説明

通信ネットワークシステム、および同システムにおける中継装置、ならびに中継処理プログラム

【課題】固定でIPアドレスが割り当てられることを前提に構築された既設のネットワークに、動的にIPアドレスが割り当てられるネットワークを組み込む際の既設の設備の改変を不要にする。
【解決手段】第1のネットワークセグメント(ローカルエリアセグメント10)と第2のネットワークセグメント(ワイドエリアセグメント20)との間に接続された中継装置17が、第2の端末群(ワイドエリアネットワーク用端末14)に動的に割り当てられるIPアドレスを、第1のネットワークセグメントの一部としての仮想IPアドレスに置換え、管理サーバ13と第2の端末群との間で送受信される電文を中継する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、ガス、電気、水道等の検針や、遮断、復帰等の制御を通信ネットワーク経由で行なうアプリケーションに用いて好適な、通信ネットワークシステム、および同システムにおける中継装置、ならびに中継処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、家庭にあるLPガスの検針を集中管理するガス検針システムでは、アナログやデジタルの電話回線経由で遠隔地からユーザ宅に無鳴動で電話を入れ、その応答を得ることで自動検針を行っていた。この電話回線を使用した自動検針システムによれば、検針実行の間、電話回線を占有することになり、また、複数の家庭を対象にした場合、検針にかかる時間が長くなる等の不都合が発生する。これを解決するために従来、IP(Internet
Protocol)ネットワーク経由で検針を行う自動検針システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示されたIPネットワークを使用した自動検針システムにおいて、各IP端末は、個体識別のための端末IDと固定のIPアドレスを有する。そして、その内容は、固定でIPアドレスが割り当てられた管理サーバの記憶装置に登録され、ここで関連付けられた端末IDとIPアドレスとにより、端末管理センターが管理運営する管理サーバと複数のIP端末間でIPネットワークを使用した相互通信を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−27569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したIPネットワークを使用した自動検針システムでは、ワイドエリアネットワーク(WAN:Wide Area Network)で一般的に使用されている動的IPアドレス割り当てに対応するために、IP端末に割り当てられるIPアドレスが動的に変化した場合、もしくは、定期的にIPアドレスの通知がIP端末から管理サーバに対して行なわれる。管理サーバは、このIPアドレスを受信して記憶装置に登録することで、IP端末に動的に割り当てられるIPアドレスを管理して通信を行っている。
【0006】
しかしながら、固定でIPアドレスが割り当てられることを前提に構築された既設の自動検針システムで動的に割り当てられるIPアドレスに対応するためには、設備の改変が必要になり、改変コストが必要になる他に改変リスクが伴う。また、管理サーバ側で、動的なIPアドレスに対応するために本来不要な通信が必要になり、その結果、通信トラフィックが増大して通信コストが嵩む。
【0007】
本発明は上記した課題を解決するためになされたものであり、固定でIPアドレスが割り当てられることを前提に構築された既設のネットワークに、動的にIPアドレスが割り当てられるネットワークを組み込む際に、設備の改変を不要として通信トラフィックの増大を防ぎ、低いコストで検針等のアプリケーションを実行可能な、通信ネットワークシステム、および同システムにおける中継装置、ならびに中継処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために本発明の第1の観点に係る通信ネットワークシステムは、固定IPアドレスが割り当てられた第1の端末群が第1の通信ネットワーク経由で管理サーバに接続される第1のネットワークセグメントと、前記IPアドレスが動的に割り当てられる第2の端末群が第2の通信ネットワーク経由で前記管理サーバに接続される第2のネットワークセグメントとからなる通信ネットワークシステムである。この通信ネットワークシステムにおいて、前記第1のネットワークセグメントと前記第2のネットワークセグメントとの間に中継装置を接続し、前記中継装置は、前記第2の端末群に動的に割り当てられるIPアドレスを、前記第1のネットワークセグメントの一部としての仮想IPアドレスに置換え、前記管理サーバと前記第2の端末群との間で送受信される電文を中継することを特徴とする。
【0009】
本発明の第1の観点に係る通信ネットワークシステムによれば、第1のネットワークセグメントと第2のネットワークセグメントとの間に接続された中継装置が、第2の端末群に動的に割り当てられるIPアドレスを、第1のネットワークセグメントの一部としての仮想IPアドレスに置換え、管理サーバと第2の端末群との間で送受信される電文を中継する。この中継装置により、固定でIPアドレスが割り当てられることを前提に構築された第1のネットワークセグメントに、動的にIPアドレスが割り当てられる第2のネットワークセグメントを組み込む際に、既設の設備の改変を不要とし、したがって、改変リスクが伴うことなく、低いコストで検針等のアプリケーションを実現する通信ネットワークシステムを提供することができる。また、設備の改変が不要になることで、管理サーバ側で動的なIPアドレスに対応するための通信トラフィックの増大が防止できるため、通信コストが嵩むことはない。
【0010】
本発明の第1の観点に係る通信ネットワークシステムにおいて、前記中継装置は、前記第2の端末群に割り当てられるIPアドレスが動的に変化した場合、または前記第2の端末群から定期的に送信される電文により、前記仮想IPアドレスと端末IPアドレスとの関連付けを行うことを特徴とする。本発明によれば、中継装置で関連付けられた仮想IPアドレスと端末IPアドレスにより、管理サーバと第2の端末群間の通信が中継されるため、管理サーバは第2の端末群に動的に割り当てられるIPアドレスを管理する必要が無くなり、したがって、そのための処理負荷が減少して通信ネットワークシステムとしてのスループットが向上する。
【0011】
本発明の第1の観点に係る通信ネットワークシステムにおいて、前記中継装置は、前記管理サーバが前記第2の端末群に電文を送信するにあたりゲートウェイとして設定されるRAWソケットにより、自身宛てに送信されていない電文を受信する第1のIP通信インタフェース部を有することを特徴とする。本発明によれば、中継装置は、管理サーバによりゲートウェイとして設定されるRAWソケットにより、管理サーバから第2の端末群に送信される全ての電文を受信する。このため、管理サーバから全ての第2の端末群に対する、例えば、遮断や復帰等の管理電文を中継することができる。
【0012】
本発明の第1の観点に係る通信ネットワークシステムにおいて、前記中継装置は、前記第2の端末群と通信を行う際の固定IPアドレスが割り当てられる第2のIP通信インタフェース部と、前記関連付けられた前記仮想IPアドレスと前記固定IPアドレスが記憶される記憶部と、前記管理サーバから前記第2の端末群に電文を送信する場合、前記第1のIP通信インタフェース部で前記管理サーバから前記電文を受信すると、前記電文の送信先である前記仮想IPアドレスに基づき前記記憶部を参照して対応する端末に割り当てられているIPアドレスを得、宛先に設定して前記第2のIP通信インタフェース部を介して前記第2の端末群に送信し、前記第2の端末群から前記管理サーバに電文を送信する場合、前記第2の通信インタフェース部で前記第2の端末群から前記電文を受信すると、前記電文の発信元である前記端末のIPアドレスに基づき前記記憶部を参照して対応する仮想IPアドレスを得、当該仮想IPアドレスを宛先に設定して前記第1のIP通信インタフェース部を介して前記管理サーバへ送信する中継処理部と、を有することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、中継装置は、管理サーバから第2の端末群に電文を送信する場合、第1のIP通信インタフェース部で管理サーバから電文を受信すると、電文の送信先である仮想IPアドレスに基づき記憶部を参照して対応する端末のIPアドレスを得、宛先に設定して第2のIP通信インタフェース部を介して第2の端末群に送信する。また、中継装置は、第2の端末群から管理サーバに電文を送信する場合、第2の通信インタフェース部で第2の端末群から電文を受信すると、電文の発信元である固定IPアドレスに基づき記憶部を参照して対応する仮想IPアドレスを得、当該仮想IPアドレスを宛先に設定して第1のIP通信インタフェース部を介して管理サーバへ送信する。このため、固定でIPアドレスが割り当てられることを前提にシステム構築された管理サーバと、動的にIPアドレスが割り当てられる第2の端末群との間で、管理サーバの負荷が無く、遮断や復旧等の要求電文や検針電文等の相互通信が可能になる。
【0014】
本発明の第2の観点に係る中継装置は、固定IPアドレスが割り当てられた第1の端末群が第1の通信ネットワーク経由で管理サーバに接続される第1のネットワークセグメントと、前記IPアドレスが動的に割り当てられる第2の端末群が第2の通信ネットワーク経由で前記管理サーバに接続される第2のネットワークセグメントからなるネットワークシステムにおいて、前記第1のネットワークセグメントと前記第2のネットワークセグメントとの間に接続される中継装置である。当該中継装置は、前記第2の端末群に動的に割り当てられるIPアドレスを、前記第1のネットワークセグメントの一部としての仮想IPアドレスに置換え、前記管理サーバと前記第2の端末群との間で送受信される電文を中継する制御手段、を有することを特徴とする。
【0015】
本発明の第2の観点に係る中継装置によれば、制御手段は、第2の端末群に動的に割り当てられるIPアドレスを、第1のネットワークセグメントの一部としての仮想IPアドレスに置換え、管理サーバと第2の端末群との間で送受信される電文を中継する。このため、固定でIPアドレスが割り当てられることを前提に構築された第1のネットワークセグメントに、動的にIPアドレスが割り当てられる第2のネットワークセグメントを組み込む際に、既設の設備の改変を不要とし、したがって、改変リスクが伴うことなく、低いコストで検針等のアプリケーションを実現することができる。また、設備の改変が不要になることで、管理サーバ側で動的なIPアドレスに対応するための通信トラフィックの増大が防止できるため、通信コストが嵩むことはない。
【0016】
本発明の第2の観点に係る中継装置において、前記制御手段は、前記管理サーバが前記第2の端末群に電文を送信するにあたり、前記管理サーバによりゲートウェイとして設定されるRAWソケットにより前記中継装置宛でない電文を受信する第1のIP通信インタフェース部と、前記第2の端末群と通信を行う際の固定IPアドレスが割り当てられる第2のIP通信インタフェース部と、前記第2の端末群に割り当てられるIPアドレスが動的に変化した場合、または前記第2の端末群から定期的に送信される電文により関連付けられる前記仮想IPアドレスと前記端末のIPアドレスとを記憶する記憶部と、前記管理サーバから前記第2の端末群に電文を送信する場合、前記第1のIP通信インタフェース部で前記管理サーバから前記電文を受信すると、前記電文の送信先である前記仮想IPアドレスに基づき前記記憶部を参照して対応する端末のIPアドレスを得、宛先に設定して前記第2のIP通信インタフェース部を介して前記第2の端末群に送信し、前記第2の端末群から前記管理サーバに電文を送信する場合、前記第2の通信インタフェース部で前記第2の端末群から前記電文を受信すると、前記電文の発信元である前記端末のIPアドレスに基づき前記記憶部を参照して対応する仮想IPアドレスを得、当該仮想IPアドレスを宛先に設定して前記第1のIP通信インタフェース部を介して前記管理サーバへ送信する中継処理部と、を有することを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、中継処理部は、管理サーバから第2の端末群に電文を送信する場合、第1のIP通信インタフェース部で管理サーバから電文を受信すると、電文の送信先である仮想IPアドレスに基づき記憶部を参照して対応する端末のIPアドレスを得、宛先に設定して第2のIP通信インタフェース部を介して第2の端末群に送信する。また、中継処理部は、第2の端末群から管理サーバに電文を送信する場合、第2の通信インタフェース部で第2の端末群から電文を受信すると、電文の発信元である端末のIPアドレスに基づき記憶部を参照して対応する仮想IPアドレスを得、当該仮想IPアドレスを宛先に設定して第1のIP通信インタフェース部を介して管理サーバへ送信する。このため、固定でIPアドレスが割り当てられることを前提にシステム構築された第1のネットワークセグメントと、動的にIPアドレスが割り当てられる第2の端末群との間で、管理サーバの負荷が無く、遮断や復旧等の要求電文や検針電文等の相互通信が可能になる。
【0018】
上記した課題を解決するために本発明の第3の観点に係る中継処理プログラムは、固定IPアドレスが割り当てられた第1の端末群が第1の通信ネットワーク経由で管理サーバに接続される第1のネットワークセグメントと、前記IPアドレスが動的に割り当てられる第2の端末群が第2の通信ネットワーク経由で前記管理サーバに接続される第2のネットワークセグメントからなるネットワークシステムにおいて、コンピュータによって実行され、前記第1のネットワークセグメントと前記第2のネットワークセグメントとの間に接続される中継装置に用いられる中継処理プログラムである。当該中継処理プログラムは、前記コンピュータに、前記第2の端末群に動的に割り当てられるIPアドレスを、前記第1のネットワークセグメントの一部としての仮想IPアドレスに置換え、前記管理サーバと前記第2の端末群との間で送受信される電文を中継する処理を実行させる。
【0019】
本発明の第3の観点に係る中継処理プログラムによれば、中継装置を構成するコンピュータが中継処理プログラムを実行することにより、第2の端末群に動的に割り当てられるIPアドレスを、第1のネットワークセグメントの一部としての仮想IPアドレスに置換え、管理サーバと第2の端末群との間で送受信される電文を中継する。このため、固定でIPアドレスが割り当てられることを前提に構築された第1のネットワークセグメントに、動的にIPアドレスが割り当てられる第2のネットワークセグメントを組み込む際に、既設の設備の改変を不要とし、したがって、改変リスクが伴うことなく、低いコストで検針等のアプリケーションを実現可能な中継処理プログラムを提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、固定でIPアドレスが割り当てられることを前提に構築された既設のネットワークに、動的にIPアドレスが割り当てられるネットワークを組み込む際に、設備の改変を不要として通信トラフィックの増大を防ぎ、低いコストで検針等のアプリケーションを実行可能な、通信ネットワークシステム、および同システムにおける中継装置、ならびに中継処理プログラムを提供すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係る通信ネットワークシステムの接続形態を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る中継装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】図1における管理サーバの内部構成を示すブロック図である。
【図4】図1におけるワイドエリアネットワーク端末の内部構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る通信ネットワークシステムを構成する各要素間の動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための実施の形態(以下、単に本実施形態という)について詳細に説明する。
【0023】
(実施形態の構成)
図1は、本実施形態に係る通信ネットワークシステム1の接続形態を示すブロック図である。図1に示されるように、本実施形態に係る通信ネットワークシステム1は、固定IPアドレスが割り当てられたローカルエリアネットワーク(LAN:Local
Area Network)用端末11(第1の端末群であって、以下、単にLAN端末#1(11a)〜#n(11d)という)が第1の通信ネットワークとしてのLAN12(Local
Area Network)経由で管理サーバ13に接続されるローカルエリアセグメント10(第1のネットワークセグメント)と、IPアドレスが動的に割り当てられるワイドエリアネットワーク用端末14(第2の端末群であって、以下、単にWAN端末#1(14a)〜#n(14b)という)がIP網16(第2の通信ネットワーク)経由で管理サーバ13に接続されるワイドエリアセグメント20(第2のネットワークセグメント)と、を含み構成される。
【0024】
WAN端末#1(14a)、#n(14b)は、ルータ15a、15bのそれぞれを介し、共にIP網16に接続される。そして、本通信ネットワークシステム1の特徴として、ローカルエリアセグメント10と、ワイドエリアセグメント20との間に中継装置17が接続されている。この中継装置17は、WAN端末#1(14a)、#n(14b)に動的に割り当てられるIPアドレスを、ローカルエリアセグメント10の一部としての仮想IPアドレスに置換え、管理サーバ13とWAN端末#1(14a)、あるいはWAN端末#n(14b)との間で送受信される電文を中継する制御手段として機能する。
【0025】
このため、中継装置17は、例えば、図2に示されるように、RAWソケットIP通信インタフェース部171(第1のIP通信インタフェース部)と、IP通信インタフェース部172(第2のIP通信インタフェース部)と、記憶部173と、中継処理部174と、から構成される。
【0026】
RAWソケットIP通信インタフェース部171は、管理サーバ13がWAN端末#1(14a)、#n(14b)に電文を送信するにあたり、管理サーバ13によりゲートウェイとして設定されるRAWソケットによって中継装置宛でない、すなわち全ての電文を受信する。IP通信インタフェース部172には、WAN端末#1(14a)、#n(14b)と通信を行う際の固定IPアドレスが割り当てられている。なお、記憶部173には、WAN端末#1(14a)、#n(14b)に割り当てられるIPアドレスが動的に変化した場合、または定期的に送信される電文によって関連付けられた仮想IPアドレスとWAN端末のIPアドレスからなるアドレステーブルが記憶される。
【0027】
中継処理部174は、管理サーバ13からWAN端末#1(14a)、#n(14b)に電文を送信する場合、RAWソケットIP通信インタフェース部171で管理サーバ13から電文を受信すると、当該電文の送信先である仮想IPアドレスに基づき記憶部173のアドレステーブルを参照して対応するWAN端末のIPアドレスを得、宛先に設定してIP通信インタフェース部172を介してWAN端末#1(14a)、あるいはWAN端末#n(14b)に送信する。一方、WAN端末#1(14a)、#n(14b)から管理サーバ13に電文を送信する場合、IP通信インタフェース部172でWAN端末#1(14a)、#n(14b)から電文を受信すると、当該電文の発信元であるWAN端末のIPアドレスに基づき記憶部173のアドレステーブルを参照して対応する仮想IPアドレスを得、当該仮想IPアドレスを宛先に設定してRAWソケットIP通信インタフェース部171を介して管理サーバ13へ送信する。
【0028】
次に、図3を参照して図1における管理サーバ13の内部構成を、図4を参照してワイドエリアネットワーク用端末14の内部構成をそれぞれ説明する。図3に示されるように、管理サーバ13は、端末管理部131と、IP通信インタフェース部132と、記憶部133とを含み構成される。端末管理部131は、遮断や復帰等、管理対象となる端末制御のための要求電文を生成し、ここで管理対象となるLAN端末#1(11a)〜#n(11d)や、WAN端末#1(14a)、#n(14b)に対して送信する。また、端末管理部131は、ワイドエリアセグメント20に対し、中継装置17のRAWソケットIP通信インタフェース部をゲートウェイに設定してWAN端末#1(14a)、#n(14b)に対して仮想IPアドレス宛てに電文を送信する。
【0029】
IP通信インタフェース部132は、中継装置17との間で電文を送受信する際のインタフェースとなり、固定のIPアドレスが割り当てられる。なお、記憶部133には、個体識別のための端末IDと仮想IPアドレスが対で記憶されている。
【0030】
図4に示されるように、ワイドエリアネットワーク用端末14(例えば、WAN端末#1(14a))は、端末本体部141と、IP通信インタフェース部142と、記憶部143とを含み構成される。端末本体部141は、検針データを生成してIP通信インタフェース部142経由で管理サーバ13へ電文を送信する。なお、記憶部143には、固定で割り当てられる仮想IPアドレスが記憶されている。
【0031】
(実施形態の動作)
以下、図5のシーケンス図を参照しながら本実施形態に係る通信ネットワークシステム1の動作について詳細に説明する。図5において、まず、WAN端末#1(14a)、#n(14b)のそれぞれは、端末に割り当てられるIPアドレスが動的に変化した場合、または定期的に、割り当てられた仮想IPアドレスを端末本体部141からIP通信インタフェース部142経由で中継装置17宛てに送信する(ステップS101)。これを受けて中継装置17では、IP通信インタフェース部172経由で中継処理部174が受信し、記憶部173の一部領域に格納されてあるアドレステーブルの内容を更新する(ステップS102)。ここで、アドレステーブルには、端末IPアドレスと関連付けられた仮想IPアドレスとの対が記憶される。
【0032】
次に、管理サーバ13からWAN端末#1(14a)、またはWAN端末#n(14b)に対して要求電文を送信するときの動作について説明する。端末管理部131は、要求電文を生成すると共に、ワイドエリアセグメント20に対し、中継装置17のRAWソケットIP通信インタフェース部171をゲートウェイに設定し、WAN端末#1(14a)またはWAN端末#n(14b)と通信を行う場合に、IP通信インタフェース部132経由で仮想IPアドレス宛、生成した要求電文を送信する(ステップS111)。
【0033】
中継装置17は、管理サーバ13からのゲートウェイとして動作するためにRAWソケットIP通信インタフェース部171を備えている。ここで、中継装置17は、RAWソケットIP通信インタフェース部171により、中継装置宛でない電文、所謂、スニファリングによりWAN端末#1(14a)またはWAN端末#n(14b)宛ての全ての電文を受信することができる(ステップS112)。RAWソケットの設定によりスニファリングが可能になることは周知の事項である。また、中継装置17は、WAN端末#1(14a)またはWAN端末#n(14b)と通信を行うために、固定のIPアドレスが割り当てられるIP通信インタフェース部172を備えている。中継処理部174は、管理サーバ13から受信した要求電文の送信先である仮想IPアドレスをキーに記憶部173のアドレステーブルを参照し、このアドレステーブルから実際の端末IPアドレスを読み出し、これを宛先とするようにIPヘッダの内容を置換え(ステップS113)、IP通信インタフェース部172から送信する(ステップS114)。
【0034】
続いて、IP通信インタフェース部142経由で要求電文を受信したWAN端末#1(14a)またはWAN端末#n(14b)は、端末本体部141がその要求電文に応じた遮断や復旧等の制御を行う。
【0035】
次に、WAN端末#1(14a)またはWAN端末#n(14b)から管理サーバ13宛てに検針電文を送信する場合の動作について説明する。WAN端末#1(14a)、#n(14b)には、予め中継装置17のIP通信インタフェース部172に固定で割り当てられたIPアドレスを登録してあるものとし、管理サーバ13宛て検針電文を送信する場合は、中継装置17のIP通信インタフェース部172宛てに送信するものとする(ステップS121)。
【0036】
WAN端末#1(14a)またはWAN端末#n(14b)からIP通信インタフェース部172経由で検針電文を受信した中継装置17は、中継処理部174で、送信元であるWAN端末#1(14a)、またはWAN端末#n(14b)の端末IPアドレスをキーに記憶部173のアドレステーブルを参照し、得られる仮想IPアドレスを検針電文の送信元に設定するようにIPヘッダの内容を置換え(ステップS122)、RAWソケットIP通信インタフェース部171経由で管理サーバ13のIP通信インタフェース部132宛、送信する(ステップS123)。このことにより、管理サーバ13は、端末管理部131でWAN端末#1(14a)、#n(14b)からの検針データを収集することができる。
【0037】
(実施形態の効果)
以上説明のように本実施形態に係る通信ネットワークシステム1によれば、既設の第1のネットワークセグメント(ローカルエリアセグメント10)と、新設の第2のネットワークセグメント(ワイドエリアセグメント20)との間に接続された中継装置17が、第2の端末群(ワイドエリアネットワーク用端末14)に動的に割り当てられるIPアドレスを、第1のネットワークセグメント(ローカルエリアセグメント10)の一部としての仮想IPアドレスに置換え、管理サーバ13と第2の端末群(ワイドエリアネットワーク用端末14)との間で送受信される電文を中継する。この中継装置17により、固定でIPアドレスが割り当てられることを前提に構築された第1のネットワークセグメント(ローカルエリアセグメント10)に、動的にIPアドレスが割り当てられる第2のネットワークセグメント(ワイドエリアセグメント20)を組み込む際に、既設の設備の改変を不要とし、したがって、改変リスクが伴うことなく、低いコストで検針等のアプリケーションを実現する通信ネットワークシステム1を提供することができる。また、設備の改変が不要になることで、管理サーバ13側で動的なIPアドレスに対応するための通信トラフィックの増大が防止できるため、通信コストが嵩むことはない。
【0038】
また、中継装置17で関連付けられた仮想IPアドレスと端末IPアドレスにより、管理サーバ13と第2の端末群(ワイドエリアネットワーク用端末14)間の通信が中継されるため、管理サーバ13は第2の端末群(ワイドエリアネットワーク用端末14)に動的に割り当てられるIPアドレスを管理する必要が無くなり、したがって、そのための処理負荷が減少して通信ネットワークシステム1としてのスループットが向上する。
【0039】
本実施形態に係る中継装置17によれば、中継装置17は、管理サーバ13によりゲートウェイとして設定されるRAWソケットにより、管理サーバ13から第2の端末群(ワイドエリアネットワーク用端末14)に送信される全ての電文を受信することで、管理サーバ13から全ての第2の端末群(ワイドエリアネットワーク用端末14)に対する、例えば、遮断や復帰等の管理電文を中継することができる。また、中継装置17(中継処理部174)は、管理サーバ13から第2の端末群(ワイドエリアネットワーク用端末14)に電文を送信する場合、第1のIP通信インタフェース部(RAWソケットIP通信インタフェース部171)で管理サーバ13から電文を受信すると、電文の送信先である仮想IPアドレスに基づき記憶部173を参照して対応する端末のIPアドレスを得、宛先に設定して第2のIP通信インタフェース部(IP通信インタフェース部172)を介して第2の端末群(ワイドエリアネットワーク用端末14)に送信する。また、中継装置17(中継処理部174)は、第2の端末群(ワイドエリアネットワーク用端末14)から管理サーバ13に電文を送信する場合、第2の通信インタフェース部(IP通信インタフェース部172)で第2の端末群(ワイドエリアネットワーク用端末14)から電文を受信すると、電文の発信元である端末のIPアドレスに基づき記憶部173を参照して対応する仮想IPアドレスを得、当該仮想IPアドレスを宛先に設定して第1のIP通信インタフェース部(RAWソケットIP通信インタフェース部171)を介して管理サーバ13へ送信する。このため、固定でIPアドレスが割り当てられることを前提にシステム構築されたローカルエリアセグメント10と、動的にIPアドレスが割り当てられる第2の端末群(ワイドエリアネットワーク用端末14)との間で、管理サーバ13の負荷が無く、遮断や復旧等の要求電文や検針電文等の相互通信が可能になる。
【0040】
なお、本実施形態に係る中継処理プログラムは、例えば、図1に示されるように、固定IPアドレスが割り当てられた第1の端末群(ローカルエリアネットワーク用端末11)が第1の通信ネットワーク(LAN12)経由で管理サーバ13に接続される第1のネットワークセグメント(ローカルエリアセグメント10)と、前記IPアドレスが動的に割り当てられる第2の端末群(ワイドエリアネットワーク用端末14)が第2の通信ネットワーク(IP網16)経由で前記管理サーバ13に接続される第2のネットワークセグメント(ワイドエリアセグメント20)からなる通信ネットワークシステム1において、コンピュータによって実行され、前記第1のネットワークセグメント(ローカルエリアセグメント10)と前記第2のネットワークセグメント(ワイドエリアセグメント20)との間に接続される中継装置17に用いられる中継処理プログラムである。この中継処理プログラムは、例えば、中継装置17が有する記憶部173の一部領域に割り当てられて記憶されており、コンピュータとして機能する中継処理部174がその中継処理プログラムを逐次読み出し、実行することで、例えば、図5に示されるように、第2の端末群(ワイドエリアネットワーク用端末14)に動的に割り当てられるIPアドレスを、第1のネットワークセグメント(ローカルエリアセグメント10)の一部としての仮想IPアドレスに置換え、管理サーバ13と第2の端末群(ワイドエリアネットワーク用端末14)との間で送受信される電文を中継する処理(S111〜S114、S121〜S123)を実行する。
【0041】
本実施形態に係る中継処理プログラムによれば、固定でIPアドレスが割り当てられることを前提に構築された既設の第1のネットワークセグメント(ローカルエリアセグメント10)に、動的にIPアドレスが割り当てられる新設の第2のネットワークセグメント(ワイドエリアセグメント20)を組み込む際に、既設の設備の改変を不要とし、したがって、改変リスクが伴うことなく、低いコストで検針等のアプリケーションを実現可能な中継装置17、ならびに通信ネットワークシステム1を提供することができる。
【0042】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0043】
1・・・通信ネットワークシステム、10・・・ローカルエリアセグメント(第1のネットワークセグメント)、11・・・ローカルエリアネットワーク用端末(LAN端末#1〜#n:第1の端末群)、12・・・LAN(第1の通信ネットワーク)、13・・・管理サーバ、14・・・ワイドエリアネットワーク用端末(WAN端末#1〜#N:第2の端末群)、15a15b・・・ルータ、16・・・IP網(第2の通信ネットワーク)、17・・・中継装置、20・・・ワイドエリアセグメント(第2のネットワークセグメント)、171・・・RAWソケットIP通信インタフェース部(第1のIP通信インタフェース部)、172・・・IP通信インタフェース部(第2の通信インタフェース部)、173・・・記憶部、174・・・中継処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定IPアドレスが割り当てられた第1の端末群が第1の通信ネットワーク経由で管理サーバに接続される第1のネットワークセグメントと、前記IPアドレスが動的に割り当てられる第2の端末群が第2の通信ネットワーク経由で前記管理サーバに接続される第2のネットワークセグメントとからなる通信ネットワークシステムであって、
前記第1のネットワークセグメントと前記第2のネットワークセグメントとの間に中継装置を接続し、
前記中継装置は、
前記第2の端末群に動的に割り当てられるIPアドレスを、前記第1のネットワークセグメントの一部としての仮想IPアドレスに置換え、前記管理サーバと前記第2の端末群との間で送受信される電文を中継することを特徴とする通信ネットワークシステム。
【請求項2】
前記中継装置は、
前記第2の端末群に割り当てられるIPアドレスが動的に変化した場合、または前記第2の端末群から定期的に送信される電文により、前記端末のIPアドレスと前記仮想IPアドレスとの関連付けを行うことを特徴とする請求項1記載の通信ネットワークシステム。
【請求項3】
前記中継装置は、
前記管理サーバが前記第2の端末群に電文を送信するにあたりゲートウェイとして設定されるRAWソケットにより、自身宛てに送信されていない電文を受信する第1のIP通信インタフェース部を有することを特徴とする請求項1記載の通信ネットワークシステム。
【請求項4】
前記中継装置は、
前記第2の端末群と通信を行う際の固定IPアドレスが割り当てられる第2のIP通信インタフェース部と、前記関連付けられた前記仮想IPアドレスと前記端末のIPアドレスが記憶される記憶部と、
前記管理サーバから前記第2の端末群に電文を送信する場合、前記第1のIP通信インタフェース部で前記管理サーバから前記電文を受信すると、前記電文の送信先である前記仮想IPアドレスに基づき前記記憶部を参照して対応する端末のIPアドレスを得、宛先に設定して前記第2のIP通信インタフェース部を介して前記第2の端末群に送信し、前記第2の端末群から前記管理サーバに電文を送信する場合、前記第2の通信インタフェース部で前記第2の端末群から前記電文を受信すると、前記電文の発信元である前記端末のIPアドレスに基づき前記記憶部を参照して対応する仮想IPアドレスを得、当該仮想IPアドレスを宛先に設定して前記第1のIP通信インタフェース部を介して前記管理サーバへ送信する中継処理部、を有することを特徴とする請求項3記載の通信ネットワークシステム。
【請求項5】
固定IPアドレスが割り当てられた第1の端末群が第1の通信ネットワーク経由で管理サーバに接続される第1のネットワークセグメントと、前記IPアドレスが動的に割り当てられる第2の端末群が第2の通信ネットワーク経由で前記管理サーバに接続される第2のネットワークセグメントからなる通信ネットワークシステムにおいて、前記第1のネットワークセグメントと前記第2のネットワークセグメントとの間に接続される中継装置であって、
前記第2の端末群に動的に割り当てられるIPアドレスを、前記第1のネットワークセグメントの一部としての仮想IPアドレスに置換え、前記管理サーバと前記第2の端末群との間で送受信される電文を中継する制御手段、を有することを特徴とする中継装置。
【請求項6】
前記制御手段は、
前記管理サーバが前記第2の端末群に電文を送信するにあたり、前記管理サーバによりゲートウェイとして設定されるRAWソケットにより前記中継装置宛でない電文を受信する第1のIP通信インタフェース部と、
前記第2の端末群と通信を行う際の固定IPアドレスが割り当てられる第2のIP通信インタフェース部と、
前記第2の端末群に割り当てられるIPアドレスが動的に変化した場合、または前記第2の端末群から定期的に送信される電文により関連付けられる前記端末のIPアドレスと前記仮想IPアドレスとを記憶する記憶部と、
前記管理サーバから前記第2の端末群に電文を送信する場合、前記第1のIP通信インタフェース部で前記管理サーバから前記電文を受信すると、前記電文の送信先である前記仮想IPアドレスに基づき前記記憶部を参照して対応する端末のIPアドレスを得、宛先に設定して前記第2のIP通信インタフェース部を介して前記第2の端末群に送信し、前記第2の端末群から前記管理サーバに電文を送信する場合、前記第2の通信インタフェース部で前記第2の端末群から前記電文を受信すると、前記電文の発信元である前記端末のIPアドレスに基づき前記記憶部を参照して対応する仮想IPアドレスを得、当該仮想IPアドレスを宛先に設定して前記第1のIP通信インタフェース部を介して前記管理サーバへ送信する中継処理部、を有することを特徴とする請求項5記載の中継装置。
【請求項7】
固定IPアドレスが割り当てられた第1の端末群が第1の通信ネットワーク経由で管理サーバに接続される第1のネットワークセグメントと、前記IPアドレスが動的に割り当てられる第2の端末群が第2の通信ネットワーク経由で前記管理サーバに接続される第2のネットワークセグメントからなるネットワークシステムにおいて、コンピュータによって実行され、前記第1のネットワークセグメントと前記第2のネットワークセグメントとの間に接続される中継装置に用いられる中継処理プログラムであって、
前記コンピュータに、
前記第2の端末群に動的に割り当てられるIPアドレスを、前記第1のネットワークセグメントの一部としての仮想IPアドレスに置換え、前記管理サーバと前記第2の端末群との間で送受信される電文を中継する処理を実行させる、
ことを特徴とする中継処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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