説明

通信制御システム及び通信制御方法

【課題】双方の移動通信端末に対して、把握された位置関係に応じた報知を行うことができる通信制御システムを提供する。
【解決手段】通信制御システム10は、在圏セル特定番号を格納する在圏情報格納部11と、隣接セル特定番号を格納する隣接情報格納部12と、発信要求信号を発信端末20Aから受信する受信部18と、発信端末20A及び着信端末20Bそれぞれの在圏セル特定番号及び隣接セル特定番号を取得する取得部15と、在圏セル特定番号及び隣接セル特定番号で示される発信側セル群A及び着信側セル群Bが少なくとも一部で一致しているか否かを判定する判定部16と、判定部16によって発信側セル群A及び着信側セル群Bが少なくとも一部で一致していると判定された場合、発信端末20Aへの呼出音及び着信端末20Bでの着信音を変更させる音変更部17と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信制御システム及び通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やPHSなどの移動通信端末は、固定電話と異なり、特定の場所に束縛されることなく自由に移動しながら他の通信端末との間で通信を行うことができるといった特徴がある。その反面、通信の相手側が移動通信端末の場合、相手側の移動通信端末も移動可能なため、互いの相対的な位置関係を感覚的に把握して通話を行うことは難しかった。そのため、遠方から来客がある場合や不慣れな場所で待ち合わせをする場合などにおいて、待ち合わせ場所といった目的地に着く前に移動通信端末を使って互いに連絡を取った際、どの程度、互いに近づいたのかといったような相対的な位置関係を把握できないため、移動通信端末の使用者に不安感を与えてしまう場合があった。そこで、移動通信端末で通話を行う際、自分がどの程度、相手に近づいているのかを例えば音などで報知することで感覚的に把握させることができる技術が望まれていた。
【0003】
このような要望に応えるため、例えば、特許文献1に記載された発明では、一方の移動通信端末(待ち側)が位置する無線ゾーンの基地局の識別番号(CS−ID)を所定のタイミングで他方の移動通信端末(移動側)に送信し、他方の移動通信端末では、送信されたCS―IDと、自機が位置する基地局のCS−IDとを比較し、両者が一致したら、同一の無線ゾーンに位置していると判定して、双方の移動通信端末に対して、互いに近接したことを報知するようにしていた。また、特許文献2に記載された発明では、双方の移動通信端末がGPS情報取得部や近距離通信部を備え、近距離通信部で他方の移動通信端末のGPS情報を受信するとGPS情報に基づく位置を報知するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−041663号公報
【特許文献2】特開2008−203479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された報知方法は、待ち側の移動通信端末が位置する無線ゾーンに移動側の移動通信端末が入ったか否かを判定することで近接領域(例えば半径が200〜300mの領域)での双方の位置関係を把握し、報知を行うものであった。また、特許文献2に記載された報知方法は、近距離通信部を用いて相互のGPS情報をやり取りすることで近接領域(例えば無線通信が可能な半径数10mの領域)での双方の位置関係を把握し、報知を行うものであった。このため、特許文献1,2に記載された報知方法では、双方が出会う直前の最終段階での報知を行うことはできるものの、その前段階である中距離領域(例えば半径が数100m〜10km)に双方の移動通信端末が位置する段階で双方の相対的な位置関係を把握して報知を行い、比較的、早い段階から移動通信端末の使用者に安心感を与えるようなものではなかった。
【0006】
そこで、本発明は、双方の移動通信端末間の相対的な位置関係を早い段階で把握し、双方の移動通信端末のうち少なくとも一方に対して、把握された位置関係に応じた報知を行うことができる通信制御システム及び当該通信制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る通信制御システムは、複数の移動通信端末のうち発信側となる発信端末と着信側となる着信端末との間の通信を制御する通信制御システムであって、複数の移動通信端末それぞれの在圏セルを示す在圏セル情報を複数の移動通信端末それぞれを識別する識別番号毎に格納する在圏情報格納手段と、複数の移動通信端末それぞれの在圏セルの近傍に位置する近傍セルを示す近傍セル情報を識別番号毎に格納する近傍情報格納手段と、着信端末を特定する端末特定情報を含む発信要求信号を発信端末から受信する受信手段と、受信手段によって発信要求信号が受信された場合、発信端末及び端末特定情報で特定される着信端末それぞれの在圏セル情報及び近傍セル情報を在圏情報格納手段及び近傍情報格納手段から取得する取得手段と、取得手段によって取得された発信端末の在圏セル情報及び近傍セル情報で示される発信側セル群及び取得手段によって取得された着信端末の在圏セル情報及び近傍セル情報で示される着信側セル群が少なくとも一部で一致しているか否かを判定する判定手段と、判定手段によって発信側セル群及び着信側セル群が少なくとも一部で一致していると判定された場合、発信端末への呼出音及び着信端末での着信音の少なくとも一方の音を変更させる音変更手段と、を備えている。
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係る通信制御方法は、複数の移動通信端末それぞれの在圏セルを示す在圏セル情報を複数の移動通信端末それぞれを識別する識別番号毎に格納する在圏情報格納手段と、複数の移動通信端末それぞれの在圏セルの近傍に位置する近傍セルを示す近傍セル情報を識別番号毎に格納する近傍情報格納手段とを備えた通信制御システムによって、複数の移動通信端末のうち発信側となる発信端末と着信側となる着信端末との間の通信を制御する通信制御方法であって、着信端末を特定する端末特定情報を含む発信要求信号を発信端末から受信する受信ステップと、受信ステップで発信要求信号が受信された場合、発信端末及び端末特定情報で特定される着信端末それぞれの在圏セル情報及び近傍セル情報を在圏情報格納手段及び近傍情報格納手段から取得する取得ステップと、取得ステップで取得された発信端末の在圏セル情報及び近傍セル情報で示される発信側セル群及び取得ステップで取得された着信端末の在圏セル情報及び近傍セル情報で示される着信側セル群が少なくとも一部で一致しているか否かを判定する判定ステップと、判定ステップによって発信側セル群及び着信側セル群が少なくとも一部で一致していると判定された場合、発信端末への呼出音及び着信端末での着信音の少なくとも一方の音を変更させる音変更ステップと、を含んでいる。
【0009】
この通信制御システムまたは通信制御方法によれば、各移動通信端末の在圏セルに加えて、その在圏セルの近傍に位置する近傍セルの情報を格納し、格納された在圏セル情報及び近傍セル情報に基づいて発信端末及び着信端末間の相対的な位置関係を判定し、その判定結果に応じた報知を行うようにしている。このため、双方の移動通信端末間の相対的な位置関係を広い範囲で把握することができ、例えば互いの距離が数100m〜10kmといったように、比較的、早い段階で双方の位置関係を把握し、双方の移動通信端末のうち少なくとも一方に対して、把握された位置関係に応じた報知を行うことができる。その結果、上述した通信制御システムや通信制御方法によれば、比較的、早い段階で移動通信端末の使用者に安心感を与えることが可能となる。しかも、通信制御システムで集中管理される在圏情報等を用いて判定しているため、各移動通信端末において、例えばGPS測位や複雑な判定処理を行う必要がなくなり、各移動通信端末でのバッテリー消耗を抑止することができる。
【0010】
また、判定手段は、発信側セル群及び着信側セル群が少なくとも一部で一致すると判定する際、発信側セル群及び着信側セル群の両方の在圏セルが一致する第1の判定と、発信側セル群及び着信側セル群の一方の在圏セルと他方の近傍セルとが一致する第2の判定と、発信側セル群及び着信側セル群の両方の近傍セルのみが一致する第3の判定とに分けて判定することが好ましい。この場合、双方の移動通信端末が徐々に近づいていることを段階的に判定できる。
【0011】
また、音変更手段は、判定手段による判定に応じて音の音量レベルを変更させてもよいし、判定手段による判定に応じて音の種類を変更させてもよい。この場合、音変更手段による音の内容が判定結果に応じて異なることから、双方が徐々に近づいているのを感覚的に把握することができる。
【0012】
また、在圏情報格納手段に格納される在圏セル情報と近傍情報格納手段に格納される近傍セル情報とを複数の移動通信端末それぞれの移動に応じて更新する更新手段を更に備えることが好ましい。この場合、移動通信端末が移動しても、各情報が更新されるため、仮に待ち側の移動通信端末が何らかの理由で目的地から移動してしまった場合、相手側の移動通信端末は、報知内容によって、その事実を感覚的に把握することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、双方の移動通信端末間の相対的な位置関係を早い段階で把握し、双方の移動通信端末のうち少なくとも一方に対して、把握された位置関係に応じた報知を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る通信制御システムの構成概要図である。
【図2】通信制御システムを構成する通信交換装置やHLRのハードウェア構成を示す図である。
【図3】在圏情報格納部及び隣接情報格納部に格納されるデータの一例を示す図である。
【図4】通信制御システムの動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係る好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、可能な場合には、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
まず、本実施形態に係るオペレータネットワーク1(以下「オペレータNW1」と記す)について、図1を参照しながら説明する。オペレータNW1は、通信制御システム10及びコアNWノード群(不図示)を含んで構成され、複数の移動通信端末20と接続可能となっている。移動通信端末20は、例えば、携帯電話やPHSであり、オペレータNW1を介して、他の移動通信端末20に接続される。互いに接続された移動通信端末20は、通信制御システム10の交換制御によって、互いに音声通話を行うことができるようになっている。図1では、説明の便宜上、複数の移動通信端末20のうち発信側となる移動通信端末20A(以下「発信端末20A」と記す)と着信側となる移動通信端末20B(以下「着信端末20B」と記す)のみを示しているが、図示省略された複数の移動通信端末20がオペレータNW1を介して互いに接続可能となっている。
【0017】
続いて、通信制御システム10について、説明する。通信制御システム10は、発信端末20Aと着信端末20Bとの間の通信を制御するシステムであり、移動通信端末20間の通信交換を行う通信交換装置や移動通信端末20の各在圏情報等を格納するHLR(Home Location Register)等から構成される。通信制御システム10は、図1に示されるように、機能的には、在圏情報格納部11(在圏情報格納手段)、隣接情報格納部12(近傍情報格納手段)、更新部13(更新手段)、交換制御部14、取得部15(取得手段)、判定部16(判定手段)、及び音変更部17(音変更手段)を備えている。
【0018】
通信制御システム10を構成する通信交換装置やHLRは、図2に示されるように、物理的には、CPU10a、ROM10b及びRAM10c等の主記憶装置、移動通信端末20等との間でデータの送受信を行うためのネットワークカード等の通信モジュール10d、及び、ハードディスク等の補助記憶装置10eを含む通常のコンピュータシステムとしてそれぞれ構成される。通信制御システム10の各機能は、CPU10a、ROM10b、RAM10c等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPU10aの制御の元で通信モジュール10dを動作させると共に、主記憶装置10b,10cや補助記憶装置10eにおけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0019】
在圏情報格納部11は、複数の移動通信端末20それぞれの在圏セルを示す在圏セル特定番号(在圏セル情報)を複数の移動通信端末20それぞれを識別する端末識別番号(IMEISV等)毎に格納する部分である。このような在圏セルを示すデータとしては、例えば、図3(a)に示されるようなデータが在圏情報格納部11に格納されている。
【0020】
隣接情報格納部12は、複数の移動通信端末20それぞれの在圏セルに隣接する隣接セル(近傍セル)を示す隣接セル特定番号(近傍セル情報)を端末識別番号(IMEISV等)毎に格納する部分である。このような隣接セルを示すデータとしては、例えば、図3(b)に示されるようなデータが隣接情報格納部12に格納されている。隣接情報格納部12に格納されるデータにおける隣接セルは、一つの在圏セルを覆うように隣接配置しているものであることから、通常、一つの在圏セルに対して複数の隣接セルが対応するようになっている。
【0021】
更新部13は、在圏情報格納部11に格納される在圏セル特定番号と隣接情報格納部12に格納される隣接セル特定番号とを複数の移動通信端末20それぞれの移動に応じて更新する部分である。更新部13は、移動通信端末20の位置登録が新たにされると、在圏情報格納部11に格納されている在圏セル特定番号のうち、位置登録がされた移動通信端末20の在圏セル特定番号を更新する。更新部13は、在圏セル特定番号の更新に続いて、在圏セルが更新された移動通信端末20の隣接セル特定番号を、更新された在圏セル特定番号に応じた隣接セル特定番号へと更新する。なお、更新部13は、隣接セル特定番号を更新する際、あらかじめ記憶しておいた各セルの隣接関係の情報(隣接マップ)を参照して、更新処理を行う。
【0022】
交換制御部14は、着信端末20Bを特定する端末特定情報を含む発信要求信号を発信端末20Aから受信する受信部18を有し、発信端末20A及び着信端末20B間の通信(回線交換)を制御する部分である。交換制御部14は、受信部18で発信要求信号を発信端末20Aから受信すると、着信要求信号を生成し、生成した着信要求信号を着信端末20Bに送信する。交換制御部14は、着信要求信号の送信にあわせて、着信端末20Bを呼び出し中であることを知らせるリングバック(呼出音の鳴動)を発信端末20Aに対して行う。交換制御部14は、着信要求信号の送信後、着信端末20Bから着信要求に応じることを示す着信応答信号を受信すると、受信した着信応答信号を発信端末20Aに送信する。これにより、交換制御部14は、発信端末20A及び着信端末20B間の回線交換作業を終了させ、両端末間の通話が開始される。
【0023】
取得部15は、発信端末20A及び着信端末20Bそれぞれの在圏セル特定番号及び隣接セル特定番号を取得する部分である。取得部15は、受信部18(交換制御部14)によって発信要求信号が受信されると、双方の端末20A,20Bの相対的な位置関係の判定を開始する判定開始信号を交換制御部14から受信する。取得部15は、判定開始信号を受信すると、発信端末20A及び端末特定情報で特定される着信端末20Bそれぞれの在圏セル特定番号及び隣接セル特定番号を在圏情報格納部11及び隣接情報格納部12から取得する。取得部15は、取得した在圏セル特定番号及び隣接セル特定番号を、両端末20A,20Bの端末識別番号それぞれに対応させた状態で判定部16に出力する。
【0024】
判定部16は、取得部15によって取得された発信端末20Aの在圏セル特定番号及び隣接セル特定番号で示される発信側セル群A及び取得部15によって取得された着信端末20Bの在圏セル特定番号及び隣接セル特定番号で示される着信側セル群Bが少なくとも一部で一致しているか否かを判定する部分である。本実施形態では、判定部16は、発信側セル群A及び着信側セル群Bが少なくとも一部で一致すると判定する際、発信側セル群A及び着信側セル群Bの両方の在圏セルが一致する第1の判定と、発信側セル群A及び着信側セル群Bの一方の在圏セルと他方の隣接セルとが一致する第2の判定と、発信側セル群A及び着信側セル群Bの両方の隣接セルのみが一致する第3の判定とに分けて判定する。
【0025】
第1の判定では、両端末20A,20Bが同一のセル内に位置していることが判定され、両端末20A,20B間の距離は、例えば、0〜300mといったような極近距離と判定される。第2の判定では、両端末20A,20Bが隣接する別のセル内にそれぞれ位置していることが判定され、両端末20A,20B間の距離は、例えば、300m〜600mといった近距離と判定される。第3の判定では、両端末20A,20Bが一つのセルを挟んだ互いに隣接しない別のセル内にそれぞれ位置していることが判定され、両端末20A,20B間の距離は、例えば、600m〜900mといった中距離と判定される。つまり、判定部16は、両端末20A,20B間の距離が近いほうから、段階的に、第1の判定、第2の判定、第3の判定といった順序で両者の相対的な位置関係を判定する。判定部16は、このように判定された判定結果を音変更部17に出力する。
【0026】
音変更部17は、判定部16による判定結果に応じて、発信端末20Aへの呼出音及び着信端末での着信音を変更させる部分である。音変更部17は、判定部16から判定結果が入力され、判定部16によって第1〜第3の判定のうち何れかの判定がされた場合には、呼出音として、通常とは異なる呼出音となる第1のリングバックトーンの音量情報を生成する。また、音変更部17は、判定部16によって第1〜第3の判定のうち何れの判定もされなかった場合(発信側セル及び着信側セルがまったく一致しなかった場合)には、通常の呼出音である第2のリングバックトーンの音量情報を生成する。音変更部17は、生成した各音量情報を交換制御部14に出力する。音量情報が入力された交換制御部14は、入力された音量情報をリングバックを行わせるための情報に含めて、発信端末20Aにリングバックを行う。
【0027】
第1のリングバックトーンの音量情報では、第1〜第3の判定の3種類の判定に応じて音量が異なるようになっており、第1の判定に対応する音の音量が一番大きく、第2の判定に対応する音、第3の判定に対応する音の順に音量が小さくなるようになっている。また、第1のリングバックトーンの音量情報における各音量は、第2のリングバックトーンの音量情報における音量よりも大きくなっている。このような呼出音の音量の大小により、発信端末20Aの使用者は、例えば、着信端末20Bの使用者に近づいている(又は遠ざかっている)ことを感覚的に知覚できる。
【0028】
また、音変更部17は、判定部16から判定結果が入力され、判定部16によって第1〜第3の判定のうち何れかの判定がされた場合には、着信端末20Bで鳴動させる着信音を通常とは異なる着信音とさせるための特殊フラグを交換制御部14で生成される着信要求信号に設定する。本実施形態では、この特殊フラグによって着信端末20Bでの着信音が、第1〜第3の判定の3種類の判定に応じて音量が異なるようにされ、第1の判定に対応する音の音量が一番大きく、第2の判定に対応する音、第3の判定に対応する音の順に音量が小さくなるようにする。また、音変更部17は、判定部16によって第1〜第3の判定のうち何れの判定もされなかった場合には、着信端末20Bで通常の着信音が鳴動するように特殊フラグを設定しない。特殊フラグを設定した場合の着信音の各音量は、特殊フラグを設定しなかった場合の着信音よりも大きくなっている。このような着信音の音量の大小により、着信端末20Bの使用者は、例えば、発信端末20Aの使用者に近づいている(又は遠ざかっている)ことを感覚的に知覚できる。
【0029】
次に、通信制御システム10における通信制御方法について、図4を参照して説明する。
【0030】
発信端末20A及び着信端末20B間での通話を開始するにあたり、発信端末20Aは、発信要求信号を生成する(ステップS1)。生成される発信要求信号には、発信端末20Aを特定する端末識別番号及び着信端末20Bを特定する端末識別番号といった情報が含まれる。発信端末20Aは、このような発信要求信号を通信制御システム10へ送信する(ステップS2)。
【0031】
ステップS2で発信要求信号の送信が行なわれると、通信制御システム10の受信部18は、送信された発信要求信号を受信する(受信ステップ、ステップS3)。発信要求信号を受信すると、通信制御システム10の交換制御部14は、発信要求信号に含まれる発信端末20Aや着信端末20Bを特定する端末識別番号といった情報を発信要求信号から抽出する。交換制御部14は、各端末識別番号を抽出すると、発信要求信号に応じた着信要求信号を生成すると共に、抽出された端末識別番号といった情報を含む判定開始信号を取得部15に出力する。
【0032】
判定開始信号が入力されると、取得部15は、両端末20A,20Bの在圏セル特定番号や隣接セル特定番号を在圏情報格納部11及び隣接情報格納部12から取得する(取得ステップ、ステップS4)。取得部15は、取得した各セル特定番号を判定部16に出力する。判定部16は、各セル特定番号が入力されると、発信側セル群A及び着信側セル群Bが少なくとも一部で一致するか否かを判定する(判定ステップ、ステップS5)。判定部16で一致すると判定する場合、上述した第1〜第3の判定のように3段階に分けて、一致度合を判定する。
【0033】
ステップS5において、発信側セル群A及び着信側セル群Bが少なくとも一部で一致すると判定されると、ステップS6に進み、音変更部17は、一致度合に応じて、第1のリングバックトーンの音量情報を3段階で生成し(音変更ステップ)、発信側セル群A及び着信側セル群Bがまったく一致しないと判定されると、ステップS7に進み、通常の呼出音である第2のリングバックトーンの音量情報を生成する。生成された各音量情報は、交換制御部14に出力される。また、ステップS6で第1のリングバックトーンの音量情報が生成されると、着信要求信号に用いられるページング情報に着信音の音量を3段階のうちの1つに変更させる特殊フラグを設定する(音変更ステップ、ステップS8)。
【0034】
続いて、交換制御部14は、着信要求信号を着信端末20Bに送信する(ステップS9)。着信端末20Bは、送信された着信要求信号を受信し(ステップS10)、着信要求信号に特殊フラグが設定されているか否かを判定する。特殊フラグが設定されていないと判定した場合には、着信端末20Bは、通常の着信音を鳴動させ、特殊フラグが設定されていると判定した場合には、着信端末20Bは、判定部16での判定による一致度合に応じた3段階のうちのいずれか1つの応じた着信音を鳴動させる(ステップS11)。
【0035】
続いて、ステップS11で着信音の鳴動に応じて、着信端末20Bの使用者が着信に応答する指示を着信端末20Bに入力すると、着信端末20Bは、着信応答信号を生成し(ステップS12)、通信制御システム10へ送信する(ステップS13)。
【0036】
また、交換制御部14は、ステップS5において、発信側セル群A及び着信側セル群Bが少なくとも一部で一致すると判定された場合には、発信端末20Aに対して、第1のリングバックトーンに応じたリングバックを行い、発信側セル群A及び着信側セル群Bがまったく一致しないと判定された場合には、発信端末20Aに対して、第2のリングバックトーンに応じたリングバックを行う(ステップS14)。
【0037】
発信端末20Aは、第1のリングバックトーンに応じたリングバックが行われた場合には、判定部16での判定による一致度合に応じた3段階のうちのいずれか1つに応じた呼出音をリングバックトーンとして鳴動させ、第2のリングバックトーンに応じたリングバックが行われた場合には、通常の呼出音をリングバックトーンとして鳴動させる(ステップS15)。その後、通信制御システム10の交換制御部14から発信端末20Aに着信応答信号が送信されると(ステップS16)、発信端末20Aは、着信応答信号を受信する(ステップS17)。発信端末20Aが着信応答信号を受信することにより、発信端末20A及び着信端末20B間の回線交換が完了し、両端末20A,20B間の通話が開始される(ステップS18)。
【0038】
本実施形態によれば、各移動通信端末20A,20Bの在圏セルに加えて、その在圏セルに隣接する隣接セルの情報を格納し、格納された在圏セル特定番号及び隣接セル特定番号に基づいて発信端末20A及び着信端末20B間の相対的な位置関係を判定し、その判定結果に応じた報知を行うようにしている。このため、双方の移動通信端末20A,20B間の相対的な位置関係を広い範囲で把握することができ、例えば互いの距離が0m〜900mといったように、比較的、早い段階で双方の位置関係を把握し、双方の移動通信端末のうち少なくとも一方に対して、把握された位置関係に応じた報知を行うことができる。その結果、上述した通信制御システムや通信制御方法によれば、比較的、早い段階で移動通信端末20A,20Bの使用者に安心感を与えることが可能となる。しかも、通信制御システム10で集中管理される在圏情報等を用いて判定しているため、各移動通信端末20A,20Bにおいて、例えばGPS測位や複雑な判定処理を行う必要がなくなり、各移動通信端末でのバッテリー消耗を抑止することができる。
【0039】
また、判定部16は、発信側セル群A及び着信側セル群Bが少なくとも一部で一致すると判定する際、発信側セル群A及び着信側セル群Bの両方の在圏セルが一致する第1の判定と、発信側セル群A及び着信側セル群Bの一方の在圏セルと他方の隣接セルとが一致する第2の判定と、発信側セル群A及び着信側セル群Bの両方の隣接セルのみが一致する第3の判定とに分けて判定している。そして、音変更部17は、判定部16による上記のような段階的な判定に応じて、呼出音及び着信音の音量レベルを変更させている。このため、双方の移動通信端末20A,20Bが徐々に近づいていることを、双方の距離が600m〜900mといった中距離、300m〜600mといった近距離、0m〜300mといった極近距離といったように段階的に判定でき、双方の移動通信端末20A,20Bの使用者に対して、この判定結果に応じて、双方が徐々に近づいていることを感覚的に音で把握させることができる。その結果、移動通信端末20A,20Bの使用者に安心感を与えることが可能となる。
【0040】
また、在圏情報格納部11に格納される在圏セル特定番号と隣接情報格納部12に格納される隣接セル特定番号とを複数の移動通信端末20それぞれの移動に応じて更新する更新部13を更に備えている。このため、移動通信端末20が移動しても、各特定番号が更新されるため、仮に待ち側の移動通信端末20が何らかの理由で目的地から移動してしまった場合、相手側の移動通信端末20は、報知内容によって、その事実を感覚的に把握することができる。
【0041】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、呼出音及び着信音の両方の音を判定部16での判定に応じて変更させていたが、呼出音及び着信音の少なくとも一方の音を判定部16での判定に応じて変更させるようにしてもよい。また、上記実施形態では、呼出音や着信音の音量を変更させることで音の内容を変えてきたが、呼出音や着信音の種類を変更させることで音の内容を変えるようにしてもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、在圏セルとそれに隣接する隣接セルからそれぞれがなる発信側セル群Aと着信側セル群Bとの一致を判定部16で判定するようにしていたが、隣接するセルに更に隣接するセル(在圏セルの隣の隣のセル)も含む近傍セルと在圏セルとからなる発信側セル群Aと着信側セル群Bとの一致を判定部16で判定するようにしてもよいし、在圏セルから所定の距離範囲内のすべてのセルを近傍セルとして、この近傍セルと在圏セルとからなる発信側セル群Aと着信側セル群Bとの一致を判定部16で判定するようにしてもよい。この場合、発信端末20A及び着信端末20B間の距離が更に遠方にあるうちから、双方の移動通信端末20A,20B間の相対的な位置関係を把握でき、双方の移動通信端末20A,20Bのうち少なくとも一方に対して、把握された位置関係に応じた報知を行うことができる。
【符号の説明】
【0043】
10…通信制御システム、11…在圏情報格納部、12…隣接情報格納部、13…更新部、14…交換制御部、15…取得部、16…判定部、17…音変更部、18…受信部、20…移動通信端末、20A…発信端末、20B…着信端末。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の移動通信端末のうち発信側となる発信端末と着信側となる着信端末との間の通信を制御する通信制御システムであって、
前記複数の移動通信端末それぞれの在圏セルを示す在圏セル情報を前記複数の移動通信端末それぞれを識別する識別番号毎に格納する在圏情報格納手段と、
前記複数の移動通信端末それぞれの在圏セルの近傍に位置する近傍セルを示す近傍セル情報を前記識別番号毎に格納する近傍情報格納手段と、
前記着信端末を特定する端末特定情報を含む発信要求信号を前記発信端末から受信する受信手段と、
前記受信手段によって前記発信要求信号が受信された場合、前記発信端末及び前記端末特定情報で特定される前記着信端末それぞれの前記在圏セル情報及び前記近傍セル情報を前記在圏情報格納手段及び前記近傍情報格納手段から取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された前記発信端末の前記在圏セル情報及び前記近傍セル情報で示される発信側セル群及び前記取得手段によって取得された前記着信端末の前記在圏セル情報及び前記近傍セル情報で示される着信側セル群が少なくとも一部で一致しているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記発信側セル群及び前記着信側セル群が少なくとも一部で一致していると判定された場合、前記発信端末への呼出音及び前記着信端末での着信音の少なくとも一方の音を変更させる音変更手段と、
を備える通信制御システム。
【請求項2】
前記判定手段は、前記発信側セル群及び前記着信側セル群が少なくとも一部で一致すると判定する際、前記発信側セル群及び前記着信側セル群の両方の在圏セルが一致する第1の判定と、前記発信側セル群及び前記着信側セル群の一方の在圏セルと他方の近傍セルとが一致する第2の判定と、前記発信側セル群及び前記着信側セル群の両方の近傍セルのみが一致する第3の判定とに分けて判定することを特徴とする請求項1に記載の通信制御システム。
【請求項3】
前記音変更手段は、前記判定手段による判定に応じて前記音の音量レベルを変更させることを特徴とする請求項1又は2に記載の通信制御システム。
【請求項4】
前記音変更手段は、前記判定手段による判定に応じて前記音の種類を変更させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の通信制御システム。
【請求項5】
前記在圏情報格納手段に格納される前記在圏セル情報と前記近傍情報格納手段に格納される前記近傍セル情報とを前記複数の移動通信端末それぞれの移動に応じて更新する更新手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の通信制御システム。
【請求項6】
複数の移動通信端末それぞれの在圏セルを示す在圏セル情報を前記複数の移動通信端末それぞれを識別する識別番号毎に格納する在圏情報格納手段と、前記複数の移動通信端末それぞれの在圏セルの近傍に位置する近傍セルを示す近傍セル情報を前記識別番号毎に格納する近傍情報格納手段とを備えた通信制御システムによって、前記複数の移動通信端末のうち発信側となる発信端末と着信側となる着信端末との間の通信を制御する通信制御方法であって、
前記着信端末を特定する端末特定情報を含む発信要求信号を前記発信端末から受信する受信ステップと、
前記受信ステップで前記発信要求信号が受信された場合、前記発信端末及び前記端末特定情報で特定される前記着信端末それぞれの前記在圏セル情報及び前記近傍セル情報を前記在圏情報格納手段及び前記近傍情報格納手段から取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得された前記発信端末の前記在圏セル情報及び前記近傍セル情報で示される発信側セル群及び前記取得ステップで取得された前記着信端末の前記在圏セル情報及び前記近傍セル情報で示される着信側セル群が少なくとも一部で一致しているか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップによって前記発信側セル群及び前記着信側セル群が少なくとも一部で一致していると判定された場合、前記発信端末への呼出音及び前記着信端末での着信音の少なくとも一方の音を変更させる音変更ステップと、
を含む通信制御方法。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−77693(P2011−77693A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225177(P2009−225177)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】