説明

通信ネットワークの監視制御装置

【課題】ネットワークを介して通信ノードへの制御パラメータの遠隔設定を容易にした監視制御装置を提供する。
【解決手段】制御端末から受信した要求メッセージに従って、一連の制御コマンドを生成し、これらの制御コマンドを特定の通信ノードに送信する制御部と、通信ノードに送信された制御コマンドを順次に記憶するためのメモリとを有する監視制御装置において、上記制御部が、送信した制御コマンドに対する応答を確認して次の制御コマンドを送信する形式で一連の制御コマンドを通信ノードに送信し、途中でトラブルが発生した場合、メモリに記憶された送信済みの制御コマンドに基いて、通信ノードを制御コマンド実行前の状態に戻すための新たな制御コマンドを生成し、これを通信ノードに送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信ネットワークの監視制御装置に関し、更に詳しくは、通信ネットワークを形成する通信ノードに対して、各種の制御パラメータを設定するための制御コマンドのトランザクション管理機能を備えた監視制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットに代表される広域ネットワークとユーザ端末装置の普及に伴って、ユーザ端末を広域ネットワークに接続するためのアクセス網が広帯域化し、ネットワークを構成する通信ノード装置の個数も急速に増加している。
【0003】
多数のユーザ端末を広域網に接続可能な広帯域アクセス網として、例えば、非特許文献1に記載されたPON(Passive Optical Network)が知られている。PONでは、広域網と通信する局側装置(OLT:Optical Line Terminal)に少なくとも1本の光ファイバを収容し、該光ファイバを光スプリッタで複数の支線光ファイバに分岐し、各支線光ファイバに加入者接続装置(ONU:Optical Network Unit)を介してユーザ端末を接続している。局側装置は、各光ファイバから受信したユーザパケットを広域網との接続回線に中継すると共に、広域網から受信したパケットをその宛先アドレスに従って、光ファイバに選択的に中継する。
【0004】
PONの場合、新たな加入者接続装置、または新たなユーザ端末が接続されると、局側装置で上記ユーザ端末用の新たな通信パスを設定する必要がある。また、ユーザが設定済みのパスについて帯域変更を希望した場合は、パス識別子を指定して、局側装置に現在の帯域を新たな帯域に変更するための指令を与える必要がある。
【0005】
通常、これらのパス設定や帯域変更は、PON管理者の制御端末から監視制御装置に要求メッセージを送信し、監視制御装置が、上記要求メッセージで指定された特定の局側装置に対して、要求に応じた一連の制御コマンドを送信することよって達成される。例えば、加入者接続装置側の終端点Aと局側装置側の終端点Bとの間に、或る帯域Cをもつ新たなパスPを設定する場合、監視制御装置から局側装置に、少なくとも終端点Aの設定コマンドと、終端点Bの設定コマンドと、帯域Cの設定コマンドを次々と送信する。
【0006】
上述したPONにおける局側装置に限らず、通信ネットワークを形成するノード装置に対して、パケット転送制御に必要な制御パラメータを遠隔設定/変更する場合、監視制御装置と目的ノード装置との間で、これと類似した一連の制御コマンドのトランザクションが必要となる。
【0007】
【非特許文献1】ITU−T勧告G.983.1 “Broadband Optical Access System based on Passive Optical Networks (PON)”
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
監視制御装置からネットワークを介して一連の制御コマンドを送信することによって、通信ノードにパケット転送制御に必要な制御パラメータの設定/変更を行う場合、監視制御装置側でこれらの制御コマンドのトランザクションを管理しておき、例えば、N個の制御コマンドの送信によって完結する制御パラメータの設定手順において、途中で何らかのトラブルが発生した場合、監視制御装置が、通信ノードの状態を制御コマンド実行前の状態に戻すための取消しコマンド群を送信する必要がある。
【0009】
PONの場合、監視制御装置と制御パラメータ設定対象となる局側装置は、例えば、Bellcore GR-831で規定されたテキストベースのTransaction Language 1(TL1)プロトコルをサポートしており、監視制御装置は、TL1プロトコルで各局側装置の状態監視と遠隔制御を行っている。しかしながら、従来のPON用の監視制御装置では、局側装置に送信する制御コマンド毎に、分岐命令によってトランザクションを管理し、トラブル発生時の復旧処理に備えている。この場合、監視制御装置における制御コマンドのトランザクション管理が複雑化し、トランザクション制御プログラムの汎用性に問題があった。
【0010】
本発明の目的は、通信ノードへの制御パラメータの遠隔設定を容易にした監視制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の監視制御装置は、制御端末から受信した通信ノード識別情報と制御情報とを含む要求メッセージに従って、一連の制御コマンドを生成し、これらの制御コマンドを上記通信ノード識別情報が示す特定の通信ノードに送信する制御部と、通信ノードに送信された制御コマンドを順次に記憶するためのメモリとを有し、
上記制御部が、送信された制御コマンドに対する上記特定通信ノードからの応答を確認して次の制御コマンドを送信する形式で、上記一連の制御コマンドを上記特定通信ノードに送信し、何れかの制御コマンドの送信後に上記特定通信ノードでトラブルが発生した場合、上記メモリに記憶された送信済みの制御コマンドに基いて、上記特定通信ノードの状態を該制御コマンド実行前の状態に戻すための新たな制御コマンドを生成して、上記特定通信ノードに送信することを特徴とする。
【0012】
更に詳述すると、本発明の監視制御装置は、上記制御部が、制御端末が発行した要求メッセージを受け付ける要求受付部と、上記要求メッセージに従って一連の制御コマンドを生成し、生成された制御コマンドを上記メモリに記憶すると共に、上記特定通信ノードに送信する要求実行部と、トラブル発生時に上記要求実行部からの要求に応じて、上記メモリから送信済の制御コマンドを読み込み、前記特定通信ノードの状態を元の状態に戻すための新たな制御コマンドを生成する打消しコマンド生成部とを備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の1実施例では、上記制御部が、上記メモリに制御コマンドを送信順に記憶するための管理スタックを形成するトランザクション管理部を有し、上記要求実行部が、上記トランザクション管理部に要求メッセージと対応する新たな管理スタックの形成を要求し、この管理スタックに、上記特定通信ノードに送信した制御コマンドを記憶することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の1実施例では、上記要求実行部が、上記管理スタックに、各制御コマンドと該制御コマンド実行前の制御パラメータの状態を示す状態情報とを含むトランザクションエントリを蓄積し、上記打消しコマンド生成部が、各トランザクションエントリが示す前状態情報に応じて、上記特定通信ノードの状態を元の状態に戻すための新たな制御コマンドを生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、通信ノードへの制御パラメータの設定過程でトラブルが発生した場合でも、メモリ(管理スタック)に蓄積された送信済み制御コマンドを利用して、通信ノードの状態を元の状態に戻すための新たな制御コマンドを生成することができるため、トランザクション制御と通信ノードへの制御パラメータの遠隔設定を容易に実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の監視制御装置が適用される通信ネットワークの1例として、PON(Passive Optical Network)を含む通信ネットワークを示す。
【0017】
図において、10(10−1〜10−j)は加入者接続装置(ONU:Optical Network Unit)、20(20−1〜20−m)は局側装置(OLT:Optical Line Terminal)、30は、データ通信網NW1を介して各局側装置20と通信可能な監視制御装置、50(50A〜50P)は、ネットワークNW2を介して監視制御装置30と通信可能な制御端末を示す。ここでは、各制御端末50が専用のネットワークNW2を介して監視制御装置30と接続されているが、各制御端末50と監視制御装置30は、データ通信網NW−1を介して接続されてもよい。
【0018】
局側装置20−1は、複数の光ファイバ15(15−1〜15−n)を収容しており、各光ファイバは、光スプリッタ13によって複数の支線光ファイバ16(16−1〜16−j)に分岐され、支線光ファイバ16を介して加入者接続装置10に接続されている。局側装置20−1は、回線L1によって、図示しない広域ネットワークのサービスノードに接続され、各加入者接続装置10は、回線11(11−1〜11−j)によって、図示しないユーザ端末と接続されている。他の局側装置20−mも、局側装置20−1と同様のネットワーク構成で、光ファイバを介して複数の加入者接続装置に接続され、回線Lmによって、広域ネットワークとのサービスノードに接続されている。
【0019】
図2は、局側装置20−1の構成を示すブロック図である。
局側装置20−1は、プロセッサ21と、プロセッサ21が実行する各種の制御ルーチンとデータが格納されるメモリ22と、データ通信網NW1を介して監視制御装置30と交信するための監視制御装置インタフェース23と、それぞれ光ファイバ15(15−1〜15−n)と接続された複数のアクセス回線インタフェース24(24−1〜24−n)と、回線L1を介して広域ネットワークのサービスノードと交信するためのサービスノードインタフェース25とからなっている。
【0020】
アクセス回線インタフェース24は、PONのプロトコルに従って各加入者接続装置とパケット通信を行うための制御機能を備える。本実施例において、プロセッサ21は、監視制御装置インタフェース23を介して、監視制御装置30と各種の制御メッセージを送受信し、ユーザパケットの転送制御に必要な制御パラメータを上記各アクセス回線インタフェース24に設定する。尚、これらの制御メッセージは、例えば、Bellcore GR-831で規定されたTransaction Language 1(TL1)プロトコルに従って処理される。
【0021】
図3は、監視制御装置30の1実施例を示すプロック構成図である。
監視制御装置30は、プロセッサ(制御部)31と、ネットワークNW2を介して制御端末50(50A〜50P)と交信するための制御端末インタフェース32と、データ通信網NW1を介して制御対象通信ノード(本実施例では、局側装置群)と交信するためのネットワークインタフェース33と、プロセッサ31が実行する各種のプログラムが格納されるプログラムメモリ34と、管理スタックメモリ35と、データメモリ36とからなる。但し、制御端末50(50A〜50P)が、データ通信網NW1を介して監視制御装置と交信する場合、制御端末インタフェース32は不要となる。
【0022】
プログラムメモリ34には、本発明に関係するプログラムとして、要求受付部41と、制御端末50からの要求メッセージの種別に応じて選択される複数種類の要求実行部42と、打消しコマンド生成部43と、トランザクション管理部44が用意されている。また、データメモリ36には、要求実行42が参照するコマンドIDレジスタ45およびパスIDレジスタ46と、トランザクション管理44が参照するトランザクション管理テーブル47と、その他のデータテーブルが形成されている。
【0023】
本実施例では、制御端末50から、制御対象となる通信ノード(被制御通信ノード)を指定した形で、制御パラメータの設定/変更のための要求メッセージを送信すると、監視制御装置30の制御部(プロセッサ31)が、要求受付部41を実行して要求種別を判定し、要求種別に対応した要求実行部42を起動する。起動された要求実行部42は、トランザクション管理部44に新たな管理スタックの生成を要求する。
【0024】
管理スタックメモリ35に新たな管理スタックが生成されると、要求実行部42は、後述するように、要求メッセージの内容に従って一連の制御コマンドを生成する。監視制御装置30(要求実行部42)は、1つの制御コマンドを管理スタックに格納した後、この制御コマンドを含む制御メッセージを通信ノードに送信し、通信ノードからの応答メッセージACKを待って、次の制御コマンドの管理スタックへの格納と、この制御コマンドを含む制御メッセージの通信ノードへの送信を行う形式で、これらの制御コマンドを次々と通信ノードに送信する。
【0025】
本発明の1つの特徴は、要求実行部42が、通信ノードに送信した制御コマンドを送信順にメモリ35内の管理スタックに記憶しておき、通信ノードから正常応答が得られなかった場合、打消しコマンド生成部43によって、管理スタックに記憶された送信済みの制御コマンド群から、通信ノードの状態を制御コマンド実行前の状態に戻すための取消し制御コマンド群を生成し、これを通信ノードに次々と送信するようにしたことにある。
【0026】
図4は、トランザクション管理部44が参照するトランザクション管理テーブル47の内容と、管理スタックメモリ35に生成されるトランザクション管理スタックとの関係を示す。
トランザクション管理テーブル47は、予め用意されたトランザクションID471と対応して、トランザクションIDの使用状態を示す状態フラグ472を記憶している。
【0027】
トランザクション管理部44は、要求実行部42から新たな管理スタックの生成を要求されると、トランザクション管理テーブル47から空き状態(“0”)にあるトランザクションIDを検索し、状態フラグ472を使用状態(“1”)に変更した後、管理スタックメモリ35に、上記トランザクションIDを持つトランザクション管理スタック(領域351または353)を生成する。メモリ35内の各トランザクション管理スタックは、通信ノードへの一連の制御コマンドの送信が正常終了した時、あるいは、取消し制御コマンド群による通信ノード制御パラメータの状態復帰が完了した時、要求実行部42からの指示に従って解放され、解放されたスタックのトランザクションIDと対応する状態フラグが空き状態(“0”)に変更される。
【0028】
図5は、制御端末50に表示される要求情報入力画面の1例を示す。
制御端末50の表示画面には、ネットワーク管理者が選択した要求種別(トランザクション種別)501に応じて、各種制御パラメータの入力画面が表示される。例えば、PONの局側装置に特定ユーザ端末用の新たなパスを設定する場合、パスの一方の終端点A、例えば、UNI(User Network Interface)側終端点の入力欄502と、パスの他方の終端点B、例えば、NNI(Node Network Interface)側終端点の入力欄503と、パスに割り当てるべき帯域の入力欄504と、これらの制御パラメータの設定先を示す装置IDの入力欄505とからなる入力画面が表示される。
【0029】
図示した例では、装置ID:505で図1の局側装置20−1の識別子「NE(20−1)」、終端点A:502で、何れかの加入者接続装置のユーザ回線インタフェースの識別子「ONU、1−1−3」、終端点B:503で、局側装置20−1が備えるアクセス回線インタフェースの識別子「IF、1−1」、割当て帯域504で、終端点A−B間のパスに割り当てるべき帯域の値「100M bit/s」が指定されている。
【0030】
図6は、制御端末50から、図5の要求情報入力画面が示す制御情報を含む要求メッセージを受信した時、監視制御装置30の制御部(プロセッサ31)が実行するトランザクション管理動作と、監視制御装置30と被制御通信ノード(局側装置20−1)との間での制御メッセージの通信シーケンスの1例を示す。
【0031】
また、図7は、管理スタックメモリ35に蓄積されるトランザクション管理スタックの1例を示す。トランザクション管理スタック351には、コマンド内容60と、コマンド実行前の制御パラメータの状態を示す前状態61とからなるトランザクションエントリ351−1、352−2、・・・が発生順に蓄積される。
【0032】
制御端末50からパス設定用の要求メッセージを受信すると、プロセッサ31は、要求受付部41によってパス設定用の要求実行部42を起動する。
要求受付部41によって起動されたパス設定用の要求実行部42は、トランザクション管理部44に新たな管理スタックの生成を要求する(SQ1)。この要求を受けたトランザクション管理部44は、空き状態のトランザクションIDを検索し、管理スタックメモリ35に、新たなトランザクション管理スタック領域を生成して(SQ2)、上記トランザクションIDを要求実行部42に通知する(SQ3)。
【0033】
トランザクションIDの通知を受けた要求実行部42は、上記要求メッセージが示す制御情報に従って、コマンド内容60に終端点Aの設定コマンドを含み、前状態61が空欄(null)の第1のトランザクションエントリ351−1を生成し、これを上記トランザクションIDが示す管理スタックに格納する(SQ4)。図7に示した第1のトランザクションエントリ351−1において、コマンド名60Aは、終端点設定コマンドの名称「ENT-CRS」、アドレス60Bは、終端点Aのアドレス「1-1-3-ONU」、コマンドID:60Cは、各トランザクションエントリ(制御コマンド)に生成順に与えられるコマンドID値「C21」、制御パラメータ60Dは、設定されるパスの識別子「VPI=25」を示している。コマンドIDとパス識別子の値は、メモリ36のコマンドIDレジスタ45とパスIDレジスタ46が示すID値を順次に更新することによって得られる。
【0034】
上記トランザクションエントリ351−1のスタックを終えた要求実行部42は、上記コマンド内容60を含む第1の制御メッセージを上記要求メッセージの通信ノード識別情報(装置ID505)で特定された被制御通信ノード(局側装置20−1)に送信し(SQ5)、局側装置20−1からの応答を待つ。
【0035】
局側装置20−1からACKメッセージを受信すると(SQ6)、要求実行部42は、制御端末50からの要求メッセージが示す制御情報に従って、コマンド内容60に終端点Bの設定コマンドを含み、前状態61が空欄(null)の第2のトランザクションエントリ351−2を生成し、これを上記トランザクションIDが示す管理スタックに格納する(SQ7)。図7に示した第2のトランザクションエントリ351−2において、コマンド名60Aは、終端点設定コマンドの名称「ENT-CRS」、アドレス60Bは、終端点Bのアドレス「1-1-IF」、コマンドID:60Cは、第1トランザクションエントリ351−2の次のコマンドID値「C22」、制御パラメータ60Cは、第1トランザクションエントリ351−2と同じパスの識別子「VPI=25」を示している。
【0036】
第2のトランザクションエントリ351−2のスタックを終えた要求実行部42は、上記コマンド内容60を含む第2の制御メッセージを局側装置20−1に送信し(SQ8)、局側装置20−1からの応答を待つ。
局側装置20−1からACKメッセージを受信すると(SQ9)、要求実行部42は、制御端末50からの要求メッセージが示す制御情報に従って、コマンド内容60に終帯域設定コマンドを含み、前状態61が帯域の前状態値「0」を示す第3のトランザクションエントリ351−3を生成し、これを上記トランザクションIDが示す管理スタックに格納する(SQ10)。図7に示した第3のトランザクションエントリ351−3において、コマンド名60Aは、帯域設定コマンドのコマンド名「SET-BW」、アドレス60Bは、パス識別子の値「25」、コマンドID:60Cは、第2トランザクションエントリ351−2の次のコマンドID値「C23」、制御パラメータ60Dは、帯域の設定値「100」Mbit/sを示している。
【0037】
第3のトランザクションエントリ351−3のスタックを終えた要求実行部42は、上記コマンド内容60を含む第3の制御メッセージを局側装置20−1に送信し(SQ11)、局側装置20−1からの応答を待つ。局側装置20−1から上記第3の制御メッセージに対するACKメッセージを受信すると(SQ12)、終端点A、B間に100Mbit/sの帯域を設定するための一連のトランザクションが完了する。この時、要求実行部42は、トランザクションIDを指定して、トランザクション管理部44に管理スタックの解放を要求する(SQ31)。トランザクション管理部44は、上記要求に応答して、管理スタックメモリ35からトランザクションIDで指定された管理スタックを削除し(SQ32)、トランザクション管理テーブル47内の上記トランザクションIDと対応する状態フラグを空状態「0」に戻す。
【0038】
図8は、要求実行部42と被制御通信ノード(局側装置20−1)との間で実行される一連のトランザクションの途中で何らかの障害が発生した場合の監視制御装置30の動作を示す。ここでは、図7における第2の制御メッセージ(SQ7)に対して、局側装置20−1が無応答、または拒否メッセージNAKを返送(SQ9)した場合の監視制御装置30の動作について説明する。この場合、図7に示したトランザクション管理スタック351では、第1、第2のトランザクションエントリ351−1、351−2がスタックされ、第3のトランザクションエントリ351−3は未スタックの状態にある。
【0039】
第2の制御メッセージを送信した後、所定時間内に局側装置20−1からの応答メッセージを受信できなかった場合、または、局側装置20−1から拒否メッセージNAKを受信した場合、要求実行部42は、トランザクションIDを指定して、打消しコマンド生成部43に打消しコマンドの生成を要求する(SQ21)。
【0040】
要求実行部42から打消しコマンド生成要求が発行されると、打消しコマンド生成部43は、トランザクションIDで特定されるトランザクション管理スタック351から、最上位にあるトランザクションエントリ、この例では、図7の第2のトランザクションエントリ351−2を読み込む(SQ22)。第2のトランザクションエントリは、局側装置20−1への設定に失敗したエントリであるため、打消しコマンド生成部43は、これを廃棄した後、トランザクション管理スタック351から次のエントリ(この例では、第1のトランザクションエントリ351−1)を読み込む(SQ23)。
【0041】
打消しコマンド生成部43は、上記第1のトランザクションエントリ351−1の前状態61を判定し、前状態61が「null」となっているため、上記第1のトランザクションエントリのコマンド名60Aを削除コマンド「DLT-CRS」に置き換えることによって終端点削除コマンドを生成し、これを要求実行部42に渡す(SQ24)。
【0042】
要求実行部42は、打消しコマンド生成部43が生成した端点削除コマンドを含む制御メッセージを局側装置20−1に送信し(SQ25)、局側装置20−1からの応答を待つ。局側装置20−1から応答メッセージACKを受信すると、要求実行部42は、打消しコマンド生成部43に次の打消しコマンドの生成を要求する。ここに示した例では、上記第1のトランザクションエントリ351−1が、管理スタックのボトムエントリであり、管理スタックには次に読み出すべきトランザクションエントリが存在していないため、打消しコマンド生成部43は、要求実行部42にトランザクションの終了を通知する。
【0043】
打消しコマンド生成部43からトランザクションの終了を通知された要求実行部42は、トランザクションIDを指定して、トランザクション管理部44に管理スタックの解放を要求する(SQ31)。トランザクション管理部44は、上記要求に応答して、管理スタックメモリ35からトランザクションIDで指定された管理スタックを削除し(SQ32)、トランザクション管理テーブル47内の上記トランザクションIDと対応する状態フラグを空状態「0」に戻す。
【0044】
図9は、打消しコマンド生成部43の機能を示すフローチャートである。
要求実行部42から打消しコマンド生成要求が発行されると、プロセッサ31は、要求実行部42が指定したトランザクションIDをもつトランザクション管理スタックから、最上位にあるトランザクションエントリを読み込む(431)。トランザクションスタックに読み出すべきエントリが残っていない場合、即ち、打消しのためのトランザクションが既に完了していた場合(432)、プロセッサ31は、要求実行部42にトランザクションの終了を通知し(439)、打消しコマンド生成部43による処理を終了する。
【0045】
トランザクション管理スタックから新たなエントリが読み込まれた場合、プロセッサ31は、このエントリが、トランザクション管理スタックから読み込んだ最初のエントリ、すなわち、設定に失敗したトランザクションエントリか否かを判定する(433)。失敗エントリであれば、プロセッサ31は、ステップ431に戻って、トランザクション管理スタックから次のエントリを読み込み、上記と同様の動作を繰り返す。
【0046】
読み込んだエントリが失敗エントリでなければ、プロセッサ31は、このエントリの前状態61が「null」か否かを判定する(434)。前状態61が「null」の場合、プロセッサは、該エントリのコマンド名60Aを書き換えることによって、削除コマンドを生成し(435)、前状態61が「null」でなければ、例えば、上記エントリの制御パラメータ60Dの指定値を前状態が示す値に書き換えることによって、前状態設定用のコマンドを生成する(436)。
【0047】
プロセッサ21は、上記削除コマンドまたは前状態設定用コマンドを要求実行部42に渡し(437)、要求実行部42からの次の打消しコマンド生成要求を待つ(438)。要求実行部42からの次の打消しコマンド生成要求が発生すると、プロセッサ31は、ステップ431で、トランザクション管理スタックから次のエントリを読み込み、処理すべきトランザクションエントリが無くなる迄、上述した動作を繰り返す。
【0048】
上述した実施例によれば、監視制御装置30から被制御通信ノードに送信した第1の制御メッセージで何らかの障害が発生した場合は、打消しコマンド生成部43がトランザクション管理スタックから最初のエントリを読み込んだ時点で、トランザクションの終了通知が発行されるため、監視制御装置30は、被制御通信ノードに削除コマンド用または前状態設定用の制御メッセージを送信することなく、トランザクション管理スタックを解放できる。
【0049】
また、監視制御装置30が送信した第2制御メッセージ以降の制御メッセージで障害が発生した場合は、打消しコマンド生成部43が、トランザクション管理スタックに蓄積されたエントリから、削除コマンドまたは前状態設定用のコマンド群を生成し、要求実行部42がこれらのコマンドを含む制御メッセージを次々と送信することによって、被制御通信ノードの制御パラメータの設定状態を元の状態に戻すことが可能となる。
【0050】
尚、管理スタックへのトランザクションエントリ(制御コマンド)の格納は、要求実行部42が被制御通信ノードから応答メッセージACKを受信した後で行うようにしてもよい。この場合、トランザクション管理スタックにはトランザクション成功エントリのみが存在するため、打消しコマンド生成部43は、トランザクション管理スタックから読み込んだ全てのエントリを上述した削除コマンドまたは前状態設定用コマンドの生成対象とすることができる。
【0051】
実施例では、PONを構成する局側装置を被制御通信ノードとして、本発明の監視制御装置が備える制御コマンドのトランザクション機能について説明したが、本発明による監視制御装置は、通信ネットワークを形成する上述したPON局側装置以外の他の通信ノードに対して制御コマンドを送信する場合にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明が適用される通信ネットワークの1例を示す図。
【図2】図1における局側装置20−1の構成を示すブロック図。
【図3】図1における監視制御装置30の1実施例を示すブロック構成図。
【図4】図3のトランザクション管理部が参照するトランザクション管理テーブル47と管理スタックメモリ35に生成されるトランザクション管理スタックとの関係を示す図。
【図5】制御端末50に表示される要求情報入力画面の1例を示す図。
【図6】監視制御装置30の制御部が実行するトランザクション管理動作と、監視制御装置30と被制御通信ノードとの間での制御メッセージの通信シーケンスの1例を示す図。
【図7】管理スタックメモリ35に蓄積されるトランザクション管理スタックの1例を示す図。
【図8】トランザクション障害が発生した場合の監視制御装置30の動作を示す図。
【図9】監視制御装置30が備える打消しコマンド生成部43の機能を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0053】
10:加入者接続装置、20:局側装置、30:監視制御装置、50:制御端末、31:プロセッサ、32:制御端末インタフェース、33:ネットワークインタフェース、35:管理スタックメモリ、41:要求受付部、42:要求実行部、43:打消しコマンド生成部、44:トランザクション管理部、47:トランザクション管理テーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワークを介して複数の通信ノードに接続され、制御端末からの要求に応じて上記通信ノードの何れかにパケット転送制御のための制御パラメータを遠隔設定する監視制御装置であって、
上記制御端末から受信した通信ノード識別情報と制御情報とを含む要求メッセージに従って、一連の制御コマンドを生成し、これらの制御コマンドを上記通信ノード識別情報が示す特定の通信ノードに送信する制御部と、
通信ノードに送信された制御コマンドを順次に記憶するためのメモリとを有し、
上記制御部が、送信された制御コマンドに対する上記特定通信ノードからの応答を確認して次の制御コマンドを送信する形式で、上記一連の制御コマンドを上記特定通信ノードに送信し、何れかの制御コマンドの送信後に上記特定通信ノードでトラブルが発生した場合、上記メモリに記憶された送信済みの制御コマンドに基いて、上記特定通信ノードの状態を該制御コマンド実行前の状態に戻すための新たな制御コマンドを生成して、上記特定通信ノードに送信することを特徴とする監視制御装置。
【請求項2】
前記制御部が、
前記制御端末が発行した要求メッセージを受け付ける要求受付部と、
上記要求メッセージに従って一連の制御コマンドを生成し、各制御コマンドを前記メモリに記憶すると共に、前記特定通信ノードに送信する要求実行部と、
トラブル発生時に上記要求実行部からの要求に応じて、上記メモリから送信済の制御コマンドを読み込み、前記特定通信ノードの状態を元の状態に戻すための新たな制御コマンドを生成する打消しコマンド生成部とを有することを特徴とする請求項1に記載の監視制御装置。
【請求項3】
前記制御部が、前記メモリに制御コマンドを送信順に記憶するための管理スタックを形成するトランザクション管理部を有し、
前記要求実行部が、上記トランザクション管理部に前記要求メッセージと対応する新たな管理スタックの形成を要求し、上記管理スタックに、前記特定通信ノードに送信した制御コマンドを記憶することを特徴とする請求項2に記載の監視制御装置。
【請求項4】
前記要求実行部が、前記管理スタックに、各制御コマンドと該制御コマンドの実行前の制御パラメータの状態を示す状態情報とを含むトランザクションエントリを蓄積し、
前記打消しコマンド生成部が、各トランザクションエントリが示す前状態情報に応じて、前記特定通信ノードの状態を元の状態に戻すための新たな制御コマンドを生成することを特徴とする請求項3に記載の監視制御装置。
【請求項5】
前記打消しコマンド生成部が、前記管理スタックに蓄積された最上位のトランザクションエントリを無視し、前記要求実行部からの要求に応答して、該管理スタックの上位から順にトランザクションエントリを読み込み、前記特定通信ノードの状態を元の状態に戻すための新たな制御コマンドを生成することを特徴とする請求項4に記載の監視制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−194785(P2007−194785A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−9595(P2006−9595)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000153465)株式会社日立コミュニケーションテクノロジー (770)
【Fターム(参考)】