説明

通信装置、通信方法、及びプログラム

【課題】非接触通信を行う外部装置及び通信装置のアンテナ同士の密結合状態を適切に検知できる通信装置、通信方法、及びプログラムの実現が求められている。
【解決手段】搬送波を用いて外部装置と非接触通信を行う通信アンテナと、前記通信アンテナの前記搬送波の周波数として、大きさが異なる複数の周波数を順次発生する周波数発生部と、前記周波数発生部が順次発生した周波数毎の前記通信アンテナの電圧値を測定し、測定した各電圧値を繋げた仮想曲線において2つの極を検出した場合には、前記通信アンテナと前記外部装置のアンテナとの結合状態が密結合状態であると判定する制御部と、を備える、通信装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信装置、通信方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リーダ/ライタ(または、リーダ/ライタを搭載した通信装置。以下単に「リーダ/ライタ」という。)と非接触式に通信を行うことができる、非接触式IC(Integrated Circuit)カードや、RFID(Radio Frequency Identification)タグ、非接触式ICチップを搭載した携帯電話など(以下、「ICカード」という。)の通信端末が普及している。
【0003】
リーダ/ライタと、ICカードなどの通信端末は、例えば13.56MHzなどの特定の周波数の搬送波を通信に使用している。具体的には、リーダ/ライタが搬送波信号をのせた搬送波を送信し、搬送波をアンテナで受信したICカードが負荷変調によって受信した搬送波信号に対する応答信号を返信することにより、リーダ/ライタとICカードは通信を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−272697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した非接触式の通信において、リーダ/ライタとICカードの距離が近すぎると、リーダ/ライタのアンテナとICカードのアンテナとが密結合状態となり、波形が歪み、通信障害が発生する。このような通信障害の発生を回避するためには、リーダ/ライタのアンテナとICカードのアンテナとの密結合状態を適切に検知することが望ましい。
【0006】
そこで、非接触通信を行う外部装置及び通信装置のアンテナ同士の密結合状態を適切に検知できる通信装置、通信方法、及びプログラムの実現が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示によれば、搬送波を用いて外部装置と非接触通信を行う通信アンテナと、前記通信アンテナの前記搬送波の周波数として、大きさが異なる複数の周波数を順次発生する周波数発生部と、前記周波数発生部が順次発生した周波数毎の前記通信アンテナの電圧値を測定し、測定した各電圧値を繋げた仮想曲線において2つの極を検出した場合には、前記通信アンテナと前記外部装置のアンテナとの結合状態が密結合状態であると判定する制御部と、を備える、通信装置が提供される。
【0008】
また、本開示によれば、外部装置と非接触通信を行う通信アンテナの搬送波の周波数として、大きさが異なる複数の周波数を順次発生することと、順次発生した周波数毎の前記通信アンテナの電圧値を測定することと、測定した各電圧値を繋げた仮想曲線において2つの極を検出した場合には、前記通信アンテナと前記外部装置のアンテナとの結合状態が密結合状態であると判定することと、を有する、通信方法が提供される。
【0009】
また、本開示によれば、外部装置と非接触通信を行う通信アンテナの搬送波の周波数として、大きさが異なる複数の周波数を順次発生することと、順次発生した周波数毎の前記通信アンテナの電圧値を測定することと、測定した各電圧値を繋げた仮想曲線において2つの極を検出した場合には、前記通信アンテナと前記外部装置のアンテナとの結合状態が密結合状態であると判定することと、をコンピュータに実行させるための、プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように本開示によれば、非接触通信を行う外部装置及び通信装置のアンテナ同士の密結合状態を適切に検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】通信システム10の構成を示す図である。
【図2】通信装置100と携帯端末200の概略構成を示す回路図である。
【図3】通信装置100と携帯端末200が近づいたときに起こる結合変化を説明するための図である。
【図4】通信装置100の詳細構成を示す図である。
【図5】通信装置100と携帯端末200の位置関係を説明するための図である。
【図6】周波数を変えた際の通信アンテナ104における電圧値を示すグラフである。
【図7】アンテナ特性を変更する通信装置100の構成例を示す図である。
【図8】通信アンテナの結合状態の検知処理の際の通信装置100の動作を説明するためのフローチャートである。
【図9】通信アンテナの結合状態の判定処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】他の実施形態に係る通信装置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.通信システムの概要
2.通信アンテナの結合状態について
3.通信装置の構成
4.通信アンテナの結合状態の検知処理
5.まとめ
【0014】
<1.通信システムの概要>
図1を参照して、本実施形態に係る通信システム10の概要について説明する。図1は、通信システム10の構成を示す図である。
【0015】
通信システム10は、非接触式の無線通信で通信データの送受信を行う。通信システム10は、リーダ/ライタ機能を有する通信装置100と、ICチップが搭載された携帯電話機等の携帯端末200とを有する。通信装置100は、本実施形態では携帯電話機等の携帯端末である。なお、通信システム10は、リーダ/ライタ機能を有する通信装置として、携帯端末の代わりに自動改札機を有しても良い。また、本実施形態では、携帯端末200が外部装置に該当するが、ICチップを搭載したICカードが外部装置であっても良い。
【0016】
通信システム10では、特定の周波数(例えば、13.56MHz)の搬送波が通信に使用されている。具体的には、通信装置100が搬送波信号をのせた搬送波を送信し、搬送波を後述する通信アンテナ204で受信した携帯端末200が、受信した搬送波信号に対する応答信号を返信することにより、通信装置100と携帯端末200が通信を行っている。
【0017】
次に、図2を参照して、通信装置100と携帯端末200の概略構成について説明する。図2は、通信装置100と携帯端末200の概略構成を示す回路図である。
【0018】
図2に示すように、通信装置100は、変調部102と、通信部の一例である通信アンテナ104とを有する。
【0019】
変調部102は、不図示の制御部からの搬送波信号の生成命令を受けて、命令に応じた搬送波信号を生成する。なお、搬送波信号には、例えば携帯端末200に対する各種処理命令や処理するデータを含めることができる。
【0020】
通信アンテナ104は、例えば所定のインダクタンスを有するコイルを備え、変調部102が生成した搬送波信号をのせた搬送波を送信する。また、通信アンテナ104は、携帯端末200からの応答信号を受信する。なお、図2では、通信アンテナ104が、コイルとキャパシタを含む共振回路で構成された例が示されている。
【0021】
携帯端末200は、図2に示すように、通信アンテナ204と、負荷Zとを有する。負荷Zは、携帯端末200に搭載されるICチップを等価的に示したものである。
【0022】
通信アンテナ204は、例えば所定のインダクタンスを有するコイルを備え、通信アンテナ104から送信された搬送波信号がのった搬送波を受信する。また、通信アンテナ204は、負荷変調により、受信した搬送波に対する応答を行うことができる。
【0023】
なお、通信装置100は、通信アンテナ104におけるアンテナ端Pの電圧を検出することにより、携帯端末200からの応答信号を復調することができる。
【0024】
<2.通信アンテナの結合状態について>
ところで、通信装置100と携帯端末200は、携帯性を有するため、通信装置100と携帯端末200の距離は変動する。そして、通信装置100と携帯端末200の距離が近すぎると、通信装置100の通信アンテナ104と携帯端末200の通信アンテナ204とが密結合状態となり、非接触通信の際に通信障害が発生する。
【0025】
図3を用いて、詳細に説明する。図3は、通信装置100と携帯端末200が近づいたときに起こる結合変化を説明するための図である。図3の周波数fは、13.56MHzである。通信装置100が携帯端末200から離れていると、通信装置100の通信アンテナ104と、携帯端末200の通信アンテナ204とは、疎結合状態である。この疎結合状態は、周波数特性は極を一つ持つ単峰特性を有し、通信装置100と携帯端末200の間で信号の送受信が行われる。なお、疎結合状態のときは、結合係数K、アンテナ特性Qを用いると、以下の関係が成り立つ。

【0026】
ここで、結合係数Kとアンテナ特性Qは、以下のように定義される。

なお、Lは通信アンテナ104の自己インダクタンスであり、Lは通信アンテナ204の自己インダクタンスである。Qは通信アンテナ104のQ値であり、Qは通信アンテナ204のQ値である。Mは、通信アンテナ104と通信アンテナ204の相互インダクタンスである。
【0027】
疎結合状態から、通信装置100と携帯端末200が近づくと、極が大きくなる。そして、極が最大になるときが臨界結合状態である。臨界結合状態でも、周波数特性は単峰特性となる。なお、臨界結合状態のときは、以下の関係が成り立つ。

なお、臨界結合状態のときは、通信効率が最も良い。
【0028】
一方で、臨界結合状態から、通信装置100と携帯端末200が更に近づくと、極が二つに分かれる。極を二つ有するときが密結合状態である。密結合状態では、周波数特性は双峰特性となる。なお、密結合状態のときは、以下の関係が成り立つ。

【0029】
極が二つに分かれる密結合状態のときは、通信波形が歪むため、通信効率が低下して、非接触通信の際に通信障害が発生しやすい。このため、通信障害の発生を防止するためには、密結合状態を適切に検知することが望ましい。
【0030】
そこで、非接触通信を行う通信装置100及び携帯端末200の通信アンテナ同士の密結合状態を適切に検知するために、本実施形態に係る通信装置100は、通信アンテナの結合状態の検知処理を行う。通信アンテナの結合状態の検知処理として、通信装置100は、携帯端末200と非接触通信を行う通信アンテナ104の搬送波の周波数として、大きさが異なる複数の周波数を順次発生させ、順次発生した周波数毎の通信アンテナ104の電圧値を測定する。そして、通信装置100は、測定した各電圧値を繋げた仮想曲線において2つの極を検出した場合には、通信アンテナ104と携帯端末200の通信アンテナ104との結合状態が密結合状態であると判定する。
【0031】
<3.本実施形態に係る通信装置の詳細構成>
図4を参照して、本実施形態に係る通信装置100の詳細構成について説明する。図4は、通信装置100の詳細構成を示す図である。
【0032】
図4に示すように、通信端末100は、アンテナコイル402と、共振用コンデンサ404と、周波数発生部406と、整流部408と、マイクロコンピュータ420を備える。
【0033】
アンテナコイル402と共振用コンデンサ404は、図2の通信アンテナ104を構成する。また、アンテナコイル402と共振用コンデンサ404は、共振回路を形成している。
【0034】
周波数発生部406は、通信アンテナ104の搬送波に供される正弦波を発生する。携帯端末200と信号の送受信を行う際には、周波数発生部406は、通信アンテナ104の搬送波の周波数が13.56MHzとなるように、正弦波を発生する。
【0035】
また、本実施形態に係る周波数発生部406は、搬送波(正弦波)の周波数の大きさを可変とすることが可能である。そして、周波数発生部406は、通信アンテナ104と通信アンテナ204の結合状態を検知するために、通信アンテナ104の搬送波の周波数として、大きさが異なる複数の周波数を順次発生する。
【0036】
ここで、周波数発生部406は、所定範囲の周波数帯において大きさが一定間隔で異なる複数の周波数を順次発生する。例えば、周波数発生部406は、5MHz〜25MHzの範囲で、10KHzの間隔で周波数を順次発生する。このように周波数を細分化して発生することで、後述する結合状態の検知精度を高めることができる。なお、5MHz〜25MHzの範囲は一例に過ぎず、周波数発生部406は10MHz〜20MHzの範囲で周波数を順次発生しても良い。かかる場合には、処理時間を短くすることが可能となる。
【0037】
周波数発生部406が周波数を変えて正弦波を発生することにより、通信アンテナ104における電圧値も変化する。通信アンテナ104における電圧値は、整流部408を経てマイクロコンピュータ420に送られる。
【0038】
マイクロコンピュータ420は、周波数発生部406が周波数を変えて正弦波を発生する際の、通信アンテナ104における電圧を順次測定する。マイクロコンピュータ420は、A/D変換器422と、制御部の一例であるCPU424と、記憶部の一例であるROM426と、RAM428を有する。
【0039】
A/D変換器422は、整流部408を介して入力された電圧値をデジタル変換する。A/D変換器422は、デジタル変換された電圧値をCPU424に出力する。
【0040】
ROM426は、予め測定した通信アンテナ104の基準電圧値を記憶する。ここで、基準電圧値は、図5の状態Aに示すように通信装置100の周囲に携帯端末200が存在しない場合に、周波数発生部406が周波数を順次発生した際に測定された通信アンテナ104の電圧値である。
【0041】
RAM428は、A/D変換器424によりデジタルに変換された各電圧値を順次記憶する。
【0042】
CPU424は、通信装置100の全体の動作を制御する。本実施形態のCPU424は、周波数発生部406が順次発生した周波数毎の通信アンテナ104の電圧値を測定する。通信アンテナ104の電圧値は、通信アンテナ104のアンテナ端P(図2)の電圧値である。CPU424は、測定した電圧値をRAM428に記憶させる。
【0043】
CPU424は、ROM426に記憶された基準電圧値と、測定した各電圧値との差分を求める。すなわち、CPU424は、ROM426に記憶された基準電圧値と、RAM428に記憶された測定電圧値との差分を求める。そして、CPU424は、求めた差分の各電圧値を繋げた仮想曲線において2つの極を検出した場合には、通信アンテナ104と携帯端末200の通信アンテナ204との結合状態が密結合状態であると判定する。
【0044】
また、CPU424は、周波数発生部406の周波数の発生タイミングを制御する。例えば、CPU424は、通信装置100と携帯端末200の間で信号の送受信が行われない際に、周波数発生部406に複数の周波数を順次発生させる。これにより、信号の送受信に影響を与えずに、通信アンテナの結合状態を検知できる。
【0045】
ここで、図5と図6を参照して、通信装置100と携帯端末200の位置関係と、通信アンテナ104における測定電圧値との関係について説明する。
【0046】
図5は、通信装置100と携帯端末200の位置関係を説明するための図である。図5の状態Aは、通信装置100の周囲に携帯端末200が存在しない状態である。図5の状態Bは、通信装置100から離れた位置(通信可能な位置)に携帯端末200が存在する状態である。図5の状態Cは、通信装置100の近くの位置に携帯端末200が存在する状態である。
【0047】
図6は、上述した状態A〜Cにおいて、周波数を変えた際の通信アンテナ104における電圧値を示すグラフである。すなわち、図6のグラフAは図5の状態Aに対応し、グラフBは状態Bに対応し、グラフCは状態Cに対応する。図6のグラフは、周波数発生部406が5MHz〜25MHzの範囲で周波数を変えた際の、通信アンテナ104の基準電圧値と測定電圧値の差分を繋げた曲線(仮想曲線)を示している。
【0048】
図6に示すように、状態Aの場合には、周囲に携帯端末200が存在しないため、周波数の大きさが変わっても通信アンテナ104の電圧値の大きさは一定である。状態Bの場合には、携帯端末200が通信装置100から離れており、仮想曲線の極が1つである疎結合状態である。状態Cの場合には、携帯端末200が通信装置100に接近しており、仮想曲線の極が2つである密結合状態である。
【0049】
CPU424は、求めた差分の電圧値を繋げた仮想曲線に対して微分計算を行うことで、仮想曲線の極を検出する。すなわち、CPU424は、微分計算により仮想曲線の傾きを求め、例えば傾きが「0」を跨ぐところ、+(プラス)から−(マイナス)へ電圧値が変化する部分を極として検出する。
【0050】
CPU424は、仮想曲線において2つの極を検出した場合には、通信アンテナ104と通信アンテナ204との結合状態が密結合状態であると判定する。一方で、CPU424は、仮想曲線において1つの極を検出した場合には、通信アンテナ104と通信アンテナ204との結合状態が疎結合状態であると判定する。
【0051】
また、CPU424は、周波数発生部406が複数の周波数を順次発生する際の周波数発生部406の出力を、周波数発生部406が所定大きさの周波数を発生する際の周波数発生部406の出力よりも小さくする。すなわち、通信アンテナの結合状態の検知処理をする際の周波数発生部406の出力を小さくすることで、消費電力を低くすることができる。
【0052】
CPU424は、密結合状態であると判定した場合には、測定した電圧値に基いて通信アンテナ104のアンテナ特性を変更する。すなわち、CPU424は、通信アンテナの結合状態を密結合状態から疎結合状態へ移行するように、アンテナ特性を変更する。これにより、密結合状態を解消して通信状態を改善することができる。
【0053】
より望ましくは、CPU424は、密結合状態であると判定した場合には、測定した電圧値に基いて、通信アンテナ104と通信アンテナ204との結合状態が臨界結合状態となるように通信アンテナ104のアンテナ特性を変更すると良い。ここで、臨界結合状態は、通信アンテナ104と通信アンテナ204の通信効率が最も高い結合状態である。このため、臨界結合状態となるようにアンテナ特性を変更することで、通信状態を最適に改善できる。
【0054】
図7は、アンテナ特性を変更する通信装置100の構成例を示す図である。図7の通信装置100は、通信アンテナ104のキャパシタンス(C)412と抵抗(R)414を変更できる。図7の通信装置100は、通信アンテナ104のキャパシタンス412と抵抗414を変更できる構成以外は、図4の通信装置100の構成と同様である。
【0055】
図7の通信装置100のCPU424は、例えば、通信アンテナ104のキャパシタンス412又は抵抗414を変化させて、密結合状態から臨界結合状態へ移行するように調整する。例えば抵抗414を小さくすると通信アンテナのQ値も小さくなり、密結合状態が次第に解消されて臨界結合状態となる。密結合状態から臨界結合状態へ移行することで、通信状態をより最適に改善できる。
【0056】
<4.通信アンテナの結合状態の検知処理>
図8を参照して、通信アンテナの結合状態の検知処理について説明する。図8は、通信アンテナの結合状態の検知処理の際の通信装置100の動作を説明するためのフローチャートである。本処理は、通信装置100のCPU424がROM426に記憶されたプログラムを実行することで、実現される。
【0057】
図8のフローチャートの検知処理は、通信装置100と携帯端末200との間で信号の送受信が行われない時に開始される。例えば、通信装置100が携帯端末200に送信信号を送る前又は送信信号を送った後に、本検知処理が開始される。なお、通信装置100のROM426には、予め、前述した通信アンテナ104の基準電圧値が、周波数と対応づけて記憶されている。
【0058】
本処理において、CPU424は、まず、周波数発生部406の周波数を最低周波数に設定する(ステップS102)。例えば、周波数の可変範囲が5MHz〜25MHzである場合には、CPU424は、最低周波数として5MHzを設定する。
【0059】
次に、CPU424は、最低周波数が設定された周波数発生部406に、最低周波数を有する正弦波を発生させる(ステップS104)。周波数発生部406が正弦波を発生することで、通信アンテナ104のアンテナ端Pの電圧が変動する。
【0060】
次に、CPU424は、周波数発生部406が発生した正弦波の周波数が、所定の最高周波数であるか否かを判定する(ステップS106)。ここで、最高周波数は、周波数の可変範囲が5MHz〜25MHzである場合には、25MHzである。
【0061】
ステップS106で、周波数発生部406が発生した正弦波の周波数が最高周波数で無いと判定された場合には(No)、CPU424は、通信アンテナ104のアンテナ端Pの電圧値を測定し、測定電圧値をRAM428に記憶する(ステップS108)。この際、CPU424は、周波数発生部406が発生した周波数と、通信アンテナ104の電圧値とを対応付けて、RAM428に記憶する。
【0062】
次に、CPU424は、周波数発生部406の周波数を10KHzだけ大きく設定し、設定された周波数の正弦波を周波数発生部406に発生させる(ステップS108)。ここで、周波数の大きさの変更は、例えば10ms毎に行われる。そして、CPU424は、再度ステップS106の処理を行う。
【0063】
このように、本処理においては、周波数発生部406が発生した正弦波の周波数が最高周波数になるまで、ステップS108とステップS110の処理を繰り返す。これにより、5MHz〜25MHzの10KHz間隔の周波数毎の通信アンテナ104の電圧値が、RAM428に記憶される。
【0064】
ステップS106で、周波数発生部406が発生した正弦波の周波数が最高周波数であると判定された場合には(Yes)、CPU424は、電圧値の測定を完了し、通信アンテナの結合状態の判定処理を行う(ステップS112)。すなわち、CPU424は、通信装置100の通信アンテナ104と携帯端末200の通信アンテナ204の結合状態が、疎結合状態又は密結合状態であるかを判定する。
【0065】
図9は、通信アンテナの結合状態の判定処理を説明するためのフローチャートである。CPU424は、5MHz〜25MHzにおける10KHz間隔の周波数毎に、ROM426に記憶された基準電圧値と、RAM428に記憶された測定電圧値との差分を求める(ステップS202)。これにより、例えば、図6等で説明した仮想曲線を取得することができる。
【0066】
次に、CPU424は、取得した仮想曲線から極を検出する(ステップS204)。例えば、CPU424は、仮想曲線に対して微分計算を行うことで、極の数を検出する。そして、CPU424は、検出した極の数が1つである場合には、通信アンテナの結合状態が疎結合であると判定する。一方で、検出した極の数が2つである場合には、CPU424は、通信アンテナの結合状態が密結合状態であると判定する。
【0067】
上述した通信アンテナの結合状態の検知処理によれば、疎結合状態と密結合状態とを検出できるので、非接触通信を行う通信装置100及び携帯端末200の通信アンテナ同士の密結合状態を適切に検知できる。そして、密結合状態を検知した後に、通信装置100は、例えば通信アンテナ104のアンテナ特性を変更することで、密結合状態を解消して通信状態を改善することができる。
【0068】
また、通信装置100は、上述した検知処理を、通信装置100と携帯端末200との間で信号の送受信が行われない時に、複数回実行しても良い。これにより、仮に密結合状態が解消された後に再度密結合状態になっても、密結合状態を解消して良好な通信状態を維持することができる。
【0069】
なお、上記では、5MHz〜25MHzにおける10KHz間隔の周波数に対応した各電圧値を測定した後に、通信アンテナの結合状態の判定処理を行っていたが、これに限定されない。例えば、通信アンテナ104の電圧値の測定と、通信アンテナの結合状態の判定処理とを並行して、実行しても良い。これにより、判定処理の開始タイミングが早まるので、処理時間を短縮できる。
【0070】
また、上記では、10KHz間隔の周波数に対応した電圧値を測定することとしたが、これに限定されない。例えば、判定処理において1つ目の極が検出された場合には、周波数の間隔を10KHzよりも大きくしても良い。これにより、測定数が減るので、処理時間を短縮できる。
【0071】
また、上記では、通信装置100が携帯端末200に送信信号を送る前又は送信信号を送った後に、本検知処理が開始されることとしたが、これに限定されない。例えば、通信装置100がポーリング処理を連続して行う際には、2つのポーリング処理の合間の無変調時に通信アンテナの結合状態の検知処理を行うこととしても良い。また、各コマンドのリトライ発生時には、リトライ発生後に通信アンテナの結合状態の検知処理を行うこととしても良い。
【0072】
<5.まとめ>
上述したように、本実施形態に係る通信装置100は、携帯端末200と非接触通信を行う通信アンテナ104の搬送波の周波数として、大きさが異なる複数の周波数を順次発生させ、順次発生した周波数毎の通信アンテナ104の電圧値を測定する。そして、通信装置100は、測定した各電圧値を繋げた仮想曲線において2つの極を検出した場合には、通信アンテナ104と携帯端末200の通信アンテナ104との結合状態が密結合状態であると判定する。
【0073】
これにより、非接触通信を行う通信装置100及び携帯端末200の通信アンテナ同士の密結合状態を適切に検知できる。そして、密結合状態を適切に検知した後に、通信装置100は、例えば通信アンテナ104のアンテナ特性を変更する(例えば、前述したように、キャパシタンス又は抵抗を変更する)ことで、密結合状態を解消して通信状態を改善することができる。
【0074】
なお、通信装置100は、例えば携帯端末200を非接触式で充電する機能を有しても良い。通信装置100が非接触充電機能を有する場合には、通信アンテナの結合状態が臨界結合状態となるようにアンテナ特性を変更した後に充電を行うことで、充電の効率を高めることができる。臨界結合状態の場合に充電効率が最大になるからである。
【0075】
また、上述したように、通信アンテナの結合状態の判定処理の際には、小さい出力で周波数発生部406が周波数を発生することとした。なお、判定処理で密結合状態と判定されアンテナ特性を変更した後に、出力を大きくして周波数発生部406が13.56MHzの周波数を発生しても良い。すなわち、携帯端末200が通信装置100に接近したことを検知したら(通信装置100は、近接センサの機能を有する)、周波数発生部406の出力を上げても良い。これにより、消費電力を抑えつつ、携帯端末200との通信状態を良好なものにできる。
【0076】
ところで、上記では、通信装置100のマイクロコンピュータ420(図4)が、通信アンテナの結合状態の判定処理を行うこととしたが、これに限定されない。例えば、図10に示すように、アナログ回路で、通信アンテナの結合状態の判定処理を行うこととしても良い。
【0077】
図10は、他の実施形態に係る通信装置を説明するための図である。図10に示す通信装置100は、マイクロコンピュータ420に代わりに、オペアンプを使ったピーク検出回路450が通信アンテナの結合状態の判定処理を行う。図10に示す通信装置100は、ピーク検出回路450以外の構成は、図4に示す通信装置100の構成と同様であるので、以下においては、ピーク検出回路450について説明する。
【0078】
図10に示すように、ピーク検出回路450は、オペアンプ452と、コンパレータ454と、スイッチ456等を有する。オペアンプ452には、整流部408を介して周波数毎の通信アンテナ104の電圧値が入力される。ピーク検出回路450は、コンパレータ454により、オペアンプ452の入力とオペアンプ452の出力を比較する。そして、ピーク検出回路450は、オペアンプ452の入力が下がり始めたところを変化点として捉え、ピーク(極)があることを検出する。
【0079】
ピーク検出回路450は、1つ目のピークを検出したら、オペアンプ452の入力同士をスイッチ456で短絡させ、0Vにリセットする。その後、ピーク検出回路450は、同様に、2つの目のピークの検出を試みる。2つ目のピークが検出されたら、ピーク検出回路450は、通信アンテナの結合状態が密結合状態であると判定する。このように、図10に示すピーク検出回路450によっても、非接触通信を行う通信装置100及び携帯端末200の通信アンテナ同士の密結合状態を適切に検知できる。
【0080】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本技術はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0081】
また、上記実施形態では、通信装置として携帯電話機や自動改札機を例に挙げて説明したが、これに限定されない。通信装置は、リーダ/ライタ機能及び報知部を有する、デジタルカメラ、PDA、ゲーム機、電子辞書、タブレット等であっても良い。
【0082】
また、上記の実施形態のフローチャートに示されたステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的に又は個別的に実行される処理をも含む。また時系列的に処理されるステップでも、場合によっては適宜順序を変更することが可能であることは言うまでもない。
【0083】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)搬送波を用いて外部装置と非接触通信を行う通信アンテナと、
前記通信アンテナの前記搬送波の周波数として、大きさが異なる複数の周波数を順次発生する周波数発生部と、
前記周波数発生部が順次発生した周波数毎の前記通信アンテナの電圧値を測定し、測定した各電圧値を繋げた仮想曲線において2つの極を検出した場合には、前記通信アンテナと前記外部装置のアンテナとの結合状態が密結合状態であると判定する制御部と、
を備える、通信装置。
(2)前記周波数発生部は、所定範囲の周波数帯において大きさが一定間隔で異なる複数の周波数を順次発生する、前記(1)に記載の通信装置。
(3)前記通信アンテナは、前記周波数発生部が発生した所定大きさの周波数の搬送波を用いて、前記外部装置との間で信号の送受信を行い、
前記信号の送受信が行われない際に、前記制御部は、前記周波数発生部に前記複数の周波数を順次発生させる、前記(1)又は(2)に記載の通信装置。
(4)前記制御部は、前記周波数発生部が前記複数の周波数を順次発生する際の前記周波数発生部の出力を、前記周波数発生部が前記所定大きさの周波数を発生する際の前記周波数発生部の出力よりも小さくする、前記(3)に記載の通信装置。
(5)前記制御部は、前記密結合状態であると判定した場合には、測定した前記電圧値に基いて前記通信アンテナのアンテナ特性を変更する、前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の通信装置。
(6)前記制御部は、前記密結合状態であると判定した場合には、測定した前記電圧値に基いて、前記通信アンテナと前記外部装置のアンテナとの結合状態が臨界結合状態となるように前記アンテナ特性を変更する、前記(5)に記載の通信装置。
(7)前記周波数毎の前記通信アンテナの電圧値として、予め測定した結果に基づく基準電圧値を記憶する記憶部を更に備え、
前記制御部は、
前記記憶部に記憶された前記基準電圧値と、測定した各電圧値との差分を求め、
求めた差分の各電圧値を繋げた仮想曲線において2つの極を検出した場合には、前記通信アンテナと前記外部装置のアンテナとの結合状態が密結合状態であると判定する、前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の通信装置。
(8)前記制御部は、前記仮想曲線に対して微分計算を行うことで、前記仮想曲線の極を検出する、前記(7)に記載の通信装置。
(9)外部装置と非接触通信を行う通信アンテナの搬送波の周波数として、大きさが異なる複数の周波数を順次発生することと、
順次発生した周波数毎の前記通信アンテナの電圧値を測定することと、
測定した各電圧値を繋げた仮想曲線において2つの極を検出した場合には、前記通信アンテナと前記外部装置のアンテナとの結合状態が密結合状態であると判定することと、
を有する、通信方法。
(10)外部装置と非接触通信を行う通信アンテナの搬送波の周波数として、大きさが異なる複数の周波数を順次発生することと、
順次発生した周波数毎の前記通信アンテナの電圧値を測定することと、
測定した各電圧値を繋げた仮想曲線において2つの極を検出した場合には、前記通信アンテナと前記外部装置のアンテナとの結合状態が密結合状態であると判定することと、
をコンピュータに実行させるための、プログラム。
【符号の説明】
【0084】
10 通信システム
100 通信装置
102 変調部
104 通信アンテナ
200 携帯端末
204 通信アンテナ
402 アンテナコイル
404 共振用コンデンサ
406 周波数発生部
408 整流部
420 マイクロコンピュータ
422 A/D変換器
424 CPU
426 ROM
428 RAM


【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送波を用いて外部装置と非接触通信を行う通信アンテナと、
前記通信アンテナの前記搬送波の周波数として、大きさが異なる複数の周波数を順次発生する周波数発生部と、
前記周波数発生部が順次発生した周波数毎の前記通信アンテナの電圧値を測定し、測定した各電圧値を繋げた仮想曲線において2つの極を検出した場合には、前記通信アンテナと前記外部装置のアンテナとの結合状態が密結合状態であると判定する制御部と、
を備える、通信装置。
【請求項2】
前記周波数発生部は、所定範囲の周波数帯において大きさが一定間隔で異なる複数の周波数を順次発生する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記通信アンテナは、前記周波数発生部が発生した所定大きさの周波数の搬送波を用いて、前記外部装置との間で信号の送受信を行い、
前記信号の送受信が行われない際に、前記制御部は、前記周波数発生部に前記複数の周波数を順次発生させる、請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記周波数発生部が前記複数の周波数を順次発生する際の前記周波数発生部の出力を、前記周波数発生部が前記所定大きさの周波数を発生する際の前記周波数発生部の出力よりも小さくする、請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記密結合状態であると判定した場合には、測定した前記電圧値に基いて前記通信アンテナのアンテナ特性を変更する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記密結合状態であると判定した場合には、測定した前記電圧値に基いて、前記通信アンテナと前記外部装置のアンテナとの結合状態が臨界結合状態となるように前記アンテナ特性を変更する、請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記周波数毎の前記通信アンテナの電圧値として、予め測定した結果に基づく基準電圧値を記憶する記憶部を更に備え、
前記制御部は、
前記記憶部に記憶された前記基準電圧値と、測定した各電圧値との差分を求め、
求めた差分の各電圧値を繋げた仮想曲線において2つの極を検出した場合には、前記通信アンテナと前記外部装置のアンテナとの結合状態が密結合状態であると判定する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記仮想曲線に対して微分計算を行うことで、前記仮想曲線の極を検出する、請求項7に記載の通信装置。
【請求項9】
外部装置と非接触通信を行う通信アンテナの搬送波の周波数として、大きさが異なる複数の周波数を順次発生することと、
順次発生した周波数毎の前記通信アンテナの電圧値を測定することと、
測定した各電圧値を繋げた仮想曲線において2つの極を検出した場合には、前記通信アンテナと前記外部装置のアンテナとの結合状態が密結合状態であると判定することと、
を有する、通信方法。
【請求項10】
外部装置と非接触通信を行う通信アンテナの搬送波の周波数として、大きさが異なる複数の周波数を順次発生することと、
順次発生した周波数毎の前記通信アンテナの電圧値を測定することと、
測定した各電圧値を繋げた仮想曲線において2つの極を検出した場合には、前記通信アンテナと前記外部装置のアンテナとの結合状態が密結合状態であると判定することと、
をコンピュータに実行させるための、プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−213080(P2012−213080A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78163(P2011−78163)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(504134520)フェリカネットワークス株式会社 (129)
【Fターム(参考)】