説明

通信システムおよびそれに用いる伝送ユニット

【課題】伝送信号を用いて通信する第1端末と、伝送信号に重畳される重畳信号を用いて通信する第2端末との間でデータを授受可能にする。
【解決手段】伝送ユニット1は、伝送信号の割込帯に第1監視端末211で発生した割込信号を検出すると、次の送信帯で第1監視端末211に対して返送要求部12から返送要求データを送信する。返送受信部13は、割込信号を発生した第1監視端末211が返送要求データに応答して次の返信帯で送信する返送データを受信する。帯域確保部17は、特定の返送データをトリガにして、送信帯において次の返信帯での返送データの送信を禁止することによりこの返信帯を重畳信号の重畳用に確保する確保データを送信する。伝送ユニット1は、確保データにて確保された返信帯に第2制御端末222に対して重畳通信部16から重畳信号により制御データを送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送信号を用いて通信する第1端末と、伝送信号に重畳される重畳信号を用いて通信する第2端末とが同一の通信線に接続された通信システムおよびそれに用いる伝送ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、伝送路に対して伝送ユニット(親機)および複数台の端末装置(子機)が接続され、各端末装置と伝送ユニットとの間で通信を行う通信システムが広く普及している。この種の通信システムの一例として、伝送ユニットが定期的に端末装置の状態を監視し、端末装置の状態に変化があった場合、その状態変化に対応する処理を行うように伝送ユニットから他の端末装置に信号を送るシステムがある(たとえば特許文献1〜3参照)。
【0003】
ただし、上記構成の通信システムは、そもそも照明器具等のオンオフ制御などに使用されるシステムであって通信速度が遅く、たとえばアナログ量のように比較的データ量の多い情報の伝送には不向きである。
【0004】
そこで、伝送ユニットを介して端末装置同士が通信を行う既設の通信システムと、端末装置同士がピア・ツー・ピア(P2P)で直接通信を行う通信システムとを混在させた通信システムが提案されている(たとえば特許文献4参照)。この通信システムにおいては、伝送ユニット(親機)を介して通信する第1端末(第1通信端末)と、互いに直接通信する第2端末(第2通信端末)とが通信線(伝送路)を共用するので、既設の通信システムに第2端末を容易に増設することができる。第1端末は伝送ユニットから通信線に繰り返し送出される伝送信号(第1プロトコルの信号)を用いて通信を行い、第2端末は伝送信号に重畳される重畳信号(第2プロトコルの信号)を用いてより高速に通信を行う。
【0005】
ここで、伝送信号は、1フレームごとに時間軸方向において複数の領域(期間)に分割され、一部の領域が重畳信号を重畳可能な重畳可能帯(通信適合期間)として割り当てられる時分割方式の信号である。すなわち、第2端末は、伝送信号の一部に割り当てられた重畳可能帯に、伝送信号と共通の通信線を伝送される重畳信号を用いて通信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第1180690号公報
【特許文献2】特許第1195362号公報
【特許文献3】特許第1144477号公報
【特許文献4】特開2009−225328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献4記載の通信システムでは、第1端末と第2端末とは通信線を共有しているものの、互いに干渉することなく、第1端末同士または第2端末同士が独立して通信を行っており、第1端末と第2端末との間でのデータの授受は想定されていない。しかし、近年、たとえば第1端末から伝送ユニットに入力されたデータに基づいて第2端末に接続された機器を制御可能であるような、フレキシブルなシステムへの応用が求められており、そのためには第1端末と第2端末との間でのデータの授受が必要になる。
【0008】
本発明は上記事由に鑑みて為されており、伝送信号を用いて通信する第1端末と、伝送信号に重畳される重畳信号を用いて通信する第2端末との間でデータを授受可能な通信システムおよびそれに用いる伝送ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の通信システムは、通信線に伝送信号を繰り返し送出する伝送ユニットと、前記伝送信号を用いて通信する第1端末と、前記伝送信号に重畳される重畳信号を用いて通信する第2端末とが前記通信線に接続された通信システムであって、前記伝送信号は、1フレームごとに時間軸方向において、前記第1端末で発生する割込信号の有無を検出するための割込帯と、前記第1端末にデータを伝送するための送信帯と、前記第1端末からの返送データを受信するためのタイムスロットである返信帯とを含む複数の領域に分割された時分割方式の信号からなり、前記伝送ユニットは、前記割込帯に前記割込信号を検出すると、次の前記送信帯で前記第1端末に対して前記伝送信号により返送要求データを送信する返送要求部と、前記割込信号を発生した前記第1端末が前記返送要求データに応答して次の前記返信帯で前記伝送信号により送信する前記返送データを受信する返送受信部と、特定の前記返送データをトリガにして、前記送信帯において次の前記返信帯での前記返送データの送信を禁止することにより当該返信帯を前記重畳信号の重畳用に確保する確保データを前記伝送信号により送信する帯域確保部と、前記確保データにて確保された前記返信帯に前記第2端末に対して前記重畳信号によりデータを送信する重畳通信部とを備えることを特徴とする。
【0010】
この通信システムにおいて、前記帯域確保部は、前記第2端末に送信するデータ量が多いほど前記返信帯が長く確保されるように、前記第2端末に送信するデータ量に応じて前記確保データの送信回数を1ないし複数回の範囲で決定することが望ましい。
【0011】
この通信システムにおいて、前記第2端末が前記重畳通信部からの前記データに応答して確認データを前記重畳通信部に送信する場合、前記帯域確保部は、前記重畳通信部から前記データを送信した前記送信帯の次の前記送信帯において前記確保データを再度送信し、当該送信帯の次の前記返信帯を前記確認データの受信用に確保することがより望ましい。
【0012】
この通信システムにおいて、前記返送受信部は、同一の前記返信帯に複数の前記第1端末から前記返送データを受信した場合、アドレスにて予め決められている優先度が高い前記第1端末からの返送データを優先することがより望ましい。
【0013】
本発明の伝送ユニットは、伝送信号を用いて通信する第1端末と、前記伝送信号に重畳される重畳信号を用いて通信する第2端末とが通信線に接続された通信システムに用いられ、1フレームごとに時間軸方向において、前記第1端末で発生する割込信号の有無を検出するための割込帯と、前記第1端末にデータを伝送するための送信帯と、前記第1端末からの返送データを受信するためのタイムスロットである返信帯とを含む複数の領域に分割された時分割方式の信号からなる前記伝送信号を前記通信線に繰り返し送出する伝送通信部と、前記割込帯に前記割込信号を検出すると、次の前記送信帯で前記第1端末に対して前記伝送信号により返送要求データを送信する返送要求部と、前記割込信号を発生した前記第1端末が前記返送要求データに応答して次の前記返信帯で前記伝送信号により送信する前記返送データを受信する返送受信部と、特定の前記返送データをトリガにして、前記送信帯において次の前記返信帯での前記返送データの送信を禁止することにより当該返信帯を前記重畳信号の重畳用に確保する確保データを前記伝送信号により送信する帯域確保部と、前記確保データにて確保された前記返信帯に前記第2端末に対して前記重畳信号によりデータを送信する重畳通信部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、伝送信号を用いて通信する第1端末と、伝送信号に重畳される重畳信号を用いて通信する第2端末との間でデータを授受可能になるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1に係る通信システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態1に係る通信システムを用いた照明システムの構成図である。
【図3】実施形態1に係る通信システムの基本システムの動作の説明図である。
【図4】実施形態1に係る通信システムの基本システムの動作の説明図である。
【図5】実施形態1に係る通信システムの動作の説明図である。
【図6】実施形態1に係る通信システムの動作の説明図である。
【図7】実施形態1に係る通信システムの他の動作の説明図である。
【図8】実施形態2に係る通信システムの動作の説明図である。
【図9】実施形態2に係る通信システムの他の動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
本実施形態の通信システムは、たとえば図1に示すように、2線式の通信線10に接続される親機としての伝送ユニット1と、子機としての第1端末21および第2端末22とを備えている。図1(図2,4,6も同様)では、第1端末21は第1監視端末あるいは第1制御端末と表記し、第2端末22は第2監視端末あるいは第2制御端末と表記しているが、この点については後述する。この通信システムでは、第1端末21は通信線10を伝送される伝送信号(第1プロトコルの信号)を用いて通信を行い、第2端末22は伝送信号に重畳される重畳信号(第2プロトコルの信号)を用いて通信を行う。
【0017】
図2は、通信システムがオフィスビル等において照明器具3を制御するための照明システムに適用された例を示している。図2の例では、伝送ユニット1はエリア(たとえばフロア)ごとに1台ずつ設けられ、各伝送ユニット1に接続された通信線10に第1端末21および第2端末22が1ないし複数台ずつ接続されている。さらに、通信線10には、照明制御システムを集中監視制御するためのオフィスコントローラ4が接続されている。
【0018】
また、伝送ユニット1は、その上位装置となる省エネコントローラ5に接続されている。省エネコントローラ5は、エリア(たとえばフロア)ごとに設けられており、上記通信システムを適用した照明システムの他、空調装置6についても統括的に監視制御を行う。複数のエリアの省エネコントローラ5は、ブラウザ機能を有したパソコン(パーソナルコンピュータ)7にインターネットなどのネットワーク8あるいはLANを介して接続され、パソコン7から監視可能に構成されている。なお、図2の例では、1台の第2監視端末221に電力計測ユニット91が接続されており、この電力計測ユニット91は、PLCタップ93に接続された機器での消費電力をモニタ92経由で計測する。
【0019】
複数台の第1端末21は、伝送ユニット1に対して通信線10を介して並列接続されている。伝送ユニット1および第1端末21は、伝送ユニット1から第1端末21へのデータ伝送と第1端末21から伝送ユニット1へのデータ伝送とが時分割で行われる時分割多重伝送システム(以下、「基本システム」という)を構築する。以下ではまず、基本システムの概略構成について説明する。
【0020】
基本システムにおいて、第1端末21は、壁スイッチ等のスイッチ(図示せず)の監視入力を監視する第1監視端末211と、リレー(図示せず)を有し負荷(ここでは照明器具3)のオンオフ制御等を行う第1制御端末212との2種類に分類される。ここで、第1端末21は予め個別に割り当てられた自己のアドレスを、各々のメモリ(図示せず)に記憶している。なお、第1監視端末211は、スイッチに限らず、人感センサ等のセンサで自動的に発生する監視入力を監視する構成であってもよい。
【0021】
伝送ユニット1は、図1に示すように、伝送信号を通信線10に送出する伝送通信部11と、第1端末21へ返送要求データを送信する返送要求部12と、第1端末21から返送データを受信する返送受信部13と、記憶部14と、制御部15とを備えている。さらに、伝送ユニット1は、重畳通信部16と帯域確保部17とを備えているが、重畳通信部16および帯域確保部17は基本システムでは使用しない機能であるから、詳しくは後述する。制御部15は、返送要求部12、返送受信部13、重畳通信部16、帯域確保部17の動作を制御する。本実施形態では、伝送ユニット1は、マイコン(マイクロコンピュータ)を主構成とし、記憶部14に記憶されたプログラムを実行することにより、各部の機能を実現する。
【0022】
返送要求部12は、伝送通信部11を介して伝送信号により返送要求データを送信する。返送受信部13は、第1端末21から伝送信号により送信された返送データを伝送通信部11を介して受信する。
【0023】
伝送ユニット1は、第1監視端末211と第1制御端末212とをアドレスによって対応付けた制御テーブルを記憶部14に記憶している。ここで、たとえば第1監視端末211が複数回路のスイッチを有する場合、第1監視端末211に固有の端末アドレスだけでは、この第1監視端末211のスイッチが全て該当することになり、実際に操作された唯一のスイッチを特定することはできない。
【0024】
そこで、第1監視端末211においては、実際に操作された唯一のスイッチを特定できるように、スイッチごとに負荷番号が割り振られ、第1監視端末211の端末アドレスの後に負荷番号が付加されたアドレスをスイッチ固有のアドレス(識別子)として用いる。同様に、第1制御端末212においてはリレーごとに負荷番号が割り振られ、第1制御端末212の端末アドレスの後に負荷番号が付加されたアドレスをリレー固有のアドレス(識別子)とする。制御テーブルでは、スイッチ固有のアドレスとリレー固有のアドレスとが一対一あるいは一対多に対応付けられる。
【0025】
続いて、基本システムの動作について説明する。
【0026】
伝送ユニット1は、通信線10に対して図3に示すように時間軸方向において複数の領域に分割された形式の電圧波形からなる時分割方式の伝送信号を繰り返し送信する。すなわち、伝送信号は、予備割込帯101と、予備帯102と、送信帯103と、返信帯104と、割込帯105と、短絡検出帯106と、休止帯107との7つの領域からなる複極(±24V)の時分割多重信号である。なお、図示例では伝送信号における割込帯105から始まって返信帯104で終わる各区間を1フレーム(F1,F2,・・・)としている。
【0027】
予備割込帯101は2次割込の有無を検出するための期間、予備帯102は割込帯105および短絡検出帯106に合わせて設定された期間であり、送信帯103は第1端末21にデータを伝送するための期間である。返信帯104は第1端末21からの返送データを受信するタイムスロットであり、割込帯105は後述の割込信号の有無を検出するための期間であり、短絡検出帯106は短絡を検出するための期間である。休止帯107は処理が間に合わないときのための期間である。
【0028】
伝送ユニット1は、常時は、モードデータが通常モードである伝送信号を送信し、この伝送信号の送信帯103に含まれるアドレスデータをサイクリックに変化させて第1端末21に順次アクセスする常時ポーリングを行う。常時ポーリングの際には、送信帯103に含まれるアドレスデータが自己のアドレスに一致した第1端末21は、この送信帯103に含まれるデータを受信し、次の返信帯104にて返送データを伝送ユニット1に送信する。ここで、第1端末21は、伝送信号の返信帯104に同期した電流モードの信号(適当な低インピーダンスを介して通信線10を短絡することにより送出される信号)により返送データを送信する。なお、第1端末21の内部回路の電源は、通信線10を介して伝送される伝送信号を整流し安定化することによって供給される。
【0029】
一方、第1監視端末211としての第1端末21は、監視入力を検出すると、伝送信号の割込帯105に同期して割込信号を発生する。以下、図1の通信システムにおいて、第1監視端末211で割込信号が発生した場合の基本システムの動作について、図3および図4を参照して説明する。
【0030】
伝送ユニット1は、伝送信号の第1フレームF1の割込帯105にて第1監視端末211で発生した割込信号を検出すると(図3および図4のS11)、伝送信号の送信帯103に含まれるモードデータを通常モードから割込ポーリングモードに切り替える。割込ポーリングモードにおいては、伝送ユニット1は、返送要求部12にて、アドレスの上位ビットからなる返送要求データを伝送信号の送信帯103で送信し(S12)、アドレス(上位ビット)をサイクリックに変化させながらアドレスサーチを行う。割込信号を発生した第1監視端末211は、返送要求データ中のアドレス(上位ビット)が自己のアドレスの上位ビットに一致していれば、第1フレームF1の返信帯104にて自己のアドレスの下位ビットを返送データとして伝送ユニット1に送信する(S13)。これにより伝送ユニット1は、第1フレームF1において割込信号を発生した第1監視端末211のアドレスを、返送データとして返送受信部13にて受信することになる。
【0031】
伝送ユニット1は、割込信号を発生した第1監視端末211のアドレスを取得すると、次の第2フレームF2の送信帯103にて、そのアドレスを指定して第1監視端末211に対して返送要求部12から返送要求データを送信する(S14)。第1監視端末211は、自己のアドレスを含む返送要求データを受信すると、これに応答して、第2フレームF2の返信帯104にて監視入力に対応したスイッチの負荷番号およびオンオフの別を含む監視データを返送データとして伝送ユニット1に送信する(S15)。
【0032】
伝送ユニット1は、返送受信部13にて監視データからなる返送データを受信すると、この監視データに制御テーブル上で対応する第1制御端末212に対して、次の第3フレームF3の送信帯103にて制御データを送信する(S16)。これにより、制御データを受信した第1制御端末212は、制御データに従って照明器具3をオンオフ制御する。
【0033】
上述したように、基本システムでは、ポーリング・セレクティング方式のプロトコル(第1プロトコル)に従い、伝送ユニット1を介して第1端末(第1監視端末211、第1制御端末212)21同士が通信を行うこととなる。
【0034】
ところで、本実施形態に係る通信システムでは、第2端末22は、上記基本システムと通信線10を共用しつつ、伝送信号に重畳される重畳信号を用いて通信を行う。本実施形態においては、伝送ユニット1は重畳信号を用いた第2プロトコルの通信を行う重畳通信部16(図1参照)を備えているので、第2端末22同士だけでなく、伝送ユニット1と第2端末22との間でも第2プロトコルの通信が可能である。
【0035】
第2端末22は、第1端末21と同様、センサ等からの監視入力を監視する第2監視端末221と、負荷(ここでは照明器具3)の制御を行う第2制御端末222との2種類に分類される。ここで、第2端末22は予め個別に割り当てられた自己のアドレスを、各々のメモリ(図示せず)に記憶している。ただし、第1端末21と第2端末22とでは設定可能なアドレス領域が区別されている。以下では、通信システム全体として「1」〜「128」のアドレスが使用可能であって、そのうち「1」〜「64」までが第1端末21のアドレス領域、「65」〜「128」が第2端末22のアドレス領域として割り当てられている場合を想定して説明する。
【0036】
なお、第2端末22に関しては、1台の第2端末22に複数台のセンサや負荷が接続されている場合、第2端末22に固有のアドレスが割り当てられるのではなく、センサあるいは負荷ごとに固有のアドレスが割り当てられている。つまり、たとえば4台の負荷が接続された第2制御端末222には、「65」、「66」、「67」、「68」というように合計4つのアドレスが割り当てられることになる。
【0037】
第2端末22は、図1に示すように、重畳信号を用いた通信を行う(端末側)重畳通信部23と、少なくとも伝送信号を受信可能な(端末側)伝送通信部24と、インタフェース部25と、(端末側)制御部26とを備えている。インタフェース部25には、後述するセンサ機器や照明器具3が接続される。制御部26は、重畳通信部23、伝送通信部24、インタフェース部25の動作を制御する。本実施形態では、第2端末22は、マイコン(マイクロコンピュータ)を主構成とし、メモリ(図示せず)に記憶されたプログラムを実行することにより、各部の機能を実現する。
【0038】
ここにおいて、重畳信号は、伝送信号に比べて、周波数が十分に高い信号であって(伝送信号の)1フレーム当たりに伝送可能なデータ量が十分に多い。そのため、第2プロトコルによる通信は、第1プロトコルによる通信に比べて通信速度を高速化でき、たとえばアナログ量のように比較的データ量の多い情報の伝送に適している。
【0039】
そこで、第2監視端末221は、画像センサ(図示せず)や電力計測ユニット91(図2参照)などのセンサ機器が接続され、比較的データ量の多い監視データの通信に用いられる。第2制御端末222は、照明器具3の単純なオンオフ制御ではなく、たとえば調光制御や調色制御のように、比較的データ量の多い制御データの通信に用いられる。つまり、第2制御端末222は、調光制御や調色制御が可能な照明器具3に接続され、重畳信号を用いて送信される制御データに従って照明器具3の制御を行う。
【0040】
ただし、監視データを生成するのはセンサ機器であって、第2監視端末221は、センサ機器から入力された監視データを変換し通信線10上に送信するアダプタとして機能する。同様に、制御データを生成するのは伝送ユニット1であって、第2制御端末222は、通信線10から受信した制御データを照明器具3の規格に合わせて変換し、照明器具3に出力するアダプタとして機能する。なお、第2制御端末222に接続される照明器具3の規格の一例としては、DALI(DigitalAddressable Lighting Interface)などがある。
【0041】
また、第2端末22および伝送ユニット1は、基本システムで用いられる伝送信号を監視し、伝送信号のデータ伝送状況(以下、「ステート」という)を解析する機能を有している。ここでは、第2端末22は伝送通信部24にて伝送信号を監視し、伝送ユニット1は伝送通信部11にて伝送信号を監視する。第2端末22および重畳通信部16は、ステートが重畳信号の重畳に適した状況にあるか否かを判断し、伝送に適していると判断されたタイミングで、伝送信号に重畳信号を重畳する。
【0042】
本実施形態においては、第2端末22および重畳通信部16は、伝送信号のうち返信帯104(図3参照)を重畳可能帯として、重畳信号の重畳に用いている。つまり、返信帯104は、重畳信号が重畳されても第1プロトコルの通信に影響がなく、重畳信号も伝送信号の影響を受けにくい。さらに、返信帯104は、予備割込帯101や予備帯102や休止帯107に比べて、伝送信号がハイレベルあるいはローレベルに安定している時間が長く、伝送信号の1フレームに占める割合が大きいので、重畳信号の重畳に適している。
【0043】
その他の領域(送信帯103と割込帯105と短絡検出帯106)は、伝送信号がハイレベルあるいはローレベルに安定している時間が相対的に短く、重畳信号が重畳されると第1プロトコルの通信に影響を与えやすい。また上記他の領域に重畳信号が重畳されると、重畳信号も伝送ユニット1と第1端末21との間で授受される信号(割込信号や送信データ)の影響を受けやすい。そのため、本実施形態では、返信帯104以外の領域は、重畳信号の重畳には使用されない領域(以下、「重畳不可帯」という)とする。
【0044】
なお、伝送信号の立ち上がりおよび立ち下がりの期間も、高調波ノイズの影響や信号の電圧反転に伴う過渡応答の影響などにより、重畳信号を重畳するのに適していない。したがって、伝送信号は、返信帯104の中でも、領域の切り替わり(立ち上がり)後の所定時間(たとえば300μs)については、重畳不可帯となる。
【0045】
第2端末22および重畳通信部16は、伝送信号のステートの解析結果に基づいて重畳可能帯か重畳不可帯かの判断を行い、重畳可能帯と判断されたときに限って重畳信号を送出するように構成されている。第2端末22および重畳通信部16は、このように伝送信号に同期して伝送信号の重畳可能帯にのみ重畳信号を重畳させることにより、共通の通信線10を使用する第1プロトコルの通信と第2プロトコルの通信との干渉を回避する。
【0046】
ここで、第2端末22および重畳通信部16は、伝送するデータのデータ量が多く一度の重畳可能帯(返信帯104)内で送信しきれなかった場合には、当該重畳可能帯の終了に合わせて通信を中断し、次回の重畳可能帯に残りのデータを送信する。つまり、第2端末22および重畳通信部16は、受信した重畳信号が分割送信されていた場合には結合して1つのデータにし、重畳信号の送信時には重畳可能帯に重畳できる長さにデータを分割する。
【0047】
なお、第2端末22への電源供給は、第1端末21と同様に伝送ユニット1から通信線10を介して伝送される伝送信号を整流し安定化することによって供給される方式(集中給電方式)によって為される。ただし、この構成に限らず、第2端末22への電源供給は、商用電源を整流し安定化することによって供給される方式(ローカル給電方式)で為されてもよい。
【0048】
ここにおいて、本実施形態の通信システムでは、第1端末21と第2端末22とは、通信線10を共有しているだけでなく、伝送ユニット1を介してデータの授受が可能に構成されている。具体的には、伝送ユニット1の記憶部12内の制御テーブルにおいて、第1監視端末211のアドレス(スイッチ固有のアドレス)と第2制御端末222のアドレス(負荷固有のアドレス)とが対応付けられている。これにより、伝送ユニット1は、第1監視端末211で生じた監視入力に従って、第2制御端末222に接続された負荷(照明器具3)を制御することが可能になる。
【0049】
ただし、本実施形態では、第2端末22および重畳通信部16は、伝送信号の返信帯104を重畳可能帯として重畳信号の重畳に利用するので、返信帯104にて第1端末21から伝送ユニット1に送信される返送データと重畳信号との干渉を回避する必要がある。
【0050】
そこで、本実施形態の通信システムは、伝送ユニット1が、伝送信号の送信帯103において、次の返信帯104を重畳信号の重畳用に確保するための確保データを送信する帯域確保部17を有している。
【0051】
帯域確保部17は、特定の返送データをトリガにし、伝送信号の送信帯103に同期して確保データを伝送通信部11から送信する。ここでいう確保データは、次の返信帯104での返送データの送信を禁止することにより次の返信帯104を重畳信号の重畳用に確保するデータであって、たとえば特定の意味を持たない空パケットからなるダミーデータである。つまり、第1端末21は、送信帯103に自己のアドレス(あるいは上位ビット)が含まれている場合にのみ返送データを送信するので、確保データが送信された送信帯103の次の返信帯104には、いずれの第1端末21も返送データを送信しない。したがって、帯域確保部17から確保データが送信された送信帯103の次の返信帯104は、第1端末21から返送データが送信されることなく、重畳信号の重畳用に確保されることになる。
【0052】
また、帯域確保部17が確保データを送信するためのトリガ(特定の返送データ)としては、第1端末21からの返送データのうち、第2端末22宛ての制御データに対応付けられた返送データが用いられる。つまり、基本構成においては、割込信号を発生した第1監視端末211は、自己のアドレス(下位ビット)からなる返送データと、監視データ(スイッチの負荷番号およびオンオフの別)からなる返送データとの2種類の返送データを伝送ユニット1に対して送信する。これら2種類の返送データのうち、伝送ユニット1にて制御テーブル上で第2端末22と対応付けが為されるのは、後者(監視データからなる返送データ)である。そのため、本実施形態では、帯域確保部17は制御テーブル上で第2端末22と対応付けられた監視データからなる返送データをトリガにして、確保データを送信する。
【0053】
言い換えれば、伝送ユニット1は、第1監視端末211からの返送データに基づいて、制御データの送信先となる端末が第1端末21か第2端末22かを判断し、第2端末22であれば次の送信帯103にて帯域確保部17から確保データを送信する。要するに、伝送ユニット1は、第1監視端末21からの返送データ(負荷番号)が、制御テーブル上で第2端末22のアドレス領域(「65」〜「128」)に対応している場合に、この返送データをトリガとして次の送信帯103にて確保データを送信する。これにより、伝送ユニット1は、第2端末22に制御データを送信するための返信帯104を確保することができる。
【0054】
重畳通信部16は、確保データによって確保された返信帯104、つまり確保データが送信された送信帯103の次の返信帯104に、第2制御端末222に対して重畳信号にて制御データを送信する。したがって、この返信帯104においては、第1端末21からの返送データと重畳信号とが干渉することなく、伝送ユニット1から第2端末22へ制御データを送信することが可能になる。
【0055】
さらにまた、第2制御端末222によっては、重畳通信部16からの制御データに応答して、ACK(ACKnowledgement)データ等の確認データを伝送ユニット1に送信することもある。この種の第2制御端末222が対象となる場合、帯域確保部17は、制御データを送信した送信帯103の次の送信帯103において確保データを再度送信し、第2制御端末222からの確認データを重畳信号で受信するための返信帯104を確保することが望ましい。これにより、伝送ユニット1は、第2制御端末222から重畳信号を用いて送信される確認データについても、返信帯104にて第1端末21から送信される返送データとの干渉を回避することができる。
【0056】
なお、制御データのデータ量が比較的少ない場合などで、返信帯104の一部のみで制御データの送信が完了する場合には、第2制御端末222は、同返信帯104のうち制御データを送信した後の残り時間を利用してACKデータ等の確認データを送信してもよい。この場合、1回の返信帯104のみで、伝送ユニット1から第2制御端末222への制御データの送信と、第2制御端末222から伝送ユニット1への確認データの送信との両方を完了できる。そのため、帯域確保部17は、制御データを送信した送信帯103の次の送信帯103に確保データを再度送信する必要がない。
【0057】
また、上述したように伝送ユニット1の重畳通信部16は、伝送するデータのデータ量が多く1回の返信帯104で送信し切れなかった場合、次回の返信帯104に残りのデータを送信する。そこで、帯域確保部17は、第2端末22に送信するデータ量が多いほど返信帯104が長く確保されるように、第2端末22に送信するデータ量に応じて確保データの送信回数を可変とする。つまり、帯域確保部17は、第2端末22に送信するデータの送信に要する回数分の返信帯104を全て重畳信号の重畳用に確保するように、1ないし複数回の範囲で確保データの送信回数を決定する。
【0058】
たとえば1回の返信帯104で送信可能なデータ量であれば、帯域確保部17は確保データの送信回数を1回とし、2回の返信帯104で送信可能なデータ量であれば、帯域確保部17は確保データの送信回数を2回にする。これにより、1回の返信帯104で送信し切れない場合でも、重畳通信部16は、返信帯104にて第1端末21から伝送ユニット1に送信される返送データと重畳信号との干渉を回避しつつ、第2端末22に対して重畳信号を送信することができる。
【0059】
また、返送受信部13は、同一の返信帯104に複数台の第1監視端末211から返送データを受信した場合、アドレスにて予め決められている優先度が高い第1監視端末211からの返送データを優先する。つまり、複数台の第1監視端末211が偶々同一の割込帯105で割込信号を発生した場合に、その後の返信帯104でこれら複数台の第1監視端末211から同時に返送データが伝送ユニット1に送信されることがある。このような場合には、伝送ユニット1は、アドレスの数字が小さい第1監視端末211を優先して、この第1監視端末211からの返送データに従って動作する。
【0060】
そのため、伝送ユニット1は、たとえば制御テーブル上で第2端末22と対応付けられた返送データがあった場合でも、他の第1監視端末211からの返送データが優先される場合には、帯域確保部17から確保データを送信することはない。これにより、伝送ユニット1は、複数台の第1監視端末211から同一の返信帯104に返送データを受信した場合でも、必要に応じて確保データを送信することが可能になる。
【0061】
以下に、図1の通信システムにおいて、第1監視端末211で生じた監視入力に従って、第2制御端末222に接続された照明器具3を制御する場合の動作について、図5および図6を参照して説明する。ただし、図5および図6の「S21」〜「S25」の動作は、基本システムの動作について説明した図3および図4の「S11」〜「S15」と同じであるから、ここでは説明を省略する。
【0062】
伝送ユニット1は、第2フレームF2の「S25」において、第1監視端末211から監視データを返送データとして受信すると、この監視データ(負荷番号)に制御テーブル上で対応付けられているのが第1制御端末212か第2制御端末222かを判断する。このとき第2制御端末222に対応付けられていると判断すると、伝送ユニット1は、第3フレームF3の送信帯103において、帯域確保部17から確保データを送信する(図5および図6のS26)。
【0063】
これにより、確保データが送信された送信帯103の次の返信帯104は、重畳信号の重畳用に確保され、伝送ユニット1は、この(第3フレームF3の)返信帯104に重畳信号を用いて第2制御端末222に対して、制御データを送信する(S27)。制御データを受信した第2制御端末222は、制御データに従って照明器具3を調光制御、調色制御する。
【0064】
以上説明した通信システムによれば、伝送ユニット1が重畳通信部16を備え、且つ制御テーブルにて第1監視端末211のアドレスと第2制御端末222のアドレスとが対応付けられているので、第1端末21と第2端末22との間でデータの授受が可能になる。これにより、伝送ユニット1は、第1監視端末211で生じた監視入力に従って、第2制御端末222に接続された負荷(照明器具3)を制御することが可能になる。すなわち、本実施形態の通信システムによれば、第1端末21から伝送ユニット1に入力されたデータに基づいて第2端末22に接続された機器を制御可能であるような、フレキシブルなシステムへの応用が可能になる。具体的には、伝送ユニット1は、たとえば第1監視端末211からのスイッチのオンオフ状態を示す比較的データ量の少ない監視データに応じて、第2制御端末222に調光制御や調色制御といった比較的データ量の多い制御データを送信することができる。
【0065】
しかも、本実施形態では、伝送信号の返信帯を重畳信号の送信に用いており、伝送ユニット1は、第1端末21からの特定の返送データをトリガにして、次の返信帯104を重畳信号の重畳用に確保するための確保データを送信する帯域確保部17を備えている。そのため、重畳通信部16は、返信帯104にて第1端末21から伝送ユニット1に送信される返送データと重畳信号との干渉を回避しつつ、第2端末22に対して重畳信号を送信することができる。
【0066】
ところで、上記実施形態においては、帯域確保部17は、確保データを送信するためのトリガ(特定の返送データ)として監視データからなる返送データを用いているが、これに限らず、監視データ以外の返送データをトリガとして用いてもよい。
【0067】
一例として、帯域確保部17は、図7に示すように、アドレスサーチに応答して第1監視端末211が送信した自己のアドレス(下位ビット)からなる返送データを、確保データを送信するためのトリガとして用いる。これは、第1監視端末211がたとえばセンサの発報の有無を監視入力として監視するような構成において、第1監視端末211に固有のアドレスに一対一に第2制御端末222のアドレスが対応付けられている場合に有用である。つまり、この場合、第1監視端末211は、伝送ユニット1に対して負荷番号やオンオフの別からなる監視データを送信する必要がないので、自己のアドレスからなる返送データが第2制御端末222宛ての制御データに直接対応付けられることになる。
【0068】
図7の例では、伝送ユニット1は、第1フレームF1の割込帯105にて第1監視端末211で発生した割込信号を検出すると(図7のS31)、伝送信号の送信帯103に含まれるモードデータを通常モードから割込ポーリングモードに切り替える。割込ポーリングモードにおいては、伝送ユニット1は、返送要求部12にて、アドレスの上位ビットからなる返送要求データを伝送信号の送信帯103で送信し(S32)、アドレス(上位ビット)をサイクリックに変化させながらアドレスサーチを行う。割込信号を発生した第1監視端末211は、返送要求データ中のアドレス(上位ビット)が自己のアドレスの上位ビットに一致していれば、第1フレームF1の返信帯104にて自己のアドレスの下位ビットを返送データとして伝送ユニット1に送信する(S33)。これにより伝送ユニット1は、第1フレームF1において割込信号を発生した第1監視端末211のアドレスを、返送データとして返送受信部13にて受信することになる。
【0069】
伝送ユニット1は、第1監視端末211からアドレス(下位ビット)を返送データとして受信すると、このアドレスに制御テーブル上で対応付けられているのが第1制御端末212か第2制御端末222かを判断する。このとき第2制御端末222に対応付けられていると判断すると、伝送ユニット1は、次の第2フレームF2の送信帯103において、帯域確保部17から確保データを送信する(S34)。
【0070】
これにより、確保データが送信された送信帯103の次の返信帯104は、重畳信号の重畳用に確保され、伝送ユニット1は、この(第2フレームF2の)返信帯104に重畳信号を用いて第2制御端末222に対して、制御データを送信する(S35)。制御データを受信した第2制御端末222は、制御データに従って照明器具3を調光制御、調色制御する。
【0071】
このように、監視データ以外の返送データをトリガとして用いる場合でも、重畳通信部16は、返信帯104にて第1端末21から伝送ユニット1に送信される返送データと重畳信号との干渉を回避しつつ、第2端末22に対して重畳信号を送信することができる。
【0072】
(実施形態2)
本実施形態の通信システムは、第1監視端末211が、伝送信号に重畳される重畳信号を用いて通信を行う第2端末22としての機能も備えている点で、実施形態1の通信システムと相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0073】
本実施形態では、少なくとも一部の第1監視端末211が、重畳信号を用いた第2プロトコルの通信を行う重畳通信回路(図示せず)を備えている。そのため、伝送ユニット1は、第2端末22だけでなく、少なくとも一部の第1監視端末211との間でも、重畳通信部16により第2プロトコルの通信が可能である。重畳通信回路を備える第1監視端末211においては、伝送ユニット1に対して重畳信号を用いて監視データを送信したり、伝送ユニット1から重畳信号を用いて監視要求データを受信したりすることができる。
【0074】
以下に、本実施形態の通信システムにおいて、重畳通信回路を備える第1監視端末211で生じた監視入力に従って、第2制御端末222に接続された照明器具3を制御する場合の動作について、図8を参照して説明する。
【0075】
伝送ユニット1は、伝送信号の第1フレームF1の割込帯105にて第1監視端末211で発生した割込信号を検出すると(図8のS41)、伝送信号の送信帯103に含まれるモードデータを通常モードから割込ポーリングモードに切り替える。割込ポーリングモードにおいては、伝送ユニット1は、返送要求部12にて、アドレスの上位ビットからなる返送要求データを伝送信号の送信帯103で送信し(S42)、アドレス(上位ビット)をサイクリックに変化させながらアドレスサーチを行う。割込信号を発生した第1監視端末211は、返送要求データ中のアドレス(上位ビット)が自己のアドレスの上位ビットに一致していれば、第1フレームF1の返信帯104にて自己のアドレスの下位ビットを返送データとして伝送ユニット1に送信する(S43)。これにより伝送ユニット1は、第1フレームF1において割込信号を発生した第1監視端末211のアドレスを、返送データとして返送受信部13にて受信することになる。
【0076】
伝送ユニット1は、割込信号を発生した第1監視端末211のアドレスを取得すると、次の第2フレームF2の送信帯103にて、そのアドレスを指定して第1監視端末211に対して返送要求部12から返送要求データを送信する(S44)。ここで、返送要求データには重畳返信フラグが含まれており、返送要求部12は、重畳信号を用いた監視データの返信を要求する場合には、重畳返信フラグをオンするように動作する。具体的には、伝送ユニット1は、重畳通信回路を備えた第1監視端末211に対しては重畳返信フラグをオンするように、取得した第1監視端末211のアドレスに基づいて重畳返信フラグのオンオフを判断する。
【0077】
第1監視端末211は、自己のアドレスが指定された返送要求データを受信すると、重畳返信フラグを確認する。重畳返信フラグがオンであれば、第1監視端末211は、これに応答して、第2フレームF2の返信帯104にて監視入力に対応した負荷番号を含む監視データを返送データとして重畳信号を用いて伝送ユニット1に送信する(S45)。このとき、監視データは重畳信号を用いて送信されるので、第1監視端末211は、たとえば照度センサ等のセンサの計測値(照度等)など、比較的データ量の多い監視データを送信することができる。
【0078】
伝送ユニット1は、重畳通信部16にて監視データからなる返送データを受信すると、この監視データ(負荷番号)に制御テーブル上で対応付けられているのが第1制御端末212か第2制御端末222かを判断する。このとき第2制御端末222に対応付けられていると判断すると、伝送ユニット1は、次の第3フレームF3の送信帯103において、帯域確保部17から確保データを送信する(S46)。これにより、確保データが送信された送信帯103の次の返信帯104は、重畳信号の重畳用に確保され、伝送ユニット1は、この(第3フレームF3の)返信帯104に重畳信号を用いて第2制御端末222に対して、制御データを送信する(S47)。制御データを受信した第2制御端末222は、制御データに従って照明器具3を調光制御、調色制御する。
【0079】
次に、他の例として、伝送ユニット1から重畳信号を用いて監視要求データを第1監視端末211に送信する場合の動作について、図9を参照して説明する。ただし、図9の「S51」〜「S53」、「S58」〜「S59」の動作は、図8の「S41」〜「S43」、「S46」〜「S47」と同じであるから、ここでは説明を省略する。
【0080】
伝送ユニット1は、「S53」において、割込信号を発生した第1監視端末211のアドレスを取得すると、第2フレームF2の送信帯103にて、帯域確保部17から確保データを送信する(図9のS54)。これにより、確保データが送信された送信帯103の次の返信帯104は、重畳信号の重畳用に確保されるので、伝送ユニット1は、この(第2フレームF2の)返信帯104に重畳信号を用いて第1監視端末211に対して、監視要求データを送信する(S55)。ここでいう監視要求データは、第1監視端末211に対して監視データの内容を指示するデータであって、たとえば時間情報、センサ情報、位置情報などを細かく設定する。
【0081】
さらに、伝送ユニット1は、監視要求データを送信すると、次の返信帯104にて第1監視端末211から重畳信号を用いて監視データを受信するため、次の第3フレームF3の送信帯103において、帯域確保部17から確保データを送信する(S56)。監視要求データを受信した第1監視端末211は、確保データによって重畳信号の重畳用に確保された第3フレームF3の返信帯104に、監視要求データで指示された内容の監視データを返送データとして重畳信号を用いて伝送ユニット1に送信する(S57)。
【0082】
以上説明した構成の通信システムによれば、第1監視端末211は重畳信号を用いて監視データを伝送ユニット1に送信できるので、センサの計測値などの比較的データ量の多い監視データを送信することができる。また、伝送ユニット1は、第1監視端末211に対して重畳信号を用いて監視要求データを送信できるので、必要な監視データの内容を比較的細かく設定することができる。
【0083】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0084】
なお、上記各実施形態においては、重畳通信部16が伝送ユニット1に内蔵される構成を例示したが、これに限らず、重畳通信部は、伝送ユニット1と別体に設けられ、伝送ユニットと接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 伝送ユニット
10 通信線
11 伝送通信部
12 返送要求部
13 返送受信部
16 重畳通信部
17 帯域確保部
103 送信帯
104 返信帯
105 割込帯
211(21) 第1監視端末(第1端末)
212(21) 第1制御端末(第1端末)
221(22) 第2監視端末(第2端末)
222(22) 第2制御端末(第2端末)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信線に伝送信号を繰り返し送出する伝送ユニットと、前記伝送信号を用いて通信する第1端末と、前記伝送信号に重畳される重畳信号を用いて通信する第2端末とが前記通信線に接続された通信システムであって、
前記伝送信号は、1フレームごとに時間軸方向において、前記第1端末で発生する割込信号の有無を検出するための割込帯と、前記第1端末にデータを伝送するための送信帯と、前記第1端末からの返送データを受信するためのタイムスロットである返信帯とを含む複数の領域に分割された時分割方式の信号からなり、
前記伝送ユニットは、
前記割込帯に前記割込信号を検出すると、次の前記送信帯で前記第1端末に対して前記伝送信号により返送要求データを送信する返送要求部と、
前記割込信号を発生した前記第1端末が前記返送要求データに応答して次の前記返信帯で前記伝送信号により送信する前記返送データを受信する返送受信部と、
特定の前記返送データをトリガにして、前記送信帯において次の前記返信帯での前記返送データの送信を禁止することにより当該返信帯を前記重畳信号の重畳用に確保する確保データを前記伝送信号により送信する帯域確保部と、
前記確保データにて確保された前記返信帯に前記第2端末に対して前記重畳信号によりデータを送信する重畳通信部と
を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記帯域確保部は、前記第2端末に送信するデータ量が多いほど前記返信帯が長く確保されるように、前記第2端末に送信するデータ量に応じて前記確保データの送信回数を1ないし複数回の範囲で決定することを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記第2端末が前記重畳通信部からの前記データに応答して確認データを前記重畳通信部に送信する場合、
前記帯域確保部は、前記重畳通信部から前記データを送信した前記送信帯の次の前記送信帯において前記確保データを再度送信し、当該送信帯の次の前記返信帯を前記確認データの受信用に確保することを特徴とする請求項1または2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記返送受信部は、同一の前記返信帯に複数の前記第1端末から前記返送データを受信した場合、アドレスにて予め決められている優先度が高い前記第1端末からの返送データを優先することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項5】
伝送信号を用いて通信する第1端末と、前記伝送信号に重畳される重畳信号を用いて通信する第2端末とが通信線に接続された通信システムに用いられ、
1フレームごとに時間軸方向において、前記第1端末で発生する割込信号の有無を検出するための割込帯と、前記第1端末にデータを伝送するための送信帯と、前記第1端末からの返送データを受信するためのタイムスロットである返信帯とを含む複数の領域に分割された時分割方式の信号からなる前記伝送信号を前記通信線に繰り返し送出する伝送通信部と、
前記割込帯に前記割込信号を検出すると、次の前記送信帯で前記第1端末に対して前記伝送信号により返送要求データを送信する返送要求部と、
前記割込信号を発生した前記第1端末が前記返送要求データに応答して次の前記返信帯で前記伝送信号により送信する前記返送データを受信する返送受信部と、
特定の前記返送データをトリガにして、前記送信帯において次の前記返信帯での前記返送データの送信を禁止することにより当該返信帯を前記重畳信号の重畳用に確保する確保データを前記伝送信号により送信する帯域確保部と、
前記確保データにて確保された前記返信帯に前記第2端末に対して前記重畳信号によりデータを送信する重畳通信部と
を備えることを特徴とする伝送ユニット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−102306(P2013−102306A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244011(P2011−244011)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】