説明

透湿性ポリエステル系エラストマーフィルム

【課題】引張強力や引張弾性率等の機械特性に優れ、かつ弾性変形率が低く、透湿性にも優れ、さらには光沢度を低くすることにより、ラミネートした布帛がアパレル用途として商品価値の高いポリエステル系エラストマーフィルムを提供する。
【解決手段】エステル結合を介してヘッド・トゥ・テール型で結合された多数の反復長鎖エステルユニット(I)および短鎖エステルユニット(II)を有する1以上のコポリエーテルエステルエラストマーを含むポリエステルブロック共重合体(A)99〜85質量%と、ガラス転移温度が120℃以上のポリアミド(B)1〜15質量%との混合物からなることを特徴とする二軸延伸ポリエステル系エラストマーフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透湿性とともに低い光沢度を有する、衣料用材料としてに好適な二軸延伸ポリエステル系エラストマーフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、衣料用材料として、快適性の観点から、発汗や結露によるベタツキ、ムレ感を抑制し、その一方で、外部からの雨水等の水の進入を防止する目的で、防水性でかつ透湿性のある素材が求められている。
【0003】
透湿性に優れる無孔質のフィルムとして、ポリエステル系エラストマー二軸延伸フィルムが知られている。特許文献1では、ポリエステル系エラストマーにおいて、特定の処方や延伸条件を選定することによって延伸処理を可能とし、その結果として透湿性や機械特性や弾性変形に優れたポリエステル系エラストマー二軸延伸フィルムを実現した。しかしながら、このフィルムは光沢度が高く、フィルムを布帛と貼り合わせて衣料用材料とした場合、高級感に劣るため、アパレル用途としての商品価値の低下が指摘されいた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2007/027715号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ポリエステル系エラストマーとガラス転移温度が120℃以上のポリアミド樹脂との混合物からなる二軸延伸フィルムであり、引張強力や引張弾性率等の機械特性に優れ、かつ弾性変形率が低く、透湿性にも優れ、さらには光沢度を低くすることにより、ラミネートした布帛がアパレル用途として商品価値の高いポリエステル系エラストマーフィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、このような課題を解決するために以下の手段をとるものである。
1.エステル結合を介してヘッド・トゥ・テール型で結合された多数の反復長鎖エステルユニット(I)および短鎖エステルユニット(II)を有する1以上のコポリエーテルエステルエラストマーを含むポリエステルブロック共重合体(A)99〜85質量%と、ガラス転移温度が120℃以上のポリアミド(B)1〜15質量%との混合物からなることを特徴とする二軸延伸ポリエステル系エラストマーフィルム。
2.ポリエステルブロック共重合体(A)が海成分を、ガラス転移温度が120℃以上のポリアミド(B)が島成分をなしていることを特徴とする1に記載の二軸延伸ポリエステル系エラストマーフィルム。
3.三次元表面粗さ測定装置で解析された、表面に現れる多数の突起の中心を基準点として求められたピーク高さ0.1μm以上の突起個数SPcが10000peaks/mm以上である2に記載の二軸延伸ポリエステル系エラストマーフィルム。
4.光沢度が25%以下であることを特徴とする1〜3のいずれかに記載の二軸延伸ポリエステル系エラストマーフィルム。
5.透湿度が3000g/m・24hr以上であることを特徴とする1〜4のいずれかに記載の二軸延伸ポリエステル系エラストマーフィルム。
6.ポリエステルブロック共重合体(A)の長鎖エステルユニット(I)が次の(i)式で表されるものであり、短鎖エステルユニット(II)が次の(ii)式で表されるものであることを特徴とする1に記載の二軸延伸ポリエステル系エラストマーフィルム。
(化1)
−O−G−O−C(=O)−R−C(=O)− (i)
(化2)
−O−D−O−C(=O)−R−C(=O)− (ii)
ただし、上式で、Gは、400〜4000の数平均分子量を有するポリ(アルキレンオキシド)グリコールから末端水酸基を除去した後に残っている二価の基であり、Rは、300未満の分子量を有するジカルボン酸からカルボキシル基を除去した後に残っている二価の基であり、Dは、250未満の分子量を有するジオールから水酸基を除去した後に残っている二価の基であり、コポリエーテルエステルは、コポリエーテルエステルの長鎖エステルユニットに取り込まれたエチレンオキシド基をコポリエーテルエステルの総質量を基準にして0〜68質量%含んでおり、コポリエーテルエステルは25〜80質量%の短鎖エステルユニットを含む。
7.ポリエステルブロック共重合体(A)の短鎖エステルユニット(II)がブチレンテレフタレートユニットであることを特徴とする6に記載の二軸延伸ポリエステル系エラストマーフィルム。
8.ガラス転移温度が120℃以上のポリアミド(B)が、テレフタル酸及びイソフタル酸を主たる酸成分とし、ヘキサメチレンジアミン及びビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンを主たるアミン成分とすることを特徴とする1に記載の二軸延伸ポリエステル系エラストマーフィルム。
【発明の効果】
【0007】
本発明のフィルムは、透湿性および機械特性に優れ、残留歪み率が低いことに加えて、さらに光沢度が25%以下と低いため、衣料用材料等に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明において、ポリエステルブロック共重合体(A)とポリアミド樹脂(B)が非相溶な状態で海成分と島成分を構成していることを示す、フィルムの透過型電子顕微鏡写真の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
本発明におけるポリエステルブロック共重合体(A)は、エステル結合を介してヘッド・トゥ・テール型で結合された多数の反復長鎖エステルユニット(I)および短鎖エステルユニット(II)を有する1以上のコポリエーテルエステルエラストマーを含むポリエステルブロック共重合体からなり、長鎖エステルユニット(I)からソフトセグメントが構成され、短鎖エステルユニット(II)からハードセグメントが構成されたものである。
【0011】
短鎖エステルユニット(II)は、分子量が300未満のジカルボン酸成分(R)と分子量が250未満のジオール成分(D)とから構成される。具体的には、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル誘導体と脂肪族ジオールから形成されるポリエステルが挙げられる。
【0012】
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などが挙げられる。芳香族ジカルボン酸の一部をシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトンや乳酸などのオキシカルボン酸に代えてもよい。
【0013】
脂肪族ジオールとしては、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ジオールなどが挙げられる。脂肪族ジオールの一部をキシリレングリコールなどの芳香族ジオールなどに代えてよい。
【0014】
ハードセグメントとしては、上記ジカルボン酸成分およびジオール成分から誘導されるポリエステルであってもよく、あるいはこれらのジカルボン酸成分およびジオール成分を二種類以上併用した共重合ポリエステルであってもよい。
【0015】
短鎖エステルユニット(II)の含有量は、コポリエーテルエステルに対して25〜80質量%であり、さらに好ましくは、40〜60質量%である。短鎖エステルユニット(II)の含有量が25質量%未満であると結晶性が悪くなる。しかもコポリエーテルエステルが粘着質となり取り扱いにくくなる。80質量%を超えると、コポエステルエーテルは透湿性が低くなる。
【0016】
特に、非晶性成分のソフトセグメントと共重合した場合に、得られるペレットの結晶性を保持するため、ハードセグメントは短鎖エステルユニット(II)が、テレフタル酸及び/またはジメチルテレフタレートと1,4−ブタンジオールから形成されるポリブチレンテレフタレートが好適である。
【0017】
長鎖エステルユニット(I)は、分子量が300未満のジカルボン酸成分(R)と数平均分子量が400〜4000のポリ(アルキレンオキシド)グリコール成分(G)とから構成される。ポリ(アルキレンオキシド)グリコール成分(G)は、含まれない場合もある。
【0018】
ジカルボン酸成分(R)としては、前述の短鎖エステルユニット(II)に用いるものと同じものが挙げられる。
【0019】
ポリ(アルキレンオキシド)グリコール成分(G)としては、脂肪族ポリエーテル単位が挙げられ、具体的には、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、エチレンオキシドとテトラメチレンオキシドの共重合体などが挙げられる。なかでも、フィルムの透湿性を付与するためには、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール等の炭素/酸素原子比が4以下の脂肪族ポリエーテル成分を有していることが好ましい。なお、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールに脂肪族ポリエステル成分を添加してもよい。脂肪族ポリエステル成分としては、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリブチレンアジペート、ポリエナントラクトン、ポリエチレンアジペートなどが挙げられる。
【0020】
ポリ(アルキレンオキシド)グリコール成分(G)の含有量は、コポリエーテルエステルの総質量を基準にして0〜68質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがさらに好ましい。ポリ(アルキレンオキシド)グリコール成分の含有量が68質量%を超えると、結晶化が困難となり好適に用いられない。
【0021】
ポリ(アルキレンオキシド)グリコールは、1種以上のグリコールであってもよいが、グリコール成分の少なくとも70質量%が、炭素/酸素原子比が2.0〜2.4のグリコールであることが好ましい。炭素/酸素原子比が2.4を超えると透湿性が劣る傾向にある。
【0022】
ポリエステルブロック共重合体は、公知の方法で製造することができる。例えば、(1)芳香族ジカルボン酸の低級アルコールジエステル、脂肪族ジオール、及びソフトセグメント成分を触媒の存在下でエステル交換反応させ、得られる反応生成物を重縮合する方法、(2)芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジオール及びソフトセグメント成分を触媒の存在下でエステル交換させ、得られた反応生成物を重縮合する方法、(3)ハードセグメントにソフトセグメント成分を添加してエステル交換反応によりランダム化する方法、さらに、(4)ハードセグメントとソフトセグメントとを鎖連結剤でつなぐ方法など、いずれの方法を用いてもよい。
【0023】
ポリエステルエラストマーは、1種または数種のポリマーのブレンドであってもよい。例えば、ポリエステルエラストマーは、商品名Hytrel(登録商標)でE.I.duPont de Nemours and Companyから利用可能なポリマーなどの、下記に記述するようなコポリエーテルエステルエラストマーか、2種以上のコポリエーテルエステルエラストマーの混合物等が利用できる。
【0024】
ポリエステルエラストマーは延伸する場合、非常に切断しやすい特性があるため、切断を回避するためにはMFRの選定が重要である。そこで、ポリエステルブロック共重合体のJIS K7210のB法に準じて測定されたMFR(測定温度250℃、荷重100kg、オリフィス径1mm)は、10〜500g/10分が好ましく、20〜300g/10分であることがさらに好ましい。通常、二軸延伸する前のTダイから溶融押し出しされた未延伸シートの形状は両端部が中央部よりかなり厚い。このために、MFRが10g/10分未満の場合、すなわち粘度が高すぎると、テンターで二軸延伸する際、未延伸シートの端部の厚い部分が伸びず、中央部の薄い部分に伸びが集中するため、中央部から切断しやすい。また、MFRが500g/10分を越える場合は、粘度が低すぎるため、破断伸度が低いため、テンターで二軸延伸する際に未延伸シートの至る部位からコマ切れ状態で切断する。
【0025】
本発明のポリエステル系エラストマーフィルムにおいては、JIS K7105(入射角20°)に基づく光沢度が25%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下である。光沢度が25%を越えると、ポリエステル系エラストマーフィルムに光沢感が高く、布帛とラミネート後にフィルム面の光沢度が高いためアパレル用途としての商品価値を損なう。
【0026】
本発明において、光沢度を25%以下とするためには、ポリアミド(B)の選定が重要な役割を果たす。
【0027】
すなわち、ポリエステル系エラストマーフィルムを延伸する時にポリアミド(B)が軟化しなければ、フィルムに微細突起が形成されるので、ポリアミド(B)のガラス転移温度はフィルムの延伸温度よりも高い範囲である、120℃以上とする必要があり、より好適には120℃〜200℃の範囲である。ガラス転移点が120℃未満であると、適度な微細突起が形成されず、光沢度が25%以下のフィルムを得ることができない。なお、ガラス転移点が高くなるほど微細突起が形成されやすく光沢度は低くなるが、ガラス転移点が200℃を越える場合には、押出時に未溶融部が残存したり、未延伸シートの幅変動が生じたり、押出樹脂吐出量が不安定になったりする。このため、押出温度を上げるなどの処置が必要となるため好適ではない。
【0028】
本発明におけるポリアミド(B)は、カルボン酸、アミン、ラクタム、アミノカルボン酸等の成分を適宜組み合わせて公知の方法で重縮合して得られる。用いることのできる酸成分としては、アジピン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ε−アミノカプロン酸、ω−アミノドデカン酸、アミノ安息香酸、5−tert−ブチルイソフタル酸、1,1,3−トリメチル−3−フェニルインダン−3’,5−ジカルボン酸などが例示され、特に、テレフタル酸とイソフタル酸が好ましい。アミン成分としては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、フェニレンジアミン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチル−シクロヘキシルアミン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、メタキシレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−アミノシクロヘキシル)メタンなどが例示され、特にヘキサメチレンジアミンとビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンが好ましい。ラクタムとしてはε−カプロラクタム、ラウロラクタム等が例示される。
【0029】
本発明のポリエステル系エラストマーフィルムは、ポリエステルブロック共重合体(A)99〜85質量%とポリアミド樹脂(B)1〜15質量%との混合物から形成される。
ポリエステルブロック共重合体(A)とポリアミド樹脂(B)との混合比は、好ましくは98〜88(質量%)/2〜12(質量%)であり、よりに好ましくは90〜97(質量%)/3〜10(質量%)である。ポリアミド樹脂(B)が1質量%未満の場合、光沢度が25%以下のフィルムを得ることができず、15質量%を越えると、切断頻度が多くなり延伸が困難となるばかりか透湿度が低下する。
【0030】
本発明におけるポリアミド樹脂(B)のJIS K7210のB法に準じて測定されたMFR(測定温度250℃、荷重100kg、オリフィス径1mm)は、1〜500g/10分が好ましく、さらに好ましくは10〜200g/10分である。MFRが5g/10分未満の場合、ポリアミド樹脂(B)の粘度が高すぎるため、溶融押出後の未延伸シートの巾が安定せず、さらには二軸延伸後のフィルム中の分散粒子径も2.0μmを越えるため、ボイドが発現して切断しやすくなる。MFRが500g/10分を越えると、ポリアミド樹脂(B)の粘度が低く、ポリエステルブロック共重合体でなる海成分に吸収されてしまい、平均分散粒子径が小さくなってしまい、光沢度が25%を越えてしまう。
【0031】
本発明の透湿性ポリエステルエラストマーフィルムにおいては、ポリアミド樹脂(B)が島成分となり、海成分であるポリエステルブロック共重合体(A)中に分散されてなる非相溶な状態が形成されている。本発明でいう非相溶な状態とは、溶融混練された両樹脂が互いにミクロ相分離している状態である。このような非相溶な状態は、ポリエステルブロック共重合体(A)とポリアミド樹脂(B)を溶融混練する際に、両樹脂の臨界表面張力の差が1mN/m以上異なっている場合に起こり得る。熱可塑性ポリエステルブロック共重合体(A)とポリアミド樹脂(B)とが非相溶な状態であると、両樹脂を溶融混合した際に、ポリエステルブロック共重合体(A)が海成分となり、ポリアミド樹脂(B)が島成分を形成するような混合物となって、フィルム状に押し出される。さらに、フィルムが延伸されると表面に微細突起が形成され、その結果、光沢度が低くなることによりマット調を呈する。臨界表面張力は、表面張力既知の液体を滴下した時の接触角(θ)を測定して、液体の表面張力とcosθをグラフ上にプロットしたとき、直線がcosθ=1(すなわちθ=0°)の水平線の交わる点の表面張力として定義される。
【0032】
本発明においてポリエステルブロック共重合体(A)とポリアミド樹脂(B)が非相溶な状態で海成分と島成分を構成していることは、フィルムを透過型電子顕微鏡で観察することにより確認できる。一例を図1に示す。島成分であるポリアミド樹脂(B)の平均分散粒子径が0.01〜1.0μmの範囲であることが好ましく、0.05〜0.7μmの範囲にあることがより好ましい。0.01μm未満の場合、島成分が小さすぎるため、光沢度が25%を越えてしまう。1.0μmを越えるような場合、テンターで二軸延伸する際にポリアミド樹脂(B)の界面からボイドが発現するため切断しやすくなる。
【0033】
本発明のポリエステル系エラストマーフィルムは、多数の表面突起を有しているほど光沢度が低くなるため好ましい。この観点から、三次元表面粗さ測定装置で解析された表面に現れる多数の突起の中心を基準点として求められたピーク高さ0.1μm以上の突起個数(SPc)が10000peaks/mm以上であることが好ましく、より好適には15000peaks/mm以上であり、さらに好ましくは20000peaks/mm以上である。SPcが10000peaks/mm未満の場合、光沢度が25%を越える。
【0034】
本発明のポリエステル系エラストマーフィルムは、フィルムをロール状に巻き取った後に、フィルムを布帛とラミネートする工程においてフィルムがスムーズに剥がれる必要があり、また、布帛とラミネートされたラミネート反は、衣料用材料として使用する場合、ミシンで縫製する際に鏡面クロムメッキ部との滑り性が良好である必要があるために、アンチブロッキング剤を付与することが好ましい。アンチブロッキング剤としては、有機または無機粒子が適宜選択される。
【0035】
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ガラスビーズ、カオリナイト、ハロイサイト、タルク、クレー、マイカ、スメクタイト、バーミキュライトなどが挙げられる。有機粒子としては、ポリメタクリル酸メチル架橋樹脂、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、低分子ポリエチレン、(CHSiO1.5で表されるポリメチルシルセスキオキサンなどの粒子などが挙げられる。これらは、一種または二種以上混合して使用してもよい。
【0036】
アンチブロッキング剤の粒径は1.0〜5.0μmであることが好ましく、より好適には1.5〜3.5μmであり、配合量は、0.1〜5.0質量%であることが好ましく、より好適には0.3〜2.0質量%である。粒径が1.0μm未満や配合量が0.1質量%未満の場合、フィルムのアンチブロッキング性が不十分であり、粒径が5.0μmを越えたり、配合量が5.0質量%を越えると、延伸時に切断が発生しやすくなる。
【0037】
ポリエステル系エラストマーフィルムは、押出機により溶融押出した後に冷却ドラム上に密着させて急冷する際に、冷却ドラムからの剥離状態が悪いため、フィルムを製造することが困難である。このため、離型性の改良目的で脂肪酸アミドを添加することが好適である。
【0038】
脂肪酸アミドとしては、炭素数12〜30の飽和第一アミド、飽和第二アミド、飽和第三アミドである飽和脂肪酸アミドが好適である。具体的には、ラウリル酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドやエチレンビスベヘニン酸アミドやメチレンビスステアリン酸アミドやメチレンビスベヘニン酸アミド等のビスアミド等が挙げられる。とりわけ広く流通しており安価なステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスベヘニン酸アミド等が挙げられる。
【0039】
本発明のポリエステル系エラストマーフィルムは、衣料用材料として使用する場合、隠蔽性向上のため、酸化チタン、炭酸カルシウム等の白色顔料やカーボンブラック等の黒色顔料等を単独でまたは併用して使用してもよい。
【0040】
本発明のポリエステル系エラストマーフィルムには、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤、無機添加剤、帯電防止剤、顔料、耐候剤などの各種添加剤を添加することができる。
【0041】
本発明のフィルムを製造するには、例えば、ポリエステルブロック共重合体ペレットとポリアミド樹脂ペレット、さらに必要に応じて、前記ペレットのいずれかに添加剤を配合したマスターバッチとを押出機に投入し、200〜280℃で加熱溶融した後、押出機に備えたTダイのスリットを通してシート状に押出し、その後、静電印加キャスト法などにより、28℃以下に温度調節した冷却ドラム上に密着させて急冷して未延伸シートとし、これを延伸することにより得られる。
【0042】
延伸法としては、テンター式延伸法が好ましい。テンター式延伸法としては、テンター式同時二軸延伸機により縦方向と横方向の延伸を同時に行う同時二軸延伸法や、ロール加熱方式あるいは赤外線加熱方式により未延伸シートを加熱し、2個以上のロールの周速差を利用して縦方向にロール延伸後、テンター式横延伸機によって横延伸を行う、逐次延伸法が挙げられる。特に、テンター式同時二軸延伸法は、延伸倍率が広範囲であるため生産性に優れており好適である。また、テンター式同時二軸延伸法においては、未延伸シートを必要に応じて縦あるいは横方向に1〜3倍に予備延伸した後に、テンター式同時二軸延伸機で二軸延伸してもよい。
【0043】
本発明における好適な延伸倍率は、延伸方法により異なるが、面積倍率で5〜25倍であり、より好適には7〜16倍である。5倍より低いと延伸による効果が低く、フィルムの十分な機械特性が得られず、得られたフィルムを布帛に貼り合わせ、衣料用材料とした場合に耐水圧が低くなる。反対に25倍を超えると、延伸時の切断が顕著になり、生産性に問題が生じる。
【0044】
延伸温度は、ポリエステルブロック共重合体(A)の組成により異なるが、通常0〜100℃、好ましくは20〜80℃、より好ましくは30〜60℃である。テンター式延伸機においてシートの延伸温度を制御するには、通常、熱風を吹き付けて、放射温度計(例えば堀場製作所社製IT−550)で温度測定することにより行う。
【0045】
フィルムの熱収縮率を小さくする目的で、延伸後に、(ポリエステルエラストマーの融点−100℃)から(ポリエステルエラストマーの融点−3℃)の範囲で、熱処理することが好ましい。熱処理方法としては、熱風を吹き付ける方法、赤外線を照射する方法、マイクロ波を照射する方法等公知の方法を選択することができるが、均一に精度良く加熱できることから熱風を吹き付ける方法が最適である。
【0046】
本発明における透湿性ポリエステル系エラストマーフィルムは、二軸延伸処理が施されていることで、引張強度等の機械特性が高くなる。さらには、残留歪み率が低くなるため、繰り返し伸縮性が要求される衣料用材料としての機能性に優れる。残留歪み率は10%以下に低くなることが好ましく、より好ましくは7%以下であり、さらに好ましくは5%以下である。残留歪み率が10%を超えると、繊維布帛とラミネートした後に衣料用材料として使用して着衣時に、肘等において屈曲作用が頻繁に繰り返し行われる高伸縮作用時にはフィルムが元の状態に戻らず、フィルムが伸びた状態になり、フィルムにたるみやシワが発生して、繊維布帛から剥離することがある。
【0047】
本発明にもとづきフィルムを同時二軸延伸法により製造する場合について説明すると、未延伸シートの端部をテンター式同時二軸延伸機のクリップに把持させ、20〜80℃で縦及び横方向にそれぞれ2〜4倍程度に同時二軸延伸する。その後、弛緩率を0〜10%として120〜190℃で3〜20秒間熱処理した後、室温まで冷却し、10〜200m/分の速度で巻き取って所望の厚さのフィルムを得る。
【0048】
フィルムに、さらに特定の性能を付与するために、各種の処理を行うことができる。紫外線、α線、β線、γ線あるいは電子線等の照射、コロナ処理、プラズマ照射、火炎処理等の各種加工処理を施してもよい。ポリアミド、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ等の樹脂のコーティングや、これらの樹脂とのラミネートを行ってもよい。酸化アルミニウム等の金属を蒸着してもよい。酸化珪素や酸化チタン等のコーティングを施してもよい。
【0049】
本発明のポリエステル系エラストマーフィルムのJIS L1099の塩化カルシウム法(A−1法)に基づく透湿度は3000g/m・24hr以上であり、好ましくは、4000g/m・24hr以上である。透湿度が3000g/m・24hr未満では、自然環境下での湿気を外部へ放出することが困難である。
【0050】
本発明の透湿性ポリエステル系エラストマーフィルムのASTM D−882に基づく引張強力(縦方向と横方向の平均値)は30MPa以上、好ましくは50MPa以上である。引張強力が30MPa未満の場合は、機械特性が不十分なため、布帛とラミネート後のラミネート反の耐水性が劣る。
【0051】
本発明の透湿性ポリエステル系エラストマーフィルムの厚さは、5〜30μmが好適であり、7〜20μmがさらに好適である。5μm未満の場合は機械特性に劣り、30μmより大きい場合は透湿性が劣るフィルムとなる。
【0052】
本発明のポリエステル系エラストマーフィルムは、接着剤あるいは接着性不織布を介して、繊維布帛、紙、フィルム、ネット、シート等に積層してなり、透湿性と防水性を兼ね備えており、主としてスポーツウェア等の衣料用材料として使用される。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
【0054】
用いた測定方法は以下の通りである。
【0055】
(1)ガラス転移温度Tg
試料6〜8mgをアルミニウム製のDSC用サンプルパンに入れ、Perkin Elmer社製DSC(pyris1)を使用し、窒素中において280℃で5分間溶融保持し、−55℃に急冷固化した後、昇温速度20℃/分で280℃まで昇温した。この時観測されるガラス転移温度をTgとした。
【0056】
(2)MFR(メルトマスフローレート)
島津製作所社製レオメーターCFT−5000を使用して、JIS K7210のB法に準じて、予め250℃に加熱されたシリンダー(内径10mmΦ、シリンダー長40mm)内に比重既知の試料約7gを詰め、試料上にピストン(ヘッド長20mm、外径10mmΦ)を押し当て、250℃のまま3分間予熱した後、100kgの荷重でピストンを押し込み、ダイス(ダイ長10mm、オリフィス径1mmΦ)から吐出された重量を求めた。
【0057】
(3)臨界表面張力
協和界面化学社製自動接触角計CA−Z型を使用し、室温20℃、湿度50%の雰囲気下でペレット上に、水(表面張力72.7dyne/cm)、グリセリン(同63.4)、オリーブ油(同32.0)、ベンゼン(同28.9)、メチルアルコール(同22.6)、エチルエーテル(同17.0)を滴下して接触角(θ)を求める。そして、横軸に液体の表面張力、縦軸にcosθをグラフ上にプロットして、直線がcosθ=1(すなわちθ=0°)の水平線の交わる点の表面張力を臨界表面張力とした。
【0058】
(4)光沢度
村上色彩技術研究所社製グロスメーターGM−26 PRO型を使用し、入射角20°の光沢度を測定した。
【0059】
(5)三次元表面粗さ
テーラーホブソン社製タリサーフCCI6000(非接触式表面粗さ測定装置)を使用して、スライドガラス上に固定した試料を対物レンズ20倍で実態計測し、ロバストガウシアンフィルター0.25mmを使用して、試料の表面粗さを解析して、平均値からの偏差の算術平均値を中心線平均粗さSRa(μm)とした。
また、同様にして、最小二乗法で得られた中心線を基準点として特定値以上のピーク高さの突起個数を解析してSPc(peaks/mm)を求め、0.1μm以上の突起個数をSPc(0.1)、1.0μm以上の突起個数をSPc(1.0)とした。
【0060】
(6)透湿度
JIS L1099の塩化カルシウム法(A−1法)に準じて測定した。
【0061】
(7)分散粒子径
試料を可視光硬化樹脂で包埋し、凍結ミクロトーム(クライオ)で70μmの切片を採取し、日本電子社製透過型電子顕微鏡JEM−1230 TEMを使用して、試料表面の電子顕微鏡写真を倍率30000倍で撮影し、任意の10個の島成分の平均長径と平均短径を0.01μmの単位まで計測し、それらの平均値とした。
(8)引張強度
幅10mm、長さ150mmの試料(試料数:n=5)を準備し、島津製作所製オートグラフAGS−100Gを使用して、ASTM D−882に準じて、温度23℃、湿度60%の条件下で、試料の長さ方向にチャック間距離が100mmとなるように把持し、引張速度100mm/minで引っ張り、フィルムが破断したときの強度を測定した。なお、測定値はフィルムの縦方向と横方向の平均値とした。
【0062】
(9)残留歪み率
幅10mm、長さ150mmの試料(試料数:n=5)を準備し、島津製作所社製オートグラフAGS−100Gを使用し、25℃、60RHの条件下で、チャック間距離100mmを原点(L0)として試料を把持し、引張速度100mm/minで引っ張り、50%伸長(すなわち、チャック間距離150mmまで伸長)させ、その状態で10秒間保持した後、同速度で原点(L0)(すなわち、チャック間距離100mm)まで戻し、チャックから試料を外し、操作後のチャック把持部間の試料長さ(L1)を測定して、次式により求めた。
(残留歪み率) = {(L1−L0)/L0}×100
【0063】
(10)延伸操業性
未延伸シートを、テンター式同時二軸延伸機を用いて延伸を6時間継続した時の切断回数を計測した。切断回数が1回以下であった場合のみ○として合格、2〜5回であった場合を△として不合格、6回以上であった場合を×として不合格、全く延伸不能であった場合を××として不合格とした。
なお、偶発的要因により1回程度は切断する可能性があるものとして1回までは合格とした。
【0064】
各種ポリエステルブロック共重合体およびポリアミド樹脂の合成例を以下に示す。
【0065】
ポリエステルブロック共重合体A−1の合成
テレフタル酸ジメチル44質量部、アルキレンの含量がエチレン65質量%およびプロピレン35質量%で構成されるポリ(アルキレン)グリコール51質量部、1,4−ブタンジオール19質量部(化学量論量)、テトラブチルチタネート0.3質量部、トリメリット酸トリメチル0.4質量部、イルガノックス1098(日本チバガイギー社製)0.1質量部をオートクレーブに仕込み、220℃でエステル交換反応をおこなった。次いで、缶内を133Pa(1Torr)以下の減圧下に保ち、250℃で重合反応をおこない、MFRが34g/10分、臨界表面張力59dyne/cmのポリエステルブロック共重合体Aを得た。
【0066】
ポリエステルブロック共重合体A−2の合成
テレフタル酸ジメチル49質量部、アルキレンの含量がエチレン30質量%およびプロピレン質量70%で構成されるポリ(アルキレン)グリコール46質量部、1,4−ブタンジオール21質量部(化学量論量)、テトラブチルチタネート0.3質量部、トリメリット酸トリメチル0.4質量部、イルガノックス1098(日本チバガイギー社製)0.1質量部をオートクレーブに仕込み、220℃でエステル交換反応をおこなった。次いで、缶内を133Pa(1Torr)以下の減圧下に保ち、250℃で重合反応をおこない、MFRが36g/10分、臨界表面張力56dyne/cmのポリエステルブロック共重合体A−2を得た。
【0067】
ポリアミド樹脂B−1〜B−8の合成
主原料としてイソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサメチレンジアミン、ビス−(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンおよびε−カプロラクタムを表1に示したモル比で用い、さらに前記主原料の合計100質量部に対して0.005質量部の酢酸を加えて、総量10kgとした。これを8kgの純水とともに反応槽に仕込み、反応槽内の空気を窒素で置換した。温度を90℃まで上昇させ、約5時間反応させたのち、18バールの加圧下で撹拌しながら約10時間かけて温度を280℃まで上昇させた。
次いで、温度を280℃に保ったまま圧力を大気圧まで下げながら攪拌を続けた。反応槽から水の留出が見られなくなった時点を反応の終点とした。反応終了後、反応槽から払い出してB−1〜B−8の各ペレットを得た。それぞれのガラス転移温度、MFR、臨界表面張力を表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
マスターバッチA−1の作成
ポリエステルブロック共重合体A−1を79質量部と平均粒径2.5μmの球状シリカ(日本触媒社製シーホスターKE−P250)を20質量部とステアリン酸アミド(日本油脂社製アルフローS−100)を1質量部からなる混合物を37mmΦ二軸混練機を使用して樹脂温度250℃で溶融混練して水中で急冷されたストランド状のペレットをカッティングしてマスターバッチA−1を得た。
【0070】
マスターバッチA−2の作成
ポリエステルブロック共重合体A−2を使用した以外はマスターバッチA−1の作成と同様にしてマスターバッチA−2を得た。
【0071】
実施例1
ポリエステルブロック共重合体A−1を90質量部とポリアミド樹脂B−1を5質量部とマスターバッチA−1を5質量部からなる混合物を、Tダイを具備した90mmφ押出機を使用して樹脂温度250℃で溶融押出し、表面温度18℃の冷却ドラム(速度10m/min)に密着させて冷却し、未延伸シートを得た。次いで、この未延伸シートを、テンター式同時二軸延伸機(クリップ把持部径10mm,横方向のクリップ間距離は供給部540mm,延伸部1782mm,弛緩部1728mm)を用いて、予熱温度50℃、延伸温度50℃で二軸延伸(速度30m/min)した。倍率は、縦倍率3.05倍、横倍率3.3倍、すなわち面積倍率10倍とした。その後、熱固定部温度190℃で15秒間熱処理し、弛緩部温度170℃で熱処理した後、室温まで冷却し、厚さ10μmのポリエステル系エラストマーの二軸延伸フィルムを得た。フィルム延伸時の操業性(延伸操業性)は良好であった。
得られたフィルムの分散粒子系の形態を図1に示すが、海成分の中に、楕円形状の島成分が観察された。
得られたフィルムの特性を表2に示す。透湿度は5300g/m/24hr、光沢度は15%であった。
【0072】
【表2】

【0073】
実施例2〜9
ポリエステルブロック共重合体の種類及び配合量、ポリアミド樹脂、マスターバッチの種類及び配合量を表1記載の通りとした以外は実施例1と同様にして厚さ10μmのポリエステル系エラストマーフィルムの二軸延伸フィルムを得た。なお、ポリエステルブロック共重合体をA−1とした場合は、マスターバッチはA−1を使用し、ポリエステルブロック共重合体をA−2とした場合は、マスターバッチはA−2を使用した。
延伸操業性は良好であった。
得られたフィルムの性能を表2に示す。透湿度、光沢度ともに優れていた。
【0074】
実施例10
ポリアミド樹脂をガラス転移温度が215℃のポリアミド樹脂B−7に変更した以外は実施例1と同様に実施した。押出機の樹脂温度を250℃とした際に、未延伸シート採取時にシート上にポリアミド樹脂の未溶融部分が認められたため、押出機の樹脂温度を250℃から265℃に変更して溶融押出し、他の条件は実施例1と同様にして、厚さ10μmのポリエステル系エラストマーの二軸延伸フィルムを得た。延伸操業性は良好であった。
得られたフィルムの性能を表2に示す。透湿度は5000g/m/24hr、光沢度は9%であった。
【0075】
比較例1〜9
ポリエステルブロック共重合体の種類及び配合量、ポリアミド樹脂の種類、配合量を表1記載の通りとした以外は実施例1と同様の操作を行った。比較例5、7、9を除き、二軸延伸フィルムが得られた。
得られたフィルム性能を表2に示す。
【0076】
比較例1においては、ガラス転移温度が115℃のポリアミド樹脂B−8を使用したため、分散粒子径、SPcがいずれも低く、光沢度は44%であった。
比較例2は、ポリミアミド樹脂を配合せず、ポリエステルブロック共重合体単体のフィルムであったため、分散粒子径、SPcはいずれも低く、光沢度は64%であった。
比較例3においては、ポリアミド樹脂B−1の配合量が低かったため、分散粒子径、SPcはいずれも低く、光沢度は47%であった。
比較例4においては、ポリアミド樹脂B−1の配合量が17質量%と多かったため、フィルムは採取できたものの、延伸を6時間継続した際に6回以上切断したため、生産レベルではなかった。また、得られたフィルムの光沢度は5%と低かったものの、透湿度が低かった。
比較例5においては、ポリアミド樹脂B−1の配合量が22質量%と多すぎた場合、延伸が多発したため、延伸不能でありフィルムの採取はできなかった。
比較例6においては、ポリアミド樹脂B−2の配合量が低かったため、分散粒子径、SPcはいずれも低く、光沢度は37%であった。
比較例7においては、ポリアミド樹脂B−2の配合量が22質量%と多すぎた場合、延伸が多発したため、延伸が不能でありフィルムの採取はできなかった。
比較例8においては、ポリアミド樹脂B−5の配合量が低かったため、分散粒子径、SPcはいずれも低く、光沢度は52%であった。
比較例9においては、ポリアミド樹脂B−5の配合量が22質量%と多すぎた場合、延伸が多発したため、延伸が不能でありフィルムの採取はできなかった。
【0077】
比較例10、11
ポリアミド樹脂として、ナイロン6(ユニチカ社製A1030BRT、Tg=50℃、MFR=30、臨界表面張力44)または、ナイロン12(ダイセルエボニック社製ダイアミドL1901、Tg=50℃、MFR=98、臨界表面張力44)を使用した以外は実施例1と同様にして厚さ10μmのポリエステル系エラストマーの二軸延伸フィルムを得た。延伸操業性はいずれの例でも良好であった。
得られたフィルムの性能を表2に示す。分散粒子径、SPcがいずれも低く、光沢度はそれぞれ56%、60%であった。
【0078】
比較例12
厚さ30μmの低密度ポリエチレンフィルム(東セロ社製FC−S#300)を支持体とし、ポリエステルブロック共重合体A−1を90質量部とポリアミド樹脂B−1を5質量部とマスターバッチA−1を5質量部からなる混合物を、Tダイを具備した90mmφ押出機を使用して樹脂温度250℃で支持体上に溶融押出し、表面温度18℃の冷却ドラム(速度70m/min)に密着させて冷却し、ポリエチレン/ポリエステル系エラストマー積層フィルムを得た。その後、ポリエチレンを剥がして、厚さ10μmのポリエステル系エラストマーの無延伸フィルムを得た。
得られたフィルムの性能を表2に示す。透湿度は5400g/m/24hrであったものの、SPcが6400peaks/mmと低く、光沢度は65%であった。さらには、引張強度が劣っており、残留歪み率も13.5%であったため、衣料用材料としては不的確であった。
なお、10μmの無延伸フィルムを得るために低密度ポリエチレンを支持体としたが、支持体を使用しなかった場合、冷却ドラムの速度が速すぎたため、Tダイから溶融押出されたフィルムが冷却ドラム上への着地巾が安定せず、そのために厚みの均一性が確保されずに安定した厚みのフィルムを得ることができなかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル結合を介してヘッド・トゥ・テール型で結合された多数の反復長鎖エステルユニット(I)および短鎖エステルユニット(II)を有する1以上のコポリエーテルエステルエラストマーを含むポリエステルブロック共重合体(A)99〜85質量%と、ガラス転移温度が120℃以上のポリアミド(B)1〜15質量%との混合物からなることを特徴とする二軸延伸ポリエステル系エラストマーフィルム。
【請求項2】
ポリエステルブロック共重合体(A)が海成分を、ガラス転移温度が120℃以上のポリアミド(B)が島成分をなしていることを特徴とする請求項1記載の二軸延伸ポリエステル系エラストマーフィルム。
【請求項3】
三次元表面粗さ測定装置で解析された、表面に現れる多数の突起の中心を基準点として求められたピーク高さ0.1μm以上の突起個数SPcが10000peaks/mm以上である請求項2記載の二軸延伸ポリエステル系エラストマーフィルム。
【請求項4】
光沢度が25%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の二軸延伸ポリエステル系エラストマーフィルム。
【請求項5】
透湿度が3000g/m・24hr以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の二軸延伸ポリエステル系エラストマーフィルム。
【請求項6】
ポリエステルブロック共重合体(A)の長鎖エステルユニット(I)が次の(i)式で表されるものであり、短鎖エステルユニット(II)が次の(ii)式で表されるものであることを特徴とする請求項1に記載の二軸延伸ポリエステル系エラストマーフィルム。
(化1)
−O−G−O−C(=O)−R−C(=O)− (i)
(化2)
−O−D−O−C(=O)−R−C(=O)− (ii)
ただし、上式で、Gは、400〜4000の数平均分子量を有するポリ(アルキレンオキシド)グリコールから末端水酸基を除去した後に残っている二価の基であり、Rは、300未満の分子量を有するジカルボン酸からカルボキシル基を除去した後に残っている二価の基であり、Dは、250未満の分子量を有するジオールから水酸基を除去した後に残っている二価の基であり、コポリエーテルエステルは、コポリエーテルエステルの長鎖エステルユニットに取り込まれたエチレンオキシド基をコポリエーテルエステルの総質量を基準にして0〜68質量%含んでおり、コポリエーテルエステルは25〜80質量%の短鎖エステルユニットを含む。
【請求項7】
ポリエステルブロック共重合体(A)の短鎖エステルユニット(II)がブチレンテレフタレートユニットであることを特徴とする請求項6記載の二軸延伸ポリエステル系エラストマーフィルム。
【請求項8】
ガラス転移温度が120℃以上のポリアミド(B)が、テレフタル酸及びイソフタル酸を主たる酸成分とし、ヘキサメチレンジアミン及びビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンを主たるアミン成分とすることを特徴とする請求項1記載の二軸延伸ポリエステル系エラストマーフィルム。


【図1】
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【公開番号】特開2010−265407(P2010−265407A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118708(P2009−118708)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】