説明

通信システム、基地局装置、端末装置

【課題】セル間干渉が存在するシステムにおいて、送受信フィルタを用いた簡単な構成で干渉を低減する。
【解決手段】カバーする領域が広い第1のセルのカバー領域内に、カバーする領域が前記第1のセルよりも狭い第2のセルがあり、前記第1のセルを制御する第1の基地局装置がプレコーディングを行って送信した信号を前記第1のセル内に位置する1つ以上の第1の端末装置が受信し、前記第2のセルを制御する第2の基地局装置がプレコーディングを行い、前記第1のセルと同一周波数を用いて送信した信号を前記第2のセル内に位置する1つ以上の第2の端末装置が受信する通信システムであって、前記第1の基地局装置が送信するストリーム数に関する情報に基づいて、前記第2の基地局装置が送信するストリーム数を決定することを特徴とする通信システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム、基地局装置及び端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ゾーン半径の異なる複数のセルによって構成されるシステムにおいて、同一の周波数帯を用いて通信を行う場合には、セル間干渉が大きな課題となる。例えば、ゾーン半径が大きく、広い範囲をカバーするマクロセルの中に、ゾーン半径が小さいピコセルやフェムトセルが存在するシステムにおいて、例えば、ピコセル基地局(PeNB:Pico eNodeB)やフェムトセル基地局(HeNB:Home eNodeB)が、それぞれが収容する端末(ピコセル端末、フェムトセル端末)と通信を行う場合に、マクロセル基地局(MeNB:Macro eNodeB)がマクロセル端末宛に送信した信号はピコセル端末やフェムトセル端末にとって干渉源となる。このとき、ゾーン半径が小さいピコセルやフェムトセルの基地局の送信電力はマクロセル基地局と比べて小さいため、マクロセル基地局から到来する干渉の影響が大きくなる。また、ピコセル端末やフェムトセル端末がマクロセル基地局に近い位置にある場合も干渉の影響が大きくなり、これらの干渉の影響によってピコセル端末やフェムトセル端末の受信特性が劣化する。また逆に、マクロセル端末にとっては、ピコセル基地局やフェムトセル基地局から送信された信号が干渉となる。ピコセルやフェムトセルにおける送信電力はマクロセルにおける送信電力に比べ非常に低いが、マクロセル端末がそれらの小ゾーンセル近傍に位置する場合や、マクロセル内に多数の小ゾーンセルが存在する場合には、非常に大きな干渉を受けることとなる。
【0003】
このように、マクロセルとピコセル、フェムトセルは互いに干渉源となるが、同一周波数帯域を用いた干渉源が存在する場合の干渉低減方法として、干渉局の送信電力を制御し、干渉局が所望信号に与える干渉を低減する方式が提案されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】”屋内基地局を配置したLTE−Advancedにおける基地局間ネットワーク支援による下りリンク干渉抑圧法” ,電子情報通信学会,信学技報,RCS2009-177,Dec. 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1のように、干渉局の送信電力制御を行う方式を、マクロセルからピコセルやフェムトセルに与える干渉抑圧のために用いる場合には、マクロセル基地局の送信電力を下げるように制御するため、マクロセルの特性が劣化する。また、このようなマクロセルの特性劣化を避けるための別の方法として、マクロセルからの送信とピコセルやフェムトセルからの送信とに異なる周波数を用いる方法があるが、その場合、周波数利用効率が低下するという問題点がある。
【0006】
本発明は、セル間干渉が存在するシステムにおいて、送受信フィルタを用いた簡単な構成で、マクロセルから到来する干渉をピコセル等の小ゾーンセルにおいて低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、カバーする領域が広い第1のセルのカバー領域内に、カバーする領域が前記第1のセルよりも狭い第2のセルがあり、前記第1のセルを制御する第1の基地局装置がプレコーディングを行って送信した信号を前記第1のセル内に位置する1つ以上の第1の端末装置が受信し、前記第2のセルを制御する第2の基地局装置がプレコーディングを行い、前記第1のセルと同一周波数を用いて送信した信号を前記第2のセル内に位置する1つ以上の第2の端末装置が受信する通信システムであって、前記第1の基地局装置が送信するストリーム数に関する情報に基づいて、前記第2の基地局装置が送信するストリーム数を決定することを特徴とする通信システムである。
【0008】
前記第2のセルにおける端末装置では、前記第1のセルから到来する干渉を除去しつつ、所望信号を受信することができる。
【0009】
また、本発明は、カバーする領域が広い第1のセルのカバー領域内に、カバーする領域が前記第1のセルよりも狭い第2のセルがあり、前記第1のセルを制御する第1の基地局装置がプレコーディングを行って送信した信号を前記第1のセル内に位置する1つ以上の第1の端末装置が受信し、前記第2のセルを制御する第2の基地局装置がプレコーディングを行い、前記第1のセルと同一周波数を用いて送信した信号を前記第2のセル内に位置する1つ以上の第2の端末装置が受信する通信システムにおける第1の基地局装置であって、自身が送信するストリーム数に関する情報を前記第2の基地局装置に通知することを特徴とする第1の基地局装置である。
【0010】
また、本発明は、カバーする領域が広い第1のセルのカバー領域内に、カバーする領域が前記第1のセルよりも狭い第2のセルがあり、前記第1のセルを制御する第1の基地局装置がプレコーディングを行って送信した信号を前記第1のセル内に位置する1つ以上の第1の端末装置が受信し、前記第2のセルを制御する第2の基地局装置がプレコーディングを行い、前記第1のセルと同一周波数を用いて送信した信号を前記第2のセル内に位置する1つ以上の第2の端末装置が受信する通信システムにおける第2の基地局装置であって、前記第1の基地局装置が送信するストリーム数に関する情報を取得し、自身が送信するストリーム数を決定するストリーム数決定部を有することを特徴とする第2の基地局装置である。
【0011】
また、本発明は、カバーする領域が広い第1のセルのカバー領域内に、カバーする領域が前記第1のセルよりも狭い第2のセルがあり、前記第1のセルを制御する第1の基地局装置がプレコーディングを行って送信した信号を前記第1のセル内に位置する1つ以上の第1の端末装置が受信し、前記第2のセルを制御する第2の基地局装置がプレコーディングを行い、前記第1のセルと同一周波数を用いて送信した信号を前記第2のセル内に位置する1つ以上の第2の端末装置が受信する通信システムにおける第2の端末装置であって、前記第1の基地局装置が前記プレコーディングを行って送信した信号の等価伝搬路を推定する伝搬路推定部と、推定した前記等価伝搬路を基に受信フィルタを算出する受信フィルタ算出部と、算出した前記受信フィルタを受信信号に乗算する受信フィルタ乗算部と、を有することを特徴とする第2の端末装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明を用いることにより、セル間干渉が存在するシステムにおいて、送受信フィルタを用いた簡単な構成で干渉を低減することができる。また、マクロセル基地局の送信電力を下げずに信号を送信することにより、マクロセルの特性劣化を防ぎつつ周波数利用効率に優れたシステムを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態による通信システムの一構成例を示す図である。
【図2】本実施の形態によるシステム構成の詳細な一例を示す図である。
【図3】本実施形態による基地局装置Mの一構成例を示す図である。
【図4】本実施形態による端末装置mの一構成例を示す図である。
【図5】本実施形態による基地局装置Fの一構成例を示す図である。
【図6】本実施形態に係る端末装置fの構成を示す。
【図7】本発明の第2の実施形態による通信システムの一構成例を示す図である。
【図8】本実施形態によるシステム構成の詳細な一例を示す図である。
【図9】本実施形態によるフェムトセルC3における基地局装置Fの一構成例を示す図である。
【図10】本実施形態による端末装置f(f)の一構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明を行う。
[第1の実施形態]
図1に、本発明の第1の実施形態に係る通信システムの一構成例を示す。図1に示すように、広い領域をカバーする(広い領域での通信が可能である)マクロセルC1と、マクロセルC1内に狭い領域をカバーするフェムトセルC2が存在する。マクロセルC1は、基地局装置Mと1台の端末装置mとで構成され、基地局装置Mから端末装置mへ所望信号を送信する。フェムトセルC2は、基地局装置Fと1台の端末装置fで構成され、基地局装置Fから端末装置fへ所望信号を送信する。このとき、端末装置fでは、基地局装置Mから端末装置m宛の所望信号が干渉信号として受信されるが、基地局装置Fの送信電力は基地局装置Mの送信電力と比べて小さいため、端末装置fにおける受信SINR(Signal to Interference plus Noise power Ratio)は著しく劣化する。なお、マクロセルC1における基地局装置はMeNB(Macro eNodeB)、フェムトセルC2における基地局装置はHeNB(Home eNodeB)とも呼ばれる。また、ここでは一例としてマクロセルC1とフェムトセルC2を想定しているが、ゾーン半径の異なる複数のセルであり、片方のセルにおける所望信号が他のセルにとって干渉となるようなセルの組み合わせであればよく、光張り出し基地局(RRE:Remote Radio Equipments)、ピコセル(PeNB:Pico eNodeB)、ホットスポット、リレー局などで構成されるセルやゾーンを対象としてもよい。さらに、本実施形態は、隣接する2つ以上のマクロセルのセルエッジに端末装置が位置するような状況においても適用可能である。
【0015】
図2に、本システム構成の詳細な一例を示す。マクロセルC1において、基地局装置Mの送信アンテナは2本、端末装置mの受信アンテナは2本であり、基地局装置Mから端末装置mに2ストリームの信号をSU−MIMO(Single User−MIMO)伝送する。このとき、基地局装置Mから端末装置mの間の伝搬路行列をHM→mとする。なお、ここではマクロセルC1内はSU−MIMO伝送することを想定しているが、端末装置を2台にし、MU−MIMO(Multi User−MIMO)伝送する構成でもよい。また、ここでは、端末装置mはフェムトセルから十分離れた地点に位置するものとし、フェムトセルC2からの干渉は考慮しない。
【0016】
フェムトセルC2において、基地局装置Fの送信アンテナは2本、端末装置fの受信アンテナは3本であるものとする。このとき、基地局装置Fから端末装置fまでの間の伝搬路行列をHF→fとする。また、基地局装置Mから端末装置fまでの間の伝搬路行列をHM→fとし、基地局装置Mから端末装置m宛の所望信号が伝搬路行列HM→fを通ることによって、端末装置fでは干渉信号として受信される。
【0017】
また、基地局装置Mと基地局装置Fは、有線ネットワークで接続されており(リレーの場合は無線で接続されることもある)、基地局装置M−F間で情報を共有することができる。但し、一般的な光張り出し基地局やピコセル基地局では、光ファイバや専用ネットワーク経由で基地局装置Mとの情報のやり取りを行い、フェムトセル基地局FではADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)や光ファイバでインターネットに接続し、インターネット経由で基地局装置Mとの情報のやり取りを行うことが多い。
【0018】
<マクロセルについて>
図3に本実施形態に係る基地局装置Mの構成を示す。図3に示す基地局装置Mでは、端末mにSU−MIMO伝送するための送信フィルタWTX(m)を算出し、プレコーディングを行うが、このとき基地局装置Mと端末装置mとの間の伝搬路行列HM→mと、基地局装置Mから端末装置mへ送信するストリームの数を表すストリーム数情報R(RI:Rank Indicatorとも呼ばれる)に基づいて、そのストリーム数を多重するプレコーディングを行うことができる。そこで、端末装置mでは、パイロット信号から推定した伝搬路行列HM→mと、ストリーム数情報Rを基地局装置Mへあらかじめ通知する。先に述べたように、本実施形態では、マクロセルでは2ストリームの信号をSU−MIMO伝送するものとし、R=2とする。
【0019】
受信アンテナAT1では、端末装置mから送信された信号を受信し、無線部1へ出力する。無線部1は、受信アンテナAT1から入力された受信信号をダウンコンバートしてベースバンド信号を生成し、A/D(Analog to Digital)部3へ出力する。A/D部3は、入力されたアナログ信号をディジタル信号に変換し、受信部5へ出力する。受信部5は、入力されたディジタル信号から伝搬路行列HM→mとストリーム数情報Rを抽出し、伝搬路行列HM→mを送信フィルタ算出部7、ストリーム数情報Rを上位層11へ出力する。これらの情報のうち、ストリーム数情報Rは有線ネットワークを経由して基地局装置Fに通知される。但し、ここでは、端末装置mからフィードバックされたRをそのまま基地局装置Fに通知するものとしているが、これとは異なり、端末装置mからフィードバックされたRを基に、様々な状況を考慮して基地局装置Mで新たなRを算出し、基地局装置Mで算出したRを基地局装置Fに通知する構成としてもよい。また、ここでのストリーム数情報Rは、ある一つのリソース(フレーム、スロット、リソースブロックなどとも呼ばれる)において空間多重されるストリーム数を表わすものとする。
【0020】
送信フィルタ算出部7では、受信部5から入力された伝搬路行列HM→mから送信フィルタWTX(m)を算出する。ここで、送信フィルタWTX(m)は基地局装置Mでプレコーディングを行うためのフィルタであるが、基地局装置Mから端末装置m宛てにストリーム数情報R分の伝送が実現できればよく、どのようなフィルタを用いてもよい。ここでは、2つのストリームを空間多重する送信フィルタの一例として、式(1)に示すZF(Zero Forcing)フィルタを用いるものとする。また、伝搬路行列HM→mを特異値分解(SVD:Singular Value Decomposition)して得られる送受信フィルタを用いて固有モード伝送を行うようにプレコーディングを行ってもよい。さらに、コードブックと呼ばれる、予め決められた複数の送信フィルタの候補の中からいずれかを選択し、選択した送信フィルタを用いてストリーム数分の信号を空間多重し、伝送する構成としてもよい。また、SU−MIMO伝送であることから、特にプレコーディングを行わずに送信し、端末側でMMSE(Minimum Mean Square Error)受信等を行うことにより複数ストリームを分離する構成としてもよい。
【0021】
【数1】

【0022】
上位層11では、受信部5から入力されたストリーム数情報R分の送信情報シンボルdを生成し、変調部15に出力する。変調部15では、送信情報シンボルdをQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)や16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)等の変調方式を用いて変調して送信データ信号sとし、送信フィルタ乗算部17に出力する。送信フィルタ乗算部17では、式(2)に示すように、送信データ信号sに送信フィルタWTX(m)を乗算し、送信信号xを生成するプレコーディング処理を行う。
【0023】
【数2】

【0024】
但し、通常は、1送信アンテナあたりの最大送信電力等、基地局装置Mにおける送信電力の制限があることから、プレコーディング処理後の送信信号xの電力を制限値以下とするために式(2)のxに何らかの係数を乗算した信号を送信信号とする場合があるが、ここでは説明を簡単化するため、送信電力を制限する係数については考慮しないものとする。
【0025】
また、基地局装置Mでは、データ信号の復調のための伝搬路推定用のパイロット信号を送信信号xに多重して送信する。伝搬路推定用のパイロット信号は、端末装置mにおいて等価伝搬路HM→mTX(m)を推定するために用いられる。そこで、基地局装置Mでは既知のパイロット信号に送信フィルタWTX(m)を乗算した信号を送信し、端末装置mに等価伝搬路行列HM→mTX(m)を推定させる。ここで、本実施の形態では、送信フィルタとしてZFフィルタを用いており、2つの送信データが分離された状態で受信されるため、必ずしも等価伝搬路行列HM→mTX(m)を推定する必要はないが、伝搬路行列HM→mの推定時とデータ伝送時で伝搬路が変動するような場合や、その他の送信フィルタが用いられる場合には、パイロット信号を用いて等価伝搬路を推定する必要がある。このように等価伝搬路行列HM→mTX(m)を推定することにより、この等価伝搬路行列を用いたMMSE受信等を行うことも可能となる。
【0026】
パイロット信号生成部21は、既知のパイロット信号を生成し、送信フィルタ乗算部17に出力する。送信フィルタ乗算部17では、入力された既知のパイロット信号に送信フィルタWTX(m)を乗算し、送信信号xと共にD/A(Digital to Analog)部23a・23bへ出力する。D/A部23a・23bは、多重された信号をディジタル信号からアナログ信号へ変換し、無線部25a・25bは、入力されたアナログ信号を無線周波数にアップコンバートし、送信アンテナAT2、AT3を介して、端末装置mへ信号を送信する。
【0027】
また、本実施形態における基地局装置Mは、伝搬路行列HM→mを端末装置mに推定させるためのパイロット信号も送信する。但し、上述のパイロット信号とは異なり、このパイロット信号には送信フィルタの乗算は行わない。このため、パイロット信号生成部21で生成された既知のパイロット信号はD/A23a・23bへ出力され、無線部25a・25bを経由して、送信アンテナAT2・AT3から送信される。ここで、伝搬路行列HM→mを推定するためのパイロット信号は、データ信号等と多重する必要はなく、異なる時間タイミング(フレーム)で送信しても構わない。また、各送信アンテナAT2・AT3から送信されるパイロット信号同士が受信側で干渉し合わないよう、直交する時間リソース等を用いて伝送される。ここで、マルチキャリア伝送システムでは、異なるサブキャリアを用いて各送信アンテナAT2・AT3からパイロット信号を送信してもよい。また、直交符号を各パイロット信号に乗算し、直交パイロット信号を生成して送信する構成としてもよい。
【0028】
基地局装置Mから端末装置mへ送信された信号xは、伝搬路HM→mを通り、端末装置mでは式(3)の信号が受信される。但し、説明を簡単化するため、端末装置mにおいて加わる雑音成分は無視している。
【0029】
【数3】

【0030】
図4に、本実施形態に係る端末装置mの構成を示す。受信アンテナAT4・AT5では、基地局装置Mから送信された信号を受信し、無線部31a・31bでは、受信アンテナAT4・AT5から入力された受信信号をダウンコンバートしてベースバンド信号を生成し、A/D部33a・33bは、入力されたアナログ信号をディジタル信号に変換し、信号分離部35へ出力する。信号分離部35では、入力された信号を、伝搬路推定用のパイロット信号と受信データとに分離し、伝搬路推定用のパイロット信号を伝搬路推定部37へ、受信データを復調部41へそれぞれ出力する。伝搬路推定部37では、データ信号に付加されて送信されたパイロット信号を基に等価伝搬路行列HM→mTX(m)を推定し、復調部41へ入力する。先に述べたように、本実施の形態では、基地局装置MにおいてZFフィルタを用いたプレコーディングが行われているため、必ずしも等価伝搬路行列HM→mTX(m)を推定して復調に用いる必要はないが、復調部41においてMMSE受信等、等価伝搬路行列を用いた処理が行われる場合には、この推定が必要となる。復調部41では、信号分離部35から入力された受信データを復調し、上位層43へ出力する。
【0031】
また、伝搬路推定部37では、図3のパイロット信号生成部21が生成した既知のパイロット信号に基づいて、伝搬路行列HM→mを推定し、送信部45へ出力する。送信部45は伝搬路行列HM→mを送信可能な形式に変換し、D/A部47はディジタル信号からアナログ信号に変換後、無線部51を経由して送信アンテナ部AT6から基地局装置Mへ向けて送信する。このような処理により、基地局装置Mの各送信アンテナと端末装置mの各受信アンテナとの間の伝搬路を推定し、推定した結果を基地局装置Mにフィードバックすることができる。
【0032】
<フェムトセルについて>
フェムトセルC2において、端末装置fでは、基地局装置Fからの所望信号と、マクロセルC1からの干渉を受信する。そのためフェムトセルC2では、マクロセルC1からの干渉の影響を受けずに所望信号を受信するために、以下の処理を行う。
【0033】
端末装置fでは、マクロセルC1からの干渉を除去するための受信フィルタを算出し、受信信号にこの受信フィルタを乗算することによって所望信号を抽出する。また、基地局装置Fでは端末装置fから通知された情報(端末装置fの受信アンテナ数情報)と基地局装置Mのストリーム数情報Rとに基づいて端末装置f宛の送信ストリーム数を決定する。さらに、基地局装置Fでは端末装置fから通知された伝搬路に関する情報、受信フィルタに関する情報を用いて送信フィルタを決定しプレコーディングを行う。
【0034】
図5に、本実施形態に係る基地局装置Fの一構成例を示す。
受信アンテナAT11では、端末装置fから送信された信号を受信し、無線部61は、受信アンテナAT11から入力された受信信号をダウンコンバートしてベースバンド信号を生成し、A/D部63は、入力されたアナログ信号をディジタル信号に変換し、受信部65へ出力する。受信部65は、入力されたディジタル信号から、端末装置fから通知された情報を抽出する。具体的には、伝搬路行列HF→f、端末装置fの受信アンテナ数情報N、端末装置fの受信フィルタWRX(f)を抽出し、伝搬路行列HF→fおよび受信フィルタWRX(f)を送信フィルタ算出部67へ、受信アンテナ数情報Nをストリーム数決定部71へ出力する。
【0035】
但し、端末装置fから、伝搬路行列HF→fと受信フィルタWRX(f)を乗算して得られる等価伝搬路HF→fRX(f)をフィードバックし、基地局装置Fにおいてその等価伝搬路を抽出する構成としてもよい。また、受信アンテナ数情報Nは定期的に通知する必要はなく、端末装置fが基地局装置Fに初期接続する際に一度だけ通知する構成としてもよい。
【0036】
本実施形態における基地局装置Fでは、このようにフィードバックされた情報を基に、ストリーム数決定部71において、基地局装置Fから端末装置fへ送信するストリーム数Rを式(4)により決定し、上位層へ出力する。
【0037】
【数4】

【0038】
ここで、Rは基地局装置Mから端末装置mへ送信するストリーム数であり、例えば、基地局装置Mと基地局装置Fがそれぞれ接続している有線ネットワーク経由でこの情報を共有することができる。本実施形態では、あらかじめ基地局装置Mから基地局装置Fへ通知されるものとする。
【0039】
本実施形態では、N=3、R=2より、ストリーム数決定部71はR≦1と決定する。つまりこの場合、3本の受信アンテナを有する端末装置fにおいて、マクロセルからの2ストリームの干渉と、フェムトセル内の最大1ストリームの所望信号を受信することになる。また、N=3、R=1の場合はR≦2となり、フェムトセル内では最大2ストリームのSU−MIMO伝送を行い、N=3、R=0(マクロセル内では信号を送信しない)の場合はR≦3となり、フェムトセル内では最大3ストリームのSU−MIMO伝送を行う。さらに、N=3、R=3の場合はR=0となり、この場合はフェムトセルではマクロセルと同一の周波数チャネルを用いた伝送を行わない。
【0040】
これは、フェムトセル内の端末において、マクロセルの干渉を線形フィルタにより除去しながらフェムトセルの所望信号を受信するためには、受信アンテナ数が干渉の数と所望ストリーム数との和以上であるという条件を満たす必要があるためであり、本実施形態では、式(4)によってこれを決定している。なお、本実施形態では、マクロセルの干渉の数に基づいてフェムトセルの送信ストリーム数を調整しているが、式(4)の関係が満たされればよく、フェムトセル内で送信したいストリーム数(ストリーム数情報R)の数に合わせて、マクロセル内のストリーム数(ストリーム数情報R)を調整することも可能である。この場合には、基地局装置Fにおいて送信を希望するストリーム数と端末装置fが有する受信アンテナ数とに関する情報を有線ネットワーク経由で基地局装置Fから基地局装置Mへ通知し、それらの情報と式(4)を用いて、マクロセルの送信ストリーム数を基地局装置Mが決定することとなる。また、基地局装置Fにおいてマクロセルの送信可能ストリーム数を決定し、その情報を基地局装置Mへ通知する構成としてもよい。
【0041】
また、先に述べたように、フェムトセルの端末の受信アンテナ数が、干渉の数と所望ストリーム数との和以上であるという条件を満たせばよく、この条件を満たすものであれば、式(4)とは異なる式を用いて、フェムトセルにおけるストリーム数を決定してもよい。
【0042】
送信フィルタ算出部67では、式(5)に示したように、端末装置fから通知された伝搬路行列HF→fと受信フィルタWRX(f)から送信フィルタWTX(f)を算出する。ここで、送信フィルタWTX(f)は、基地局装置Fでプレコーディングを行うための送信フィルタである。
【0043】
【数5】

【0044】
上位層73では、ストリーム数情報R分の送信情報シンボルdを生成し、変調部75に出力する。変調部75では、送信情報シンボルdを変調して送信データ信号sとし、送信フィルタ乗算部77に出力する。送信フィルタ乗算部77では、式(6)に示すように、送信データ信号sに送信フィルタWTX(f)を乗算し、送信信号xを生成するプレコーディング処理を行う。
【0045】
【数6】

【0046】
この式(6)においても、式(2)と同様に、送信電力を制限するための係数がxに乗算された信号を送信信号とする場合もあるが、ここでは考慮しないものとする。
【0047】
パイロット信号生成部81は、既知のパイロット信号を生成し、送信フィルタ乗算部77に出力する。送信フィルタ乗算部77では、入力された既知のパイロット信号に送信フィルタWTX(f)を乗算し、送信信号xと共にD/A部83a・83bへ出力する。D/A部83a・83bは、多重された信号をディジタル信号からアナログ信号へ変換し、無線部85a・85bは、入力されたアナログ信号を無線周波数にアップコンバートし、送信アンテナAT12・AT13を介して、端末装置fへ送信する。
【0048】
また、本実施形態における基地局装置Fは、伝搬路行列HF→fを端末装置fに推定させるためのパイロット信号も送信する。このパイロット信号は、基地局装置Mにおける伝搬路行列HM→mを推定するためのパイロット信号と同様であり、パイロット信号生成部81で生成された既知のパイロット信号はD/A83a・83bへ出力され、無線部85a・85bを経由して、送信アンテナAT12・AT13から送信される。
【0049】
ここで、伝搬路行列HF→fを推定するためのパイロット信号は、データ信号等と多重する必要はなく、異なる時間タイミング(フレーム)で送信しても構わない。また、各送信アンテナAT12・AT13から送信されるパイロット信号同士が受信側で干渉し合わないよう、直交する時間リソース等を用いて伝送される。ここで、マルチキャリア伝送システムでは、異なるサブキャリアを用いて各送信アンテナからパイロット信号を送信してもよい。また、直交符号を各パイロット信号に乗算し、直交パイロット信号を生成して送信する構成としてもよい。
【0050】
図6に、本実施形態に係る端末装置fの構成を示す。
端末装置fでは、先に述べたフェムトセルの基地局装置Fからの所望信号の伝送に先立って、マクロセルの基地局装置Mから送信された信号を受信し、無線部91a・91b・91cでは、受信アンテナAT14・AT15・AT16から入力された受信信号をダウンコンバートしてベースバンド信号を生成し、A/D部93a・93b・93cは、入力されたアナログ信号をディジタル信号に変換し、信号分離部95へ出力する。信号分離部95では、入力された信号からパイロット信号を分離し、受信フィルタ算出部97へ出力する。
【0051】
受信フィルタ算出部97では、受信フィルタ算出用のパイロット信号から基地局装置Mと端末装置fの間の等価伝搬路HM→fTX(m)を推定し、式(7)のように等価伝搬路HM→fTX(m)の複素共役転置行列を特異値分解(SVD:Singular Value Decomposition)する。
【0052】
【数7】

【0053】
このとき、受信フィルタWRX(f)は、式(7)を特異値分解して得られる右特異ベクトルVのうち、特異値行列Dの対角成分がゼロに対応する右特異ベクトルの複素共役転置ベクトルとなる。これは、得られたベクトルを、マクロセル基地局Mから送信された信号に乗算すると信号がゼロとなる、つまりマクロセル基地局Mから到来する信号を除去することができるベクトルを受信フィルタとして算出していることを意味する。但し、ここでは、等価伝搬路HM→fTX(m)の複素共役転置行列を特異値分解しているが、等価伝搬路HM→fTX(m)を特異値分解して受信フィルタを算出してもよく、この場合には、特異値行列Dの対角成分がゼロに対応する左特異ベクトルの複素共役転置ベクトルを受信フィルタとすることとなる。受信フィルタ算出部97は、算出した受信フィルタWRX(f)を受信フィルタ乗算部101と送信部103へ出力する。
【0054】
また、端末装置fでは、基地局装置Fから送信された、伝搬路行列HF→fを推定するためのパイロット信号を用いて伝搬路推定を行う。伝搬路推定部105では、図3のパイロット信号生成部21が生成した既知のパイロット信号に基づいて、伝搬路行列HF→fを推定し、送信部103へ出力する。
【0055】
送信部103では、伝搬路行列HF→f、受信フィルタWRX(f)、受信アンテナ数情報Nを送信可能な形式に変換し、D/A部107においてディジタル信号からアナログ信号に変換後、無線部109を経由して送信アンテナ部AT17から基地局装置Fへ向けて送信する。このような処理により、基地局装置Fで必要となる情報を端末装置fからフィードバックする。但し、先に述べたように、受信アンテナ数情報Nは定期的に送信する必要はない。
【0056】
以上のように、マクロセルの基地局装置Mから通知されたストリーム数情報Rと、端末装置fからフィードバックされた受信アンテナ数情報Nを基に送信するストリーム数が決定され、そのストリーム数分のデータ信号がプレコーディングされて、基地局装置Fから送信されたデータ信号を端末装置fにおいて受信する際の受信信号は、式(8)である。但し、説明を簡単化するため、端末装置fにおいて加わる雑音成分は無視している。式(8)に示したように、受信信号yは、基地局装置Fから送信された所望信号xの成分と、基地局装置Mから端末装置m宛に送信された干渉信号の成分の和で表わされる。ここで、伝搬路行列HF→fは基地局装置Fから端末装置fの間の伝搬路、伝搬路HM→fは、基地局装置Mから端末装置fの間の伝搬路である。
【0057】
【数8】

【0058】
受信アンテナAT14・AT15・AT16では、式(8)の信号を受信し、無線部91a・91b・91cでは、受信アンテナAT14・AT15・AT16から入力された受信信号をダウンコンバートしてベースバンド信号を生成し、A/D部93a・93b・93cは、入力されたアナログ信号をディジタル信号に変換し、信号分離部95へ出力する。信号分離部95では、入力された信号を、等価伝搬路行列HF→fTX(f)推定用のパイロット信号と受信データに分離し、等価伝搬路行列HF→fTX(f)推定用のパイロット信号を伝搬路推定部105へ、受信データを受信フィルタ乗算部101へそれぞれ出力する。
【0059】
受信フィルタ乗算部101において、信号分離部95から入力された受信データに受信フィルタ算出部97から入力された受信フィルタWRX(f)を乗算すると、式(9)となる。
【0060】
【数9】

【0061】
ただし、αは実数であり、等価振幅利得を表す。式(9)に示した通り、式(8)ではマクロセルからの干渉成分(HM→fTX(m))が除去できるように受信フィルタWRX(f)を決定しているため、受信フィルタWRX(f)を乗算することによって干渉成分の項(WRX(f)M→fTX(m))はゼロとなり干渉成分が除去される。一方、フェムトセルからの所望信号については、基地局装置Fにおける送信フィルタWTX(f)の算出に受信フィルタWRX(f)を考慮しているため、受信フィルタWRX(f)を乗算することによって、所望信号sを抽出することができる。また、式(9)においてsに乗算されているスカラーαも補償する場合には、伝搬路推定部105において推定した等価伝搬路行列HF→fTX(f)と受信フィルタWRX(f)を考慮してαを算出し、式(9)に示す信号をαにより除算する構成としてもよい。また、本実施形態では、先に受信フィルタで算出しておいた受信フィルタWRX(f)をそのまま用いて所望信号を抽出する構成となっているが、データ伝送時に、マクロセルから到来する干渉の等価伝搬路HM→fTX(m)が推定できる状況であれば、その等価伝搬路を推定し、再度、式(7)による受信フィルタの算出を行って所望信号の抽出に用いることにより、伝搬路が時間的に変動することによる影響を抑えることができる。復調部111では、受信フィルタ乗算部101から入力された所望信号sを復調し、上位層113へ出力する。
【0062】
以上のように、フェムトセルにとって非常に大きな干渉源となるマクロセルにおける送信ストリーム数と、フェムトセルにおける端末装置が有する自由度(受信アンテナ数)に応じて、マクロセルにおける送信ストリーム数とフェムトセルにおける送信ストリーム数の合計が端末装置の自由度を超えないように、フェムトセルにおける送信ストリーム数を決定することにより、フェムトセルにおける端末装置では、マクロセルから到来する干渉を除去しつつ、所望信号を受信することが可能となる。
【0063】
本実施形態における基地局装置Fでは、式(5)に基づいて送信フィルタWTX(f)を算出しているが、現行のシステムでは、制御情報量を削減する目的で、コードブックと呼ばれる選択可能な送信フィルタ行列の候補をシステムで予め定義し、その中から伝送特性を最大とする行列を1つ選択することができる。例えば、LTE(Long Term Evolution)システムでは、4送信アンテナの場合には16種類定義されている。そこで、本実施形態においてコードブックを用いる場合の選択基準は式(10)を最大にするという基準であり、このように選択された行列を送信フィルタWTX(f)とすることも一般的に可能である。
【0064】
【数10】

【0065】
本実施形態では、端末装置fがマクロセルから大きな干渉を受ける場合の例として、端末装置mがフェムトセルの近傍に位置する場合を想定しているが、マクロセルの端末装置mがフェムトセルから離れた場所に位置するような場合も同様に、基地局装置Mと基地局装置Fはストリーム数情報を共有し、以上のような処理を行う構成としてもよい。これは、マクロセルの基地局装置が、あらかじめフェムトセルの位置を把握しておき、さらにGPS機能等によって端末装置mの現在位置を把握して、端末装置mがフェムトセルから、あらかじめ決められた閾値以上の距離だけ離れている場合に、マクロセルにおける送信ストリーム数をフェムトセルに通知することにより、実現することができる。また、フェムトセルから送信された信号を端末装置mが受信し、そのレベルを測定することによっても、端末装置mがフェムトセルからどれだけ離れた地点に位置するかを把握することができる。このような構成とすることにより、フェムトセルから送信される信号がマクロセルにおける端末装置mにとって大きな影響を及ぼす状況を回避することができる。
【0066】
また、基地局装置Mに近いフェムトセルのみを対象に本実施形態に示す処理を行う構成としてもよい。これは、基地局装置Mに近いフェムトセルでは、基地局装置Mから送信される信号の影響により受信特性が著しく劣化するため、本実施形態に示す、線形フィルタによる干渉除去を行うことによる効果が非常に大きいためである。このように、基地局装置Mとフェムトセルの位置に応じて本実施形態のオン/オフを切り替える場合には、フェムトセル設置時に、その位置をユーザがオペレータに通知・登録することにより、最寄りのマクロセル基地局装置Mとの距離をオペレータが把握し、非常に近い場合にはその旨をフェムトセルに通知することにより、本実施形態による処理をオンにすることができる。また、GPS機能を用いたり、フェムトセルがマクロセルからの干渉レベルを測定したりすることによっても、マクロセルとフェムトセルの位置関係をフェムトセル自身が把握することができ、本実施形態のオン/オフを切り替えることができる。
【0067】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図7に、本発明の第2の実施形態に係る通信システムの構成を示す。図7に示したように、マクロセルC1は、第1の実施形態と同様な構成であり、フェムトセルC3は、基地局装置Fと2台の端末装置f、fがMU−MIMO伝送を行う。このとき、端末装置f、fでは、基地局装置Mから端末装置m宛の所望信号が干渉信号として受信される。また、ここでは一例としてマクロセルC1とフェムトセルC3とを想定しているが、ゾーン半径の異なる複数のセルであり、片方のセルにおける所望信号が他のセルにとって干渉となるようなセルの組み合わせであればよく、光張り出し基地局、ピコセル、ホットスポット、リレー局などで構成されるセルやゾーンを対象としてもよい。さらに、本実施形態は、隣接する2つ以上のマクロセルのセルエッジに端末装置が位置するような状況においても適用可能である。
【0068】
図8に本実施形態のシステム構成の詳細を示す。マクロセルC1(基地局装置M、端末装置m)については図2と同様の構成である。フェムトセルC3では、基地局装置Fの送信アンテナは4本、端末装置f、端末装置fの受信アンテナはそれぞれ4本である。このとき、基地局装置Fと端末装置fの間の伝搬路行列をHF→f1、基地局装置Fと端末装置fの間の伝搬路行列をHF→f2とする。また、基地局装置Mと端末装置fの間の伝搬路行列をHM→f1、基地局装置Mと端末装置fの間の伝搬路行列をHM→f2とし、基地局装置Mから端末装置m宛の所望信号がこれらの伝搬路HM→f1、HM→f2を通ることによって、端末装置f、fでは干渉信号として受信される。
【0069】
また、基地局装置Mと基地局装置Fは、有線ネットワークで接続されており(リレーの場合は無線で接続されることもある)、基地局装置M−F間で情報を共有することができる。但し、一般的な光張り出し基地局やピコセル基地局では、光ファイバや専用ネットワーク経由で基地局装置Mとの情報のやり取りを行い、フェムトセル基地局FではADSLや光ファイバでインターネットに接続し、インターネット経由で基地局装置Mとの情報のやり取りを行うことが多い。
【0070】
<マクロセルについて>
本実施形態における基地局装置Mおよび端末装置mはそれぞれ図3、4と同様である。
【0071】
<フェムトセルについて>
図9に本実施形態に係るフェムトセルC3における基地局装置Fの構成を示す。図5に示す構成に比べて、送信系に相違点がある。ここで送信系の相違点とは、D/A部83a〜d、無線部85a〜d、送信アンテナAT12・AT13・AT21・AT22の数が、図5に示す構成に比べて増加している点である。
【0072】
基地局装置Fでは、端末装置f、fから通知された情報をそれぞれ受信し、通知された情報を抽出する。受信アンテナAT11では、端末装置fから送信された信号を受信し、無線部61は、受信アンテナAT11から入力された受信信号をダウンコンバートしてベースバンド信号を生成し、A/D部63は、入力されたアナログ信号をディジタル信号に変換し、受信部65へ出力する。受信部65は、入力されたディジタル信号から、端末装置fから通知された情報を抽出する。具体的には、伝搬路行列HF→f1、端末装置fの受信アンテナ数情報Nf1、端末装置fの受信フィルタWRX(f1)を抽出し、伝搬路行列HF→f1および受信フィルタWRX(f1)を送信フィルタ算出部127へ、受信アンテナ数情報Nをストリーム数決定部71へ出力する。端末装置fについても同様に、端末装置fから通知された情報を抽出し、伝搬路行列HF→f2および受信フィルタWRX(f2)を送信フィルタ算出部67へ、受信アンテナ数情報Nf1をストリーム数決定部71へ出力する。但し、第1の実施形態においても述べたように、伝搬路行列と受信フィルタの乗算結果(等価伝搬路)をフィードバックし、基地局装置Fにおいてその等価伝搬路を抽出する構成としてもよい。
【0073】
また、受信アンテナ数情報は、端末装置f、fから基地局装置Fに定期的に通知する必要はなく、基地局装置Fへの初期接続の際に一度だけ通知する構成としてもよい。
【0074】
ストリーム数決定部71は、式(11)の条件を満たすように、装置Fから端末装置f、fへ送信するそれぞれのストリーム数RF1、RF2を決定する。
【0075】
【数11】

ただし、R=RF1+RF2
【0076】
ここで、Rは基地局装置Mから端末装置mへ送信するストリーム数であり、例えば、基地局装置Mと基地局装置Fを有線で接続する等の方法を用いて基地局装置間でこの情報を共有し、あらかじめ基地局装置Mから基地局装置Fへ通知されるようにする。また、Nは基地局装置Fの送信アンテナ数である。
【0077】
この式(11)の第一式は、端末装置f宛のストリーム数RF1が、端末装置fの受信アンテナ数から、基地局装置Mから受ける干渉の数を減算した結果以下となるように算出されることを意味している。これは、第1の実施形態と同様に、受信アンテナ数が干渉の数と所望ストリーム数との和以上であるという条件によるものである。
【0078】
これと同様に、式(11)の第二式は、端末装置f宛のストリーム数RF2が、端末装置fの受信アンテナ数から、基地局装置Mから受ける干渉の数を減算した結果以下となるように算出されることを意味している。これも、第1の実施形態と同様に、受信アンテナ数が干渉の数と所望ストリーム数との和以上であるという条件によるものである。
【0079】
また、式(11)の第三式は、フェムトセルC3における全ストリーム数Rが、基地局装置Fの送信アンテナ数以下であることを表わしている。第一式、第二式だけでそれぞれの端末装置へ送信するストリーム数を決定した場合には、その合計が基地局装置Fの送信アンテナ数より多くなり、実際にはそのようなストリーム数の伝送ができないという状況が生じることがあり得るが、第三式はそのような状況を回避するための制限を表わした式であると言える。
【0080】
つまり、式(11)は、端末装置fと端末装置fが、基地局装置Mから受ける干渉を除去しつつ、基地局装置Fからそれぞれ受信することができるストリーム数の算出条件を表わしている。但し、このように、基地局装置Mから受ける干渉を除去しつつ、基地局装置Fからそれぞれ受信することができるストリーム数を算出するための基準となる式であれば、式(11)に限らず、その他の式を用いてストリーム数を算出してもよい。
【0081】
本実施形態では、Nf1=4、Nf2=4、R=2、N=4であることから、式(11)第一式、第二式より、ストリーム数決定部71は、まずRF1≦2、RF2≦2とする。これは、第三式のR=RF1+RF2≦Nを常に満たすため、次に、RF1≦2、RF2≦2を満たすRF1、RF2を算出するよう制御される。ここで、RF1≦2、RF2≦2を満たすRF1、RF2の組合せとしては、端末装置f、fの両方へ信号を伝送する場合には、(RF1,RF2)=(1,1),(2,1),(1,2),(2,2)のようなストリーム数の組み合わせがあるが、このいずれの組合せとしてもよい。これらの組合せのうち、どの組合せを選択して各端末装置宛のストリーム数を設定するかは、各端末装置における受信品質や、各端末装置宛に伝送すべき情報量等に応じて決定してもよい。また、本実施形態では、各端末装置は、所望ストリーム数に関する情報を基地局にフィードバックする構成となっていないが、そのような情報をフィードバックする場合には、それに基づいてRF1、RF2の組合せを決定してもよい。
【0082】
また、R=3の場合は、まずRF1≦1、RF2≦1とし、この結果も常に式(11)第三式を満たすため、次に、RF1≦1、RF2≦1を満たすRF1、RF2の組合せを算出するよう制御される。ここで、端末装置f、fの両方へ信号を伝送する場合には、(RF1,RF2)=(1,1)と決定される。
【0083】
=4の場合は、RF1≦0、RF2≦0となることから、フェムトセルC3では信号の伝送が行われないこととなる。
【0084】
=0の場合は、RF1≦4、RF2≦4となるが、これは式(11)第三式を満たさない場合がある。例えば、RF1=4、RF2=4とすると、R=8となることから、このような場合には、基地局装置Fが送信可能な最大のストリーム数4を超えてしまい、実際には伝送を行うことができない。そこで、RF1≦4、RF2≦4と、R≦Nを満たすようにRF1、RF2の組合せが決定されることとなる。このような組み合わせは、端末装置f、fの両方へ信号を伝送する場合には、(RF1,RF2)=(1,1),(2,1),(3,1),(1,2),(2,2),(1,3)のいずれかとなる。先に述べたように、これらのストリーム数の組合せのうち、どの組合せを選択して各端末装置宛のストリーム数を設定するかは、各端末装置における受信品質や、各端末装置宛に伝送すべき情報量等に応じて決定することができる。
【0085】
また、R=1の場合は、RF1≦3、RF2≦3となるが、これも、RF1=3、RF2=3のように、式(11)第三式を満たさない場合がある。したがって、RF1≦3、RF2≦3と、R≦Nを満たすようにRF1、RF2の組合せが決定されることとなる。
【0086】
このように決定された各端末装置宛のストリーム数は、ストリーム数決定部71より上位層へ出力される。本実施形態において、Nf1=4、Nf2=4、R=2、N=4である場合には、ストリーム数決定部71は、例えばRF1=RF2=2を上位層へ出力するものとする。このような場合には、基地局装置Fでは、各端末装置に2ストリームずつを送信するMU−MIMO伝送が行われることとなる。以下では、この場合を例に、送信フィルタの算出方法について説明を行う。
【0087】
送信フィルタ算出部67では、式(12)に示したように、各端末装置から通知された伝搬路行列HF→f1、HF→f2と、受信フィルタWRX(f1)、WRX(f2)から送信フィルタWTX(f)を算出する。ここで、送信フィルタWTX(f)は基地局装置Fで送信ストリーム数分のプレコーディングを行うための送信フィルタである。
【0088】
【数12】

【0089】
ここで、式(12)の送信フィルタWTX(f)は、ZFフィルタである。つまり、本実施形態では基地局装置Fから各端末装置に2ストリームずつを送信するMU−MIMO伝送を行うが、式(12)の送信フィルタを用いることで、各端末装置において1ストリームずつをそれぞれ異なるアンテナで受信する方式となる。
【0090】
また、複数ストリームをMU−MIMO伝送する場合の他のプレコーディング方法として、BD(Block Diagonalization)があり、本実施形態にも適用可能である。本実施形態において、BDを用いた場合は、端末装置において複数の2ストリームを複数のアンテナで受信する方式となる。この場合、送信フィルタは以下のように特異値分解を用いて算出する。
【0091】
【数13】

【0092】
ここで、式(13)のように、等価伝搬路を特異値分解して得られる右特異ベクトルVのうち、特異値行列Dの対角成分のゼロに対応する右特異ベクトルの複素共役転置ベクトルをそれぞれVf1’、Vf2’とする。このとき、Vf1’は、基地局装置Fから端末装置fにヌルを向けるためのフィルタ、Vf2’は、基地局装置Fから端末装置fにヌルを向けるためのフィルタである。ここで、RF1=RF2=2の場合には、Vf1’とVf2’は共に4行2列の行列となる。
【0093】
【数14】

【0094】
ここで、式(14)を特異値分解して得られる右特異ベクトルVf11を右側からVf2’に乗算してできるベクトルをVf1’’、右特異ベクトルVf22を右側からVf1’に乗算してできるベクトルをVf2’’とすると、BDを用いる場合の送信フィルタWTX(f)は式(15)となる。但し、この例では、Vf11とVf22はそれぞれ2行2列の行列であり、Vf1’’とVf2’’はそれぞれ4行2列の行列となる。
【0095】
【数15】

【0096】
本実施形態における受信処理は、第1の実施形態と同様に、各端末装置において等価伝搬路を特異値分解して算出した受信フィルタWRX(f)を用いてマクロセルから到来する干渉信号を除去する。ここで、BDを用いた場合には、基地局装置Fは端末装置fに式(14)の左特異値ベクトルUf11を、端末装置fに左特異値ベクトルUf22を通知し、各端末装置において受信フィルタWRX(f)乗算後の信号に、それぞれUf11、Uf22を乗算することにより、各端末装置宛に送信された複数ストリームを分離(SU−MIMO伝送を分離)する構成としてもよい。但し、このUf11、Uf22は各端末装置において推定することも可能である。
【0097】
また、各端末装置においてMMSE受信によってMIMO多重された信号を分離する場合には、送信フィルタは式(13)のVf1’、Vf2’を用いてWTX(f)=[Vf2’ Vf1’]としてもよい。このときの端末装置の処理は後述する。
【0098】
上位層73では、ストリーム数情報R分の送信情報シンボルdを生成し、変調部75に出力する。変調部75では、送信情報シンボルdを変調して送信データ信号sとし、送信フィルタ乗算部77に出力する。
【0099】
以降の基地局装置Fの処理は、第1の実施形態と同様であり、送信信号に送信フィルタ算出部77が算出した送信フィルタを乗算し、パイロット信号生成部81が生成したパイロット信号を付加して、D/A部83a・83b・83c・83d、無線部85a・85b・85c・85dを介してAT12・AT13・AT21・AT22から送信する。
【0100】
また、先に述べたように、R=3の場合に、RF1=RF2=1に分配して伝送を行う場合には、先に述べたZF法等により送信フィルタを算出し、算出した送信フィルタを用いて基地局装置Fから各端末装置宛に1ストリームずつMU−MIMO伝送することとなる。また、R=3の場合には、MU−MIMO伝送ではなく、端末装置fとfのどちらかの端末装置にのみ信号を送信してもよい。このように、マクロセルにおいて伝送されるストリーム数に応じて、フェムトセルにおける送信ストリーム数を決定する際に、マルチユーザ伝送とシングルユーザ伝送をダイナミックに切り替える処理を行うこともできる。
【0101】
さらに、R=0の場合にも、RF1=RF2=2に分配してMU−MIMO伝送を行うことができ、このような場合にも、先に述べたZFやBD法により送信フィルタを算出することができる。また、SU−MIMO伝送を行うことも可能であり、この場合には、単一端末装置宛に送信可能なストリーム数は最大4ストリームとなる。
【0102】
また、R=1の場合にも同様に、(RF1,RF2)=(2,2)のようにストリームを分配したMU−MIMO伝送を、ZFやBD法により行うことができる。また、RF1≠RF2となるようにストリームを各端末装置に分配してもよい。但し、マクロセルから到来する干渉信号を除去するために端末装置が有する自由度を消費することから、1つの端末装置宛に伝送可能な最大ストリーム数は3に設定する必要がある。
【0103】
図10に本実施形態に係る端末装置f(f)の構成を示す。図6に示す構成に比べて、受信系に相違点がある。ここで受信系の相違点とは、受信アンテナAT14・AT15・AT16・AT23、無線部91a〜d、A/D部93a〜dの数が、図6に示す構成に比べて増加している点である。本実施形態における端末装置では、受信アンテナ数が4本であり(AT14・AT15・AT16・AT23)、無線部91a・91b・91c・91d、A/D部93a・93b・93c・93dを介して信号分離部95に受信信号が入力される。
【0104】
各端末装置における処理は第1の実施形態と同様である。受信信号を受信データとパイロット信号に分離し、受信フィルタ乗算部101において受信データに受信フィルタWRX(f)を乗算することによって、送信信号を抽出する。但し、受信フィルタWRX(f)は、第1の実施形態と同様に式(7)を用いて予め算出されている。また、伝搬路推定部105では、伝搬路推定用のパイロット信号から伝搬路HF→fを推定し、受信フィルタWRX(f)、受信アンテナ数情報Nと合わせて基地局装置Fへフィードバックする。
【0105】
なお、基地局装置FがBDによるプレコーディングを行った場合、受信フィルタWRX(f)の乗算後に、式(14)の左特異ベクトルの複素共役転置ベクトルを乗算することにより、1つの端末装置宛に送信された複数ストリームを分離することができる。また、MMSE受信を行う場合には、伝搬路推定部105において等価伝搬路を推定し、推定結果を基に算出される受信フィルタを受信フィルタ乗算部101において受信データ信号に乗算することにより、複数ストリームを分離して抽出することが可能となる。
【0106】
以上のように、フェムトセル内がMU−MIMO伝送を行う場合おいても、フェムトセルにとって非常に大きな干渉源となるマクロセルにおける送信ストリーム数と、フェムトセルにおける端末装置が有する自由度(受信アンテナ数)に応じて、マクロセルにおける送信ストリーム数とフェムトセルにおける送信ストリーム数との合計が端末装置の自由度を超えないように、フェムトセルにおける送信ストリーム数を決定することにより、フェムトセルにおける端末装置では、マクロセルから到来する干渉を除去しつつ、所望信号を受信することが可能となる。
【0107】
また、本実施形態におけるマクロセルからのストリーム数Rが2もしくは3の場合、マクロセルからの干渉とフェムトセル内のユーザ間干渉の等価伝搬路ベクトルとを揃えることによっても、端末装置が有する自由度の範囲内でそれらの干渉を効率良く除去することができる。この場合、基地局装置Fは式(16)の送信フィルタWTX(f)を用いてプレコーディングを行う。ただし、この場合、基地局装置Fは、基地局装置Mにおける送信フィルタWTX(m)を把握する必要があるが、これは、基地局装置Mから有線ネットワークを通じて取得することができる。また、フェムトセル内の端末装置f、fにおいて、それぞれ等価伝搬路HM→f1TX(m)、HM→f2TX(m)を推定し、基地局装置Fにフィードバックする構成としてもよい。
【0108】
【数16】

【0109】
また、第1、第2の実施形態では、各端末装置で推定した伝搬路と受信フィルタとを基地局装置Fへフィードバックし、各端末装置ではこの通知した受信フィルタと同じ受信フィルタを用いてマクロセルからの干渉を除去していたが、この受信フィルタの代わりにMMSE規範に基づく受信フィルタを算出してもよい。この場合、各端末装置におけるMMSEフィルタの重みは式(17)のように表される。
【0110】
【数17】

【0111】
ただし、式(17)のHF→fTX(f)は、受信フィルタ算出部97で受信フィルタ算出用のパイロット信号から推定される等価伝搬路である。また、σは平均受信SNRの逆数(または、雑音の分散)を表わしている。
【0112】
また、本実施形態の基地局装置Fでは、式(12)もしくは(15)の送信フィルタを用いているが、式(18)のMMSE基準によって算出した送信フィルタを用いてもよい。
【0113】
【数18】

【0114】
上記の実施の形態では、マクロセルにおける伝送ストリーム数に関する情報を取得したフェムトセルの基地局装置が、自身が送信するストリーム数を決定する例について示したが、マクロセルやフェムトセルをまとめて制御する集中制御局がある場合には、その集中制御局が、マクロセルにおける伝送ストリーム数に関する情報とフェムトセルの端末が有する受信アンテナ数に関する情報を取得し、それらに基づきフェムトセルの基地局装置が送信するストリーム数を決定するようにしてもよい。
【0115】
上記の実施の形態において、添付図面に図示されている構成等については、これらに限定されるものではなく、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0116】
また、本実施の形態で説明した機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。尚、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0117】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
【0118】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また前記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、通信装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0120】
AT…アンテナ、C1…マクロセル、C2、C3…フェムトセル、M…基地局装置、F…基地局装置、m…端末装置、f…端末装置、11…上位層、15…変調部、17…送信フィルタ乗算部、21…パイロット信号生成部、23a・23b…D/A部、25a・25b…無線部、31a・31b…無線部、33a・33b…A/D部、35…信号分離部、37…伝搬路推定部、41…復調部、43…上位層、45…送信部、47…D/A部、51…無線部、61…無線部、63…A/D部、67…送信フィルタ算出部、71…ストリーム数決定部、73…上位層、75…変調部、77…送信フィルタ乗算部、81…パイロット信号生成部、83a・83b…D/A部、85a・85b…無線部、91a・91b・91c…無線部、93a・93b・93c…A/D部、95…信号分離部、97…受信フィルタ算出部、101…復調部、103…送信部、105…伝搬路推定部、107…D/A部、109…無線部、111…復調部、113…上位層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバーする領域が広い第1のセルのカバー領域内に、カバーする領域が前記第1のセルよりも狭い第2のセルがあり、前記第1のセルを制御する第1の基地局装置がプレコーディングを行って送信した信号を前記第1のセル内に位置する1つ以上の第1の端末装置が受信し、前記第2のセルを制御する第2の基地局装置がプレコーディングを行い、前記第1のセルと同一周波数を用いて送信した信号を前記第2のセル内に位置する1つ以上の第2の端末装置が受信する通信システムであって、
前記第1の基地局装置が送信するストリーム数に関する情報に基づいて、前記第2の基地局装置が送信するストリーム数を決定することを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記第2の基地局装置は、前記第1の基地局装置が送信するストリーム数に関する情報を取得し、自身が送信するストリーム数を決定するストリーム数決定部を有することを特徴とする請求項1記載の通信システム。
【請求項3】
前記第2の基地局装置は、自身が送信するストリーム数を、前記第1の基地局装置が送信するストリーム数に関する情報と、前記第2の端末装置が有する受信アンテナ数と、に基づいて決定するストリーム数決定部を有することを特徴とする請求項1記載の通信システム。
【請求項4】
前記ストリーム数決定部は、
前記第2の基地局装置が送信するストリーム数を、前記第2の端末装置が有する受信アンテナ数から前記第1の基地局装置が送信するストリーム数を減算した値を基に決定することを特徴とする請求項3記載の通信システム。
【請求項5】
前記第2の端末装置は、前記第1の基地局装置が前記プレコーディングを行って送信した信号の等価伝搬路を推定する伝搬路推定部と、推定した前記等価伝搬路を基に受信フィルタを算出する受信フィルタ算出部と、算出した前記受信フィルタを受信信号に乗算する受信フィルタ乗算部と、を有することを特徴とする請求項1記載の通信システム。
【請求項6】
前記受信フィルタ算出部は、前記受信フィルタを、前記等価伝搬路に直交するように算出することを特徴とする請求項5記載の通信システム。
【請求項7】
前記第2の基地局装置は、前記第2の端末装置と前記第2の基地局装置との間の伝搬路に前記受信フィルタを乗算して得られる等価伝搬路を基に、前記第2の基地局装置におけるプレコーディングに用いられる送信フィルタを算出する送信フィルタ算出部を有することを特徴とする請求項6記載の通信システム。
【請求項8】
前記送信フィルタ算出部は、
前記第2の基地局装置から複数の前記第2の端末装置に対して、それぞれ異なるストリームを送信する場合に、複数の前記第2の端末装置がそれぞれ受信する非所望ストリームの等価伝搬路が前記受信フィルタに直交するように、前記送信フィルタを算出することを特徴とする請求項7記載の通信システム。
【請求項9】
カバーする領域が広い第1のセルのカバー領域内に、カバーする領域が前記第1のセルよりも狭い第2のセルがあり、前記第1のセルを制御する第1の基地局装置がプレコーディングを行って送信した信号を前記第1のセル内に位置する1つ以上の第1の端末装置が受信し、前記第2のセルを制御する第2の基地局装置がプレコーディングを行い、前記第1のセルと同一周波数を用いて送信した信号を前記第2のセル内に位置する1つ以上の第2の端末装置が受信する通信システムにおける第1の基地局装置であって、
自身が送信するストリーム数に関する情報を前記第2の基地局装置に通知することを特徴とする第1の基地局装置。
【請求項10】
カバーする領域が広い第1のセルのカバー領域内に、カバーする領域が前記第1のセルよりも狭い第2のセルがあり、前記第1のセルを制御する第1の基地局装置がプレコーディングを行って送信した信号を前記第1のセル内に位置する1つ以上の第1の端末装置が受信し、前記第2のセルを制御する第2の基地局装置がプレコーディングを行い、前記第1のセルと同一周波数を用いて送信した信号を前記第2のセル内に位置する1つ以上の第2の端末装置が受信する通信システムにおける第2の基地局装置であって、
前記第1の基地局装置が送信するストリーム数に関する情報を取得し、自身が送信するストリーム数を決定するストリーム数決定部を有することを特徴とする第2の基地局装置。
【請求項11】
カバーする領域が広い第1のセルのカバー領域内に、カバーする領域が前記第1のセルよりも狭い第2のセルがあり、前記第1のセルを制御する第1の基地局装置がプレコーディングを行って送信した信号を前記第1のセル内に位置する1つ以上の第1の端末装置が受信し、前記第2のセルを制御する第2の基地局装置がプレコーディングを行い、前記第1のセルと同一周波数を用いて送信した信号を前記第2のセル内に位置する1つ以上の第2の端末装置が受信する通信システムにおける第2の端末装置であって、
前記第1の基地局装置が前記プレコーディングを行って送信した信号の等価伝搬路を推定する伝搬路推定部と、推定した前記等価伝搬路を基に受信フィルタを算出する受信フィルタ算出部と、算出した前記受信フィルタを受信信号に乗算する受信フィルタ乗算部と、を有することを特徴とする第2の端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−175191(P2012−175191A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32556(P2011−32556)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】