説明

通信機能付き計器

【課題】 通信性能の高いアンテナを計器本体から突出させることなく、簡便な手段により、十分な通信性能を持つ長さのアンテナを具備し得る通信機能付き計器を提供する。
【解決手段】 計器本体1とその計器本体1の前面に着脱自在に取り付けられた保護カバー2とからなる絶縁性筐体3を備えた計器において、外部機器との双方向無線通信が可能なアンテナ導体8を保護カバー2に配設し、計器本体1に内蔵された送受信回路とアンテナ導体8とを、保護カバー2および計器本体1に設けられた接続構造により電気的に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、一般家庭、事務所あるいは工場などに設置される電気計器、ガス計器や水道計器など各種計器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、一般家庭、事務所あるいは工場などに設置される電気計器の一つに、電力需要家が使用する電力量を計測して表示する電子式電力量計がある。この種の電子式電力量計では、計測した電圧、電流、電力量や位相などの計測データをセンター装置へ送信する遠隔検針システムが構築されつつある。また、電圧、電流、電力量や位相などの計測データをセンター装置へ送信する機能に加えて、電力の供給制御機能や家庭内ネットワークへの中継装置としての機能も付与されており、無線通信の重要性が増大してきている。
【0003】
この遠隔検針システムを構築するためには、無線通信を可能とするアンテナが必要であることから、アンテナを設けた電子式電力量計が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この種の電子式電力量計は、計器本体に収容した無線通信端局のアンテナを計器本体から突出させた構造を具備する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−93073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述したような無線通信を可能とするアンテナは、破損による通信不能を防止するためにも計器本体に内蔵させることが望ましい。一方、通信性能を十分に確保するためには、アンテナにある程度の長さが必要である。
【0006】
しかしながら、電子式電力量計のコンパクト化が進むなか、十分な通信性能を持つ長さのアンテナを計器本体に内蔵させることが困難である。そのため、通信性能の低いアンテナを計器本体に内蔵させるか、あるいは、通信性能の高いアンテナを計器本体から突出させるかのいずれかの構造を採用することになる。
【0007】
前者の場合、つまり、通信性能の低いアンテナを計器本体に内蔵させた場合、アンテナ性能の低さに起因して使用状況によっては通信途絶が発生するおそれがあった。また、後者の場合、つまり、通信性能の高いアンテナを計器本体から突出させた場合(特許文献1参照)、アンテナが計器本体の外部にあるため、運搬設置時の事故による破損あるいは故意による破損に起因する通信途絶や、アンテナの接続ミスあるいは接続忘れなどに起因する通信途絶が発生するおそれがあった。
【0008】
そこで、本発明は前述の問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、通信性能の高いアンテナを計器本体から突出させることなく、簡便な手段により、十分な通信性能を持つ長さのアンテナを具備し得る通信機能付き計器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、計器本体とその計器本体の前面に着脱自在に取り付けられた保護カバーとからなる絶縁性筐体を備えた計器において、外部機器との双方向無線通信が可能なアンテナ導体を保護カバーに配設し、計器本体に内蔵された送受信回路とアンテナ導体とを、保護カバーおよび計器本体に設けられた接続構造により電気的に接続したことを特徴とする。ここで、「双方向無線通信」とは、例えば電力量計の場合、電圧、電流、電力量や位相などの計測データを電力量計からセンター装置へ送信する機能と、センター装置からの制御信号を受信する機能、例えば、電力の供給制御機能や家庭内ネットワークへの中継装置としての機能との両方を併せ持つ無線通信を意味する。
【0010】
本発明では、外部機器との双方向無線通信が可能なアンテナ導体を保護カバーに配設したことにより、アンテナを計器本体に内蔵させないので十分な通信性能を持つ長さのアンテナを備えることになって、アンテナ性能の低さに起因して使用状況によって通信途絶が発生することがない。また、十分な通信性能を持つ長さのアンテナを計器本体から突出させることがないので、運搬設置時の事故による破損あるいは故意による破損に起因する通信途絶や、アンテナの接続ミスあるいは接続忘れなどに起因する通信途絶が発生することもない。
【0011】
本発明におけるアンテナ導体は、線状をなして保護カバーの内部に埋設されていることが望ましい。このようにすれば、運搬設置時の事故による破損あるいは故意による破損に起因する通信途絶を確実に回避することができる。また、本発明におけるアンテナ導体は、線状をなして保護カバーの内面に貼着された構造とすることも可能である。このようにすれば、保護カバーへのアンテナの形成が容易となる。さらに、本発明では、外部機器との双方向無線通信の異なる周波数帯域に対してそれぞれの周波数帯域に適合した長さのアンテナ導体を配設した構造とすることが望ましい。このようにすれば、外部機器との双方向無線通信における周波数帯域が異なる場合であっても迅速に対応することが可能となる。
【0012】
また、本発明では、計器本体に内蔵された送受信回路とアンテナ導体とを、保護カバーおよび計器本体に設けられた接続構造により電気的に接続したことにより、アンテナ導体と送受信回路とからなる構成でもって、外部機器との双方向無線通信を実現することができる。
【0013】
ここで、アンテナ導体と送受信回路との接続構造としては、保護カバーおよび計器本体のいずれか一方に設けられた雄型コネクタと、保護カバーおよび計器本体の他方に設けられて雄型コネクタが嵌合する雌型コネクタとで構成すればよい。また、アンテナ導体と送受信回路との他の接続構造としては、アンテナ導体の基端部を、保護カバーを計器本体に固定するための導電性雄ねじと電気的な接続が可能なように配設すると共に、雄ねじが螺合する導電性雌ねじを計器本体の送受信回路と電気的に接続することにより構成することも可能である。このようにすれば、簡単な構造でもって、アンテナ導体と送受信回路との接続が可能となって、外部機器との双方向無線通信を容易に実現できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、外部機器との双方向無線通信が可能なアンテナ導体を保護カバーに配設したことにより、アンテナを計器本体に内蔵させないので十分な通信性能を持つ長さのアンテナを備えることになって、アンテナ性能の低さに起因して使用状況によって通信途絶が発生することがない。また、十分な通信性能を持つ長さのアンテナを計器本体から突出させることがないので、運搬設置時の事故による破損あるいは故意による破損に起因する通信途絶や、アンテナの接続ミスあるいは接続忘れなどに起因する通信途絶が発生することもない。さらに、本発明によれば、計器本体に内蔵された送受信回路とアンテナ導体とを、保護カバーおよび計器本体に設けられた接続構造により電気的に接続したことにより、アンテナ導体と送受信回路とからなる構成でもって、外部機器との双方向無線通信を実現することができる。
【0015】
その結果、アンテナを計器本体から突出させることなく、十分な通信性能を備えた計器を提供することができ、例えば電力量計の場合、電圧、電流、電力量や位相などの計測データを電力量計からセンター装置へ送信する機能と、センター装置から電力量計へ送信する機能、例えば、電力の供給制御機能や家庭内ネットワークへの中継装置としての機能とを併せ持つ双方向無線通信が実現容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る通信機能付き計器の実施形態で、電子式電力量計の保護カバーおよび計器本体を示す斜視図である。
【図2】アンテナ導体を保護カバーの内部に埋設した実施形態で、そのアンテナ導体と送受信回路とをコネクタ構造で接続した例を示す部分断面図である。
【図3】アンテナ導体を保護カバーの内面に貼着した他の実施形態で、そのアンテナ導体と送受信回路とをコネクタ構造で接続した例を示す部分断面図である。
【図4】アンテナ導体を保護カバーの内部に埋設した実施形態で、そのアンテナ導体と送受信回路とをねじ構造で接続した例を示す部分断面図である。
【図5】アンテナ導体を保護カバーの内面に貼着した他の実施形態で、そのアンテナ導体と送受信回路とをねじ構造で接続した例を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る通信機能付き計器の実施形態を以下に詳述する。なお、以下の実施形態では、電力需要家が使用する電力量を計測して表示する電子式電力量計を例示するが、一般家庭、事務所あるいは工場などに設置される他の計器、例えばガス計器や水道計器など各種計器にも適用可能である。
【0018】
図1に示す実施形態の電子式電力量計は、計器本体1とその計器本体1の前面に着脱自在に取り付けられた保護カバー2とからなる絶縁性筐体3を備えた構造を具備する。
【0019】
計器本体1には、消費電力量を計測するための計測回路の他、計測した電圧、電流、電力量や位相などの計測データをセンター装置へ送信する機能と、センター装置からの制御信号を受信する機能、例えば、電力の供給制御機能や家庭内ネットワークへの中継装置としての機能との両方を併せ持つ双方向無線通信を可能とするための送受信回路4(図2〜図5参照)が内蔵されている。
【0020】
また、保護カバー2は、矩形状の前面部5aとその前面部5aの四辺を一体的に延在させた側面部5b〜5eとその側面部5b〜5eの周縁に設けられた枠状部6とからなり、背面が開口したガラスあるいは樹脂製の透明部材で構成され、計器本体1の前面に配設された液晶などの表示部(図示せず)を目視可能としている。この保護カバー2は、枠状部6の三箇所で雄ねじ7により計器本体1に固定される。
【0021】
この電力量計では、遠隔検針システムを構築するに当って、計測した電圧、電流、電力量や位相などの計測データをセンター装置へ送信する機能と、センター装置からの制御信号を受信する機能、例えば、電力の供給制御機能や家庭内ネットワークへの中継装置としての機能との両方を持つ双方向無線通信を可能とするため、送受信回路4と電気的に接続されたアンテナ導体8を設けている。この電力量計では、通信性能の低いアンテナを計器本体に内蔵させることなく、また、通信性能の高いアンテナを計器本体から突出させることなく、十分な通信性能を持つ長さのアンテナ導体8を保護カバー2に配設する。
【0022】
アンテナ導体8は、線状をなして保護カバー2の内部に埋設されている(図2および図4参照)。このような埋設構造にすれば、運搬設置時の事故による破損あるいは故意による破損に起因する通信途絶を確実に回避することができる。また、このアンテナ導体8は、線状をなして保護カバー2の内面に貼着された構造とすることも可能である(図3および図5参照)。このような貼着構造にすれば、保護カバー2へのアンテナ導体8の形成が容易となる。なお、この実施形態では、直線状をなすアンテナ導体8を例示しているが、十分な通信性能を持つ長さを確保するためにはジグザグ状に屈曲させた形状とすることも可能である。
【0023】
また、この実施形態では、PHSや無線LAN等の通信網によって外部機器との双方向無線通信の周波数帯域(電波の波長)が異なることから、それぞれの周波数帯域に適合した長さを有する二本のアンテナ導体8a,8bを配設した構造としている。例えば、一つのアンテナ導体8aは、一つの側面部5bから前面部5aに延在し、その前面部5aで屈曲させて他の側面部5c,5eへ延びて枠状部6へ達する長さを有する。また、もう一つのアンテナ導体8bは、一つの側面部5cから前面部5aへ延在し、その前面部5aと他の側面部5eとの境界部位まで延びる長さを有する。また、アンテナ導体8a,8bは、良好な指向性を確保できるパターン形状とすればよく、保護カバー2の前面5aおよび側面5b〜5eからなる全面を用いることができ、自由度が高く任意に設定できる。
【0024】
このように双方向無線通信の異なる周波数帯域に対してそれぞれの周波数帯域に適合する長さを有する二本のアンテナ導体8a,8bを設けておけば、外部機器との双方向無線通信における周波数帯域が異なる場合であっても迅速に対応することが可能となる。なお、この実施形態では、長さが異なる二本のアンテナ導体8a,8bを設けた場合を例示しているが、長さが異なる三本以上の複数本のアンテナ導体を設けることも可能である。
【0025】
以上のように、外部機器との双方向無線通信が可能なアンテナ導体8を保護カバー2に配設したことにより、アンテナを計器本体に内蔵させないので十分な通信性能を持つ長さのアンテナを備えることになって、アンテナ性能の低さに起因して使用状況によって通信途絶が発生することがない。また、十分な通信性能を持つ長さのアンテナを計器本体から突出させることがないので、運搬設置時の事故による破損あるいは故意による破損に起因する通信途絶や、アンテナの接続ミスあるいは接続忘れなどに起因する通信途絶が発生することもない。
【0026】
この電力量計において、計器本体1に内蔵された送受信回路4とアンテナ導体8とを、保護カバー2および計器本体1に設けられた接続構造により電気的に接続する。長さが異なる二本のアンテナ導体8a,8bは、それぞれの長さに適合した周波数帯域を持つ別々の送受信回路4にそれぞれ接続される。このように、計器本体1に内蔵された送受信回路4とアンテナ導体8とを、保護カバー2および計器本体1に設けられた接続構造により電気的に接続したことにより、アンテナ導体8と送受信回路4とからなる構成でもって、外部機器との双方向無線通信を実現することができる。
【0027】
このアンテナ導体8と送受信回路4との接続構造としては、図2および図3に示すようなコネクタ構造がある。なお、図2はアンテナ導体8を保護カバー2に埋設した構造、図3はアンテナ導体8を保護カバー2に貼着した構造をそれぞれ例示する。この接続構造は、保護カバー2の側面部5b,5cの周縁に設けられた雄型コネクタ11と、計器本体1の対応部位に設けられた雌型コネクタ12とで構成され、保護カバー2を計器本体1に雄ねじ7で固定することにより、雄型コネクタ11が雌型コネクタ12に嵌合することで電気的な接続が可能となる。
【0028】
また、アンテナ導体8と送受信回路4との他の接続構造としては、図4および図5に示すようなねじ構造が可能である。なお、図4はアンテナ導体8を保護カバー2に埋設した構造、図5はアンテナ導体8を保護カバー2に貼着した構造をそれぞれ例示する。この接続構造は、アンテナ導体8の基端部を、保護カバー2を計器本体1に固定するための導電性雄ねじ7と電気的な接続が可能なように配設すると共に、計器本体1に設けられた導電性雌ねじ9を計器本体1の送受信回路4と電気的に接続することにより構成され、保護カバー2を計器本体1に固定するに際して雄ねじ7が雌ねじ9に螺合することで電気的な接続が可能となる。
【0029】
なお、以上の実施形態では、アンテナ導体8と送受信回路4との接続構造として、コネクタ構造やねじ構造を例示したが、これらコネクタ構造やねじ構造以外の他の構造であってもよい。
【0030】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0031】
1 計器本体
2 保護カバー
3 筐体
4 送受信回路
7 雄ねじ
8(8a,8b) アンテナ導体
9 雌ねじ
11 雄型コネクタ
12 雌型コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計器本体とその計器本体の前面に着脱自在に取り付けられた保護カバーとからなる絶縁性筐体を備えた計器において、外部機器との双方向無線通信が可能なアンテナ導体を前記保護カバーに配設し、前記計器本体に内蔵された送受信回路と前記アンテナ導体とを、保護カバーおよび計器本体に設けられた接続構造により電気的に接続したことを特徴とする通信機能付き計器。
【請求項2】
前記アンテナ導体は、線状をなして前記保護カバーの内部に埋設されている請求項1に記載の通信機能付き計器。
【請求項3】
前記アンテナ導体は、線状をなして前記保護カバーの内面に貼着されている請求項1に記載の通信機能付き計器。
【請求項4】
前記外部機器との双方向無線通信の異なる周波数帯域に対してそれぞれの周波数帯域に適合した長さのアンテナ導体を配設した請求項1〜3のいずれか一項に記載の通信機能付き計器。
【請求項5】
前記アンテナ導体と送受信回路との接続構造は、前記保護カバーおよび計器本体のいずれか一方に設けられた雄型コネクタと、前記保護カバーおよび計器本体の他方に設けられて前記雄型コネクタが嵌合する雌型コネクタとで構成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の通信機能付き計器。
【請求項6】
前記アンテナ導体と送受信回路との接続構造は、アンテナ導体の基端部を、保護カバーを計器本体に固定するための導電性雄ねじと電気的な接続が可能なように配設すると共に、前記雄ねじが螺合する導電性雌ねじを計器本体の送受信回路と電気的に接続することにより構成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の通信機能付き計器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−197905(P2011−197905A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62747(P2010−62747)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000220882)株式会社エネゲート (42)
【Fターム(参考)】