説明

透湿材料

【課題】柔軟で、他樹脂との混和性にも優れ、然も優れた透湿性を具備するアルカリけん化重合体、及び、そのけん化重合体にオレフィン系重合体を配合した重合体組成物で、柔軟性、混和性を更に向上させたものを提供する。
【解決手段】エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体をアルカリけん化してなる重合体けん化物であって、重合体けん化物中のアルカリ金属イオン濃度が0.1〜5.8モル/kgの範囲にある重合体けん化物(A)からなる透湿材料及び該重合体けん化物(A)100未満〜10質量部とオレフィン系重合体(B)0超〜90質量部との重合体組成物からなる透湿材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透湿材料に関し、より詳細には特定性状のエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体のアルカリけん化物又は該けん化物とオレフィン系重合体との組成物からなり、透湿性に優れると共に柔軟で加工性や他樹脂との混和性にも優れた透湿材料に関する。
【背景技術】
【0002】
透湿性とは、例えば、水蒸気を外部に放散するが、外部からの水(液体)は透過させない等、湿分を選択的に通過せしめる性能を示す言葉で、近年、衣料分野ではトレンチコートやスポーツウエヤー、アウトドアウエヤー等の用途に透湿性材料が広く使用されている他、紙おむつや生理用品のような衛生材料、ある種の食品や花卉の包装材料、更に、屋内の湿度調整等を目的として壁紙や化粧板、透湿防水シート等の建材用途にも用いられるようになってきている。
【0003】
透湿材料は、その構造から微多孔質材料と無孔質材料に大別される。
微多孔質透湿材料には、例えば、微粉末状無機質充填材を配合したポリオレフィンをシート成形した後、延伸して得られるフィルム等が挙げられる。
このタイプの透湿性材料に於いては、透湿度を高くするため孔径を大きくしすぎると防水性が低下する等、透湿性の度合いと防水性のバランスをとるための孔径の調節が難しく、往々にして防水性が犠牲になることがあった。
又、無機質充填材の配合量が多くなるとシート強度が弱くなり、成形加工性が損なわれる。
更に微多孔性であるため、臭気成分がほとんど通過することが衛生材料分野では嫌われていた。
【0004】
一方、無孔質透湿材料には、例えば、ポリエーテル単位を相当量分子内に含有するポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ウレタン系エラストマー等があるが、これらの多くは高価であり、又、用途によっては柔軟すぎ、且つ粘着性が高くてブロッキングし易い等の問題があった。
【0005】
この無孔質透湿材料の一つにエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアルカリ金属アイオノマーからなる透湿材料がある。
特許文献1には、不飽和カルボン酸含有量が8〜30重量%、中和度が50%以上のカリウムアイオノマー或いはそのようなアイオノマーに親水性化合物を配合した組成物であって、透湿係数が0.02g/m2/day以上のものからなる透湿性材料の発明が開示され、この透湿材は透湿性や柔軟性の度合いの調節が容易であるだけでなく機械的強度、成形加工性、耐水性にも優れ、且つ、ブロッキングトラブルの発生も回避されることが記載されている。
【0006】
アイオノマーはエチレンと不飽和カルボン酸の共重合体を金属で部分的に中和したもので、特にK、Rb、Csイオン等のアルカリ金属イオンを含み、その中和度の高いものは透湿性に優れることも上記特許文献に記載のとおり既に知られている。
【0007】
アイオノマーを透湿材に用いる場合、そのアイオノマーはアルカリ金属中和度の高いものが一般に使用される。
特に、中和度80%以上の高中和度アイオノマーは、中和度50%以下のものに比べ透湿性が著しく良好で透湿効率が良いためである。
【特許文献1】特開2002−143656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、透湿性材料の用途に用いるアイオノマーは出来る限りアルカリ金属イオン中和度が高いものを用いることが好ましいことは従来から知られていたが、しかしベース樹脂であるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体を、高い中和度で中和し且つ均質なアイオノマー材料を得ることは必ずしも容易ではない。更に、高中和度のアイオノマーはその種類によっては、柔軟性及び他の樹脂との混和性が必ずしも満足すべきものでなくそのため、用途が制限される場合があった。
更に用途によっては従来のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアルカリ金属アイオノマーより、更に透湿性の高い材料が望まれていた。
【0009】
本発明者等は上記要望を満たすべく鋭意研究を重ねた結果、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体をアルカリけん化して得られた特定性状のけん化物が優れた透湿性を示し、且つ上記諸要求をも充足することを見出し、この知見に基づき本発明を完成した。
【0010】
従って、本発明の目的は、柔軟で他樹脂との混和性にも優れ、然も透湿性に優れた透湿材料を提供するにある。
又、本発明の他の目的は前記アルカリけん化物にオレフィン系重合体を特定量配合してなり、更に、柔軟性、加工性、成形性、混和性を向上させた透湿材料を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体をアルカリけん化(鹸化)してなる重合体けん化物であって、重合体けん化物中のアルカリ金属イオン濃度が0.1〜5.8モル/kgの範囲にある重合体けん化物からなる透湿材料が提供される。
透湿度(シート厚み100μm、40℃×90%RH JIS Z0208準拠)が200g/m・day以上である前記の透湿材料は本発明の好ましい態様である。
本発明では前記重合体けん化物(A)100未満〜10質量部とオレフィン系重合体(B)0超〜90質量部との重合体組成物からなる透湿材料が提供される。
透湿度(シート厚み100μm、40℃×90%RH JIS Z0208準拠)が5g/m・day以上である前記の透湿材料は本発明の好ましい態様である。
【0012】
また本発明の透湿材料において、前記エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体がエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体であり、前記アルカリ金属がカリウム、ナトリウムから選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
更に本発明の透湿材料においては、前記アルカリけん化されるエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(A)に於ける不飽和カルボン酸エステル成分含有率が5〜50質量%の範囲にあることが好ましい。
更に本発明によれば前記透湿材料をフィルム又はシートに成形してなる透湿フィルム、又はシートが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る透湿材料は、そのアルカリ金属イオン濃度が 0.1〜5.8モル/kgの範囲にある、特定のエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体けん化物(A)からなることにより、 透湿性に優れ、その透湿度(シート厚み100μm、40℃×90%RH JIS Z0208準拠)は、重合体けん化物の場合、通常200g/m・day以上、特に好ましくは300〜5000g/m・dayであり、該重合体ケン化物とポリオレフィン樹脂との重合体組成物の場合は、通常5g/m・day以上、好ましくは10〜100g/m・dayである。また本発明に係る透湿材料は他樹脂との混和性にも優れ、しかも高周波ウエルタ゛ー性等にも優れたものであり、 更に、高中和度アイオノマーからなる透湿材料に比べ、より柔軟で、透湿性も優れた透湿性材料を得ることが出来る。
又、本発明の重合体けん化物にポリエチレンやポリプロピレン、EVA等のオレフィン系重合体を配合してなる重合体組成物は、透湿性は勿論、より柔軟で成形性や加工性に優れ、他樹脂との混和性にも優れる。本発明の透湿性材料は前記したような優れた特性を有するため、その特性を活かしてコート、スポーツ衣料等の衣料品、衣料包装、食品包装等の包装材料、医療用品、ルーフィング材、壁材、床材等の建築、土木材料、トイレタリー、紙おむつのギャザーやバックシート、生理用品などの衛生材料、農園芸用フィルムのような農業用資材、その他の各種日常品、各種の透湿防水用材料として用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明に係る実施形態について詳細且つ具体的に説明する。但し、本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。
既に述べたとおり本発明は、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体をアルカリけん化してなる重合体けん化物であって、該重合体けん化物1kg当たり、カルボン酸アルカリ金属塩として存在するアルカリ金属イオン量(アルカリ金属イオン濃度)が0.1〜5.8 モル/kgの範囲にある重合体けん化物(A)からなる透湿材料及び該重合体けん化物(A)100未満〜10質量部とオレフィン系重合体(B)0超〜90質量部との重合体組成物からなる透湿材料の発明であって、いずれも透湿性に優れる点が特徴である。
【0015】
本発明の重合体けん化物又は重合体組成物に用いる素材樹脂であるエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体としては、エチレンと不飽和カルボン酸のアルキルエステル、例えばアクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、エタクリル酸アルキルエステル、クロトン酸アルキルエステル、フマル酸アルキルエステル、マレイン酸アルキルエステル、マレイン酸モノアルキルエステル、無水マレイン酸アルキルエステル、イタコン酸アルキルエステル及び無水イタコン酸アルキルエステルとからなる共重合体を例示することができる。
【0016】
アルキルエステル基のアルキルとしては、炭素数1〜12のものを挙げることができ、より具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、セカンダリーブチル、2−エチルヘキシル、イソオクチル等のアルキル基を例示することができる。
本発明では不飽和カルボン酸エステルとしてアクリル酸又はメタクリル酸のメチル、エチル、ノルマルブチルエステル、イソブチルエステルが好ましい。
本発明において特に好ましいエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体、はエチレン(メタ)アクリル酸エステル共重合体であり、とりわけエチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸ノルマルブチル共重合体、エチレン・アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン・メタアクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタアクリル酸エチル共重合体、エチレン・メタアクリル酸ノルマルブチル共重合体、エチレン・メタアクリル酸イソブチル共重合体である。
【0017】
前記けん化前のエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体に於ける不飽和カルボン酸エステル成分の含有率は5〜50質量%、特に20〜35質量%のものが好ましい。即ち不飽和カルボン酸エステル成分の含有率がこの範囲にあると透湿性、他樹脂との混和性のバランスに優れ、好ましい。
このようなエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体はそれ自体公知の高圧ラジカル共重合により製造される。
【0018】
本発明では前記エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体をアルカリけん化するが、けん化に用いる苛性アルカリのアルカリ金属イオン種としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)等を挙げることができる。
これらの内では、ナトリウムとカリウムが好ましく、特にカリウムが好ましい。
本発明においては、カルボン酸アルカリ塩として重合体けん化物(A)中に存在するカリウム、ナトリウム等のアルカリ金属イオン濃度は0.1〜5.8モル/kg、より好ましくは1〜3モル/kgの範囲にある。
アルカリ金属イオン濃度が上記下限を下回るものは透湿性能が劣り、一方上記上限を超えるものは溶融粘度が高くなりすぎる事により押出成形が困難になる等、成形性、加工性が悪くなるため好ましくない。
本発明のけん化物は、成形性、加工性の面から230℃、10kg荷重(JIS K7210−1999に準拠)におけるメルトフローレートが0.01〜100g/10分、特に0.1〜50g/10分のものが好適である。
【0019】
本発明に於いては、重合体けん化物の内でも、アルカリけん化されるべきエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体中の全不飽和カルボン酸エステル基単位のモル量に対し、けん化後、カルボン酸塩として存在するアルカリ金属イオンモル量の割合が0.1〜0.6の範囲にあるもの、即ち、けん化度が10〜60%の範囲にある重合体けん化物は、透湿性や他樹脂との混和性の観点から好ましい。
因みに、本発明において共重合体中のエステル成分はアルカリによるけん化反応により部分的にアルカリ塩成分に変化するので、けん化物はエチレン単位、不飽和カルボン酸エステル単位、不飽和カルボン酸アルカリ塩単位を含有する共重合体となり、遊離のカルボキシル基単位は含有しない。
【0020】
エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体のアルカリけん化は、苛性アルカリ等によりそれ自体公知の方法で行えばよいが、例えばエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体と所定量の水酸化カリウム等の苛性アルカリとを押出機、ニーダー、バンバリーミキサ等の混練装置中で例えば100〜250℃の温度下で溶融混合するか、あるいはエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体を上記混練装で溶融均質化し、その後所定量の水酸化カリウム等の苛性アルカリを加えることによりエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体のエステル部分と苛性アルカリを反応させてけん化物とする方法を例示することができる。
【0021】
本発明では、重合体けん化物(A)100未満〜10重量部とオレフィン系重合体(B)0超〜90重量部とを配合してなる重合体組成物も提供する。
この態様のものは、非帯電性に優れるほか、樹脂自体がより柔軟で、成形性、加工性に優れる外、他樹脂との混和性にも優れる。本発明において透湿材料の透湿性、成形性、加工性、他樹脂との混和性のバランスの面からは、該けん化物(A)99〜10重量部とオレフィン系重合体(B)1〜90重量部、特に該けん化物(A)80〜20重量部とオレフィン系重合体(B)20〜80重量部が好ましい。
【0022】
前記本発明の重合体けん化物と組み合わせて配合されるオレフィン系重合体としては、エチレン単独重合体(エチレンホモポリマー)やエチレンと炭素数3〜20のαーオレフィン(プロピレン、1ーブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチルー1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等)との共重合体、具体的には例えば、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、中・高密度ポリエチレン、メタロセン触媒重合低密度ポリエチレン等のメタロセン触媒重合エチレン(共)重合体(メタロセン触媒の存在下で重合されたエチレン(共)重合体)などのエチレン系重合体、ポリプロピレンホモポリマーやプロピレンにエチレン、1−ブテン、2−ブテン 1−ペンテン、4−メチルー1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ドデセン等を共重合させたランダム又はブロックコポリマー等のプロピレン系重合体、ポリブテン、ポリイソブテン、ポリブタジエン等のブテン系重合体、4メチルー1−ペンテン等のメチルペンテン系重合体共重合体、ポリイソプレン重合体等の外、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のエチレン・ビニルエステル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体またはそのアイオノマー等を例示することができる。
【0023】
これらの内では、エチレン系重合体、プロピレン系重合体及びエチレン・ビニルエステル共重合体が好ましく、特にメタロセン触媒重合低密度ポリエチレン、プロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体及びエチレン・酢酸ビニル共重合体が好ましい。
【0024】
上記重合体組成物を得る方法としては、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体とオレフィン系重合体とのそれぞれ所定量を、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサ、ニーダー等で溶融加熱混合し、その際、又は、混合後に所定量の苛性アルカリ等を加えてけん化する方法、或いは予め調製された重合体けん化物とオレフィン系重合体とを溶融加熱混合する方法等を例示できる。
【0025】
本発明においてはけん化物重合体又は重合体組成物に、親水性化合物を配合することができる。
親水性化合物としては、有機あるいは無機の化合物であって親水性を有する化合物が用いられる。親水性化合物の好ましい例として、架橋ポリエチレングリコール、ポリアルキレンオキサイド、クラウンエーテルのようなアルキレンオキサイド化合物、エタノール、エチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、フェノール、クレゾール、ナフトール、レゾルシン、ハイドロキノン、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、多価アルコールの部分エステル、多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物のような水酸基含有化合物、ベンゼンスルホン酸、p−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸、タウリンのようなスルホン酸基含有化合物、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム架橋物、ポリアクリルアミドのようなアクリル酸系化合物、ポリアリルアミン、アニリン、トリエタノールアミン、アルキルアミンアルキレンオキサイド付加物のようなアミン類、アルギン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、デキストリン、シクロデキストリンのような多糖類、過塩素酸塩(Li,Na,Cs,K)、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、チタン酸バリウム、クレイ、結晶水を有する無機化合物(硫酸カドミウム、硫酸ストロンチウム等)の無機化合物などを例示することができる。
これらの中では、透湿性向上効果が大きく、また透明性を落とすことなく本発明の重合体けん化物または重合体組成物を可塑化して押出コーティング加工性を改善するところから、アルキレンオキサイド化合物や水酸基含有化合物の使用が好ましく、中でも多価アルコール、ポリエチレングリコール又は架橋ポリエチレングリコールの使用が最も好ましく、とりわけ多価アルコールが好ましい。親水性化合物は1種で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0026】
これら親水性化合物の効果的な配合量は、その種類やアイオノマーの種類によっても異なるが、アイオノマーと親水性化合物の合計100重量部当り、1〜50重量部、より好ましくは2〜25重量部の範囲が望ましい。
【0027】
本発明の透湿材料には、更に、必要に応じて各種添加剤を配合することができる。
このような添加剤の例としては、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、ブロッキング防止剤、可塑剤、粘着剤、無機充填剤、ガラス繊維、カーボン繊維などの強化繊維、顔料、染料、難燃剤、難燃助剤、発泡剤、発泡助剤、帯電防止剤などを挙げることができる。
また本発明の透湿材料はフィルム、シート等の各種の成形体に成形して使用できるが、例えば本発明の透湿材料からなる透湿性単層フィルム、シートは前記の重合体けん化物、該けん化物とオレフィン重合体との組成物を押出し成形等の手段でフィルム化することにより得ることができる。フィルム、シートの厚みは通常、5μm〜5mmの範囲のものが使用される。
また本発明の透湿材料をフィルム状で使用する場合は種々の基材層や熱可塑性樹脂層に共押出、ドライラミネーション等により積層して透湿性積層体として使用することができる。基材及び熱可塑性樹脂しては織布、不織布、紙、アルミニウムのような金属箔、延伸又は未延伸のポリプロピレン、高、中、低密度ポリエチレン、メタロセンポリエチレン(線状低密度ポリエチレン)のようなエチレン(共)重合体、ポリ4―メチル1―ペンテン等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドなどの各種合成樹脂を挙げることができる。基材層、熱可塑性樹脂層の厚みとしては5〜500μmが好ましく、重合体けん化物又は重合体組成物層の厚みは通常20〜1000μmの範囲が好ましい。
【実施例】
【0028】
次に本発明を実施例により更に詳細に説明する。
尚、下記の実施例、比較例に用いた原料及び得られた重合体けん化物又は重合体組成物の評価方法は次の通りである。
【0029】
1.使用原料
i)エチレン・アクリル酸メチル共重合体(EAC1):アクリル酸メチル(MA)含量;24質量%、MFR;20g/10分(190℃×2160g荷重、JIS K7210−1999に準拠)
ii)エチレン・アクリル酸メチル共重合体(EAC2):アクリル酸メチル(MA)含量;30質量%、MFR;15g/10分(190℃×2160g荷重)
iii)エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EAC3):アクリル酸エチル(EA)含量;25質量%、MFR;800g/10分(190℃×2160g荷重)
iv)エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EAC4):アクリル酸エチル(EA)含量;34質量%、MFR;25g/10分(190℃×2160g荷重)
v)プロピレン・エチレン・1−ブテン三元系ランダム共重合体(r−PP):プロピレン成分92モル%、エチレン成分5モル%、ブテン成分3モル%、MFR7.3g/10分(230℃×2160g荷重)
vi)エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA):酢酸ビニル(VA)含量10質量%、MFR;9(190℃×2160g荷重、JIS K7210−1999に準拠)
2.評価項目及び評価方法
i) 透湿度:100μm厚のプレスシート試料片を、カップ法(JIS Z0208準拠)にて40℃×90%RHの雰囲気中で測定。
ii) メルトフローレート(MFR)表1中*1印は、190℃×2160g荷重、表1中*2印は、230℃×2160kg荷重、その他は230℃×10kg荷重で測定した。(いずれもJIS K7210−1999に準拠)
iii)本発明においてけん化物又は重合体組成物中のアルカリ金属イオン量(金属イオン濃度)は以下の方法で測定した。
試料をキシレン/ブタノールの混合溶媒を用い、塩酸により脱メタル処理を行い、チモールブルー指示薬を用いて滴定し、生成したカルボン酸基(COOH)の量(モル量)を測定した。生成したカルボン酸基(COOH)の量(モル量)はCOOMのモル量と等しいことから、この生成カルボン酸基(COOH)のモル量より試料1kgあたりのCOOMのモル量(金属イオン量)を算出した。
【0030】
「実施例1」
けん化物調製用素材樹脂(ベース樹脂)としてエチレン・アクリル酸メチル共重合体(EAC2)10kgとKOH 470gとを混練装置にフィードし、混練装置中でEAC2とKOHを溶融、反応させ、押出すことにより 重合体けん化物(実−1)を得た。
このけん化物中にアクリル酸カリウム塩の形で存在するKイオン濃度は0.77モル/kgで、前記エチレン・アクリル酸メチル共重合体(EAC2)の全アクリル酸エステル基単位のモル量に対するけん化物中に存在するアルカリ金属イオンモル量の割合(百分率:以下これをけん化率とする)は22.0%であった。
又、このけん化物のMFRは35g/10分(230℃×10Kg荷重)であった。
そして、この重合体けん化物から得られた試料プレスシートの透湿度を測定した。
結果を表1に示した。
【0031】
「実施例2〜7」
ベース樹脂としてそれぞれ表1の実2〜実7に示したものを用い、KOH量をそれぞれのベース樹脂及び目標けん化率に応じて変更した以外は実施例1とほぼ同様にして重合体けん化物を得、それを成形したそれぞれの試料プレスシートについて透湿度を測定した。
結果を表1に示した。
【0032】
「実施例8〜11」
KOHをNaOHに替えた以外は、実施例2〜7とほぼ同様にして重合体けん化物を得、それを成形したそれぞれのプレスシートの透湿度を測定した。
結果を表1に示した。
【0033】
「比較例1」
ベース樹脂EAC2をけん化すること無くそのままプレスシート成形し、そのプレスシート(比−1)の透湿度を測定した。
結果を表1に示した。
【0034】
「実施例12」
ベース樹脂としてEAC2を用い、これをKOHでけん化して得られたけん化率60%でKイオン濃度が2.09モル/kgの重合体けん化物10質量部とプロピレン・エチレン・ブテン三元系ランダム共重合体(r−PP)90重量部とを単軸スクリュー押出機を用い溶融混練して重合体組成物を得た(実−12;MFR=6g/10分(230℃×2160kg荷重))。
重合体組成物(実−12)中にアクリル酸塩の形で存在するKイオン濃度は0.21モル/kgであった。
この組成物をプレスシート成形し得られたそのプレスシートの透湿度を測定した。
結果を表2に示した。
【0035】
「実施例13」
実施例12に於いて配合比を重合体けん化物20質量部、プロピレン・エチレン・ブテン三元系ランダム共重合体(r−PP)80重量部とした以外は実施例12と同様にして重合体組成物(実−13)を調製し(カリウムイオン濃度0.42モル/kg、MFR=4.5g/10分(230℃×2160kg荷重))、実施例12と同様にしてプレスシート成形し、その透湿度を測定した。
結果を表2に示した。表面固有抵抗率を測定した。
【0036】
「実施例14」
実施例12に於いてプロピレン・エチレン・ブテン三元系ランダム共重合体(r−PP)に替えてエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)90質量部を配合した以外は実施例12と同様にして重合体組成物(実−14:カリウムイオン濃度0.21モル/kg、MFR=6.8g/10分(190℃×2160kg荷重))を調製し、実施例12と同様にしてプレスシート成形し、その透湿度を測定した。
結果を表2に示した。
【0037】
「実施例15」
実施例13に於いてプロピレン・エチレン・ブテン三元系ランダム共重合体(r−PP)に替えてエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)80質量部を配合した以外は実施例13と同様にして重合体組成物(実−15:カリウムイオン濃度0.42モル/kg、MFR=4.5/10分(190℃×2160kg荷重))を調製し、実施例13と同様にしてプレスシート成形し、そのプレスシートの透湿度を測定した。
結果を表2に示した。
【0038】
「比較例2」
実施例13で用いたプロピレン・エチレン・ブテン三元系ランダム共重合体(r−PP)をそのままプレスシート成形し、そのプレスシート(比−2)の透湿度を測定した。
結果を表2に示した。
【0039】
「比較例3」
実施例14で用いたメエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)をそのままプレスシート成形し、そのプレスシート(比−3)の透湿度を測定した。
結果を表2に示した。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体をアルカリけん化してなる重合体けん化物であって、重合体けん化物中のアルカリ金属イオン濃度が0.1〜5.8モル/kgの範囲にある重合体けん化物(A)からなる透湿材料。
【請求項2】
透湿度(シート厚み100μm、40℃×90%RH JIS Z0208準拠)が200g/m・day以上である請求項1記載の透湿材料。
【請求項3】
請求項1記載の重合体けん化物(A)100未満〜10質量部とオレフィン系重合体(B)0超〜90質量部との重合体組成物からなる透湿材料。
【請求項4】
透湿度(シート厚み100μm、40℃×90%RH JIS Z0208準拠)が5g/m・day以上である請求項3の透湿材料。
【請求項5】
前記エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体がエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体であり、前記アルカリ金属がカリウム、ナトリウムから選ばれた少なくとも1種である請求項1〜4の何れかに記載の透湿材料。
【請求項6】
前記アルカリけん化されるエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(A)に於ける不飽和カルボン酸エステル成分含有率が5〜50質量%の範囲にある請求項1〜5の何れかに記載記載の透湿材料。
【請求項7】
請求項1〜6に記載の透湿材料をフィルム又はシートに成形してなる透湿フィルム、又はシート。

【公開番号】特開2010−6872(P2010−6872A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164987(P2008−164987)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000174862)三井・デュポンポリケミカル株式会社 (174)
【Fターム(参考)】