説明

通信装置、通信プログラムおよび通信方法

【課題】パケットを再生する環境に依存すること無く、パケットの流れを正確に再現する通信装置を提供する。
【解決手段】クライアント装置10は、パケットを介してサーバー装置40と通信する通信部26と、通信する手順を時系列に示す通信手順情報16に従い通信部26を制御する通信制御部28と、通信手順情報16に基づくサーバー装置40との通信に所要した第1の所要時間を示すパケット通信記録14を生成する通信記録生成部22と、パケット通信記録14を記憶する記憶部12と、パケット通信記録14と通信手順情報16を比較する所要時間比較部18と、比較結果に基づいて通信手順情報16を修正することにより、第1の所要時間を通信手順情報16が想定する第2の所要時間に一致させる通信手順修正部20と、を備え、通信制御部28は、通信手順修正部20が修正した通信手順情報16に基づいて通信部26を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、通信プログラムおよび通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ネットワーク上を流れるパケットを記録し、記録したパケットを再生するパケット記録再生装置が使用されている。このパケット記録再生装置を用いて、ネットワーク上のパケットを記録し、再生することによって、ネットワーク上に存在する機器のトラフィックの影響などを検証することができる。この場合、下記特許文献1に示すように、記憶したパケットを再生する際に、受信したパケットとともに記憶した時刻に基づいて、受信したパケットと同じタイミングでパケットを再生することにより、実際にネットワーク上に流れていたトラフィック量を再現することができるパケット記録再生装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−208740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、記憶した時刻に合わせてパケットを再生する場合でも、再生する装置のハードウェア構成等が異なるために、パケットを再生する環境に起因してタイムラグが生じることが有り、このタイムラグは通信を行うたびに蓄積されるため、パケットの流れを環境等に依存することなく正確に再現することは困難であった。本発明は、パケットを再生する環境に依存すること無く、パケットの流れを正確に再現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]
本適用例にかかる通信装置は、ネットワークを介して接続された他の通信装置と通信する通信装置であって、パケットを介して前記他の通信装置と通信する通信部と、前記通信部が通信する手順を時系列に示す通信手順情報に従い前記通信部を制御する通信制御部と、前記通信手順情報に基づく前記他の通信装置との通信に所要した第1の所要時間を示す通信記録を生成する通信記録生成部と、前記通信記録を記憶する記憶部と、前記記憶部が記憶する前記通信記録と前記通信手順情報を比較する比較部と、前記比較部が比較した結果に基づいて前記通信手順情報を修正することにより、前記第1の所要時間を前記通信手順情報が想定する第2の所要時間に一致させる通信手順修正部と、を備え、前記通信制御部は、前記通信手順修正部が修正した前記通信手順情報に基づいて前記通信部を制御することを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、通信装置は、通信手順情報に基づいて他の通信装置と通信し、所要した第1の所要時間を通信記録として作成する。作成された通信記録は通信手順情報と比較され、比較結果に基づいて、第1の所要時間を通信手順情報が想定する第2の所要時間に一致させるべく通信手順情報が修正される。続いて、通信装置は、修正された通信手順情報に基づいて他の通信装置と通信する。この結果、通信装置は修正された通信手順情報が示す通信の所要時間で通信できるため、通信手順情報が示す時間に合わせて、パケットを介した通信を正確に再現できる。
【0008】
[適用例2]
上記適用例にかかる通信装置において、前記通信手順情報は、前記パケットを介して要求信号を送信するタイミングに関する情報と、前記要求信号に応じて前記他の通信装置が送信する応答信号の受信を起点に、次の前記要求信号を送信するまで待機する待機時間に関する情報と、を含み、前記通信手順修正部は、前記待機時間の時間長さを修正しても良い。
【0009】
[適用例3]
上記適用例にかかる通信装置において、前記記憶部は前記通信手順情報を記憶しても良い。
【0010】
[適用例4]
本適用例にかかる通信プログラムは、ネットワークを介して接続された他の通信装置と通信する通信プログラムであって、前記他の通信装置とパケットを介して通信する手順を時系列に示す通信手順情報に基づく通信に所要した第1の所要時間を示す通信記録を生成する通信記録生成機能と、前記通信記録を記憶する記憶機能と、前記通信記録と前記通信手順情報を比較する比較機能と、前記比較機能が比較した結果に基づいて前記通信手順情報を修正することにより、前記第1の所要時間を前記通信手順情報が想定する第2の所要時間に一致させる通信手順修正機能と、修正した前記通信手順情報に基づいて前記他の通信装置と通信する通信機能と、をコンピューターに実行させることを特徴とする。
【0011】
このような通信プログラムによれば、最初に、通信手順情報に基づいて他の通信装置と通信し、所要した第1の所要時間を通信記録として作成する。作成された通信記録は通信手順情報と比較され、比較結果に基づいて、第1の所要時間を通信手順情報が想定する第2の所要時間に一致させるべく通信手順情報が修正される。続いて、修正された通信手順情報に基づいて他の通信装置と通信する。この結果、修正された通信手順情報が示す通信の所要時間で通信できるため、通信手順情報が示す時間に合わせて、パケットを介した通信を正確に再現できる。
【0012】
[適用例5]
本適用例にかかる通信方法は、ネットワークを介して接続された他の通信装置と通信する通信方法であって、前記他の通信装置とパケットを介して通信する手順を時系列に示す通信手順情報に基づく通信に所要した第1の所要時間を示す通信記録を生成する通信記録生成工程と、前記通信記録を記憶する記憶工程と、前記通信記録と前記通信手順情報を比較する比較工程と、前記比較工程で比較した結果に基づいて前記通信手順情報を修正することにより、前記第1の所要時間を前記通信手順情報が想定する第2の所要時間に一致させる通信手順修正工程と、修正した前記通信手順情報に基づいて前記他の通信装置と通信する通信工程と、を有することを特徴とする。
【0013】
このような通信方法によれば、最初に、通信手順情報に基づいて他の通信装置と通信し、所要した第1の所要時間を通信記録として作成する。作成された通信記録は通信手順情報と比較され、比較結果に基づいて、第1の所要時間を通信手順情報が想定する第2の所要時間に一致させるべく通信手順情報が修正される。続いて、修正された通信手順情報に基づいて他の通信装置と通信する。この結果、修正された通信手順情報が示す通信の所要時間で通信できるため、通信手順情報が示す時間に合わせて、パケットを介した通信を正確に再現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る通信装置であるクライアント装置とサーバー装置とがネットワークに接続された概構成図。
【図2】本発明の実施形態に係る通信装置であるクライアント装置とサーバー装置との通信の一例を示す図。
【図3】通信手順の修正結果を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、通信装置について図面を参照して説明する。
【0016】
(実施形態)
図1は、通信装置としてのクライアント装置10と、サーバー機能部42を備えるサーバー装置40とがネットワーク34に接続された概構成図である。クライアント装置10とサーバー装置40は、何れもパーソナルコンピューターの様態であり、それぞれが通信部26,44を備える。これらの通信部26,44は、例えば、OSI(Open System Interconnection)参照モデルのような階層化されたプロトコルに基づき、生成したパケットを介して情報を送受信する。
クライアント装置10は、記憶部12、所要時間比較部18、通信手順修正部20、通信記録生成部22、通信アプリケーション部24、通信部26および通信制御部28を備え、サーバー装置40との間でやり取りするパケットを記録し、記録したパケットを再生する機能を有する。
記憶部12は、パケットを再生して通信する通信手順である通信手順情報16と、サーバー装置40との間でやり取りしたパケットを記録するパケット通信記録14を記憶する。
【0017】
通信手順情報16は、クライアント装置10からサーバー装置40にパケットを介して要求信号を送るタイミングと、その要求信号に応じてサーバー装置40からクライアント装置10にパケットを介して送られる応答信号を受けたのを起点に、次の要求信号を送るまでの待機時間と、を含む通信手順が時系列に決められている。この通信手順は、アプリケーション部24に応じてサーバー装置40との間で予め決定され、通信制御部28は通信手順情報16に基づいてパケットを再生すべく、通信部26を制御する。また、サーバー装置40のサーバー機能部42は、クライアント装置10から要求信号を受け取った場合、即座に応答信号を示すパケットをクライアント装置10に返す機能を有する。
また、パケット通信記録14は、通信手順情報16に従いパケットを再生し、クライアント装置10がサーバー装置40とパケット通信を行った際に所要した所要時間に関する通信記録である。尚、サーバー装置40と通信するに際して、ネットワークトラフィックや、使用するハードウェア等の環境の違い等が原因でタイムラグが生じた場合、パケット通信記録14に反映される。
【0018】
通信記録生成部22は、クライアント装置10がサーバー装置40と通信した場合にパケット通信記録14を生成し、生成したパケット通信記録14を記憶部12に記憶する。尚、通信記録生成部22が生成したパケット通信記録14は、通信手順情報16としてパケットを再生することもできる。
所要時間比較部18は、記憶部12に記憶されたパケット通信記録14に記録された実測の所要時間(第1の所要時間)と、通信手順情報16が想定する所要時間(第2の所要時間)とを比較し、比較した結果を通信手順修正部20に送る。
通信手順修正部20は、所要時間比較部18から送られる比較結果に基づいて、実測の所要時間が想定する所要時間と一致するように、通信手順情報16を修正する。本実施形態では、例えば、通信手順情報16と比較して、パケット通信記録14に記録された通信時間の方が多く所要している場合、通信手順修正部20は、通信手順情報16に決められている待機時間を短縮する。この結果、パケット通信記録14に記録されるパケット通信記録14は、通信手順情報16に合致する方向に調整され、タイムラグが軽減される。
【0019】
待機時間の短縮幅は、予め決められた時間で調整される。また、待機時間が短縮された結果、パケット通信記録14に記録された通信時間の方が通信手順情報16と比較して短縮された場合、所定の待機時間が付加され、予め決められた範囲に収まるまで調整されても良い。
通信アプリケーション部24は、図示を略したユーザーインターフェイスを備え、パケットの記録、再生や通信手順の作成を指示できる。
【0020】
次に、クライアント装置10とサーバー装置40との通信の一例を図2および図3を参照して説明する。図2は、クライアント装置10とサーバー装置40との間で行われる通信の一例を時系列に示す図である。また、図3は、この場合における通信手順の修正結果を説明する図である。尚、以降に示す時間の単位は、1単位が0.0001秒とする。
最初に、クライアント装置10は、起点となる時刻T0(0単位)において、サーバー装置40に対して要求信号を示すパケット(要求1)を送信する(ステップS100)。サーバー装置40は、要求1を受け、応答信号を示すパケット(応答1)をクライアント装置10に送信する(ステップS102)。
クライアント装置10は、応答1を時刻T1に受け取る。この場合、通信手順では、T1は2単位を想定するが、タイムラグにより通信記録は3単位となる。
クライアント装置10は、応答1を受けてから待機時間を示す待機1(T2−T1)に従い待機する。待機1は通信手順により2単位と決められているため、通信記録も2単位となっている。この結果。時刻はT2になる。
【0021】
次に、クライアント装置10は、時刻T2において、サーバー装置40に対して要求信号のパケット(要求2)を送信する(ステップS104)。サーバー装置40は、要求2を受け、応答信号のパケット(応答2)をクライアント装置10に送信する(ステップS106)。
クライアント装置10は、応答2を時刻T3に受け取る。この場合、通信手順では、T3は6単位を想定するが、応答1のタイムラグにより通信記録は7単位となる。
クライアント装置10は、応答2を受けてから待機時間を示す待機2(T4−T3)に従い待機する。待機2は通信手順により2単位と決められているが、環境等に起因するタイムラグにより通信記録が3単位となっている。この結果。時刻はT4になる。
【0022】
次に、クライアント装置10は、時刻T4において、サーバー装置40に対して要求信号のパケット(要求3)を送信する(ステップS108)。サーバー装置40は、要求3を受け、応答信号のパケット(応答3)をクライアント装置10に送信する(ステップS110)。
クライアント装置10は、応答3を時刻T5に受け取る。この場合、通信手順では、T5は10単位を想定するが、応答1および待機2のタイムラグにより通信記録は12単位となる。
クライアント装置10は、応答3を受けてから待機時間を示す待機3(T6−T5)に従い待機する。待機3は通信手順により2単位と決められているため、通信記録も2単位となっている。この結果。時刻はT6になる。
【0023】
次に、クライアント装置10は、時刻T6において、サーバー装置40に対して要求信号のパケット(要求4)を送信する(ステップS112)。サーバー装置40は、要求4を受け、応答信号のパケット(応答4)をクライアント装置10に送信する(ステップS114)。
クライアント装置10は、応答4を時刻T7に受け取る。この場合、通信手順では、T7は14単位を想定するが、応答1および待機2のタイムラグにより通信記録は16単位となる。
【0024】
以上の処理における通信記録は、所要時間比較部18で通信手順と比較される。この比較の結果、通信手順修正部20は、待機1の待機時間を2単位から1単位減らして1単位とし、更に、待機2の待機時間を2単位から1単位減らして1単位とする。そして、修正した通信手順で再度通信を行うことで得られる通信記録は、修正結果に示すように、通信手順の通信時間と略一致する。これにより、パケット通信の解析等のために通信手順の再現環境が異なる場合であっても、パケットの流れを正確に再現し、パケット通信を通信手順と略一致させることにより、通信時間の再現精度の向上を図ることができる。尚、上述の処理は、クライアント装置10上でプログラムとして実行されても良い。
【0025】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明したが、具体的な構成は、この実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、クライアント装置10とサーバー装置40に限定されるものでは無く、ネットワーク34に接続された種々の装置間においても適用できる。
また、以上のような手法を実施する装置は、単独の装置によって実現される場合もあれば、複数の装置を組み合わせることによって実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。
【符号の説明】
【0026】
10…クライアント装置、12…記憶部、14…パケット通信記録、16…通信手順情報、18…所要時間比較部、20…通信手順修正部、22…通信記録生成部、24…通信アプリケーション部、26…通信部、28…通信制御部、34…ネットワーク、40…サーバー装置、42…サーバー機能部、44…通信部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して接続された他の通信装置と通信する通信装置であって、
パケットを介して前記他の通信装置と通信する通信部と、
前記通信部が通信する手順を時系列に示す通信手順情報に従い前記通信部を制御する通信制御部と、
前記通信手順情報に基づく前記他の通信装置との通信に所要した第1の所要時間を示す通信記録を生成する通信記録生成部と、
前記通信記録を記憶する記憶部と、
前記記憶部が記憶する前記通信記録と前記通信手順情報を比較する比較部と、
前記比較部が比較した結果に基づいて前記通信手順情報を修正することにより、前記第1の所要時間を前記通信手順情報が想定する第2の所要時間に一致させる通信手順修正部と、を備え、
前記通信制御部は、前記通信手順修正部が修正した前記通信手順情報に基づいて前記通信部を制御することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通信装置において、
前記通信手順情報は、前記パケットを介して要求信号を送信するタイミングに関する情報と、前記要求信号に応じて前記他の通信装置が送信する応答信号の受信を起点に、次の前記要求信号を送信するまで待機する待機時間に関する情報と、を含み、
前記通信手順修正部は、前記待機時間の時間長さを修正することを特徴とする通信装置。
【請求項3】
請求項1乃至2のいずれかに記載の通信装置において、
前記記憶部は前記通信手順情報を記憶することを特徴とする通信装置。
【請求項4】
ネットワークを介して接続された他の通信装置と通信する通信プログラムであって、
前記他の通信装置とパケットを介して通信する手順を時系列に示す通信手順情報に基づく通信に所要した第1の所要時間を示す通信記録を生成する通信記録生成機能と、
前記通信記録を記憶する記憶機能と、
前記通信記録と前記通信手順情報を比較する比較機能と、
前記比較機能が比較した結果に基づいて前記通信手順情報を修正することにより、前記第1の所要時間を前記通信手順情報が想定する第2の所要時間に一致させる通信手順修正機能と、
修正した前記通信手順情報に基づいて前記他の通信装置と通信する通信機能と、をコンピューターに実行させることを特徴とする通信プログラム。
【請求項5】
ネットワークを介して接続された他の通信装置と通信する通信方法であって、
前記他の通信装置とパケットを介して通信する手順を時系列に示す通信手順情報に基づく通信に所要した第1の所要時間を示す通信記録を生成する通信記録生成工程と、
前記通信記録を記憶する記憶工程と、
前記通信記録と前記通信手順情報を比較する比較工程と、
前記比較工程で比較した結果に基づいて前記通信手順情報を修正することにより、前記第1の所要時間を前記通信手順情報が想定する第2の所要時間に一致させる通信手順修正工程と、
修正した前記通信手順情報に基づいて前記他の通信装置と通信する通信工程と、を有することを特徴とする通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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