説明

透湿方法、透湿方法を用いた透湿実験装置、透湿方法を用いた補修装置

【課題】 簡単かつコストをかけずに、試料の透湿を実験したり、補修対象物に対し補修剤を透湿させて補修すること。
【解決手段】 透湿実験装置は、その周囲が断熱材2によって覆われた試料1の下面に接する冷却器3、およびその冷却器3を上面に載せた電子天秤4を内部に有する恒温恒湿槽5と、冷却器3に温度制御した冷媒を送り試料1の下面温度を制御する外部冷却器6と、コンピュータ7とから構成されている。コンピュータ7は、恒温恒湿槽5の温度と、外部冷却器6の冷媒温度と、電子天秤4が計測した試料1の重量とを入力して、試料1の上面温度、下面温度、上面の相対湿度を制御することにより、試料1内部に溜まる湿度の給排水特性を制御して、試料1に透湿する水分量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の、補修剤等の液体あるいはガス状物質を透湿させる透湿方法、この透湿方法の原理を利用した透湿実験装置および補修装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、セメントコンクリート等の補修をする補修装置として、コンプレッサ等により発生させた圧縮空気を利用して、セメントコンクリート構造物に出来たヒビや、クラック、欠損、剥落などの欠陥部部分に圧縮空気を利用してセメントコンクリート等に対し補修剤を注入したり、ひび割れの一方の端部から内部の空気を強制的に吸引して充填剤が注入することが行われている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【特許文献1】特開2002−206347号公報
【特許文献2】特開2003−314063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の補修装置では、コンプレッサ等により発生させた圧縮空気を利用するため、装置が大型化し、コストがかかる、という課題がある。
【0004】
また、研究室等における実験レベルではあるが、セメントコンクリート等の試料に対する透湿方法を研究または実験するため、試料に対し補修剤等の液体あるいはガス状物質を透湿させる際に評価するための簡単な透湿実験装置等の開発が望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、簡単かつコストをかけずに、試料の透湿を実験したり、補修対象物に対し補修剤を透湿させて補修することができる透湿方法、透湿方法を用いた透湿実験装置、透湿方法を用いた補修装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の透湿方法では、試料の温度と湿度とを制御し、上記制御された温度および湿度の状況下において、上記試料の水分または液体の透湿を制御する、方法を採る。
【0007】
ここで、恒温恒湿槽の中で試料の温度と湿度を制御する際、上記試料の上面温度と、上記試料の上面相対湿度と、上記試料の下面温度とを、上記試料の内部に溜まる空気中の湿度の給排水特性に基づいて同時に制御するようにしても良い。
【0008】
また、恒温恒湿槽の中で試料の温度と湿度を制御する際、さらに、上記試料下面の相対湿度も制御する、ようにしても良い。
【0009】
また、上記試料表面の相対湿度を制御する際、空気中の浮遊粉塵成分あるいは有機物質、または水溶性の無機物あるいは有機物を、塗布状態あるいは霧状態またはガス化して湿度と平行してあるいは同時に噴霧する、ようにしても良い。
【0010】
また、恒温恒湿槽の中で試料の温度と湿度を制御する際、上記試料の表面に赤外線ランプあるいは電球等から局部的に赤外線を照射し、上記試料の表面温度を制御する、ようにしても良い。
【0011】
また、さらに、上記試料の表面あるいは底面あるいは上記試料の中間に、ある透湿係数を有するシートまたは層状の物質を固定する、ようにしても良い。
【0012】
また、上記試料は、セメントコンクリートであり、さらに、上記試料の表面の相対湿度を制御する際、上記セメントコンクリートを中性化あるいは劣化させる液体の陽イオン系界面活性剤、または両性界面活性剤、あるいはセメントコンクリートを劣化させる薬剤を上記透湿の制御と同時、あるいは水分中に混合した液として噴霧する、ようにしても良い。
【0013】
また、上記試料下面の湿度を制御する際、空気中の浮遊粉塵成分あるいは有機物質、または水溶性の無機物あるいは有機物を、塗布状態あるいは霧状態またはガス化して湿度と平行してあるいは同時に噴霧する、ようにしても良い。
【0014】
また、上記試料表面の気圧あるいは上記試料の下面の気圧も制御する、ようにしても良い。
【0015】
また、上記試料は、中性化や亀裂等の損傷が存在するセメントコンクリートであり、上記水分の透湿を制御する際、上記セメントコンクリートの液体状の補修剤を用い、上記補修剤を塗布あるいは空気中に霧状態またはガス化して上記セメントコンクリート内部に透湿させ、上記セメントコンクリートの損傷を補修する、ようにしても良い。
【0016】
また、さらに、上記試料がシートあるいは膜状の場合は、上記試料の下面側のシートの下面に空気層を設けて、上記空気層の温度、相対湿度、および圧力を時間変化させて、上記試料内部を出入りする上記液体の吸排出量を測定する、ようにしても良い。
【0017】
また、上記試料は、中性化や亀裂等の損傷が存在するセメントコンクリートであり、上記水分の透湿を制御する際、上記セメントコンクリートの液体状の補修剤を用い、上記制御された温度および湿度の状況下において、上記セメントコンクリートに上記補修剤を透湿させると共に、上記セメントコンクリートを中性化させる炭酸ガスの圧力を調整する、ようにしても良い。
【0018】
また、本発明の他の透湿方法では、試料内部の水蒸気圧に対する上記試料表面の水蒸気圧を制御し、上記制御された上記試料表面の水蒸気圧の状況下において、上記試料の水分または液体の透湿を制御する、ようにしても良い。
【0019】
また、本発明の透湿方法を用いた透湿実験装置は、以上説明した透湿方法を用いて、試料に液体を透湿させ、上記試料の重量測定から上記試料内部または底部にたまる上記液体による湿度の吸排出特性を測定する、構成を採る。
【0020】
また、本発明の透湿方法を用いた補修装置は、以上説明した透湿方法を用いて、試料の代わりに補修対象物に補修剤等の液体あるいはガス状物質を透湿させて補修する、構成を採る。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明の透湿方法、透湿方法を用いた透湿実験装置によれば、試料の温度と湿度とを制御し、そのように制御された温度および湿度の状況下において、試料内部に浸透する水分量または液体の量を制御することができる。その結果、例えば、試料が室外で遭遇するような種々の環境条件を定常だけでなく過渡現象としても設定でき、試料の湿度の吸排出特性を種々の条件で測定することができる。
【0022】
また、本発明の他の透湿方法、透湿方法を用いた透湿実験装置によれば、試料内部の水蒸気圧に対する試料表面の水蒸気圧を制御し、制御された試料表面の水蒸気圧の状況下において、試料の水分または液体の透湿を制御するので、温度や湿度の制御が不要とすることができる。
【0023】
また、本発明の透湿方法を用いた補修装置によれば、セメントコンクリート等の補修対象物の温度と湿度とを制御し、そのように制御された温度および湿度の状況下において、補修対象物内部に浸透する補修剤の量を制御することができる。その結果、例えば、コンプレッサ等の大型化な装置が不要となり、コストがかからずに、セメントコンクリート等の補修対象物を補修することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の透湿方法、透湿方法を用いた透湿実験装置、透湿方法を用いた補修装置の実施の形態について説明する。
【0025】
実施の形態1.
実施の形態1は、本発明の透湿方法、透湿方法を用いた透湿実験装置の実施の形態について説明する。
【0026】
図1は、本実施の形態1の透湿実験装置の構成の一例を示す図である。
【0027】
本実施の形態1の透湿実験装置は、1部屋あるいは2部屋から成る温度、外部の湿度との相対湿度(以下、適宜、湿度と略す。)がプログラム入力可能な恒温恒湿槽5を利用して透湿実験を行うものであり、図1は1部屋状態の装置の概要を示している。
【0028】
つまり、図1に示す本実施の形態1の透湿実験装置は、その周囲が断熱材2によって覆われた試料1の下面に接する冷却器3、およびその冷却器3を上面に載せた電子天秤4を内部に有する恒温恒湿槽5と、冷却器3に温度制御した冷媒を送り試料1の下面温度を制御する外部冷却器6と、恒温恒湿槽5の温度と外部冷却器6の冷媒温度と電子天秤4が計測した試料1の重量とを入力して記録や演算をするコンピュータ7とから構成されている。
【0029】
セメントコンクリート等の試料1は、ビニールシート(図示せず)等により表面だけを残して試料1全体が蔽われている。この試料1を一次元熱伝導状態とするため、そのビニールシートの周囲を断熱材2で蔽い、これを冷却器3の上に載せ、これ全体を電子天秤4の上に乗せている。
【0030】
試料1の上面温度および湿度は、恒温恒湿槽5内蔵のプログラムを利用して制御する。一方、試料1の下面温度は、外部冷却器6の冷媒温度を利用して冷却器3の温度をプログラム変化させることにより制御している。この状態で電子天秤4からの試料1の重量変化を計測して、試料1における湿度または透湿の時間的な増減量を測定する。
【0031】
試料1の側面および底面のビニールシート(図示せず)は、試料1の湿度量がビニールシート(図示せず)の袋状の底部と試料1内部に透湿し、溜まった水分量を捕まえるためのものである。
【0032】
その周囲の断熱材2は、熱貫入が一次元、すなわち試料1の上面からの方向のみとなるように十分大きいものを用いる。また試料1と断熱材2との隙間は、シーリング材等でシールする。試料1の外側のビニールシート(図示せず)は透明のものを使うと水分の溜まる状態が、試料1底部で観察できる
【0033】
冷却器3の表面は試料1下面の断面積と同一となるような形状で、かつ、滑らかな表面を有しており、試料1の下面以外の断熱材の下面等は冷却しないようにしている。また、冷却器3は、冷媒温度調整機能を有する外部冷却器6と、ホース8等で連結されており、温度制御した冷媒を冷却器3と外部冷却器6との間で循環させて、試料1下面の温度を制御している。
【0034】
電子天秤4は、恒温恒湿槽5の外部にて試料1、断熱材2、及び冷却器3等の合計の重量のモニター表示が可能である共に、試料1の湿度量を水分の時間的な増減量として測定して、コンピュータ7へ出力する。
【0035】
すると、コンピュータ7は、恒温恒湿槽5が測定または制御している温度および湿度と、外部冷却器6が測定または制御している冷媒温度を、それぞれ、試料1の上面温度、上面相対湿度、下面温度として入力すると共に、電子天秤4からの試料1の重量変化を入力して、試料1の上面温度、上面相対湿度、下面温度の変化に応じた試料1の内部に溜まる空気中の水分(液体)量や、湿度の給排水特性を測定することができ、試料1に透湿する水分(液体)量を制御することができる。
【0036】
ここで、試料1に浸透させる水分(液体)として、空気中の不純物を入れる場合は、恒温恒湿槽5内部の湿度発生部(図示せず)の水タンクの中、あるいは恒温恒湿槽5の内部に噴霧機(図示せず)をさらに設けて、この湿度を時間制御して定常あるいは過渡状態とする。
【0037】
なお、膜あるいはシート状の試料1については、図1の試料1の下面に両面穴だらけでかつ内部に空気層のある箱状の冶具を置き、固形の試料1と同様の実験を行う。
【0038】
試料1表面の圧力を変化させる場合は恒温恒湿槽5に圧力制御装置を取り付け、温度、湿度、および圧力も同時に制御する。試料1表面の温度が日光の直射を受け、温度が高くなる場合を想定する場合は、例えば、赤外線ランプ等で試料1表面を加熱するようにする。
【0039】
次に、本実施の形態1の透湿実験装置により実験した実験結果について説明する。
【0040】
ここで、試料1は、透湿実験装置を構成する各構成の大きさは、次の通りとする。
・試料1(直径:10cm,高さ:15cm)
・断熱材2(直径:40cm,厚さ:15cm,中央に試料1が挿入できる直径10cmの穴)
・冷却器3(若干突起のある冷却部の表面の直径:10cm)
・電子天秤4(最大:8kg,±0.01グラム)
・恒温恒湿槽5(温度および湿度のプログラム制御可能)
・外部冷却器6(プログラム式温度制御装置で液体循環装置付:±0.1℃)
【0041】
図2は、図1に示す本実施の形態1の透湿実験装置により測定した、アスファルト層内部に水分が溜まらない試料1(アスファルト表層3cm、アスファルト基層12cmの合計厚15cmの切出し試料)の24時間の湿度の吸排出特性と温度を示す図である。ここで、温度(下)とは、試料1下面の温度、温度(上)とは、試料1上面(表面)の温度で、両者は屋外で実測された値である。また、荷重とは、(試料1+試料1を包んだビニールシート+断熱材2+冷却器3+ホース7)の合計の重量であり、湿度とは、試料1の上面(表面)温度に対応した屋外での実測値を使用した試料1の上面(表面)である。
【0042】
この図2からわかるように、試料1の上面温度・湿度と、下面温度とを、湿度とを経時的に制御して、試料1の上面湿度を一度高くし、その後低くした場合には(時間6:00:00〜16:00:00の間)、試料1の荷重が増加、すなわち試料1内部に空気中の水分が透湿する一方、試料1の上面湿度を下げてから上昇させた場合(時間16:00:00〜22:00:00の間)は、試料1の荷重が現象、すなわち試料1内部に溜まっている水分が放出されることがわかる。
【0043】
つまり、本実施の形態1の補修方法、および透湿方法を用いた透湿実験装置によれば、試料1の上面温度・湿度と、下面温度とを、湿度とを経時的に制御することにより、試料1内部への水分の透湿を制御することができる。
【0044】
図3は、図1に示す本実施の形態1の透湿実験装置により測定した、アスファルト層内部に水分が溜まる試料1の24時間の湿度の吸排出特性と温度および湿度変化を示す図である。
【0045】
図3において、荷重や、温度(上)、温度(下)、および湿度の指す意味は、図2の場合と同じである。また、図2の場合と同様に、上記条件の透湿実験装置を用いて実験を行っている。
【0046】
ただし、この実験で使用している試料1は、アスファルト表層3cm、アスファルト基層12cmの合計厚15cmの切出し試料である。
【0047】
この図3からわかるように、試料1の場合も、図2に示す試料1の実験結果と同様に、試料1の上面温度・湿度と、下面温度とを、湿度とを経時的に制御して、試料1の上面湿度を一度高くし、その後低くした場合には(時間6:00:00〜16:00:00の間)、試料1の荷重が増加、すなわち試料1内部に空気中の水分が透湿する一方、試料1の上面湿度を下げてから上昇させた場合(時間16:00:00〜22:00:00の間)は、試料1の荷重が現象、すなわち試料1内部に溜まっている水分が放出されることがわかる。
【0048】
従って、本実施の形態1の補修方法、透湿方法を用いた透湿実験装置によれば、試料1の上面温度、下面温度、上面の相対湿度を制御することにより、試料1の内部に溜まる空気中の水分量または液体の量を制御することができる。その結果、例えば、試料1が室外で遭遇するような種々の環境条件を定常だけでなく過渡現象としても設定でき、試料1の湿度の吸排出特性を種々の条件で測定することができる。
【0049】
また、試料1の温度と湿度を制御する際、試料1下面の相対湿度も制御するようにしても良い。このようにすれば、試料1内部の湿度をより正確に計測でき、試料1に透湿する水分量をより正確に制御することができる。
【0050】
また、恒温恒湿槽5の中に噴霧器等を設け、試料1表面の相対湿度を制御する際、空気中の浮遊粉塵成分あるいは有機物質、または水溶性の無機物あるいは有機物を、塗布状態あるいは霧状態またはガス化して湿度と平行してあるいは同時に噴霧するようにしても良い。このようにすれば、試料1に対し迅速かつ正確に水分を透湿させることができ、試料1に透湿する水分量をより迅速かつ正確に制御することができる。
【0051】
また、恒温恒湿槽5の中で試料1の温度と湿度を制御する際、試料1の表面に赤外線ランプあるいは電球等から局部的に赤外線を照射し、試料1の表面温度を制御するようにしても良い。このようにすれば、試料1の表面温度を迅速に制御することができる。
【0052】
また、さらに、試料1の表面あるいは底面あるいは試料1の中間に、ある透湿係数を有するシートまたは層状の物質を固定するようにしても良い。このようにすれば、試料1の重量測定だけからでなく、そのシートまたは層状の物質を通して放出される湿度を計測することもでき、より正確に試料1の湿度を計測することができる。
【0053】
また、試料1が、セメントコンクリートであり、さらに、試料1の表面の相対湿度を制御する際、セメントコンクリートを中性化あるいは劣化させる液体の陽イオン系界面活性剤、または両性界面活性剤、あるいはセメントコンクリートを劣化させる薬剤を透湿の制御と同時、あるいは水分中に混合した液として噴霧あるいは塗布するようにしても良い。このようにすれば、試料1であるセメントコンクリートに、セメントコンクリートを中性化あるいは劣化させる液体の陽イオン系界面活性剤や、両性界面活性剤、あるいはセメントコンクリートを劣化させる薬剤の透湿を制御して、セメントコンクリートに中性化あるいは劣化を実験することができる。
【0054】
また、試料1下面の湿度を制御する際、空気中の浮遊粉塵成分あるいは有機物質、または水溶性の無機物あるいは有機物を塗布状態あるいは霧状態またはガス化して湿度と平行してあるいは同時に噴霧するようにしても良い。このようにすれば、空気中の浮遊粉塵成分等を含んだより実際の環境に近い透湿実験を迅速に行なうことができる。
【0055】
また、試料1表面の気圧あるいは試料1の下面の気圧も制御可能としても良い。このようにすれば、より正確に試料1の透湿実験を行なうことができる。
【0056】
また、試料1は、中性化や亀裂等の損傷が存在するセメントコンクリートであり、上記水分の透湿を制御する際、セメントコンクリートの液体状の補修剤を用い、上記補修剤を塗布あるいは空気中に霧状態またはガス化して上記セメントコンクリート内部に透湿させ、上記セメントコンクリートの損傷を補修するようにしても良い。このようにすれば、試料1であるセメントコンクリートに対し補修剤の透湿を制御することができ、中性化あるいは劣化したセメントコンクリートの補修実験を簡単に実行することができる。
【0057】
また、試料1がシートあるいは膜状の場合は、試料1の下面側のシートの下面に空気層を設けて、上記空気層の温度、相対湿度、および圧力を時間変化させて、試料1内部を出入りする上記液体の吸排出量の測定するようにしても良い。このようにすれば、より正確に試料1の吸排出量を測定することができる。
【0058】
また、試料1は、中性化や亀裂等の損傷が存在するセメントコンクリートであり、上記水分の透湿を制御する際、セメントコンクリートの液体状の補修剤を用い、制御された温度および湿度の状況下において、セメントコンクリートに補修剤を透湿させると共に、セメントコンクリートを中性化させる炭酸ガスの圧力を調整するようにしても良い。このようにすれば、試料1であるセメントコンクリートに対し、中性化させる炭酸ガスの圧力を調整した上で、補修剤の透湿を制御することができ、中性化あるいは劣化したセメントコンクリートの補修実験を簡単かつより正確に実行することができる。
【0059】
また、試料1表面の水蒸気圧と、試料1内部の水蒸気圧との差が、試料1内部の内部ガス浸透の点で重要である。従って、ガス浸透では、試料1表面のガス圧を大きくすることで温度差をとらなくても理論上、ガス浸透は可能となる。よって、ガス圧調整装置(図示せず)等を設けて、試料1表面のガス圧を調整することにより、試料1内部の水蒸気圧に対する試料1表面の水蒸気圧を制御し、その制御された試料1表面の水蒸気圧の状況下において、試料1の水分または液体の透湿を制御するようにしても勿論よい。このようにすれば、温度および湿度の制御が不要となるので、恒温恒湿槽5や外部冷却器6を省略することができる。
【0060】
なお、コンピュータ7は、恒温恒湿槽5が測定または制御している温度および湿度と、外部冷却器6が測定または制御している冷媒温度を、それぞれ、試料1の上面温度、上面相対湿度、下面温度として入力するようにしているが、試料1の上面および下面にそれぞれ試料1の上面温度、上面相対湿度、下面温度底部を測定する温度センサーや湿度センサーを設けて、これらのセンサーが測定した値を入力するようにしても勿論良い。後者のようにすれば、より正確な測定が可能となる。
【0061】
実施の形態2.
実施の形態2は、本発明の透湿方法を利用した補修装置の実施の形態について説明する。
【0062】
図4は、本実施の形態2の補修装置の構成の一例を示す図である。
【0063】
実施の形態2は、本発明の透湿実施方法、透湿方法を用いた補修装置の実施の形態1の補修装置に適用した例について説明する。
【0064】
図4において、本実施の形態2の補修装置は、セメントコンクリート21の中性化した部分や、亀裂の入った劣化部分を補修等するもので、セメントコンクリート21の上面温度を測定する温度センサ22aと、セメントコンクリート21上面の相対湿度を測定する湿度センサ22bと、セメントコンクリート21の下面温度を測定する温度センサ22cと、温度センサ22aと湿度センサ22bとの間に設けられ、セメントコンクリート21の中性化した部分や亀裂の入った劣化部分を補修等するための補修剤をガス(噴霧)化してその劣化部分に浸透させる噴霧器25と、セメントコンクリート21の下面を冷却する外部冷却器26と、センサ22a〜22cからの温度や湿度を入力して噴霧器25と外部冷却器26を制御するコンピュータ27とから構成されている。
【0065】
次に動作を説明すると、図4に示す本実施の形態2の補修装置は、基本的には、図1に示す実施の形態1の透湿実験装置の動作と同じであるが、実施の形態1の透湿実験装置が恒温恒湿槽5の中で透湿実験しているのに対し、本実施の形態2の補修装置は、屋外のセメントコンクリート21に直接、補修剤をガス(噴霧)化して浸透させる点で異なる。
【0066】
つまり、補修対象であるセメントコンクリート21の上面温度と上面湿度と、下面温度をそれぞれセンサ22a〜22cが検出して、コンピュータ27へ出力する。
【0067】
コンピュータ27は、各センサ22a〜22cから入力したセメントコンクリート21上面の温度や湿度、下面温度に基づいて、まず、外部冷却器26を制御して、セメントコンクリート21に対し噴霧(ガス)状態の補修剤が最適に浸透する状態になるように、外部冷却器26により、セメントコンクリート21下面の温度を制御する。
【0068】
この際、補修剤が最適に浸透する状態は、この補修装置を利用して、補修剤が最適に浸透する状態を予め測定しておいても良いし、または図1に示す実施の形態1の透湿実験装置を利用して、実験により予め求めるようにしても勿論良い。
【0069】
そして、コンピュータ27は、補修対象であるセメントコンクリート21の上面温度、上面湿度、下面温度が、セメントコンクリート21に対し噴霧(ガス)状態の補修剤が最適に浸透する状態になると判断すると、噴霧器25に指令を出して、噴霧(ガス)状態の補修剤をセメントコンクリート21の劣化部分に放出させる。
【0070】
すると、噴霧(ガス)状態の補修剤が、セメントコンクリート21の劣化部分に最適な状態で浸透していくので、セメントコンクリート21の中性化や、亀裂等が生じている劣化部分を、簡単な構成で、補修することができる。
【0071】
従って、本実施の形態2の補修装置によれば、補修対象であるセメントコンクリート21の劣化部分に最適な状態で補修剤を浸透させることができるので、セメントコンクリート21の中性化や、亀裂等生じている劣化部分を、簡単かつ低コストで補修することができる。
【0072】
なお、本実施の形態2では、温度センサ22cと、外部冷却器26により、セメントコンクリート21の下面温度のみを直接制御するようにしているが、本発明では、これに限らず、噴霧器25を利用して、セメントコンクリート21の相対湿度も制御するようにしても勿論良い、この場合には、セメントコンクリート21の上面と同様に、湿度センサが設けられ、セメントコンクリート21の上面および下面の温度・湿度に基づいて、セメントコンクリート21の下面の温度と湿度とを制御するようにしても勿論良い。
【0073】
また、本実施の形態2では、セメントコンクリート21の中性化した劣化部分、および亀裂等の発生した劣化部分を、噴霧器25により同様に補修するように説明したが、本発明では、これに限らず、セメントコンクリート21の中性化した劣化部分に対しては、噴霧器25による補修をし、亀裂等の発生した劣化部分は、その亀裂の奥まで補修剤が侵入するように、補修剤を噴霧状態ではなく、シャワーのようにして吹き付けたり、さらには、噴霧状態でも粒形を大きくとって、亀裂に向けて噴射する等して、セメントコンクリート21の劣化部分に適応的に補修剤を塗布等するようにしても勿論よい。
【0074】
また、実施の形態1の尚書き部分で記載していた部分は、実施の形態2でも、当てはまるものである。例えば、上述したように、セメントコンクリート21の表面の水蒸気圧と、セメントコンクリート21内部の水蒸気圧との差が、セメントコンクリート21内部の内部ガス浸透の点で重要であり、ガス浸透では、表面のガス圧を大きくすることで温度差をとらなくても理論上、ガス浸透は可能となるので、本実施の形態2においても、外部冷却器26を省略すると共に、温度センサ22aおよび22cも省略し、加湿器(図示せず)をさらに設けたり、あるいは噴霧器25を加湿器としても共有化して、試料1の下面側を加湿するようにしても勿論良い。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の透湿方法、透湿方法を用いた透湿実験装置、透湿方法を用いた補修装置によれば、試料の温度と湿度とを制御し、そのように制御された温度および湿度の状況下において、試料内部に浸透する水分量または液体の量を制御できると共に、セメントコンクリート等の補修対象物の温度と湿度とを制御し、そのように制御された温度および湿度の状況下において、補修対象物内部に浸透する補修剤の量を制御することができる。
【0076】
その結果、例えば、試料が室外で遭遇するような種々の環境条件を定常だけでなく過渡現象としても設定でき、試料の湿度の吸排出特性を種々の条件で測定することができ、またコンプレッサ等の大型化な装置が不要となり、コストがかからずに、セメントコンクリート等の補修対象物を補修することができ、樹脂のようなコーティング材からシート、膜状の素材、木材、アスファルト、セメントコンクリートのような素材、プラスチックス、ゴム、塗料、布のような様々な素材の湿度の吸排出特性を測定したり、この吸排出特性を利用してこれらの補修が可能であり、透湿実験ないしは補修の際に非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本実施の形態1の透湿実験装置の構成の一例を示す図
【図2】図1に示す本実施の形態1の透湿実験装置により測定した、アスファルト層内部に水分が溜まらない試料(アスファルト表層3cm、アスファルト基層12cmの合計厚15cmの切出し試料)の24時間の湿度の吸排出特性と温度を示す図
【図3】図1に示す本実施の形態1の透湿実験装置により測定した、アスファルト層内部に水分が溜まる試料の24時間の湿度の吸排出特性と温度および湿度変化を示す図
【図4】本実施の形態2の補修装置の構成の一例を示す図
【符号の説明】
【0078】
1 試料
2 断熱材
3 冷却器
4 電子天秤
5 恒温恒湿槽
6 外部冷却器
7 コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の温度と湿度とを制御し、
上記制御された温度および湿度の状況下において、上記試料の水分または液体の透湿を制御する、
ことを特徴とする透湿方法。
【請求項2】
恒温恒湿槽の中で試料の温度と湿度を制御する際、上記試料の上面温度と、上記試料の上面相対湿度と、上記試料の下面温度とを、上記試料の内部に溜まる空気中の湿度の給排水特性に基づいて同時に制御する、
ことを特徴とする請求項1記載の透湿方法。
【請求項3】
恒温恒湿槽の中で試料の温度と湿度を制御する際、さらに、上記試料下面の相対湿度も制御する、
ことを特徴とする請求項1記載の透湿方法。
【請求項4】
上記試料表面の相対湿度を制御する際、空気中の浮遊粉塵成分あるいは有機物質、または水溶性の無機物あるいは有機物を、塗布状態あるいは霧状態またはガス化して湿度と平行してあるいは同時に噴霧する、
ことを特徴とする請求項1記載の透湿方法。
【請求項5】
恒温恒湿槽の中で試料の温度と湿度を制御する際、上記試料の表面に赤外線ランプあるいは電球等から局部的に赤外線を照射し、上記試料の表面温度を制御する、
ことを特徴とする請求項1記載の透湿方法。
【請求項6】
さらに、上記試料の表面あるいは底面あるいは上記試料の中間に、ある透湿係数を有するシートまたは層状の物質を固定する、
ことを特徴とする請求項1記載の透湿方法。
【請求項7】
上記試料は、セメントコンクリートであり、
さらに、上記試料の表面の相対湿度を制御する際、上記セメントコンクリートを中性化あるいは劣化させる液体の陽イオン系界面活性剤、または両性界面活性剤、あるいはセメントコンクリートを劣化させる薬剤を上記透湿の制御と同時、あるいは水分中に混合した液として噴霧する、
ことを特徴とする請求項1記載の透湿方法。
【請求項8】
上記試料下面の湿度を制御する際、空気中の浮遊粉塵成分あるいは有機物質、または水溶性の無機物あるいは有機物を、塗布状態あるいは霧状態またはガス化して湿度と平行してあるいは同時に噴霧する、
ことを特徴とする請求項1記載の透湿方法。
【請求項9】
さらに、上記試料表面の気圧あるいは上記試料の下面の気圧も制御する、
ことを特徴とする請求項1記載の透湿方法。
【請求項10】
上記試料は、中性化や亀裂等の損傷が存在するセメントコンクリートであり、
上記水分の透湿を制御する際、上記セメントコンクリートの液体状の補修剤を用い、
上記補修剤を塗布あるいは空気中に霧状態またはガス化して上記セメントコンクリート内部に透湿させ、上記セメントコンクリートの損傷を補修する、
ことを特徴とする請求項1記載の透湿方法。
【請求項11】
さらに、上記試料がシートあるいは膜状の場合は、上記試料の下面側のシートの下面に空気層を設けて、上記空気層の温度、相対湿度、および圧力を時間変化させて、上記試料内部を出入りする上記液体の吸排出量の測定する、
ことを特徴とする請求項1記載の透湿方法。
【請求項12】
上記試料は、中性化や亀裂等の損傷が存在するセメントコンクリートであり、
上記水分の透湿を制御する際、上記セメントコンクリートの液体状の補修剤を用い、
上記制御された温度および湿度の状況下において、上記セメントコンクリートに上記補修剤を透湿させると共に、上記セメントコンクリートを中性化させる炭酸ガスの圧力を調整する、
ことを特徴とする請求項1記載の透湿方法。
【請求項13】
試料内部の水蒸気圧に対する上記試料表面の水蒸気圧を制御し、
上記制御された上記試料表面の水蒸気圧の状況下において、上記試料の水分または液体の透湿を制御する、
ことを特徴とする透湿方法。
【請求項14】
上記請求項1〜請求項13いずれかの請求項に記載の透湿方法を用いて、試料に液体を透湿させ、上記試料の重量測定から上記試料内部または底部にたまる上記液体による湿度の吸排出特性を測定する、
ことを特徴とする透湿方法を用いた透湿実験装置。
【請求項15】
上記請求項1〜請求項13いずれかの請求項に記載の透湿方法を用いて、試料の代わりに補修対象物に補修剤等の液体あるいはガス状物質を透湿させて補修する、
ことを特徴とする透湿方法を用いた補修装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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