説明

通信装置および通信ネットワークのリソースの制御方法

【課題】通信ネットワークのリソースを複数のユーザ端末で共有する際のユーザ端末のリソースの追加、変更または削除などの要求に迅速に対応する。
【解決手段】通信装置は、システム端末50からリソースの追加、変更または削除を含む要求信号を受信するプロビアクセス部102を備える。また、通信装置は、要求信号が受信されたら、リソースをあらかじめ分割して設けられた複数の仮想リソースの中から所定の仮想リソースを抽出してシステム端末に表示させるリソース表示制御部104を備える。例えばリソース表示制御部は、システム端末が使用中の仮想リソースや、複数のシステム端末のいずれも使用していない仮想リソースを抽出してシステム端末に表示させる。また、通信装置は、システム端末で選択された仮想リソースに基づいて、システム端末に割り当てるリソースの追加、変更または削除を実行するリソース制御部106を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置および通信ネットワークのリソースの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ISP(Internet Service Provider)などの通信事業者においては、通信ネットワークのひとつのリソースを複数のユーザ端末に共有させてネットワーク運用管理を行うことが知られている。このようなネットワーク運用管理は、例えばSaaS(Software as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、またはMVNO(Mobile Virtual Network Operator)などが挙げられる。
【0003】
また、通信事業者がユーザ端末に対して通信サービスを提供する場合、あらかじめ通信サービスの保証帯域を決めておき、VLAN-VPN(Virtual Local Area Network-Virtual Private Network)で固定帯域を確保する方式が知られている。また、通信事業者は、RSVP-TE(Resource reSerVation Protocol-Traffic Engineering)等で固定帯域を確保する場合もある。また、通信事業者は、ユーザ端末が通信ネットワークを使用する際に、通信ネットワークのリソースの使用状況に応じて通信帯域を確保する方式など、通信ネットワークの仮想的なリソースをユーザ端末に割り振る方法を採用する場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−261435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術は、通信ネットワークのリソースを複数のユーザ端末で共有する際のユーザ端末のリソースの追加、変更または削除などの要求に迅速に対応することについて考慮されていない。
【0006】
すなわち、従来技術は、新たなユーザ端末から通信ネットワークを使用したいという要求があった場合、通信経路や通信帯域を加味した回線設計をやり直し、その都度ネットワーク上に配置される全通信装置に仮想リソースの再設定を行うため制御コストがかかる。また、ユーザ端末からリソースの追加、変更、または削除の要求があった場合も同様に、その都度ネットワーク上に配置されている全通信装置に仮想リソースの再設定を行うため制御コストがかかる。また、各ユーザ端末に割り当てた仮想リソースはネットワーク設計に基づいた静的なものであるため、通信ネットワークの工事や障害時には、通信装置に対して再設定を要する場合がある。
【0007】
また、従来技術は、あらかじめ通信ネットワークの最小帯域を確保しておき、通信ネットワークの使用時に空き帯域を調べて帯域拡張を動的に行う方式であるため、帯域拡張時に一時的にサービス断が伴う場合がある。
【0008】
また、従来技術は、例えばSaaSやPaaS等のリソースをサービスとして提供しようとする場合、サービス申し込みからサービス開通までのリードタイムが長くなる場合がある。また、従来技術は、ユーザの帯域やサービス性向上の申し込みに対応するためには、新規ネットワークへの切り替えを要するため、一時的なサービス断をともなう場合がある。そこで近年、ユーザ自身がオンデマンドでサービス毎の回線の帯域拡張やサービス拡張を実施したいというニーズが高まっている。
【0009】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、通信ネットワークのリソースを複数のユーザ端末で共有する際のユーザ端末のリソースの追加、変更または削除などの要求に迅速に対応することができる通信装置および通信ネットワークのリソースの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の開示する通信装置は、一つの態様において、通信ネットワークのリソースを共有する複数のユーザ端末から前記リソースの追加、変更または削除を含む要求信号を受信する受信部を備える。また、本願の開示する通信装置は、受信部によって要求信号が受信されたら、通信ネットワークのリソースをあらかじめ設定された分割基準で分割して設けられた複数の仮想リソースの中から要求信号の送信元のユーザ端末に表示させるリソース表示制御部を備える。リソース表示制御部は、複数の仮想リソースの中から、要求信号の送信元のユーザ端末が使用中の仮想リソースおよび複数のユーザ端末のいずれも使用していない仮想リソースの少なくとも一方を抽出して要求信号の送信元のユーザ端末に表示させる。また、本願の開示する通信装置は、要求信号の送信元のユーザ端末に割り当てるリソースの追加、変更または削除を実行するリソース制御部を備える。リソース制御部は、要求信号の送信元のユーザ端末に表示された仮想リソースの中から要求信号の送信元のユーザ端末によって選択された仮想リソースに基づいて、要求信号の送信元のユーザ端末に割り当てるリソースの追加、変更または削除を実行する。
【発明の効果】
【0011】
本願の開示する通信装置の一つの態様によれば、通信ネットワークのリソースを複数のユーザ端末で共有する際のユーザ端末のリソースの追加、変更または削除などの要求に迅速に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本実施例にかかる通信装置の全体構成を示す図である。
【図2】図2は、通信ネットワークの全体構成を示す図である。
【図3】図3は、仮想リソース在庫管理テーブルの一例を示す図である。
【図4】図4は、仮想リソース在庫払い出しテーブルの一例を示す図である。
【図5】図5は、仮想リソースの割り当て制御の一例を説明するための図である。
【図6】図6は、仮想リソースの割り当て制御の一例を説明するための図である。
【図7】図7は、仮想リソースの割り当て制御の一例を説明するための図である。
【図8】図8は、仮想リソースの割り当て制御を動的に実行する通信装置の全体構成を示す図である。
【図9】図9は、VLAN−VPNを用いた仮想リソースのマージの一例を示す図である。
【図10】図10は、VLAN−VPNを用いた仮想リソースのマージの一例を示す図である。
【図11】図11は、VLAN−VPNを用いて仮想リソースのマージを行う際の仮想リソース在庫払い出しテーブルを示す図である。
【図12】図12は、tagポインタの構成を示す図である。
【図13】図13は、tagポインタの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本願の開示する通信装置および通信ネットワークのリソースの制御方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例により開示技術が限定されるものではない。
【実施例】
【0014】
図1は、本実施例にかかる通信装置を含む通信システムの全体構成を示す図である。図1に示すように、本実施例の通信装置は、プロビアクセス部102と、リソース表示制御部104と、リソース制御部106と、NW(NetWork)制御部108と、仮想リソース在庫管理テーブル110と、仮想リソース在庫払い出しテーブル112とを備える。
【0015】
プロビアクセス部102は、エンドユーザ(テナント)が使用するシステム端末50との間で通信バス52を介して通信信号を送受信する。リソース表示制御部104は、システム端末50から送信される通信ネットワークのリソースの追加、変更、または削除などの要求に対応する仮想リソースを抽出してシステム端末50に表示させる制御を行う。リソース制御部106は、例えばシステム端末50からの要求がリソースの追加の場合には、システム端末50が現在使用中の仮想リソースと新たに追加される仮想リソースとをマージする。NW制御部108は、リソース制御部106で実行されたマージ結果を受信して通信装置への各種設定を行い、システム端末50から送信されたパケットを通信ネットワーク116へ送信する。プロビアクセス部102、リソース表示制御部104、リソース制御部106、NW制御部108、仮想リソース在庫管理テーブル110および仮想リソース在庫払い出しテーブル112相互間のデータ送受信は通信バス114を介して行われる。なお、リソース表示制御部104およびリソース制御部106の詳細については後述する。
【0016】
図2は、通信ネットワークの全体構成を示す図である。図2に示すように、システム端末50−1〜50−3とシステム端末50−4〜50−6との間は、複数の回線120,122,124で接続されている。また、回線120,122,124の通信経路上には複数の通信装置126−1〜126−10が設けられている。本実施例では、システム端末50−1〜50−6に平等な通信サービスを提供するのではなく、例えばシステム端末50−1〜50−6との個々の契約に応じて提供する通信サービスに差を設けることができる。本実施例は、例えばシステム端末50−3,50−6は一般のユーザが使用する端末であり、システム端末50−2,50−5は会員ユーザが使用する端末であり、システム端末50−1,50−4はプレミアムユーザが使用する端末であるとする。この場合には、システム端末50−3,50−6、システム端末50−2,50−5、システム端末50−1,50−4の順に提供する通信サービスを向上させることができる。
【0017】
また、本実施例では、回線120,122,124ごとに通信帯域を複数の仮想リソースに分割することができる。例えば、回線120,122,124の物理的な通信帯域が全て1Gbps(Gigabit per second)である場合に、回線120は100Mbps(Megabit per second)の回線を10本あらかじめ準備しておくことができる。また、例えば回線122は10Mbpsの回線を100本、回線124は1Mbpsの回線を1000本あらかじめ準備しておくことができる。
【0018】
図3は、仮想リソース在庫管理テーブルの一例を示す図である。図3に示すように、仮想リソース在庫管理テーブル110は、通信ネットワークのリソースをあらかじめ設定された分割基準で分割して設けられた複数の仮想リソースを記憶している。より具体的には、仮想リソース在庫管理テーブル110は、複数の仮想リソースごとのリソースID(IDdentification)に対応して、帯域、ホップ数、および使用状況が格納される。使用状況とは、仮想リソースがシステム端末によって使用されているか否かを示すものである。一例を挙げて説明すると、リソースIDが「100」の仮想リソースは、帯域が「100Mbps」、ホップ数が「4」であり、現在システム端末50−1〜50−6のいずれかによって使用されていることを示している。一方、リソースIDが「300」の仮想リソースは、帯域が「10Mbps」、ホップ数が「5」であり、現在システム端末50−1〜50−6のいずれにも使用されていない、つまり空き仮想リソースであることを示している。なお、仮想リソース在庫管理テーブル110は、図3に示した例に限らず、通信帯域、経路のホップ数、空き時間情報、リソース使用状況等を加味して分割された複数の仮想リソースを記憶することができる。
【0019】
図4は、仮想リソース在庫払い出しテーブルの一例を示す図である。仮想リソース在庫払い出しテーブル112は、仮想リソース在庫管理テーブル110に記憶された複数の仮想リソースのうちどの仮想リソースがどのシステム端末に使用されているかを示す在庫払い出し状況を記憶している。仮想リソース在庫払い出しテーブル112は、システム端末50−1〜50−6に提供している通信サービスの識別用のサービスIDに対応して、そのサービスを使用しているユーザIDと、そのサービスで使用されている仮想リソースのリソースIDが格納される。一例を挙げて説明すると、サービスIDが「100」の通信サービスは、ユーザIDが「100」のユーザ(システム端末)により使用されており、このシステム端末はリソースIDが「100」の仮想リソースを使用していることを示している。
【0020】
続いて、図1に戻って本実施例の通信装置の処理内容について説明する。まず、図1の実線矢印に示すように、プロビアクセス部102は、システム端末50から通信ネットワークの状況表示の要求信号を受信したら、リソース表示制御部104にユーザIDとともに要求信号を転送する。システム端末50から送信される通信ネットワーク116の状況表示の要求信号は、例えば通信ネットワークのリソースの追加、変更、または削除の要求信号とすることもできる。
【0021】
続いて、リソース表示制御部104は、仮想リソース在庫払い出しテーブル112から読み出したユーザ情報と、仮想リソース在庫管理テーブル110から読み出した仮想リソースの空き状況とをシステム端末50に表示する。リソース表示制御部104は、例えばシステム端末50からの要求信号がリソースの追加である場合には、仮想リソース在庫管理テーブル110から空き仮想リソースを抽出して、抽出した空き仮想リソースをシステム端末50に表示させることができる。また、リソース表示制御部104は、例えばシステム端末50からの要求信号がリソースの削除である場合には、仮想リソース在庫払い出しテーブル112からシステム端末50が使用中の仮想リソースを抽出してシステム端末50に表示させことができる。また、リソース表示制御部104は、例えばシステム端末50からの要求信号がリソースの変更である場合には、空き仮想リソースと、システム端末50が使用中の仮想リソースとを抽出してシステム端末50に表示させることができる。
【0022】
また、図1の破線矢印で示すように、システム端末50にて、通信ネットワーク状況を把握したエンドユーザは、所望の仮想リソースを選択し、プロビアクセス部102にリソース確保の要求を出す。すると、プロビアクセス部102は、この要求をサービスID、ユーザID、使用要求リソースIDとともにリソース制御部106に転送する。リソース制御部106は、例えば仮想リソース在庫払い出しテーブル112から現在エンドユーザが対象サービスで使用している仮想リソースを抽出し、使用要求があったリソースとのマージを行う。リソース制御部106は、マージ結果をNW制御部108に通知し、NW制御部108は通信装置への設定を実施する。以下、本実施例の通信装置の仮想リソースの割り当て制御について、より具体的な例を用いて説明する。
【0023】
図5は、仮想リソースの割り当て制御の一例を説明するための図である。図5は、新規のユーザに対して通信サービスを提供する際の仮想リソース在庫管理テーブル110と仮想リソース在庫払い出しテーブル112それぞれの変更前と変更後について説明するものである。まず、新規のユーザから通信サービスの提供の要求信号をプロビアクセス部102が受信したら、リソース表示制御部104は、仮想リソース在庫管理テーブル110を参照して空き仮想リソースを抽出してサービス要求元のシステム端末に表示する。より具体的にはリソース表示制御部104は、現在いずれのシステム端末50−1〜50−6にも使用されておらず、仮想リソース在庫管理テーブル110の「使用状況」が空きとなっている仮想リソースを抽出してサービス要求元のシステム端末に表示する。ここでは、仮想リソース在庫管理テーブル110の破線150,152で囲まれたリソースIDが「300」,「600」の仮想リソースが抽出されてサービス要求元のシステム端末に表示されたとする。
【0024】
続いて、サービス要求元のシステム端末によって、リソースIDが「300」,「600」の仮想リソースが選択されたとすると、リソース制御部106は、リソースIDが「300」,「600」の仮想リソースをサービス要求元のシステム端末に割り当てる。ここでは、サービス要求元のシステム端末のユーザIDを「400」とし、新たにサービスIDが「500」のサービスを提供する例を示す。この場合、リソース制御部106は、仮想リソース在庫管理テーブル110の破線151,153で示すように、仮想リソース在庫管理テーブル110におけるリソースID「300」,「600」の仮想リソースの使用状況を使用中に設定する。また、リソース制御部106は、仮想リソース在庫払い出しテーブル112の破線154に示すように、仮想リソース在庫払い出しテーブル112において、サービスIDの「500」、ユーザIDの「400」、およびリソースIDの「300」,「600」を追加する。以上のように、新規ユーザに通信サービスを提供する場合には、仮想リソース在庫管理テーブル110から新規ユーザが所望する仮想リソース(単位リソース)を割り当てるだけで、迅速に通信サービスの開通を行うことができる。
【0025】
図6は、仮想リソースの割り当て制御の一例を説明するための図である。図6は、ダイナミックに通信ネットワークリソースを変更する際の仮想リソース在庫管理テーブル110について説明するものである。図6に示すように、この例では、仮想リソース在庫管理テーブル110は、リソースIDに対応付けて、空き時間情報が記憶される。例えば、あるユーザAは、現状、通信帯域が100Mbpsのサービスを契約しているとする。このユーザAは、例えば月曜10時から12時までTV(TeleVision)会議を実施しており、TV会議を実施する時間帯だけはほぼMAXの通信帯域を使用するため、TV会議を実施する時間帯だけ30Mbps通信帯域を増やしたいとする。
【0026】
この場合、ユーザAがシステム端末を操作して通信ネットワークのリソースの追加の要求を行うと、プロビアクセス部102は、ユーザAが使用するシステム端末からリソースの追加の要求信号を受信する。続いて、リソース表示制御部104は、仮想リソース在庫管理テーブル110を参照して空き仮想リソースを抽出してサービス要求元のシステム端末に表示する。ここでは、ユーザAはシステム端末に表示された空き仮想リソースのうちリソースIDが「200」,「300」,「600」の仮想リソースを月曜の10時〜12時の時間帯で選択したとする。この場合、リソース制御部106は、ユーザAのシステム端末にもともと割り当てられていた仮想リソースと、新たに追加されたリソースIDが「200」,「300」,「600」の仮想リソースとをマージする。また、リソース制御部106は、仮想リソース在庫管理テーブル110において、破線156,158に示すように、リソースIDが「200」,「300」,「600」の仮想リソースの使用状況を使用中に更新する。このように、リソースの追加要求信号に応答して、仮想リソース在庫管理テーブル110から空き仮想リソースを抽出してリソースの追加要求元のシステム端末に表示して選択させることで、迅速に1次的なリソースの確保を行うことができる。
【0027】
図7は、仮想リソースの割り当て制御の一例を説明するための図である。図7は、ダイナミックに通信ネットワークリソースを変更する際の仮想リソース在庫管理テーブル110および仮想リソース在庫払い出しテーブル112について説明するものである。図7に示すように、この例では、仮想リソース在庫払い出しテーブル112は、サービスIDに対応付けて、実効帯域と、実効ホップ数が記憶される。例えば、あるユーザBは現状、通信帯域100Mbpsのサービスを契約しているとする。また、ユーザBに対して、通常は100Mbpsの通信帯域を確保しているが、仮想リソース在庫払い出しテーブル112の破線160で示すように、現状、通信ネットワーク障害や工事により、サービスの実効状態が低下しているとする。
【0028】
この場合、リソース表示制御部104は、仮想リソース在庫管理テーブル110を参照して、リソースIDが「600」,「700」の空き仮想リソースをユーザBのシステム端末に対して払い出す。リソース制御部106は、ユーザBのシステム端末にもともと割り当てられていた仮想リソースと、新たに払い出されたリソースIDが「600」,「700」の仮想リソースとをマージする。また、リソース制御部106は、仮想リソース在庫管理テーブル110において、破線162に示すように、リソースIDが「600」,「700」の仮想リソースの使用状況を使用中に更新する。このように、図7の例は、仮想リソース在庫払い出しテーブル112を参照しながらサービスの実効状況をチェックしてリソース不足の検知を行う。さらに、図7の例は、仮想リソース在庫管理テーブル110から空き仮想リソースを払い出して対応することで、サービス断を伴わず1次的なリソース増強を実施することができる。
【0029】
続いて、仮想リソースの割り当て制御を動的に実行する通信装置の構成について説明する。図8は、仮想リソースの割り当て制御を動的に実行する通信装置の全体構成を示す図である。図8に示すように、本実施例の通信装置を含む通信システムは、大きく分けて、リソース要求部80と、リソース管理部201と、リソース管理データ209と、スイッチ制御部220とを備える。リソース要求部80とリソース管理部201は、通信バス90を介して接続される。また、リソース管理部201と、リソース管理データ209と、スイッチ制御部220とは、相互に通信バス214を介して接続される。なお、リソース要求部80に含まれるシステム端末82は、図1で説明したものと同様であるので説明を省略する。また、リソース管理部201に含まれるプロビアクセス部202と、リソース表示制御部204と、リソース制御部206と、NW制御部208は、それぞれ図1で説明したものと同様であるので説明を省略する。また、リソース管理データ209に含まれる仮想リソース在庫管理テーブル210と、仮想リソース在庫払い出しテーブル212は、それぞれ図1で説明したものと同様であるので説明を省略する。
【0030】
スイッチ制御部220は、パケット受信部222と、ソフトスイッチ部224と、仮想IF(InterFace)キュー部226とを備える。パケット受信部222は、システム端末82から送信されたパケットを受信する。また、ソフトスイッチ部224は、パケット受信部222で受信した複数のパケットをそれぞれどの仮想リソースに割り振るかを決定する。仮想IFキュー部226は、ソフトスイッチ部224で決定された割り振りに応じて、各パケットを各キューに割り振り、各キューに格納されたパケットを順次通信ネットワーク216に送信する。
【0031】
続いて、スイッチ制御部220の具体的な処理について説明する。図9は、VLAN−VPNを用いた仮想リソースのマージの一例を示す図である。図9に示すように、パケット302,304,306,308が(1)〜(4)の順にパケット受信部222で受信されたとする。図9に示すように、ソフトスイッチ部224は、仮想グループtag割当表223を備えており、パケットを受信したら仮想グループtag割当表223からtagポインタ225の示す回線を選択する。ソフトスイッチ部224は、パケットの到着順に、tagポインタ225を参照しながらパケットにVLAN-tag を付加して仮想IFキュー部226へアタッチする。また、ソフトスイッチ部224は、パケットにVLAN-tagを付加するたびに、tagポインタ225が次のレコードを指すように、tagポインタ225をα、β、γの順に巡回させる。この例ではパケットの到着順に順次VLAN-tagを付加するので、パケット302にはtagαが付加され、パケット304にはtagβが付加され、パケット306にはtagγが付加され、パケット308にはtagαが付加される。なお、図9は、(4)のパケット308までの処理が完了した状態を示しており、次の(5)のパケットにはtagβが選択される。
【0032】
図10は、VLAN−VPNを用いた仮想リソースのマージの一例を示す図である。図10に示すように、(1)〜(3)の順にパケット320,322,324が順次パケット受信部222で受信されたとする。また、パケット320は「800Byte」、パケット322は「1Kbyte」、パケット324は「80Byte」であったとする。ソフトスイッチ部224は、送信Byte数カウンタ227と、仮想グループtag割当表223とを備えており、パケットを受信したら、送信Byte数カウンタ227が最小を示している項をもとに仮想グループtag割当表223を参照して、VLAN-tagをパケットに付加する。また、ソフトスイッチ部224は、VLAN-tagが付加されたパケットを仮想IFキュー部226へアタッチする。また、ソフトスイッチ部224は、仮想IFキュー部226にアタッチしたByte数だけ、選択された回線の送信Byte数をカウントアップする。
【0033】
具体的には、ソフトスイッチ部224は、パケット320を受信したら、その時点で送信Byte数カウンタ227が最小であるtagβをパケット320に付加し、送信Byte数カウンタ227のtagβの送信Byte数を「2000」から「2800」にカウントアップする。また、ソフトスイッチ部224は、パケット322を受信したら、その時点で送信Byte数カウンタ227が最小であるtagαをパケット322に付加し、送信Byte数カウンタ227のtagαの送信Byte数を「2060」から「3060」にカウントアップする。また、ソフトスイッチ部224は、パケット324を受信したら、その時点で送信Byte数カウンタ227が最小であるtagγをパケット324に付加し、送信Byte数カウンタ227のtagαの送信Byte数を「2600」から「2680」にカウントアップする。このように、送信Byte数カウンタ227が最小を示しているVLAN-tagをパケットに付加することにより、トラフィックを平均化することができる。なお、図10は、パケット324までの処理が完了した状態を示しており、次のパケットが受信されたら、送信Byte数カウンタ227が最小であるtagγが選択される。
【0034】
続いて、VLAN−VPNを用いて仮想リソースのマージを行う際の仮想リソース在庫払い出しテーブル112について説明する。図11は、VLAN−VPNを用いて仮想リソースのマージを行う際の仮想リソース在庫払い出しテーブル112を示す図である。図11に示すように、仮想リソース在庫払い出しテーブル112には、サービスIDそれぞれに対応してVLAN−tagが格納される。ここでは、破線350に示すように、サービスIDが「500」でありリソースIDが「300」,「700」,「800」の仮想リソースのそれぞれに対して、VLAN−tagは「α」,「β」,「γ」が対応付けられる。
【0035】
続いて、tagポインタ225の構成について説明する。図12,13は、tagポインタ225の構成を示す図である。図12に示すように、tagポインタ225は、サービスIDのそれぞれに対して、tag ポインタが対応付けられる。ここでは、破線352に示すように、サービスID「500」に対応してVLAN−tag「α」が格納されているとする。この状態で、パケット受信部222がパケットを受信したら、パケット受信部222は受信パケットをソフトスイッチ部224へ転送する。ソフトスイッチ部224は、tagポインタ225を参照して、tagポインタ225が示す回線(VLAN−tag)を選択し、パケットに付加する。ソフトスイッチ部224は、パケットにVLAN-tagを設定したら、仮想IFキュー部226へアタッチする。また、ソフトスイッチ部224は、パケットを仮想IFキュー部226へアタッチしたら、図13の破線354に示すように、サービスID「500」に対応するVLAN−tagが次のレコードを指すように、VLAN−tagを「β」に更新する。
【0036】
以上、本実施例の通信装置および通信ネットワークのリソースの制御方法は、通信ネットワークのリソースをあらかじめ設定された分割基準で分割して複数の仮想リソースを設けておく。また、本実施例の通信装置および通信ネットワークのリソースの制御方法は、ユーザ端末(システム端末)から要求信号が送られたら、要求信号に応じた仮想リソースをユーザ端末に表示する。そして、本実施例の通信装置および通信ネットワークのリソースの制御方法は、要求信号の送信元のユーザ端末に表示された仮想リソースのうち、ユーザ端末が選択した仮想リソースに基づいて、ユーザ端末にリソースを割り当てる。したがって、本実施例の通信装置および通信ネットワークのリソースの制御方法は、ユーザ端末からのリソースの追加、変更または削除などの要求に迅速に対応することができる。
【0037】
また、本実施例の通信装置および通信ネットワークのリソースの制御方法は、通信ネットワークのリソースを、あらかじめある単位毎の仮想リソースに分けておき、それを管理する仮想リソース在庫管理テーブル110を備える。また、本実施例の通信装置および通信ネットワークのリソースの制御方法は、既に提供済みの仮想リソースをどのシステム端末が使用しているかを管理する仮想リソース在庫払い出しテーブル112を備える。そして、本実施例の通信装置および通信ネットワークのリソースの制御方法は、通信サービスの提供要求があった場合、仮想リソース在庫管理テーブル110から要求に応じた単位の仮想リソースを割り当てる。したがって、本実施例の通信装置および通信ネットワークのリソースの制御方法は、複数の単位仮想リソースを1つのコネクションとして束ねるだけでサービス開通の制御を行うことができる。
【0038】
また、本実施例の通信装置および通信ネットワークのリソースの制御方法は、単位毎の仮想リソースが、制御や障害などの状況に応じて常に更新される。したがって、本実施例の通信装置および通信ネットワークのリソースの制御方法によれば、更新された仮想リソースをWWW(World Wide Web)等で公開することにより、通信ネットワークのリアルタイムな状況を把握することができる。また、エンドユーザ(テナント)は、リソース不足が発生した場合、動的に仮想リソースの追加を行い、ユーザセルフで仮想的に装置へのプロビジョニングが可能となるので、オンデマンドでサービス毎の回線や帯域拡張、サービス拡張が可能となる。したがって、本実施例の通信装置および通信ネットワークのリソースの制御方法によれば、ITリソースを複数のユーザで共有し、一部のリソースをサービスとして提供する場合に、通信サービスの申し込みから開通までのリードタイムを短縮することができる。本実施例の通信装置および通信ネットワークのリソースの制御方法によれば、例えば、ISP等の事業者が、SaaS、PaaS、MVNOなどのサービスを提供する場合に、通信サービスの申し込みから開通までのリードタイムを短縮することができる。また、本実施例の通信装置および通信ネットワークのリソースの制御方法によれば、エンドユーザ自身がオンデマンドでサービス毎の回線の帯域拡張やサービス拡張を行うことができるので、エンドユーザのサービスに対する満足度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0039】
50,82 システム端末
102,202プロビアクセス部
104,204リソース表示制御部
106,206リソース制御部
108,208NW制御部
110,210仮想リソース在庫管理テーブル
112,212仮想リソース在庫払い出しテーブル
116,216通信ネットワーク
126 通信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワークのリソースを共有する複数のユーザ端末から前記リソースの追加、変更または削除を含む要求信号を受信する受信部と、
前記受信部によって前記要求信号が受信されたら、前記通信ネットワークのリソースをあらかじめ設定された分割基準で分割して設けられた複数の仮想リソースの中から、前記要求信号の送信元のユーザ端末が使用中の仮想リソースおよび前記複数のユーザ端末のいずれも使用していない仮想リソースの少なくとも一方を抽出し、該抽出した仮想リソースを前記要求信号の送信元のユーザ端末に表示させるリソース表示制御部と、
前記要求信号の送信元のユーザ端末に表示された仮想リソースの中から前記要求信号の送信元のユーザ端末によって選択された仮想リソースに基づいて、前記要求信号の送信元のユーザ端末に割り当てるリソースの追加、変更または削除を実行するリソース制御部と、
を備えたことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記通信ネットワークのリソースをあらかじめ設定された分割基準で複数の仮想リソースに分割して記憶する仮想リソース在庫管理記憶部と、
前記在庫管理記憶部に記憶された複数の仮想リソースのうちどの仮想リソースがどのユーザ端末に使用されているかを示す在庫払い出し状況を記憶する仮想リソース在庫払い出し記憶部とをさらに備え、
前記リソース表示制御部は、前記仮想リソース在庫管理記憶部と前記仮想リソース在庫払い出し記憶部とを参照して、前記要求信号の送信元のユーザ端末が使用中の仮想リソースおよび前記複数のユーザ端末のいずれも使用していない仮想リソースの少なくとも一方を抽出する
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記仮想リソース在庫管理記憶部は、通信帯域、通信経路のホップ数、およびリソースの空き時間の少なくとも1つの分割基準で前記通信ネットワークのリソースを複数の仮想リソースに分割して記憶する
請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
通信ネットワークのリソースを共有する複数のユーザ端末から前記リソースの追加、変更、または削除を含む要求信号を受信する受信工程と、
前記受信工程によって前記要求信号が受信されたら、前記通信ネットワークのリソースをあらかじめ設定された分割基準で分割して設けられた複数の仮想リソースの中から、前記要求信号の送信元のユーザ端末が使用中の仮想リソースおよび前記複数のユーザ端末のいずれも使用していない仮想リソースの少なくとも一方を抽出し、該抽出した仮想リソースを前記要求信号の送信元のユーザ端末に表示させるリソース表示制御工程と、
前記リソース表示制御工程によって前記要求信号の送信元のユーザ端末に表示された仮想リソースの中から前記要求信号の送信元のユーザ端末が選択した仮想リソースに応じて前記要求信号の送信元のユーザ端末に割り当てるリソースの追加、変更または削除を実行するリソース制御工程と、
を備えたことを特徴とする通信ネットワークのリソースの制御方法。
【請求項5】
前記リソース表示制御工程は、前記通信ネットワークのリソースをあらかじめ設定された分割基準で複数の仮想リソースに分割して記憶する仮想リソース在庫管理記憶部と、前記在庫管理記憶部に記憶された複数の仮想リソースのうちどの仮想リソースがどのユーザ端末に使用されているかを示す在庫払い出し状況を記憶する仮想リソース在庫払い出し記憶部とを参照して、前記要求信号の送信元のユーザ端末が使用中の仮想リソースおよび前記複数のユーザ端末のいずれも使用していない仮想リソースの少なくとも一方を抽出する
請求項4に記載の通信ネットワークのリソースの制御方法。
【請求項6】
前記仮想リソース在庫管理記憶部は、通信帯域、通信経路のホップ数、およびリソースの空き時間の少なくとも1つの分割基準で前記通信ネットワークのリソースを複数の仮想リソースに分割して記憶する
請求項5に記載の通信ネットワークのリソースの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−44268(P2012−44268A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181114(P2010−181114)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】