構造の導水管46とから成る。導水管46は、第1の実施形態の浸透管20の不透水構造部分22と同様、例えば不透水性材料である合成樹脂製のパイプとして形成されている。導水管46の上端部にはフィルター21が取り付けられている。
なお、上記円筒管44の外径は、第1の実施形態における導水層の外径と略等しい大きさに形成され、かつ内径は第1の実施形態の浸透管20のそれと略等しく形成されているため、上記円筒管44は第1の実施形態における導水層の機能を併せ持っている。浸透管40は上記構成から成るため、第1の実施形態におけるように浸透管20の周りに砂等による導水層を形成する必要がないか、或いは形成するにしても、その幅を薄く形成することで足りる。
【0027】
浸透管40は、地盤中に埋設するときは、第1の実施形態と同様に埋設穴を掘削してその底部に基礎地盤Gを形成した後、同掘削穴内に立て込む。この浸透管40の底面(底部)は、セメント、接着剤、塗料を含浸するか或いは塗布する等により、その中心孔42を含め閉塞されており、雨水の通過を遮断している。
【0028】
この構造において、集水蓋14の開口14a或いは側溝12から流入した雨水は、第1の実施形態と同様に集水桝10に集められてその中に溜まる。雨水が集水桝10中でその底面から所定の深さHに達すると、その位置に設置された浸透管40のフィルター21を通って上部開口から浸透管40内に流入し始める。
ここで、浸透管40は底部が閉塞部48で閉塞されているため、従来の浸透管40のように底部からの浸透又は透水は行われない。そのため、浸透管40から溢れるような雨水が流入する場合は別として、通常の雨水の流入であれば、雨水は底部で堰き止められ、従来の底部に開口がある浸透管40よりも内部の水位が上がる。
【0029】
このようにして、浸透管40のより広い浸透面積が利用でき排水に有利である。
また、洗浄の際に、高圧の水流を浸透管40内に噴射しても、閉塞部48で水流が遮断されるため、従来のように高圧の噴流が直接基礎地盤内に侵入することはなく、洗浄水の圧力を上げても浸透管40の基礎地盤を破壊することがない。また、上記水流の噴射に合わせて浸透管40内から排水ポンプで排水を行うが、この場合排水能力を上げても、浸透管40の基礎地盤Gから土砂を吸い上げる虞はなく、第1の実施形態と同様に効率よく洗浄を行うことができる。
【0030】
図5は、上記第1及び第2の実施形態における各浸透管(それぞれ第1及び第2の浸透管という)と、同様の構造(側面開放)で底面(底部)を全開放したもの、或いは底面を全開放した状態で側面を遮水構造とした各浸透管とを対比して行った透水係数の比較結果を示す。
実験では、それぞれ同じ条件で設置した200mmの内径の浸透管に注水し、約5〜15分後に水深1200mmで満水状態になった後の水位の低下量を測定し、それぞれの透水係数を求めて比較した。
それぞれ水位の測定は、満水から2.5時間後と16時間後に行い、それぞれの透水係数(土の中を水が移動する速度cm/sec)を求めた。図は、その平均値に基づく透水係数を対比して示したグラフであって、縦軸は透水係数を示す。
【0031】
図中、1−1は、第1の実施形態の浸透管(周面開放)の底面(底部)を全開放した浸透管の周りの導水層の周りを鋼管で覆って不透水構造にしたときの浸透効率を示したグラフである。
1―2は、本発明の第1の実施形態の浸透管の浸透係数を示すグラフである。
1−3は、第1の実施形態の浸透管の底面を全開放した状態における浸透係数を示すグラフである。
以上の各グラフから明らかなように、第1の実施形態の浸透管20(つまり側周面開放で浸透管の底面を閉塞したもの)を用いた場合は、その浸透管の周面を不透水性にて底面を全開放したものの透水係数(1−2)や周面を透水構造にして底面を全開放したものの透水係数(1−3)よりも、その透水係数が高いだけではなく、その両者つまり1−1と1−3を加えた場合の透水係数よりも更に高いことを示している。
【0032】
図中、2−1は、第2の実施形態の浸透管(周面開放)の底面を全開放した状態で、浸透管(円筒管44)の周りを鋼管で覆って不透水構造にしたときの透水係数を示したグラフである。
2―2は、本発明の第2の実施形態の浸透管(周面開放かつ底面閉塞)の透水係数を示したグラフである。
2−3は、第2の実施形態の浸透管の底面のみを全開放した構造にしたときの透水係数を示すグラフである。
以上の各グラフから明らかなように、第2の実施形態の浸透管40を用いた場合は、その浸透管の周面を不透水構造にしたものの透水係数(2−2)や周面を透水構造にして底面を全開放したものの透水係数(2−3)よりも、その透水係数が高いだけではなく、その両者つまり2−1と2−3を加えた場合の透水係数よりも更に高いことを示している。
【0033】
以上の実験結果から、水位低下量から算出した透水係数を比較すると、側面不浸透より底面不浸透のタイプの方が、約7〜9倍良好であることが分かる。また、と「周面不透水」(底面のみに透水部分を有するもの:つまり図中の1−1、2−1)と不透水部分を一切設けていない「なし」タイプ(周面、底面両方に浸透面を有するタイプ:つまり図中の1−3、2−3)は、底面不浸透(1−2、2−2)にしたものより、いずれも浸透量が減り透水係数が下がることが分かった。これは底面からの浸透を抑制しないことで孔内水位が一時的にも上昇しないため、一時貯水による地盤への浸透圧力が低いことが起因しているものと推測される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1Aは本発明の実施例に係る浸透管の縦断面図であり、図1Bは底蓋の正面図である。
【図2】浸透管を取り付けた集水桝の部分を拡大して模式的に示した第1の実施形態の断面図である。
【図3】底蓋の異なる実施形態を示す。図3Aは、底蓋の周縁部に上方へ延在した周壁が形成された実施形態、図3Bは、底蓋の周縁部に下方へ延在した周壁が形成された実施形態、図3Cは上記底蓋の周縁部に上下方向へ延在した周壁が形成された実施形態のそれぞれ縦断面図を示す。
【図4】浸透管を取り付けた集水桝の部分を拡大して模式的に示した第2の実施形態の断面図である。
【図5】各浸透管において雨水を満杯に満たしたときの透水効率を対比して示したグラフである。
【図6】図6Aは従来の底蓋を備えた浸透管の底部を示す縦断面図であり、図6Bは底蓋の平面図である。
【図7】従来の底蓋なしの浸透管の図6Bと同様の図である。
【符号の説明】
【0035】
10・・・集水桝、12・・・側溝、14・・・集水蓋、20・・・浸透管、20a・・・透水シート、21・・・フィルター、22・・・不透水構造部分、24・・・地下浸透部分、24a・・・浸透孔、25・・・ボルト貫通孔、30・・・底蓋、33、35、37・・・周壁、40・・・(第2の)浸透管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水の流出抑制施設を備えた排水システムで用いる集水桝と、
上端部に雨水を取り入れるための開口を有し、周面に雨水浸透孔を備えた浸透管と、
地盤中の浸透管の周囲に設けた導水層と、を備え、
前記浸透管は底部が閉塞されていると共に、その上部を前記集水桝の底面から集水桝内に突出させたことを特徴とする透水構造。
【請求項2】
請求項1に記載された透水構造において、
前記浸透管は底部が蓋体で閉塞されており、
前記蓋体は浸透管の径以上で、導水層の径以下に形成されていることを特徴とする透水構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された透水構造において、
前記蓋体の周縁に上方及び/又は下方に所定の高さの起立縁が形成されていることを特徴とする透水構造。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載された透水構造において、
前記導水層が粒状体によって形成されたものであることを特徴とする透水構造。
【請求項5】
雨水の流出抑制施設を備えた排水システムで用いる集水桝と、
透水構造の中空管と、上端部に雨水を取り入れるための開口を有し前記中空管の上端部に取り付けた不透水構造の導水管で構成された浸透管と、を備え、
前記中空管は底部が閉塞されていると共に、前記導水管の上部を前記集水桝の底面から集水桝内に突出させたことを特徴とする透水構造。
【請求項6】
請求項5に記載された透水構造において、
前記中空管は多孔性部材で形成されていることを特徴とする透水構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−97151(P2009−97151A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267015(P2007−267015)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(394002981)株式会社岡本建設用品製作所 (10)
【Fターム(参考)】